2023/11/07 開示企業一覧表に掲載されるためのキーワードが確定、 CG報告書はいつ再提出する?

2023年10月18日付のニュース『東証、年明けから「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」開示企業一覧公表へ、10月中に要請の趣旨等を再周知』でお伝えしたとおり、東証は10月26日、上場企業に向け、「2024年1月15日」から“一覧表”の公表を開始し、毎月更新する旨のリリースを正式に公表している。

一覧表は東証のウェブサイト「市場区分の見直しに関するフォローアップ」に、日英両言語によりエクセル形式のファイルで掲載される。具体的な一覧表のイメージは以下のとおり。一覧表には開示のある企業名が列挙され、要請に基づく開示状況として「開示済」「検討中」の別が明示される。また英文開示の「有」「無(空欄)」も示される。

証券コード 企業名 市場区分 業種 要請に基づく開示状況
(開示済/検討中)
英文開示
**** ************* プライム ****** 開示済
**** ******** プライム ****** 検討中

上記一覧表のイメージでは市場区分は「プライム」のみとなっているが、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請対象は「プライム市場・スタンダード市場の全上場企業」であるため(2023年4月5日付のニュース『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」における要請事項と開示時期』参照)、一覧表の公表対象にはスタンダード市場上場企業も含まれることに留意したい。

一覧表に掲載されるためには、明確な「キーワード」がコーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)に記載されていなければならない。上記イメージの「要請に基づく開示状況」「英文開示」という項目を踏まえると、具体的には以下の・・・

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2023/11/07 開示企業一覧表に掲載されるためのキーワードが確定、 CG報告書はいつ再提出する?(会員限定)

2023年10月18日付のニュース『東証、年明けから「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」開示企業一覧公表へ、10月中に要請の趣旨等を再周知』でお伝えしたとおり、東証は10月26日、上場企業に向け、「2024年1月15日」から“一覧表”の公表を開始し、毎月更新する旨のリリースを正式に公表している。

一覧表は東証のウェブサイト「市場区分の見直しに関するフォローアップ」に、日英両言語によりエクセル形式のファイルで掲載される。具体的な一覧表のイメージは以下のとおり。一覧表には開示のある企業名が列挙され、要請に基づく開示状況として「開示済」「検討中」の別が明示される。また英文開示の「有」「無(空欄)」も示される。

証券コード 企業名 市場区分 業種 要請に基づく開示状況
(開示済/検討中)
英文開示
**** ************* プライム ****** 開示済
**** ******** プライム ****** 検討中

上記一覧表のイメージでは市場区分は「プライム」のみとなっているが、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請対象は「プライム市場・スタンダード市場の全上場企業」であるため(2023年4月5日付のニュース『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」における要請事項と開示時期』参照)、一覧表の公表対象にはスタンダード市場上場企業も含まれることに留意したい。

一覧表に掲載されるためには、明確な「キーワード」がコーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)に記載されていなければならない。上記イメージの「要請に基づく開示状況」「英文開示」という項目を踏まえると、具体的には以下の4つのパターンのいずれかがCG報告書に記載されていることが、一覧表に掲載される条件ということになる。

(1)【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】【英文開示有り】
(2)【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】
(3)【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(検討中)】【英文開示有り】
(4)【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(検討中)】

これらは東証が明確に示したキーワードであり、いずれも記載されていない場合は一覧表に自社名は掲載されない。自社名が確実に掲載されるためには、記載事項の標題として一言一句の相違なく用いるのが無難だろう。掲載場所は、CG報告書の「コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示」欄、「コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由」欄のいずれでも認められる。

初回の一覧表は、2023年12月末時点のCG報告書に基づいて集計し、2024年1月15日に公表される予定。当初から一覧表に「開示済」「(英文開示)有」と記載されるよう、CG報告書の記載内容を見直して再提出する事例も少なからず出てきそうだ。

もっとも、一覧表は初回の公表後、各月末時点の状況に基づき翌月15日を目途に更新される。したがって、株主総会開催月の月末に提出するCG報告書で対応し、一覧表に掲載されれば十分という判断もあり得る。東証は「今後の取組み」として、2024年1月を目途に「投資者の視点を踏まえた対応のポイント」や「投資者の高い支持が得られた取組みの事例」について企業の規模や状況に応じいくつかのパターンをとりまとめ、公表するとしている(東証が10月26日に公表した説明資料1ページの表の2段目参照)。慎重を期して、それら先行事例を参考にしたうえで対応を図ることも選択肢となろう。

2023/11/06 ISS、ROE基準復活へ プライム市場上場企業の17.5%が同基準に抵触

議決権行使助言会社最大手のISSは2023年10月31日、2024年以降における議決権行使助言方針(ポリシー)の改定を検討するため毎年実施している「グローバル・ベンチマーク・ポリシー調査」の結果を公表した。今年度の調査は2023年8月29日から9月21日の間に実施され、グローバルな投資家や市場関係者から455件の回答を得た。ISSは調査結果を踏まえて2024年版ポリシーの改定案を策定し、オープンコメントを経て確定させる。

今年度の調査では、日本のみを対象とした調査項目として、・・・

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2023/11/06 ISS、ROE基準復活へ プライム市場上場企業の17.5%が同基準に抵触(会員限定)

議決権行使助言会社最大手のISSは2023年10月31日、2024年以降における議決権行使助言方針(ポリシー)の改定を検討するため毎年実施している「グローバル・ベンチマーク・ポリシー調査」の結果を公表した。今年度の調査は2023年8月29日から9月21日の間に実施され、グローバルな投資家や市場関係者から455件の回答を得た。ISSは調査結果を踏まえて2024年版ポリシーの改定案を策定し、オープンコメントを経て確定させる。

今年度の調査では、日本のみを対象とした調査項目として、取締役選任議案におけるROE基準の一時停止(後述)を2024年以降も継続するか否かが問われた。ISSは2023年版ポリシーにおいて、下記に該当する場合、取締役選任議案に対し原則として反対を推奨するとしている(5ページ参照)。ここでいう「経営トップ」とは通常、社長か会長を指しており、今回も反対対象になるとすれば経営トップであるとみられる。


ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)

● 資本生産性が低く(過去5期平均の自己資本利益率[ROE]が 5%を下回り)かつ改善傾向にない場合、経営トップである取締役
※「改善傾向」とは、過去5期の平均 ROE が 5%未満でも、直近の会計年度の ROE が 5%以上ある場合を指す。

ただし、2020年6月以降、ISSは「新型コロナウイルス感染症が企業業績に与える多大な影響を考慮すると、現時点において ROE が企業の資本生産性の指標として機能しているとは必ずしもいえない」とし、ROE基準の適用は一時的に停止されている(「新型コロナウイルス感染症の世界的流行を踏まえたISS 日本向け議決権行使基準の対応」参照)。

今回の調査でISSは、「パンデミックは後退」し、「日本企業の業績は全般的に改善」していることから、以下の設問によってROE基準の適用を再開すべきか問いを投げかけている。

Q2.2. Do you think it is appropriate for ISS to resume the application of the ROE policy for Japanese companies?
(ISSが日本企業に対してROE基準の適用を再開することは適切だと思いますか?)

回答は下表のとおりとなっており、投資家の大部分および市場関係者の多くが適用を再開することに「Yes」と回答している。なお、市場関係者(Non-Investor)の多くは投資家以外である非営利団体が占めているが、投資家の意見を代弁していると考えられる場合は「Investor」に分類されている。

Yes/No Investors Non-Investors
Yes 75% 60%
No 25% 40%

上記の結果を踏まえると、2024年のISSポリシーにおいては、ROE基準が復活する可能性が高いと言える。当フォーラムの調査によると、昨年度のROEが直近および過去5期平均で5%未満だったプライム市場上場企業は290社(プライム市場上場企業の17.5%)確認された。今年度の業績悪化で新たにROE基準に抵触する企業が出てくる可能性もある。こうした企業には、ISSの反対助言を前提としたうえでのエンゲージメント活動、経営戦略のブラッシュアップが求められることになろう。

2023/11/02 【特集】英国コーポレートガバナンス・コードの改訂(前編)(3・会員限定)

取締役会に内部統制システムの有効性の宣言求める

取締役会によるリスク管理と内部統制の年次報告に関する現行の規則29は、少なくとも年1回は有効性のレビュー(a review of their effectiveness)を実施することを求めているが、具体的な報告すべき事項には触れていない。

一方、改訂案の規則30においては、取締役会が内部統制システムの有効性を宣言(declaration)すること、その根拠(basis)および是正措置(the remedial action)などの記載を求めている。リスク管理と内部統制に関するシステムが、年間を通じてPDCAサイクルとして機能するよう、取締役会に規律付けることが狙いと考えらる。

規則30(旧29):改訂案で追加された事項
● 会社のリスク管理および内部統制が、報告期間および年次報告書の発行日まで有効であったと合理的に結論付けることができる旨の、取締役会による宣言。
● リスク管理および内部統制システムの有効性をどのように監視および検討したかなど、宣言の根拠。
● 特定された重大な欠陥や過失、それらに対して講じられた是正措置および期間。

非財務情報の重要性踏まえ、「財務」という文言を「企業報告」に変更

このほか、改訂案の規則30では、現行の規則29に含まれていた「財務(financial)」との文言をカットし、代わりに「企業報告(reporting)」としている。これについてFRCは、「重要な変更(an important change)」と解説しており、特に戦略、主要リスク、ESGといった非財務情報の重要性を認識すべき、と強調している。

規則29:現行(抜粋) 規則30:改訂案(抜粋)
モニタリングとレビューは財務、オペレーション、コンプライアンスを含む、重要な管理の全てを対象とする。 モニタリングとレビューはオペレーション、企業報告、コンプライアンスを含む、重要な管理の全てを対象とする。

以上のセクション4における変更点が、今回の英国コーポレートガバナンス・コード改訂における中心的なテーマとなっている。

英国では内部統制に関する報告がコーポレートガバナンス・コードの一部となっているため、日本における内部統制報告制度とは異なった制度設計となっているとはいえ、内容面では、サステナビリティ課題など非財務情報の重視、方針策定から是正措置に至るPDCAサイクルの確立など、日本のコーポレートガバナンス・コード改訂、さらには内部統制報告制度の見直しにつながる論点が多く含まれている。当フォーラムとしても、日本における今後の議論への影響を注視していきたい。

2023/11/02 【特集】英国コーポレートガバナンス・コードの改訂(前編)(2・会員限定)

取締役会には内部統制の「確立」のみならず、「維持」し「効果的」とすることを期待

2018年以来となる今回の改訂は、英国政府が2021年3月に実施した「監査とコーポレートガバナンスの信頼回復(Restoring trust in audit and corporate governance)」の要請に応じたもの。2018年に破綻した英国第2位の建設会社・カリリオン社が大幅な赤字受注を繰り返していたにもかかわらず、監査を担当していたKPMGは1999年から破綻前までずっと無限定適正意見を出していたことなどに伴い、「取締役による企業報告と法定監査の信頼性(the credibility of directors’ reporting and the statutory audit)」が大きく揺らいだことから、改訂案の焦点はセクション4の「監査、リスク、内部統制(Audit, risk and internal control)」に当てられている。


無限定適正意見 : 監査報告書において、企業が作成した財務諸表や内部統制報告書が「すべての重要な点において適正に表示している」との意見を表明するもの。

英国コーポレートガバナンス・コードのセクション4の原則「O」は現状、取締役会に対し、リスク管理と内部統制のプロセスを「確立(establish)」する責任を求めている。これに対し改訂案では、確立するのみならず「維持(maintain)」すること、また同プロセスが「効果的(effective)」であることを期待している。

原則O:現行(一部) 原則O:改訂案(一部)
取締役会は、リスク管理の手順を確立し、内部統制の枠組みを監督する。 取締役会は、効果的なリスク管理と内部統制の枠組みを確立・維持する。

監査委員会の役割は「承認」「監視」「レビュー」から「策定」「改善」「対話」へ

また、監査委員会の役割と責任に関する規則(Provision:日本のコーポレートガバナンス・コードの補充原則に相当する)25には、以下の項目が追加された(改訂案における規則26)。これらは2023年5月にFRCが公表した「監査委員会と外部監査の最低基準(Minimum Standard for Audit Committees in relation to external audit)」に平仄を合わせたもので、現行の規則25が「承認(approving)」「監視(monitoring)」「レビュー(reviewing)」と受け身な内容となっている印象があるのに対し、改訂案の規則26は「策定(developing)」「改善(maintaining)」「対話(engaging)」と、より積極的な文言が使われている。

また、サステナビリティに関する非財務情報(narrative reporting)のレビューが、新たに監査委員会の権限として追加されたことも注目される。

規則26(旧25):改訂案で追加された事項
● 監査および保証の方針を策定、運用、改善する。
● 監査委員会の役割、外部監査人の業務範囲、監査・保証の方針に対する関与について、株主や利害関係者と対話する。
● 「監査委員会と外部監査の最低基準」に準拠する。
● 外部監査人の入札において適切な競争を促進し、監査人市場の多様性を確保する。
● サステナビリティ課題を含む非財務情報の誠実性を確認し、重要な事項が報告されているかをレビューする。

ESG指標などの保証が取締役会から監査委員会に授権

年次報告書に記載すべき監査委員会の活動報告(現行の規則26,改訂案の規則27)も、今後は「監査委員会と外部監査の最低基準」に準拠することとされた。「3年ごとの監査・保証方針(the triennial audit and assurance policy)」とは、上述の「監査とコーポレートガバナンスの信頼回復」において「導入すべき」との提言があったもの。また本規則においても、サステナビリティ課題など非財務情報に関する検討と対処の状況、さらにはESG指標などの保証が取締役会から監査委員会に授権され得る(commissioned by the board)ことが示された。

規則27(旧26):改訂案で追加された事項
● 「監査委員会と外部監査の最低基準」で定められた事項。
● 3年ごとの監査・保証方針および年次の実施報告書を作成するための活動。
● 監査委員会がサステナビリティ課題を含む非財務情報について、検討を要した重要な問題と、それらの問題にどのように対処したか。
● ESG指標その他サステナビリティ関連事項の保証(取締役会が委託した場合)。

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2023/11/02 【特集】英国コーポレートガバナンス・コードの改訂(前編)

その後、2023年11月7日に英国FRC(財務報告評議会)は、同国コーポレートガバナンス・コードの改訂について方針を転換することを発表、改訂案の大部分を撤回し、今回は小規模な改訂にとどまることとなりましたが、改訂案の内容は資本市場の潮流を把握するうえで極めて有用であるため、本特集ページにおける解説記事は引き続き掲載することとします。

はじめに

英国コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の改訂プロセスが大詰めを迎えている。FRC(英国財務報告評議会)は2023年5月23日にコード改訂案を公表、9月13日を期限としてパブリックコメントを募集していたところだが、今後は寄せられたコメントを反映する形で改訂案の修正、および各種ガイダンスの策定または改訂を実施したうえで、2025年1月1日以降に開始する事業年度から適用される見通しとなっている。

本特集では、将来の日本のCGコード改訂にも影響を及ぼし得る英国CGコードの改訂のポイントを解説する。


FRC(英国財務報告評議会) : 「Financial Reporting Council」の略で、イギリスにおける監査人、会計士および保険数理士を規制するとともに、企業のコーポレート・ガバナンス・コードおよびスチュワードシップ・コードを設定する役割を担っている。

取締役会には内部統制の「確立」のみならず、「維持」し「効果的」とすることを期待(会員限定)

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2023/11/01 統合報告書を作成する必要はあるのか

統合報告書とは、自社の財務情報と非財務情報を文字通り“統合”して、どのように企業価値向上を目指すのかを報告する書類であり、日本では統合報告書を作成する上場企業が毎年増え続けている。ESG等への対応が欧米企業と比べて遅れているとされる日本企業だが、統合報告書を発行している企業数は千社程度にまで達し、世界1位となっている。ただ、皮肉なことに、これだけの数の企業が統合報告書を作成しているにもかかわらず、日本企業の収益性は世界的に低い水準にとどまっている。こうした中、統合報告書は単なるディスクロージャー資料にすぎず、企業価値の向上には結びつかないと指摘する専門家もいる。

結論から言えば、・・・

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2023/11/01 統合報告書を作成する必要はあるのか(会員限定)

統合報告書とは、自社の財務情報と非財務情報を文字通り“統合”して、どのように企業価値向上を目指すのかを報告する書類であり、日本では統合報告書を作成する上場企業が毎年増え続けている。ESG等への対応が欧米企業と比べて遅れているとされる日本企業だが、統合報告書を発行している企業数は千社程度にまで達し、世界1位となっている。ただ、皮肉なことに、これだけの数の企業が統合報告書を作成しているにもかかわらず、日本企業の収益性は世界的に低い水準にとどまっている。こうした中、統合報告書は単なるディスクロージャー資料にすぎず、企業価値の向上には結びつかないと指摘する専門家もいる。

結論から言えば、統合報告書を作成したからといって短期的に企業価値が向上することはないが、統合報告書の作成が「きっかけ」となり、中長期的には企業価値の向上に貢献すると考えられる。そのように言える理由として、まず、統合報告書の作成にあたっては、自社の歴史や沿革を省みることになるという点が挙げられる。これにより、創業時の理念や価値観を再認識することができる。原点に立ち返ることは、現在の経営が創業時の理念から外れていないかどうかをチェックする絶好の機会となる。また、統合報告書を作成する過程では、外部環境や、競合他社との比較を通じた業界における自社の位置についても再度確認することになる。これらは中長期戦略を見直すきっかけになる。

もっとも、“統合”報告書とはいっても、当初はESGを中心とした非事務情報と財務情報との結びつきを上手く表現できず、単に財務情報と非財務情報が分断して開示された書類になりがちだ。しかし、自社の非財務情報を特定し、それを開示していくことによって、徐々に経営戦略との関係が明確になり、財務情報と結びついていく。これを実現するうえでは、非財務情報のKPIを抽出し、それそれのKPIに目標値を設定することが有効であり、この目標値を財務情報における目標値と有機的に結びつけることが、非財務情報と財務情報の“統合”の手掛かりとなる。

非財務情報のKPIを抽出するには、顧客、株主、債権者、従業員、取引先、地域コミュニティといった自社にとってのステークホルダーとコミュニケーションをとり、それぞれに対してどのように貢献すべきかを検討する必要がある(ステークホルダーを意識した経営自体も企業価値の向上につながる)。こうしたプロセスを繰り返すことによって、どのようにESG等への取り組みを企業価値の向上につなげていくかの道筋が見えてくるだろう。

そして最も重要なのは、統合報告書の作成には、経営トップのコミットメントが必須であるということだ。経営トップのコミットメントの下、経営陣が社員と一体となって企業価値の向上について検討することが、統合報告書を作成する大きな意義と言える。経営トップのコミットメントがなければ、統合報告書は単なるディスクロージャー資料となり、企業価値に向上に結びつくことはない。くれぐれも、統合報告書の作成を業者に丸投げするようなことはないようにしたい。

2023/10/31 2023年10月度チェックテスト

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【問題1】

物流業界はECサイト等における「送料無料」表示を廃止するよう要請している。


正しい
間違い
【問題2】

社長が交際費の不正精算をしても、社長には従業員のような上司によるチェック機能が働く余地はないため、内部通報制度のみが唯一のチェック機能となる。


正しい
間違い
【問題3】

2023年10月10日に改正された東証の企業行動規範に、プライム市場の上場内国会社は2030年までに女性役員の比率を30%以上とすることを目指す旨明記された。そして、この女性役員の比率の算出にあたっては、女性役員に取締役、監査役、執行役だけでなく「執行役員又はそれに準じる役職者」を含めることもできる。もっとも、「執行役員又はそれに準じる役職者」を含めるのであれば分子と分母の双方に含めなくてはならない。

正しい
間違い
【問題4】

東証の企業行動規範が2023年10月10日に改正され、望ましい投資単位の水準の下限が1万円に切り下げられた。


正しい
間違い
【問題5】

東証が2023年3月にプライム市場上場会社およびスタンダード市場上場会社に要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について、CG報告書へ記載するかどうかはPBRが1倍を超えているかどうか次第とされている。


正しい
間違い
【問題6】

東証のプライム市場上場会社およびスタンダード市場上場会社は、CG報告書に【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】とのキーワードを記載しない限り、東証が2023年の年初より公表を開始する予定の『「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧表』上では「検討中」に分類されてしまう。


正しい
間違い
【問題7】

株主資本コストからROEを控除した差はエクイティ・スプレッドと称されることもあり、このエクイティ・スプレッドは高ければ高いほどより望ましいとされている。


正しい
間違い
【問題8】

自社株買いによって株価は上昇することが多いが、これは自社株買いによってROEが上昇するからである。


正しい
間違い
【問題9】

親会社単体で分配可能額がゼロであっても、連結上の利益剰余金が多ければ、親会社は配当を実施できる。


正しい
間違い
【問題10】

PBRは分子の時価総額を「自己株式を含めた発⾏済株式数」ベースで計算するのが主流である。


正しい
間違い