2022/06/30 2022年6月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
2021年12月決算会社(551社)の有価証券報告書を確認したところ、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【コーポレート・ガバナンスの概要】の各開示項目において、「サステナビリティ」や「気候変動」に言及している会社が著しく増加(「サステナビリティ」が110社(前期比175%増)、「気候変動」が61社(前期比125%増))していることが分かりました。3月決算でも同様の傾向が続くものと思われます。

こちらの記事で再確認!
2022年6月3日 12月決算会社の有報におけるサステナビリティ関連情報の開示(会員限定)

2022/06/30 2022年6月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
2022年5月16日に開催された金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」でICGN(国際コーポレートガバナンスネットワーク=International Corporate Governance Network)は、スキルマトリクスにおいて選択された独立取締役の属性が企業の目的および長期戦略とどのように一致するかを明確に開示すべきという考えを示しました。ICGNはグローバル機関投資家や年金基金などが参加する団体であり、ICGNの意見はグローバル投資家の意見を最も色濃く反映していると考えられることから、自社のスキルマトリクスの開示にあたってもそういった意見があることを意識しておく必要があります。

こちらの記事で再確認!
2022年6月1日 プライム市場上場会社にさらに厳しいガバナンス体制が求められる可能性(会員限定)

2022/06/30 2022年6月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
2022年5月16日に開催された金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」でICGN(国際コーポレートガバナンスネットワーク=International Corporate Governance Network)は、スキルマトリクスにおいて選択された独立取締役の属性が企業の目的および長期戦略とどのように一致するかを明確に開示すべきという考えを示しました。ICGNはグローバル機関投資家や年金基金などが参加する団体であり、ICGNの意見はグローバル投資家の意見を最も色濃く反映していると考えられることから、自社のスキルマトリクスの開示にあたってもそういった意見があることを意識しておく必要があります。

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2022年6月1日 プライム市場上場会社にさらに厳しいガバナンス体制が求められる可能性(会員限定)

2022/06/29 役員報酬の減額という責任の取り方の相場観

業績目標が未達となったり不祥事が発覚したりすると、必ずと言ってよいほど取り沙汰されるのが「役員報酬の減額」だ。執行責任を「金銭」という目に見えやすいものに置き換えるというこの手法は、極めて日本的と評される(欧米企業における責任の取り方については2022年5月9日のニュース『吉野屋の「社長の報酬減額」に見る有事における欧米企業との対応の違い』参照)。特にここ数年は、コロナ禍によって業績が低迷している上場会社における取締役報酬の減額や自主返納が目に付く。コロナ禍という外部環境自体は会社にとってコントロール不能なものだが、外部環境の変化に伴う消費行動の変容にどう対応していくのかは経営陣の腕の見せ所であり、有効な一手を打てないまま業績がじり貧となる状態が続けば、「役員報酬の減額」は解任の“一つ前”のステップとして選択肢となり得るだろう。また、人員削減、賞与カット、経費削減などで不満を抱える従業員という身近なステークホルダーを情緒的に納得させるうえでも、役員報酬の減額は有効と言える。

ただし、「減額の幅」は各社の状況によって当然異なってくる。業績悪化を理由に役員報酬の減額を検討している上場会社にとって、どの程度の減額幅が妥当なのかは判断に迷うところだろう。そこで当フォーラムでは、2022年3月以降の3か月間において業績悪化を理由に役員報酬を減額した上場会社(不祥事発覚により報酬を減額した会社は除く)における減額幅を調査した(下表参照)。・・・

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2022/06/29 役員報酬の減額という責任の取り方の相場観(会員限定)

業績目標が未達となったり不祥事が発覚したりすると、必ずと言ってよいほど取り沙汰されるのが「役員報酬の減額」だ。執行責任を「金銭」という目に見えやすいものに置き換えるというこの手法は、極めて日本的と評される(欧米企業における責任の取り方については2022年5月9日のニュース『吉野屋の「社長の報酬減額」に見る有事における欧米企業との対応の違い』参照)。特にここ数年は、コロナ禍によって業績が低迷している上場会社における取締役報酬の減額や自主返納が目に付く。コロナ禍という外部環境自体は会社にとってコントロール不能なものだが、外部環境の変化に伴う消費行動の変容にどう対応していくのかは経営陣の腕の見せ所であり、有効な一手を打てないまま業績がじり貧となる状態が続けば、「役員報酬の減額」は解任の“一つ前”のステップとして選択肢となり得るだろう。また、人員削減、賞与カット、経費削減などで不満を抱える従業員という身近なステークホルダーを情緒的に納得させるうえでも、役員報酬の減額は有効と言える。

ただし、「減額の幅」は各社の状況によって当然異なってくる。業績悪化を理由に役員報酬の減額を検討している上場会社にとって、どの程度の減額幅が妥当なのかは判断に迷うところだろう。そこで当フォーラムでは、2022年3月以降の3か月間において業績悪化を理由に役員報酬を減額した上場会社(不祥事発覚により報酬を減額した会社は除く)における減額幅を調査した(下表参照)。

<直近3か月の間に業績悪化を理由に役員報酬を減額したことを開示した上場会社各社の減額内容等>
※なお、適時開示について定めた証券取引所の有価証券上場規程上、役員報酬の減額は適時開示が必須となる「決定事実」とはされておらず、「投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」というバスケット条項に該当しない限り、適時開示をしなければならないわけではないため、上表に掲載した事例が役員報酬の減額事例のすべてとは限らない。
会社名(上場市場) 公表日 減額理由 減額の根拠 減額(返納)
の内容
減額(返納)
の対象期間
相鉄ホールディングス
(東証プライム市場:3月決算)
2022年6月29日 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う鉄道等のご利用状況が依然として改善していないなど厳しい経営環境を勘案。 自主返上 ・代表取締役会長及び社長:報酬月額の20%
・取締役 役付執行役員:報酬月額の15%
・その他の執行役員:報酬月額の10%
・相鉄グループ執行役員:報酬月額の10%~15%
1年間
(2022年7月から2023年6月まで)
〔既に2020年5月から役員報酬の減額を実施済み〕
大崎電気工業
(東証プライム市場:3月決算)
2022年6月28日 2022年3月期の業績結果を真摯に受け止め、その経営責任を明確にするため。 取締役会決議 ・代表取締役: 総報酬の30%
・その他取締役:総報酬の20%
・社外取締役:月額報酬の10%
・執行役員:総報酬の10%~15%
6か月間
(2022年7月から2022年12月まで)
監査役会決議 監査役(社外含む):月額報酬の10%
ウエストホールディングス
(東証スタンダード市場:8月決算)
2022年6月24日 本日開示した業績予想の修正および特別損失の計上の内容と、電力小売事業の廃止の決定によるお客様をはじめとする社会的な影響を真摯に受け止め、経営責任を明確にするとともに、今後の再生可能エネルギー普及に向けた事業展開への決意を新たにするため。 取締役会決議 代表取締役会長:月額報酬の30% 6か月間(減額開始月は明らかにされず)
代表取締役社長:月額報酬の30% 3か月間(減額開始月は明らかにされず)
シャルレ
(東証スタンダード市場:3月決算)
2022年6月22日 当事業年度の利益計画に定めた連結業績目標が大幅に悪化したことを重く受け止めたため。 取締役会決議 ・代表取締役社長:月額固定報酬の30%
・取締役(監査等委員である取締役を除く):月額固定報酬の10%
1年間
(2022年7月から2023年6月まで)
2022年5月13日 事業構造の抜本的改革の観点から人員構成の是正の必要があり、希望退職者の募集を行わざるを得なくなったことに加え、当事業年度におけるレディースインナー等販売事業の業績が下降トレンドを脱していないこと、翌事業年度の利益計画に定める連結業績目標が大きく減少することになったことを真摯に受け止め、経営責任を明確にするため。 自主返納 業績連動報酬
・代表取締役社長:業績連動報酬の全額
・取締役(監査等委員である取締役を除く):業績連動報酬の50%
1か月間
(2022年6月分)
月額固定報酬
・代表取締役社長:月額固定報酬の40%
・取締役(監査等委員である取締役を除く):月額固定報酬の20%
2か月間
(2022年5月および6月)
ヘリオス
(東証グロース市場:12月決算)
2022年6月13日 持続的な成長の実現に向け、早急に財務基盤を強化するためコスト合理化策の一環として、また、体性幹細胞再生医薬品分野における事業進捗の遅れに対する結果責任を明確にするため。 報酬委員会の決議 役員の月額報酬額を平均40%(全役員の削減率の合計を全役員数で除して算出した割合) 6か月間
(2022年7月から同年12月まで)
日本エンタープライズ
(東証スタンダード市場:5月決算)
2022年5月24日 2022年5月期決算における業績予想の修正に至った経営責任を明確にするため。 自主返上 代表取締役社長:月額報酬の30%返上
常務取締役:月額報酬の10%返上
3か月間
(2022年3月~2022年5月まで)
ジェイグループホールディングス
(東証グロース市場:2月決算)
2022年5月23日 新型コロナウイルス感染症の感染拡大及び緊急事態宣言発令に伴う店舗休業や営業時間の短縮等が解除されたものの、依然として当社が置かれている厳しい状況を真摯に受け止めたため。 決定(決定機関は不明) 代表取締役:月額報酬の25%減額
取締役社長:月額報酬の25%減額
1年間
(2022年6月分から2023年5月まで)
JFLAホールディングス
(東証スタンダード市場:4月決算)
2022年5月 13日 別途公表した「特別利益、特別損失の計上及び業績予想と実績との差異に関するお知らせ」を踏まえ、役員自らがこの事業環境を重く受け止めたため。 自主返納 役員報酬総額の30% 当面の間
(2022年7月から)
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン
(東証グロース市場:3月決算)
2022年5月13日 営業損失を計上したことを真摯に受け止め、その経営責任を明確にするため。 取締役会決議 代表取締役社長:月額報酬額の50%
その他取締役(3名、社外取締役含む):月額報酬額の20%
6か月間
(2022年5月から2022年10月まで)
監査役会決議 監査役(3名、非常勤監査役含む):月額報酬額の20%
プレシジョン・システム・サイエンス
(東証グロース市場:6月決算)
2022年5月13日 2022年6月期通期連結業績予想の下方修正を真摯に受け止め、その経営責任を明確にするため。 自主返納 代表取締役社長:月額報酬額の25%
その他の取締役4名(社外取締役を除く):月額報酬額の25%
1か月間
(2022年5月)
ハビックス
(東証スタンダード市場:3月決算)
2022年5月13日 2022年3月期決算を受け、その経営責任を明確にするため。 開示されておらず不明 代表取締役:月額報酬の20%
取締役:月額報酬の10%
1年間
(2022年4月から2023年3月まで)
フジッコ
(東証プライム市場:3月決算)
2022年5月13日 2022年3月期の連結業績が、2022年1月31日に公表した2022年3月期の連結業績予想を下回ったことを真摯に受け止め、その経営責任を明確にするため。 開示されておらず不明 代表取締役社長執行役員:年額報酬の10%
取締役専務執行役員:年額報酬の7%
取締役上席執行役員:年額報酬の5%
3か月間
(2022年4月から2022年6月まで)
各月額報酬を、その減額の合計が上記1の額となるように減じる方法による。
アツギ
(東証プライム市場:3月決算)
2022年5月11日 本日発表した2022年3月期の業績を真摯に受け止め、その経営責任を明確にするとともに、今後も厳しい経営環境が予想されることを踏まえ、役員が率先して固定費削減の姿勢を示す必要があることから。 取締役会決議 代表取締役社長:月額報酬額の10%
その他の取締役(社外取締役を除く):月額報酬額の30%
6か月間
(2022年7月から12月)
〔すでに2021年7月から役員報酬の減額を実施済み〕
監査役の協議 監査役(社外監査役を除く):月額報酬額の20%
レノバ
(東証プライム市場:3月決算)
2022年5月10日 関連会社での多額の損失の計上および2022年3月期の営業利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益が2021年5月10日発表の連結業績予想に対して大幅な減益となったことを真摯に受け止め、経営責任を明確にするため。 取締役会決議 取締役会長:基本報酬の30%
代表取締役社長:基本報酬の30%
業務執行取締役及び執行役員:基本報酬の10%~20%
社外取締役:基本報酬の10%
1年間
(2022年6月から2023年6月開催の定時株主総会日まで)
日本テレホン
(東証スタンダード市場:4月決算)
2022年4月22日 2022年3月15日に公表した「2022年4月期通期業績予想数値の修正に関するお知らせ」の内容を真摯に受け止め、その業績管理責任を明確にするため。 取締役会決議 代表取締役:役員報酬月額の20%
常務取締役:役員報酬月額の15%
取締役:役員報酬月額の10%
3か月間
(2022年5月から7月まで)
マルシェ
(東証スタンダード市場:3月決算)
2022年4月15日 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う厳しい事業環境への対応の一環。 取締役会決議 代表取締役:月額報酬額の20%
業務執行取締役:月額報酬額の10%
5か月間
(2022年5月から2022年9月まで)
福留ハム
(東証スタンダード市場:3月決算)
2022年4月15日 経営責任の明確化 取締役会決議 代表取締役:月額報酬額の25%
専務取締役:月額報酬額の15%
常務取締役:月額報酬額の10%を減額
その他取締役:月額報酬額の8%を減額(社外取締役を除く)
6か月間
(2022年4月から2022年9月まで)
〔すでに2021年11月から役員報酬の減額を実施済み〕
常勤監査役からの申し入れ 自主返上 常勤監査役:月額報酬額の8%
ムーンバット
(東証スタンダード市場:3月決算)
2022年4月15日 新型コロナウイルス感染症拡大の影響による厳しい経営環境を踏まえたもの。 取締役会決議 代表取締役会長兼社長執行役員:月額固定報酬の50%
取締役・常務執行役員:月額固定報酬の30%
その他の取締役(監査等委員である取締役を除く):月額固定報酬の10%
3か月間
(2022年4月から6月まで)
アズ企画設計
(東証スタンダード市場:2月決算)
2022年4月13日 役員報酬の減額を累計24ヶ月間実施してきたものの、2022年2月期の業績においても状況の回復には至らなかったことを真摯に受け止め、その経営責任を明確にするため。 取締役会決議 代表取締役:月額報酬の30%
専務取締役:月額報酬の10%
1年間
(2022年4月から2023年3月まで。終了時期は今期の業績を踏まえて判断)
〔すでに2020年4月から役員報酬の減額を実施済み〕
ランシステム
(東証スタンダード市場:6月決算)
2022年3月31日 新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響を鑑みたもの。 取締役会決議 全取締役:月額報酬の30%
全執行役員:月額報酬の10%
6か月間
(2022年4月から9月まで)
アイ・アールジャパンホールディングス
(東証プライム市場:3月決算)
2022年3月30日 本日公表の2022年3月期通期連結業績予想の下方修正を重く受け止め、その経営責任を明確にするため。 指名・報酬諮問委員会の審議も踏まえて、取締役会決議 代表取締役社長・CEO:月額基本報酬の20%
業務執行取締役(社外取締役を除く):月額基本報酬の15%
連結子会社の代表 取締役社長・CEO:月額基本報酬の20%
業務執行取締役(社外取締役を除く):月額基本報酬の15%
1年間
(2022年4月から3月まで)
パレモ・ホールディングス
(東証スタンダード市場、名証メイン市場:2月20日決算)
2022年3月29日 新型コロナウイルス感染症の影響下、厳しい経営環境と業績を鑑みたもの。 開示されておらず不明 代表取締役:月額報酬の30%
取締役(常勤):月額報酬の20%
子会社代表取締役:月額報酬の30%
取締役(常勤):月額報酬の20%
1年間
(2022年4月から2023年3月まで)
〔すでに2021年6月から役員報酬の減額を実施済み〕
常勤監査役より報酬の自主返納の申し入れあり。 自主返納 常勤監査役:月額報酬の20%
菊水化学工業
(東証スタンダード市場、名証メイン市場:3月決算)
2022年3月22日 業績予想の修正並びに特別損失(子会社の固定資産の減損損失(連結))の計上および子会社株式評価損の計上(個別)連結子会社の事業移管および清算を真摯に受け止め、経営責任を明確にするため。 自主返上 代表取締役社長:月額報酬の30%
海外担当取締役:月額報酬の20%
常勤取締役:月額報酬の10%
3か月間
(2022年4月より2022年6月まで)
リーガルコーポレーション
(東証スタンダード市場:3月決算)
2022年3月25日 新型コロナウイルス感染拡大による業績への影響を鑑みてのもの。 取締役会決議 代表取締役:月額報酬の20%
取締役会長:月額報酬の15%
常勤取締役:月額報酬の10%
3か月間
(2022年4月から2022年6月まで)
〔すでに2020年7月から役員報酬の減額を実施済み〕
常勤監査役より報酬の自主返上の申し入れあり。 自主返上 常勤監査役:月額報酬の10%
アトラグループ
(東証スタンダード市場:12月決算)
2022年3月15日 2022年2月18日にリリースしたとおり、2021年12月期決算において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響などにより、通期連結業績予想を達成することができず、2021年12月31日を基準日とする剰余金の配当が無配となったことを受けてのもの。 取締役会決議 代表取締役:月額報酬の30%
取締役:月額報酬の10%
期間不明
川辺
(東証スタンダード市場:3月決算)
2022年3月15日 経営責任及び業務執行責任を明確にするため。 取締役会決議 代表取締役会長、社長および取締役:役員報酬月額の30% 3か月間
(2022年4月から6月まで)
〔すでに2021年7月から役員報酬の減額を実施済み〕
エイチーム
(東証プライム市場:7月決算)
2022年3月11日 業績悪化 取締役会決議 代表取締役社長:役員報酬月額の10% 5か月間
(2022年3月から7月まで)

決定事実 : 決定事実とは「会社が決定した事実のうち、投資家の投資判断上重要であるため適時開示が必要となるもの」のことであり、例えば増資、減資、組織再編、代表取締役または代表執行役の異動などといった投資家にとって投資判断上重要となる事実を指す。なお、ここでいう事実の決定には「子会社等による決定」も含まれる。
バスケット条項 : 法令などで何かを規定する際に、具体的に適用対象事項を列挙し切れない場合や、弾力的な運用の余地を残す必要がある場合に、「その他の・・・」といった形で、当該規定の適用範囲をより広くすることを目的に置かれる規定のこと。適時開示について定めた証券取引所の有価証券上場規程のほか、インサイダー取引を規制する金融商品取引法にも包括(バスケット)条項がある。

「減額の根拠」を「自主返納」(自主返上ともいう)としている会社がいくつかあるが、役員報酬の「減額」と「自主返納」の違いは押さえておく必要がある。両者はいずれも手にする役員報酬が減るという点では一見似ているが、実はまったく別の手続きであり、決定する主体や社会保険料・源泉所得税への影響などが異なる。

まず「減額」は取締役会などの決議により行うもので、役員にとっては受け身の処分となる。一方、「自主返納」はあくまで役員が自ら返還するという自主手続きになる。また、会計上も、減額は単に役員報酬額が減る(P/Lの販管費が減少)だけだが、自主返納はいったん役員報酬を全額計上して返納分だけ寄附金を受け取る(P/Lの販管費は減少せず、例えば営業外収益の雑収入が増加)という処理を行うのが一般的となっている。この会計処理を踏まえると、税務上の取扱いも異なってくる。毎月の役員報酬を損金算入するためには法人税法上の「定期同額給与」の要件を充たす必要があるのが原則だが、例外的に「臨時改定事由」や「業績悪化事由」に該当する減額であれば“定期同額”でなくても損金算入が認められる。これに対し自主返納の場合、上記のとおり会社は返納を受けた分の寄附金を受け取ったことになり、それが税務上の益金(≒会計上の利益)となり、法人税の課税対象となる。さらに、減額の場合は、社会保険料や源泉所得税も報酬の減額に伴い減額されることになるが、自主返納の場合はいったん役員報酬を全額支払ったという体裁になるため、社会保険料や所得税の源泉額の減額はないという違いもある。もっとも、確かに社会保険料や源泉所得税のことを考えると自主返納の方が役員にとっては「経済的に損をした」ことにはなるが、「減額決議によって減らされた」というよりも「言われる前に自主的に返した」方が見栄えはマシという考え方もあろう。

損金 : 法人税計算の基礎となる法人所得を減らす性質の支出等のこと。損金は企業会計上の費用とおおむね一致するが、役員賞与や固定資産の減損損失など「損金には該当しない費用」もある。
定期同額給与 : 役員給与の支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの。

また、「減額の対象者」にも注目したい。減額の対象者に執行のトップである代表取締役社長が含まれるのは当然として、上表のとおり多くの会社が執行責任を負う業務執行取締役も対象にしている一方、社外取締役や監査役まで対象にしている会社はほとんどない。そもそも社外取締役や監査役は業務執行を担うことができないため、執行責任を負っていないからだ。それでもなお、全役員が“痛み”を感じることに重きを置いて監査役も役員報酬の引き下げの対象に含めるという判断をした会社では、常勤監査役のみが報酬を「自主返納」するのが通常となっている(監査役の報酬を決議するのは監査役会であり、監査の独立性の観点から取締役会が監査役報酬の減額を決議することはできない)。そのような会社の中には、監査役が「我々も自主返納するので、取締役会として取締役への報酬の減額を決議せよ」と取締役に迫ったところもあるものと思われる。

取締役だけでなく非取締役の執行役員の報酬(給与)まで減額する会社も見受けられた(ランシステムやレノバなど)が、非取締役の執行役員は「従業員」として労働法や雇用契約で守られていることから、減額にあたっては社内ルールや雇用契約等の事前確認が必須となる点、留注意したい。

ホールディングス形態をとっている場合、子会社の役員も対象としている(上表のアイ・アールジャパンホールディングスやパレモ・ホールディングスを参照)。この場合、子会社の取締役の報酬減額決議はあくまで「子会社の取締役会」で実施する必要がある。

「減額の幅」「期間」は各社によって様々となっている。一見すると、減額額の大きさでは減損対象を「業績連動報酬の全額」としたシャルレが突出しているように見える。業績連動報酬は、文字通り業績が悪化すればそれに連動して報酬額も減る仕組みであるため、そもそも「減額」の対象としては馴染まないはずだが、シャルレの業績連動報酬は業績が悪化しても一定額が発生するということだろう。これに対しアイ・アールジャパンホールディングスは、業績に連動しない「基本報酬部分」を減額対象としている。シャルレの「全額」という打ち出し方はインパクトがあるが、全体を見渡すと、30%から10%の範囲で役職に応じて減額割合を設定している会社が多い。

期間は、プレシジョン・システム・サイエンスのように「1か月」と短期間に限定するケースから、アズ企画設計のように「1年間(2022年4月から2023年3月まで。終了時期は今期の業績を踏まえて判断)」と長めに期間を設定しつつ、終了時期の延期にも含みを持たせているケースまである。一方、JFLAホールディングスは「当面の間」として終期を定めていない。期間の定め方について特に正解があるわけではないが、業績悪化の程度や経営陣の危機感などが反映されていると言えそうだ。

また、なかには過去に遡及して減額決議をしている会社もあるが(例えばフジッコでは、5月に、4月分も含めた減額決議を行っている)、この場合、将来の報酬を減額するよりも取締役の反発が強まることは容易に想定されるだけに要注意だ。また、川辺のように減額決議を3か月ごとに繰り返している会社もある。業績の推移を見ながら減額の要否を決定していくという趣旨だと思われるが、決議し直すたび「3か月後には業績が改善している」という投資家の期待を裏切ることになり、かえって投資家の信頼を失うリスクもあろう。

役員報酬の減額等を実施した場合には「開示」にも気を配りたい。役員報酬を減額等するということは、投資家を中心とした利害関係者に対して「執行責任を果たしていなかった」と認めることを意味する以上、執行責任を果たしていなかったことを示す根拠(例えば業績予想の下方修正や減損損失の計上など)とともにリリースを出すのが望ましい。この点からすると、日本テレホンでは、業績予想の修正日が2022年3月15日、役員報酬の減額等のリリース日が2022年4月22日、アトラグループでは、業績未達成および無配転落のリリースが2022年2月18日、役員報酬の減額等のリリースが2022年3月15日と、役員報酬の減額等のリリース日が明らかに遅い。このような遅れは、投資家から「役員間で報酬減額の意思統一に時間がかかった(減額に抵抗している役員がいた)」と勘繰られることになりかねない。それを避けるためには、役員間での迅速な根回しが不可欠となる。

減損 : 固定資産の時価や収益性が著しく低下している場合に、固定資産の簿価を時価まで減額する処理のこと。

また、最近は大半の上場会社が任意の指名・報酬委員会を設けているが、開示にあたっては取締役会での決議の前段階として任意の指名・報酬委員会での審議を行った旨を記載することが望ましい(上表のアイ・アールジャパンホールディングスを参照)。

開示方法として適切とは言えないのが、「役員別」の減額幅を明示せず、減額の合計額のみを開示するやり方だ。例えばJFLAホールディングスは「役員報酬総額の30%」、ヘリオスは「役員の月額報酬額の平均40%」としか記載しておらず、どの役員がどの程度の責任を負うのかが明らかでない。役員にとっては自らに降りかかりかねないレピュテーションリスクを最小限に抑えることができるかもしれないが、投資家からすると次の改選時の判断材料が不足することとなり、不満が残るはずだ。「執行責任を果たしていなかったことを認める」という役員報酬の減額等の趣旨を踏まえ、投資家目線の開示を心掛けたいところだ。

2022/06/28 役員報酬制度大幅改定後の報酬ベンチマークの要否

2022年3月決算企業の定時株主総会がいよいよ6月29日(水)にピークを迎える(東証の調査によると、東証に上場する2022年3月期決算企業の25.7%が同日に開催)。コロナ禍からの業績回復、更なる成長や企業価値向上に向けて経営陣を鼓舞するため、役員報酬制度の大幅改定を行った企業もあったようだ。こうした企業は、無事に総会承認を得て“ひと段落”といったところだろう。

役員報酬制度を大幅改定したとなれば、しばらく再改定は想定されないため、他社の水準との報酬ベンチマークも必要ないと考える企業は・・・

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2022/06/28 役員報酬制度大幅改定後の報酬ベンチマークの要否(会員限定)

2022年3月決算企業の定時株主総会がいよいよ6月29日(水)にピークを迎える(東証の調査によると、東証に上場する2022年3月期決算企業の25.7%が同日に開催)。コロナ禍からの業績回復、更なる成長や企業価値向上に向けて経営陣を鼓舞するため、役員報酬制度の大幅改定を行った企業もあったようだ。こうした企業は、無事に総会承認を得て“ひと段落”といったところだろう。

役員報酬制度を大幅改定したとなれば、しばらく再改定は想定されないため、他社の水準との報酬ベンチマークも必要ないと考える企業は多い。すなわち、報酬ベンチマークは改定期にのみ必要であり、巡行運用期には不要との判断だ。しかし、報酬ガバナンスという観点からは、それは適切な判断とは言い難い。

報酬ベンチマーク : 競合他社で同様の仕事をする労働者に支払われている報酬を調査すること。自社の労働者に支払うべき給与の目安を決定するために行われる。

周知のとおり、会社法改正およびそれに伴う開示府令の改正(いずれも2021年3月1日から施行・適用)により、「報酬等の決定方針」を定めている場合は、当該方針の決定方法やその内容、また、当事業年度の取締役(監査等委員である取締役を除き、指名委員会等設置会社にあっては執行役等を含む)の個人別の報酬等の内容が当該方針に沿うものであると取締役会(指名委員会等設置会社にあっては報酬委員会)が判断した理由の記載が求められている。要するに、事業報告や有価証券報告書での役員報酬関連開示において、必要十分なプロセスを経て当該方針を決定した旨や取締役会等が個人別の報酬等の内容が妥当であると判断した旨などを説明する必要があるということだ。

これは報酬改定期のみならず、「毎期」求められることは言うまでもない。また、事業報告や有価証券報告書の主な読み手である株主の納得感を得るには、「根拠を明確にする」ことが重要になる。そのためには、自社にとって適切と思われるデータソースを活用し、毎年報酬ベンチマークを実施していくことが望ましい。報酬ベンチマークは、いわば報酬ガバナンスの定例の“健康診断”と言える。

“健康診断”の結果を開示する際には、どこで診断を実施したのか、すなわち、報酬ベンチマークのデータソース(第三者機関が運営する報酬調査)も併せて記載すると、読み手の納得感も増すはずだ。現状、日本においては、コンサルティングファーム、調査会社、金融機関など複数の機関が報酬調査を実施しており、参加企業の顔ぶれ、集録データの内容、分析の切り口もバラエティに富んでいる。そのため、どのデータソースが自社の“健康診断”に適しているのかを適切に選択する必要がある。例えば、自社の企業規模、属性(業種・業態、上場か・非上場か、日系か・外資かなど)に見合った参加企業が揃っているか、データサンプルは十分にあるかのチェックは必須となる。実際、任意回答のためサンプル数が少なかったり、実は同一・関連会社のサンプルが重複している(=マーケット全体ではなく特定の個社の報酬水準を追いかけている)といったデータソースは少なからず存在している。「無償」であることを重視している企業も見受けられるが、報酬ベンチマークのデータとしての価値が低ければ意味がない。経年での安定性(サンプル企業の継続参加率等)もチェックしてみるべきだろう。

多くの上場企業が今秋に予定している次年度に向けた報酬委員会(任意のものを含む)の始動に向け、早々に準備に取り掛りたいところだ。

2022/06/27 【2022年5月の課題】法定開示の見直しと自社にとっての影響・課題(会員限定)

1.令和3年度・ディスクロージャーワーキング・グループの論点の柱は?

金融庁 金融審議会の分科会であるディスクロージャーワーキング・グループは、これまでも金融担当大臣の諮問を受け様々な開示制度について議論してきましたが(前回の議論は「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告-資本市場における好循環の実現に向けて-(2018年6月28日)」参照)、令和3年度のディスクロージャーワーキング・グループ(以下、DWG)では、金融担当大臣より「企業を取り巻く経済社会情勢の変化」を踏まえた企業情報の開示あり方について幅広く検討を行うことを諮問され、2021年9月~2022年5月にかけ以下の4点について検討が行われました。ここでいう「企業を取り巻く経済社会情勢の変化」とは、企業経営や投資家の投資判断におけるサステナビリティの重要性の急速な高まり、コーポレートガバナンスに関する議論の進展を意味しています。

<令和3年度のDWGにおける議論のテーマ>
(1) サステナビリティに関する企業の取組みの開示
(2) コーポレートガバナンスに関する開示
(3) 四半期開示をはじめとする情報開示の頻度・タイミング
(4) その他の開示に係る個別課題
2.開示が増える点、減少する点

令和3年度のDWGでの議論の結果、有価証券報告書等の金融商品取引法上の法定開示書類において「開示が増える点」「減る点」をまとめると下表のとおりです。

区分 主な内容 企業への影響
開示が増える点 (1)気候変動情報、人的資本、多様性といったサステナビリティ情報の開示義務化
(2)コーポレートガバナンスに関する以下の開示の追加又は強化
①取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況の開示
✓開催頻度、主な検討事項、個々の構成員の出席状況を説明
参考: 2022年3月18日のニュース「取締役会・委員会等の活動状況、有価証券報告書での開示義務化へ
②監査役会等や内部監査部門に関する開示
✓監査役又は監査委員会・監査等委員会の委員長の視点による監査の状況の認識と監査役会等の活動状況等を説明
KAMについての監査役等の検討内容
デュアルレポーティングラインの有無を含む内部監査の実効性を説明
③政策保有株式等に関する開示
✓政策保有株式の発行会社と業務提携等を行っている場合の説明
✓政策保有株式の議決権の行使基準
✓政策保有株式と純投資の区分の考え方、両者の区分変更
※参考:2022年2月2日のニュース「政策保有株式開示を巡る期待ギャップが解消しない理由

デュアルレポーティングライン : 内部監査のレポート先が、執行のトップだけでなく、監査委員会、監査等委員会、あるいは取締役会にも向けられていること。
純投資 : 「純投資目的」とは、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とする場合をいう。純投資目的以外の株式が「政策保有目的株式」に分類される。

(3)経営上の重要な契約の開示強化
①企業・株主間の契約の開示
✓企業・株主間のガバナンスに関する合意
✓企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意
コベナンツに関する契約の開示
※参考:2022年3月2日のニュース「議決権行使や株式の譲渡・保有に関する合意の開示を促す法令改正が行われる可能性

コベナンツ : 借入期間内における作為(実行することを要求される行為)・不作為(やってはならない行為)について借手が誓約する、借入契約(金銭消費貸借契約)における特約条項。借入れの際に締結するコベナンツの多くは「一定の自己資本比率の維持」「一定の純資産額の維持」等の財務的な遵守事項であることが多いので、財務制限条項とも呼ばれる。

開示が減る点 (4)四半期報告書の廃止
・少なくとも第1・第3四半期報告書は廃止し、四半期情報の四半期決算短信に一本化
※参考:2022年5月18日のニュース「第2四半期開示の行方
開示の推奨 (5)有価証券報告書の英文化
義務化は回避され、【事業等のリスク】、【経営者による財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】、【コーポレート・ガバナンスの概要】、【株式の保有状況】「サステナビリティ情報」など利用ニーズの特に高い項目について、英文開示を行うことが“推奨”される。
また、外部の翻訳ツールを利用しやすいようEDINETの改修が進められる。

EDINET : Electronic Disclosure for Investors’ NETworkの略。金融商品取引法に基づく有価証券報告書や臨時報告書等の開示書類を電子的に提出・縦覧するシステム。

以下では、上記のうち企業への影響が大きいと考えられる(1)気候変動情報をはじめとするサステナビリティ情報の開示義務化、および(4)四半期報告書の廃止について深堀して解説します。

3.気候変動情報をはじめとするサステナビリティ情報の開示強化

(1)サステビリティ情報の記載欄の新設
周知のとおり、2050年までに温室効果ガス(GHG=GreenHouse Gas)の排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラルの実現」という菅政権時代の2020年10月に打ち出された政策は、国際的な脱炭素の流れの中で岸田政権においても継続され、今やサステナビリティに関する取組みが企業経営の中心的な課題になるとともに、その取組みに対する国内外投資家の関心も高まっています。コーポレートガバナンス・コードは、補充原則3-1③では主に気候変動(プライム市場上場企業のみ)や人的資本、補充原則2-4①では主に多様性と、上場企業にサステナビリティに関する取組みの開示を求めており、既に一部の企業は有価証券報告書で開示を行っていますが(2022年1月13日のニュース「現行の開示制度の下で求められる気候変動開示」、2022年6月3日のニュース「12月決算会社の有報におけるサステナビリティ関連情報の開示」参照)、サステナビリティ情報が有価証券報告書の各所に分散していると読みにくいうえ、仮にサステナビリティ情報を監査することになった場合には、監査の対象範囲が不明確になるといった問題も生じかねません。そこで今回、サステビリティ情報の記載欄が有価証券報告書に新設されることとなったわけです。

もっとも、有価証券報告書にサステビリティ情報の記載欄が新設された後も、同記載欄以外でサステナビリティ情報を開示できないということではありません。例えば、投資家にとって投資判断の核となるサステナビリティ情報を「サステナビリティ情報」欄に記載し、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】などと相互参照するとともに、必要に応じて詳細情報を記載した任意開示書類も参照することが考えられます。サステナビリティ情報の記載欄はあくまで一覧性や企業間比較をしやすくするために設けられると考えればよいでしょう。

有価証券報告書のサステビリティ情報の記載欄で開示が求められる内容は、ISSBが現在パブリックコメントに付している公開草案「全般的なサステナビリティ開示要求事項」のフレームワーク(【特集】ISSB公開草案「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」の開示フレームワーク 参照)のコア・コンテンツである「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に関するものとされています。気候変動情報のみならず、「人的資本、多様性」といった他のサステナビリティ情報についても、この4つのコア・コンテンツをベースに開示されることになります。

ISSB : 正式名称はInternational Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審議会)。資本市場向けのサステナビリティ開示の包括的なグローバル・ベースラインを開発するため、IFRS財団が昨年(2021年)11月に設立した。

<ISSBが提案している「全般的なサステナビリティ開示要求事項」における4つのコア・コンテンツの概要>
ガバナンス 戦略 リスク管理 指標と目標
サステナビリティのリスクと機会を企業内で監督する機関と経営者の役割の説明 サステナビリティのリスクと機会に対応するための戦略を理解するための情報 サステナビリティのリスクがどのように識別、評価、管理、軽減されたのかに関する情報 企業がどのように重大なサステナビリティリスクと機会を測定、管理しているかを理解するための情報

これら4つのコア・コンテンツに基づき「気候変動」「人的資本、多様性」それぞれについて有価証券報告書での開示が求められることが予想される内容は以下のとおりです。

【気候変動情報の開示内容】
気候変動情報については、4つのコア・コンテンツのうち「ガバナンス」「リスク」はすべての企業が開示し、「戦略」「指標と目標」は各企業が重要性を判断して開示することになります。「指標と目標」のScope1Scope2Scope3の温室効果ガス排出量は国際的には開示が義務化される方向となっていますが、投資家の投資判断や企業価値との関係で重要性を適切に評価しつつ、開示するかどうかを検討することになります。

Scope1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出のこと
Scope2 : 他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出のこと。
Scope3 : 事業者自ら排出している温室効果ガス(二酸化炭素等)であるScope1、Scope2以外の間接排出、具体的には「事業者の活動に関連する他社」による温室効果ガスの排出のこと。

1.ガバナンス 2.戦略 3.リスク管理 4.指標と目標
気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンスを開示する。
①気候関連のリスク及び機会に対しての取締役会による監視体制
②気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割
気候関連のリスク及び機会がもたらす組織のビジネス・戦略・財務計画への「実際の」及び「潜在的な」影響を、そのような情報が重大な場合は、開示する。
①組織が識別した、短期・中期・長期の気候関連のリスク及び機会
②気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響
2℃以下シナリオを含む、さまざまな気候関連シナリオに基づく検討を踏まえて、組織の戦略のレジリエンスについて

2℃以下シナリオ : 気温の上昇を「2℃以内」にとどめることを目標とするパリ協定で合意された脱炭素社会を目指すシナリオ。
レジリエンス : 気候変動の悪影響に対する脆弱性を減らしつつ、事業の“復元力”や“しなやかな強靭さ”を持つことを意味する。

気候関連リスク及び機会について、組織がどのように識別・評価・管理しているかを開示する。
①組織が気候関連リスク及び機会を識別・評価するプロセス
②組織が気候関連リスク及び機会を管理するプロセス
③組織が気候関連リスク及び機会を識別・評価・管理するプロセスが、組織の総合的リスク管理にどのように統合されているか
気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を、そのような情報が重要な場合は、開示する。
①組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標
②Scope1、Scope2、及び該当する場合にはScope3の温室効果ガス排出量と、その関連リスク
③組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績

【人的資本、多様性に関する開示内容】
人的資本、多様性についても「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つのコア・コンテンツをベースにした開示が求められます。具体的には、「ガバナンス」「リスク管理」に関する開示に加え、以下の開示が求められることになります。

①「サステナビリティ情報」の記載欄における開示
戦略 中長期的な企業価値向上における人材戦略の重要性を踏まえた「人材育成方針」(多様性の確保を含む)や「社内環境整備方針」の開示
指標と目標 上記人材育成方針と整合的な指標(インプット、アウトカム等)の設定、その目標及び進捗状況の開示

アウトカム : 「組織の事業活動とアウトプットの結果としてもたらされる資本の内部的及び外部的な正と負の影響」を意味する。内部の資本とは、例えば、利益剰余金や設備等を意味し、外部の資本は、大気への影響といった自然資本等を指す。

②【従業員の状況】における開示
長期的な企業価値判断に必要な項目として、女性管理職比率、男性育休取得率、男女間賃金格差を開示し、必要に応じて「サステナビリティ情報」の記載欄と相互参照させる。

このうち②の女性管理職比率、男性育休取得率の開示は、企業の負担を考慮し、女性活躍推進法、育児・介護休業法など他の法律の枠組みで上記項目の公表を行っていない企業は有価証券報告書で開示することが「望ましい」とされ、すべての企業に対して一律に開示が義務化されるわけではありません。一方、女性活躍推進法、育児・介護休業法に基づき公表を行っている企業は、有価証券報告書においても開示が求められることになります。

(出典:DWG第7回令和4年3月24日事務局説明資料資料1)
63206

(2)サステナビリティ情報開示を行う上での課題
①開示内容の重複

ISSBの公開草案「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」の4つのコア・コンテンツのうち、例えばガバナンスを例にとると、現状、多くの企業は、気候変動、人的資本、多様性それぞれについてガバナンスを構築するというよりは、「サステナビリティ全般」についてガバナンスを構築しているのが実態でしょう。そこで、ガバナンスの開示においては、気候変動、人的資本、多様性それぞれについて記載するのではなく、サステナビリティ全般のガバナンスについて記載し、気候変動、人的資本、多様性それぞれに特徴的なものがあれば別途追加して記載するという形も考えられます。これは、リスク管理などの他のコア・コンテンツについても同様のことが言えます。

②経営者によるサステナビリティを巡るリスクと機会の特定
気候変動情報をはじめとするサステナビリティ情報開示にあたっては、サステナビリティを巡る重大なリスクと機会を特定する必要があります(DWGの議論によれば、有価証券報告書での開示の観点から求められるサステナビリティを巡るリスクと機会の特定の対象となるのは、「気候変動」「人的資本、多様性」に関するものとされています)。そのためには、経営陣が積極的にリーダーシップを発揮し、サステナビリティに関するリスクと機会を洗い出し、それを経営戦略に反映させるとともに実行、モニタリング、見直しを行うといったサステナビリティへの取組みに対するPDCAサイクルを回す必要があります。

PDCAサイクル : Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の循環

コーポレートガバナンス・コード補充原則2-3①でも、「取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきである。」としており、サステナビリティを巡るリスクと機会の特定に対する経営者の積極的な関与を求めています。

③重要性(マテリアリティ)を踏まえた開示
有価証券報告書における記述情報の「重要性(マテリアリティ)」は、一般的には「投資家の投資判断にとって重要か否かで判断すべき」とされています。そして、「投資家の投資判断にとって重要か否か」は、投資家にとっての「企業価値の評価」上、重要であるか否かで判断されることになります。したがって、各企業は、個々の課題や事象等が自社の企業価値や業績等に与える重要性(マテリアリティ)に応じて、特定されたリスク及び機会に関する「ガバナンス」「リスク」のみを開示するのか、「戦略」「指標と目標」も開示するかを決定します。

開示項目を決定後、それらを「既に任意開示書類(統合報告書等)で開示している項目」「取り組んでいるものの、まだ開示していない項目」「取り組んでいない項目」に分類し、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示プロジェクトを進めていくことになります。

④サステナビリティ開示の担当部署
これまで有価証券報告書の開示実務は経理部門が担当した来たという企業が多いものと思われますが、サステナビリティ情報は通常、経理部門にとっては専門外の分野となります。そこで、サステナビリティ情報の開示をどこの部署が担当するのかが問題となります。例えば、①新たな部署を設ける、②CSR部門が担当する、③CSR部門+経理部門が担当する、④CSR部門+経理部門+事業部門が担当する、といった選択肢が考えられます。

新たな部署を設けるとなると当初はコストがかかりますが、新体制定着後は部署間の調整を行いやすく、また、経営陣への報告をまとめて行うことが可能になるといったメリットもあります。

一方、既存の複数の部署が担当する場合、多角的な検討ができるというメリットはありますが、部門間の調整に時間がかかり意思決定のスピードが遅くなるというデメリットもあります。また、CSR部門といった専門部署が担当した場合、意思決定のスピードは高まるものの、専門部署は事業の実態を正確に把握していないことも少なからずあるため、情報開示が不十分なものとなる恐れがあります。

また、有価証券報告書に「サステナビリティ情報」欄が新設されることに伴い、組織がセクショナリズムに陥る可能性もあります。例えば、「サステナビリティ情報」欄がサステナビリティ専従部門あるいはCSR部門の独壇場となり、そこで企業価値や投資判断とは異なる“独自の世界”が形成されてしまうリスクがある点には要注意です。

結論として、サステナビリティ情報が財務情報と一体的に開示され、また両情報のつながりを示すことも求められるため、少なくともCSR部門と財務諸表の作成を担当している経理部門を巻き込むことが望まれるでしょう。さらに、サステナビリティ課題は特定の部署ではなく会社全体の問題であることから、必要に応じて勉強会を開催し、その重要性を全社に浸透させていくことも重要になります。

⑤開示時期の問題
現状、サステナビリティ情報が盛り込まれた統合報告等の任意開示書類の多くは、定時株主総会後2~4か月後に開示されています。有価証券報告書は、決算日後3か月以内に提出されるルールですが、総会前提出をしている企業を除き、多くの企業が総会日または総会日直後に提出しています。すなわち、有価証券報告書でのサステナビリティ情報の開示が義務化された場合、その開示時期も現状より2~4か月早くなるということです。サステナビリティ情報は財務情報を補完する情報であり、将来に関する情報を除き、財務情報と同一の会計期間について報告することが必要になります。今後企業には、サステナビリティ情報の開示を早期化するための業務フローの整備が求められることになるでしょう。

⑥法定開示と任意開示の峻別
有価証券報告書は、投資家に対する情報としては、信頼性の観点から最上位に位置付けられます。したがって、サステナビリティ情報についても、投資情報として必要な情報は有価証券報告書で開示し、それを補足する情報は統合報告書等の任意開示書類で開示するということで、有価証券報告書と任意開示書類の“棲み分け”を図ることになると考えられます。

財務情報を補完するサステナビリティ情報が統合報告書等の任意開示書類で開示されている場合、統合報告書等を参照することが考えられますが、仮に任意開示の内容が誤っていた場合、有価証券報告書の虚偽記載とされてしまうのではないかという問題もあります。しかし、任意開示書類に明らかに重要な虚偽記載があることを知りながら参照するなど、当該任意開示書類を参照する旨を記載したこと自体が有価証券報告書の重要な虚偽記載になり得る場合を除けば、参照先の任意開示書類に虚偽記載があったとしても、同法の罰則や課徴金が課されることにはならない旨が、DWGの報告書にも明記されました(2022年6月21日のニュース『「投資家を誤解させる記載」は金商法上の罰則等の対象になるか』参照)。

法定開示だからといって罰則等を恐れ有価証券報告書で開示する情報を限定してしまうと、投資情報としての有用性が低下してしまうため、「投資家の投資判断にとって重要か否か」によって開示内容を決定することが必要です。あまりにも任意開示書類への参照が多いと非常に読みにくく、理解も困難となるため、参照する際には投資家にとっての分かりやすさ、利便性といった視点も持ちたいところです。

⑦将来情報と虚偽記載に対する対応
サステナビリティ情報は、企業の中長期的な持続可能性に関係するだけに多くの将来情報を含むことになりますが、これらの将来情報が事後に事情が変化したこと等をもって虚偽記載に問われることを懸念し、企業の開示姿勢が委縮することも考えられます。

この点、有価証券報告書における将来情報の記載と虚偽記載の関係については、「一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明がされていた場合、提出後に事情が変化したことをもって虚偽記載の責任が問われるものではないと考えられる」ことが「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正案に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(2019年1月)で明らかにされており、今般のDWG報告でも改めて明記されています(9ページ「(3)サステナビリティ開示に関する留意事項 ① 将来情報の記述と虚偽記載の責任」参照)。

ただし、企業のサステナビリティに関する取り組みがない、または取り組む計画がないまま既に取り組みを行っているor行うかのようなことを開示する行為はいわゆるグリーンウオッシングとされ、虚偽記載に該当する可能性があるため注意してください。

グリーンウオッシング : 環境に配慮していることやエコを想起される「グリーン」と、上辺だけを飾ることを意味する「ホワイトウォッシュ」を掛け合わせた造語であり、一見すると自社の商品やサービスなどが(実際にはそうではないにもかかわらず)環境に配慮しているかのように見せかけ、環境意識の高い消費者や投資家への訴求効果を高めようとする行為を指す。

4.第1・第3四半期の四半期報告書廃止の影響

金融商品取引法上の四半期報告書と証券取引所の規則に基づく四半期決算短信は情報の重複が多いことから、少なくとも「第1・第3四半期」の四半期報告書は廃止し、四半期決算短信に「一本化」することになりました。四半期決算短信の開示の内容、第2四半期の取扱い、虚偽記載に対する罰則等、監査法人によるレビューの有無については、2022年夏以降に行われるDWGで詳細を決定することになっています。

ただし、四半期決算短信に一本化されたとしても、現行の四半期決算短信では開示が要請されていないものの四半期報告書では開示が要請されている「事業等のリスク」「経営上の重要な契約等」「MD&A」といった投資情報として有益なものは開示が維持される可能性があり、開示内容自体は大きく変わらない可能性があります。

MD&A : 「Management’s Discussion and Analysis of Financial Condition and Results of Operations」の略で、「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。

第1・第3四半期について、四半期報告書が廃止され、四半期開示が四半期決算短信に一本化された場合、下表のような影響が出ることが予想されます(下表では四半期レビューもなくなることを前提にしています)。

影響 摘要
(1)監査報酬の減少 監査法人の四半期レビューの手続きがなくなることにより、監査報酬の減少が予想される。
(2)四半期決算内部統制の整備 これまで四半期報告書には監査法人のレビューという「第三者の目」が入っていたが、四半期レビューがなくなることにより、四半期決算の信頼性は会社の内部統制が拠り所となる。
(3)期末への業務の集中 第1、第3四半期報告書がなくなると、当該四半期報告書作成業務、四半期レビュー対応もなくなり、期中の業務にゆとりが出る可能性がある。ただし、サステナビリティ開示の追加により、期末に業務が集中する可能性がある。

(1)の監査報酬の減少については、どの程度の金額となるかは会社により異なりますが、その減少額を、負担が増すサステナビリティ開示のための人員増又は外部コンサルタントの活用に充てることも考えられるでしょう。

(2)の四半期決算の内部統制の整備については、もともと監査法人は会社の内部統制の一部を構成しているわけではありませんが、実態としては監査法人の指導に基づき四半期決算作業を行っている会社も少なくないものと思われます。四半期レビューがなくなれば、その指導もなくなります。監査人という第三者の視点が入っている場合とそうでない場合で最も変わってくるのは、実は作成者側の緊張感です。金融庁では、四半期報告書が廃止された後も、四半期決算短信を臨時報告書として開示することにより四半期開示に対するエンフォースメントを担保することが検討されています。仮にそれが実現すれば、四半期報告書廃止後も虚偽記載があれば罰則の対象となることから、企業においては、これまで以上に四半期決算・開示に対する内部統制の強化が求められることになるでしょう。

エンフォースメント : 罰則を科すことなどによる行政上の強制執行のこと。

(3)の四半期報告書の廃止とサステナビリティ情報の開示義務化により、従来より期末に業務が集中する問題については、四半期決算開示の人員を減らし、逆に期末は増員するという対応が考えられます。

5.適用時期

今般のDWGの議論を踏まえた新たな開示規制の適用時期について、今のところ金融庁サイドから公式なアナウンスは何もありません。

四半期報告書の廃止に伴う四半期決算短信への一本化については、2023年の通常国会で金融商品取引法を改正し2024年3月期に係る四半期から適用するというスケジュールが最も早いパターンとなるでしょう。サステナビリティ情報の開示強化については開示府令の改正での対応が可能であり、今年中に開示府令が改正され、2023年3月期から適用される可能性が高くなっています。

ただし、適用時期は開示項目ごとに会社の準備期間を考慮して決定される可能性もあります。特に企業への影響が大きい気候変動情報については、SSBJにおけるサステナビリティ情報開示の議論を経ることになるため、2023年3月期からの適用は難しいとの見方が強くなっています。
SSBJ : 正式名称は「Sustainability Standards Board of Japan(サスティナビリティ基準委員会」で、IFRS財団におけるISSBに相当する日本の組織。母体となるのは、財務会計基準機構(FASF)である。

2022/06/27 ESG評価・データ提供機関の行動規範、コンプライorエクスプレイン方式に

ESG評価機関やESGデータ提供機関に対する企業側からの厳しい評価が聞かれる中(2022年4月8日のニュース「ESG評価機関等に行動規範の策定検討」参照)、・・・

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2022/06/27 ESG評価・データ提供機関の行動規範、コンプライorエクスプレイン方式に(会員限定)

ESG評価機関やESGデータ提供機関に対する企業側からの厳しい評価が聞かれる中(2022年4月8日のニュース「ESG評価機関等に行動規範の策定検討」参照)、金融庁に設置されたESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会は6月27日、「ESG 評価・データ提供機関等に係る専門分科会報告書-ESG 評価・データの質の更なる向上を通じた市場の発展に向けて-(案)」をとりまとめ、同じく同庁に設置された「サステナブルファイナンス有識者会議」に報告した。専門分科会の報告書は、主に「ESG評価機関・データ提供機関への提言」「投資家への提言」「企業への提言」から構成されている。さらに、このうちESG評価機関・データ提供機関への提言は、6つの提言と31の指針で構成されている。
 
上記で引用したニュースのとおり、この報告書は、世界各国・地域の証券監督当局や証券取引所等から構成される投資家保護などを目的とした国際的な機関であるIOSCO(証券監督者国際機構)が公表した「ESG格付けおよびデータ提供者に関する調査結果と規制当局に対する提言(資産運用におけるサステナビリティに関連した実務、方針、手続及び開示に関する提言)」を受けて策定されたもの。国際的なESG評価・データ提供機関の参加も得ながら、これら機関の行動を規制する内容を、IOSCOの報告書を掘り下げて規範や指針の形にまとめている。これら機関に対しては特段の規制が存在せず、当局による監督が及ばないにもかかわらず、金融庁があえて市中協議を経た「行動規範」とすることで、日本が主体となって、世界中のESG評価・データ提供機関の行動を規律していこうという意欲が感じられる。各機関に対しては、規範の趣旨に賛同しこれを受け入れる旨を表明(公表)することが呼びかけられ、受入れ機関は、規範の諸原則・指針を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」が求められる。

コンプライ・オア・エクスプレインが求められる原則の要旨は下記のとおり(「3.ESG 評価機関・データ提供機関への提言」参照)。

・ESG評価機関・データ提供機関は、提供するESG評価・データの品質を確保し、そのために必要な基本的手続き等を定めなければならない(原則1)。
・品質を確保するために必要な人材等を確保し、専門的能力の育成等を図らなければならない(原則2)。
・独立して意思決定を行い、利益相反を回避し、適切に対処するための実効的な方針を定め、リスクを適切に管理しなければならない(原則3)。
・透明性を確保し、評価等の目的・考え方・基本的方法論等、サービス提供に当たっての考え方を明らかにするとともに、提供するサービスの策定方法・プロセス等を十分に開示しなければならない(原則4)。
・守秘義務を果たすための方針・手続きを定めなければならない(原則5)。
・企業からの情報収集が評価機関・企業双方にとって効率的となり、必要な情報が十分に得られるよう、工夫・改善をしなければならない。また、評価等の対象企業から開示される評価等の情報源に重要又は合理的な問題提起があった場合には適切に対処しなければならない(原則6)。

上記行動規範により、自社に関するデータに誤りがあれば修正を求めることができるようになるなど、企業にとってのメリットは大きい。一方、評価機関、データ提供機関にとっては、日本の金融庁の打ち出した行動規範に服してもなお、日本企業に関するデータを集め、評価したいというインセンティブが働かなければ、日本企業に割くリソース(人員や時間)を確保することが難しくなる。それは、日本企業が評価機関、データ提供機関から“スルー”されることを意味する。

評価機関、データ提供機関がリソースを割きたいと考える日本企業がどれだけあるか、換言すれば、日本企業の評価が投資家にとって価値のある情報であり続けられるかどうかが、この行動規範が世界をリードするものになるかどうかの分岐点となりそうだ。