2022/11/04 【特集】ISSB公開草案・後編 「気候関連開示」のフレームワーク(3・会員限定)

(4)開示要件はTCFD以上の高いハードルに

S2基準案では、下表に記載したTCFD提言の4つの柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に基づく開示要件を詳細化、あるいはこれに追加した開示を求めているため、企業にとってはTCFD以上にハードルの高いものとなっている。

ただし、そのすべての事項の開示が必須となるわけではなく、S1基準案の2ステップアプローチの考えが適用される(2ステップアプローチの詳細は本特集・前編の「(3)2ステップアプローチ」参照)。すなわち、認識された重大な気候変動に関するリスク及び機会に関する4つの柱に基づく「コアコンテンツ」に関する開示事項のうち、重要(マテリアル)な情報のみを開示することになる。

なお、日本の有価証券報告書では、【ガバナンス】【リスク管理】がすべての企業で開示が義務化され、【戦略】【指標と目標】は重要性があれば開示が求められる予定となっている。

コアコンテンツ 開示目的 主な開示内容 留意点
【ガバナンス】 一般目的財務報告の利用者に、企業が気候関連のリスク及び機会をモニタリング・管理するために用いるガバナンスのプロセス、統制及び手続を理解してもらうようにすること ・気候関連のリスクと機会を監督する監視機関(ボード、委員会等)と経営者の役割の説明
・監視機関が、気候関連のリスク及び機会に対応するために設計された戦略を監督するための適切な人材を確保する方法
S1基準案で開示が求められるガバナンスと共通の内容については重複を避けるため記載する必要はない。
【戦略】 一般目的財務報告の利用者に、重大な気候関連のリスク及び機会に対処する企業の戦略を理解してもらうようにすること ・気候関連のリスクと機会を識別し、それらがビジネスモデル、バリュー・チェーン、戦略、意思決定等に与える影響
・気候変動リスクと機会が現在及び将来の財務情報に与える影響
・戦略のレジリエンスに関する分析(シナリオ分析
・排出目標達成のため使用するカーボン・オフセットの情報

バリュー・チェーン : 購買した原材料に対し、技術開発、生産、販売、人材育成といった一つひとつの企業活動が価値を付加し、最終的に顧客に対する価値が生み出すまでの一連の流れのこと。 バリュー・チェーンには、製品やサービスの構想から提供、消費・その終了まで、企業が製品・サービスを生み出すために使用し、依存する活動、資源等が全て含まれる。
レジリエンス : 気候変動に関連する不確実性に対する企業の調整能力。気候関連のリスク及び機会からの便益を管理する能力を含む。
シナリオ分析 : 不確実な条件下で、将来事象の結果の潜在的な範囲を識別・評価するプロセス。気候関連のシナリオ分析では、気候変動による物理的および移行リスクが、企業のビジネス、戦略、財務業績にどのような影響を与えるかについて企業が探究し、投資家等の理解を深めることが求められる。
カーボン・オフセット : 日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方のこと。

シナリオ分析では以下の開示が求められる。
・気候関連リスクに対する戦略のレジリエンスの分析
・その分析がどのように行われたか(使用したシナリオ、時間軸、インプット、シナリオが戦略のレジリエンスの評価とどう関連しているか)
・分析の結果(資産や投資の再配分、低炭素代替への投資)
【リスク管理】 一般目的財務報告の利用者に、企業が気候関連のリスク及び機会を識別、評価、管理する単一又は複数のプロセスを理解してもらうようにすること 気候関連のリスクと機会を識別、評価、管理、軽減するプロセス等に関する情報 S1基準案で開示が求められるリスク管理と共通の内容については重複を避けるため記載する必要はない。
【指標と目標】 一般目的財務報告の利用者に、企業がどのように重大な気候関連のリスク及び機会を測定し、モニタリング・管理するのかを理解してもらうようにすること 重大な気候関連のリスクと機会の管理に関する企業の実績を理解してもらうための以下のような情報
・産業横断的指標(温室効果ガス排出、移行リスク、物理的リスク、気候関連の機会、資本投下、内部炭素価額、報酬)
・産業別指標(SASBスタンダードに基づく指標、〔付録B〕で詳細規定)
・気候関連リスクの軽減、当該リスクへの適応、気候関連の機会の最大化のために経営者が設定した目標
・目標の達成状況を測定するため、取締役会や経営者が利用しているKPI

温室効果ガス排出 : Scope1~3の排出量の合計を指す。
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

・11セクター、68業種ごとの指標の開示を求めている。併せて、計算・記載方法をまとめた補足資料を公表
・ISSBは今後、産業横断的指標と産業別指標との関係性に関するガイダンスの策定を検討

(5)他のテーマ別基準が開発されていないことによる懸念

現在のところ、ISSBからはS2基準案以外の「テーマ別」基準案は公表されていない。しかし、S1基準案は気候変動にとどまらずサステナビリティ全般の開示に関する基準であるため、仮にS2基準しかテーマ別基準が存在しない状況でS1基準が適用された場合、その他のテーマ(水、生物多様性、人的資本、人権など)については、どの程度の開示をすればISSBの基準に準拠したことになるのかが不明のまま“見切り発車”ということになりかねない。こうした状況の中、少なくとも他のサステナビリティ情報開示基準の設定団体が公表している基準等を参考にすることは否定されないだろう。
 
近く改正が予定される有価証券報告書で開示の義務化が想定されているサステナビリティ情報は「気候変動」と「人的資本、多様性」に関するものだが、個別企業にとって重要な他のサステナビリティのテーマについても開示をすることが想定されているかどうかも現時点で明らかになっていない。近く公表が見込まれる改正開示府令の内容が注目される。

2022/11/04 【特集】ISSB公開草案・後編 「気候関連開示」のフレームワーク(2・会員限定)

(1)S2基準の位置付け

コーポレートガバナンス・コード補充原則3-1③には、「特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである」とあるが、ISSBのS2基準が「それと同等の枠組み」に該当し、将来的にはTCFDに代わり国際的に利用されるようになる可能性は高い。また、今後有価証券報告書で開示が義務化される気候変動開示についても、ISSBの基準に沿った形の開示内容となることが想定される。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。

S2基準の位置付けを確認するため、S1基準案を含め2022年3月に公表された公開草案の全体像を整理すると、下表のとおり3つの要素(①全般的な要求事項、②テーマ別基準、③業種別基準)から構成され、その全てがTCFDの4本の柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)をベースとしている(TCFDの4本の柱については、2021年7月7日のニュース「TCFD開示の4要素のうち有報での開示が必須となりそうな2要素とは?」参照)。

<公開草案の全体像>
要素
①全般的な開示基準(S1基準案) ガバナンス 戦略 リスク管理 指標と目標
②テーマ別基準(S2基準案)
「気候関連開示要求事項」
③業種別基準(S2基準案 付録B)
「産業別開示要求事項」
<各公開草案の位置付け>
公開草案 位置付け
①S1基準案(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項) サステナビリティ関連財務情報の共通のテンプレート
②S2基準案(気候関連開示要求事項) ・基本的にTCFD提言に整合したものとなっている
・指標は産業横断的なものとなっている
③S2基準案 付録B(産業別開示要求事項) ・11セクター68産業に分類
SASBスタンダードの気候関連産業別要求事項に基づいている

SASBスタンダード : SASB(サステナビリティ会計基準審議会=Sustainability Accounting Standards Boad)は2011年に設立された米国に拠点を置く団体であり、持続可能性が財務に与える影響を投資家に報告するフレームワークであるSASBスタンダードを策定した。SASBスタンダードは、11セクター・77 産業について、産業ごとに企業の財務パフォーマンスに影響を与える可能性が高いサステナビリティ課題を特定している点に特徴がある。SASBは、統合報告書の作成についての考え方をまとめた「国際統合報告フレームワーク」を策定したことで有名なIIRC(国際統合報告評議会=International Integrated Reporting Council)と合併してVRF(=Value Reporting Foundation)となり、さらにVRFは2022年6月にISSBに統合される。

(2)S2基準の開示目的

気候変動はすべての業種に影響を与える。しかしながら、そのエクスポージャー(暴露)の程度及び種類、気候関連のリスク及び機会が企業価値の評価に与える(現在の、あるいは将来予想される)影響は、業種、地域、そして企業によって異なる。

一般目的財務報告の利用者は、企業の財務上・事業上の結果や将来キャッシュ・フローを評価する際に、それが企業のどのようなガバナンス、リスク管理、戦略からもたらされた(もたらされる)のかについての情報を求めており、企業の気候関連のリスク及び機会と、企業が目標達成に向けた進捗を管理するために使用している指標やその進捗状況を理解したいというニーズがある。

一般目的財務報告 : 広範囲の利用者に共通する財務情報に対するニーズを満たすように策定された財務報告の枠組みに準拠して作成される財務諸表のこと。例えば、金商法上の(連結)財務諸表、会社法の計算書類などが該当する。これに対し、特定の利用者の財務情報に対するニーズを満たすように策定された枠組みに準拠して作成される財務諸表を「特別目的の財務諸表」という。例えば、監督官庁が監督目的のために法令で提出をを求める財務情報や契約書等で定めた財務情報が該当する。「一般目的財務報告の主要な利用者」としては、「現在の」および「潜在的な」投資家、融資者、その他の債権者が想定されている。

S2基準案は、こうした情報開示ニーズに応じるべく、S1基準案と整合的な以下の開示目的を定めている。

企業価値の評価に有用な、重大な気候関連のリスク及び機会に関する重要性がある情報の開示

上記の開示により、以下のことが可能になる。

・気候関連のリスク及び機会が企業価値に与える影響の評価
・気候関連のリスク及び機会に対する企業の対応と戦略の理解
・気候関連のリスク及び機会に対し、企業が事業計画、ビジネスモデル、オペレーション等を適応させる能力の評価

(3)S2基準案の適用範囲

S2基準案は以下の事項に適用される。

範囲 リスクの内容
リスク 気候変動による物理的リスク サイクロンや洪水といった極端な気象のような急性の気候変動、及び海面の上昇や平均気温の上昇など気候パターンの長期的な変化に伴う慢性的な気候変動に起因するリスクで、資産の損害、サプライチェーンの分断、生産設備の移動などがある。
低炭素経済への移行リスク 低炭素経済への移行に伴う政策、法律、技術、市場などの広範な変化から生じるリスクで、市場リスク(高炭素製品の需要減少)、法的リスク(ガス給湯器、ディーゼル車の販売禁止等)、技術リスク(ディーゼル社の低排出化)、風評リスクなどがある。
企業が利用できる気候関連の機会 気候変動が生み出す企業にとってポジティブな結果のこと。気候変動を緩和し、また気候変動に適応するための取組みは、新技術の発明、ブランドの向上など、企業に気候関連の機会を生み出す可能性がある。

(4)開示要件はTCFD以上の高いハードルに(会員限定)

2022/11/04 【特集】ISSB公開草案・後編 「気候関連開示」のフレームワーク

はじめに

既報のとおり、IFRS財団は昨年(2021年)11月、資本市場向けのサステナビリティ開示の包括的なグローバル・ベースラインを開発するため、「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」を設立し、2022年3月には全般的なサステナビリティ関連開示の要求事項を定めた「IFRS S1号基準」(以下、S1基準またはS1基準案)と、サステナビリティ財務情報開示のうち「気候関連」の開示に特化したテーマ別基準「IFRS S2号」(以下、S2基準またはS2基準案)の2つの公開草案を公表している。

本稿では、「ISSB公開草案・前編 「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」の開示フレームワーク」に続く【後編】として、S2基準案のポイントを解説する。

(1)S2基準の位置付け(会員限定)

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2022/11/02 期中株式取得者は株主総会資料の書面交付請求ができなくなるケースも

株主総会資料の電子提供制度が2023年3月に開催される株主総会よりスタートする(制度の詳細は2022年10月13日のニュース「ネットが使えない株主向け書面の簡略化案が明らかに」参照)。制度開始に備え定款や株式取扱規程の変更は終えたものの、「実務上の詰めはこれから」という上場会社も多いことだろう。

こうした中、・・・

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2022/11/02 期中株式取得者は株主総会資料の書面交付請求ができなくなるケースも(会員限定)

株主総会資料の電子提供制度が2023年3月に開催される株主総会よりスタートする(制度の詳細は2022年10月13日のニュース「ネットが使えない株主向け書面の簡略化案が明らかに」参照)。制度開始に備え定款や株式取扱規程の変更は終えたものの、「実務上の詰めはこれから」という上場会社も多いことだろう。

こうした中、全国株懇連合会(以下、全株懇)は2022年10月21日、「書面交付請求対応指針」と「電子提供制度における招集通知モデル(電子提供措置事項の一部を含んだ一体型アクセス通知)」を公表している。

このうち「書面交付請求対応指針」(「招集通知モデル(電子提供措置事項の一部を含んだ一体型アクセス通知)」については近日中に別稿で解説予定)は、書面交付請求を行った株主への対応時の留意点をまとめたもの。書面交付請求の方法としては、①発行会社(実際には株主名簿管理人(信託銀行や証券代行会社))へ申出する方法と、②株主が口座を有する証券会社へ申出する方法(その後、証券会社が株主名簿管理人に取り次ぐ)の2つがあるが、同指針によると、上場会社が株主から直接書面交付請求を受けた場合、「すでに株主名簿に記載のある株主であれば株主名簿管理人または証券会社等の口座管理機関での受付が可能なので、株主に対して、どちらかを案内する」などの対応方針が示されている。

もっとも、証券会社は株主から書面交付請求手数料を徴求することになり、その手数料の額も証券会社によって異なる。さらに、そもそも「株主総会資料の書面交付請求には対応しない」としている証券会社もある(例えばauカブコム証券)ことを考慮すると、上場会社としては、基本的には最初から株主名簿管理人を案内することになろう。

ただし、期中(期中であっても中間配当や四半期配当、臨時株主総会開催などで基準日ごとに株主名簿は確定されるので、以下「期中での確定以降期末日まで」を指す)に株式を取得した新規株主については、株主名簿管理人では受付けができない。当該株主の氏名が株主名簿に記載されていないからだ。株主であるのを確認できるのは、株主が口座を有する証券会社しかない。そこでこの場合、会社は株主に対し、証券会社経由での書面交付請求を案内することになる。

基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。定時株主総会の基準日を定款に記載しなければ、毎年、基準日を公告しなければならない。その手間を避けるために、定款に基準日を記載するのが通常である。

ここで問題になるのが、auカブコム証券のような株主総会資料の書面交付請求に対応しないという証券会社経由で期中に上場会社の株式を新規に取得した株主は、株主名簿管理人はもとより証券会社にも期末日までの書面交付請求ができなくなるということだ。もちろん、中間配当時(四半期配当実施会社は、四半期の期末)などに株主名簿を確定した後の期中取得者であっても期末の基準日に株主名簿が確定して株主名簿に名前が記載された後は、株主名簿管理人に対して書面交付請求をできるようになるが、書面交付請求は株主総会の基準日までに申し出る必要があるため、このような期中取得者は最初に到来する定時株主総会については株主名簿管理人および証券会社のいずれにも株主総会資料の書面交付請求ができなくなってしまう。

上場会社各社が書面交付請求者への対応マニュアルを作成するには、全株懇の書面交付請求対応指針に加えて、上記のような一見レアケースに見えても実際に起こり得る事例への対応も盛り込んでおく必要があろう。

2022/11/01 米国の経営者報酬規制強化、提案から7年かかってについに採択 将来日本に影響を及ぼす可能性も

このところ、米国でSEC(米国証券取引委員会)による経営者報酬関連の規制強化が立て続けに行われている。米国の取り組みは日本の未来を占うものであり、日本企業の経営陣としても関心を持つべきと言える。

一つ目は、・・・

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2022/11/01 米国の経営者報酬規制強化、提案から7年かかってについに採択 将来日本に影響を及ぼす可能性も(会員限定)

このところ、米国でSEC(米国証券取引委員会)による経営者報酬関連の規制強化が立て続けに行われている。米国の取り組みは日本の未来を占うものであり、日本企業の経営陣としても関心を持つべきと言える。

一つ目は、2022年8月25日付で採択された「Pay Versus Performance(報酬と業績の相関)開示(PVP)」の義務化だ(2022年9月5日のニュース『米国における「PVP開示」の強化と日本企業の役員報酬制度改革』参照)。これは、上場企業に対し、開示書類の中で(所定のフォーマットを用いて)報酬額と業績の相関について説明を行うことを義務付けるものであり、2022年12月16日以降に終了する決算期から適用される。これにより、株主・投資家は、経営陣に支払われた報酬額が、業績との整合性という観点から妥当かどうか、より高い精度で判断出来るようになる。

二つ目は、2022年10月26日付で採択された「クローバック条項」(報酬の返還要請)に関する規制強化である。これにより、財務諸表の遡及修正(リステートメント)があった場合、経営陣(あるいは元経営陣)は、過去3年分にわたって「修正前の業績」に基づいて支払われたインセンティブ報酬(業績連動報酬)の返還を求められることになる。「クローバック条項」自体は既に米国において一般的なプラクティスとなっているものの、今回の規制強化によって、その適用がより厳格化されたと言える。

上記はいずれも、主にインセンティブ報酬の支給に関する規制強化である。米国企業の経営者報酬は高額であり、かつ、報酬全体に占める業績連動部分の割合が大きいことから、インセンティブ報酬の支給にあたっては相応の説明責任と透明性が求められる、ということであろう。もっとも、米国の経営者報酬が高額なのは今に始まったことではない。なぜ今、これらの規制が採択されたのだろうか。

そもそも、今回の規制強化は、2007年以降の金融危機に端を発している。周知のとおり、米国では高額な経営者報酬が社会問題となっており、特に金融危機の際には、金融業界における高額なインセンティブ報酬が、過度なリスクテイクや短期主義(ショートターミズム)を助長したとして、批判の的となっていた。

ショートターミズム : 目先のリターンばかりを求める「短期志向」のこと。

こうした批判を受け、2010年、オバマ政権下においてDodd-Frank(ドッド・フランク)法が成立する。Dodd- Frank法は、Say on Pay(株主による経営者報酬に関する意見表明)を導入するなど、経営者報酬について株主によるガバナンスを効かせることをその目的の一つとしていた。 

Dodd-Frank(ドッド・フランク)法 : 米国で、リーマン・ショック(2008年9月)をはじめとする金融危機が短期的業績に過度に連動した高額報酬が一因となって引き起こされたとして、経営監視を強化するために2010年に導入された法律。

さらに、このDodd-Frank法の要請に基づき、SECはいくつかの経営者報酬に関する規制を策定する。今回採択された上記「Pay Versus Performance開示(PVP)」および「クローバック条項」に関する規制は、いずれもこのような流れの中で「2015年」にSECによって提案されたものである。つまり、2015年に提案されたこれらの規制が2022年になってようやく採択されたということになるが、ここには米国の政治的な力学も絡んでいる。特に、共和党のトランプ前大統領政権下においては、規制緩和の流れの中で、こういった報酬関連規制が先送りにされていた、という経緯がある。バイデン政権になって、再び報酬規制に向けた取り組みが進み出したという形である。

要するに、今回の2つの規制強化はここ最近になって議論が始まった話ではなく、金融危機で顕在化した米国における経営者報酬の高額化や格差の拡大といった慢性的な問題に対する“息の長い取り組み”の一環と捉えることが出来る。

コーポレートガバナンス・コード(特に、経営者報酬にインセンティブ付けを求める原則4―2や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定することを求める補充原則4-2①)の施行以降、一部の日本企業においても、経営者報酬の水準や業績連動性が引き上げられ、(少しずつではあるものの)欧米の状況に近づきつつある。今後、仮に報酬水準・報酬構成の欧米化が進んでいった場合、その先には何が待ち受けているのか。提案から7年越しでようやく採択された米国の経営者報酬規制がどのように機能するのか、米国の状況を注視していきたい。

2022/10/31 【役員会 Good&Bad発言集】事業ポートフォリオマネジメント(2)(会員限定)

<解説>
「事業セグメントごとの貸借対照表・損益計算書」が必要になる理由

【役員会 Good&Bad発言集】事業ポートフォリオマネジメント(1)において、事業セグメントごとのキャッシュフローやROIC(投下資本収益性)を測るためには「事業セグメントごとの貸借対照表・損益計算書」が必要になる旨説明しました。その理由は次の通りです。

まずキャッシュフローですが、企業全体のキャッシュフロー表は企業全体の貸借対照表(当期と前期の2期分)と損益計算書をもとに作るのが通常です。損益計算書の最終利益を出発点として、減価償却費や引当金繰入額などの非資金性の費用や債権債務の増減(当期と前期の貸借対照表の比較により算定)、有形固定資産や有価証券の購入・売却、借入金の借入・返済、増資などの資金の入金と出金をキャッシュフロー表に落とし込むことで、資金の増減内容を可視化することになりますが、それと同様に事業セグメントごとのキャッシュフロー表を作ろうとすると事業セグメントごとの貸借対照表(当期と前期の2期分)と損益計算書が必要になってくるからです。

また、ROICについては、企業全体のROICは分母を企業全体の投下資本とし、分子を企業全体の利益として算定しますが、それと同様に事業セグメントごとのROICは分母を事業セグメントの投下資本とし、分子を事業セグメントの利益として算定するので、事業セグメントの投下資本を測定するために事業セグメントごとの貸借対照表が必要となり、事業セグメントごとの利益を測定するために事業セグメントごとの損益計算書が必要になってくることになります。

本稿では、この「事業セグメントごとの貸借対照表」に焦点を当て、どのようにして作るのかについて解説します。

事業セグメントごとの貸借対照表の作り方

経済産業省が2020年7月31日に公表した「事業再編実務指針」の別紙「事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と資本コストの算定方法」によりますと、事業再編実務指針の趣旨との整合性や実務的な利便性を考慮して、一般に採用しやすいと思われる方法として次のような方法が解説されています。なお、本別紙では冒頭で「企業の状況や抱える課題に応じて最適な方法は異なりうるため、本別紙の記載を参考に、各社において最適な方法を御検討いただきたい」と記載されている点には注意が必要です。

<資産の割り振り>
資産は負債・純資産と比べると事業セグメントごとへの割り振りをしやすいと言えます。仮に1つの法人内に複数のセグメントがあり資産を共有している場合であっても、何らかの合理的な基準により案分すれば、事業セグメントごとへの割り振りが可能となります。たとえば銀行残高であれば、セグメントごとの必要運転資金の比率で案分したり、オフィスの敷金であればセグメントごとの賃借スペースの比率で案分したりすることが考えられます。

<負債と純資産の割り振り>
負債・純資産は資産と比べると事業セグメントごとへの割り振りをしにくいと言わざるを得ません。負債・純資産は資産ほど収益・費用との関係性が濃くはないことが、割り振りが難しい原因と言えます。割り振りが難しい場合は、「事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と資本コストの算定方法」の2ページ以降で紹介されている下記の推計方法を利用するのも一案です。いずれの推計方法も負債や純資産の「合計額」の推計であり、事業セグメントごとの簡易な資本コスト(WACC)の算定用途だけであれば十分ですが、事業セグメントごとのキャッシュフロー表を作成するなど負債の更なる内訳(科目ごとの金額)まで求めようとすると、連結貸借対照表の金額を案分するなど別の手法もミックスして推計していく必要があります。

① 資産レバレッジ方法
これは、事業セグメントごとの資産を先に算定しておき(その段階では負債と純資産は未確定です)、当該資産をベースとして、それに一定の掛け目(換金化が容易なほど低い掛け目になります)を乗じた額を株主資本で賄い、残額を負債で賄うと仮定して、資本構成を決定するという方法です。この方法は、「換金化が難しい資産への投資は株主資本から行わざるを得ない」(あるいは事業の失敗に伴い換金化できたものはまずは負債の返済に用いられ、株主資本は最終損失を被る)といった考えのもと、資本構成を推計する手法です。掛け目はしょせん推計用であり、厳密なものではなく相対的なものに過ぎませんが、掛け目の低い資産項目への転換を促す(「在庫」を販売すれば、「在庫」から在庫より掛け目の低い「売掛金」に置き換わり、「売掛金」の回収早期化が実現すれば、「売掛金」から売掛金より掛け目の低い「預金」に置き換わるため、キャッシュフローを意識しやすくなる)効果を期待できます。

たとえば、Aセグメントの資産の内訳の金額および各資産の掛け目が次のとおりとすると、Aセグメントの株主資本相当額は121億円となり、差額の79億円(=200億円マイナス121億円)が負債で賄っていると推計されます。

資産レバレッジ方法を用いた資本構成の推計
Aセグメント資産の内訳 金額 掛け目 株主資本相当額
預金 10億円 0% 0円
売掛債権 20億円 15% 3億円
在庫 20億円 40% 8億円
機械設備 100億円 60% 60億円
のれん 50億円 100% 50億円
200億円 121億円

掛け目は「事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と資本コストの算定方法」の2ページを参考にしましたが、売掛債権の中でも信用度の高低に応じて掛け目を変えることも考えられます。

② ベンチマーク方法
これは、事業セグメントごとにベンチマークとする同業他社の資本構成を参考にして当該事業セグメントの資本構成を決める方法です。この方法は、「同業他社であれば同程度の財務リスクを抱えているはずであり、同程度の財務リスクがあれば資本構成も類似するはず」といった考えのもと、資本構成を推計する手法です。

具体的には、Aセグメントと競合関係にある同業他社3社(A1社~A3社)の資本構成(貸借対照表の右側に占める負債と株主資本の比率)が下表のとおりとすると、負債資本倍率(=負債÷株主資本)は単純平均で1.50倍となり、負債:株主資本は6:4と推計されます(「事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と資本コストの算定方法」の3ページを参考に推計)。

ベンチマーク方法を用いた資本構成の推計
同業他社 負債 株主資本 負債資本倍率
A1社 64% 36% 1.78倍
A2社 60% 40% 1.50倍
A3社 55% 45% 1.22倍
単純平均 1.50倍

こうして推計した負債資本倍率と、先に算定しておいた事業セグメントごとの資産の金額の合計額(これが負債と株主資本の合計額にもなります)を用いて、負債と株主資本に金額を割り振ります。

③ 実績配賦方法
これは、事業セグメントごとの損益計算書を基に過去の一定期間(たとえば10 年分)における純利益の金額の合計値を算出し、その割合に応じて純資産を割り付けるという方法です。この方法は、純利益が純資産の形成に寄与している(利益が純資産を増加させる)点に着目して編み出された手法です。

具体的には、A、B、Cの3つのセグメントがあり、各セグメントの損益計算書の過去10年の純利益の合計がAセグメント300億円、Bセグメント600億円、Cセグメント30億円であったとすると、当該企業グループの連結事業年度末に保有する純資産を10:20:1の割合で各セグメントに割り当てることになります。仮に企業グループの純資産が3,100億円とすると、それがA、B、Cに10:20:1で割り当てられる結果、事業セグメントの純資産はAセグメントが1,000億円、Bセグメントが2,000億円、Cセグメントが100億円となります(「事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と資本コストの算定方法」の3ページを参考に推計)。

上記の①~③の方法のうち、いずれの方法が望ましい方法と言えるのかが気になるところです。「事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と資本コストの算定方法」の4ページでは、下記のとおり各方法にはメリット・デメリットがあることから、「事業セグメントごとの資本コストを適切に把握し、事業ポートフォリオの機動的な組み替えを通じた収益性の向上や成長事業に対する投資を促進するためには、成熟・衰退事業に対して株主資本が厚く配分され、新規・成長事業に対して負債が厚く配分される可能性の高い③実績配賦方法は必ずしも望ましい方法とはいえない。ただし、事業セグメントごとの BS の作成には、社内の膨大な調整を伴うため、現場の納得感が得られやすい③実績配賦方法を補充的に利用することは考えられる。」と結論付けています。

事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と「事業再編実務指針」との整合性
「事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と資本コストの算定方法」の4ページより引用
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差分の取り扱いと開示用の情報との関係

以上の推計を用いたり、連結貸借対照表の金額を案分するなどして事業セグメントごとの貸借対照表を作成しても、それらの合計が連結貸借対照表に一致しないのが通常です。その理由として、①特定の事業セグメントに属しない本社資産(とそれに見合う負債・株主資本)の存在、②推計値と実績値のずれが考えられます。②については差分を各事業セグメントに配分し直すことも考えられます。

事業セグメントごとの損益計算書は、事業セグメントごとの貸借対照表に比べればはるかにイメージしやすいと言えます。それだけに各セグメント間で費用の配賦を巡り利害が衝突しやすいところです。経営陣がリーダーシップを発揮して費用の配賦に関する利害の調整に取り組まなければなりません。また、特定の事業セグメントに属しない本社費の集計も必要になります。いずれにしろ、連結財務諸表のセグメント情報用の開示にあたり報告セグメントの利益(営業利益までが一般的)算定に必要な情報を毎期作成しているので、それほど悩むところはないはずです。

あえて言えば、営業利益より下の利益の算定にあたり、事業ごとの「支払利息」をどうするかで悩むかもしれません。これは事業セグメントごとの借入金を把握できなければ把握不能だからです。事業セグメントごとに借入を行っていない(すなわち本社が一括して借入を行っている)のであれば、案分された借入金の残高をベースにして支払利息を案分するケースが多いものと思われます。

なお、事業セグメントごとの貸借対照表・損益計算書は管理会計用の資料であり、連結財務諸表のセグメント情報における報告セグメントの開示にあたり毎期作成が必要となる開示用のセグメント情報と必ずしも一致するとは限りませんが、そもそも制度開示のセグメント情報自体がマネジメントアプローチを志向しており、セグメント情報等の開示に関する会計基準(企業会計基準第17号)の20項から22項にかけて、最高経営意思決定機関に対して意思決定用に定期的に提供される情報のうち開示が必要となる項目が特定されていますので、開示用の資料と管理会計の資料との整合性は留意しておくべきと言えます(マネジメントアプローチやセグメント情報のうち事業セグメントと報告セグメントの関係については【役員会 Good&Bad発言集】セグメント情報の「その他」を参照)。「競合他社や投資家に開示したくない」との理由で詳細な開示を避けるために、仮に事業セグメントごとの損益計算書を作るにしても営業利益をボトムラインにするという判断をする上場会社も少なくないものと思われますが、それでは事業セグメントごとのROICの算定ができなくなってしまいます。開示を気にして経営判断に必要となる情報が制約されるのであれば、それは本末転倒と言わざるをえません。

セグメント情報等の開示に関する会計基準
20項
負債に関する情報が、最高経営意思決定機関に対して定期的に提供され、使用されている場合、企業は各報告セグメントの負債の額を開示しなければならない。

21項
企業が開示する報告セグメントの利益(又は損失)の額の算定に次の項目が含まれている場合、企業は各報告セグメントのこれらの金額を開示しなければならない。また、報告セグメントの利益(又は損失)の額の算定に含まれていない場合であっても、次の項目の事業セグメント別の情報が最高経営意思決定機関に対して定期的に提供され、使用されているときには、企業は各報告セグメントのこれらの金額を開示しなければならない。
(1) 外部顧客への売上高
(2) 事業セグメント間の内部売上高又は振替高
(3) 減価償却費(のれんを除く無形固定資産に係る償却費を含む。)
(4) のれんの償却額及び負ののれんの償却額
(5) 受取利息及び支払利息
(6) 持分法投資利益(又は損失)
(7) 特別利益及び特別損失
(8) 税金費用(法人税等及び法人税等調整額)
(9) (1)から(8)に含まれていない重要な非資金損益項目
(後略)

22項
企業が開示する報告セグメントの資産の額の算定に次の項目が含まれている場合、企業は各報告セグメントのこれらの金額を開示しなければならない。また、報告セグメントの資産の額の算定に含まれていない場合であっても、次の項目の事業セグメント別の情報が最高経営意思決定機関に対して定期的に提供され、使用されているときには、企業は各報告セグメントのこれらの金額を開示しなければならない。
(1) 持分法適用会社への投資額(当年度末残高)
(2) 有形固定資産及び無形固定資産の増加額(当年度の投資額)

事業セグメントごとの貸借対照表を作ることの効果

(1)事業セグメントごとの資本コストが分かる
事業セグメントごとの貸借対照表を作成することで、負債(厳密にいうと負債のうち有利子負債)と株主資本の金額が確定します。これにより事業セグメントごとの資本コストを算定することが可能になります。すなわち、有利子負債のコストと株主資本のコストを加重平均したもの(WACC)を算定できるようになります。具体的な算定方法は「事業セグメントごとの貸借対照表の作成方法と資本コストの算定方法」の7ページ以降を参照してください。資本コストが分かれば、事業セグメントごとのROICと比較することも可能になります((「事業再編実務指針」の2.3.3を参照を参照。これにより下記(4)の効果につながります)。

(2)事業セグメントの責任者が資産の配分に意識を向けるようになる
事業セグメントごとの貸借対照表を作ることで、事業セグメントの責任者としては資産の配分に意識が向くようになります。ただ利益を出せば許されるのではなく、その利益を生み出すのにいくら使ったのかに焦点が当たるようになるからです。不良在庫や在庫の回転期間への意識が高まるとともに、利益を生まない持合株式などの処分が進むことも期待されます。

(3)経営陣が事業を整理することにも意識を向けるようになる
親会社の経営陣は各事業セグメントの貸借対照表を利用して、効率性の悪い事業を売却する判断をしやすくなります。企業全体のROEへの各事業セグメントの貢献を意識せざるを得なくなるからです。

(4)KPIを「絶対額」から「率」へ移行できる
事業セグメントごとの業績を測るデータとしてセグメント別の売上高・利益しかない場合は、経営陣の目標や業績評価に利用されるKPIは「売上額」「利益額」といった「絶対額」になりがちです。事業セグメントごとの貸借対照表を作成することで「ROIC」などの「率」をKPIに利用して効率性などを判断することが可能となります(「事業再編実務指針」の2.3.2を参照)。

また、事業ポートフォリオを見直す際に、「黒字だから存続する」「赤字だから売却しなくてはならない」といった「絶対額」で判断することは短絡的と言え、避けるべきです。黒字であってもROICが低い事業は売却することで会社全体のROICを上げることができる)し、赤字であっても手放すべきではない事業(他の事業とのシナジーが高く評価されるケースなど)もあるからです。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役A:「事業セグメントごとの貸借対照表ですか。なるほど、これがあれば事業セグメントの責任者は事業セグメント内の資産の配分に意識を向けるようになるし、経営陣は事業自体の組み替えに意識を向けやすくなりますね。ぜひ作っていきましょう。」
コメント:取締役Aの発言は、事業セグメントごとの貸借対照表がレイヤーごとにどのように機能するのかについての的確な発言であり、GOODです。

BAD発言はこちら
取締役B:「事業セグメントごとの損益計算書もぜひ作るべきです。足を引っ張っていると言われている事業でも黒字であることが分かれば売却する必要はありませんからね。」
コメント:Bの発言は事業セグメントごとの損益計算書の意義を理解していないBAD発言です。黒字の事業であっても、ROICが低ければ企業全体のROEの足を引っ張ることになるため、事業の売却の検討をすべきだからです。Bは経営判断にあたり「絶対額」ではなく「率」で思考するように考えを改めるべきです。
取締役C:「そうですね。何より、事業売却により全体の売上が減ってしまうと企業価値も減ってしまうことには留意しなければなりません。」
コメント:取締役Cの発言もBと同様、「絶対額」にとらわれたBAD発言です。低ROICの事業を売却し、売却代金をより高ROICの事業に投入すれば、企業価値は向上するはずです。

2022/10/31 2022年10月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
ACGAは、社内に女性取締役候補者を増やすためには、取締役クラスだけでなく、執行役員クラスでもジェンダー・ダイバーシティを推進する必要があるとして、執行役員クラスの女性比率の引上げを促すため、上場企業に女性執行役員の比率の開示を義務付けることを提案しています(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2022年10月26日 女性取締役30%実現に向けACGAが提言、2027年には全上場企業対象にCGコード改訂も(会員限定)

2022/10/31 2022年10月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
ACGAは、社内に女性取締役候補者を増やすためには、取締役クラスだけでなく、執行役員クラスでもジェンダー・ダイバーシティを推進する必要があるとして、執行役員クラスの女性比率の引上げを促すため、上場企業に女性執行役員の比率の開示を義務付けることを提案しています(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2022年10月26日 女性取締役30%実現に向けACGAが提言、2027年には全上場企業対象にCGコード改訂も(会員限定)