2024/04/09 賃金水準が上昇基調にある状況で企業がとるべきアクション

2023年の賃上げはおよそ30年ぶりの高水準だったとされており、政府は「2024年度の賃金上昇率は、2023年度を上回る」と見込んでいる(「令和6年度政府経済見通しの概要」参照)。実際、2024年に入ってから大幅な賃上げを打ち出す企業が相次いでいる。今後の焦点は“継続的な賃上げ”の実現にあるが、現在の状況から判断する限り、日本企業における賃金水準(以下、適宜「処遇水準」という)は上昇フェーズに向かう機運が確実に高まっていると言えるだろう。そこで本稿では、これまで固定的に推移してきた従業員の賃金水準が今後本格的な上昇フェーズに入った場合、企業にはどのような対応が求められるか、整理しておきたい。・・・

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2024/04/08 「上場子会社を有する意義」の開示、投資家からは“ボイラープレート的”との指摘も

2024年4月4日のニュース「グループ経営に関する情報開示のポイント」でお伝えしたとおり、東証は親子関係や持分法適用関係にある上場会社に対して「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」を求め、昨年(2023年)12月にコーポレートガバナンス報告書の記載要綱を改訂したが、その中で、上場子会社を保有している上場会社において「必要」とされる開示事項の一つに「上場子会社を有する意義」が挙げられている(別添3【少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示】参照)。これは、上場会社の少数株主である投資家にとって「上場子会社」は利益相反リスクを内包する存在であるにもかかわらず、・・・


持分法 : 持分法とは、投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法をいう。一行連結とも言われる。持分法は非連結子会社や関連会社に対して適用される。また、関連会社の判定は、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができるかどうか(影響力基準)という観点から行われる。なお、関連会社であっても、持分法の適用により、連結財務諸表に重要な影響を与えない場合には、持分法の適用会社としないことができる。よって、持分法適用関連会社とは、持分法を適用する関連会社を指す。

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2024/04/08 「上場子会社を有する意義」の開示、投資家からは“ボイラープレート的”との指摘も(会員限定)

2024年4月4日のニュース「グループ経営に関する情報開示のポイント」でお伝えしたとおり、東証は親子関係や持分法適用関係にある上場会社に対して「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」を求め、昨年(2023年)12月にコーポレートガバナンス報告書の記載要綱を改訂したが、その中で、上場子会社を保有している上場会社において「必要」とされる開示事項の一つに「上場子会社を有する意義」が挙げられている(別添3【少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示】参照)。これは、上場会社の少数株主である投資家にとって「上場子会社」は利益相反リスクを内包する存在であるにもかかわらず、「上場子会社」である意義が本当にあるのか疑わしいということが背景にある。「上場子会社を有する意義」は、通り一遍の説明では記載要綱を改訂した趣旨や投資家目線に応じたものとはならないだけに、開示内容については慎重な検討が求められる。


持分法 : 持分法とは、投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法をいう。一行連結とも言われる。持分法は非連結子会社や関連会社に対して適用される。また、関連会社の判定は、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができるかどうか(影響力基準)という観点から行われる。なお、関連会社であっても、持分法の適用により、連結財務諸表に重要な影響を与えない場合には、持分法の適用会社としないことができる。よって、持分法適用関連会社とは、持分法を適用する関連会社を指す。

東証は上記記載要領の改訂に際し、同じ内容の要請を上場会社に通達しており、併せて「少数株主保護及びグループ経営に関する開示例」を公表している。「上場子会社を有する意義」についても好事例と目される開示例が一部紹介されており、開示内容を検討する際には大いに参考となろう。下表は「上場子会社を有する意義」の開示例を当フォーラムが抽出したものである。

親会社 子会社 上場子会社を有する意義
富士通 新光電気工業 ● 資本市場からの直接⾦融による資本調達能⼒の保持、及び同社社員のモチベーションの維持と向上
● 優秀な⼈材の採⽤等の観点から持続可能な成⻑や事業価値向上の実現の可能性を高めることができる
● そのことが当社グループ全体ではなく、特定事業に限定された投資機会の提供につながる
B.FDK
日本電気 NECネッツエスアイ ● 同社が新たなソリューションの開発や顧客の開拓等に経営資源を投資することにより事業を拡⼤し、当社との連携によるシナジーを向上していくためには、機動的かつ柔軟で独⽴した意思決定⼿段や独⽴した資⾦調達⼿段を持つことが望ましい
● 上場の維持が同社社員のモチベーション維持・向上および優秀な人材の採用に資する
日本航空電子工業 ● 同社の事業体制には、⾃主性・独⽴性の維持と資本市場からの資⾦調達⼿段の確保が望ましい
● 上場の維持が同社のグローバル顧客基盤の維持および同社社員のモチベーション維持・向上ならびに優秀な人材の採用に資する
帝人 インフォコム ● 当社グループのIT事業におけるイノベーションの創出には、迅速な意思決定と資源投⼊の実⾏が特に重要
● IT業界での社会的信用度・認知度の向上が優秀な人財の確保につながる
J-TEC ● 完全子会社としなくとも、双方が有する技術やノウハウの共有及び経営資源の相互補完・有効利用が可能であり、強固な協働を通して、両社のシナジーを発揮することができる
● 現在の企業⽂化や経営の⾃主性を維持することが同社の企業価値向上に資する

総じて、①独自の資金調達手段の確保、②優秀な人材の獲得、③子会社の自主性の尊重、が「上場子会社を有する意義」として説明されている。むしろパターン化されているとさえ言え、親子上場に批判的な投資家からは、ボイラープレート的対応との指摘も聞かれる。少なくとも、①~③のメリットが真に重要であるなら完全にスピンオフしたうえで資本を伴わない業務提携で十分と考える投資家にとっては、「上場子会社を有する意義」として満足のいく説明とはならないだろう。


ボイラープレート : ひな形的な決まり文句のこと。
スピンオフ : 企業や組織の一部を分離し、別個の独立した企業や組織とすること。

ここで重要なのは、「上場子会社を有する意義」は「コーポレートガバナンスに関する報告書」上の開示事項だということだ。この点を踏まえれば、親会社のコーポレートガバナンスを担う「取締役会」が、投資家目線で「上場子会社を有する意義」を毎年検証・確認していることを説明すべきだろう。東証の開示例では、以下の事例が紹介されている。上場子会社を持つ会社には、親子上場は典型的なコーポレートガバナンスの問題であることを認識するとともに、説得力のある開示が期待されよう。

富士通 今後、当社グループはテクノロジーソリューションに経営資源を集中し、さらにDX企業へと変革していきます。ノンコアビジネスの上場子会社は、強い独⽴ビジネスとして独⽴させる方針です。各上場子会社の上場維持に関する具体的検討内容は取締役会で検証して参ります。
JFEホールディングス 当社は、上場子会社の上場意義の検証を定期的に実施し、取締 役会で確認したうえで必要な対応をとることとしています。本内容については、2023年5月に開催された取締役会において検証・議論したものであります。
東祥 当社はグループ全体としての企業価値向上や資本効率性の観点から上場子会社として維持することが最適であるか定期的にモニタリングすることも必要であると考えており、合理性やガバナンス体制の実効性確保等の観点から必要に応じて取締役会等で審議し、情報開⽰等を通じて⼗分な説明責任を果たすことが重要であると認識しております。

2024/04/05 定額減税の開始前に企業がするべきこと

女性活躍の進展とともに共働き世帯が急増しているが、こうした中、企業において注意を要することになりそうなのが、・・・

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2024/04/05 定額減税の開始前に企業がするべきこと(会員限定)

女性活躍の進展とともに共働き世帯が急増しているが、こうした中、企業において注意を要することになりそうなのが、2024年6月以降に支払う給与から適用される定額減税への対応だ。

周知のとおり、定額減税とは、岸田政権が物価高対策として打ち出した所得税・個人住民税の減税措置であり(平成6年分の所得金額が1,805万円以下の人が対象)、減税額は1人にあたり所得税3万円、住民税1万円とされている。例えば、会社員の夫、専業主婦の妻、子供が2人いる家庭の場合、2024年は合計で16万円(4万円×4人)、税金が減ることになる。ただ、役所がこれまでしばしばモデルに使ってきた「会社員の夫、専業主婦、子供2人」という家庭はいまや少数派となっており、妻もフルタイムで働いているケースが多い。この場合、妻は夫の定額減税の対象から外れ、独自に定額減税を受けることになる。

こうした共働き世帯の定額減税においてミスの多発が今から懸念されているのが、夫と妻が別々の企業に勤務しており、それぞれが子供の減税分をそれぞれの勤務する企業に申請してしまうというケースだ。この場合、各社は社員の配偶者が提出した申請書類を確認しようがないため、子供の減税分の“二重取り”が起こり得る。特に今回の定額減税は「16 歳未満」の子供も対象としており(所得税法では「16歳以上30歳未満」の子供を対象としている)、「子供」の範囲が広いため、このようなミスが起こりやすい。

国税庁パンフレット「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」には、「同一の人を控除対象扶養親族や16 歳未満の扶養親族としてそれぞれの扶養控除等申告書に記載している場合には、その両者が重複して定額減税を受けることはできませんので、重複して定額減税を受けることのないよう控除対象者に周知してください。」と小さい文字で記載されているが(4ページの一番下の注書き参照)、これだけで十分な注意喚起になっているとは言えないだろう。

仮に子供に対する定額減税が二重に申請されていることが企業への税務調査で判明した場合、国税当局としては夫婦どちらかが勤める企業に、定額減税分の控除が過大であるとして源泉徴収漏れを指摘し、企業に修正を求めるというのが基本的なスタンスとなると思われる。万が一多額の源泉徴収漏れが指摘されることになれば、源泉徴収義務者である企業としての姿勢を問われることにもなりかねず、それがメディア等で報道されればレピュテーションリスクも生じる。税法上の源泉徴収義務者である企業としては、“二重取り”(その結果としての源泉徴収漏れ)が発生しないよう、今のうちから社員への周知を徹底しておきたいところだ。

2024/04/04 グループ経営に関する情報開示のポイント

東証は2023年12月にコーポレートガバナンス報告書の記載要領を改訂し、上場会社に「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」を求めたところだ。対象は「親子関係にある上場会社や 持分法 適用関係にある上場会社」であり、コーポレートガバナンス報告書の「■5.その他コーポレートガバナンスに重要な影響を与えうる特別な事情」などにおける記載の充実が期待されている。

持分法 : 持分法とは、投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法をいう。一行連結とも言われる。持分法は非連結子会社や関連会社に対して適用される。また、関連会社の判定は、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができるかどうか(影響力基準)という観点から行われる。なお、関連会社であっても、持分法の適用により、連結財務諸表に重要な影響を与えない場合には、持分法の適用会社としないことができる。よって、持分法適用関連会社とは、持分法を適用する関連会社を指す。

具体的な開示項目は「別添3【少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示】」で詳細に説明されている。「上場子会社または親会社を有する場合」は記載が必須、「上場関連会社を有する場合」「その他の関係会社を有する場合」(持分法適用関係)は記載が任意となっている。「上場子会社または親会社を有する場合」について、別添3で示された開示項目および記載上のポイント(当フォーラムが要約)は下表のとおり。・・・

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2024/04/04 グループ経営に関する情報開示のポイント(会員限定)

東証は2023年12月にコーポレートガバナンス報告書の記載要領を改訂し、上場会社に「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」を求めたところだ。対象は「親子関係にある上場会社や持分法適用関係にある上場会社」であり、コーポレートガバナンス報告書の「■5.その他コーポレートガバナンスに重要な影響を与えうる特別な事情」などにおける記載の充実が期待されている。

持分法 : 持分法とは、投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法をいう。一行連結とも言われる。持分法は非連結子会社や関連会社に対して適用される。また、関連会社の判定は、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができるかどうか(影響力基準)という観点から行われる。なお、関連会社であっても、持分法の適用により、連結財務諸表に重要な影響を与えない場合には、持分法の適用会社としないことができる。よって、持分法適用関連会社とは、持分法を適用する関連会社を指す。

具体的な開示項目は「別添3【少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示】」で詳細に説明されている。「上場子会社または親会社を有する場合」は記載が必須、「上場関連会社を有する場合」「その他の関係会社を有する場合」(持分法適用関係)は記載が任意となっている。「上場子会社または親会社を有する場合」について、別添3で示された開示項目および記載上のポイント(当フォーラムが要約)は下表のとおり。
72793a
72793b
なお、記載が任意とされている「上場関連会社を有する場合」「その他の関係会社を有する場合」(持分法適用関係)であっても、上場関連会社やその他の関係会社がグループ経営の対象か否かによって、開示対応が異なる。対象であれば親子関係に準じた開示が、対象でなければ利益相反リスクが少ないこと(議決権の影響力が限定的なこと、意思決定プロセスへの関与が小さいこと、人的関係や取引関係がないことなど)を説明することが望ましいとされる。

東証によると、2023年11月の時点で親会社を有する上場会社は約310社、その他の関係会社を有する上場会社は約630社が存在しているという。少数株主である投資家の視線は、親子関係、持分法適用関係いずれに対して厳しいものであることに変わりはない。該当する上場会社には、自社のグループ経営に信認を得るべく、丁寧な情報開示が求められよう。

2024/04/03 女性社内取締役を確保するための人的資本戦略

議決権行使助言会社や運用機関が設定している取締役選任議案に関する議決権行使(助言)基準では、女性(もしくは多様なジェンダー。以下同)の取締役を求めることは今や当然となっている。下表に示した例のとおり、取締役会に占める女性取締役の閾値は1~2名や10%、対象は取締役または監査役を含む役員、基準の適用範囲はプライム市場から全市場まで様々だが、早晩、「全上場企業」について女性取締役が「複数」または「10%」という基準に収斂することが予想される。

議決権行使助言会社/運用機関
議決権行使(助言)基準
ISS 下記のいずれかに該当する場合、原則として反対を推奨する。
・株主総会後の取締役会に女性取締役が1人もいない場合
グラスルイス プライム市場上場企業の取締役会には、最低でも10%以上の多様な性別の取締役を求める。プライム市場以外に上場している企業については、取締役会と監査役会を合わせて、多様な性別の役員を最低1名求める。
ブラックロック TOPIX100を構成する企業については、女性の取締役もしくは監査役2名以上、TOPIX Mid400 を構成する企業については、女性の取締役もしくは監査役1名以上の選任を求める。
野村アセットマネジメント 以下のいずれかに該当する場合、会長・社長等の取締役再任に原則として反対する。
・女性の取締役がいない場合。
三井住友トラストアセットマネジメント 女性取締役が不在の場合、取締役選任に反対(対象はプライム市場上場企業)

さらに上場企業には、グローバル水準である「女性取締役が30%」まで視野に入れるべき時期が迫っている。取締役会の平均的な規模が10人強であることを勘案すると、人数としては4人の女性取締役が必要という計算になる。また、現状、多くの企業の女性取締役は社外からの選任が中心だが、女性取締役が4人となれば社内からの登用が伴わなければ、30%という水準の達成は難しくなることが考えられる。

そこで当フォーラムでは、2023年10月の定期選定時におけるTOPIX100採用企業(東芝の上場廃止があり99社)をサンプルに、有価証券報告書の「役員の状況」における開示をベースとして、社内・社外の別を含む女性取締役の選任状況を調査した。・・・

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2024/04/03 女性社内取締役を確保するための人的資本戦略(会員限定)

議決権行使助言会社や運用機関が設定している取締役選任議案に関する議決権行使(助言)基準では、女性(もしくは多様なジェンダー。以下同)の取締役を求めることは今や当然となっている。下表に示した例のとおり、取締役会に占める女性取締役の閾値は1~2名や10%、対象は取締役または監査役を含む役員、基準の適用範囲はプライム市場から全市場まで様々だが、早晩、「全上場企業」について女性取締役が「複数」または「10%」という基準に収斂することが予想される。

議決権行使助言会社/運用機関
議決権行使(助言)基準
ISS 下記のいずれかに該当する場合、原則として反対を推奨する。
・株主総会後の取締役会に女性取締役が1人もいない場合
グラスルイス プライム市場上場企業の取締役会には、最低でも10%以上の多様な性別の取締役を求める。プライム市場以外に上場している企業については、取締役会と監査役会を合わせて、多様な性別の役員を最低1名求める。
ブラックロック TOPIX100を構成する企業については、女性の取締役もしくは監査役2名以上、TOPIX Mid400 を構成する企業については、女性の取締役もしくは監査役1名以上の選任を求める。
野村アセットマネジメント 以下のいずれかに該当する場合、会長・社長等の取締役再任に原則として反対する。
・女性の取締役がいない場合。
三井住友トラストアセットマネジメント 女性取締役が不在の場合、取締役選任に反対(対象はプライム市場上場企業)

さらに上場企業には、グローバル水準である「女性取締役が30%」まで視野に入れるべき時期が迫っている。取締役会の平均的な規模が10人強であることを勘案すると、人数としては4人の女性取締役が必要という計算になる。また、現状、多くの企業の女性取締役は社外からの選任が中心だが、女性取締役が4人となれば社内からの登用が伴わなければ、30%という水準の達成は難しくなることが考えられる。

そこで当フォーラムでは、2023年10月の定期選定時におけるTOPIX100採用企業(東芝の上場廃止があり99社)をサンプルに、有価証券報告書の「役員の状況」における開示をベースとして、社内・社外の別を含む女性取締役の選任状況を調査した。99社のうち女性取締役を選任しているのは98社とほぼ全てであるのに対して、社内取締役として女性がいるのは20社と約5分の1程度にとどまった。なお、98社全てが女性の社外取締役を選任している(社内の女性取締役だけがいる企業はゼロ)。

*選任された人数/選任した社数
社数 人数 1社当たり* 最大値
女性取締役 98社 203名 2.07名 5名
うち社内 19社 20名 1.05名 2名
うち社外 98社 183名 1.87名 5名

女性の社内取締役を選任している企業でも1社当たりの人数は約1名にとどまっており、複数の選任は難しい現状が見て取れる。2名選任しているのは大塚ホールディングスのみで、2名のうち1名は現CFO、もう1名は米国法人の元CEOとなっている。現CEOは大塚製薬を一旦は退社して外資系会計事務所に移籍した後に復帰し、米国法人の元CEOは外資系の金融機関やコンサルティング会社などを経て同社に入社しており、人材の流動性を活用した形となっている。女性社内取締役の確保には、社内での人材育成にこだわらない幅広な人的資本戦略を視野に入れる必要があろう。

最も女性取締役が多いのはニデックと日本郵政の5名だが、いずれも全てが社外取締役となっている。4名の会社は4社あるが、社内取締役が含まれているのはエムスリーのみで、人数は1名となっている。この1名は、リクルートでキャリアをスタートさせ、その後は複数の企業で経営トップを務めてきた“プロ経営者”であり、同社の子会社社長として招聘されたという経緯がある。やはり生え抜きではない点、女性の社内取締役がいない企業にとっては示唆に富んでいると言えそうだ。

社内・社外を含めて女性取締役がゼロの1社はキヤノンであり、昨年3月の株主総会ではこのことが主因で代表取締役CEOの選任議案に多くの反対票が投じられ、賛成率は50.59%と薄氷を踏むような再任となった。今年も同様の取締役会構成であれば否決が濃厚であったところ、3月28日に開催予定の株主総会においては、新任の社外取締役として女性1名(元官僚)が候補者となっている。取締役候補者10人中の1人と、10%基準もクリアできることから、今回に株主総会では、少なくともジェンダー基準の観点からCEOの再任が問題になることはないだろう。

2024/04/02 マイナス金利解除による資本コストへの影響

ついに日銀がマイナス金利を解除し、金利が正常化に向かう。上場企業の経営陣にとって、これが企業経営および株価にどのような影響を与えるのかは大きな関心事であろう。金利の正常化はマクロ環境等に様々な変化を与えるのは間違いないが、もう一つ考えられるのが「資本コスト」への影響だ。


資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。

金利がつくことによって、企業では現金預金等の受取利息が増加するとともに、借入金等の支払利息も増加する。通常、企業の借入金等の有利子負債は現金預金よりも大きいため、ネットでは当期利益の減少につながる。また、資本コストも上昇する。資本コストは、株主資本コストと債権者資本コストに分けられるが、金利の上昇によって、このうち債権者資本コストが上昇するからだ。その結果、株主資本コストと債権者資本コストの加重平均である加重平均資本コストも上昇し、企業価値および株価は下落することになる。

以上を踏まえると、今回のマイナス金利解除は上場企業にとってマイナスに働くように見えるが、実はそうとも言えない。特に資本コストの上昇は、大きなプラス効果もあると考えられる。

周知のとおり、東証や投資家から上場企業に対して、資本コストを意識した経営が求められているが、経営者が本当に資本コストを意識しているのか疑念を抱く投資家は少なくない。そもそも株主資本コストは・・・

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