2022/04/21 エフエム東京、連結外しによる損失隠蔽で旧経営陣に訴訟提起(会員限定)

TOKYO FMの運営会社であるエフエム東京(非上場)は2022年4月19日、旧経営陣に法令違反および善管注意義務違反があったとして総額約4億8,230万円の損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起したことを公表した。

エフエム東京では、2019年4月に内部通報窓口と会計監査人(東陽監査法人)に対して「連結外し」についての通報があったことをきっかけに、当時の経営陣(以下、旧経営陣)が事業の失敗による損失を隠蔽するために、連結外しや情報隠ぺいなどを行っていたことが明らかとなり、経営陣が交代する騒ぎとなった。本訴訟は旧経営陣の責任を問うとともに、損害賠償を請求するためのもの。

連結外し : 連結財務諸表の作成にあたり、実質的には連結子会社とすべき会社を連結子会社として扱わないようにする粉飾決算の手法の一つ。

本件の経緯はエフエム東京が公表した下記の2つの報告書により明らかにされている。

公表年月 報告書 目的
2019年8月 第三者委員会による調査報告書 不適切な会計処理等の調査
2020年5月 ガバナンス改善委員会による報告書 コーポレートガバナンス体制の見直しおよび旧役員の責任等の検討

両報告書からは、旧経営陣が事業の失敗を糊塗するために情報を隠蔽し、更なる資金投入によって益々深みにはまっていく様子がうかがえる。エフエム東京が資金投入したのがi-dio事業だ。i-dio事業とは、地上アナログ放送終了後に空いた周波数帯を利用してエフエム東京グループ各社が運営していた地上波デジタル放送およびインターネットラジオサービスのこと。旧経営陣は2014年から2015年にかけて別会社(ジャパンマルチメディア放送やTOKYO SMARTCASTなど)を設立し、2016年3月1日からi-dioの放送を開始したものの黒字化できず、2020年3月31日をもってi-dioは放送終了となった。

糊塗 : 一時しのぎにごまかすこと。

その間、i-dio事業を営む子会社のジャパンマルチメディア放送やTOKYO SMARTCASTでは赤字の垂れ流しが続いたものの、親会社であるエフエム東京による100億円規模の資金供給や債務保証により、何とかこれらの子会社は存続していた。それを可能にしたのが、エフエム東京の旧経営陣による情報隠しと連結外しだ。

エフエム東京は非上場ながらも取締役会と監査役会を設置しており、社外取締役や社外監査役が就任していた。ただ、旧経営陣は社外役員に対してi-dio事業のネガティブ情報をできる限り説明しないようにしてきた。取締役会で社外役員が質問をしても、旧経営陣は真摯に真正面から回答せず、はぐらかすような、あるいは良く聞かなければ理解できないような回答をしていた。監査役および監査役会は、i-dio事業に係るリスクや連結決算におけるTOKYO SMARTCASTの取り扱いについて早い時期から問題点を認識しており、社外監査役が取締役会でi-dio事業に関する決議のあり方の再検討や各種報告などを求めていたが、これらのほとんどは代表取締役会長の冨木田氏と代表取締役社長の千代氏によって握りつぶされていた。取締役会の議事録には、社外監査役の意見を聞いたかのような記載や、今後報告するかのような記載があるものの、実際には社外監査役の提言をはぐらかすような対応も多く、報告を約束しながら実行されていないことがほとんどであった。旧経営陣の一人である常勤取締役はガバナンス改善委員会のインタビューに対し、「監査役には議決権がないので何とでもなる」と回答するなど、旧経営陣のガバナンス軽視の姿勢は顕著だった。

こうした中、エフエム東京の旧経営陣は、i-dio事業の低迷が社外取締役を含む同社の取締役や株主その他利害関係人等にも広く共有され、撤退を含めi-dio事業の抜本的な見直しを検討せざるを得ない事態となることや、i-dio事業に多額の投融資を行うなど積極的に同事業を推進してきた経営陣の経営責任が問われることを回避するため、2016年9月頃からi-dio事業を営む連結子会社のTOKYO SMARTCASTの「連結外し」の方策を検討し、実行した。

TOKYO SMARTCASTが エフエム東京の連結子会社から持分法適用関連会社になることにより、TOKYO SMARTCASTの損失がエフエム東京の連結損益計算書において営業外費用のみに計上され()、エフエム東京の連結損益計算書の営業利益に影響を与えないこととなる。

持分法適用関連会社 : 持分法とは、投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法をいう。一行連結とも言われる。持分法は非連結子会社や関連会社に対して適用される。また、関連会社の判定は、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができるかどうか(影響力基準)という観点から行われる。なお、関連会社であっても、持分法の適用により、連結財務諸表に重要な影響を与えない場合には、持分法の適用会社としないことができる。よって、持分法適用関連会社とは、持分法を適用する関連会社を指す。

 連結財務諸表規則によると、持分法による投資損益は営業外収益または営業外費用の区分に一括して表示すると定められている(連結財務諸表規則57条・58条)。

2016年3月31日時点で、エフエム東京は自社および子会社のジグノシステムジャパンを通じてTOKYO SMARTCASTの議決権の50.0%を保有しており、これに緊密者等であるA社が所有するTOKYO SMARTCAST株式200株の議決権を含めると議決権比率は52.0%となっていた。さらに2017年3月末時点のTOKYO SMARTCASTの取締役会の過半数(取締役7人中6人)がエフエム東京およびジグノシステムジャパンの現任あるいは旧役職員であった。この状況下でTOKYO SMARTCASTを連結子会社から外すには、保有する株式の議決権比率を40%未満としたうえで、緊密者等の持分を含めても議決権比率が50%を超えないようにする必要があった(連結子会社の判定については【役員会 Good&Bad発言集】子会社の連結外しの解説を参照)。

緊密者等 : 自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者。

そこで、エフエム東京の社長千代勝美氏と旧知の仲であった i 氏が代表を務めるB社にTOKYO SMARTCASTに対して1.5億円(3,000株)を2017年3月に出資させ(株式の保有期間は3か月間限定との約束あり)、エフエム東京のTOKYO SMARTCASTに対する議決権比率を低下させた。この結果、TOKYO SMARTCASTは2017年3月期にはエフエム東京の連結子会社から外れることとなった(持分法適用関連会社化)。また、形式上持分比率が低下したことにより損失の取り込みも減らすことができた。しかし、3か月後にはジグノシステムジャパンがTOKYO SMARTCASTの株式2,000株を買い戻し、その金利相当分として i 氏に対して顧問料の名目で総額396万円を支払っていたことから、第三者委員会の調査により、本件は「出資」ではなく「融資」と判断された。第三者委員会の判断を踏まえTOKYO SMARTCASTの議決権総数からB社分3,000株を除外し、改めてエフエム東京のTOKYO SMARTCASTに対する議決権比率を見るとちょうど50%となるうえ、TOKYO SMARTCASTの取締役の過半数がエフエム東京およびジグノシステムジャパンの役職員等であったため、実質支配力基準によりTOKYO SMARTCASTはエフエム東京の連結子会社と認定された(これにより、2017年3月期決算は過年度決算の訂正が必要となった)。

実質支配力基準 : 議決権の所有割合といった形式支配力の要素に加えて、他の会社等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を支配しているかどうかという観点から、実質的に子会社の判定を行うこと

また、2018年3月期にはジグノシステムジャパンが連結グループ外のA社に対してTOKYO SMARTCASTの株式1,400株(7,000万円)を譲渡しており、これによりエフエム東京が間接的に保有していたTOKYO SMARTCASTの株式の議決権比率が薄まり、エフエム東京の議決権比率は40%未満となったことから、エフエム東京はTOKYO SMARTCASTを持分法適用関連会社としていた。しかし、第三者委員会は、当該譲渡の裏で旧経営陣が画策し、①譲渡から13か月後にA社がTOKYO SMARTCASTに対して買取請求できる旨の合意、②当該買取について、エフエム東京の子会社のメディアコミュニケーションズが保証する旨の合意、③A社が当該買取のために銀行から借り入れた資金の金利をTOKYO SMARTCASTが負担する主旨でA社に210万円を支払う合意をしていたことが判明したとして、本件は一時的な株式預かりに過ぎず、A社保有分の1,400株は実質的にジグノシステムジャパンが保有を継続していたと認定した。その結果、エフエム東京のTOKYO SMARTCASTに対する議決権比率は45.1%となった。しかも、TOKYO SMARTCASTの取締役の過半数がエフエム東京およびジグノシステムジャパンの役職員等であることから、実質支配力基準によりTOKYO SMARTCASTはエフエム東京の連結子会社として認定された(2018年3月期決算についても、過年度決算の訂正が必要となった)。

このような旧経営陣の連結外しの工作について、社外役員は十分な情報を与えられず、取締役会等で異議を述べる機会を失っていた。この点、エフエム東京の社外役員はいずれも同社の株主や取引関係等にある役職員等であり、エフエム東京と何らかの利害関係を有していることから、旧経営陣から完全に独立した立場の者とは言えなかったのではないかという見方もできなくもない。とはいえ、社外役員である以上、適切な情報をタイムリーに与えられていれば、i-dio事業に深入りする前に社外役員がストップをかけ、エフエム東京の損失負担を少なくできた可能性はある。

エフエム東京がi-dio事業関連の損失として計上した損失額は、2018年度で100億7800万円、2019年度で25億5700万円にも及んでおり、ガバナンスが有効に機能していれば損失拡大を回避できた可能性が高い。情報隠しによりガバナンスを無効化し、さらに連結外しにより株主等の目を欺いた旧経営陣の責任は重く、エフエム東京による旧経営陣に対する損害賠償請求訴訟の提起は当然の行動と言えよう。

2022/04/20 第二四半期報告書に代わって半期報告書の復活はあるか?

金融商品取引法上の四半期報告制度の廃止が事実上確定する中、企業の関心を集めているのが、2006年の証券取引法改正により廃止された(正確には、四半期報告制度の創設に伴い第2四半期報告書に置き換わった)半期報告書および中間監査の復活の有無だ(2022年4月11日のニュース「四半期開示のあり方、4月18日のディスクロージャーワーキング・グループで方向性」の4段落目以降参照)。4月18日に開催された金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(以下、DWG)の第8回会合に提出された事務局(=金融庁)資料でも、「法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し」と明言されているのに対し、第2四半期をどうするのかについては何も記載されていない(2022年4月18日のニュース「本日開催のDWG、四半期報告書を維持すべきとの意見は半減」参照)。・・・

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2022/04/20 第二四半期報告書に代わって半期報告書の復活はあるか?(会員限定)

金融商品取引法上の四半期報告制度の廃止が事実上確定する中、企業の関心を集めているのが、2006年の証券取引法改正により廃止された(正確には、四半期報告制度の創設に伴い第2四半期報告書に置き換わった)半期報告書および中間監査の復活の有無だ(2022年4月11日のニュース「四半期開示のあり方、4月18日のディスクロージャーワーキング・グループで方向性」の4段落目以降参照)。4月18日に開催された金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(以下、DWG)の第8回会合に提出された事務局(=金融庁)資料でも、「法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し」と明言されているのに対し、第2四半期をどうするのかについては何も記載されていない(2022年4月18日のニュース「本日開催のDWG、四半期報告書を維持すべきとの意見は半減」参照)。

この点、当フォーラムの取材により、半期報告書および中間監査の復活は「ない」ことが判明した。その理由として、半期報告書を作成する事務負担の重さがある。「半期」報告書と言っても、その作成に要する作業量は年度の有価証券報告書とほぼ同じであり、特に注記の多いIFRS(国際財務報告基準)採用企業にとっては大きな負担となる。実際、企業からは「仮に半期報告書および中間監査が復活することになれば、四半期報告書を維持するよりも負担は重くなる。それだけは避けて欲しい」といった声が多く上がっている。今回事実上確定した「四半期報告書の廃止・四半期決算短信への一本化」の最大の目的は企業の事務コストの軽減にあるため、現状よりも企業の事務コストが増えるとなれば本末転倒だろう。

金融機関やファンド、大規模な株主の募集を行っている非上場会社などが半期報告書を作成し中間監査を受けている中(上場している金融機関の場合、中間(連結)財務諸表を掲載した第2四半期報告書を作成し中間監査を受けている)、上場会社が期中に一度も監査を受けなくてよいのかとの指摘はいまだにあるものの、「企業の事務コストの軽減」という大義名分を打ち消すほどの勢いはないのが実情だ。結論として、第二四半期報告書に代わり、半期報告書および中間監査を復活させるという線は消滅したと言えよう。

大規模な株主の募集を行っている非上場会社 : 6か月で通算50名以上の勧誘、1年で通算1億円以上の売り出しや募集を行う会社や、所有者数1000人以上の株券や優先出資証券、総出資総額1億円以上で所有者数500人以上のみなし有価証券の発行会社などが該当する。

2022/04/19 男女の賃金格差開示の内容とスケジュール

既報のとおり、「男女の賃金格差」が有価証券報告書の開示項目とされることが確実となっているが(2022年1月24日のニュース『岸田総理が「有価証券報告書」における男女別賃金の開示を明言』、2022年3月14日のニュース「男女の賃金格差開示、中小子会社も対象へ」参照)、この開示が・・・

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2022/04/19 男女の賃金格差開示の内容とスケジュール(会員限定)

既報のとおり、「男女の賃金格差」が有価証券報告書の開示項目とされることが確実となっているが(2022年1月24日のニュース『岸田総理が「有価証券報告書」における男女別賃金の開示を明言』、2022年3月14日のニュース「男女の賃金格差開示、中小子会社も対象へ」参照)、この開示が2023年3月期に係る有価証券報告書から義務付けられる方向であることが当フォーラムの取材により判明した。すなわち、3月決算会社にとっては、進行期である「当期」について男女の賃金格差の開示が求められることになる。

また、有価証券報告書、すなわち金融商品取引法の省令である「開示府令」に基づく開示に加え、「女性活躍推進法」による男女の賃金格差の開示も2023年3月期から義務付けられる方向だ。既に岸田総理は、有価証券報告書のみならず「女性活躍推進法」に基づく企業の“必須”開示項目に男女の賃金格差を追加することを検討する意向を表明しているが(2022年3月14日のニュース「男女の賃金格差開示、中小子会社も対象へ」の最終段落参照)、これがいよいよ実現するということだ。現行の女性活躍推進法では、複数の項目の中から1つ以上の項目を選択して開示すればよいことになっているが、男女の賃金格差は“必ず”選択しなければならないこととされる。しかも、2022年4月1日からは「常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主」も女性活躍推進法の適用対象となった(従来は「常時雇用する労働者が301人以上の事業主」が適用対象)。有価証券報告書のみならず女性活躍推進法でも男女の賃金格差の開示を義務付けるのは、大企業だけでなく中小企業にも男女の賃金格差の縮小を促すのが狙い。当然ながら、大企業の子会社の中にも開示が義務付けられるところが出てくる。

こうなると、企業にとって最大の関心事は開示の内容だろう。この点、当フォーラムの取材によると、有価証券報告書、女性活躍推進法ともに「金額」までは求められず、賃金格差を「割合」で示せば足りることとなるようだ。正規/非正規社員は分けて開示することになるだろう。一般的に非正規社員は女性が多いため、正規/非正規を区別しなければ、男女の賃金格差が実態以上に大きく出てしまう可能性があるからだ。

男女の賃金格差開示に関する今後のスケジュールとしては、まず内閣官房に設置された「新しい資本主義実現会議」が5月末頃に方針を示すことになろう。有価証券報告書については、その方針が金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループが6月にもとりまとめる報告書に盛り込まれることが見込まれる。女性活躍推進法については、厚生労働省で数回審議会が開催され、やはり同様の方針がその報告書に盛り込まれるという流れが予想される。これらの報告書を受け、有価証券報告書、女性活躍推進法による男女の賃金格差開示を可能とするための法令改正案が9月頃にパブリックコメントに付され、年末に確定・施行されることが考えられる。いずれも省令マターであり、国会の審議を経る必要はないため、2023年3月期からの義務付けは十分に可能だろう。

冒頭でも触れたとおり、ポイントは3月決算会社にとっては「進行期」の実績が開示対象になるということだ。経営陣としては、早急に自社における男女の賃金格差の現状を把握し、場合によっては何らかの対策(例えば女性幹部の中途採用を増やす)を講じることも検討する必要があろう。

2022/04/18 本日開催のDWG、四半期報告書を維持すべきとの意見は半減

2022年04月12日のニュース「四半期報告書の廃止が事実上決定」でお伝えしたとおり、四半期報告書は廃止され(2024年3月期に係る四半期から適用見込み)、四半期決算短信に一本化されることが事実上確定したが、こうしたなか注目を集めていたのが、本日(2022年4月18日)に開催された金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(以下、DWG)の第8回会合だ。四半期開示がテーマとなった2月18日のDWGでは・・・

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2022/04/18 本日開催のDWG、四半期報告書を維持すべきとの意見は半減(会員限定)

2022年04月12日のニュース「四半期報告書の廃止が事実上決定」でお伝えしたとおり、四半期報告書は廃止され(2024年3月期に係る四半期から適用見込み)、四半期決算短信に一本化されることが事実上確定したが、こうしたなか注目を集めていたのが、本日(2022年4月18日)に開催された金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(以下、DWG)の第8回会合だ。四半期開示がテーマとなった2月18日のDWGでは各委員から「四半期報告書を維持すべき」との意見が相次いだが、当フォーラムの取材によると、四半期報告書が廃止されることはこの段階でほぼ既定路線となっていた(四半期開示を巡る一連の動向については2022年4月11日のニュース「四半期開示のあり方、4月18日のディスクロージャーワーキング・グループで方向性」および同ニュースで引用されているニュース参照)。その後2か月間を経て開催された本日のDWGに提出された事務局説明資料1(41ページの●~参照)で示された金融庁の主な考え方等は以下のとおり。

① 上場企業について、法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所の規則に基づく四半期決算短信に「一本化」。
② 任意化を含め四半期開示(「一本化」する四半期決算短信)の位置づけについては、四半期以外の適時開示のあり方と併せて、さらに幅広く企業・投資家などの市場関係者の声や海外動向(欧州等)を踏まえて検討する。
③ その上で、今夏以降も、本DWGにおいて、「一本化」する四半期決算短信に係る諸論点の議論を深めることが考えられるが、具体的にどのような点を整理すべきと考えるか(例:四半期開示の内容、虚偽記載に対するエンフォースメント、監査法人によるレビューの有無)。

エンフォースメント : 罰則を科すこと。

①の法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所の規則に基づく四半期決算短信に「一本化」することについては、DWGの委員(座長を除き総勢18名)13名から発言があった。明確に賛成を表明したのは13名中6名、四半期決算短信ではなく四半期報告書(または半期報告書)を維持すべきと発言したのは13名中3名だった。その他の4名については、四半期短信に一本化後の開示内容等がはっきり見えないため、意見を保留または表明しなかった。2月18日に開催されたDWG第6回会合では、13名中6名が「四半期報告書を維持すべき」と明確に発言したことを踏まえると、大きな変化と言える。

もっとも、今回のDWGで今後の四半期開示の全貌が明らかになったわけではない。まず気になるのは、上記のとおり事務局資料では「法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し」と明言する一方で、第2四半期をどうするのかが記載されていない点だ。また、四半期決算短信における開示内容の信頼性という問題もある。下表のとおり、現行の四半期報告書には監査法人のレビューがあるため、情報の信頼性という点では四半期決算短信より高い。専門家(DWGの委員以外)からは、例えば、本来であれば期中に実施すべき減損が期末まで先延ばしされたとしても、誰のチェックも受けていない四半期決算短信に虚偽記載があるかどうかは分からない、との指摘も聞かれる。そこで、四半期決算短信に虚偽記載があった場合には現行の四半期報告書や臨時報告書並みの罰則、課徴金を科すべきとの意見もある。

減損 : 固定資産による将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ計上する損失のこと。

<各開示書類に係る罰則等と監査法人によるレビューの要否>
(出典 DWG第8回 事務局資料1)
62319

このほか、DWGの委員からは、現行の四半期報告書に含まれている「事業等のリスク」「経営上の重要な契約等」「MD&A」といった投資情報として有用なものの開示は四半期決算短信への一本化後も維持されるべきといった発言が多く出ている。

MD&A : 「Management Discussion & Analysis」の略で、「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。

これらの論点については今後も最新情報を続報していきたい。

 

2022/04/16 GW休業のお知らせ

誠に勝手ながら、2022年4月29日(金)~2022年5月8日(日)のゴールデンウィーク期間中、事務局は休業となります。
ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い致します。

2022/04/15 「ウクライナ関連リスク」の先行開示事例

四半期報告書の廃止については当フォーラムが新聞報道等の1か月以上前から報じてきたところだが(下記のニュース一覧参照)、その中で、四半期報告書の廃止に伴い四半期決算短信における「リスク情報」の開示が強化される可能性が浮上していることは2022年4月11日のニュース「四半期開示のあり方、4月18日のディスクロージャーワーキング・グループで方向性」でお伝えしたとおり。

<四半期報告書の廃止を巡るニュース一覧>
・2022年4月12日のニュース「四半期報告書の廃止が事実上決定
・2022年4月11日のニュース「四半期開示のあり方、4月18日のディスクロージャーワーキング・グループで方向性
・2022年3月29日のニュース「四半期報告書がなくなった場合に予想される変化
・2022年3月8日のニュース「続報・四半期報告書の行方

下記のとおり、四半期報告書では「リスク情報」の開示を求めている。

<四半期報告書が開示を求めているリスク情報>
事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク(経営成績等の異常な変動、重要な訴訟事件等の発生等投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項)が発生した場合または前事業年度の有価証券報告書(以下、有報)に記載した【事業等のリスク】(開示府令第3号様式が準用する第2号様式の記載上の注意については後述)について重要な変更(変更にはリスクの消滅も含まれる)があった場合に、その旨およびその具体的な内容を分かりやすく、かつ、簡潔に記載する。

これに対し、現状の四半期決算短信ではリスク情報の開示は必須ではなく、記載要領で、サマリー情報の末尾「業績予想の適切な利用に関する説明」に「投資者による将来予測情報の適切な利用を促す観点から、実績を当初の予想値から大きく乖離させるおそれのあるリスク要因の説明を含め、将来予測情報の利用に関する注意文言を分かりやすく記載することが考えられる」と言及されている程度にすぎない(東証の決算短信・四半期決算短信作成要領等44ページを参照)。四半期報告書を廃止した場合、期中におけるリスク情報の変化を開示する場所がなくなるため、四半期決算短信にその役割を担わせようという狙いが、四半期決算短信における「リスク情報」の開示強化案の背景にある。

実際、四半期報告書が存在している現在でも投資家はコロナやウクライナ関連のリスク情報の開示が十分ではないことに不満を抱いており、今後四半期報告書が廃止されれば、四半期決算短信におけるリスク情報の開示の充実を求めてくることは容易に想像できる。コロナについてはパンデミックとなってから既に2年超が経過したこともあり、リスク情報の開示もある程度進んでいるが、ウクライナ関連のリスク情報の開示はこれからという上場会社がほとんどだろう。

そこで当フォーラムでは、「先行事例」として、12月決算の上場会社がウクライナ情勢に関してどのようにリスク情報の開示を行ったのかを調査した。3月決算会社が2022年6月末日までに開示を求められる有価証券報告書を作成するうえでも参考になる点は多い。・・・

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2022/04/15 「ウクライナ関連リスク」の先行開示事例(会員限定)

四半期報告書の廃止については当フォーラムが新聞報道等の1か月以上前から報じてきたところだが(下記のニュース一覧参照)、その中で、四半期報告書の廃止に伴い四半期決算短信における「リスク情報」の開示が強化される可能性が浮上していることは2022年4月11日のニュース「四半期開示のあり方、4月18日のディスクロージャーワーキング・グループで方向性」でお伝えしたとおり。

<四半期報告書の廃止を巡るニュース一覧>
・2022年4月12日のニュース「四半期報告書の廃止が事実上決定
・2022年4月11日のニュース「四半期開示のあり方、4月18日のディスクロージャーワーキング・グループで方向性
・2022年3月29日のニュース「四半期報告書がなくなった場合に予想される変化
・2022年3月8日のニュース「続報・四半期報告書の行方

下記のとおり、四半期報告書では「リスク情報」の開示を求めている。

<四半期報告書が開示を求めているリスク情報>
事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク(経営成績等の異常な変動、重要な訴訟事件等の発生等投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項)が発生した場合または前事業年度の有価証券報告書(以下、有報)に記載した【事業等のリスク】(開示府令第3号様式が準用する第2号様式の記載上の注意については後述)について重要な変更(変更にはリスクの消滅も含まれる)があった場合に、その旨およびその具体的な内容を分かりやすく、かつ、簡潔に記載する。

これに対し、現状の四半期決算短信ではリスク情報の開示は必須ではなく、記載要領で、サマリー情報の末尾「業績予想の適切な利用に関する説明」に「投資者による将来予測情報の適切な利用を促す観点から、実績を当初の予想値から大きく乖離させるおそれのあるリスク要因の説明を含め、将来予測情報の利用に関する注意文言を分かりやすく記載することが考えられる」と言及されている程度にすぎない(東証の決算短信・四半期決算短信作成要領等44ページを参照)。四半期報告書を廃止した場合、期中におけるリスク情報の変化を開示する場所がなくなるため、四半期決算短信にその役割を担わせようという狙いが、四半期決算短信における「リスク情報」の開示強化案の背景にある。

実際、四半期報告書が存在している現在でも投資家はコロナやウクライナ関連のリスク情報の開示が十分ではないことに不満を抱いており、今後四半期報告書が廃止されれば、四半期決算短信におけるリスク情報の開示の充実を求めてくることは容易に想像できる。コロナについてはパンデミックとなってから既に2年超が経過したこともあり、リスク情報の開示もある程度進んでいるが、ウクライナ関連のリスク情報の開示はこれからという上場会社がほとんどだろう。

そこで当フォーラムでは、「先行事例」として、12月決算の上場会社がウクライナ情勢に関してどのようにリスク情報の開示を行ったのかを調査した。3月決算会社が2022年6月末日までに開示を求められる有価証券報告書を作成するうえでも参考になる点は多い。

まず、上記で触れた有価証券報告書の【事業等のリスク】の記載要領である「開示府令第3号様式が準用する第2号様式の記載上の注意」を確認しておこう。

<開示府令第3号様式が準用する第2号様式の記載上の注意>
事業等のリスク
a 届出書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下a及び(32)において「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク(連結会社の経営成績等の状況の異常な変動、特定の取引先・製品・技術等への依存、特有の法的規制・取引慣行・経営方針、重要な訴訟事件等の発生、役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項をいう。以下aにおいて同じ。)について、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策を記載するなど、具体的に記載すること。記載に当たっては、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、分かりやすく記載すること。

最初に注目したいのは、下表のコアコンセプト・テクノロジーの開示例だ。上記記載上の注意では、「経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク」の開示を求めているが、同社はロシア・ウクライナに拠点を有しておらず、また同地域向けの事業も手掛けていない。また、同社の主要顧客においても同地域関連事業が大きな比重を占めている状況にはない。それにもかかわらず、あえて「ウクライナ情勢について」と題するリスク項目を新設したことは、投資家に安心感を与える。「ウクライナ情勢」のように投資家の多くが強い関心を抱いているリスクについては、「自社にとってリスクはないと判断したのでリスク情報には何も記載しない」のではなく、「リスクがないと判断したことをあえて書く」とのスタンスに立った開示が投資家を安心させるとともに、投資家との対話にも資すると言えよう。

リスクが低いことをあえて開示した例
会社名 項目名 開示内容
コアコンセプト・テクノロジー ⑧ ウクライナ情勢について 当社はロシア・ウクライナに拠点を有しておらず、また同地域向けの事業も手掛けておりません。当社の主要顧客においても同地域関連事業が大きな比重を占めている状況にはないものと認識しております。従いまして、現時点でウクライナ情勢が当社の事業及び業績に大きな影響を及ぼす可能性は低いと考えております。

従来、あくまで「外部環境の変化」といった観点から「戦争」をリスクとして取り上げている開示事例は少なからず見受けられた。このような開示を行ってきた会社は、現時点ではリスクは低いと判断しているとしても、下記の開示事例のように一般的なリスクの中でウクライナ情勢にも言及し、開示内容をアップデートしておくべきだ。なお、現在のところ「ロシア・ウクライナ戦争」という言い回しは見当たらず、「ロシアによるウクライナ侵攻」「ウクライナ情勢」という表現が多い。

一般的なリスクの中でウクライナ情勢を指摘する例
会社名 項目名 開示内容
ビジョン f その他、事業を取り巻くリスク 上記のほか、事業を取り巻くリスクとして、テロや戦争など世界情勢の変化や地震・台風等自然災害による渡航インフラへの被害等が発生し、海外渡航に対する意欲の急激な減退が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、ウクライナ情勢については、特に注視していく必要があります。
東海カーボン ③ 事業を取り巻く内外経済環境 当社グループは、日本のみならず、アジア、欧米において事業活動を展開しておりますので、世界経済の動向が当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。数年来のコロナ禍に加え、足元では、ロシアによるウクライナ侵攻や世界的なインフレ懸念の台頭、米中の対立、保護主義的通商政策の拡がりとサプライチェーンの混乱、気候変動対応を巡る混乱、コロナ禍の影響から脱しきれない新興国・資源国の景気低迷等、世界経済を巡る不確実性が顕在化していることから、これが想定に反して悪化する場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
Appier Group (3) マクロ経済に関するリスク 当社グループの売上収益の大部分は、北東アジア地域及びグレーターチャイナ地域から計上しており、当社グループの売上収益は過去増加しているものの、当社グループの業績はこれらの地域の経済情勢の影響を受けます。その見通しは不確実性が高く、様々な要因によって悪影響を受ける可能性があります。例えば、北東アジア地域及び台湾の経済は、中長期的に少子高齢化及び総人口の減少等といった要因から、不確実性が高い状況であります。さらに、「(4) 新型コロナウイルス感染症の影響」に記載の通り、新型コロナウイルスの感染拡大及びこれに対応して講じられた外出自粛要請等の様々な対策は、消費者行動及び事業活動を含む世界全体の経済活動に悪影響を及ぼしており、かつ、新型コロナウイルスの収束時期や影響の程度については、依然として不確実性が高い状況となっています。また、ウクライナ情勢に加え、米中貿易摩擦や中東及び北朝鮮での地政学的リスクの増大等により世界経済が低迷する場合、当社グループの主要な販売地域にも悪影響を及ぼす可能性があります。
これらの要因等により、これらの地域の経済情勢が悪化した場合、当社グループのソリューションに対する需要が減少し、新規顧客企業の獲得及び既存顧客企業の維持に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に大きく悪影響を及ぼす可能性があります。
太陽工機 (14)自然災害・戦争・テロ・感染症等について 当社の本社工場が位置しております新潟県長岡市は豪雪地帯であり、また大規模な地震に見舞われたことのある地域でもあります。過度の降雪や震災の発生をはじめとした自然災害の発生が当社の経営成績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、今般の新型コロナウイルス感染症の影響として、需要先における設備投資計画の足踏み、お客様との商談等の見合わせ、展示会の中止または延期等が発生しております。当社ではこうした状況において、消毒の徹底や3密の回避等の基本的な感染防止策は勿論のこと、会議や商談、機械納入前のお客様立ち会いなどを可能な限りリモートで実施するほか、オンライン展示会への出展、企業ウェブサイトや動画共有サイトを活用した情報発信の推進など、営業活動のニューノーマル対応を同時に進めてまいりました。
今後も、新型コロナウイルスに限らず未知の感染症によるパンデミックの発生に備えた体制を整備・強化していく方針ですが、感染症の特性や感染拡大による影響の程度や内容によっては、営業活動や工場操業の一時停止、受注の著しい減少、原材料の調達の停滞等により当社の事業展開や経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ロシア・ウクライナ情勢や、その影響等によりヨーロッパ及び各地域の需要先企業の事業に影響を及ぼす可能性があり、予測しえない事象の発生により当社の受注・売上に影響を及ぼす可能性があります。
また、原油価格の上昇や資源価格の高騰により、原材料の安定的な調達が困難になったり、著しく価格が上昇した場合には、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このほか、国内外における戦争や暴動、テロ事件等の発生や、これに伴う社会的な混乱が生じた場合には、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
興研 (11)ウクライナ情勢の影響について ロシアのウクライナ侵攻が始まり、原油価格の上昇がさらに高まる様相を呈しています。この軍事的対立が激化、長期化した場合は、原油価格急騰による原材料価格の高止まりだけでなく、地政学リスクの高まりや世界的インフレーションの加速といったリスクが顕在化し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
オプトラン (6) 国際情勢の影響について 当社グループは今後の業績伸展には海外での事業展開が不可欠と考えております。このため、東アジアを生産、販売の拠点として、2000年12月に光馳科技(上海)有限公司、2013年9月に光馳科技股份有限公司(台湾)、2021年9月に光馳半導体設備(上海)有限公司をそれぞれ設立し、2020年9月にAfly solution Oyを連結子会社化いたしました。また、中国、台湾、韓国の企業と販売代理店契約を締結しております。
このような当社グループの海外展開は業績伸展に不可欠と考えておりますが、昨今の国際情勢は、各国の国情を敏感に反映した複雑な状況になっており、政治的な背景が各国経済に影響を与える可能性があります。何らかの関連法規制の変更、紛争等が発生した場合、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社の部品の一部は欧州製であり、2022年2月下旬に開始されたロシアによるウクライナ侵攻は、当社の部品調達計画に影響を与える可能性があります。
日本ホスピスホールディングス (16) ウクライナ情勢について ウクライナ情勢により世界経済が不安定になる可能性があります。また、物流の混乱やエネルギー価格の高騰により、資材高騰や供給遅れにより新規開設の遅れや既存施設の運営コスト増大など当社の経営にも影響が出る可能性があります。

ロシア・ウクライナ地域での売上などを明示したのがDMG森精機やズーム(音楽用電子機器の開発および販売を営む東証スタンダード市場上場会社であり、リモート会議の米国ZOOM社とは別)だ。具体的な数値を示すことで、投資家はリスクが顕在化した場合の影響を把握・分析することができる。後述のロシア・ウクライナ地域で事業を営んでいるにもかかわらず具体的な数値を示さなかった開示事例と比較して、どちらが投資家目線に立っているかは一目瞭然と言える。

具体的な数値を示した開示例
会社名 項目名 開示内容
DMG森精機 (14)ロシア・ウクライナ情勢の影響 当社グループは、ロシアのウリヤノフスクに工作機械の組立工場、モスクワに販売及びサービス拠点を所有しております。ロシア・ウクライナ情勢については、世界的かつ政治的な不確実性があり、現時点でその影響を完全に予測することは困難な状況です。対露制裁措置は、ウリヤノフスク工場への材料供給及びロシアへの機械、スペアパーツ、サービスの輸出に影響を及ぼす可能性があります。
これらの情勢は当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。当連結会計年度のロシアでの売上収益、営業利益が当社グループ全体に占める割合はいずれも約2%、2022年2月28日時点でのロシアの子会社2社の純資産が当社グループ全体の総資産及び純資産に占める割合はそれぞれ約1%、約3%です。
ズーム ⑥ 戦争、テロ、感染症又は自然災害等 当社グループは、開発拠点を日本に、生産拠点を主として中国に、販売拠点を日本及び海外に置いております。これらの拠点において、地震、水害等の自然災害、新型コロナウイルス・新型インフルエンザ等の感染症や疫病の発生、戦争・テロ又は第三者による当社グループに対する非難・妨害などが発生するリスクがあります。
当社グループでは、一定規模の災害等を想定したリスク対応策を講じておりますが、こうしたリスク等により、短期間で復旧不可能な莫大な損害を被り、部品・資材の調達、生産活動、製品の販売及びサービス活動に遅延や中断が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)については、現在までのところ当社グループの業績にマイナスの影響を与えてはおりませんが、状況を引続き注視しております。当社においては、緊急事態宣言中はテレワークにより対応するなど出社制限を行い、出社する場合には検温徹底、マスクの常用、アクリルパーテーションの設置を行うなど、感染防止対策を徹底し、従業員の安全確保に努めております。
また、2022年2月24日に開始されたロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻については、現在状況を注視しております。なお、2021年12月期の連結売上高に占める両地域への売上高の割合は、合計で1.6%となっております。
ロシア・ウクライナ地域で事業を営んでいるにもかかわらず、具体的な数値を示さなかった事例
会社名 項目名 開示内容
日本通運 ①世界マクロ経済環境の変化について NXグループは、BtoBの企業間物流を中心に事業を展開しておりますが、生産分業や多国間取引の拡大など顧客の事業活動のグローバル化はより一層進展しております。そのような中において、米中間の貿易摩擦やテクノロジーを巡る覇権争いは近年激化しており、貿易や製造業の成長の下押しの要因となりうる不確実な状況が続いており、また、アジアや東欧、中近東を中心とした紛争等による地政学リスクも高まっております。これらを背景に世界マクロ経済が後退すると、顧客企業の輸送需要の動向に影響を与えることになり、NXグループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクとなります。特に、米国、中国経済の鈍化は日本を含む多くの国々の製造業にも影響することもあり、NXグループのロジスティクス事業セグメントにおいて大きな影響を及ぼす可能性があります。さらに、NXグループは、ロシア国内でも事業を行っており、ウクライナ侵攻に伴う、世界各国からのロシアへの制裁措置により、顧客企業のロシア事業からの撤退や事業停止に伴い、NXグループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
引き続き、製造業の顧客に対する生産調達に関わる物流への貢献領域拡大に取組むとともに、各国における消費関連の販売物流の一層の強化、拡大や、新興エリア等への進出の加速などを通じて、リスク低減に努めてまいります。
日本たばこ産業 ⑦ カントリーリスクについて 当社グループは、世界各国・各地域で事業展開しておりますが、現地の政治・経済・社会・法制度等の変化や暴動、テロ及び戦争の発生に伴うカントリーリスクが相対的に高まり、リスクが具現化した場合には、サプライチェーンや流通網の遮断、資産や設備の毀損、人員配置及び営業管理の困難性等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループには、経済制裁の対象となっている国々における事業があります。当社グループは、各種経済制裁に則り適法、適切に事業運営を行っておりますが、仮に当社グループがこれらの経済制裁に違反したと認定された場合には、多額の罰金が課される等のおそれがあり、また当該制裁の内容等が変更された場合には、当社グループがかかる国々における事業を継続できなくなる等、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループがかかる経済制裁に違反しない場合でも、経済制裁の対象となっている国々において事業を行っていること自体により、当社グループに対する評判に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、今般のロシア・ウクライナ情勢に鑑み、当社グループはロシア市場におけるすべての新規の投資及びマーケティング活動について一時的に停止することとしております。ロシア市場における事業環境は、過去に例がない厳しいものとなっており、今後の事業への影響は多岐にわたるものと想定されます。このため、事業環境が大幅に改善しない限り、ロシアにおける製造を一時的に停止する可能性もあるものと考えております。
当社グループは、事業展開をしている各国・各地域におけるカントリーリスクに係る情報を収集・モニタリングを実施しており、地政学要素を見極めながら、安定的な事業運営に向けて取組んでおります。また、グローバル事業基盤の強化及び拡充を図り、継続的に利益創出が可能な市場を複数確保することで、特定の市場においてカントリーリスクが発現した場合でも当社グループの業績への悪影響を最小限に留めるよう努めております。

上記記載上の注意では「当該リスクへの対応策」の記載も推奨されている。実際、単にリスクを挙げるだけでは投資家から「当事者感が薄い」といった評価を下されるおそれがある。上場会社各社としては「対応策」にまで踏み込んだ開示に取り組みたいところだ。

リスクへの対応策を記載している例
会社名 項目名 開示内容
JUKI (2) 海外での事業活動 当社グループの海外での生産及び販売活動については下記のリスク要因を十分考慮しておりますが、予測し得ないリスクが発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
・政治又は経済要因
・法律又は規則の変更
・潜在的に不利な税の影響
・労働争議
・テロ行為又は戦闘行為
当社グループは、各地域におけるリスクについて、年4回開催するリスク管理会議で分析し施策に反映させるとともに、海外子会社等を通じて常に最新情報を入手するよう努め、特別な対応が必要な場合は、社内に対応体制を構築し迅速に対応するなど、リスクの最小化を図っております。
なお、今回のロシアによるウクライナ侵攻に関しては、社長を本部長とする危機対策本部の枠組みの中で、お客様、取引先及び従業員の状況を含め最新情報の入手を行い、迅速かつ適切な対策の実施に取り組んでおります。
ウルトラファブリックス・ホールディングス ⑪ 原材料・燃料・輸送等の価格変動の影響について 当社グループの生産活動にあたっては、種々の原材料、部品、燃料、包装資材等を国内外から調達し、商品を生産しております。これら原材料・燃料・輸送等の価格変動に対しましては、生産効率化等で吸収を図っております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による極度の需要収縮の反動に伴い、世界各地で急速に需要が増加してサプライチェーンが混乱していること、及び、ロシア・ウクライナ情勢の影響等によって原油価格が上昇していることに起因して、様々な原材料価格や燃料価格が急激に上昇したり、調達困難になったり、コンテナや労働力の不足で輸送費が高騰したりするなど、原材料・燃料・輸送等のコスト上昇が多方面で続いております。当社グループでは、市場動向については日常から調達先の情報収集に努め、前倒しで確保する等、安定調達に努めるとともに、一部販売商品の値上げや、輸送費の一部を顧客に負担していただくなどの対策を講じておりますが、今後さらに価格が上昇した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
日本ペイントホールディングス (b)原材料の価格変動リスク 当社グループの原材料は、製品の特性上、石化原料への依存度が50%程度と高く、当社グループの原材料価格は、原油・ナフサ価格の変動による影響を受けます。原油価格は、OPECの生産量動向や天然ガス市況のみならず、ウクライナ情勢やカザフスタン情勢などの地政学上のリスク、中東やロシアにおける政情不安、米国の金融政策、米中の貿易摩擦、シェールオイルの復活状況、為替相場を見据えた中東産油国の価格政策、燃料電池車の普及によるガソリン需要の減退など、あらゆる要素が複雑に絡みあい、価格の動向に影響を与えています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大・継続が各国の経済活動に影響を与え続けることにより、原材料需要が急激かつ大幅に変動する可能性もあります。加えて、海上輸送を中心とした世界的なサプライチェーンの混乱は原材料の輸送コストを押し上げる要因となります。当社グループとしては、原材料の調達先の集中によるサプライヤーとの関係強化や原材料の生産地域の分散、契約の長期化など、原材料価格変動リスクを緩和する工夫を行い、安定して原材料が調達できるよう努めておりますが、これらの手法によっても原油・ナフサ価格の変動や新型コロナウイルス感染症による影響を完全に除去できるわけではなく、原材料価格が急激かつ大幅に上昇する場合やかかる原材料価格の変動を適時かつ合理的に製品価格に転嫁することができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響が生じる可能性があります。
ヤマハ発動機 (12) 自然災害、疫病、パンデミック、戦争、テロ、ストライキ、デモ等 自然災害、疫病、パンデミック、戦争、テロ、ストライキ、デモ等が発生した場合、当社グループの操業が遅延又は中断する可能性があり、さらに、当社グループの製造拠点等が直接に損害を受けた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループの日本における主力製造拠点は、予想される南海トラフ巨大地震の震源域近傍に集中しているため、被害を最小化するための主要建築物の耐震補強工事、被災後の早期復旧を可能にするための体制整備等の対策を進めており、また当社グループが保有する建築物、在庫等の損害に対する地震保険に加入しています。さらに新型インフルエンザ等の発生に対しても事業継続計画を策定しています。これらの対策や保険については継続的に見直していますが、当社グループの想定を超える規模の災害等が発生する場合があります。
新型コロナウイルス感染症につき、当社グループは、既成の新型インフルエンザ等の発生に対する事業継続計画に準じて、本社での職域接種の実施、各国における従業員のワクチン接種率の向上等、グループ一丸となって種々の対応・対策を行っています。今後も被害を最小に抑えてまいりますが、新型コロナウイルス感染症の影響が想定以上に拡大・長期化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
ウクライナ・ロシア情勢については、経済制裁や各国規制に基づく営業活動への影響はあるものの当社グループの業績及び財政状態に与える影響は軽微と見込んでいますが、グループ社員の安全確保、原材料・物流費の高騰、サイバー攻撃に関する懸念等、想定されるリスクに対して必要な対策を行っています。
荏原製作所 政治的要因
  項目 リスク内容 当社の対策
1 政治的要因 ・米中摩擦の激化、中東の紛争、ウクライナ情勢等による景況や貿易への影響により事業活動上の想定外の制約や費用が発生 リスクに鑑みたグローバルでのサプライチェーン・バリューチェーン構築

キヤノンは「対応策」の前提として、リスクの「発生可能性」「影響度」も明示している。投資家が具体的なリスクをイメージしやすいようするための工夫と言える。

キヤノンの有報リスク情報
7.国際政治経済に関連するリスク
発生可能性:中 影響度:大
●リスク
当社は生産及び販売活動の多くを日本国外で行っておりますが、海外における事業活動には主に政治、外交問題または不利な経済状況の発生、急激な為替レートの変動と予期しない政策及び法制度、規制等の変更のリスクがあります。
主要な市場における景気後退、ウクライナ情勢や貿易摩擦の問題がさらに深刻化するなど、政治、外交問題または不利な経済状況が発生し、法人顧客の投資抑制や個人消費の低迷が生じる場合、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。法人顧客の投資抑制は、主に当社のオフィス複合機、レーザープリンター、医療機器、露光装置、産業機器など法人顧客向け製品の需要を、また、個人消費の低迷は、カメラやインクジェットプリンターのような消費者向け製品の需要をそれぞれ減少させる可能性があります。この場合、当社製品の売上が低下し、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、急激な為替レートの変動が、外貨建売上など当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。そして、外貨建の取引から生じる当社の資産及び負債の円貨額や海外子会社の外貨建財務諸表から発生する為替換算調整勘定も変動する恐れがあります。
加えて、世界の各国・地域では政治、行政や法制度整備に係る様々な問題やウクライナ情勢に係る問題があり、当社が予期しない政策及び法制度、規制等の変更に直面するリスクがあります。
☆対応・機会
政治、外交問題または不利な経済状況の発生については、当社は、当社現地法人と日常的な意思疎通を通じて収集した関連情報や定期的なビジネス概況ヒアリングによる関連情報を経営戦略、業績予想に反映しております。また、特定の市場または世界全体で需要の減少が見込まれる場合は、当社は商品の生産、供給体制に応じて生産調整を実施しています。
急激な為替レートの変動に関しては、当社は当社現地法人を含め、定常的に短期為替予約の為替ヘッジ取引を実施し、直近の為替水準を反映した価格で製品を市場に投入するなどの対策を講じております。
予期しない政策及び法制度、規制等の変更については、当社は特に国際的な環境規制や国際及び国内税制変更に係る対策を強化しております。また、公正競争、腐敗防止、個人情報保護、安全保障貿易管理、環境その他の法規制に関しては、各所管部門による統制の下、遵守を徹底しています。

上記記載上の注意では「記載に当たっては、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して、分かりやすく記載すること」を求めているが、事業戦略等への影響について言及しているのがDICだ。区分欄の①は「発生防止を自社でコントロールできない外部環境リスク」であることを、関連欄の「他」は「長期経営計画で定めた事業戦略との関係はない」ことを意味している。記載上の注意に沿った開示事例と言えよう。

DICの有報リスク情報
リスク及び業績に与える影響の内容 可能性 時期 区分 関連 当社グループの取り組み
政治・地政学変動リスク
政治や社会情勢等に起因して生じる予期せぬ事態、各種法令・規制の変更等によるコスト増、製品・原料輸出入や送金の停止、サプライチェーン分断による影響が生じた場合に、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。例えば、米中貿易摩擦による製品・原料等の輸出入停止及び関税税率アップに伴うコスト急増、又は中東地域における紛争・政治不安等による原油高騰等が財務影響を及ぼす可能性として挙げられます。

なお、2022年2月以降のロシアの侵攻に端を発したロシア及びウクライナ情勢の影響については、紛争が短期間で終息した場合は限定的な影響に留まる一方で、これが長期化する場合には、当社グループの業績及び財務に一定の影響を及ぼすことになる可能性があると想定します。

不明 当社グループでは、本社による全体的な管理に加えて、地域統括会社による通常の管理により事業面及び機能面の双方で事業を展開する各国における様々なリスクをモニタリングしています。
生産・販売面におけるBCP(事業継続計画)体制の確立や原料の複数調達体制の構築を通じてカントリーリスクへの対応に取り組んでいます。
また、サプライチェーンの分断には、世界中にまたがるネットワークを有効活用することでリスクを低減しています。

【事業等のリスク】では一般的な記載にとどめ、【経理の状況】の【重要な後発事象】の中でウクライナ情勢について開示したのが電通グループだ。同社同様、決算日後にウクライナ情勢の悪化に起因して事業の譲渡や廃止などに踏み切る動きがあった上場会社にとっては参考になろう。

電通グループの開示例
開示場所 開示内容
【リスク情報】 (11)災害、事故等に関わるリスク当社グループが事業を遂行または展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、パンデミックの再発、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合には、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼし、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、地域・マーケット毎に想定される上記の問題に対し、DJNならびにDIのリスク委員会において、クライシス・マネジメントや事業継続計画(BCP)を定期的に検討しております。
なお、2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻した影響については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 39.重要な後発事象 (ロシア・ウクライナ情勢)」をご参照ください。
【経理の状況】の重要な後発事象 (ロシア・ウクライナ情勢)
2022年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻し、これを受けて、EU、英国、スイス、米国、カナダ、日本、オーストラリア等の複数の国・地域がロシアに対する経済制裁の発動を発表しています。
当社グループのウクライナ国内事業はアフィリエイト契約先企業の約500人が担っていましたが、既に事業を停止しております。また、現地企業との合弁会社の約1,500人が担うロシア国内事業は、従業員や関係者の安全と安心に加え、グローバル企業として国際的な制裁措置に準拠する観点から見直しており、当社グループ持分を合弁の相手先企業へ譲渡する方向で交渉を進めています。ロシア・ウクライナ情勢は当社グループの翌連結会計年度以降の連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループ持分の譲渡が行われた場合の影響を含め、現時点で財務上の影響を合理的に見積もることは困難であります。

(参考)
ウクライナ情勢とは関係ないものの、同じく「リスク情報」として、12月決算の上場会社の中にはプライム市場等の上場維持基準に適合しないリスクを開示する事例があった(下表参照。なおスパンクリートコーポレーションはスタンダード市場を選択している)。新市場の上場維持基準に適合しておらず経過措置の適用を受けている上場会社およびその投資家にとっては重大なリスクであるため、記載を失念しないようにしたい。

東京証券取引所「プライム市場」等の上場維持基準に適合しないリスク
会社名 項目名 開示内容
スパンクリートコーポレーション(東証スタンダード市場) (13)東京証券取引所の市場再編により上場を維持できないリスク 東京証券取引所は2022年4月4日から新たにプライム・スタンダード・グロース市場に再編(市場区分の見直し)されます。当社は新規上場基準を満たすべく、流動株式比率の向上にむけた対応を図ると共に、新規需要開拓及び新規戦略商品開発等を推進することによる業績の向上等により、当社の株価を上昇させ、流通株式時価総額の基準を達成したいと考えております。しかしながら、スパンクリート事業は景気変動や建設業界の動向により大きく変動し、当社の業績が予定に反して落ち込み、当社の株価が低迷する等、新規上場基準を満たすことができないリスクがあります。
日本ペイントホールディングス(東証プライム市場) ③ 東京証券取引所「プライム市場」の上場維持基準に適合しないリスク 当社は2022年4月4日に予定されている東京証券取引所新市場区分一斉移行におきまして、定められた上場維持基準を満たしプライム市場に移行致します。東京証券取引所の関連規則に基づき算定される流通株式比率が35%以上であることがプライム市場上場維持基準の要件の一つですが、2021年1月21日に実施いたしましたWuthelamグループに対する第三者割当増資の結果、2021年12月31日時点で、流通株式比率は35%未満となっております。流通株式比率に関する2023年プライム市場上場維持基準については2022年12月31日時点の株主構成を基礎とすることから、2022年1月に金融機関保有株式の売出しを実施した他、一定の流通株式に関する例外規定を利用するなど、必要に応じて様々な対策を講じてまいります。ただし、当社の努力にもかかわらず、当該要件を満たすことができない場合には、プライム市場において当社株式の上場を維持することができず、株価または流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。