2014/03/10 短期消滅時効廃止で、債権管理システムの変更が必要に

 民法「債権法」の大規模な改正作業が進められている。改正項目の多くは蓄積した判例や学説を明文化するものであるが、企業に影響を与える項目も少なくない。その一つが「短期消滅時効」制度の廃止だ。

 現行民法では、債権一般の消滅時効の期間を「10年間」と規定する一方、これとは別に、例えば医師の診療に関する債権は3年、弁護士の職務に関する債権は2年、飲食店の代金債権は1年といった“短期”の消滅時効を定めている。しかし、債権によって消滅時効の期間を分けることに合理性はなく、分かりにくいとの批判がある。そこで、これらの区分を廃止し、一般の消滅時効に統合する方向で、民法の見直しが検討されてきた。

 また、一般の消滅時効についても10年間は長すぎるとの指摘から、5年に短縮される方向。つまり、民法上の消滅時効の期間を一律に5年にするということである。

 この改正は日々反復継続して大量の取引を行う企業への影響が大きい。例えば小売店は、民法上「生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権は2年間行使しないときは消滅する(民法第173条2号)」と規定されていることを前提に、商品の仕入先に対する買掛金の支払いにおいては「2年間」取引の記録を保存している。また、鉄道事業者は、「運送賃に係る債権は1年間行使しないときは消滅する(民法第174条3号)」ことを前提に、1年間の記録を保存するシステムを設けている。

 改正法が施行された場合には、システムを変更するコストと手間が生じるとともに、消滅時効の期間が長くなることで、事務負担の増加を招くことは間違いない。消滅時効の改正は影響が大きいため、実際の施行はしばらく先となりそうだが、大量の債権・債務を扱う企業は、短期消滅時効の廃止を織り込んだ債権管理システムへの変更を視野に入れておくべきだろう。

 なお、短期消滅時効は民法以外の法律で独自に定められているケースもあるが(例えば、保険料請求の消滅時効は、保険法95条2項により1年間とされている)、各法律ごとに民法と異なる期間が定められた理由が存在するため、民法改正はこうした特別法には影響しない可能性が高い。

2014/03/10 チェックリスト:交際費の不正支出や使い過ぎを防止したい(会員限定)

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■チェックリスト:交際費の不正支出や使い過ぎを防止したい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
交際費に関し、税務上の取り扱いを踏まえた管理規程が存在するか。 整備状況の確認
交際費に関する管理規程が実際に運用されているか。 運用状況の確認
交際費に関する内部統制について、社内の第三者のチェック機能が働いているか。 第三者によるチェック機能
取締役の交際費支出に関して、社内の第三者のチェック機能が働いているか。
業務と関連しない交際費は承認しない仕組みが整備・運用されているか。 質的チェック
交際費の管理規程に定められた金額以内の使用となっているか。 量的チェック
交際費について、部門ごとの月次の予算実績比較が行われているか。 予算統制
経理担当役員としては、交際費と類似費用との線引きが経理部内で判断しきれないものがあれば、顧問税理士と相談し、月次決算の段階で解決しておく体制を整備・運用しているか。 会計・税務処理

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2014/03/10 【不祥事】交際費の不正支出や使い過ぎを防止したい(会員限定)

多額の交際費の支出には疑いの目を

社長をはじめ、営業担当の取締役や社員が交際費を使って取引先と会食などをするケースはよく見受けられます。こうした活動は、会社の営業上必要であることも多い一方、業務との関連性、公私の区分が曖昧なケースもあります。もし常識の範囲を超えて多額の交際費を使っている者がいる場合、業務とは関係のない支出が行われている可能性を疑うべきでしょう。

業務とは関係のない支出が事実なら、不正な支出を通じて会社に損害を与えていることになり、不正な交際費を支出した当事者はもちろん、場合によっては、取締役や監査役も監督責任を問われる可能性があります。また、そのような不祥事が起きてしまったということは、会社の内部統制システムに問題がある可能性もあります。

以下で具体的に見ていきましょう。

個人の倫理観やコンプライアンス意識だけでは交際費の不正・過剰支出は防げない

交際費の不正支出の大きな原因の一つとしてまず考えられるのは、個人的な倫理観やコンプライアンス意識の欠如です。そもそも会社の業務のために使用したことが明らかでない支出は、会社の経費として認めるべきではありません。すなわち、交際費の精算は行わずに、自己負担(自腹)の支出として取り扱うべきです(自己負担にしなかった場合には税務上の問題が生じる可能性があります。この点については後述します)。

とはいえ、特に代表者や役員が支出する交際費には、例えば公私ともに付き合いのある知人と飲食した際の代金など、会社の業務のための使用なのか、あるいは私的な付き合いのための使用なのか、公私の区別が難しいものが少なくありません。また、業務との関連性を判断する場合には、単に金額の多寡だけでなく、その「内容」も問題になります。

倫理観やコンプライアンス意識の徹底はもちろん重要なことですが、そもそも公私の区分や業務との関連性の判断を個人の倫理観やコンプライアンス意識に委ねた状態では、交際費の不正支出や過剰な支出を防止することは困難といえます。

交際費への“課金制”を導入する会社も

では、交際費に関する内部統制の仕組みとして、具体的にどのようなものを構築すればよいのでしょうか。

まず必要なのが、規程の整備です。社内に交際費管理規程がなければ、早急に整備する必要があります。具体的には、市販の規程事例集などから雛型を入手のうえ、「交際費の認可基準(業務関連性の高い事案に限るなど)」「使用が認められる場合における金額の上限」「部門別の交際費の予算統制の実施(部門内における決裁で使用が認められる予算と、これまでの使用実績。詳細は後述)」などを織り込んでいきます。

上述のとおり、交際費は業務との関連性や公私の区分の判断が難しいため、「会社の業務のために使用したことが明らかでない金額については、経費として認めない」といった厳格な管理制度の整備と運用が必要になります。

これを実現するためには、交際費を支出する際、直属の上司以外に、経理部や内部監査室のような社内の第三者的な部署が内容をチェックするという内部統制の実施が極めて有効です。ただ、従業員にはこのような厳しい内部統制を課す一方で、社長を含む取締役は、自分が立て替えた交際費を誰の承認も経ずに精算できるということでは、取締役自身の不正を防ぐことはできません。そこで、交際費管理規程に、「取締役であっても、一定の金額以上の交際費を使うときは、原則としてあらかじめ経理部門の承認を受ける」といったルールを設けたり、使用できる総額の上限を定めたりするなどして、これを厳格に運用していくことが必要です。

また、上記でも触れたように、予算統制(予算と実績を比較し、その結果を経営活動に活かすこと)として、「部門ごと」に月次決算毎の交際費の予算と実績の比較(予実比較)と改善点の調査を行うことも、交際費管理の観点から重要です。なぜなら、予実比較の結果、予算をオーバーした交際費が社内において白日の下にさらされるため、予算オーバーを回避するために不要不急の交際費支出を意識的に避けるといった行動が期待できるからです。もっとも、予算の設定が甘かったり、「部門ごと」の予算統制を行っていなかったりすると、予算統制の牽制効果も薄れてしまいかねない点に留意が必要です。また、予実比較を行うだけでは不十分です。差異を調査し、冗費の削減のための改善個所の調査を継続的に行うことも必要となります。

さらに、独立事業部制を採用している会社では、使用交際費の金額の多寡に応じ、会社が各事業部に対して“課金”を行うことにより、使用額を抑えるような牽制をしている会社も見受けられます。

交際費は新たなビジネスチャンスの獲得や既存顧客との関係維持などに様々な効果が期待できる一方で、その結果がどのように売上や利益に貢献するのかを検証することが難しく、また、会社に税負担が発生してしまう(後述)という問題もあります。したがって、交際費に関しては、上述のような厳格な管理体制を整備したうえで、定期的に運用状況をチェックすることが、コーポレート・ガバナンスの観点から重要だと言えます。

交際費には税務の問題が付いて回る

会社が交際費の支出に神経質にならざるを得ない理由の一つが税務の問題です。法人税法上、資本金が1億円を超える会社は飲食費以外の交際費を一切損金算入することができません。一方、飲食費については50%まで損金算入が認められているものの、残り50%は損金算入できません(飲食費以外は全額損金不算入)。損金算入できないということは、損金算入できる場合に比べて、その分だけ課税所得が増えてしまう(その結果、法人税、法人住民税、法人事業税が増えてしまう)ということを意味します。

ちなみに、資本金が1億円以下の会社については「年間800万円まで」の交際費の全額を損金算入、あるいは「飲食費の50%までは損金算入、飲食費以外は全額損金不算入」のいずれかを選択できますが、「資本金5億円以上の会社の100%子会社」はたとえ資本金が1億円以下であっても、資本金が1億円を超える会社と同様に取り扱われ、飲食費以外の交際費の損金算入は一切認められませんので、要注意です。なお、1人あたり「5,000円以内」の飲食費については、資本金の大小に関係なく、すべての会社が全額損金算入することができます(ただし社内飲食費、すなわちすなわち役員や従業員同士の飲食費は除きます)。

このように交際費の支出には「税金」という上乗せの負担が会社に発生するため、冒頭でも述べたとおり、そもそも会社の業務のために使用したことが明らかでないものは交際費(=会社の経費)として認めず、役員や従業員に自己負担してもらうべきです。仮に役員や従業員の自己負担とせずに会社が負担(肩代わり)した場合、税務上は、従業員が使用したものであれば給与、役員が使用したものであれば役員報酬あるいは役員賞与として取り扱われることになります。従業員への給与となる場合、当該金額は全額損金算入することができますが(つまり、交際費として処理するより給与として処理した方が、会社の税負担は少なくなります)、役員への報酬や賞与となる場合には、それらが「定期同額給与(役員給与の支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの)」などに該当しない限り、損金算入できません。通常、交際費は偶発的(=定期同額給与などには該当し得ない)な支出なので、損金算入はできないと考えておいてください。そこで、一般的には、「交際費として使用された額」に「源泉徴収相当分」を加算した額を、「役員賞与」として計上することになります。仮に「交際費」として計上した場合でも、その実質は「役員賞与」ですので、源泉徴収が必要になる点に留意が必要です。例えば交際費として使用された額が80で、役員の源泉税率が20%だった場合には、交際費を100計上するとともに、20を源泉徴収して納税することになります。そのうえで、当該役員の年末調整時(または確定申告時)に役員個人の所得に交際費相当額(この例だと100)を加算する必要があります。

また、交際費の中には「渡切(わたしきり)交際費」と呼ばれるものがありますが、これも税務上は交際費にならず、給与となります。渡切交際費とは、金銭を社員や役員に支給して交際費として使わせ、その名のとおり精算をしない(渡切り)というものです。通常、会社が社員や役員に接待費等の名目で金銭を支給した場合、領収書と引換えに精算が行われ、それが会社の業務に必要なものであれば「交際費」として処理されますが、渡切交際費は精算されないため、支給を受けた者の裁量で自由に使えることになります。このような渡切交際費は「給与」の性質を有していると考えられますので、税務上も交際費ではなく給与として取り扱われるわけです。したがって、上記と同様に、渡切交際費を社員に支給した場合には「給与」として損金に、役員に支給した場合は「定期同額給与」などに該当する場合に限り損金になります。例えば役員に毎月、同じ額の渡切交際費が支給されている場合には、「定期同額給与」として損金算入することが可能です。逆に、忘年会や新年会シーズンに限定して支給しているような場合は臨時的な給与となりますので、その内容を事前に税務署長に届出(=事前確定届出給与)していない限り、損金算入は認められません。

「使途秘匿金」には支出額と同額の重い税金

もっとも、渡切交際費を巡る税務上の問題は、「給与になるかどうか」という点にとどまりません。上述のとおり、渡切交際費は精算が行われず、支給を受けた者が自由に使うことができますので、何に使われたのか明らかでないケースもあるでしょう。

支出額や支払先は分かっているものの、支出目的が不明な「使途不明金」として支出すれば、税務上は損金不算入となり税負担が発生します。代表的な使途不明金が、領収書がもらえないリベートや謝礼などです。一方、支出目的だけでなく支出した相手の名称や所在地を記録に残さない「使途秘匿金」として支出した場合は、支払った方、もらった方の双方が贈収賄罪に問われる可能性があり、仮に支払先が得意先であれば、詳細を明かせないというのも当然かも知れません。

税務上は、支出目的は明らかにできないまでも、支出額や支出先など「金銭の支出」の事実が立証できる「使途不明金」であれば、単にその全額が「損金不算入」となるだけで済みます(単に損金不算入になるという点では、交際費と同じ扱いです)。一方、支出先も含む支出の事実がすべて立証できない「使途秘匿金」は、その全額が損金不算入となるだけでなく、通常の法人税に加え、支出額の40%の追加課税が行われ、地方税の負担を合わせると、支出額とほぼ同額の税金が課されることになるので要注意です(支出額が課税対象になるため、赤字法人でも納税する必要があります)。

そして、このような使途不明金あるいは使途秘匿金の温床となっているのが渡切交際費です。上場会社としては、税務上のリスク、コンプライアンスリスク(贈収賄罪等に当たるリスク)を考えれば、渡切交際費の支給は可能な限り避けるべきでしょう。

交際費か類似費用かの判断ミスが、会社のレピュテーションリスクに

一口に「交際費」と言っても、実際には類似費用との区別が難しいケースが少なくありません。

交際費に類似する費用としては、会議費、寄付金、広告宣伝費、福利厚生費があります。例えば会議でも飲食物が提供されることがありますが、業務に関連する会議や打ち合わせであれば、交際費とせず「会議費」として全額損金算入することができます。同様に、従業員と役員の福利厚生のために支出される飲食や慰安の費用は交際費ではなく「福利厚生費」であり、やはり全額損金算入が可能です。また、交際費とは得意先や仕入れ先など事業に関連した相手に対して何らかの“見返り”を期待して支出するものですので、事業との関連性がない、あるいは関連が希薄な相手に対して見返りを求めずに支出する金銭、すなわち「寄付金」は交際費には該当しませんし(ただし、寄付金も「(資本金×2.5/1000+所得金額×2.5/100)×1/2」までしか損金算入できません)、交際費は特定の人を対象に支出するものですので、不特定多数の人を対象にした抽選によりスポーツ観戦のチケットや見本品、試用品を提供したとしても交際費には該当しません(この場合、「広告宣伝費」として全額が損金算入されます)。

一方、本来は交際費に該当するものを、例えば「会議費」として損金算入していた場合には、税務調査で指摘を受け、その結果、「所得隠し」などとメディアで報道されてしまうリスクもあります。実際には単なる税務当局との見解の相違であったとしても、そのような報道がされるだけで、会社のレピュテーション(企業に対して世間が抱く印象や評判)に傷がつくことになりかねません。

したがって、経理担当役員としては、「交際費」か「類似費用」か、を経理部内で判断しきれない場合には、顧問税理士と相談し、「月次決算」の段階でこれを解決する体制を整備・運用していく必要があります。これらの費用は部門によっては年間でかなりの件数・金額になりますので、後で見直すとなると膨大な手間がかかり、通常の決算作業に支障を来しかねないうえ、見落としが生じる可能性があります。問題の芽は早めに摘んでおくのが得策です。

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2014/03/10 【不祥事】交際費の不正支出や使い過ぎを防止したい

 

多額の交際費の支出には疑いの目を

社長をはじめ、営業担当の取締役や社員が交際費を使って取引先と会食などをするケースはよく見受けられます。こうした活動は、会社の営業上必要であることも多い一方、業務との関連性、公私の区分が曖昧なケースもあります。もし常識の範囲を超えて多額の交際費を使っている者がいる場合、業務とは関係のない支出が行われている可能性を疑うべきでしょう。

業務とは関係のない支出が事実なら、不正な支出を通じて会社に損害を与えていることになり、不正な交際費を支出した当事者はもちろん、場合によっては、取締役や監査役も監督責任を問われる可能性があります。また、そのような不祥事が起きてしまったということは、会社の内部統制システムに問題がある可能性もあります。

以下で具体的に見ていきましょう。

個人の倫理観やコンプライアンス意識だけでは交際費の不正・過剰支出は防げない

交際費の不正支出の大きな原因の一つとしてまず考えられるのは、個人的な倫理観やコンプライアンス意識の欠如です。そもそも会社の業務のために使用したことが明らかでない支出は、会社の経費として認めるべきではありません。すなわち、交際費の精算は行わずに、自己負担(自腹)の支出として取り扱うべきです(自己負担にしなかった場合には税務上の問題が生じる可能性があります。この点については後述します)。

とはいえ、特に代表者や役員が支出する交際費には、例えば公私ともに付き合いのある知人と飲食した際の代金など、会社の業務のための使用なのか、あるいは私的な付き合いのための使用なのか、公私の区別が難しいものが少なくありません。また、業務との関連性を判断する場合には、単に金額の多寡だけでなく、その「内容」も問題になります。

倫理観やコンプライアンス意識の徹底はもちろん重要なことですが、そもそも公私の区分や業務との関連性の判断を個人の倫理観やコンプライアンス意識に委ねた状態では、交際費の不正支出や過剰な支出を防止することは困難といえます。

交際費への“課金制”を導入する会社も

では、交際費に関する内部統制の仕組みとして、具体的にどのようなものを構築すればよいのでしょうか。

まず必要なのが、・・・

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交際費には税務の問題が付いて回る

会社が交際費の支出に神経質にならざるを得ない理由の一つが税務の問題です。法人税法上、資本金が1億円を超える会社は飲食費以外の交際費を一切損金算入することができません。一方、飲食費については50%まで損金算入が認められているものの、残り50%は損金算入できません(飲食費以外は全額損金不算入)。

損金算入できないということは、・・・

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「使途秘匿金」には支出額と同額の重い税金

もっとも、渡切交際費を巡る税務上の問題は、「給与になるかどうか」という点にとどまりません。上述のとおり、渡切交際費は精算が行われず、支給を受けた者が自由に使うことができますので、何に使われたのか明らかでないケースもあるでしょう。

支出額や支払先がわかっているものの、支出目的が不明な「使途不明金」で支出すれば、税務上は損金不算入として税負担が発生します。代表的な使途不明金は・・・

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交際費か類似費用かの判断ミスが、会社のレピュテーションリスクに

一口に「交際費」と言っても、実際には類似費用との区別が難しいケースが少なくありません。

交際費に類似する費用としては、・・・

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2014/03/09 チェックリスト:臨時株主総会を開催したい(会員限定)

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■チェックリスト:臨時株主総会を開催したい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
臨時株主総会の招集に際して、下記の事項を取締役会で決議しているか。
・ 日時および場所
・ 議題
・ 議決権行使書により議決権を行使できる旨
・ 株主総会参考書類に記載すべき事項
・ 議決権行使書による議決権の行使期限
株主総会の招集通知は、株主総会の日の2週間前までに発送したか(会社法上の要請)。 「株主総会の日」と「招集通知の発送日」との間を中2週間空ける必要がある。
株主総会の招集の通知を、会社法299条1項に規定する期日よりも早期に発送したか(証券取引所の要請)。 行った方が望ましいが、必須ではない。
株主総会の招集通知等を、発送後速やかに電磁的方法により投資者が提供を受けることができる状態に置いたか。 行った方が望ましいが、必須ではない。
招集通知等を要約したものの英訳を作成し、投資者が提供を受けることができる状態に置いたか。 行った方が望ましいが、必須ではない。
議決権電子行使プラットフォームへの参加を検討したか。 行った方が望ましいが、必須ではない。

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2014/03/09 【株主総会の運営】臨時株主総会を開催したい(会員限定)

臨時株主総会が開催される理由

定時株主総会が、ともに会社法上の決算書類である「事業報告」の報告と「計算書類」の承認を主な目的としているのに対し、臨時株主総会は、例えば合併、会社分割、定款変更といった重要事項について、“緊急に”株主の承認を得る必要がある場合に開催されます(会社法296条2項)。

このように臨時株主総会の目的は様々ですが、すべての臨時株主総会に共通しているのは、「定時株主総会まで待てない場合」に開催されるということです。もっとも、そのような事態はそうそう発生するものではありません。したがって、通常の上場会社では、定時株主総会が年に1回開催されるのに対し、臨時株主総会は「数年に1回」またはそれ以下といった頻度になります。

では、役員としては、臨時株主総会の前にどのような準備をしておく必要があるのでしょうか。以下で解説します。

臨時株主総会の基本的な手続きは定時株主総会と同じ

臨時株主総会も株主総会である以上、その手続きは、基本的な点において定時株主総会と変わるところはありません。定時株主総会との共通点は以下のとおりです。

(招集を決議する機関、決議事項)
まず、臨時株主総会の招集を決めるのは、定時株主総会同様、原則として取締役会であり、取締役会で決議しなければならない事項も同じです。主な事項は次の通りです(会社法298条1項、会社法施行規則63条)。

・ 日時および場所
・ 議題
・ 議決権行使書(株主総会に出席しない株主が議決権を行使する場合に使用する書面。郵送によりやり取りされます)により議決権を行使できる旨
・ 株主総会参考書類(議案、その提案理由など、議決権の行使の際に参考となる事項を記載した書類)に記載すべき事項
・ 議決権行使書による議決権の行使期限(行使期限を定めない場合には、株主総会日の直前の営業時間の終了時となります)

(招集通知)
臨時株主総会の招集通知には、上述した株主総会の招集についての決議事項(日時および場所、議題、議決権行使書により議決権を行使できる旨、株主総会参考書類に記載すべき事項、議決権行使書による議決権の行使期限)を記載しなければなりません(会社法299条4項)。これも定時株主総会の場合と同様です。

また、株主総会の招集通知は、「株主総会の日の2週間前まで」に発送する必要があるとされています(会社法299条1項)。この点も定時株主総会と同じです。2週間前までに発送する必要があるということは、言い換えれば、「株主総会の日」と「招集通知の発送日」との間を中2週間空ける必要があるということを意味します。例えば、11月30日に臨時株主総会を開催する場合には、その15日前(「2週間+1日」の15日前に発送することで、中2週間空くことになります)の11月15日までに招集通知を発送する必要があります。

なお、定時株主総会の場合と同様、臨時株主総会の招集通知においても、万が一、招集通知に記載漏れや記載ミスがあった場合に備え、修正後の事項を株主に周知するためのURLを招集通知の最後に表示しておくケースがよく見受けられます。

(証券取引所の要請)
上場会社である以上、会社法の要請だけを満たせば十分というわけにはいきません。定時株主総会の場合と同様、臨時株主総会を開催する際にも、以下の証券取引所の要請に配慮する必要があります(東証・有価証券上場規程施行規則437条)。

・ 株主総会の招集の通知を会社法299条1項に規定する期日よりも早期に発送すること(「株主総会の日の2週間前」ぎりぎりに発送するのではなく、1日でも早い日に発送すること)。
・ 株主総会の招集の通知および株主総会参考書類(招集通知等)を、招集通知等の発送後速やかに電磁的方法により投資者が提供を受けることができる状態に置くこと(会社のサイトのIRコーナー等に招集通知等をアップし、だれでも閲覧可能な状態にすること)。
・ 招集通知等を要約したものの英訳を作成し、投資者が提供を受けることができる状態に置くこと(海外の投資家への情報開示サービスの向上)。
・ 株主が電磁的方法により議決権の行使を行うことができる状態に置くこと(電子メールや専用のウェブサイト上での投票)。

(株主総会議事録)
臨時株主総会を開催した場合、株主総会議事録を作成し、本店に10年間、支店に写しを5年間備え置かなければならない点も、定時株主総会と同様です。

(議決権行使結果についての臨時報告書)
上場会社の場合、臨時株主総会が終了後、遅滞なく、議決権行使結果についての臨時報告書を財務(支)局に提出しなければなりません。この点についても定時株主総会と同様となっています。

総議決権の3%以上を半年保有する株主からの開催請求を断ることは不可

これに対し、臨時株主総会と定時株主総会で手続きが異なる点は以下のとおりです。

(臨時株主総会の開催請求権)
定時株主総会は毎年同じ時期に開催されますが、臨時株主総会は取締役会が開催を決議しない限り、原則として開催されることはありません。しかし、それでは少数株主側が臨時株主総会の開催を希望したとしても、実現するかどうかは取締役会の意向次第ということになり、少数株主の保護に欠けることになります。そこで、議決権の総数の3%以上を6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合には、その期間)継続して保有する株主は、臨時株主総会の開催を請求することができます(会社法297条1項)。ここでいう株主は1人(個人又は法人)である必要はなく、複数の株主が合計して3%以上の株式をそれぞれ6か月継続して保有している場合には、共同で臨時株主総会の開催を請求することができます。

会社としては、株主の請求が権利の濫用にあたるような場合を除き、その請求を断ることはできません。臨時株主総会の開催が請求されるケースとしては、例えば、株主と経営陣との間に支配権争いが生じており、株主側が現経営陣を解任して新たに株主側の意向を酌んだ取締役を選任したいと考えるような場合があります。

(基準日の決議)
議決権行使の基準日(「その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会で議決権を行使できる」という日)の設定方法も、臨時株主総会と定時株主総会では異なります。

臨時株主総会は、必要がある場合にいつでも開催することができますが、株主数が多く、また株主が誰であるか特定できないうえに入れ替わりも激しい上場会社では、議決権を行使できる株主を臨時株主総会当日に特定するのは不可能です。これは定時株主総会の場合にも言えることですが、定時株主総会では「基準日」をあらかじめ定款に定めているのに対し、臨時株主総会はまさに“臨時”に開催されるため、開催前に基準日を特定することはできません。

そこで、臨時株主総会を開催しようとする際には、まず取締役会において基準日をいつにするのかを決めることにより、臨時株主総会で議決権を行使できる株主を確定させることになります。

(基準日の公告)
取締役会で基準日を定めたら、それを株主に伝える必要があります。基準日の公告が不要な定時株主総会と異なり、臨時株主総会では、公告のスケジュール管理が非常に重要になります。

まず会社法では、「基準日の2週間前まで」に、「基準日」および「基準日における株主が行使することができる権利(ここでは議決権)」を、定款に定める方法によって公告することを求めています(会社法124条3項)。上場会社の場合、公告の方法として日刊新聞紙か電子公告(自社のサイトなどにおける公告)のいずれかを選択し、定款に定めておくことになりますが、日刊新聞紙による公告の場合、公告のタイムリミットが電子公告よりも“1日前”になってしまうので注意が必要です。例えば、基準日を「9月30日」とする場合には、電子公告であれば9月16日午前0時から(またはそれより前に)公告を行えば「基準日の2週間前まで(=公告日と基準日の間を中2週間空ける)」という条件を満たすことができる一方、9月16日付の日刊新聞紙朝刊で公告を行った場合、朝刊が読者の手に渡るのは朝であり、午前0時から数時間経過してしまっているため、「基準日の2週間前まで」という条件に数時間及ばないことになります。つまり、日刊新聞紙で公告を行う場合には、1日前の9月15日がタイムリミットとなります。

また、日刊新聞紙により基準日の公告を行う際には、紙面の公告枠を確保するのに少なくとも1週間程度かかるのが通常です。自社のサイトなどを利用する電子公告では「枠の確保」は不要ですが、電子公告調査機関による調査を利用する必要があり、その調査依頼から調査開始までには1週間程度かかることから、結局日刊新聞紙による公告と同程度の準備期間が必要になります。

電子公告調査機関 : 官報や日刊新聞紙のような印刷物でない電子公告では「公告」の客観的証拠が残らないため、公告期間中、定期的にサイトをチェックし、掲載の事実や内容の改ざんがないかをチェックする機関。現在、複数の株式会社が有料でサービスを提供しています。

(招集通知等の発送準備)
招集通知等を発送するためには、議決権を行使できる株主(=基準日における株主)を株主名簿管理人(信託銀行など)に依頼して確定させる必要があります。この株主確定に要する時間も考慮すると、招集通知等(招集通知、議決権行使書等)の発送準備には基準日から3~4週間程度要するのが通常です。したがって、臨時株主総会の開催の可能性が高まった場合には、早めに株主名簿管理人に相談をして、スケジュールを詰めておく必要があります。

以上を図解すれば、下図のようになります。

招集通知発送スケジュール

招集通知発送スケジュール

これらの期間をトータルすると、臨時株主総会を開催する旨を取締役会で決議してから、実際に開催するまでには、最短でも2か月弱の時間を要することになります。役員としては、この期間を頭に入れた上で、臨時株主総会開催に向けて余裕を持ったスケジュールを立てることが必要です。

 

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2014/03/09 【株主総会の運営】臨時株主総会を開催したい

 

臨時株主総会が開催される理由

定時株主総会が、ともに会社法上の決算書類である「事業報告」の報告と「計算書類」の承認を主な目的としているのに対し、臨時株主総会は、例えば合併、会社分割、定款変更といった重要事項について、“緊急に”株主の承認を得る必要がある場合に開催されます(会社法296条2項)。

このように臨時株主総会の目的は様々ですが、すべての臨時株主総会に共通しているのは、「定時株主総会まで待てない場合」に開催されるということです。もっとも、そのような事態はそうそう発生するものではありません。したがって、通常の上場会社では、定時株主総会が年に1回開催されるのに対し、臨時株主総会は「数年に1回」またはそれ以下といった頻度になります。

では、役員としては、臨時株主総会の前にどのような準備をしておく必要があるのでしょうか。以下で解説します。

臨時株主総会の基本的な手続きは定時株主総会と同じ

臨時株主総会も株主総会である以上、その手続きは、基本的な点において定時株主総会と変わるところはありません。定時株主総会との共通点は以下のとおりです。・・・

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総議決権の3%以上を半年保有する株主からの開催請求を断ることは不可

これに対し、臨時株主総会と定時株主総会で手続きが異なる点は以下のとおりです。・・・

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2014/03/07 チェックリスト:従業員にやる気を出させたい(会員限定)

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■チェックリスト:従業員にやる気を出させたい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
過度に「成果」に偏った成果主義賃金にしていないか。 成果だけでなく、それに至る「プロセス」や従業員の「能力」も含めて総合的に賃金が決定されるようにすべき。
年俸制導入の際に、成果主義・目標管理制度も併用しているか。 併用は必須ではないが、多くの上場会社で併用されている。
年俸額が前年の評価に基づき変動する場合、変動幅の上限を決めているか。
年俸制なら残業代を支払う必要がなくなると誤解していないか。 割増賃金を支払わなくてよいのは「労働基準法第 41条」に規定する労働者、具体的には管理監督者等に限られる。
裁量労働制や事業場外労働についてのみなし時間制でも、労使協定等で設定した労働時間を超えた場合には割増賃金を支払う必要がある。
「コストカット」に主眼を置いて年俸制を導入していないか。
目標管理制度を導入している場合、目標設定に際して変則的なトップダウン方式やチャレンジ加点方式を採ることの是非を検討したか。 「ボトムアップ方式」では、従業員やその直属の上司に「目標を達成できないリスク」を回避しようという気持ちが働くため、経営陣が期待した数字よりも低い目標になりがち。
目標管理制度を導入している場合、目標達成のための取組みや姿勢、それによって将来的に期待される成果など、複眼的かつ中長期的な視点による評価を実施しているか。
360度評価を導入する場合、そのデメリットも勘案のうえ、過度な活用を避けているか。 360度評価が人事評価の重要な要素として用いられるとなれば、部下に嫌われないよう部下に媚びる上司や、ライバルを陥れようとする同僚が現れるなど、本来の目的とはかけ離れた弊害が生じる可能性がある。
絶対評価と相対評価の折衷方式を採用することを検討したか。 絶対評価にも相対評価にも一長一短がある。
モラールサーベイ(従業員意識調査)を実施しているか。 従業員の意識の変化を見るためには、定期的かつ継続的な実施が望ましい。
経営陣や上司が「自分のことを必要としてくれている」「自分のことをちゃんと見ていてくれる」と感じられる組織作りを目指しているか。

ケーススタディ役員実務「従業員にやる気を出させたい(会員限定)」はこちら

2014/03/07 【人事・労務】従業員にやる気を出させたい(会員限定)

 

「自ら動きたくなる気持ち」を起こさせるには?

従業員にやる気を出させるにはどうしたらよいのか――役員であれば、誰もが一度はこのテーマに思い悩んだ経験があると思います。自己啓発書の元祖と言われる「人を動かす」の著者D・カーネギーは同書の中で、「人を動かす秘訣はこの世にただ1つしかない」と述べ、それは「自ら動きたくなる気持ちを起こさせること」であると断言しています。

では、どうすれば従業員をそのような気持ちにすることができるのでしょうか。これには、上司と部下の関係といった個別の事情も当然関係しますが、多数の従業員を抱える上場会社で、全社的に従業員のやる気をアップさせるために必ず検討しなければならないのが、賃金制度や人事制度、人事考課(評価)制度などの「人事処遇」のあり方です。なかでも、賃金制度と人事評価制度が従業員のやる気に深く関係しているのは間違いありません。

そこで、経営陣としては、どのような理念やポリシー、コンセプトをもって自社の賃金制度や人事評価制度を構築し、運用していけばよいのか、以下で詳しく解説します。

成果だけを評価しない「日本型成果主義」

2000年以降、多くの日本企業において、年功型賃金から成果主義賃金への移行が進みました。当初は“出来高制”のごとく、過度に「成果」に偏ったものが多くみられましたが、その後、日本企業の職場の実態に適したものへと修正が加えられ、成果だけでなく、それに至る「プロセス」や従業員の「能力」も含めて総合的に賃金が決定されるようになりました(ここでいう「能力」とは、従業員が備えている「所有能力」ではなく、実際の職務遂行において発揮した「顕在能力」を指します)。それは単なる成果主義ではなく、「日本型成果主義」と呼んでもよいでしょう。

成果だけでなく「能力」も含めて評価することにより、その人の能力(顕在能力)や担当業務、資格、職責、ポスト等が変わらなければ賃金も大きく変動することがなくなるため、「前年と比べて賃金が大きく下がって従業員の生活を不安定にさせかねない」という成果主義のデメリットを軽減することができます。

また、日本型成果主義では、「自己啓発や自己研さんへの意欲」といった実に“日本的”な評価ポイントも加味されます。このような日本型成果主義は、従業員のやる気アップに有効であると言えるでしょう。

年俸制の導入がやる気アップにつながらない理由とは?

成果主義賃金とともに、年功型賃金制度からの移行が進んだものとして、「年俸制」が挙げられます。実際、年俸制を導入している上場会社の多くが成果主義と併用しています。年俸制とは、従業員に支払う賃金を1年間という単位(年収単位)で決める賃金制度であり、年俸額は前年の評価に基づき変動します(ただし、変動幅の上限が決められている場合がほとんどです)。

賃金を毎年変動させることが可能な年俸制を導入することで、年功型賃金制度が生む「成果にかかわらず1年経てば定期昇給により自動的に給与が増える」といった甘い考えや、それゆえの「事無かれ主義」といった弊害をある程度払拭できますので、従業員のやる気アップへの効果が期待できます。

ただ、年俸制の導入が従業員のやる気アップにつながっていない会社も少なからずあるようです。これは何故でしょうか?実際に年俸制を導入した、あるいは導入を検討している上場会社の経営トップや役員に聞いてみると、その主な理由として「人件費を抑制するため」を挙げるケースが少なくありません。つまり、年功型賃金では賃金総額(人件費)が毎年上昇してコスト増となるため、それを抑えるために年俸制を導入した、あるいは導入したいというわけです。

また、「年俸制なら残業代を支払う必要がなくなる」と誤解している経営陣や管理職も珍しくありません。しかし、割増賃金を支払わなくてよいのは「労働基準法第41条」に規定する労働者、具体的には
(1)管理監督者(労働条件の決定や労務管理等について経営者と一体的な立場にある者。一般的には部長、工場長などが該当するが、管理監督者にふさわしい「権限」や責任を持ち、「処遇」を受けているなどの要件を満たしていることが必要)
(2)機密の事務を取り扱う者(役員秘書など)
(3)監視又は断続的労働に従事する者(例えば、プラント等における計器類の監視業務、危険又は有害な場所における業務に従事する者)
等に限られるので注意が必要です()。

 なお、裁量労働制(専門業務や企画業務従事者などについて、一定時間働いたとみなす仕組み)や事業場外労働についてのみなし時間制(在宅勤務者などについて、一定時時間働いたとみなす仕組み)でも、労使協定等で設定した労働時間を超えた場合には割増賃金を支払う必要があります。

上述のとおり年俸制は賃金決定の期間を年単位としているに過ぎず(時給が時間単位で賃金額を決定しているのと同じ理屈です)、年俸制を導入すれば人件費が抑えられるというわけではありません。確かに、年俸制のほうが賃金額を変動させることへの理解が比較的得られやすいといった面はあるものの、人件費を適切に抑制・管理したいというだけなら、年俸制の導入にこだわる必要はありません。こうした「コストカット」に主眼を置いて年俸制を導入するのであれば、従業員のやる気を高める効果は望むべくもないでしょう。経営陣として「頑張った人にきちんと報いたい」「ハイパフォーマーに対して、その成果にふさわしい処遇を与えたい」と考えるならば、適正な人事評価制度の構築・運用と、賃金等の処遇への反映が不可欠であり、そのためには、各従業員に1年の目標を設定させその達成度を評価する「目標管理制度」の導入も検討するべきです。実際、年俸制を採用している会社の多くが、目標管理制度をセットで実施しています。

ただし、目標管理制度にも留意すべき点があります。詳しくは次で解説します。

目標設定は「少し背伸びすれば達成可能なレベル」で

目標管理制度とは、会社の理念や目標を従業員に示したうえで、その達成のために従業員がすべき仕事や目標を設定し、その達成度合いを月例賃金や賞与などの処遇に反映させる仕組みです。現在、多くの会社で導入され、従業員のやる気アップに効果を発揮する一方、上手くいっていない事例も少なくありません。その原因は、当初の目標設定や、達成度合いの評価方法などにあります。

まず目標設定の問題ですが、各従業員が直属の上司と面談のうえで設定した目標値を「ボトムアップ方式」に積み上げていくと、えてして経営陣が期待した数字よりも低い目標になってしまいがちです。これは、直属の上司や従業員に「目標を達成できないリスク」を回避しようという気持ちが働くためです。

目標設定は全社的な収益予算や投資予算に影響する話ですから、たとえ目標を決めるプロセスとしてはボトムアップ方式を採用するにしても、最終的な決定権は会社にあるはずです。しかし、だからと言って会社が一方的に目標を設定すれば、従業員は目標達成へのモチベーションを失いかねません。そこで、会社が目標設定を主導しながらも、その設定プロセスに従業員を関与させることで「納得感を高める」という、変則的なトップダウン方式を採るのがよいでしょう。具体的には、「上司が個別に面談して従業員を納得させる」というステップを踏むことが望ましいと言えます。

目標設定にあたって、「チャレンジ加点」を実施している会社もあります。これは、あえて高い目標を設定した者は、その姿勢自体を評価して加点するというもので、目標を低く設定しがちになってしまうことを予防する効果が期待できます。だだし、同時に、目標を達成できないリスク(全社経営計画への影響、従業員本人の“未達成グセ”、やる気のダウン)も高まる点は覚悟しておかなければなりません。高い目標を設定するにせよ、あくまで「実現可能」な範囲でなければならないのは当然です。「少し背伸びすれば達成可能なレベルの目標」が適切と言えるでしょう。

目標を設定したら、その達成度合いをマメに確認することも重要です。目標達成度合いの評価を期末1回だけしか行わないと、「できた」か「できなかった」を判定するだけに終わってしまいかねません。したがって、できれば月ごともしくは四半期ごと、少なくとも半期が経過した時点で、設定した目標の進捗状況を従業員とともにチェックし、遅れが出ていたり問題が生じている場合には、適切な指導を行ったり、必要に応じて目標自体を再設定するべきです。

また、目先の数字ばかりでなく、目標達成のための取組みや姿勢、それによって将来的に期待される成果など、複眼的かつ中長期的な視点による評価が極めて重要です。目先の数字だけを従業員に強いれば従業員のモチベーションは低下し、目標管理制度は時間の経過とともに形骸化していくことになります。

さらに、目標が達成できなかった場合はもちろん、達成できた場合であっても、その理由を明確にしてきちんと従業員にフィードバックするとともに、社内で共有するようにしてください。それが、次期の目標設定や従業員の能力開発につながるからです。

360度評価は参考程度に

人事評価といえば、直属の上司が1次評価を、上司のさらに上長が2次評価を行うのが一般的ですが、近年は、こうしたラインの上司からだけではなく、部下や同僚、他部門の管理職や非管理職、取引先の担当者等からの評価も採り入れる「360度評価」を導入している会社もみられます。360度評価は多面評価の一種であり、複数の評価者の目を通すことで、その評価に対する客観性や公正性、納得感を高める効果が期待できます。

ただし、360度評価を人事評価、すなわち「賃金などの処遇を決める重要な要素」として過度に利用すべきではありません。あくまでも人事評価の際の「参考資料」として捉えるべきです。なぜなら、360度評価が人事評価の重要な要素として用いられるとなれば、部下に嫌われないよう部下に媚びる上司や、ライバルを陥れようとする同僚が現れるなど、本来の目的とはかけ離れた弊害が生じる可能性があるからです。そうなれば当然、社内の人間関係にも悪影響を及ぼすことになります。

とはいえ、こうした留意点をきちんと承知したうえで活用するならば、360度評価は、被評価者本人の意識改革やコミュニケーションスキルの向上、さらに従業員のやる気アップに役立つでしょう。

また、上述した目標管理制度同様、360度評価も、実施すること自体が目的ではなく、評価後のフィードバックを含めた適切な運用が重要であることを経営陣は肝に銘じておくべきです。

相対評価か絶対評価か

評価制度が従業員のやる気に影響するのは言うまでもないことですが、やる気をアップさせるために「絶対評価」が良いのか、それとも「相対評価」が良いのかについては、いまだ議論の尽きないところです。絶対評価とは、他の社員との比較を介在させることなく、あくまでその社員自身のパフォーマンスを人事評価基準に照らして評価する手法であるのに対し、相対評価とは、他の社員と比較してその社員の評価を決める手法ですが、一般的には、従業員のやる気を引き出すには絶対評価の方が望ましいと言われます。なぜなら、相対評価では、ある社員が高いパフォーマンスを残したとしても、その社員が属する相対評価のグループの他のメンバーのパフォーマンスが全体的に高ければ、思ったほど高い評価が付かないことがあるからです。これでは、頑張って高パフォーマンスを残した社員のモチベーションが下がってしまうことになりかねません。

一方、絶対評価には、評価を通じて従業員が自分に求められる役割や行動、それに対する到達度、強み・弱み等を把握し、自らの能力開発や業務遂行に活かすことができるという「人材育成・教育ツール」としての機能もあり、この点は会社にとって大きな魅力と言えます。

ただ、絶対評価を実施するために必要な評価基準を、各従業員が納得するように設定するのは容易ではありません。また、評価結果を賞与や昇給の支給額に反映させるにしても昇格や昇進の参考にするにしても、分配の原資やポストは有限であるため、実務上は「相対評価」の方が断然使いやすいのは事実です。

このように、絶対評価にも相対評価にも一長一短がありますので、両者の「折衷方式」を採用する会社が少なくありません。例えば、絶対評価(A~Cの3段階)を行ったところ80%の人がB評価になった場合、この80%の人を相対評価し、そのうち上位10%をA評価に、下位20%C評価に振り分けるような手法です。従業員のやる気を引き出すのに適している絶対評価を基本としながら、分配原資の考慮等も可能な相対評価を取り入れようというわけです。また、絶対評価と相対評価のどちらに比重を置くかは、経営方針や企業風土により異なってしかるべきです。伝統的に社内の競争が活力になってきた会社であれば、相対評価の比重を高めてもよいでしょう。

ちなみに、大阪市は平成25年度から、全職員を5段階に区分する「相対評価」を導入しています。「奮起と切磋琢磨」というキーワードを用いて、実績と意欲を上げていく取組みとのことです。また、大阪市は、本人は頑張ったのに相対評価の下では低評価となってしまう可能性があることも想定しており、これに対しては、直属上司とのきめ細かい面談によって職員の不満を防ぎ、さらに、昇給や研修内容を決めるにあたっては絶対評価的な観点も加味するものとして、相対評価制度のデメリットを縮減するとも説明しています。地方自治体の事例とはいえ、民間企業でも参考になるはずです。

モラールサーベイで従業員の意識の把握を

従業員のやる気アップ策を検討したり、また、導入した策が有効に機能しているかどうかを検証するためには、「モラールサーベイ」(従業員意識調査)を実施するとよいでしょう。モラールサーベイは、従業員の意識をアンケート形式で調査して、主に人事・労務管理上の問題点を抽出することを目的としており、従業員の不満の把握とそのはけ口(ガス抜き)としても有効ですし、また、経営への参画意識の高揚も期待できます。

モラールサーベイ自体は高度な専門技術を要するものではありませんので、従業員の意識の変化を見るには、定期的かつ継続的な実施が望ましいと言えます。また、従業員の本音をより正確に探るために、外部委託という選択肢もあり得ます。その場合には、業者任せになることのないよう、担当役員と人事担当者がしっかりと関与しなければならないことは言うまでもありません。

「自分を見てくれている」と感じることが部下のモチベーションに

ここまで、賃金制度と人事評価を中心に、従業員のやる気を出させるにはどうしたらよいか、どういう点に注意したらよいかを解説してきましたが、いくら練りに練って評価制度を構築して導入し、きちんと賃金等の処遇に反映したとしても、期待したような結果が必ずしも得られるとは限りません。なぜなら、制度はあくまでも「ツール」に過ぎず、結局は従業員の「心」に響かなければ、冒頭に引用したD・カーネギーの言葉のように「自ら動きたくなるような気持ち」にはならないからです。いくら優れた制度を作ったところで、そこに経営陣や上司である管理職の思いや気持ちが伴わなければ、まさに「仏作って魂入れず」ということになってしまいます。

経営陣や上司が「自分のことを必要としてくれている」「自分のことをちゃんと見ていてくれる」と感じられるだけでも、従業員のやる気・目の輝きは変わります。ある会社では、部下がとった行動や成果、課題などを書き込む「評価育成手帳」を使って、評価面談で部下を指導しています。手帳に書かれた具体的な事案や内容を部下に伝えながら、評価や今後の成長に向けたアドバイスを行なうことで、「自分のことをきちんと見てくれていた」と、部下のモチベーションが大きく上がっているそうです。

経営陣や上司が「いつも気にかけてくれている」「自分の話をきちんと聞いてくれる」「適正に評価してくれている」と感じれば、従業員はやる気や働きがいを持って仕事に懸命に取り組んでくれるでしょう。そして、従業員の頑張りを経営陣・管理職が適正に評価して賃金等の処遇に反映し、それによってさらにやる気になった従業員が会社に貢献してくれる――このような良好なサイクルを形成し、しっかりと循環させていくことが、「従業員のやる気」を継続して引き出していく最良の方策であり、もっとも重要な経営資源である「ヒト」を活用するための経営上の秘訣と言えるでしょう。

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本ケーススタディを最後まで閲覧した方は、知識の定着度を確認するため、下の右側のボタンを押してミニテストを受けてください(ミニテストを受けない限り、本ケーススタディの閲覧履歴は記録されません)。
また、本ケーススタディを閲覧して感じたことや気付いた点(学んだ点、疑問点、自社の課題など)を、備忘録として登録しておくことができます。登録を行う場合には、下の左側の「所感登録画面へ」ボタンを押し、登録画面に進んでください。過去に登録した内容を修正する場合も、同じ操作を行ってください。

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2014/03/07 コーポレートガバナンスに関するグローバル機関投資家の注目点は?

 近年、コーポレートガバナンスに対する株主の視線は益々厳しくなっているが、なかでも、上場会社にとって気になるのは、コーポレートガバナンスに高い関心を持つ“グローバル機関投資家”の目だろう。

 こうしたグローバル投資家の関心事項を知る機会となったのが、グローバル機関投資家が集まるコーポレートガバナンスの世界的組織、国際コーポレートガバナンス・ネットワーク(International Corporate Governance Network、以下ICGN)が日本で13年ぶりに開催したカンファレンスだ(2014年3月3日、東京都中央区のロイヤルパークホテルで開催)。

 ICGN は1995年の設立された非営利団体で、機関投資家を中心に会員数は約600にのぼる。CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)、CalSTRS(カリフォルニア州教職員退職年金基金)、ブラックロック、フィデリティなど、著名なグローバル投資家も多く参加しており、それらによる総運用資産額は18兆ドルを超えるという。

 カンファレンスの各セッションのテーマとポイントをレポートする。

【セッション1:コーポレートガバナンス改革と日本再興】
 最近東証が主導した取り組みとして、(1)JPX日経インデックス400、(2)上場会社企業価値向上表彰、(3)有価証券上場規程の一部改正、の3つが説明された。(1)と(2)は上場会社にROE重視の経営を、(3)は社外取締役の設置を誘導することが目的。パネラーであるジェイミー・アレンACGA(アジア・コーポレートガバナンス・アソシエーション)事務局長は、各取り組みを高く評価しつつ、上場会社が遵守すべきコーポレートガバナンス・コードを制定する必要性を提起した。

【セッション2:投資家のスチュワードシップ・コード】
 金融庁が先月2月26日に公表した「責任ある機関投資家の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)」が実効性を持つか占うため、モデルとなった英国スチュワードシップ・コードの運用状況が討議された。「遵守か説明か(comply or explain=ルールに従え。従わないなら、その理由を説明せよ)」のアプローチによるため、英国でも同コード遵守の程度には差があること、積極的に遵守するのは運用受託に際する差別化を狙った運用機関が中心であること、などが報告された。

【セッション3:企業のESGに関する報告】
 ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が世界の潮流となっており、コミュニケーション・ツールとして統合報告書に期待が高まっている。企業側の取り組みとしてオムロンから、投資家との対話が促進されたのみならず、社内における経営理念の理解度が高まったことが報告された。投資家側の意見としてCalPERSから、ESGのEは「生産資本」、Sは「人的資本」と捉えるべきで、関係者の間で未だに混乱が見られる点について懸念が示された。

【セッション4:アジアにおける独立社外取締役】
 社外取締役を核とするコーポレートガバナンスがグローバルスタンダード化する中、アジア諸国ではどのような問題点が存するかが報告された。シンガポールでは同族企業が多く、機関投資家を敵視する経営者が多いため、社外取締役は辞める覚悟で株主に尽くす必要があると指摘された。ミャンマーでは関連当事者間取引なしではビジネスが成り立たないため、利益相反のチェックが極めて重要な実態が伝えられた。

【セッション5:自国と世界の投資家のより良い協力関係】
 複数の機関投資家が協調して企業に働きかける、いわゆる「集団的エンゲージメント」について、英米で行われている実態と日本における可能性が討議された。米国では共同保有と見なされて開示が加重される(日本の金融商品取引法でも、「他の投資家」と共同して株主としての議決権等を行使することに合意している場合には、「共同保有者」として、他の投資家の保有分も勘案しながら大量保有報告書や変更報告書を提出する必要がある)ことを懸念する投資家が存在する一方、英国では「思慮深く、適切に行えば」問題はないと、それぞれの投資家から報告された。日本においては“公的”に実施すると反発が大きく、効果が望めないとの意見が出た。

 以上から推察すると、グローバル機関投資家のコーポレートガバナンスにかかわる当面の注目点は、「統合報告書」と「集団的エンゲージメント」に集約されると言えそうだ。上場会社の役員としては、この2つのキーワードに引き続き注目しておくべきだろう。