自動車部品メーカーや海運会社が結んでいた価格カルテルに対して課徴金を課せられる事件が相次いでいる。いずれも、数社が共同して価格や受注調整をしていたことがカルテル(独占禁止法3条、2条6項)に該当するとして、課徴金納付命令を課せられたものだが、注目されるのは、そのすべての事案において、「課徴金減免制度(リニエンシー制度)」の適用を受け、課徴金の納付を免れた企業が出たということだ。
リニエンシー制度とは、・・・
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自動車部品メーカーや海運会社が結んでいた価格カルテルに対して課徴金を課せられる事件が相次いでいる。いずれも、数社が共同して価格や受注調整をしていたことがカルテル(独占禁止法3条、2条6項)に該当するとして、課徴金納付命令を課せられたものだが、注目されるのは、そのすべての事案において、「課徴金減免制度(リニエンシー制度)」の適用を受け、課徴金の納付を免れた企業が出たということだ。
リニエンシー制度とは、カルテルや談合など独占禁止法が禁止する「不当な取引制限」(以下、カルテル等)を行った事業者であっても、独占禁止法に違反した事実を公正取引委員会に自主的に報告し、資料を提出(以下、自主申告)すれば、課徴金の免除や減額を受けられるという制度。具体的には、公正取引委員会に対しカルテル等の存在を自主申告した事業者のうち、一番目の事業者には課徴金の全額を免除し、2番目の事業者には50%、3番目の事業者には30%、課徴金を減額する制度である(*1)。さらに「調査開始前」かつ「最初」に自主申告した事業者(*2)に限り、公正取引委員会による刑事告発の対象外として取り扱われるといった“特典”も受けられる。リニエンシーは、カルテル等の違反をした事業者にとって「自社の自主申告は何番目にあたるのか」が重要になり、“仲間を裏切る”のが早い事業者ほど“得”をするという、日本人の価値観からすると少々違和感を覚える制度と言えるかもしれない。
リニエンシーが認められた企業であっても、違反行為の再発防止策が不十分であったり、他の違反行為者の影響等により違反行為の効果が残存している場合には、排除措置命令を課せられるが、逆に言えば、たとえ違反行為をしていたとしても、十分な再発防止策をとっている場合には、排除措置命令すら免れることができる。
排除措置命令 : 独占禁止法違反行為をした企業等に、速やかにその行為をやめさせ、市場における競争を回復させるために必要な措置を命じること。
もっとも、法で認められた制度とはいえ、いわば“密告”をした企業に対するイメージの低下は避けられないのも事実だろう。リニエンシー制度の導入当初は、同制度は日本の企業風土には合わず、利用する企業は少ないのではないかとの声さえ聞かれた。日本企業(日本人)の価値観からすると、課徴金を免れることにより得る利益よりも、“抜け駆け”をしたことによる負い目の方が上回ると思われたからだ。
もちろん、企業としては、コンプライアンス体制を充実させることによりはじめからカルテルを行わないのが一番であることは言うまでもないが、リニエンシー制度は、改めて日本企業の価値観というものについて考えるきっかけとなり得る。役員としては、仮に自社がその立場になったらどう行動するか、一度思いを巡らせてみてはどうだろうか。
近年、モノ言う投資家(アクティビスト)の活動が目立ってきています。わが国ではリーマンショック以前、村上ファンドやスティール・パートナーズが買収提案や委任状争奪戦を繰り広げて、マスコミを大きく賑わせました。しかし、特にわが国では「ハゲタカファンド」との非難を受けやすく、投資家も慎重になっていることから、最近のアクティビストはいたずらに目立つことは避け、投資先企業と直接対話することを好む傾向があります。
彼らの基本的な投資スタンスは、何らかの「理由」があって株価が低水準に止まっている企業に投資し、その「理由」を解決するための改善策を経営陣に提示、改善の実現(または実現期待)が株価に反映されることで利益を得ようとするものです。そこには彼らなりの「良い経営」に対する考え方があり、その実現を企業は求められているのです。
株主が喜ぶ施策としてまず頭に浮かぶのは、株主還元でしょう。確かに増配や自己株取得のアナウンスには、株価を押し上げる効果が見られます。しかし一方で、リーマンショック前に見られた「金融資産の大部分を配当として一気に出せ」といった極端な要求は、企業の存立基盤を危うくしかねないとの観点から、避けられているようです。
モノ言う投資家が企業に要求を呑ませるには、他の株主から広く支持を得る必要があります。そのためには「株主にとって良い経営」を目指した提案を掲げなければなりません。たとえ株主還元が低水準でも、業績向上で株価が右肩上がりならば、株主としては満足なのです。したがって収益(ひいては株価)の成長性を表すROEもしくは株主還元の度合いを図る配当性向のいずれかが高いことが、「良い経営」の条件と言えるかもしれません(株主還元については、「会社の成長ステージに応じて株主還元策を見直したい」も参照してください)。
株式を公開することで不特定多数の株主を募り、資金調達の自由度を享受している上場会社においては、株主にとっての「良い経営」を実現することは当然に要求されることであり、経営トップにとっては最重要の課題だと言えるでしょう。だからこそIR(投資家向け広報)はトップの責務とされているのであり、真摯な取り組みが期待されています。
ただしIRが責務とは言っても、1人1人の株主と経営トップが対話しなければならないということにはなりません。株主対応で忙殺されて肝心の経営に支障を来たしたのでは、株主にとっても大きな損失となるからです。そのためにIR担当を置いているのであり、トップ自身が「本業が多忙なため」面談できないとしても、それは当然でしょう。個別に重要性を鑑みて面談を受けるかどうかを判断すれば、決して株主平等原則に反するものではありません。
金融庁は2014年2月、「『責任ある機関投資家』の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)」を公表しました。同コードは機関投資家に対し、投資先企業との建設的な「目的を持った対話(エンゲージメント)」を通じて、企業価値の向上や持続的成長を実現するよう求めるものです。今後は、大手の機関投資家が投資先(候補)企業に対してエンゲージメントを求め、質問や提案を記載したレターを送付したり、面談を要求するケースが増えるものと思われます。
そのような「まともな」機関投資家からの面談要請があった場合、これを「ハゲタカ」扱いして無視したのでは、資本市場全体を敵に回すことにもなりかねません。そもそも「良い経営」をしていないと見られているからこそ、「モノ言われる」ことを自覚する必要があります。もっとも投資ファンドは「玉石混合」であることも事実です。IR担当取締役をはじめ経営陣は普段から資本市場との接点を持ち、投資家を見極める目を養う必要があるでしょう。
さて、以上の解説をご覧いただければ、どの発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
発言C:「相手のことも詳しく知りませんし、まずは広報IR担当取締役がお会いするというのはいかがですか? その際に言われたことを持ち帰って再度、臨時取締役会を開催するのがよいかも知れません。」
(コメント:一見すると判断を先送りする消極的な発言のようですが、相手を見極めた上で対策を練るというのは、リスクマネジメントの観点から最も適切と考えられます。先方としても「あわよくば社長と会えれば」と思っているだけかも知れません。)
決算期末を控えた某日、甲株式会社の代表取締役社長宛に、1通の手紙が届いた。秘書室長が開封、確認したところ、概ね以下の内容が記載されていた。
●自分は乙投資ファンドの代表者で、甲株式会社の議決権を約2%保有する大株主である。
●甲株式会社の株価は市場全体および同業他社と比べて著しく低い水準にあり、大いに問題意識を持っている。
●近年は目立った設備投資を実施していない一方で、貸借対照表には時価総額を上回る現預金が計上されている。
●その結果、黒字は確保しているもののROEは低く、また配当金も十分と言い難い。
●以上の実態について、社長と直接面談したうえで意見をうかがいたい。その機会を持てないならば、株主総会で詰問する。
秘書室長は仰天して総務担当取締役に報告、急遽、臨時取締役会が招集された。当日は海外出張中の営業担当取締役を除いた、すべての取締役および監査役が出席している。
総務担当取締役「・・・・以上が乙投資ファンドによる手紙の内容です。なお同ファンドは前期末の株主名簿において、既に0.5%の株主として名義が記載されており、今期になって株を買い増した模様です。したがって株主提案権(*)も保持しているものと思われます。」
社長「それでは仮に面談の要求を無視すれば、今度の株主総会で騒がれるだけでなく、株主提案を実施されて委任状争奪戦になるかもしれないのか。私自身は会っても構わないのだが、その必要はあるのか?」
法務担当取締役「お待ちください。経営トップが1株主に会う義務など、会社法には規定されておりません。乙ファンドは所詮、少数株主であって、その面談に応じたとなると、他の株主にも会わなければ、株主平等原則の観点から問題になるかも知れなせん。」
広報IR担当取締役「しかし無視するのもいかがかと。弊社は近年、外国人はじめ機関投資家の株主が増えており、株主提案になれば賛同する株主も少なくないでしょう。そうなると『揉めている会社』として、レピュテーションに関わる恐れがあります。」
各取締役はそれぞれの立場から意見を言い、社長も迷っているようだ。そして社長は「君はどう思うかね」と、あなた(業務執行取締役)を指名して発言を促した。
次のAからCの発言のうち、どの発言がGOOD発言でしょうか?
発言A:「投資ファンドなどというものは『金』だけがすべてで、実際にビジネスを遂行している我々とは相容れない存在です。こんな手紙は無視して、顧問弁護士の指示に従って株主総会を乗り切るべきでしょう。」
発言B:「株式会社はあくまでも『株主のもの』であって、その求めに応じることは、法律に定められていなくても、経営トップとして当然の責務です。まずは直接お会いした方がいいでしょう。」
発言C:「相手のことも詳しく知りませんし、まずは広報IR担当取締役がお会いするというのはいかがですか? その際に言われたことを持ち帰って再度、臨時取締役会を開催するのがよいかも知れません。」
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4月1日から消費税率が8%に引上げられたが、これに合わせ、公正取引委員会や中小企業庁は転嫁対策法(消費税の転嫁拒否(仕入先に対し消費税増税分の値下げを要求する行為等)を禁止する法律)に違反する事業者がいないかどうか、徹底的な調査を実施している。
このような調査は、・・・
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4月1日から消費税率が8%に引上げられたが、これに合わせ、公正取引委員会や中小企業庁は転嫁対策法(消費税の転嫁拒否(仕入先に対し消費税増税分の値下げを要求する行為等)を禁止する法律)に違反する事業者がいないかどうか、徹底的な調査を実施している。
このような調査は、平成9年の税率5%への引上げ時にも実施されたが、当時は書面調査の件数が親事業者1,000社、下請け事業者5,000社だったのに対し、既に昨年11月には公正取引委員会と中小企業庁の連携によりその10倍に当たる15万件にも及ぶ調査が実施されており、さらに平成26年度においては、これを“大幅に上回る規模”の調査が実施されるという。中小企業庁などは「過去の例を踏まえれば4~6月が転嫁対策の鍵を握る」としていることから、特に6月までは要注意だろう。公正取引委員会によると、既に今年3月までに1,199件の事業者に対し「転嫁対策法違反」があったとして行政指導が入っており、いつ自社がその対象になるとも限らない。よほど金額が多額でない限り、素直に指導に応じていれば社名公表などの措置(転嫁対策法6条)がとられることはないようだが、この時期、安易な値引き要請などは避けた方が無難だろう。
〇公正取引委員会が公表した最近の調査結果はこちら
その一方で、大企業との取引が多い企業にあっては、当事者意識が低いケースが散見される。確かに転嫁対策法を巡っては 「下請けいじめ」「大手スーパー 対 小規模事業者」といった図式でのマスコミ報道が多いこともあり、この図式に当てはまらない企業にとってはピンと来ないのもうなずける。実際、転嫁対策法は、「資本金等の額が3億円超の事業者」からの仕入れは適用対象外としており(ただし、大規模小売事業者による仕入れを除く)、基本的に大手企業同士の取引は同法の規制対象外と考えてよい。
ただし、大企業からの仕入れだからと言って、消費税増税分の値引き要請などの行為がフリーパスで許されるわけではないので注意したい。これは、たとえ転嫁対策法の規制対象外だとしても、独禁法(優越的地位の濫用)や下請法の適用要件に該当すれば、これらの法律により転嫁拒否等の行為が違法となるためだ。例えば、大企業同士の取引で、一方の他方に対する依存度が高い場合に転嫁拒否を行えば、独禁法の優越的地位の濫用に該当する可能性がある。
大企業同士の取引では純粋にビジネス上の理由から値引き要請が行われるのが当たり前だが、消費税率引上げ局面においてはそれが「消費税目的」とみなされやすく、また、値引き要請を受けた仕入先の“逆恨み”により、そのような行為が冒頭で紹介した調査を通じて行政機関に伝わる可能性は否定できない。そのような指摘に対し正当に反論するためにも、この時期、独禁法や下請法のコンプライアンスを徹底しておきたいところだ。
例年、3月決算の上場会社の定時株主総会の開催日は「6月最終営業日の前営業日」(その日が月曜日である場合には、その前週の金曜日)という特定日に集中する傾向がある。今年は6月の最終営業日が30日(月)であるため、その「前営業日」である6月27日(金)に開催日が集中することが予想される。
このように開催日を特定日に集中させることは、元々は・・・
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例年、3月決算の上場会社の定時株主総会の開催日は「6月最終営業日の前営業日」(その日が月曜日である場合には、その前週の金曜日)という特定日に集中する傾向がある。今年は6月の最終営業日が30日(月)であるため、その「前営業日」である6月27日(金)に開催日が集中することが予想される。
このように開催日を特定日に集中させることは、元々は総会屋に対抗するための自衛策だった。上場会社が一斉に同日に株主総会を開催すれば、総会屋の出席可能性が減るというわけだ。例えば東京証券取引所に上場する会社の平成7年3月期における定時株主総会の特定日集中率は「96.2%」という驚異的な数字であった。ただ、株主総会が特定日に集中すれば、複数銘柄を有する一般株主が定時株主総会に出席する機会を奪ってしまったり、株主総会に適した会場の確保にも苦労することになる。総会屋の数も年々減っており、それに比例して株主総会集中日開催のデメリットの方が目立つようになってきた。
そこで、株主総会集中日以外に定時株主総会を開催する上場会社もじわじわと増え、集中率は平成11年3月期には9割を切り、平成15年3月期には7割を切るというように徐々に低下し、昨年(平成25年3月期)は42.0%と、平成11年3月期と比べると半減以下にまで改善している(集中率の推移についてはこちらを参照)。
近年の集中率の低下は、東京証券取引所が平成19年11月に「企業行動規範」を定め、その1つとして「定時株主総会を開催する他の上場会社が著しく多い日と同一の日を、定時株主総会の日と定めない」旨規定したことの影響も少なくない(東証有価証券上場規程施行規則第437条第1号)。こういった取引所側の制度面での手当てに加えて、開かれた株主総会に向けての各上場会社が地道な取組みが、上場会社全体としての集中率緩和につながっていると言える。
株主総会開催日の分散化が進む中、「集中日」に定時株主総会を開催することは、株主に対して閉鎖的な印象や株主との対話に後ろ向きな印象を与えてしまい、IRの観点から得策とは言えない。投資家にそのような印象を与えれば、株価の足を引っ張る恐れもある。昨年は「42.0%」に入ってしまった上場会社も、今年こそ“事なかれ主義”を脱却して、集中日以外に定時株主総会を開催することを検討したいところだ。
2009年に登場した「仮想通貨」。仮想通貨とsuicaやedyなどの「電子マネー」と混同する向きもあるが、電子マネーは、・・・
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2009年に登場した「仮想通貨」。仮想通貨とsuicaやedyなどの「電子マネー」と混同する向きもあるが、電子マネーは、あらかじめチャージしたお金を引き出して使っているという点で実態はお金そのものであり、単にお金を使いやすい形態に変えたものに過ぎない。一方、ビットコインはそれ自体が「時価」で 取引されており、電子マネーとは全く異なる概念である。
例えるなら、ビットコインは“インターネット上の金(ゴールド)”と言える。金は「お金」と違い、政府がその価値を保証しているわけではないが、万人からその価値は認識されている。ビットコインにも後ろ盾となる政府はなく、「万人」に価値が認識されているとまでは言わないまでも、時価で取引されている。またビットコインは、インターネット上とはいえ、まるで金のように“採掘”される。この“採掘”には、かつてのカリフォルニアのゴールドラッシュに多くの市民が押し寄せたように、誰でも参加することができる。もっとも、“採掘”といっても、実際には無料の「miner」というビットコイン採掘ソフトをコンピュータにインストールするだけであり、あとはコンピュータがある条件に合う数字を見つけるまで計算し続けるというもの。金の価値が採掘量に左右されるように、ビットコインの価値も“採掘量”に左右される。そこで、採掘ソフトのminerが採掘の難易度を自動的に調整することで、ビットコインの価値はコントロールされている。また、金の埋蔵量に限界があるように、ビットコインの埋蔵量にも「2,100万枚」という上限を設けることで希少性を生み出し、価値の維持が図られている。ちなみに、2,100万枚がすべて発掘されるのは西暦2140年だという。
ビットコインは、専門のオンライン取引所に口座を開設すれば、ドルや円などの主要通貨と交換も可能。こうしたビットコインの最大手の取引所だったのが、2014年2月に経営破たんし、大きな話題となったマウントゴックス社(東京・渋谷)だ。経営破たんの理由は、サイバー攻撃により顧客と自社分の合計85万BTC(114億円相当)を喪失したことだという。
ビットコインが利用される大きな理由として、ビットコインは金融機関を通さずネット上で取引されることから、送金手続が容易かつ短時間で完了すること、また、送金手数料が極めて少額に抑えられることが挙げられる。実際、2009年に登場して以来、ビットコインは米国を中心に急速に普及している。金融インフラが脆弱な新興国をはじめ、ビットコインがあらゆる 経済圏で利用できる可能性があることなどから、そのポテンシャルを高く評価する声は少なくない。例えば、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ前議長は、米議会に宛てに、イノベーションによって迅速で安全性の高い、効率的な支払システムの向上が促されれば、長期的な展望が開ける分野もあるとする書簡を送っている。
その一方で、ビットコインのリスクも指摘されている。まず、ビットコインは利用にあたって本名等の個人情報を開示する必要がないなど、その匿名性の高さゆえに、マネーロンダリングや不法な物品の購入に使われる可能性がある。また、投機性の高さも問題視されている。上述のとおりビットコインの発行量に上限が設けられているうえ、採掘ソフトにより供給量が緩やかにしか増加しないように調整されているのに対し、需要の方は「インターネット」という手軽なインフラを利用しているため、短期間で容易に急激な増減が起こり、それが大きな価格変動へとつながりやすい。実際、2013年初めに1ビットコイン当たり10ドル前後だった価値が同年末には1,200ドルまで急上昇している。さらに、上述のとおり大手ビットコイン取引所のマウントゴックスがサイバー攻撃により経営破たんしたように、サイバーセキュリティ上のリスクも抱えている。
こうした中、ビットコインが今後一層普及していくためには、取引所に対する規制強化が必要との声は強い。実際、米国では米財務省は2013年3月に仮想通貨への規制指針をまとめ、取引所の登録を義務付けたほか、ビットコインをマネーロンダリングの規制対象としている。
一方、日本では、ビットコインは通貨ではなく「商品」であり、売買によって利益が出れば課税対象とするというのが政府の公式見解となっている。
こうした規制の結果、ビットコインの利便性が失われれば、価格が暴落する等、その普及に影響することも考えられる。
ビットコイン以外にも「リップル」や「ライトコイン」といった仮想通貨が存在しており、このうちリップルにはあのグーグルも投資している。こうした仮想通貨が電子商取引(EC)などに適している面があるのは確かだが、上述したリスクがぬぐい去れない中で、上場会社が決済手段として採用するのは容易ではないと言えそうだ。