2023/10/19 【新任役員向けトレーニングプログラム】監査役の職務内容と責任 の更新

下記の【新任役員向けトレーニングプログラム】につき、法令等の改正や実務動向の変化に対応するため、講義内容(講師、動画およびレジュメのすべて)を更新いたしました。本動画は新任役員向けトレーニングプログラムの受講の契約をされている方のみが閲覧可能です。

概略

改正会社法により監査等委員会設置会社という新たな機関設計が導入された後もいまだに上場会社の主流を占めるのが監査役会設置会社ですが、監査役の役割を正確に理解している役員は少ないのが現実です。本講義では、監査役の役割や会計監査人・内部監査との違いや連携のほか、監査役の法的義務と責任について、事例を交えながら解説します。

【講師】TMI総合法律事務所 水田 進 弁護士 
【講義時間】21分39秒
【目次】
1  監査役・監査役会
   監査役会とは
   監査役とは
2 監査役の職務
3 会計監査人・内部監査との連携
4 監査役の権限・義務
5 監査役の責任
6 機関設計の違い
7 監査等委員会設置会社制度の創設

講義資料 監査役の職務内容と責任.pdf
講義

監査役の職務内容と責任
newseminar17583

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2023/10/18 東証、年明けから「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」開示企業一覧公表へ、10月中に要請の趣旨等を再周知

東証は(2023年)10月11日に開催した第12回「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)で、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」(以下、資本コスト経営)及び「株主との対話の推進と開示」(以下、株主との対話)に関する今後の取組みを公表している。「資本コスト経営」「株主との対話」それぞれの骨子を、実施時期により整理すると下表のとおりとなる。・・・

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2023/10/18 東証、年明けから「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」開示企業一覧公表へ、10月中に要請の趣旨等を再周知(会員限定)

東証は(2023年)10月11日に開催した第12回「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)で、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」(以下、資本コスト経営)及び「株主との対話の推進と開示」(以下、株主との対話)に関する今後の取組みを公表している。「資本コスト経営」「株主との対話」それぞれの骨子を、実施時期により整理すると下表のとおりとなる。

(1)資本コスト経営(3ページ参照)
時期 取組み 内容
10月中 要請の趣旨・留意点の再周知 ● PBR1倍超でも、更なる向上に向けた取組みを期待
● 検討中の場合も、検討状況や開示時期の具体的な説明を期待
● CG報告書に【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】というキーワードの記載を期待
年明け 開示企業一覧表の公表 ● CG報告書において、記載例に沿い【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】というキーワードを記載している企業をリスト化
● 「検討中」という開示をする場合、上記キーワードに続けて「(検討中)」という記載を求める、一覧表において分類して掲載
● 年明けを目途に公表を開始、毎月1回更新予定
対応のポイント・取組事例の公表 ● 投資者の視点を踏まえた対応のポイント
● 投資者の高い支持が得られた取組みの事例
対応状況の集計・周知 ● 企業の開示状況や投資家等からのフィードバックを概ね半年に1回程度集計


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価 ÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。

(2)株主との対話(6ページ参照)
時期 取組み 内容
順次 投資家へのメッセージの発信 ● 機関投資家に対しても要請の趣旨を周知
● 各社の取組みをアジェンダとして設定する等、積極的に対話をリードすることを期待
年明け 企業の取組みの好事例の紹介 ● 経営者が率先して対話にコミットしている企業
● 対話による気づきを企業価値向上に活かしている企業
● 経営情報の開示やIR活動に積極的に取り組み、投資家へのアピールを⾏っている企業
投資家の
目線の紹介
● 投資家がどういった目線で対話・エンゲージメントを実施しているか
● 企業にどういった情報開示・IRを求めているか
継続的に その他 ● 企業と投資家の接点作り等を取引所としてサポート

上記の中で、多くの上場企業にとって特にインパクトが大きいのは、(1)資本コスト経営における「開示企業一覧表の公表」だろう。第11回フォローアップ会議では、東証から開示状況の調査結果が報告されたが、実にプライム市場上場企業の69%、スタンダード市場上場企業の86%が「記載なし」となっている。すなわち、このままだと両市場の約4分の3を占める未開示企業が、年明けに公表される開示企業一覧表から外れることになる(同会議に提出された東証資料の1ページ参照)。

特に時価総額の大きい企業、自社のコーポレートガバナンスや投資家対応に自負のある企業としては、“東証の要請に対応していない企業”とのレッテルを貼られることは、レピュテーションの面からも避けたいところだろう。この点を考慮して東証は、上記(1)のとおり10月中に「趣旨・留意点の再周知」を実施、CG報告書の記載要領(4ページ※参照)に沿って【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応】とのタイトルを付け、開示を行っている旨や閲覧方法等の記載を求めるとしている。

これを受け、年内にはCG報告書の再提出を行う企業が続出することも想定されるが、その際には、2023年3月31日付の東証の要請(2ページ参照)にあるように、「現状分析」「計画策定」を踏まえた開示でなければならないことを、改めて認識する必要がある。第11回フォローアップ会議に提出された東証の資料には、不十分な記載として「既存の開⽰を参照するのみで、資本コストを踏まえた現状分析・評価に関して言及がない」事例が紹介されている(3ページ参照)。拙速に中途半端な内容を記載するくらいなら、今回は「検討中」としたうえで、検討状況や開示時期を開示することも選択肢となろう。

2023/10/17 PBR1倍割れ企業のサステナビリティ戦略に厳しい視線

経済産業省は(2023年)10月2日にサステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会を開始、〆切を11月30日の16時(厳守)としている。「SX銘柄」とは、経済産業省が「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会」の議論のとりまとめとして2022年8月30日に公表した「伊藤レポート3.0」により提唱された概念で、「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」は「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを“同期化”させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革」を意味し、「SX銘柄」は「SXを通じて持続的に成長原資を生み出す力を高め、企業価値向上を実現する先進的企業群」と定義されている(詳細は2022年9月8日のニュース「伊藤レポート3.0が示す未来、「SX」で稼ぐ時代に」参照)。

「SX銘柄2024」への応募は、同省ホームページにリンクされている「SX調査票」(Excel)をダウンロードして回答を入力し、事務局宛にメールで提出すればよい。「SX銘柄2024」は、審査を経て2024年4月以降に決定、公表される予定。仮にSX銘柄2024に選定されなくても、応募企業には「フィードバックシート」が送付される。

同省はSX銘柄2024に応募することで、企業には以下のメリットがあるとしている。・・・

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2023/10/17 PBR1倍割れ企業のサステナビリティ戦略に厳しい視線(会員限定)

経済産業省は(2023年)10月2日にサステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会を開始、〆切を11月30日の16時(厳守)としている。「SX銘柄」とは、経済産業省が「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会」の議論のとりまとめとして2022年8月30日に公表した「伊藤レポート3.0」により提唱された概念で、「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」は「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを“同期化”させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革」を意味し、「SX銘柄」は「SXを通じて持続的に成長原資を生み出す力を高め、企業価値向上を実現する先進的企業群」と定義されている(詳細は2022年9月8日のニュース「伊藤レポート3.0が示す未来、「SX」で稼ぐ時代に」参照)。

「SX銘柄2024」への応募は、同省ホームページにリンクされている「SX調査票」(Excel)をダウンロードして回答を入力し、事務局宛にメールで提出すればよい。「SX銘柄2024」は、審査を経て2024年4月以降に決定、公表される予定。仮にSX銘柄2024に選定されなくても、応募企業には「フィードバックシート」が送付される。

同省はSX銘柄2024に応募することで、企業には以下のメリットがあるとしている。

● 自社のSX経営推進の状況を整理、フィードバックシートで立ち位置を確認できる
● 自社のSXへの取組みが見える化され、社内外のステークホルダーとの対話が促進される
● 「SX銘柄」に選定されることで、自社のSXへの取組みをグローバル投資家に発信できる

具体的な調査項目は、2022年8月に改訂された「価値協創ガイダンス 2.0」に準拠している。記述式項目が5問、選択式項目が52問となっており、選択式項目の数では「KPI・ガバナンス」が最も多くなっている。

価値協創
ガイダンス2.0
SX調査票
構成
記述式項目
(要旨)
選択式項目
(例として1問目)
価値観 価値観・長期戦略 ●メガトレンドをどのように想定し、どのような社会課題を重要課題として特定しているか
●「目指す姿」をどのように設定し、「ビジネスモデル」をどのように構築しているか
●どのようにリスクと機会の分析を反映しているか。
14問
「競争優位のある事業を通じて解決し、長期企業価値向上につなげていく上での社会のサステナビリティ課題を、重要課題として特定していますか」
長期戦略(長期ビジョン、ビジネスモデル、リスクと機会)
実行戦略(中期経営計画など) 実行戦略 ●「目指す姿」と現在の姿とのギャップを埋める観点から、人材、DX、事業ポートフォリオ、無形資産投資、資本政策等の戦略を策定しているか 14問
「目指す姿を実現する長期戦略・価値観と整合する実行戦略を立案していますか」
成果と重要な成果指標(KPI) KPI・ガバナンス ●「目指す姿」の実現に向けてどのようなガバナンス体制を構築し、進捗管理のためにどのようなKPIを設定しているか
●外部環境の変化等に応じて、「目指す姿」とそれに基づく戦略の適切な見直しを図っているか
17問
「企業全体の価値創造に関するKPIや企業独自のKPIを、価値創造ストーリーの実現に向けて整合的に設定していますか」
ガバナンス
実質的な対話・エンゲージメント 実質的な対話・エンゲージメント ●重要課題も踏まえてアジェンダを設定しているか
●投資家の属性や対話の目的に応じた対応者を設定しているか
●得られた示唆を基に企業の取組・体制を見直すとともに、進捗状況・成果を説明しているか
7問
「統合思考に基づき、価値創造を構成する各要素を一連の価値創造ストーリーとして策定・開示し、投資家等と対話を行っていますか」
上記の実現可能性を判断 ●過去5~10年程度の取組実績
資本コストや資本収益性をどのように把握、市場評価をどのように分析・評価して、どのような戦略を構築・実行したか


資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。

審査の結果、SX銘柄として何社が選ばれるかは明らかにされていない。参考になるのは、同じく経済産業省が2022年6月に選定・公表した「DX銘柄2022」だろう。DX銘柄2022ではDX銘柄として33社、うち2社がグランプリに選ばれている(中外製薬、日本瓦斯)。また他にも「注目企業」として事実上の“次点”と見られる15社も公表された。なお、同省は今年9月に「DX銘柄2024」の選定に向けた調査を開始している。

留意しなければならないのは、SX銘柄は「PBR1倍以上」の企業から選定されるということだ。具体的には、2022年10月~2023年9月までの月末最終営業日時点のPBRを平均した値が1倍以上の企業が、審査対象としてスクリーニングの対象となる。PBR1倍未満の企業が応募(調査票を提出)しても審査対象にすらならず、フィードバックシートを得ることすらできない(SX銘柄2024 募集要領等説明(経済産業省)5:30頃)。すなわち、SX銘柄の選定は株価重視の厳しいスタンスで行われると言える。低PBR企業に対しては、まずは足元の株価を改善することなくしてサステナビリティなどの長期戦略は信認され得ない、という資本市場におけるコンセンサスが突きつけられていると言えそうだ。


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価 ÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。





2023/10/16 アンチESGの動きは日本の運用会社にも広がるか?

今月始め(2023年10月3日)には国連責任投資原則(PRI)の年次総会「PRI in Person 2023」が東京で開催され、世界中から多くの投資家(アセットオーナー(年金基金や保険会社)およびアセットマネージャー(運用会社))が参加した。年次総会には岸田文雄首相も登壇、「代表的な公的年金基金、少なくとも7基金、90兆円規模」がPRIに署名するよう調整しているとして、ESG投資のさらなる拡大にコミットしたことは注目に値する(首相のコメント全文はこちら)。運用資産が世界最大の220兆円に上るGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2015年にPRIに署名しているが、これに続く年金は極めて少なかった。今回、総理の言葉どおり運用総額90兆円の7つの公的年金がPRIに署名すれば、アセットマネージャーから企業に対し、ESGに関するエンゲージメントが一層活発になることは間違いない。


国連責任投資原則(PRI) : (国連)PRIとは「(United Nations) Principles for Responsible Investment」の略で、機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するESG投資の世界的なプラットフォーム。PRIに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。

しかし、こうした動きの一方で、・・・

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2023/10/16 アンチESGの動きは日本の運用会社にも広がるか?(会員限定)

今月始め(2023年10月3日)には国連責任投資原則(PRI)の年次総会「PRI in Person 2023」が東京で開催され、世界中から多くの投資家(アセットオーナー(年金基金や保険会社)およびアセットマネージャー(運用会社))が参加した。年次総会には岸田文雄首相も登壇、「代表的な公的年金基金、少なくとも7基金、90兆円規模」がPRIに署名するよう調整しているとして、ESG投資のさらなる拡大にコミットしたことは注目に値する(首相のコメント全文はこちら)。運用資産が世界最大の220兆円に上るGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2015年にPRIに署名しているが、これに続く年金は極めて少なかった。今回、総理の言葉どおり運用総額90兆円の7つの公的年金がPRIに署名すれば、アセットマネージャーから企業に対し、ESGに関するエンゲージメントが一層活発になることは間違いない。


国連責任投資原則(PRI) : (国連)PRIとは「(United Nations) Principles for Responsible Investment」の略で、機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するESG投資の世界的なプラットフォーム。PRIに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。

しかし、こうした動きの一方で、米国では“アンチESG”の動きが活発化してきている(2023年2月14日のニュース『「ESG」という言葉を使うことをやめる動き』、2022年12月9日のニュース「ESG投資に強い逆風 巨大自治体がESGを考慮した運用会社への委託打ち切り」、2022年9月2日のニュース「ESG積極派と否定派の間で揺れるブラックロック」参照)。テキサス州やフロリダ州を中心として、共和党が優位な州ではESG投資を禁止しようという動きが出てきている。実際、フロリダ州では2023年5月にESG投資活動を制限する法律が成立した。こうした州のアンチESGのターゲットはそれぞれの州に属する公務員年金等であり、実際、公務員年金等がESG投資を行うアセットマネージャーとの契約を解除するケースが拡大している。契約解除の対象には、米国を代表する大手アセットマネージャーも含まれる。


ESG投資 : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資すること。

これらの動きの背景にあるのは政治であり、ESGは“政争の道具”にされていると言っても過言ではない。現在の民主党の取り組みは、気候変動を優先し、エネルギー業界に不利益をもたらしており、共和党はその不満の受け皿になろうとしている。米国では、ネットゼロの推進により、石炭、石油、天然ガスといったエネルギー業界への投資が控えられてきている。その結果、これらの産業で雇用問題が生じるとともに、その影響を受けた人々の票を集める形で、アンチESGが益々拡大してきている。特に、米国最大の石油、天然ガスの産出量があるテキサス州ではその傾向が顕著になっている。


ネットゼロ : 温室効果ガスの排出量から、森林等による温室効果ガスの吸収量を差し引いた量を正味ゼロにするということ。日本を含む多くの国が、2050年までに「ネットゼロ」を達成することを宣言している。

さらに、来年の大統領選挙に向け、アンチESGが益々勢いづく可能性がある。アンチESGは共和党支持者の中だけにいるのではなく、民主党支持者の中にも、自らの州にエネルギー産業がある場合、アンチESGを掲げる者が出てくることは十分に考えられるからだ。仮に来年、大統領選挙と合同で行われる連邦議会(上院・下院)選挙で共和党が勝利するようなことがあれば、アンチESGはさらに勢いづくだろう。もし共和党政権によって「受託者責任」の解釈が変更され、ESG投資が最終受益者に対して問題であるとなれば、年金等はESG投資を採用できなくなる。


受託者責任 : 受託者責任とは本来、「他者の信認を得て、一定の任務を遂行すべき者が負っている幅広い様々な役割・責任の総称」と定義されるが、資産運用における「受託者」とは資産運用の担い手、すなわち運用会社や年金基金を指し、運用会社や年金基金にとっての「受託者責任」とは、「最終受益者を含む顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任」のことをいう。

では、米国におけるこうした流れは、日本にどのような影響を与えるのだろうか。まず、米国系のアセットマネージャーがESG投資に消極的になることが予想される。これまで、彼らは日本企業に対してESGに関するエンゲージメントを行ってきたが、その動きは弱まる可能性があるだろう。また、アンチESGの米国アセットオーナーを顧客に持つ欧州系のアセットマネージャーも同様に変容するかもしれない。一方、日本のアセットマネージャーは、ほとんど影響を受けないと考えられる。なぜなら、多くの日本のアセットマネージャーは、米国の年金を顧客に持っていないからだ。何とも皮肉な話だが、これまで欧米のアセットマネージャーと比べてESG投資が遅れているとされた日本のアセットマネージャーは、引き続きESG投資を拡大することになりそうだ。

2023/10/13 女性役員比率の算式に「執行役員に準じる役職者」を入れる際の注意点

近年、女性役員が増加したとはいえ、東証プライム市場でもいまだに2割の会社では女性役員がゼロというのが現状だ。この状況を変えるべく、政府は2023年6月13日に公表した「女性版骨太の方針2023」の中で、東証にプライム市場の女性役員比率について数値目標を定めるよう求め、これを受け東証は2023年7月28日に規則改正の公開草案を公表し、パブリックコメントを募集していたことは既報のとおりだが(2023年8月4日のニュース『企業行動規範に女性役員選任努力義務を明記 「執行役員に準じる役職者」の範囲は?』参照)、10月4日にその確定版が公表されるとともに(下記参照。東証のリリースはこちら)、10月10日から改正後の有価証券上場規程(新旧対照表はこちら)が施行されている。確定版の内容を確認したところ、パブコメ版から特段の修正は加えられていない。

女性役員関連
企業行動規範の「望まれる事項」にプライム市場の上場内国会社を対象として以下の定めを追加する。
(1) 2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める。
(2) 2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す。
(3) 上記の目標を達成するための行動計画の策定を推奨する。
※ 上記の女性役員には、取締役、監査役、執行役に加えて、執行役員又はそれに準じる役職者を含むことができるものとする。

望ましい投資単位の水準関連
望ましい投資単位の水準の下限「5万円以上」の撤廃

東証プライム市場上場会社の2割にいまだ女性役員がいない中で、「2030年までに、女性役員の比率を30%以上とする」という目標のハードルは決して低くない。そこで、この目標を達成するため、上記赤字部分の「女性役員には取締役、監査役、執行役に加えて、執行役員又はそれに準じる役職者を含むことができる」という点を利用しようと考える会社もあるものと思われるが、その場合、2つの注意点がある。

1つ目は、・・・

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2023/10/13 女性役員比率の算式に「執行役員に準じる役職者」を入れる際の注意点(会員限定)

近年、女性役員が増加したとはいえ、東証プライム市場でもいまだに2割の会社では女性役員がゼロというのが現状だ。この状況を変えるべく、政府は2023年6月13日に公表した「女性版骨太の方針2023」の中で、東証にプライム市場の女性役員比率について数値目標を定めるよう求め、これを受け東証は2023年7月28日に規則改正の公開草案を公表し、パブリックコメントを募集していたことは既報のとおりだが(2023年8月4日のニュース『企業行動規範に女性役員選任努力義務を明記 「執行役員に準じる役職者」の範囲は?』参照)、10月4日にその確定版が公表されるとともに(下記参照。東証のリリースはこちら)、10月10日から改正後の有価証券上場規程(新旧対照表はこちら)が施行されている。確定版の内容を確認したところ、パブコメ版から特段の修正は加えられていない。

女性役員関連
企業行動規範の「望まれる事項」にプライム市場の上場内国会社を対象として以下の定めを追加する。
(1) 2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める。
(2) 2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す。
(3) 上記の目標を達成するための行動計画の策定を推奨する。
※ 上記の女性役員には、取締役、監査役、執行役に加えて、執行役員又はそれに準じる役職者を含むことができるものとする。

望ましい投資単位の水準関連
望ましい投資単位の水準の下限「5万円以上」の撤廃

東証プライム市場上場会社の2割にいまだ女性役員がいない中で、「2030年までに、女性役員の比率を30%以上とする」という目標のハードルは決して低くない。そこで、この目標を達成するため、上記赤字部分の「女性役員には取締役、監査役、執行役に加えて、執行役員又はそれに準じる役職者を含むことができる」という点を利用しようと考える会社もあるものと思われるが、その場合、2つの注意点がある。

1つ目は、それによりかえって女性役員の比率が低下してしまう恐れがあるという点だ。東証は「執行役員又はそれに準じる役職者の範囲」について、「会社法上の『支配人その他の重要な使用人の選任及び解任』として、取締役会の決議による選任・解任がされている役職者を基本としつつ、業務において重要な権限を委任されている役職者等、運用状況を踏まえて対象となる役職者を回答企業が判断できる」と柔軟な姿勢を見せているが(2023年8月4日のニュース『企業行動規範に女性役員選任努力義務を明記 「執行役員に準じる役職者」の範囲は?』参照)、この柔軟な姿勢が必ずしも「女性役員比率の向上」につながるとは限らない。東証は女性役員比率の計算方法について寄せられたパブリックコメントに対し、以下の通り回答している(東証の回答の番号「4」参照)。

コメントの内容 女性役員の比率の算出にあたって、執行役員又はそれに準じる役職者を含める場合、分子と分母の双方に含める必要があるのか、算出方法を明確にすべき
東証の考え方 女性役員の比率の算出にあたって、執行役員又はそれに準じる役職者を含めるかどうかについては、各社において、その現状や行動計画の内容も踏まえ、判断いただくことを想定しておりますが、含める場合には、分子だけでなく分母にも、執行役員又はそれに準じる役職者を含めて計算することが適当と考えられます

東証の考え方を前提にすると、「執行役員又はそれに準じる役職者に含まれる女性の数」を女性役員に含める際には、「執行役員又はそれに準じる役職者に含まれる女性の比率」が重要となる。女性役員の比率の算出にあたって「執行役員又はそれに準じる役職者に含まれる女性の数」を分子に入れる場合には同時に「執行役員又はそれに準じる役職者の総数(男性も含む)」も分母に入れなければならないということは、「執行役員又はそれに準じる役職者に含まれる女性の比率」次第で、「執行役員又はそれに準じる役職者に含まれる女性の数」を女性役員に含めなかった場合よりも女性役員の比率が低下してしまう。

2つ目は、上記「東証の考え方」でも触れられている「行動計画」(女性活躍推進法に基づく行動計画を指す)との整合性だ。「執行役員又はそれに準じる役職者に含まれる女性の数」を増やすことが行動計画に明示されていれば、「執行役員又はそれに準じる役職者に含まれる女性の数」を女性役員に含めても違和感はなく、単なる数値改善だけを目的としたものではないことをアピールできる。「執行役員又はそれに準じる役職者に含まれる女性の数」を女性役員に含める場合は、それに先立ち行動計画との整合性を必ず検討するようにしたい。

2023/10/12 【2023年9月の課題】今後の有価証券報告書の開示実務体制(会員限定)

統合報告書は複数部門にまたがる“横断的タスクフォース”により作成

周知のとおり、2023年3月期以降に終了する決算期の有価証券報告書から、非財務情報の開示が義務化されました(詳細は【2022年12月の課題】「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」の内容 参照)。今後も非財務開示のさらなる拡充が見込まれる中、上場企業各社では、これまで主に経理部門に依存してきた有価証券報告書の開示実務体制を大きく変えていかざるを得ないものと考えられます。

非財務情報の開示にはこれまで各社が自主的に取り組んできた歴史があり、各社によって主管部署や部門間の連携体制は異なります。経営陣としては、非財務情報開示の本格化に備え、まずは自社の現在の取り組み状況とそれに関わっている部門を把握したうえで、開示情報を収集するための社内の協力体制を構築することが重要になります。

もっとも、このようなプロセスは既に統合報告書の作成において実践し、経験してきたという企業も多いはずです。まだ統合報告書を作成したことがないという企業はもちろんのこと、既に作成しているという企業も、他社の制作体制を参考にすることで、新たな有価証券報告書の開示体制の構築・充実を図りたいところです。

統合報告書は複数部門にまたがる“横断的タスクフォース”により作成されるケースがほとんどです。具体的には、IR部門、サステナビリティ部門、経営企画部門、広報部門がコアメンバーになることが多く、必要に応じて経理・財務部門、総務(ガバナンス担当)部門、人事部門も参加します。このほか、業種や企業の特徴によっては、研究開発部門、調達部門、営業部門など社内のあらゆる部門に加え、主要子会社も関与します。

これらの中でコアメンバーとしてリーダーシップをとることが最も多いのはIR部門です。なぜなら、統合報告書は投資家を第一の読者に想定しているからです。次いで、日頃から社内横断的な取り組みを担うサステナビリティ部門が多くなっています。

統合報告書の普及が始まった2012年頃は、アニュアルレポートを担当するIR部門と、サステナビリティレポートを担当するサステナビリティ部門の2部門のみで統合報告書の作成するケースが少なくありませんでした。しかし、これら2部門だけでは得られる情報に限界があるため社内の他部門の巻き込みが始まり、特に大企業では上述のような“横断的タスクフォース”体制をとるところが増えていったという経緯があります。逆に言えば、このような体制を構築できず、限られた部門だけで作成を続ける企業が統合報告書を進化させていくことは難しいと言えるでしょう。

複数の部門が協働することで非財務情報開示が高度化

統合報告書に関する情報収集の一般的なフローとしては、まず担当役員やコアメンバーで構成される事務局が中心となって、その年の統合報告書のコンセプトを決定します。そのコンセプトに基づき、足りない情報や更新すべき情報をそれぞれの担当部門にヒアリングして収集していきます。例えば最近では、「人的資本経営」への注目度の高まりとともに、人事部門と連携することが増えています。

収集した情報を具体的な原稿に落とし込む作業では、事務局が他社の動向や外部(投資家等)の要請や踏まえ押さえるべき要素を提示しながら、実務担当部門と議論して原稿の内容を決めていきます。原稿は担当部門が執筆するのが通常ですが、統合報告書には自社が現在実施していることのみならず、現状の課題分析や自社が将来目指す姿まで描く必要があるため、担当者レベルでは執筆し切れないこともあります。その場合、経営陣に取材し、これらについての考え方を引き出すインタビュー記事を掲載するケースも見受けられます。

統合報告書は“ロングジャーニー”を表現するものであり、たとえ単年で考えると非効率に見える取り組みであっても、継続することが重要です。また、統合報告書を作成するためのやりとりを通じて担当部門が自社の課題を認識し、それを新たな取り組みや開示の改善につなげれば、自社にとって大きなメリットになります。

今後はISSBで非財務情報の開示基準の開発が進み、それがSSBJ を通じて日本の有価証券報告書にも反映されることが見込まれますが、「非財務情報」とはいっても「財務報告」の 一部であり、財務情報とのつながりが重視されます。とはいえ、財務情報と非財務情報のつながり・関係は専門家の間でも未だ不明確で、ましてや企業にあっては、明確に整理できているところはほとんどないのが現状です。また、社内の各部門においても、自部門に関する専門知識はあっても、他部門について深い知識を有しているケースは稀です。トップダウンで統合報告書を制作しているごく一部の企業では、役員からすべての情報が整理されて下りてくるということもありますが、通常はボトムアップで情報整理を行わなければならず、その場合、各部門の担当者は数年かけてお互いの部門に関する知識ややっていることを理解し合いながら、統合報告書の精度を高めていくことになります。したがって、統合報告書の事務局担当者には社内で顔の広い人、調整能力が高い人が就くと、統合報告書の作成もスムーズに進みやすいと言えます。


ISSB : International Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審議会)。資本市場向けのサステナビリティ開示の包括的なグローバル・ベースラインを開発するため、IFRS財団が2021年11月に設立した団体。
SSBJ : 日本における非財務開示の基準を作成する団体。IFRS(国際財務報告基準)の母体であるIFRS財団が「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)」を設立し、非財務開示の国際的な基準「サステナビリティ報告基準」を策定することを受け、日本では財務会計基準機構(FASF)が母体となり、IFRS財団におけるISSBに相当するSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)が設立された。

複数の部門が協働することで情報開示が高度化する事例として、2023年3月期に係る有価証券報告書から義務化された女性管理職比率や男女間賃金格差といった指標の開示があります。例えば男女間賃金格差が大きい企業がその数字だけを開示すれば、有価証券報告書の読み手には「男女差別が残る古い体質の企業」のように映ってしまう恐れがあります。特に人事部門だけが本開示に対応すると、開示ルールの順守を意識するあまり、正確な数字を集計することだけに労力を割こうとする傾向があります。そこで、投資家の視点を持つIR部門が関与し、その要因分析や今後の改善施策までをセットで開示したり、欧米各社の事例や投資家以外の多様なステークホルダーの志向にも詳しいサステナビリティ部門が関与し、表現をチェックしたりすることで、男女間賃金格差が大きい企業であっても、業種特性等、合理的な理由により投資家の納得感を醸成することができ、必ずしもネガティブな評価を受けずに済むこともあります。

今後の課題としては、統合報告書は任意開示書類であるがゆえに会社都合で発行が遅れることも許容され、半年以上かけて作成されることが少なくない一方、法定開示書類である有価証券報告には提出期限(事業年度終了後3か月以内)があることから、情報の質を高めつつも、効率的な開示体制を構築していく必要があります。また、有価証券報告書における非財務情報の増加に伴い、各開示媒体で情報の重複が増えることが予想されるため、それぞれの媒体の役割、コンテンツ、ボリュームを改めて検討することも求められます。

最後に、日経統合報告書アワード2022でグランプリを受賞した2社の制作体制と制作プロセスを紹介します。いずれも複数部門が関与しており、統合報告書の巻末に制作メンバーを掲載しています。今後、非財務情報に対応した有価証券報告書の開示体制を構築するうえでの参考にしてください。

■オムロン 統合レポート2022(124ページ参照)
「統合レポート 2022」編集委員
グローバルインベスター&ブランドコミュニケーション本部
編集長1名、副編集長1名、その他の編集委員6名
「統合レポート 2022」編集メンバー
インダストリアルオートメーション ビジネスカンパニー
3名
オムロン ヘルスケア株式会社
2名
オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社
2名
デバイス&モジュール ソリューションズカンパニー
2名
イノベーション推進本部
3名
監査役室
2名
グローバルインベスター &ブランドコミュニケーション本部
11名
グローバルコーポレートベンチャリング室
1名
グローバル人財総務本部
5名
グローバルリスクマネジメント・法務本部
4名
サステナビリティ推進室
7名
取締役室
2名
制作協力
宝印刷グループ、株式会社ダイヤモンド社、株式会社ディライツ広告事務所

■レゾナック・ホールディングス RESONAC REPORT 2023(136ページ参照)
【制作プロセス】
1. CEOを含む全CXOが出席するサステナビリティ推進会議で方向性・メッセージを決定
2. 毎月開催の企画会議でコンテンツ企画・制作
メンバー:CFO 染宮 秀樹、CSO 真岡 朋光、IR部、組織・人材開発部、カルチャーコミュニケーション部、経営企画部、ブランド・コミュニケーション部、サステナビリティ部
3. 登場する部門のコンテンツ・サポートメンバーと協議、原稿執筆
4 経営会議と取締役会で議論、承認