2024/03/05 経営トップの不祥事公表に物言う株主の影(会員限定)

上場会社で従業員による不正な経費精算が発覚しても、それが全て外部に公表されるとは限らない。不正金額が僅少であれば社内ルールに則って淡々と処分されるだけであり、利益にさほど影響がない事案まで逐一外部に公表することはないのが通常だ。しかし、経営トップによる不正経費精算となると話は変わってくる。株主目線からすれば、経営トップの不祥事は経営トップの資質を判断するためにすべて公表して欲しいと考えるのが当然だからだ。もっとも、経営トップによる経費の不適切利用だからといって、その内容や金額にかかわらずすべて公表しなければならないという開示ルールは存在しない。公表・非公表の線引きは悪質さの程度や金額的重要性などに応じて会社ごとの判断に委ねられているのが実状だが、不正に該当するかどうかの判断が難しかったり、金額が僅少であったり、あるいは返金されたことを理由に公表しないという苦渋の判断をした上場会社も少なくないものと思われる。

こうした中、自社の社長による不正の公表に踏み切ったのが、東証プライム市場に上場しているセプテーニ・ホールディングス(以下、セプテーニHD)だ(同社の2024年2月15日のリリースはこちら)。

同社のリリースによると、セプテーニHDの佐藤代表取締役は、私的利用したハイヤー代等の旅費交通費を会社経費に付け替えていた。2023年6月に同社社取締役の指摘に基づき同社監査役会が調査を行った結果、不適切利用された費用は約2,200万円に上ることが判明。セプテーニHDでは、2023年9月に同社監査役会による調査結果の報告を受け、佐藤氏を出席させずに取締役会を開催し、同氏に対する処分を協議した結果、佐藤氏に自主返納を勧告することになった。これを受け、佐藤氏は全額を返納している。

ここで疑問となるのが同社のリリースの遅れだ。同社は2024年2月15日のリリースで、「再発防止策の内容について検討を進め、2023年12月期中に運用を開始し、これらの施策が有効に機能していることを2023年12月期末にて確認できたことから、本日お知らせするに至りました。」としているが、本来であれば、不祥事発覚と再発防止策の実施は別々のリリースにすべきであり、不祥事発覚については、遅くとも取締役会が返納勧告をした時点(2023年9月)ではリリースされるのが常識的と言える。そもそも、再発防止策が機能していることを確認するまでは不祥事をリリースしてはならないなどというルールは存在しないうえ、仮に同社の説明どおり、再発防止策が機能していることを確認してからリリースするとしても、2023年12月末か1月上旬にはリリースがあってしかるべきだろう。

それにもかかわらず公表が2月25日まで遅れた点に不自然さは否めない。場合によっては、セプテーニHDは当初非公表で済ませようとしたが、非公表であることのデメリットが顕在化したため、開示を迫られたのではないかという疑念も生じる。一般的には「マスコミが嗅ぎつけ取材を受けたことから急遽開示することにした」といった理由が少なくないが、同社の場合、1月4日に公表した「主要株主の異動に関するお知らせ」との関係が気になるところだ。

これによると、オアシス マネジメント カンパニー リミテッド(以下、オアシス)が2023年末に同社の株式を10%取得している。オアシスは“物言う株主”として知られており、最近ではフジテック会長との苛烈な攻防戦を展開した(2023年6月21日のニュース「フジテック株主総会、怒声が飛び交う長丁場に 元会長側の株主提案はすべて否決」、2022年7月1日のニュース「創業家社長、アクティビストへの対応が後手に回り社長の座を失う」など参照)。それだけに、資本市場関係者の間では、「オアシスの登場により、セプテーニHDは社長の不祥事の非開示方針を転換したのではないか」との憶測も聞かれる。開示の遅れは、真偽はともかくとしてこのように様々な思惑を呼ぶ。セプテーニHDの一件は、迅速な開示の重要性を改めて認識させられる事例と言えるだろう。

セプテーニHDの佐藤代表取締役は来月(2024年3月)27日に開催予定の定時株主総会でセプテーニHDの代表取締役および取締役を退任する予定であり、退任理由について同社は既に2023年12月11日のリリースで「集団指導体制への移行が目的」と説明している。また、本件不祥事のリリースでは、佐藤代表取締役の退任と同氏の不祥事との間に関連性はないと明言している。これらのリリースからは、一見、不祥事発覚が退任予定公表後であるかのように見えるが、上記のとおり、そもそも経費の不適切利用を取締役が指摘したのは12月11日の退任のリリースの半年前(2023年6月)であり、そこから監査役会の調査により全貌が明らかになったのが2023年9月であることを踏まえると、退任に先駆けて開催された同社の指名・報酬諮問委員会において、不祥事の内容が一切議論されていないとは考えにくい。

フジテックの株主総会では、会長側から「寝返った」「手のひら返し」「社外取締役の職責を果たしていない」と批判を受け続けた神戸大学大学院経営学研究科教授の三品和広社外取締役が長時間の沈黙を破り詳細に反駁したほか(2023年6月21日のニュース「フジテック株主総会、怒声が飛び交う長丁場に 元会長側の株主提案はすべて否決」参照)、証券取引等監視委員会委員を務めた経歴を有する引頭麻美社外取締役がオアシス提案の解任決議前に急遽辞任する(2023年3月1日のニュース「フジテックで社外取解任、アクティビストとの闘争の行方の鍵を握る第三者委員会」参照)といった社外取締役による有言無言のアクションがあった。セプテーニHDの社外取締役には早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏や丸井グループやマネーフォワード等の社外取締役も務める岡島悦子氏などが就任している。セプテーニHDの社外取締役が今後のオアシスの動きにどう対応するのか、注目される。

2024/03/04 【特集】~将来的には再度改訂議論の俎上に載せられる可能性~ 削除された英国コーポレートガバナンス・コード改訂案の全容(6・会員限定)

セクション 5 – 報酬

役員報酬に対する報酬委員会の承認、年次報告書における報酬委員会の活動報告に関する追加事項(人的資本に対する投資と報酬の考え方、従業員との対話結果など)が削除された。これも報酬委員会に過大な負担を強いると判断されたことによるものと言える。

2023/5/23改訂案 2024/1/22確定版
● (取締役会でなく)報酬委員会は、企業と個人の業績、従業員の給与と条件などを考慮し、独立した判断と裁量によって報酬を承認する (削除)
● 報酬ポリシーは明確かつリスクが特定・軽減され、成果と比例し、業績悪化時に有利なものとならないように設計する (削除)
● 報酬委員会は年次報告書において、人的資本に対する投資と報酬の考え方を説明する (削除)
● 取締役報酬の契約文書にはマルス・クローバック条項を含める ● 取締役報酬の契約文書にはマルス・クローバック条項を含める
● 報酬報告書においてマルス・クローバック条項の以下の内容を盛り込む
・ 適用される条件
・ 対象期間および同期間が適切な理由
・ 対象事業年度の適用状況
・ 過去5年間の適用状況
● 報酬報告書においてマルス・クローバック条項の以下の内容を盛り込む
・ 適用される条件
・ 対象期間および同期間が適切な理由
・ 対象事業年度の適用状況
● 以下の報酬委員会の活動を、年次報告書で説明する
・ 執行役の報酬と企業戦略やESG目標の実現に対する貢献度の関係
・ (株主だけでなく)従業員との対話が報酬に及ぼした影響
(削除)

以上のように、全体として取締役会および指名・報酬・監査委員会の責務および説明責任が、当初改訂案と比べて相当緩和されたが、今回削除された内容も将来的には再度、改訂議論の俎上に載る可能性はあるだろう。一方で、改訂案通りとなったリスク管理に対する取締役会の責任、マルス・クローバック条項の導入などはグローバルなガバナンス論議において、もはや待ったなしのホットイシューとして認識すべきと言えよう。

2024/03/04 【特集】~将来的には再度改訂議論の俎上に載せられる可能性~ 削除された英国コーポレートガバナンス・コード改訂案の全容(5・会員限定)

セクション 4 – 監査、リスク、内部統制

監査委員会に追加されることが予定されていた役割・権限(非財務情報(narrative reporting)のレビュー、監査・保証ポリシーの策定、株主との対話など)、および年次説明書での説明事項(非財務情報についての検討事項、同情報の開示の保証など)が削除された。やはり監査委員会に過大な負担を強いると判断されたことによるものだろう。

2023/5/23改訂案 2024/1/22確定版
● 取締役会は、効果的なリスク管理および内部統制の枠組みを確立し、維持する ● 取締役会は、効果的なリスク管理および内部統制の枠組みを確立し、維持する
● 監査委員会の役割と責任には以下が含まれる
・ 持続可能性を含む非財務情報の完全性の監視、重要情報のレビュー
・ 監査・保証ポリシーの策定、運用、維持
・ 監査委員会の役割、外部監査人の業務範囲、監査・保証方針の考え方について株主など利害関係者と対話する
・ 監査委員会および外部監査に関する最低基準に従う
・ 外部監査人の選任において競争を促進する
・ 外部監査人の非監査サービスに関する方針を策定・運用し、必要な改善措置を取締役会に報告する
● 監査委員会の役割と責任には以下が含まれる
・ 監査委員会および外部監査に関する最低基準に従う
● 以下の監査委員会の活動を、年次報告書で説明する
・ 監査委員会および外部監査に関する最低基準に定められた事項
・ 持続可能性を含む非財務情報の重要な検討事項およびその対応
・ ESG指標その他の持続可能性に関する事項の保証(取締役会から委託された場合)
・ 3 年の1度の監査・保証方針および毎年の実施報告書を作成するための考え方
● 以下の監査委員会の活動を、年次報告書で説明する
・ 監査委員会および外部監査に関する最低基準に定められた事項
● 取締役会は、新たなリスクを特定し管理する仕組みを、特定したリスクとともに年次報告書で説明する ● 取締役会は、新たなリスクを特定し管理する仕組みを説明する
● 取締役会は年次報告書において以下を説明する
・ リスク管理および内部統制システムが有効であるとの合理的な結論
・ 内部統制システムが有効であることの宣言の根拠
・ 特定された重大な問題や瑕疵、および是正措置と是正に要する期間
● 取締役会は年次報告書において以下を説明する
・ フレームワークの有効性を監視・レビューした方法
・ 重要な管理機能が有効であることの宣言
・ 有効でない重要な管理機能の有無、および是正措置

セクション 5 – 報酬(会員限定)

2024/03/04 【特集】~将来的には再度改訂議論の俎上に載せられる可能性~ 削除された英国コーポレートガバナンス・コード改訂案の全容(4・会員限定)

セクション 3 – 構成、継承、評価

後継者計画を指名委員会が主導すること(lead the process)、年次報告書における指名委員会の活動報告に関する追加説明事項(後継者計画の監督状況、多様性確保の状況など)に関する改訂案が削除された。指名委員会に過大な負担を強いると判断されたことによるものだろう。

2023/5/23改訂案 2024/1/22確定版
● 後継者の計画および選任に際しては、法的規制の有無にかかわらず、多様性、包括性、機会均等を促進する必要がある ● 後継者の計画および選任に際しては、多様性、包括性、機会均等を促進する必要がある
● 取締役会の年次評価では、取締役会の業績を考慮する
● 同評価では取締役の兼任状況を踏まえ、取締役が自らの責任を適切に果たす能力があるかを考慮する
● 取締役会の年次評価では、取締役会の業績を考慮する
● (取締役会でなく)指名委員会が役員選任プロセスを主導する (削除)
● 取締役会議長は取締役会の業績評価を外部委託する必要がある ● 取締役会議長は取締役会の業績評価を外部委託する必要がある
● 以下の指名委員会による活動を、年次報告書で説明する
・ 取締役と上級執行役の後継者計画、後継者パイプラインの監督状況
・ 取締役と上級執行役の選任プロセス(多様性の推進状況を含む)。
・ 多様性と包摂性ポリシーの有効性
・ 上級執行役における男女のバランス
(削除)


包摂性 : 英語でいう「インクルージョン(inclusion)」を指す。多様性を示すダイバーシティに対し、多様な人材が互いを認め、受け入れ、一体となって働くことを指す。

セクション 4 – 監査、リスク、内部統制(会員限定)

2024/03/04 【特集】~将来的には再度改訂議論の俎上に載せられる可能性~ 削除された英国コーポレートガバナンス・コード改訂案の全容(3・会員限定)

セクション 2 – 責任の分担

取締役のオーバーボーディング(兼任過多:over-boarding)問題を踏まえ、取締役が十分な時間を確保できたか、そのために具体的にどのような施策を講じたかについて年次報告書で説明を求める改訂案が削除された。社外取締役の選任に向け支障となることが懸念されたものと思われる。

2023/5/23改訂案 2024/1/22確定版
● 取締役の兼任状況を踏まえ、取締役が役割を果たすためにいかにして十分な時間を確保したかを説明する
● その際、具体的な施策についても説明する
(削除)

セクション 3 – 構成、継承、評価(会員限定)

2024/03/04 【特集】~将来的には再度改訂議論の俎上に載せられる可能性~ 削除された英国コーポレートガバナンス・コード改訂案の全容(2・会員限定)

セクション 1 – 取締役会のリーダーシップと会社の目的

年次報告書で求められる気候変動など環境・社会問題への対応、取締役会議長による株主との対話結果に関する説明を求める改訂案が削除された。取締役会に過大な負担を強いるものとされたことが削除の理由となった模様。また、内部通報制度について「有効性(effectiveness)」をレビューすることが求められていたが、この「有効性」という文言が削除された。

2023/5/23改訂案 2024/1/22確定版
● ガバナンス報告において、CGコードをコンプライしていることが明確になるよう、結果に焦点を当てる
● エクスプレインは明確に行う
● ガバナンス報告においては、取締役会の決定による結果に焦点を当てる
● エクスプレインは明確に行う
● 戦略実施に際しての環境・社会問題の配慮、気候変動に対する積極的な施策を、年次報告書で説明する (削除)
● 取締役会は、望ましい企業文化が定着しているかについて、評価・監督し、報告する ● 取締役会は、望ましい企業文化が定着しているかについて、評価・監督する
● 取締役会議長は株主と対話した結果を年次報告書で報告する (削除)
● 取締役会は、内部通報制度の(報告内容だけでなく)有効性を定期的にレビューする ● 取締役会は、内部通報制度を(報告内容だけでなく)定期的にレビューする

セクション 2 – 責任の分担(会員限定)

2024/03/04 【特集】~将来的には再度改訂議論の俎上に載せられる可能性~ 削除された英国コーポレートガバナンス・コード改訂案の全容

はじめに

英国FRC(財務報告審議会)が予定していたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂のほぼすべてを取りやめたことは大きなサプライズとなったが(2023年12月11日のニュース「英国CGコード改訂案、大部分撤回の背景」」参照)、一部の改訂はロンドン証券取引所プレミアム市場の全上場会社を対象に、2025年1月1日以降に開始する会計年度から適用される。


英国FRC(財務報告審議会) : イギリスにおける会計基準設定主体。監査やコーポレートガバナンス・コード等も管轄している。

主な改訂点は、下記のとおり、(1)コーポレートガバナンスに関する開示の質を高めること、(2)取締役会の実効性評価を外部委託すること、(3)取締役会はリスク管理の構築と説明に責任を持つこと、(4)マルス条項クローバック条項を導入して説明すること、に集約される。

◆ コーポレートガバナンス情報の開示においては、取締役会が決定した結果(outcome)に焦点を当てる
◆ コーポレートガバナンス・コードにエクスプレインする際には、明確な説明(clear explanation)を行う
◆ 取締役会議長は、3年に1回の外部による取締役会の実効性評価を「検討(consider)」するではなく、(実際に)「委任(commission)」する
◆ 取締役会は、リスク管理と内部統制におけるフレームワークの有効性の確保や是正(improve)のため講じられた措置を、年次報告書で説明する
◆ 報酬契約にマルス・クローバック条項を定め、その発動条件(could be used)や適用状況(were used)などを年次報告書で説明する

冒頭で触れたとおり、今回の改訂は2023年5月23日に公表されパブリックコメントに付された改訂案からは大幅に後退したものとなった。以下、各章ごとに改訂案から具体的に何が削除されたのか見てみよう。

セクション 1 – 取締役会のリーダーシップと会社の目的(会員限定)

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2024/03/01 日本株に投資している海外投資家の問題点

日経平均株価が最高値を更新し、国内および海外から日本企業へ資金流入が続いている。特に海外投資家が、日本企業に対する関心を高めている。ただ、確かに日本の景気や企業収益は改善傾向を示しているとはいえ、それでもここまで株価を上昇させるには力不足と言わざるを得ない。現在の株式市場の活況には、ファンダメンタル以外に様々な要因が考えられる。


ファンダメンタル : 売上高や利益などの業績や、資産・負債などの財務状況等、株式の本質的価値を決める指標。

まず、・・・

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2024/03/01 日本株に投資している海外投資家の問題点(会員限定)

日経平均株価が最高値を更新し、国内および海外から日本企業へ資金流入が続いている。特に海外投資家が、日本企業に対する関心を高めている。ただ、確かに日本の景気や企業収益は改善傾向を示しているとはいえ、それでもここまで株価を上昇させるには力不足と言わざるを得ない。現在の株式市場の活況には、ファンダメンタル以外に様々な要因が考えられる。


ファンダメンタル : 売上高や利益などの業績や、資産・負債などの財務状況等、株式の本質的価値を決める指標。

まず、株価のバリュエーション(株価が割高か割安か)が、歴史的にも国際比較でも高くはない水準にあるということだ。米国株の過熱と、そのバリュエーションの高さを考えると、日本株への投資に安心感を持つ投資家も多い。

次に、資金フロー面の要因が挙げられる。中国株式市場の低迷により、中国市場から投資資金が引き揚げられ、それが日本に向かっている。グローバル投資家は文字通り「グローバル」で分散投資を行っているため、アジア・パシフィック地域へのウエイトをあまり減らしたくない。そのため、中国市場から回収した資金は、同じ地域であるアジア・パシフィック内で吸収しようとする。中国市場に投資していた巨大な資金を吸収できるのは、アジア・パシフィックでは、日本、オーストラリア、インドなどの株式市場に限られる。欧米の機関投資家の中には、中国景気の足下の低迷だけでなく、中長期的なリスクを見据えて中国市場から資金を引き揚げているところも多い。したがって、これらの資金は、恒久的に日本に留まる可能性がある。

では、日本株に投資をしている海外投資家とは、どのような投資家なのだろうか。まず、長年日本株に投資をしてきたグローバルな大手運用会社が挙げられる。しかし、日本株は長年低迷してきたため、ベテランの日本株ポートフォリオマネージャーの多くは去っていった。そこで、現在は新しいポートフォリオマネージャーが日本株への投資を行っていることが多い。また、これまで日本株にあまり投資をしていなかった運用会社が日本株への投資を拡大する事例も出てきている。さらに、全くの新規で日本株へに投資を始める投資家も増えつつある。これらいずれのパターンにおいても日本株に精通した者が不足しており、各社とも日本株に精通した人材の確保に苦労しているのが現状だ。すなわち、現在日本株買いの主力となっている海外投資家は、実は日本株への知見が不足している可能性が高い。


ポートフォリオマネージャー : 運用会社に所属し、ポートフォリオを構築して実際に上場企業株に投資する者のこと。ファンドマネージャーとも呼ばれる。

その一方で、海外投資家は積極的にエンゲージメントを行っている。その理由として、日本企業は資本効率やコーポレートガバナンス等の面でいまだ問題を抱えているところが多いため、エンゲージメントを通じてそれらを改善させれば、超過リターンを得られる可能性が高いと海外投資家は考えているからだ。ところが、上述のとおり、こうしたエンゲージメントが日本株への知見が不足している投資家によって行われている。これは、単に日本企業のことを良く知らないということにとどまらず、コミュニケーション、具体的には日本企業へのアクセス方法さえ知らないといったレベルの問題も引き起こしている。例えば、IRとは全く関係のない部署に英語のメールを送付するといったことが平然と行われている。また、日本企業の歴史を知らずに、欧米企業を基準にエンゲージメントが行われるケースが増えてくることも予想される。このようなエンゲージメントにも意義がないわけではないが、日本企業とのコミュニケーションにおいては問題が生じる可能性が高いだろう。以上のような問題は、海外投資家が経験を積むにしたがって改善されてくると思われるが、日本企業としては、この先1~2年は注意が必要だろう。

2024/02/29 【2024年3月の課題】各運用機関の2024年議決権行使方針

2024年3月の課題

2024年6月の株主総会シーズンに向けて、多くの機関投資家が議決権行使ガイドラインの改定を実施しています。
主要国内機関投資家の改定内容を確認し、本年の株主総会において自社が留意すべき点について考えてみてください。
これまでに議決権行使方針の改定を公表した主な投資家は以下のとおりです。

大和アセットマネジメント(2023年10月公表)

野村アセットマネジメント(2023年11月公表)

りそなアセットマネジメント(2023年11月公表)

三井住友トラスト・アセットマネジメント(2023年12月公表)

三井住友DSアセットマネジメント(2023年12月公表)

日興アセットマネジメント(2024年2月公表)

三菱UFJ信託銀行(2024年2月公表)

三菱UFJアセットマネジメント(2024年2月公表)

アセットマネジメントOne(2024年2月公表)

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