2026/01/30 2026年1月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
問題文のとおり、日本企業は2014年度から2024年度にかけて経常利益を78%増加させており、その間、配当金は137%とそれを大きく上回る伸びを示す一方、従業員報酬の増加率は18%にとどまっています。従業員報酬の増加が日本企業の課題であることが分かります。これらの数値を自社の数値と比較してみても面白いかもしれません。

こちらの記事で再確認!
2026年1月7日 「株主還元の是正」鮮明に 2026年金融・資本市場政策の展望(会員限定)

2026/01/30 2026年1月度チェックテスト

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【問題1】

日本企業は2014年度から2024年度にかけて経常利益を78%増加させている。その間、配当金は137%とそれを大きく上回る伸びを示す一方、従業員報酬の増加率は18%にとどまっている。

正しい
間違い
【問題2】

日本では、社外取締役を複数選任する企業が大幅に増加したことから、筆頭独立社外取締役を選定する企業が多数派となった。

正しい
間違い
【問題3】

原材料の調達途絶の発生のような緊急事態であっても、他社との間で調達数量、調達先等の情報交換・共有を行うことは、独占禁止法に抵触する行為となる。

正しい
間違い
【問題4】

企業におけるAIの活用が加速しているが、現時点で企業におけるAIガバナンスについて公的な指針は存在しない。

正しい
間違い
【問題5】

社外取締役を取締役会議長に据えれば、取締役会に関するガバナンス上のリスクはすべて解決する。

正しい
間違い
【問題6】

議決権行使助言会社大手のグラスルイスは、2026年1月開催の株主総会から、プライム市場上場会社を対象として、取締役会における多様な性別の取締役比率を20%以上とすることを求めている。

正しい
間違い
【問題7】

既に欧州やカナダでは、企業に対し、人権や環境リスクをサプライチェーン全体で把握し、予防・是正する「人権デュー・ディリジェンス」の実施を求める法令が本格運用段階にある。


正しい
間違い
【問題8】

金融庁は有価証券報告書の開示内容を定める「企業内容等の開示に関する内閣府令」を改正し、2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書(以下、有報)から「従業員の平均給与の対前年比増減率」の開示を求める方針である。

正しい
間違い
【問題9】

上場会社の社長が自ら車を運転して交通事故を起こすと大変な事態となるため、社長は会社の費用で、友人との会食、旅行、家族の送迎および花火大会などの私的目的に運転代行会社のサービスを利用してもなんら問題ない。

正しい
間違い
【問題10】

TOB価格を吊り上げるキャンペーンを「バンプトラージ」と言うこともある。

正しい
間違い

2026/01/29 【役員会 Good&Bad発言集】下請法の改正(4)

上場会社S社(製造業)の取締役会で管理担当取締役が「2026年1月から取適法が施行されたため、中小受託事業者への支払い方法としてファクタリングを利用しない方向で見直す」と発言したのをきっかけに、次の3人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「取適法では、中小受託事業者への支払い方法としてファクタリングが明文で禁止されているわけではありません。また、ファクタリングに伴う手数料は、委託事業者ではなくファクタリング業者に支払われる金融コストであるため、取適法には抵触しません。加えて、支払い方法としてファクタリングを用いることについて下請事業者との間で書面で合意していれば、ファクタリングの利用が問題視されることはないです。」

取締役B:「取適法の趣旨を踏まえ、実務上もっとも簡単で安全な支払い方法は法定の期限内に中小受託事業者の預金口座への全額振り込む方法です。今後は委託事業者側の金融コスト負担が増えることになりますね。」

取締役C:「そうですね。ただ、中小委託事業者への支払いを銀行振込みにする場合、2026年1月に入ってからの支払いにあたっては振込手数料の減額禁止が適用されるので留意してください。」

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2026/01/29 【役員会 Good&Bad発言集】下請法の改正(4)(会員限定)

<解説>
中小受託事業への代金の支払方法、実務上は銀行口座への振り込みがもっとも簡便

2026年1月1日より、取引適正化法(以下「取適法」。旧下請法)が施行されました。これまで、当フォーラムのニュースでは、取適法の実務対応に極めて有益なパブコメ結果を4回にわたって解説しました。

第1弾:2025年10月7日のニュース『改正下請法、従業員基準への批判的な意見相次ぐ~パブコメ結果の解説①~
第2弾:2025年10月17日のニュース『取適法下での特定運送委託対応~パブコメ結果の解説②~
第3弾:2025年10月28日のニュース『取適法下での「協議に応じない一方的な代金の決定」の実務対応~パブコメ結果の解説③~
第4弾:2025年11月6日のニュース『従来の実務を完全否定 取適法下では振込手数料減額禁止に~パブコメ結果の解説④~

また、下請法の改正については【役員会 Good&Bad発言集】でも、これまで3回取り上げてきました。
第1弾:【役員会 Good&Bad発言集】下請法の改正(1)
第2弾:【役員会 Good&Bad発言集】下請法の改正(2)
第3弾:【役員会 Good&Bad発言集】下請法の改正(3)

今回の【役員会 Good&Bad発言集】では、取適法のトピックのうち「代金の支払遅延」および「振込手数料減額禁止」を取り上げることにします。

まず、「代金の支払遅延」に関して、取適法の運用基準では新たに下記の2つが追加されている点に注意が必要です。

代金の支払遅延に関して運用基準に追加された違反行為例
2-15 電子記録債権の使用による支払遅延 委託事業者は、中小受託事業者に対して、電子記録債権によって代金を支払う際に、支払期日より後に満期日が到来する電子記録債権を使用し、支払期日に金銭を受領するために中小受託事業者において割引を受けることを必要とさせていた。
2-16 一括決済方式の使用による支払遅延 委託事業者は、中小受託事業者に対して、一括決済方式によって代金を支払う際に、支払期日以前に決済日が到来する一括決済方式を使用していたが、決済に伴い生じる受取手数料を中小受託事業者に負担させていた。

従来、中小受託事業者への支払手段として、電子記録債権やファクタリングが用いられるケースが少なくありませんでした。しかし、取適法では、「中小受託事業者が支払期日までに代金満額相当の現金を得ることが困難なもの」は、取適法が禁止する「代金の支払遅延」に該当するとされています。このため、中小受託事業者が換金時に手数料の負担を求められる決済方法は、中小受託事業者が「代金満額相当の現金」を得られないため、禁止行為に該当することになります。もっとも電子記録債権やファクタリングそのものが完全に否定されたわけではないことは知っておきたいところです。すなわち、電子記録債権やファクタリングであっても中小受託事業者が法定期限内に代金満額を得ることができ、手数料を委託事業者が負担する仕組みであれば、「代金満額相当の現金」を得ている点では要件を満たします。しかし、そこまでしてファクタリング等を利用し続けるメリットはないため、端的に中小受託事業者の預金口座へ法定期限内に代金満額を振り込む方が圧倒的に簡便であると言えるでしょう。

なお、中小受託事業者の預金口座へ振り込む場合に振込手数料相当額を代金から減額する行為は、「代金満額相当の現金」を得られていないとして、取適法上、禁止されているので注意が必要です。この点、従来の下請法では、振込手数料の減額について、「明示的な合意の存在」と「実費の範囲内であること」を条件として、適法と整理されていました。しかし、取適法の下では、中小受託事業者との合意の有無や、実費の範囲内であるか否かにかかわらず、振込手数料分を代金から減額する行為そのものが違法となります。

取適法の上記の定めは、いずれも、2026年1月1日以降に委託する取引に関する支払時から適用されます。2026年1月1日以降の支払いであっても、委託が2025年12月31日までの分であれば取適法の適用対象外となります。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役B:「取適法の趣旨を踏まえ、実務上もっとも簡単で安全な支払い方法は法定の期限内に中小受託事業者の預金口座への全額振り込む方法です。振込手数料は委託事業者である当社が負担します。今後は委託事業者側の金融コスト負担が増えることになりますね。」
コメント:問題文のとおり、法定の期限内に行う預金振込がもっとも簡単ですし、手数料を委託事業者が負担することで、中小受託事業者は「代金満額相当の現金」を得ることができます。取締役Cはこれまで委託事業者が中小受託事業者に押し付けていた金融コストを今後は委託事業者が負担することになるという金融コストの負担関係のシフトについても指摘出来ており、GOODです。

BAD発言はこちら

取締役A:「取適法では、中小受託事業者への支払い方法としてファクタリングが明文で禁止されているわけではありません。また、ファクタリングに伴う手数料は、委託事業者ではなくファクタリング業者に支払われる金融コストであるため、取適法には抵触しません。加えて、支払い方法としてファクタリングを用いることについて下請事業者との間で書面で合意していれば、ファクタリングの利用が問題視されることはないです。」
コメント:取適法においてファクタリングが明文で禁止されていない点は事実です。しかし、取適法は「支払期日までに代金満額相当の現金を得られるか」という結果で違法性を判断します。手数料の支払い先が誰であるかは関係なく、合意の有無にかかわらず、中小受託事業者が手数料負担により満額を得られない場合は、「代金の支払遅延」に該当し、違法となります。

取締役C:「そうですね。ただ、中小委託事業者への支払いを銀行振込みにする場合、2026年1月に入ってからの支払いにあたっては振込手数料の減額禁止が適用されるので留意してください。」
コメント:取適法は2026年1月1日以降に委託する取引に適用され、委託代金支払い関連のルールも当該取引に関する支払い時から適用されます。一般的な支払いサイトである『月末締め翌月末払い』であれば、2026年2月末の支払い時から適用されることになります。取締役Cの発言は取適法の適用タイミングについてあいまいな理解をもとにしたBAD発言です。

2026/01/28 「バンプトラージ」が急増する背景

フィデューシャリーアドバイザーズ代表
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 吉村一男

昨年のソフト99コーポレーションの MBO 頓挫(2025年11月20日のニュース「ソフト99の MBO 頓挫に学ぶこと」、同年11月26日のニュース「部分買付けの是非」参照)に象徴されるように、TOB に反対する株主が、TOB 公表後に独立した専門家に株式価値の算定を依頼し、その結果をもとに TOB 価格やその前提条件の妥当性に疑問を投げかけ、TOB 価格を吊り上げるキャンペーン(バンプトラージ=Bumpitrage)を展開するケースが急増している。

なぜバンプトラージが急増しているのだろうか。直接的な原因は TOB 価格が安いことにあるが、それ以外にも原因がある。それは、・・・

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2026/01/28 「バンプトラージ」が急増する背景(会員限定)

フィデューシャリーアドバイザーズ代表
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 吉村一男

昨年のソフト99コーポレーションの MBO 頓挫(2025年11月20日のニュース「ソフト99の MBO 頓挫に学ぶこと」、同年11月26日のニュース「部分買付けの是非」参照)に象徴されるように、TOB に反対する株主が、TOB 公表後に独立した専門家に株式価値の算定を依頼し、その結果をもとに TOB 価格やその前提条件の妥当性に疑問を投げかけ、TOB 価格を吊り上げるキャンペーン(バンプトラージ=Bumpitrage)を展開するケースが急増している。

なぜバンプトラージが急増しているのだろうか。直接的な原因は TOB 価格が安いことにあるが、それ以外にも原因がある。それは、少数株主が公平な条件で株式を売却できるルールの脆弱さだ。

米国では、TOB 価格に不満を持つ株主は裁判所に訴え、価格の妥当性を司法の場で争うことが前提とされている。すなわち、価格の公正性は規制によって担保されるのではなく、最終的には訴訟によって調整される仕組みとなっている。そのため、少数株主に対しては、証拠開示制度(ディスカバリー)集団訴訟(クラス・アクション)差止め訴訟等が認められている。


証拠開示制度(ディスカバリー) : 少数株主が買収者や経営陣が保有する株価算定資料や交渉記録を入手できる制度。価格の妥当性や手続きの公正性を確認するうえで重要な役割を果たす。ディスカバリー(discovery)とは、法律文脈では 「証拠開示」 を意味する。
集団訴訟(クラス・アクション) : TOB や M&A で損害を受けた株主が一体となり、買収者や経営陣に対して価格の引き上げや補償を求める訴訟。個別の株主では困難な救済を可能にする手段として機能する。
差止め訴訟 : 少数株主が、TOB が自分たちに不利な条件(TOB 価格が低いなど)で進められていると判断した場合に、裁判所に TOB の実施停止や条件変更を求める訴訟。TOB 価格や手続きの公平性を確保するために用いられる。

一方、英国では、TOB 価格は「公正な価格」であることが求められ、買収者が TOB の公表前12か月の間に既存株主から市場内取引や相対取引などで実際に支払った株式取得価格のうち最も高い水準を下回る条件での TOB は認められない。すなわち、直近1年間における株式取得価格のうち最高価格が最終的な TOB 価格の下限となる。したがって、米国のように、TOB 価格に不満を持った株主が裁判所に駆け込むことはほとんどない。

日本の TOB 規制は、元々は米国の企業買収ルールの強い影響を受けていたが、1990年以降、英国のルールの影響を受けるようになった。しかし、米国のように、少数株主にディスカバリーやクラス・アクションは認められておらず、TOB 価格に不満を持った株主が裁判所に価格決定の申立てをしても、TOB 価格が上方修正されることは滅多にない。英国のように TOB 価格の下限を設ければ、TOB 価格で揉めることは少なくなるかもしれない。例えば、イオンはツルハホールディングスに対し2025年12月3日から2026年1月6日まで TOB を実施したが、当初の TOB 価格は11,400円(株式分割前換算。以下同)だった。これは、イオンが野村證券から相対で譲り受けたツルハ HD 株式の譲渡価格の11,780円よりも低い。英国のルールであれば、イオンは TOB 価格を11,780円以上にしなければならないことになる(株主の反発を受け、最終的には14,500円へと引き上げられ TOB が成立)。しかし、英国がこのようなルールを採用できるのは、「テイクオーバー・パネル(Takeover Panel)」と呼ばれる自主規制機関があるからである。パネルの事務局は、従業員のほか、法律事務所、会計事務所、証券会社(投資銀行)などからの出向者によって構成されている。事務局のトップは証券会社(投資銀行)からの出向者が務めることが通例となっており、彼らが企業買収のルールを決定し、運用している。しかし、日本にはそのような自主規制機関は存在しない。

結局、日本においては TOB 価格の妥当性が会社と投資家の「力関係」に委ねられており、この構造がバンプトラージを誘発している。投資家は、日本の企業買収法制では少数株主が公平な条件で株式を売却できる権利が十分保障されていないことを理解している。そこで、TOB 価格に納得できない場合には、ソフト99コーポレーションの MBO 事例のように、自ら対抗TOB を仕掛けて経営陣の提示価格の引き上げを画策することになる。こうした中、TOB のターゲットとなった会社の特別委員会には、第三者算定機関の株式評価を鵜呑みにするのではなく、株主の意見や市場の状況を考慮し、納得できるまで議論して価格を設定する姿勢が求められよう。


対抗TOB : 既存の買収提案に対抗して別の TOB を提示し、価格や条件を見直させる手法。
特別委員会 : 企業買収の公正性の確保を目的として設置される独立した合議体。企業価値の向上と一般株主の利益保護のため、企業買収の是非や取引条件の妥当性、公正性を検討・判断する。

2026/01/27 CGコード第三次改訂、原則数減少の一方で分量に大きな変化はない可能性も

金融庁はコーポレートガバナンス・コード(以下、CG コード)の第三次改訂を進めているが(2025年10月27日のニュース「CG コードの改訂に関する有識者会議がスタート、各論点への賛否状況は?」参照)、その議論の場である「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」は、2025年10月21日の第1回会合以来、開催されていない。3か月を超える空白期間が生じている現状は極めて異例と言えよう。過去の改訂(2018年および2021年)においては、このような長いインターバルはなかった。

年が明けても依然として第2回会合の開催が持ち越されたままとなっている背景には、・・・

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2026/01/27 CGコード第三次改訂、原則数減少の一方で分量に大きな変化はない可能性も(会員限定)

金融庁はコーポレートガバナンス・コード(以下、CG コード)の第三次改訂を進めているが(2025年10月27日のニュース「CG コードの改訂に関する有識者会議がスタート、各論点への賛否状況は?」参照)、その議論の場である「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」は、2025年10月21日の第1回会合以来、開催されていない。3か月を超える空白期間が生じている現状は極めて異例と言えよう。過去の改訂(2018年および2021年)においては、このような長いインターバルはなかった。

年が明けても依然として第2回会合の開催が持ち越されたままとなっている背景には、今回の改訂の主眼である「スリム化/プリンシプル化」を巡る意見調整に時間を要しているという事情がある。第三次改訂に関する今後の見通しは以下のとおり。

今後のスケジュール

コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025」や「2025事務年度 金融行政方針」において CG コードの改訂が明確に掲げられている以上、2026年における第三次改訂の実施は動かないだろう。2018年、2021年の改訂では、3・4月に改訂案を公表し、パブリックコメントを経て6月に内容を確定させるとともに、運用を開始した。そして、企業はその年の12月末までに、改訂コードに対応した CG 報告書の提出を求められた。今回の改訂でも同様のタイムラインが堅持される可能性が高い。

したがって、第三次改訂においては、空白期間が生じた分、会合の回数は減少することになりそうだ。2018年は全5回、2021年は全7回の会合を開催したが、第三次改訂では全3~4回にとどまるだろう。限られた回数で議論を集約させる必要性から、第1回会合で示された方向性を大きく変えることなく、改訂作業が急ピッチで進むことが予想される。

スリム化/プリンシプル化

第三次改訂では、現在83ある原則(基本原則、原則、補充原則の合計)が大幅に削減される見込みとなっている。しかし、第1回会合では、総論としてはスリム化に賛同が集まる一方で、個別論点については慎重な意見も相次いだ。いわば「総論賛成、各論反対」の状況に陥っていると推測される。

例えば、サステナビリティ(人的資本を含む)、知的財産、研究開発投資や設備投資といったテーマに関係する各原則については、「政策的に退行しているとの解釈がなされないような留意も必要」「記載から外れると、やらなくていいんだという誤ったメッセージを送ることになる」といった指摘がある。また、第5章「株主との対話」を第1章「株主の権利・平等性の確保」に統合することについては、「株主との対話の重要性が決して現状から低下することのないようにすべき」と要望する声が上がっている。

これに対し経団連は、2025年12月8日に公表した提言「持続的な成長に向けたコーポレートガバナンスのあり方」により、企業の負担軽減の観点から、コードの「大胆なスリム化・プリンシプル化を図ること」を強く求めている(2025年12月9日のニュース「資本効率偏重に警鐘 経団連がコーポレートガバナンス改革に向け久々の本格的提言」参照)。

打開策として、第三次改訂では原則を大胆にカットする一方、各原則に「考え方」を追加するとともに、プリンシプルベース(原則主義)の趣旨を改めて周知するための「序文」も追加する方向だ。カットされた原則の内容は残った原則に追加される「考え方」に入れ込みつつ、むしろ文言を充実させる形でその意義を改めて周知徹底することも考えられる。改訂 CG コードは原則の数の減少という意味ではスリム化が進むものの、「考え方」と「序文」の追加により、全体の文字数やページ数は現在と大して変わらない可能性がある。

このほか、第1回会合の議論においては「取締役会の機能強化」や「政策保有株式の縮減」が、CG コードに盛り込むべき重要論点として新たに提起された。しかし、スリム化/プリンシプル化という方向性を鑑みると、これらの論点について原則を新設するハードルは高い。そこで、やはり各原則の「考え方」において、これらの論点を盛り込むことは十分に考えられよう。

第二回会合では改訂 CG コードの原案が示される見込み。企業にあっては、まずは今回の改訂で追加される「序文」や「考え方」の理解に努めたいところだ。

2026/01/26 【2025年12月の課題】取締役会の実効性向上に必要な解任基準 解答(会員限定)

株式会社レクタスパートナーズ 代表取締役 藤澤正路

取締役会の実効性を左右する経営陣の解任に関する機能

今やプライム市場上場会社の98.8%(東証が2025年7月18日に公表した資料参照)において、取締役の3分の1を独立社外取締役が占めるなど、上場会社各社のコーポレートガバナンス改革が進み、社外取締役比率といった形式面が整いつつある中、取締役会の実効性を左右する次なるテーマとなっているのが、経営陣の選解任、とりわけ解任に関する機能です。

OECD コーポレートガバナンス原則英国コーポレートガバナンス・コードでは、CEO の後継者計画と指名の監督を取締役会の重要責務として位置づけています(下記参照)。また、経済産業省が2024年に開催した「持続的な企業価値向上に関する懇談会」の成果物である「座長としての中間報告」でも「経営者の選解任等の機能の強化」が重要な課題に挙げられ(24ページ「課題④:取締役会の実効性の強化」参照)、さらに、現在金融庁が進めるコーポレートガバナンス・コードの再改訂(2025年10月27日のニュース「 CG コードの改訂に関する有識者会議がスタート、各論点への賛否状況は?」参照)の方向性を示す「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025」では、「適切な選解任手続の確保」が重要なテーマとして挙げられています(6ページ上から9行目参照)。

G20/OECD コーポレートガバナンス原則 V.D.4.

幹部経営陣を選出し、監督し、その業績を監視し、必要に応じて交替させ、さらに承継計画の監視をすること取締役会は幹部経営陣の業績を監督し、彼らの行動が取締役会が承認した戦略や方針と整合的であるか監視するべきである。取締役会は CEO を選出すべきであり、他の幹部経営陣も選出し得る。この基本的な機能を果たす際、取締役会は、CEO 及び取締役のプロフィールを特定し、その任命に関して取締役会に推薦する責務を負う指名委員会の支援を受け得る。多くの国・地域では、指名委員会のメンバー全員又は過半数を独立取締役であることを義務付け又は勧告している。指名委員会は、人材管理の方向づけや、幹部経営陣の選出に関する方針の検討を支える場合がある。ほとんどの二層構造の取締役会体制では、「監査役員会(supervisory board)」が、通常、幹部経営陣の大宗から成る「経営役員会(management board)」を任命する責任も負っている。取締役会は、事業の継続性を確保する観点から、CEO の承継計画の責任を負うべきであり、他の幹部経営陣についても同様の責任を負うことがある。承継計画は、不測の事態に備えた仕組みであると同時に、人材開発と多様性を支える長期的な戦略的ツールにもなる。

英国コーポレートガバナンス・コード 原則J ※和訳は当社

社外取締役は、業務執行取締役の任命および解任において主要な役割を担う。
社外取締役は、経営陣および各業務執行取締役の業績を、合意された業績目標に照らして精査し、説明責任を果たさせなければならない。
議長(chair)は、業務執行取締役が同席しない形で、社外取締役との会合を開催すべきである。

取締役会への任命は、形式的で、厳格かつ透明な手続に従うべきであり、また取締役会および上級経営陣のための効果的な後継計画を維持すべきである。
任命および後継計画の双方は、能力主義および客観的な基準に基づいて行われなければならない。

日本と欧米の現状

日本の現状を見ると、多くの場合、経営陣の「解任」は依然として制度として可視化されておらず、「辞任」や「引退」といった婉曲的な表現によって処理されています。その結果、取締役会がどのような判断に基づき経営陣の交代に踏み切ったのかが外部からは見えにくくなっています。

一方、欧米では、「辞任」であっても 「a change in leadership was necessary to restore confidence in the Company」(会社の信頼を回復するため、リーダーシップの変更が必要であった)などとして、取締役会の主導により CEO に退任を求めたことが開示されるケースが少なくありません。また、取締役会議長が主導する調査により社内規定違反が確認され、「即時解任」に踏み切った事例もあります。これに対し日本では、解任の手続きはもちろん、解任という判断に至るまでの議論のプロセスの透明性は低いと言えます。

ボーイング社 CEO の辞任決定時のプレスリリースより
取締役会は、リーダーシップの変更が必要であると判断した。
これは、同社が今後、規制当局、顧客、およびその他のステークホルダーとの関係修復に取り組む中で、会社への信頼を回復するために必要とされるものである。
出典:Boeing Press Release Details(和訳は当社)
ネスレ社 CEO 解任時のプレスリリースより
ネスレの取締役会は本日、フィリップ・ナヴラティル氏をネスレ S.A.の最高経営責任者(CEO)に任命したことを発表した。
これは、ロラン・フレイス氏の即時解任を受けたものである。ロラン・フレイス氏の解任は、直属の部下との未申告の恋愛関係に関する調査の結果によるものであり、この関係はネスレの企業行動規範(Code of Business Conduct)に違反するものであった。取締役会は、コーポレートガバナンスのベストプラクティスに基づき、会長ポール・ブルケおよび筆頭独立取締役パブロ・イスラが監督し、独立した外部弁護士の支援を受けて実施される調査を指示した。
出典:Nestlé, S.A. Press releases(和訳は当社)
日本企業における解任基準

一方で、コーポレートガバナンス・コード【原則3-1.情報開示の充実】のⅳ(取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続)への対応として、役員の解任基準を策定・開示する日本企業も増えてきています。

その多くは「公序良俗に反する行為」「健康上の理由により職務継続が困難となる場合」「会社の名誉を毀損するような言動」など当然とも言える解任事由を挙げるにとどまっていますが、経営能力や経営実績を解任事由に挙げる企業もあります。以下、実際の開示例を紹介します。

本事例では、「不正」や「法令・定款違反」といった明確なコンプライアンス違反のみを解任事由としており、業績悪化や経営判断の適否等は解任事由としていません。
職務執行において不正または重大な法令もしくは定款違反等があったと認められた場合(ヨータイ)
本事例では、法令・定款・社内規程への違反という明確な規範違反に加え、その結果として企業価値を著しく毀損した場合に限り解任されるという構造になっています。すなわち、企業価値の低下や業績悪化のみでは足りず、必ず違反行為の存在を要件としている点で、経営成果そのものを理由とする解任を排除する設計と言えます。
法令または定款その他当社グループの規程に違反し、当社グループの企業価値を著しく毀損した場合(東京きらぼしフィナンシャルグループ)

ただし、ヨータイ、東京きらぼしフィナンシャルグループの事例ともに、「取締役としての注意義務を著しく怠った判断(経営判断に至る意思決定プロセスの欠如や著しく不合理な決定)」により業績が悪化した場合には、会社法上の善管注意義務違反として解任につながる可能性は理論上はあります。ただし、その立証は容易ではなく、実務上は例外的なケースに限られます。

本事例では、「職務の懈怠」によって企業価値が著しく毀損された場合に限り解任事由になるとしています。すなわち、取締役としての職務を適切に果たさなかったこと、言い換えれば善管注意義務に反する行為があった場合を解任の要件としており、経営判断のプロセスや職務遂行の適切性を解任判断の基準に組み込んでいる点が特徴と言えます。
職務を懈怠することにより、著しく企業価値を毀損させた場合(エフピコ)
本事例では、法令違反や職務懈怠といった規範違反ではなく、「実績」という経営成果そのものを解任事由として明示的に位置づけている点に特徴があります。
職責・目標から実績が大きく乖離し、その回復が見込めない場合(OAT アグリオ)

もっとも、実績(業績)に関する解任基準がむやみに発動されたのでは企業経営の安定性は著しく損なわれます。解任基準が機能しているかどうかは、「解任が行われること」ではなく、取締役会が判断主体として解任の是非を検討し、結論を出せるプロセスが機能しているかどうかによって評価されます。したがって、結果として解任されないとしても、業績が著しく悪化した局面で解任の是非が指名委員会に諮問されることは、取締役会の実効性を測る一つの要素となり得るでしょう。