2022/04/28 2022年4月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況等】の【役員の報酬等】においては問題文のとおり、最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における、提出会社の取締役会(指名委員会等設置会社にあっては報酬委員会)及び委員会等の活動内容を記載する取締役会の「活動内容」を開示する必要がありますが、取締役会の決議により役員報酬の決定の全部または一部を代表取締役に再一任している場合は単に「代表取締役に再一任している」とだけ記載するのは不十分です。再一任に関する審議を行った取締役会の審議内容及び開催時期、再一任を受けた取締役により決定された内容について取締役会で審議を行っている場合にはその審議内容及び開催時期等を記載することで初めて取締役会の「活動内容」を開示したことになります。金融庁が、【役員の報酬等】の開示が不十分であるとして注意を喚起しており、上場会社の役員としては自社の有価証券報告書の開示内容が十分かどうか見直してみた方がよさそうです。

こちらの記事で再確認!
2022年4月1日 金融庁が注意喚起 有報の定性的情報、記載充実化の裏で不十分な開示例(会員限定)

2022/04/27 会計基準違反が相次ぐ「その他資本剰余金」を用いた欠損てん補

3月決算会社では決算短信の開示がピークに突入しているが、6月の定時株主総会に諮る議案およびその内容の検討も最終段階にあるものと思われる。今年の株主総会では、コロナによる需要減、円安や資源高による仕入値の高騰、中国の都市封鎖やロシア・ウクライナ戦争による仕入れの途絶などへの対応が株主の関心事となることが予想されるが、これらの要因等で繰越損失が膨らんだ会社にとって選択肢となり得るのが、・・・

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2022/04/27 会計基準違反が相次ぐ「その他資本剰余金」を用いた欠損てん補(会員限定)

3月決算会社では決算短信の開示がピークに突入しているが、6月の定時株主総会に諮る議案およびその内容の検討も最終段階にあるものと思われる。今年の株主総会では、コロナによる需要減、円安や資源高による仕入値の高騰、中国の都市封鎖やロシア・ウクライナ戦争による仕入れの途絶などへの対応が株主の関心事となることが予想されるが、これらの要因等で繰越損失が膨らんだ会社にとって選択肢となり得るのが、「その他資本剰余金を用いた欠損てん補」(その他資本剰余金による繰越損失の補填)だ。これは、その他資本剰余金を繰越損失(繰越利益剰余金のマイナス)に振り替えることで繰越損失を減らすという処理であり、原則として株主総会の決議を経ることで実施できる(下記の会社法452条参照)。ただし、会社法459条が定める要件()を充たす会計監査人設置会社であれば、定款に定めを置くことで取締役会の権限による実施が可能となる(会社法459条1項3号)。この処理によって純資産の額が変わることはないが(純資産内での金額の振り替えに過ぎないため)、繰越損失を減らすことができる。これにより将来の黒字転換を経たあとの利益配当を実施しやすくなる。

その他資本剰余金 : 会社にとっての“余剰金”である剰余金は、(1)増資などの資本取引により得た金額のうち資本金に組み入れていない金額である「資本剰余金」と、(2)企業活動で得た利益のうち、株主に還元(配当、自己株式の取得)せずに社内に留保してきた金額である「利益剰余金」に分けられるが、これらの剰余金をすべて配当してしまうと、債権者保護の観点から問題があるため、会社法では、これらの剰余金のうちの一部を、それぞれ「資本準備金」「利益準備金」として積み立てることを求めている(両準備金を合わせて「法定準備金」という)。資本剰余金から資本準備金を差し引いた金額が「その他資本剰余金」、利益剰余金から利益準備金を差し引いた金額が「その他利益剰余金」であり、これらの合計額は配当が認められる「分配可能額」とされる(厳密には、さらに自己株式等の調整計算も必要になる)。
繰越利益剰余金 : 最終利益のうち配当や利益準備金・各種積立金に回されなかった余剰の累積。利益が出ている会社では通常はプラスの金額であるが、損失が続いている会社ではマイナスの金額になることもある。

 ①取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期が1年であること、②監査役設置会社の場合は監査役会を設置していること
会社法452条
株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。この場合においては、当該剰余金の処分の額その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。

会社法459条1項
会計監査人設置会社(中略)は、次に掲げる事項を取締役会(中略)が定めることができる旨を定款で定めることができる。
(中略)
三 第452条後段の事項
(後略)

「その他資本剰余金を用いた欠損てん補」には上記のようなメリットがあるが、欠損金を無制限にてん補できるわけではない。会計基準では、「その他資本剰余金による補てんの対象となる利益剰余金は、年度決算時の負の残高に限られる」とされているからだ(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準61項)。ところが、この会計基準を見落として限度額以上にその他資本剰余金を取り崩す決議を行い、後から当該決議が無効になるというミスを犯す上場会社が後を絶たない(例えばタカキューの事例として、「その他資本剰余金による繰越損失補填、事前確認不足で総会決議が無効に」を参照)。

直近では、大戸屋ホールディングスをTOBしたことで話題を呼んだコロワイド(2020年9月9日のニュース「大戸屋HD株式のTOB成立、コロワイドは社外取締役を痛烈に批判」参照)の上場子会社で外食業を営むアトム(東証スタンダード、名証メインに上場)が同じパターンのミスを犯し、過去に取締役会で決議した「その他資本剰余金」の処分案を無効化する事態となった(2022年4月13日の同社のリリース「取締役会決議無効のお知らせ」参照)。

同社は2021年5月19日開催の取締役会で、今後の資本政策の柔軟性と機動性を確保することを目的として、上記会社法第452条および第459条第1項第3号の規定に基づき、その他資本剰余金の一部を繰越利益剰余金に振り替え繰越損失にてん補することを決議した。ところが、当該決議から1年近く経ってから決議内容が企業会計基準に違反していたことが判明、決議を無効とするリリースする羽目になった。リリースがこのタイミングとなったのは、ミスが会計監査によって発覚したからだろう。

同社取締役会での決議内容は、10億4百万円をその他資本剰余金から繰越利益剰余金に振り替えるというもの(下図参照)。同社はそれに先立ち、2020年7月に資本金40億7,327万3,553円のうち39億7,327万3,553円を減資し、減資額全額をその他資本剰余金に振り替えていた(減資後の資本金の額を1億円としたのは、外形標準課税の対象(資本金1億円超)外になることが狙いと思われる)。

外形標準課税 : 地方税である事業税の課税方式の1つで、「所得」のみならず、賃金や支払利子、支払賃料、資本金など、文字通り「外形」的な基準をベースに課税を行う制度。たとえ赤字の会社でも、企業が活動を行うにあたっては地方自治体から様々な行政サービスを受けているのだから一定の税負担を負うべき、との考え方に基づいている。

■取締役会の決議どおりに「その他資本剰余金」から利益剰余金に振り替えた場合
62439a
■会計基準が定める上限額につき「その他資本剰余金」から利益剰余金に振り替えた場合
62439b

上場会社における取締役決議が会計基準に違反して無効となれば投資家からの信頼を大きく損ねることは言うまでもないが、これほど同様の事例が相次いでいるということは、それだけミスが起こりやすいということを意味している。その他資本剰余金を用いた欠損てん補を検討している上場会社は、それが会計基準に違反するものでないか、事前に監査法人に相談しておくべきだろう。

2022/04/26 賃金が「S」の一部に

ここ最近の急速な物価上昇が実質賃金を押し下げかねない情勢となっている。一定の賃上げを行った企業の税負担を軽減する「賃上げ税制」を令和4年度税制改正で導入するなど、賃上げは岸田政権の最重要政策の一つだが(賃上げ税制については2022年3月28日のニュース「“賃上げ宣言”には何を書く?」および同ニュースで引用されているニュース参照)、物価上昇が賃上げの効果を減殺することになれば、さらなる賃上げへのプレッシャーが高まる可能性がある。原材料費の高騰に悩むメーカー等にとって、賃上げは難しい経営判断となろう。

実質賃金 : 実際に受け取った給与である名目賃金から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いて算出した賃金のこと。労働者の実質的な購買力を示すため、その推移は個人消費の動向にも影響する。

こうした中、物価の上昇や税制に加え、・・・

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2022/04/26 賃金が「S」の一部に(会員限定)

ここ最近の急速な物価上昇が実質賃金を押し下げかねない情勢となっている。一定の賃上げを行った企業の税負担を軽減する「賃上げ税制」を令和4年度税制改正で導入するなど、賃上げは岸田政権の最重要政策の一つだが(賃上げ税制については2022年3月28日のニュース「“賃上げ宣言”には何を書く?」および同ニュースで引用されているニュース参照)、物価上昇が賃上げの効果を減殺することになれば、さらなる賃上げへのプレッシャーが高まる可能性がある。原材料費の高騰に悩むメーカー等にとって、賃上げは難しい経営判断となろう。

実質賃金 : 実際に受け取った給与である名目賃金から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いて算出した賃金のこと。労働者の実質的な購買力を示すため、その推移は個人消費の動向にも影響する。

こうした中、物価の上昇や税制に加え、企業に賃上げを迫るもう一つのプレッシャーとなりかねないのが、従業員におけるESGへの関心の高まりだ。英国の資産運用会社シュローダー(Schroders)が今年(2022年)2月に、米国の45歳~75歳の投資家1,000名(内、317名が雇用主提供の確定拠出年金に加入)を対象に実施した調査によると、確定拠出型年金加入者の74%が「ESG関連の投資商品があれば拠出率を引き上げる」と回答した(2021年は69%)。また、加入者は投資商品が自分の価値観と一致することを望んでおり(87%)、ESG投資によって投資リターンが向上する(78%)と回答している。資産の50%以上をESG投資に割り当てている加入者は実に73%にも上っている。

ESG投資によってインパクトを与えたい分野としては、「従業員の福祉、生活、賃金」が51%と、2位以下(「気候変動・地球温暖化・脱炭素化(39%)」「人権(36%)」「環境問題(大気汚染・森林伐採・水質)(30%)」「ダイバーシティ&インクルージョン(22%)」)を大きく引き離し最多となっている。「従業員」に焦点が当たっている点や、「賃金」がESGの構成要素の一つとして捉えられている点、注目されるところだ。シュローダーのサステナビリティ責任者は「ESGは気候変動や脱炭素化に関連付けられることが多いが、投資家は気候変動といった E (環境)の要素より、むしろ労働者の福祉や賃金といった S(社会) の要素を重視する傾向にある」とコメントしている。

インクルージョン : 多様性を示すダイバーシティに対し、多様な人材が互いを認め、受け入れ、一体となって働くことを指す。

上記は米国でのアンケート結果ではあるが、労働者の基本的な思考はそう大きく変わるものではない。日本でも「労働者」や「賃金」がSの要素として注目を集める日は遠くないだろう。また、人的資本投資や男女の賃金格差などの開示が強化される流れの中、投資家にとって賃金に関する情報は現在よりも把握しやすくなっていくことが予想される。日本でも賃金が「S」の文脈で語られるようになった時、賃上げに消極的な企業がESG投資の対象外とされるリスクは否定できない。上場企業の経営陣としては注視しておくべき傾向と言えよう。

2022/04/25 サステナビリティ情報と財務情報の「コネクティビティ」

IFRS(国際財務報告基準)を策定するIFRS財団が、国際的に統一された気候変動開示のルールをはじめとする「サステナビリティ報告基準」を策定するために設立した国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)が公表した「サステナビリティ関連財務情報開示の全般的な要求事項のプロトタイプ」(プロトタイプのポイントは「第7回 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ」の事務局説明資料4ページ参照)では、企業に求められる開示は①幅広いマルチステークホルダー向けのサステナビリティ報告、②サステナビリティ関連の財務情報開示、③財務報告、の3つのカテゴリーに分類された。②および③を合わせた情報は「企業価値報告」と呼ばれ、ISSBが策定を進めているサステナビリティ開示基準はこのうち②を対象としている。「投資者にフォーカスする」とあることから分かるように、サステナビリティ開示基準はシングル・マテリアリティの考え方をベースにしている。

シングル・マテリアリティ : マテリアリティとは「重要性」を意味するCSR用語であり、マテリアリティを開示する目的は要するに「自社にとって重要な課題は何か?」を明らかにすることにある。シングル・マテリアリティとは企業が環境や社会から「受ける」影響を示す“投資家目線”のマテリアリティであるのに対し、ダブル・マテリアリティとは、これに企業が環境や社会に「与える」影響を示す “(市民社会等を含む)マルチステークホルダー”目線のマテリアリティを統合したものを指す。

<出典>金融庁 第7回金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ 資料1(一部編集)
62416

②のサステナビリティ関連の財務情報開示は、③の財務報告と同時に行わなければならず、また、財務諸表と同じ報告期間に関するものでなければならないとされている。これは、投資家が財務情報を無視して投資判断をすることはあり得ず、あくまで「財務情報」と、サステナビリティ情報といった「非財務情報」の両方を用いて投資判断を行うためだ。

周知のとおり、我が国におけるサステナビリティ情報の開示の義務化については、現在、金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループで議論が進んでいるが、基本的にISSBのサステナビリティ開示基準案をベースとしており、既存の有価証券報告書に上記②のサステナビリティ関連の財務情報、すなわち「サステナビリティ情報のうち企業価値に影響する内容」を追加しようとしている。すなわち、サステナビリティ情報は財務諸表と別の書類で開示されるわけではなく、有価証券報告書において“ワンセット”で開示される。したがって、サステナビリティ情報が有用であるためには財務諸表と関連している必要があり、サステナビリティ情報の重要性ばかりが強調されて独り歩きして財務諸表と分断され、不整合となってはならない。そこで問われることになるのが、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報と財務情報の「コネクティビティ(結合性)」だ。・・・

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2022/04/25 サステナビリティ情報と財務情報の「コネクティビティ」(会員限定)

IFRS(国際財務報告基準)を策定するIFRS財団が、国際的に統一された気候変動開示のルールをはじめとする「サステナビリティ報告基準」を策定するために設立した国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)が公表した「サステナビリティ関連財務情報開示の全般的な要求事項のプロトタイプ」(プロトタイプのポイントは「第7回 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ」の事務局説明資料4ページ参照)では、企業に求められる開示は①幅広いマルチステークホルダー向けのサステナビリティ報告、②サステナビリティ関連の財務情報開示、③財務報告、の3つのカテゴリーに分類された。②および③を合わせた情報は「企業価値報告」と呼ばれ、ISSBが策定を進めているサステナビリティ開示基準はこのうち②を対象としている。「投資者にフォーカスする」とあることから分かるように、サステナビリティ開示基準はシングル・マテリアリティの考え方をベースにしている。

シングル・マテリアリティ : マテリアリティとは「重要性」を意味するCSR用語であり、マテリアリティを開示する目的は要するに「自社にとって重要な課題は何か?」を明らかにすることにある。シングル・マテリアリティとは企業が環境や社会から「受ける」影響を示す“投資家目線”のマテリアリティであるのに対し、ダブル・マテリアリティとは、これに企業が環境や社会に「与える」影響を示す “(市民社会等を含む)マルチステークホルダー”目線のマテリアリティを統合したものを指す。

<出典>金融庁 第7回金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ 資料1(一部編集)
62416

②のサステナビリティ関連の財務情報開示は、③の財務報告と同時に行わなければならず、また、財務諸表と同じ報告期間に関するものでなければならないとされている。これは、投資家が財務情報を無視して投資判断をすることはあり得ず、あくまで「財務情報」と、サステナビリティ情報といった「非財務情報」の両方を用いて投資判断を行うためだ。

周知のとおり、我が国におけるサステナビリティ情報の開示の義務化については、現在、金融庁・金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループで議論が進んでいるが、基本的にISSBのサステナビリティ開示基準案をベースとしており、既存の有価証券報告書に上記②のサステナビリティ関連の財務情報、すなわち「サステナビリティ情報のうち企業価値に影響する内容」を追加しようとしている。すなわち、サステナビリティ情報は財務諸表と別の書類で開示されるわけではなく、有価証券報告書において“ワンセット”で開示される。したがって、サステナビリティ情報が有用であるためには財務諸表と関連している必要があり、サステナビリティ情報の重要性ばかりが強調されて独り歩きして財務諸表と分断され、不整合となってはならない。そこで問われることになるのが、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報と財務情報の「コネクティビティ(結合性)」だ。

コネクティビティを実現する情報としては、例えば以下のような情報が該当する。

コネクティビティを実現する情報 具体例
(a) サステナビリティに関連するリスクと機会が、企業の戦略および関連する測定基準と目標、短期・中長期の財政状態、財務パフォーマンスおよびキャッシュ・フローに及ぼす複合的な影響の説明 消費者の低炭素型製品への嗜好の変化により、製品需要の減少に直面することがある。この場合、主要工場の閉鎖などの戦略的対応が、従業員や地域社会にどのような影響を与えるか、また、閉鎖が資産の耐用年数、減損評価、引当金、予想信用損失にどのような影響を与えるかについて説明する。
(b)サステナビリティ指標のセグメント別開示 温室効果ガス排出量の目標と実績のセグメント別開示、目標達成のための取り組みがセグメント利益に与える影響の開示
(c)サステナビリティに関連するリスクと機会を評価した際に仮定した潜在的な選択肢、およびリスクと機会に対処するための意思決定についての説明 サステナビリティに関連するリスクに対応するための事業再編が、従業員や企業の財務パフォーマンスに与える影響の開示

サステナビリティに関する企業の取り組みは長期的なものであり、財務に与える影響を定量的に見積もることは容易ではない。とはいえ、例えば気候変動のリスクと機会に対する企業行動は、最終的には財務情報に反映されることになる。したがって、気候変動に関して開示した戦略、計画、取り組みなどが財務諸表に全く反映されないとすれば、それらは絵に描いた餅であるか、あるいは財務諸表が虚偽と判断されざるを得ない点、留意したい。

2022/04/22 【失敗学第95回】アジャイルメディア・ネットワークの事例(その2)(会員限定)

概要

ファン・マーケティング事業等を営むアジャイルメディア・ネットワーク(東証グロース)で、台湾子会社において実態のない売上約4500万円が計上されるなど不適切な会計処理が行われていた。なお、第85回の失敗学では、同社を別案件(CFOである取締役による資金流用)で取り上げている。

経緯

アジャイルメディア・ネットワークが2022年4月11日に公表した「第三者委員会の調査報告書」(以下、本調査報告書)等によると、一連の経緯は次のとおり。

2018年
12月31日:アジャイルメディア・ネットワークは、台湾のY社に対して約4500万円の売上を架空計上する。

2021年
3月26日:有限責任監査法人トーマツが会計監査人を退任し、後任としてかなで監査法人が選任される。

2022年
1月21日:アジャイルメディア・ネットワークは、外部の公的機関からの指摘を受けて、不適切な会計処理が存在することを認識する。
2月1日:アジャイルメディア・ネットワークは、第三者委員会の設置および2021年12月期決算発表の延期をリリースする。
2月13日:第85回の失敗学で取り上げた事件に関して、元CFOが業務上横領容疑で逮捕され身柄を拘束される(リリースはこちら)。
2月18日:アジャイルメディア・ネットワークは、第三者委員会の調査が終了するまでは決算数値を確定できないことから、2022年3月30日開催予定の第15期定時株主総会では事業報告および(連結)計算書類並びに会計監査人等の監査結果報告は行えないため、別途継続会を開催する方針であること、かなで監査法人から契約を更新しないことを告げられたことから新たに監査法人アリアを会計監査人として選任する議案を株主総会に提出する方針であることを公表する。
4月11日:アジャイルメディア・ネットワークは、「第三者委員会の調査報告書」を公表する。

内容・原因・改善策

アジャイルメディア・ネットワークが2022年4月11日に公表した「第三者委員会の調査報告書」によると、第三者委員会の調査により判明した事実ならびに原因および当該不正を受けて策定した改善策は次のとおりとされている(なお、このほかにもカラ出張などの不正についても調査が行われているが、本コーナーでは台湾子会社における実態のない売上の計上にフォーカスを絞ることとする)。

台湾子会社における実態のない売上の計上
内容 アジャイルメディア・ネットワークは、台湾において複数の支店を設置して美容クリニックを営むY社との取引に関し、2018年12月31日付で2018年12月期に納品(役務提供)があったとしてY社各支店に対する売上として合計約4500万円を計上し、売掛金も実際に入金されていた。しかし、当該取引は、実際には納品(役務提供)を伴わない架空取引であり、売掛金の入金もアジャイルメディア・ネットワークの小口現金から現金を引き出し、それを台湾に持ち込んでY社の協力を得てY社名義でアジャイルメディア・ネットワークの台湾子会社の銀行口座に振り込ませ、それをアジャイルメディア・ネットワークにおける売上金の回収と偽装したものであった。
原因 動機
代表取締役A、CFOである取締役(当時)Bが、2018年12月期の業績予想の修正(下方修正)を避けるために架空取引を行ったものと推認される(実際に、架空取引に関する売上を計上した後の各決算数値(売上高、営業損益、経常損益、当期純損益比の予実比)が業績予想の修正(下方修正)基準を僅かに上回るものとなっていた)。CFOである取締役Bは第85回の失敗学にあるとおり、自身が業務上横領を行っていた。そこで取締役Bとしては代表取締役Aを架空取引に関与させることで代表取締役Aから業務上横領について追及されにくくなることを期待していた面があったことも推測される。
機会
(Y社の協力)
架空取引の成立を裏付ける証憑(見積書、発注書、納品確認書等)に関しては、Y社の責任者Tを通じて、成立が真正な書類として作成されていた。
(経営陣主導による不正)
架空取引は代表取締役AとCFOである取締役が主導して行った(と推察される)ことから、内部統制が効かなかった。
(代表取締役Aのコンプライアンスへの意識の低さ)
代表取締役Aは、前回の第三者委員会の調査後に会計に関連するグループウェアでのやりとりを自ら削除するなどコンプライアンスへの意識に欠けていた。
(会計監査人の確認書送付先のミス)
会計監査人(有限責任監査法人トーマツ)が残高確認を実施するに際して、本来であればY社に残高確認書を直接送付すべきところ、CFOである取締役Bの指示に従い、アジャイルメディア・ネットワークの台湾子会社が委託している会計事務所Xの所在地に残高確認書を送付していた。当該残高確認書はアジャイルメディア・ネットワークの従業員Hが会計事務所経由で入手し、Y社を装って回答を記入して会計監査人に対し返送していた。会計監査人としては職業的懐疑心を働かせて会計事務所Xの所在地に売掛金の残高確認書を送付することの是非を慎重に検討すべきであった。
(CFOである取締役Bが業務上横領と並行して実施)
通常の内部統制を有する会社であれば、4500万円もの大金を小口現金から引き出した時点で不正が露見するはずであるが、CFOである取締役Bは小口現金から不正に引き出す手法を確立しており、難なく小口現金から引き出すことができた。
(社外役員としての独立性・監督機能の弱さ)
社外取締役Dは、形式的とはいえ、元取締役Bが経営する会社の代表者として登記され、同社の株式も保有していた時期があり(当該事実は対象会社に正式な報告はしていなかった)、かつ会計の専門的知識を有する者(公認会計士)であり、対象会社の中では最も元取締役Bの金銭事情に精通していたといえる。それにもかかわらず、社外取締役Dが前回委員会の調査事案及び本件事案につき、アジャイルメディア・ネットワークに会計的視点からの指摘を一切していない。
再発防止策 1 コンプライアンス意識の向上
前回委員会の報告書では、アジャイルメディア・ネットワークにおいてはコンプライアンス意識の向上が不可欠であり、そのために、対象会社経営陣らは、まずは対象会社内外に対し、コンプライアンス経営の徹底という強い決意を表明・周知し、また対象会社の全役職員に対するコンプライアンス教育を実施すべきである旨の提言がなされている。
しかし、アジャイルメディア・ネットワークでは、2022年3月16日付の東京証券取引所宛「改善状況報告書」において、役職員に対してコンプライアンス経営を周知・徹底している旨を表明しているのみで、社外に対するコンプライアンス経営の徹底に関する表明・周知は行っていない。
また、本件不正については、代表取締役A及び社外監査役E並びに元社外監査役F、その他従業員2名(元従業員を含む)が認識していたが、二度目の第三者委員会が立ちあげられるまでの間、元社外監査役Fが一度目の第三者委員会(前回委員会)に報告した行為以外、全員が何の対応もしていない。また、代表取締役A及び複数の従業員が前回委員会後に会計に関連するグループウェアでのやりとりを削除していたことも既述のとおりである。これらを踏まえると、前回委員会後、アジャイルメディア・ネットワークの役職員のコンプアライアンス意識が向上したとは到底言い難い。
このような会社が、今後、本件のような事態の再発を防ぐためには、まず、第一に、対象会社経営陣らが、改めて対象会社内外に対して、コンプライアンス経営の徹底という強い決意を表明し、それを周知する必要がある。そして、第二に、不適切な会計処理に関与した者、その発覚を回避しようとした者、不適切な会計処理やその可能性を疑いながらもそれを是正しようとしなかった者、前回調査や本件調査等に対して協力せず、あるいはその調査の支障になるようなことをした者、意図的であるか否かを問わず、不適切な会計処理を行ってしまった者の全てが、自らの行為の結果がさらなる不適切な会計処理の発生や継続を許し、前回委員会による調査開始に始まり、関与者の逮捕を経て、本件報告書の公表という経過のなかで、それまで築き上げてきた対象会社の社会的信用や取引先や関係者からの信頼を大きく損なう結果に繋がっていること、そのような結果については、各自に相応の責任があるということを十分に認識することが重要である。そのためには、本件調査で判明した不適切な行為に関し、対象会社内における検証と評価(特に役員の責任の明確化)、そしてその結果の周知を図ることが必要である。その上で、対象会社の全役員が公正な証券市場の中の上場企業の役員としての責務を再認識し、法令および社内規程を遵守する意識を醸成していくことが必須である。
また、代表取締役A自らがコンプライアンス意識に対する不十分さを反省し、自らの行動から率先して改めていかなければならない。
2 内部統制の整備・強化
3 社外取締役・社外監査役の選定基準の策定
4 監査の実効化
(1) 監査役による監査の実効化
(2) 内部監査室の強化
(3) 三様監査の実施
5 情報収集体制の強化と工夫
内部通報制度の充実に加えて、会社から従業員にアンケートを実施するのも有益
<この失敗から学ぶべきこと>

アジャイルメディア・ネットワークを本コーナーで取り上げるのは2回目となります。前回の第三者委員会の報告書では、「対象会社においてはコンプライアンス意識の向上が不可欠であり、そのために、対象会社経営陣らは、まずは対象会社内外に対し、コンプライアンス経営の徹底という強い決意を表明・周知し、また対象会社の全役職員に対するコンプライアンス教育を実施すべきである」旨の提言がなされたのですが、それにもかかわらず、アジャイルメディア・ネットワークでは、2022年3月16日付の東京証券取引所宛「改善状況報告書」において、「役職員に対してコンプライアンス経営を周知・徹底している」旨を表明しているのみで、社外に対するコンプライアンス経営の徹底に関する表明・周知は行っていなかったことが今回の第三者委員会の報告書でも指摘されています。とりわけ代表取締役Aは、第三者委員会の調査開始時から終始一貫して、Y社との取引に関する書類作成やプレゼン実施など、同取引に関与したこと自体は認めつつも、「それが納品(役務提供)を伴わない架空取引であるとは認識していなかった」と述べたそうですが、第三者委員会は「代表取締役Aの台湾への渡航歴及び台湾での行動、Y社の責任者T宛に送信したメールの内容及び送信時期、代表取締役AのPCに保存されていたデータや資料の内容等からすれば、代表取締役AがY社との取引の売上計上前にY社への納品(役務提供)がないことを認識し、そのような認識のもと、Y社との架空取引に関与していたと認定することが相当」としています。第三者委員会の「プレゼン実施日から納品確認書等の取付けに至る期間がわずか4日間に過ぎず、その間に数千万円の売上に相当する役務を提供したとは考え難い」との指摘はもっともであり、代表取締役Aが架空売上であることを知らなかった信じがたいと言わざるを得ません。代表取締役Aには疑惑について説明をする責任がありますが、現時点で沈黙を貫いています。二度も第三者委員会が立ち上げられ調査を行う事態になっても誰も責任を取らないのは、上場会社としては極めて異常な事態と言えます。代表取締役Aは自らの進退を含めて、事件の真相を明らかにして、膿を出し切る必要があります。

また、社外取締役Dは、公認会計士で、かつ元取締役Bの金銭事情に精通していたにもかかわらず、前回委員会の調査事案および本件事案につき、会社に会計的視点からの指摘を一切していませんでした。本調査報告書では社外取締役Dは社外役員としての独立性・監督機能を発揮できていたかについて疑問が残ると指摘されています。

元社外監査役Fも、前回委員会が設置される直前に、元取締役Bから本件不正について打ち明けられたにもかかわらず、その事実を代表取締役Aに仄めかして伝えたのみで、前回委員会の調査終了後に、取締役会や監査役会に報告したり、会計監査人に伝えたり、自ら調査するといった対応を一切していないことが、本調査報告書では非難されていました。監査役は、もし不適切な会計処理を知ってしまったのであれば、何ら対応せずに放置することは許されません。

本調査報告書で役員としての適格性に疑義を示されたアジャイルメディア・ネットワークのボードメンバーは、だんまりを決め込むのではなく、自身の責任の有無と進退について社外に明確に説明する任務が残されています。

また、本調査報告書では会計監査人の確認書送付先のミスについて深掘りはされていませんが、監査のプロフェッショナルであれば、取引先の売掛金確認書を子会社の顧問会計事務所の住所に送付するのは不適切であることに気付くべきでした。売掛金確認書を正しい宛先に送付できていれば回答内容次第で(Y社のTの影響力が及ばなければ)会計監査人が不正に気付いた可能性もあるだけに残念としか言いようがありません。

アジャイルメディア・ネットワークでは、取締役・監査役・会計監査人それぞれが自らの職務を適切に遂行できていれば、二度も第三者委員会が立ち上げられる事態にはならなかったはずです。上場会社の役員としては、自らの職務を適切に遂行できているか、常に自身の行動を検証し、職責を果たすことが求められています。

なお、アジャイルメディア・ネットワークでは、架空取引に関する売上を計上した後の各決算数値(売上高、営業損益、経常損益、当期純損益比の予実比)が業績予想の修正(下方修正)基準を僅かに上回るものとなっていました。上場会社の役員は、自社で期末近くになって大きな売上が突然計上され、それにより業績予想の下方修正を免れたという状況になった場合、自社でも本件不正と同様の不正の可能性がないかという懐疑心を発揮すべきと言えます。

2022/04/21 エフエム東京、連結外しによる損失隠蔽で旧経営陣に訴訟提起

TOKYO FMの運営会社であるエフエム東京(非上場)は2022年4月19日、旧経営陣に法令違反および善管注意義務違反があったとして総額約4億8,230万円の損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起したことを公表した。

エフエム東京では、2019年4月に内部通報窓口と会計監査人(東陽監査法人)に対して「連結外し」についての通報があったことをきっかけに、当時の経営陣(以下、旧経営陣)が事業の失敗による損失を隠蔽するために、連結外しや情報隠ぺいなどを行っていたことが明らかとなり、経営陣が交代する騒ぎとなった。本訴訟は旧経営陣の責任を問うとともに、損害賠償を請求するためのもの。

連結外し : 連結財務諸表の作成にあたり、実質的には連結子会社とすべき会社を連結子会社として扱わないようにする粉飾決算の手法の一つ。

本件の経緯は・・・

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