日本シェアホルダーサービス株式会社
コンサルタント 水嶋 創
本年6月の総会シーズンを前に、国内機関投資家の議決権行使ガイドラインの改定が相次ぎました。毎年1回、11月~3月頃にかけて改定を実施する機関投資家が多くなっています。
国内だけでも機関投資家は数多く存在しており、その全ての改定内容を追うことは困難です。したがって、自社の議案の賛成率に与える影響の大きい投資家を中心に、その動向をチェックすることが効率的です。本稿では、運用資産額の大きい運用機関(*)、すなわち多くの企業にとって実質的な大株主にあたる可能性の高い投資家を中心に、議決権行使ガイドラインの改定について分析を行い、主なテーマごとにその内容を確認することとします。
* 本稿では、以下の10機関を分析の対象としています。
①アセットマネジメントOne
②三菱UFJ信託銀行
③三井住友トラスト・アセットマネジメント
④りそなアセットマネジメント
⑤ブラックロック・ジャパン
⑥野村アセットマネジメント
⑦大和アセットマネジメント
⑧日興アセットマネジメント
⑨三井住友DSアセットマネジメント
⑩三菱UFJ国際投信
取締役会構成(社外取締役の割合)に関する改定
| 機関投資家 |
適用時期 |
議決権行使基準 (要旨) |
| 変更後 |
変更前 |
| アセットマネジメントOne |
2022年4月 |
社外取締役が2名以上在任していない場合、または取締役会において1/3以上占めていない場合、代表取締役に原則反対。 |
社外取締役が2名以上在任していない場合、または取締役会において25%以上占めていない場合、代表取締役に原則反対。 |
| 三菱UFJ信託銀行 |
2023年4月 |
以下に該当する場合、取締役候補者全員の選任に反対。
・独立性のある社外取締役が複数かつ取締役総数の1/3以上いない場合
・親会社等を有する上場会社の場合、独立性のある社外取締役が過半数選任されていない場合 |
以下に該当する場合、取締役候補者全員の選任に反対。
・社外取締役が複数かつ取締役総数の1/3以上いない場合
・親会社等を有する上場会社の場合、独立性のある社外取締役が複数かつ1/3以上選任されていない場合 |
| 三井住友トラスト・アセットマネジメント |
2022年1月 |
以下に該当する場合、取締役選任に反対します。
・プライム市場に上場している企業は、独立社外取締役が複数かつ取締役総員数の1/3以上でない場合
・プライム市場以外に上場している企業は、複数いない場合
・親会社等を有する企業において、独立社外取締役が取締役総員数の過半数でない場合 |
以下に該当する場合、取締役選任に反対します。
・独立社外取締役が複数かつ取締役総員数の1/3以上でない場合
・親会社等を有する企業において、独立した意思決定を担保する体制が確保されていない場合 |
| りそなアセットマネジメント |
2022年1月 |
取締役会に独立性のある社外取締役が3分の1以上選任されていない場合、合理的かつ納得性ある説明がなければ、代表取締役の選任に反対します。 |
取締役会に独立性のある社外取締役が3分の1以上選任されていない場合、合理的かつ納得性ある説明がなければ、代表取締役の選任に反対します。
但し、監査役会設置会社については、取締役会に独立性のある社外取締役が2名かつ25%以上選任されている場合は賛成します。 |
| 野村アセットマネジメント |
2021年11月 |
社外取締役の人数が最低水準を下回る場合、会長・社長等の取締役再任に原則として反対する。「最低水準」は支配株主のいない会社については2名又は取締役の人数の3分の1の多い方、支配株主のいる会社については取締役の人数の過半数とする。 |
社外取締役の人数が最低水準を下回る場合、会長・社長等の取締役再任に原則として反対する。「最低水準」は2名又は取締役の人数の3分の1の多い方とする。但し、支配株主のいない監査役設置会社において2021年10月までに開催される株主総会については、2名又は取締役の人数の20%の多い方とする。 |
| 日興アセットマネジメント |
2022年1月 |
以下に該当する場合、原則として経営トップである取締役選任議案に反対する。
・当社の独立性基準を満たす社外取締役が、取締役総数の1/3以上(親会社を有する企業については過半数)選任されていない場合 |
以下に該当する場合、原則として経営トップである取締役選任議案に反対する。
・社外取締役が、2名以上(親会社を有する企業については取締役総数の1/3以上)選任されていない場合 |
| 三井住友DSアセットマネジメント |
2022年4月 |
以下の場合は、候補者の全部または一部、もしくは代表取締役選任に原則反対する。
東京証券取引所プライム市場の上場企業(親子上場における子会社および 1/3 以上を保有する主要株主のいる会社を除く)において独立性を満たす社外取締役が、監査役設置会社で2名未満もしくは構成比 1/3未満、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社で3名未満もしくは構成比 1/3 未満である場合。それ以外の市場の上場企業(親子上場における子会社および 1/3 以上を保有する主要株主のいる会社を除く)において、2名未満もしくは構成比 20-25%未満、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社で3名未満もしくは構成比 25%未満。
親子上場における子会社および 1/3 以上を保有する主要株主のいる会社については、東京証券取引所プライム市場の上場企業において、監査役設置会社で3名未満もしくは構成比過半数未満、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社で4名未満もしくは構成比過半数未満である場合。それ以外の市場の上場企業において、3名未満もしくは構成比 1/3 未満。 |
以下の場合は、候補者の全部または一部、もしくは代表取締役選任に原則反対する。
本則市場において、独立性を満たす社外取締役会が、監査役設置会社で2名未満かつ構成比20%未満、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社で3名未満かつ構成比25%未満である場合。
本則市場以外において、独立性を満たす社外取締役数が0名もしくは構成比20%未満、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社で2名未満もしくは構成比25%未満である場合。なお、取締役総数を考慮する必要がある場合、ならびに一般株主の利益保護が必要な場合は、前述の数値基準を引き上げる。 |
| 三菱UFJ国際投信 |
2022年4月 |
取締役会において独立性の観点から問題のない社外取締役(以下独立社外取締役)が複数不在の場合、原則として取締役選任議案に反対する。なお、東京証券取引所プライム市場上場会社については、独立社外取締役が 1/3 以上不在の場合は、原則として取締役選任議案に反対する。また、指名委員会等設置会社および監査等委員会設置会社においては、独立社外取締役が 1/3 以上不在の場合は、原則として取締役選任議案に反対する。
親会社等がある上場企業の取締役会において、独立社外取締役が過半数不在の場合は、原則として取締役選任議案に反対する。 |
取締役会において社外取締役が複数不在の場合、原則として取締役選任議案に反対する。なお、指名委員会等設置会社および監査等委員会設置会社においては、社外取締役が 1/3 以上いない場合は、原則として取締役選任議案に反対する。
親会社等がある上場企業の取締役会において、社外取締役が1/3以上いない場合は、原則として取締役選任議案に反対する。 |
本年も取締役会構成(社外取締役の割合)に関する改定が確認されました。昨年までと同様、本年も1/3以上の社外取締役の選任を求める投資家が増加しています。既に「1/3基準」を導入していた、三菱UFJ信託銀行や三井住友トラスト・アセットマネジメント、野村アセットマネジメントなどに続き、本年は、アセットマネジメントOne、日興アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメント(プライム市場上場企業のみ)、三菱UFJ国際投信(プライム市場上場企業のみ)も加わっています。さらに、りそなアセットマネジメントは、昨年の段階では、「1/3基準」を導入しつつも、監査役設置会社に対しては例外的に25%という水準を設定していましたが、本年の改定でこれを撤廃し、監査役設置会社に対しても「1/3基準」を求めることとしています。この点、議決権行使助言会社ISSも、本年から機関設計を問わず全ての企業に対して1/3以上の社外取締役の選任を求めています。
新市場区分移行前の東証の調査によると、東証一部上場会社の72.8%が既に1/3以上の社外取締役を選任しています(東京証券取引所「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」4ページ参照)。投資家サイト・企業サイドのいずれにおいても、1/3以上という水準が定着しつつあると言えそうです。
親会社や支配株主等が存在する企業に対しては、より厳しい水準を要求する動きもみられており、三菱UFJ信託銀行、三井住友トラスト・アセットマネジメント、野村アセットマネジメント、日興アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメント(プライム市場上場企業のみ)、三菱UFJ国際投信は、過半数の社外取締役の選任を求める旨の改定を行っています。
もう一つ注目しておきたいのが、「1/3以上(親会社・支配株主を有する企業の場合、過半数)」といった割合においてカウントされる分子の数字が、単なる「社外取締役」の人数なのか、「独立性を有する社外取締役」の人数なのかという点です。本年は、三菱UFJ信託銀行、日興アセットマネジメント、三菱UFJ国際投信がこの点に関する変更(「社外取締役」→「独立性を有する社外取締役」)を行っています。ここでいう「独立性を有する」ためには、各投資家の独立性基準をクリアしている必要があることに注意が必要です。
社外役員の任期に関する改定
| 機関投資家 |
適用時期 |
議決権行使基準 (要旨) |
| 変更後 |
変更前 |
| 三菱UFJ信託銀行 |
2023年4月 |
以下に該当する場合、当該候補者に原則反対します。
・在任期間が12年以上の場合 |
以下に該当する場合、当該候補者に原則反対します。
・在任期間が著しく長期間(20年以上)の場合 |
| 三井住友トラスト・アセットマネジメント |
2022年1月 |
以下に該当する場合、独立性基準に抵触するものとみなします。
・在任期間が長期(12年以上) |
(新設) |
| ブラックロック・ジャパン |
2023年1月 |
以下の基準に抵触する場合、当社の独立性基準を満たさないと判断する可能性が高い。
・在任期間が著しく長期(12年以上)の候補者 |
以下の基準に抵触する場合、当社の独立性基準を満たさないと判断する可能性が高い。
・在任期間が著しく長期(16年以上)の候補者 |
| 日興アセットマネジメント |
2022年1月 |
以下に該当する場合は原則として反対する。
・在任期間が12年超 |
(新設) |
社外役員の在任期間に関する基準の改定や新設も確認されました。上表のとおり、いずれも在任期間12年以上で候補者の独立性を否認し、反対行使を行うとの内容になっています。今回分析対象とした10投資家の中では、アセットマネジメントOne、りそなアセットマネジメント、野村アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントが既に「12年」の基準を設定しています。
なお、在任期間が12年以上となる社外役員については、当該候補者の選任議案に反対行使がなされることに加えて、独立性のある社外取締役としてカウントされなくなる点にも注意が必要です。例えば、日興アセットマネジメントは、前述のとおり、「独立性のある社外取締役」を1/3以上選任することを求めています。仮に12名の取締役を有する企業において、社外取締役が4名おり、そのうち1名の在任期間が12年以上となったような場合には、独立性ある社外取締役は12名中3名というカウントとなり、1/3を下回るため、経営トップの選任議案に対しても反対行使がなされることになります。
ジェンダー・ダイバーシティに関する改定
| 機関投資家 |
適用時期 |
議決権行使基準 (要旨) |
| 変更後 |
変更前 |
| アセットマネジメントOne |
2022年4月 |
女性の取締役が1名以上在任していない場合、代表取締役に原則反対。
なお、対象はTOPIX100構成企業とするが、対象企業を東証プライム市場上場銘柄全体へ向け広げていくことを検討。 |
(新設) |
| 三井住友トラスト・アセットマネジメント |
2022年1月 |
女性取締役が不在の企業について、エンゲージメントの申し入れに応じていただけない場合や、継続的にエンゲージメントを実施したにもかかわらず状況に改善がみられない場合、反対することも検討します。
(当面の対象はTOPIX100の構成企業) |
(新設) |
| りそなアセットマネジメント |
2023年1月 |
取締役、監査役、指名委員会等設置会社の執行役に、女性の存在が確認出来ない場合、ジェンダーの問題に対する方針や取組みについて合理的かつ納得性ある説明がなければ、代表取締役に反対します。
2023年はプライム市場上場企業のみを対象とし、以後、順次対象企業を拡大していきます。 |
(新設) |
| ブラックロック・ジャパン |
2023年1月 |
一定規模を有する企業(TOPIX100構成企業)において、取締役会の多様性確保の取り組みが著しく不十分な場合、すなわち女性の取締役もしくは監査役が2名以上選任されていない場合、その理由に関して合理的な説明がなされなければ、取締役会構成に責任のある取締役の再任に反対する。 |
一定規模を有する企業(TOPIX100構成企業)において、取締役会の多様性確保の取り組みが著しく不十分な場合、すなわち女性の取締役もしくは監査役が選任されていない場合、その理由に関して合理的な説明がなされない場合、取締役会構成に責任のある取締役の再任に反対する。 |
| 日興アセットマネジメント |
2023年1月 |
以下に該当する場合、原則として経営トップである取締役選任議案に反対する。
・女性取締役が不在の場合
(ただし、プライム市場上場会社に対し2023年1月より適用し、その後、対象市場の拡大、人数要件の段階的引き上げを検討する) |
(新設) |
| 三井住友DSアセットマネジメント |
2022年1月 |
当面は時価総額上位企業の取締役会構成を精査し、ジェンダー、外国人等の多様性が一切確認できない場合、原則反対する |
(新設) |
女性取締役等の選任に関する基準を導入する投資家も相次ぎました。アセットマネジメントOneと三井住友トラスト・アセットマネジメントがTOPIX100構成企業を対象に、りそなアセットマネジメントと日興アセットマネジメントがプライム市場上場企業を対象に、三井住友DSアセットマネジメントが「時価総額上位企業」を対象に、それぞれ1名上の女性取締役等の選任を求めています。なお、大和アセットマネジメントも、昨年TOPIX100構成企業を対象とした基準(女性取締役/監査役が不在の場合に代表取締役の再任に反対)を設定しています。
さらに、昨年ジェンダー基準を導入したばかりのブラックロック・ジャパンは、本年の改定によりTOPIX100構成企業を対象として、2名以上の女性取締役もしくは監査役の選任を求めることとしています。対象となる企業や求める女性取締役等の人数を今後拡大していく方針を示している投資家も多く、来年に向けてさらなる厳格化も予想されます。
この点、議決権行使助言会社のISSも、来年から女性取締役不在の企業の経営トップ(会長および社長)に対して反対推奨を行う予定です。また、既にジェンダー基準を導入済みのグラスルイスは、来年からプライム市場上場企業に対して10%以上の女性取締役の選任を求めることを公表しています。
政策保有株式に関する改定
| 機関投資家 |
適用時期 |
議決権行使基準 (要旨) |
| 変更後 |
変更前 |
| アセットマネジメントOne |
2022年4月 |
純資産比率で50%以上、または総資産比率20%以上を占める場合、代表取締役に原則反対。 |
(新設) |
| りそなアセットマネジメント |
2023年1月 |
政策保有株式の保有額が連結純資産の20%以上ある企業で一定以上の資本効率(ROE8%以上)がない場合、政策保有株式の縮減に関する方針について合理的かつ納得性ある説明と実績がなければ、代表取締役の選任に反対します。 |
(新設) |
| ブラックロック・ジャパン |
2022年1月 |
貸借対照表上で現預金、有価証券および投資その他有価証券を総資産対比で50%以上保有し、かつROEが5%未満の場合、責任があると考えられる取締役の再任に反対 |
(新設) |
| 大和アセットマネジメント |
2021年11月 |
政策保有株式を過大に保有している企業で、経営成績または株主資本の有効活用に問題があり、かつ政策保有株式の縮減に向けた取り組みが十分に行われていると判断できない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者に反対。
なお、上記判断にあたっては、業種ごとの特性や事情を考慮する。 |
(新設) |
| 三井住友DSアセットマネジメント |
2022年1月 |
以下に該当する場合、候補者毎に精査の上原則反対するが、実態等を踏まえた総合判断により賛成することがある。
・政策保有株式を純資産の20%程度以上保有している |
以下に該当する場合、候補者毎に精査の上原則反対するが、実態等を踏まえた総合判断により賛成することがある。
・銀行等金融セクターを除き、投資有価証券を純資産の 10%程度以上保有し、かつ低水準のROE を漫然と放置している場合 |
グラスルイスは、政策保有株式を過大に保有する企業の会長(会長職が無い場合、社長等の経営トップ)の選任に反対推奨するとのポリシーの適用を昨年から開始しています。また、ISSは、本年から政策保有株式の金額が純資産の20%以上の場合に経営トップの選任に反対推奨することとしています。
政策保有株式を過大に保有する企業 : 「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」の「貸借対照表計上額の合計額」が連結純資産と比較して10%以上の企業。国際会計基準を 採用している企業の場合、資本合計と比較する。各数値は、前年度の有価証券報告書のものを使用する。ただし、この方針に関連する直近の数値を開示している企業については、その最新の数値を使用して精査する。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
こうした中、本年は国内機関投資家においても、政策保有株式に関する基準の新設が相当程度確認されました。政策保有株式が純資産比や総資産比で一定水準以上の場合、代表取締役等の選任に反対するとの基準が多くなっています。また、りそなアセットマネジメントとブラックロックは、企業のROE水準も考慮するとしています。
ESG基準(取締役選任)
| 機関投資家 |
適用時期 |
議決権行使基準 (要旨) |
| 変更後 |
変更前 |
| 三井住友トラスト・アセットマネジメント |
2022年1月 |
気候変動への対応について、温室効果ガス排出量が相対的に上位の企業において、以下のいずれかに該当し、かつその理由について合理的な説明がなされない場合、原則として反対します。
①気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)または同等の枠組みに基づく情報開示が不十分
②パリ協定に沿った中期・長期の目標設定やその実現に向けた具体的方策の開示がない
③温室効果ガス排出量の削減に進展がみられない |
(新設) |
| りそなアセットマネジメント |
2022年1月 |
投資先企業と解決すべき課題を設定し、エンゲージメントを実施し続けたにもかかわらず、特段の理由もなく改善の動きがみられない場合、取締役の選任に反対することも検討します。 |
(新設) |
| 野村アセットマネジメント |
2021年11月 |
当社がエンゲージメントにおいて望ましい経営(ESG課題への取り組みを含む。)の実現に向けた取り組みが不十分であると指摘し対応を促したにもかかわらず、投資先企業において十分な取り組みが行われず改善も見込まれない場合であって、かつ、それが企業価値の向上と持続的成長を妨げている、あるいは中長期的に妨げになる可能性が高いと判断される場合、それについて責任を有すると判断される者の取締役選任に原則として反対する |
(新設) |
| 大和アセットマネジメント |
2021年11月 |
ESG等に関する重大な課題を抱える企業で、エンゲージメントを継続的に実施しても改善が見られないあるいは度重なるエンゲージメントの申し出に応じない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者に反対。 |
(新設) |
| 日興アセットマネジメント |
2022年1月 |
以下に該当する場合、原則として経営トップの取締役選任議案に反対する。
・気候変動に関連して、重大なリスクを抱える企業について、取り組みが不十分であり、状況に改善が見られないと判断する場合
・その他、重要なサステナビリティ課題を抱える企業について、取り組みが不十分であり、状況に改善が見られないと判断する場合 |
(新設) |
| 三井住友DSアセットマネジメント |
2022年1月 |
以下に該当する場合、候補者毎に精査の上原則反対するが、実態等を踏まえた総合判断により賛成することがある。
・サステナビリティについての経営戦略(気候変動、人的資本、知的財産等、E・S に関する具体的内容を含む)の情報開示に不足があり、かつ対話において改善の意思・方向性等が確認できない |
(新設) |
ESG投資のメインストリーム化に伴い、議決権行使において企業のESGに関する取組みを考慮するとの方針を表明する投資家が増加しています。重要なESG課題についての取組みが不十分な場合に、取締役選任議案に反対するとの基準を設けるケースが多くなっています。企業としては、投資家とのエンゲージメントにおいてESGに係るリスクや懸念などが示された場合には注意が必要と言えるでしょう。なお、具体的なESG課題としては、三井住友トラスト・アセットマネジメント、日興アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントが「気候変動」を挙げており、温室効果ガス排出量が多い企業などは特に留意すべきであると考えられます。
ESG基準(株主提案)
| 機関投資家 |
適用時期 |
議決権行使基準 (要旨) |
| 変更後 |
変更前 |
| アセットマネジメントOne |
2022年4月 |
原則として「議決権行使にあたっての基本的な考え方」に沿った中長期的な株主価値向上の観点から個別に判断を行います。
なお、自社の事業に対する重要性の高い環境や社会リスクなど企業毎の重要な課題に関する適切な情報開示の充実を求める議案について、中長期的な株主価値向上に資すると判断される場合は、原則として賛成します。 |
原則として株主価値向上の観点から個別に判断を行います。
なお、気候変動リスクなど企業毎の重要な課題に関する適切な情報開示の充実を求める議案について、中長期的な株主価値向上に資すると判断される場合は、原則として賛成します。 |
| 三菱UFJ信託銀行 |
2022年4月 |
サステナビリティに関する情報開示の充実を促す株主提案については、その考え方に原則賛同しますが、議案判断にあたっては、提案内容、および企業の取り組み状況等を考慮します。 |
(新設) |
| 三井住友トラスト・アセットマネジメント |
2022年1月 |
気候変動への対応を求める株主提案につきましては取締役選任基準に準拠して判断します。
*取締役選任基準
気候変動への対応について、温室効果ガス排出量が相対的に上位の企業において、以下のいずれかに該当し、かつその理由について合理的な説明がなされない場合、原則として反対します。
①気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)または同等の枠組みに基づく情報開示が不十分
②パリ協定に沿った中期・長期の目標設定やその実現に向けた具体的方策の開示がない
③温室効果ガス排出量の削減に進展がみられない |
(新設) |
| りそなアセットマネジメント |
2022年1月 |
例えば以下のような定款変更については、定款に記載することの妥当性に加え、上記と同様の観点(株主価値向上など)について検討し、賛成することもあります。
・気候変動リスクに関する情報開示を求めるもの |
(新設) |
| 野村アセットマネジメント |
2021年11月 |
株主提案が、以下のいずれかに該当する定款変更議案であって、現行の定款に該当する項目がなく、「株主価値の観点からではなく、社会的・政治的な主張を目的とした提案」や「内容が明確性や具体性を欠いており、議案としての要件を満たしていない提案」でないと判断される場合には、原則賛成。
・ESG課題を巡る取り組みについての基本的な方針の策定に関するもの |
(新設) |
| 大和アセットマネジメント |
2021年11月 |
気候変動や人権の尊重、その他ESG課題に関する情報開示の拡充や取り組みの強化を求める議案には、企業の取り組み状況や業務執行への影響なども勘案した上で適切と判断できる場合に賛成する。 |
(新設) |
| 三井住友DSアセットマネジメント |
2022年1月 |
株主共同の利益や企業価値への影響等を踏まえ、総合的に判断する。定款変更を要求する議案については、事業運営の制約となる可能性等を十分に考慮する。気候変動や人権等、サステナビリティの情報開示に関する株主提案については、求める開示内容、範囲、項目等が適切と判断できる場合は原則賛成する。 |
株主共同の利益や企業価値への影響が無いかの視点を踏まえ、総合的に判断する。 |
一昨年(2020年)のみずほフィナンシャルグループの定時株主総会を皮切りに、気候変動に関する株主提案が相次いでいます。こうした流れを踏まえ、上表のとおり国内機関投資家も気候変動などESG課題に関する情報開示を求める株主提案への賛否についての基準を新設しています。もっとも、これらの基準の多くは、提案の内容や企業の取組み状況を勘案して個別判断するなどといった、やや抽象的なものにとどまっています。
取組み内容の開示やエンゲージメントの重要性
本稿では、国内主要機関投資家のガイドライン改定において確認された共通テーマとして、①取締役会構成、②社外役員の任期、③ジェンダー・ダイバーシティ、④政策保有株式、⑤ESG(取締役選任/株主提案)を取り上げました。
このうち①取締役構成と②社外役員の任期については、それぞれ「社外取締役1/3未満の場合は反対」、「在任期間12年以上で独立性否認」との数値基準が定着しており、これらの基準に抵触した場合に投資家の行使判断を覆すのは困難であることが多いと考えられます。
一方、③ジェンダー・ダイバーシティ、④政策保有株式については、それぞれガイドラインにおいて「女性取締役等不在の場合反対」、「純資産比/総資産比○%以上で反対」など定量的な基準が示されると同時に、企業の取組みや説明を考慮する旨の定性的な基準を設けるケースも見受けられます。さらに、⑤ESG(取締役選任)については、エンゲージメントを経ても取組みの改善が見られない場合に反対行使するとの方針を示す投資家が多くなっています。IRだけでなくSRの観点からも、情報開示や投資家との対話の重要性がますます高まっていると言えそうです。
SR : Shareholder Relations の略で、「株主向け広報」と訳される。株主を含む広く投資家全般に対する広報活動を「IR」 (Investor Relations) と呼ぶのに対し、SR活動とは、企業と株主との信頼関係を築くための活動を指す。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
(補記:2022年5月24日)
大和アセットマネジメントは2022年5月11日に議決権行使基準の改定を公表しました。
大和アセットマネジメント「議決権行使に関する方針(国内株式)の見直しおよび検討課題について」
2021年11月に続く、「シーズン2回目」の見直しとなります。主な変更点は下表の3点であり、いずれも2022年6月から適用されます。
| テーマ |
適用時期 |
議決権行使基準 (要旨) |
| 変更後 |
変更前 |
| 取締役会構成 |
2022年6月 |
会社法上の社外取締役が2名以上(プライム市場上場企業については、会社法上の社外取締役が2名以上かつ取締役会の構成員の1/3以上)選任(上程)されていない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者に反対 |
会社法上の社外取締役が2名以上選任(上程)されていない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者に反対 |
| 親会社または支配株主を有する企業においては、会社法上の社外取締役が2名以上かつ取締役会の構成員の1/3以上(プライム市場上場企業については、会社法上の社外取締役が2名以上かつ取締役会の構成員の過半数)選任(上程)されていない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者に反対 |
親会社または支配株主を有する企業においては、会社法上の社外取締役が2名以上かつ取締役会の構成員の1/3以上選任(上程)されていない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者に反対 |
| ジェンダー・ダイバーシティ |
2022年6月 |
TOPIX500の構成銘柄に該当する企業において、役員(取締役および監査役会設置会社における監査役)に女性が1名以上選任(上程)されていない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者に反対 |
TOPIX100の構成銘柄に該当する企業において、役員(取締役および監査役会設置会社における監査役)に女性が1名以上選任(上程)されていない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者に反対 |
| バーチャルオンリー総会 |
2022年6月 |
定款変更議案において、原則として以下の議案には賛成する。
・場所の定めのない株主総会開催を可能とするもの |
(新設) |
取締役会構成については「1/3」に収斂する動きとして、ジェンダー・ダイバーシティについてはさらなる厳格化の進展としてとらえることができそうです(なお、バーチャルオンリー総会については、行使判断の実質的な変更というよりも、考え方の「明確化」であると位置付けられます)。
さらに、本改定に際して、「今後の検討課題」として、社外役員の任期にも言及している点、注目されます。同社は既に12年以上在任の社外役員の独立性を否認する旨の基準を導入しているものの、「ガバナンス強化という観点から、適正な社外役員の任期について検討してい」ることを明らかにしています。主要国内機関投資家において、「在任期間12年以上で独立性否認」が定着したと思われていたものの、さらなる厳格化もあり得る状況になってきたと言えそうです。