<解説>
人権の「保護」と「尊重」、国連の指導原則が企業に求めているのはどっち?
前回(こちらを参照)は「ビジネスと人権」への対応の総論を解説しました。
今回から各論に入りますが、その前に国連人権理事会が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、指導原則)の副題である『ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合「保護、尊重及び救済」枠組実施のために』の「保護」「尊重」「救済」の3つの柱のうち、「保護」と「尊重」の主体について整理しておきましょう。指導原則6には下記のように記載されています。
指導原則6
| この枠組は3本の柱に支えられている。第一は、しかるべき政策、規制、及び司法的裁定を通して、企業を含む第三者による人権侵害から保護するという国家の義務である。第二は、人権を尊重するという企業の責任である。これは、企業が他者の権利を侵害することを回避するために、また企業が絡んだ人権侵害状況に対処するためにデュー・ディリジェンスを実施して行動すべきであることを意味する。第三は、犠牲者が、司法的、非司法的を問わず、実効的な救済の手段にもっと容易にアクセスできるようにする必要があるということである。それぞれの柱は、防止及び救済のための手段の、相互連関的で動的な体系を構成する重要な要素である。すなわち、国家は国際人権体制のまさに中核にあるが故に、国家には保護するという義務がある。人権に関して社会がビジネスに対して持つ基礎的な期待の故に、企業には尊重するという責任がある。そして細心の注意を払ってもすべての侵害を防止することは出来ないが故に、救済への途が開かれている。 |
人権は、歴史的に見ると、個人(国民)を国家による弾圧から守るために、フランス革命などを経て国民が勝ち取った国家に対する権利でした。そこで民主主義国家では、憲法により国民の人権を保護することが国家の義務として定められています(上記の「第一」が意味するところ)。もっとも、企業活動が活発化し、企業の存在感が高まるにつれ、残念なことに企業も個人に対して人権を蹂躙する主体になる局面が増えてきました。そこで、かつて国際連合では「人権を促進し、その実現を保証し、人権を尊重し、尊重することを確保し、そして人権を保護すること」を、国際法の下で直接に企業に課そうとする提案を行ったものの、当該提案は、「経済界と人権活動団体の間に埋めることのできない溝を作りだしてしまい、政府側からの支持もほとんど引き出せなかった」そうです(指導原則3)。
それについての反省もあり、指導原則は、企業に求めるのは『人権の保護』ではなく『人権の尊重』であると整理しました(上記の「第二」が意味するところ)。これが指導原則に対する経済界の支持を引き出す転換点となり、今日の「ビジネスと人権」への対応の活発化につながったと言えます。
そして、企業が『人権を尊重』するために、まず実施すべきことが人権方針の策定・公表になります。今回はこの「人権方針」について解説します。
人権方針が満たすべき5つの要件
国連人権理事会が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、指導原則)では、人権を尊重する責任を定着させるための基礎として、方針によるコミットメントをすることを求められています。これがいわゆる「人権方針」と言われるものです。そして、指導原則16には企業の人権方針が満たすべき要件が5つ掲げられています。
B.運用上の原則
方針によるコミットメント
16.人権を尊重する責任を定着させるための基礎として、企業は、以下の要件を備える方針の声明を通して、その責任を果たすというコミットメントを明らかにすべきである。
a.企業の最上級レベルで承認されている。
b.社内及び/または社外から関連する専門的助言を得ている。
c.社員、取引先、及び企業の事業、製品またはサービスに直接関わる他の関係者に対して企業が持つ人権についての期待を明記している。
d.一般に公開されており、全ての社員、取引先、他の関係者にむけて社内外にわたり知らされている。
e.企業全体にこれを定着させるために必要な事業方針及び手続のなかに反映されている。 |
上記の国際連合広報センターの日本語訳は直訳のため、日本語として分かりづらいと言わざるを得ません。外務省のパンフレットの表現が分かりやすいので紹介します。
a.企業の経営トップが承認していること
b.社の内外から専門的な助言を得ていること
c.従業員、取引先及び、製品やサービスに直接関与する関係者に対する人権配慮への期待を明記すること
d.一般公開され、全ての従業員や、取引先、出資者、その他関係者に向けて周知されていること
e.企業全体の事業方針や手続に反映されていること |
2021年12月10日のニュース「上場企業における人権方針と人権デュー・ディリジェンス対応の実態」でお伝えしたとおり、経済産業省と外務省が2021年8月末に東証一部・二部上場企業等2,786社を対象に実施した「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」の集計結果(2021年11月30日公表。以下、アンケート調査結果)によると、回答があった企業760社のうち人権方針を策定している企業は約7割(69%、523社)となっており、残りの約3割の企業が未作成でした(集計結果の3ページ参照)。
Q:人権尊重に関して、人権方針を策定、または企業方針、経営理念、経営戦略などに明文化していますか。また、それらを公表していますか。

人権方針は人権を尊重する責任を定着させるための基礎となることから、早めの策定、公表が重要となってきます。
また、人権方針を策定している企業であっても、上記の要件をすべて満たす形で策定できている企業は少ないことも分かりました。
Q:人権方針の策定に関し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」で求められている下記要件について、満たしている要件をすべて選択してください。(複数回答可)

5つの要件の中でももっとも充足率が高い要件が「a.企業の最上級レベルでの承認」です(88%)。「最上級レベルでの承認」は、代表取締役などの経営トップの承認や取締役会での承認となります。また、「c.関係者に対する人権配慮への期待の明記」「d.一般に入手可能で、かつ関係者に周知されていること」「e.企業全体に定着させるために企業活動方針や手続に反映されていること」といった要件は7割台となっています。逆に言えば、「d.一般に入手可能で、かつ関係者に周知されていること」の要件を21%の企業が満たしていないことになり、驚きの声が上がっています。せっかく人権方針を定めたとしても、それを誰でもいつでも簡単に見ることができなければ、人権方針に込めた思いや願いが人権を抑圧する側・抑圧される側の双方に届くことはありません。海外に取引先や仕入先・下請先があるのであれば、現地の言語に翻訳したものをウェブサイトで誰でも閲覧できるようにしなければ、現地の人は人権方針を知りようがありません。また、単にウェブサイトに掲示して終わりとするのではなく、社内研修や取引先・下請先などのサプライチェーンや投資家への説明時などさまざまな機会に人権方針を配布したり、該当ページを案内することで、人権方針の周知徹底を図る必要があります。
人権方針策定に当たり参考にしたい規範
人権方針策定に当たり、人権に関して最低限遵守されるべき原則・基準・考え方として多くの企業が参考にしているのが、下記の規範です。
・世界人権宣言
・国際人権規約
・労働における基本的原則および権利に関するILO宣言(以下、ILO宣言)
・国連人権理事会のビジネスと人権に関する指導原則
・OECD多国籍企業行動指針
・国連グローバル・コンパクトの10原則
・子どもの権利とビジネス原則
・ビジネスと人権に関する行動計画(2020-2025)
・先住民族の権利に関する国際連合宣言
・JEI エシカル基準
これらの規範は、国際的に認められた人権の内容および水準を理解するために、ぜひとも目を通していただきたいところです。
その他、サプライチェーンにおける人権尊重の観点からぜひとも参考にしたいのが、「レスポンシブル・ビジネス・アライアンス(RBA)行動規範」(以下、RBA行動規範)です。これは、以前は電子業界CSRアライアンス(Electronic Industry Citizenship Coalition(EICC))と言われていたもので、電子業界に属するAppleなどの多国籍企業が後進国の下請先工場で低賃金で働く労働者の人権侵害につき批判を浴びたことで人権の専門家を交えて長年かけてブラッシュアップしてきた行動規範ですので、規範として相当に練られたものとなっています。もちろん、エレクトロニクス産業、電子機器関連産業に属しない企業であっても準拠することにまったく問題ありません。
なお、人権宣言がILO宣言やRBA行動規範などの基準に準拠しているのであれば、その旨を人権方針の冒頭に記載しておくべきです。この記載があれば、機関投資家が人権方針を分析する際に、当該方針が一定のクオリティに達していることを理解できるからです。
人権方針策定のステップ
日本経団連の「人権を尊重する経営のためのハンドブック」の25ページには、人権方針の策定・公表・浸透にあたってのプロセス例が示されているので、紹介します。
① 策定準備・策定段階
●基礎情報:国際人権章典、中核的労働基準(ILO)、ビジネスと人権に関する指導原則(国連)、責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンスなどを踏まえて、自社が取り組むべき人権課題を理解
●他社情報:業界における取組み、海外の先行事例、各社のホームページやヒアリング、コンサルタントによる調査などを通じて情報収集
●ステークホルダー・ダイアログ:国際組織、NGO、企業、弁護士などと、自社が重要視すべき人権課題や人権方針の策定について意見交換
●マッピング:自社の事業領域や事業展開地域との関係性があると思われる人権課題を特定してリスト化し、自社が取り組むべき人権課題を把握
●社内調整:関連部門や海外拠点から情報収集するとともに、人権方針案を内部調整
●内容の検討:
・ESG経営推進部が中心となり、社外専門家の協力を得て、法務や人事、購買、海外統括部門など、社内のコーポレート部門のライン長によるワークショップを実施して内容を検討
・法務部、人事部、購買部、サステナビリティ推進部で他社事例や外部評価機関からの指摘を踏まえて原案を検討し、外部専門家を起用の上、国際規範を満たした内容となっているか確認を受けながら策定
・全社のコンプライアンスを推進する企業行動委員会のもと、人権関連組織が集まり人権専門委員会を組織し、意見集約しながら「人権尊重に関するグループポリシー」を策定
・国際的な規範や法規、先進他社事例などを調査、確認の上、素案を作成し、自社内関係部門およびグローバル拠点に内容について確認
・国際的なイニシアティブ、国内外の先行事例などを参考にしながら、“当社グループらしさの確保”という観点を踏まえ、策定
・中期経営計画でグループのマテリアリティ(重要課題)として、「あらゆる人々の人権への対応(SDGs)」を提示
② 承認
●経営会議での議論を経て、取締役会議で決議
●サステナビリティ推進体制の中で議論・合意のうえ、取締役会で決議
●グローバル本社関連部門や海外地域本社、グループ会社への事前展開
●人権、サステナビリティ担当役員により承認して、公表。取締役会においては英国現代奴隷法関連の承認などを得るタイミングで共有
③ 公表
●経営トップのメッセージとともに、策定した方針をホームページで公表
●策定後にプレスリリースを発行し、社内外に広く人権方針の制定を伝達
●グループとしての方針のため、英語をはじめ必要な言語に翻訳
●グローバル本社社長から各グループ会社の社長宛にレターを送付し、人権方針の制定と人権方針に基づく各種取組みの実施(例:人権デュー・ディリジェンス)を周知
●ホームページのサステナビリティ関連項目として、「人権の尊重」に関するページを設けて掲載
●アニュアルレポート、サステナビリティレポート、ホームページなどを通じて、グループ人権方針を公表
●ホームページの「サステナビリティデータブック」に掲載
●制定以降、毎年「サステナビリティレポート」で公表
●英国現代奴隷法などに基づくステートメントを開示
●法務省主催「Myじんけん宣言プロジェクト」の趣旨に賛同し、グループの「Myじんけん宣言」を公表し、あわせて、トップメッセージを発信
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実例で見る人権方針
まず、セブン&アイグループの人権方針を見てみましょう。
セブン&アイグループの人権方針(2021年10月7日付け)は次のような構成になっており、末尾にセブン&アイ・ホールディングス代表取締役社長のサインが付されています(取締役会の承認の有無に関する記述はなし)。
セブン&アイグループの人権方針
1.人権に対する基本的な考え方
2. 適用範囲
1)セブン&アイグループの役員と従業員
2)セブン&アイグループのビジネスパートナー
3. 人権尊重の推進体制
4. 人権デュー・ディリジェンスの実施
5. グリーバンスメカニズムの構築と救済措置
6. ステークホルダーとの対話・協議
7. 教育・啓発活動
8. モニタリングと情報開示
9. 重点取り組み
(1) 非人道的な扱いの禁止
(2) 強制労働の禁止
(3) 児童労働の禁止
(4) 差別の禁止
(5) 安全で衛生的かつ健康的な労働環境の提供
(6) 適切な労働時間の管理
(7) 適切な賃金の確保
(8) 子どもの権利の尊重
(9) 安全な商品・サービスの提供と倫理的なマーケティングや広告活動 |
5の「グリーバンスメカニズム」とは、人権への悪影響の是正・回復のための仕組みのことであり、社内外からの人権に関する相談・通報を受け付け、対応する窓口なども、これに含まれます。
次にサントリーグループの人権方針を見てみましょう。サントリーグループの人権方針(2019年7月10日付け)は次のような構成になっており、末尾にサントリーホールディングスの取締役会の承認を得たことが記されたうえで、代表取締役社長のサインが付されています。
サントリーグループの人権方針
1.基本的な考え方
2.適用範囲
3.人権尊重の責任
4.人権デュー・ディリジェンス・救済
5.情報開示
6.対話・協議
7.教育・研修
8.責任者
9.人権における重点テーマ
● 児童労働・強制労働
● 差別・ハラスメント
● 結社の自由
● 働きやすい職場環境
● 風通しの良い職場風土
● 挑戦と成長
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サントリーグループの人権方針は、人権における重点テーマとして「挑戦と成長」(内容は「一人ひとりが仕事に誇りと責任を持ち、自律的に目標にチャレンジし、自身の成長を実現します。」)を掲げているのが特徴的と言えます。これは、同社グループの社風の反映と言えそうです。
次に日産自動車の人権尊重に関する基本方針を見てみます。日産自動車の人権尊重に関する基本方針(2021年7月10日付け)の構成は次のようになっており、末尾に代表執行役社長兼CEOによってレビューされ、承認されたことが記されたうえで、代表執行役社長兼CEOのサインが付されています(取締役会の承認の有無に関する記述はなし)。
日産自動車の人権尊重に関する基本方針
1. 責任ある事業活動に向けた日産の考え方
2. 人権尊重に対するコミットメント
a. 私たちの従業員
b. 私たちの商品とお客さま
c. 私たちの環境方針
d. 私たちのグローバルな事業展開
3. 当方針のスコープ
4. サプライヤーと人権
5. 日産における人権マネジメント
6. 苦情処理メカニズムと救済へのアクセス
7. ガバナンス
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日産自動車のウェブサイトにはグローバル企業らしく、人権尊重に関する基本方針の英語版と日本語版の両方が掲載されており、英語版が正とされ、日本語版はそれを意訳し補完するものという扱いとなっています。
最後に三菱ケミカルグループの人権方針を見てみましょう。三菱ケミカルグループの人権方針(2020年3月23日制定)の構成は次のようになっており、末尾に本方針が取締役会において承認されていることが付記されています。
三菱ケミカルグループの人権方針
(冒頭部分)
人権の尊重
人権デューデリジェンスの実施
私たちの事業活動に関わる人権
・差別
・ハラスメント
・強制労働
・児童労働
・結社の自由と団体交渉権
・労働安全衛生
・労働時間と賃金
・プライバシーの権利
・製品の使用
・ビジネスパートナー
・地域社会
・ハイリスクな状況
苦情処理メカニズム
教育と研修
人材の活用・ダイバーシティへの取り組み
報告とコミュニケーション
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この項目だけでは「基本的な考え方」「適用範囲」「遂行体制」についての記載がないように見えますが、三菱ケミカルグループの人権方針では、冒頭部分で基本的考え方について述べた後、本人権方針が「人権に関する最上位の方針として、三菱ケミカルグループの企業理念及び「経営の基本方針」を補完し、三菱ケミカルグループ事業活動における人権尊重への取り組みの指針となる」といったように、社内ルール上の位置づけを整理したうえで、適用範囲や遂行体制についても明確に記載されています。
各企業の人権方針を比較すると、当然ながら細部に違いは見られますが、人権方針の骨格は「基本的考え方」「適用範囲」「遂行体制」「人権デューデリジェンス」「救済措置」「重点を置く人権」となっていることが分かります。そうだからと言って、人権方針未作成の企業が他社の人権方針をコピーペーストするのは適切ではありません。日本経団連の「人権を尊重する経営のためのハンドブック」では、「人権の概念は広範で、企業の業種や規模、事業を行う国・地域によって直面する人権課題は異なり多様である。そのため、実質的でイノベーティブな課題解決や、企業の長期的発展や持続可能性につなげていくには、各企業の状況に応じた自主的な取組みが最も効果的である」(日本経団連の「人権を尊重する経営のためのハンドブック」4ページより)とされており、上場会社には、他社の人権方針を模倣するのではなく、イチから考え抜いたわが社なりの文章に落とし込むことが求められていると言えます。
さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
<正解>
取締役B:「『企業の最上級レベルで承認』といっても、経営者の承認でよいのではないでしょうか。株主には、株主通信や統合報告書などで人権方針そのものやウェブサイトのURLを掲載することで周知を図ってはいかがでしょうか。」
(コメント:『企業の最上級レベルで承認』は、通常は株主総会での決議ではなく、社長や取締役会での承認を指しています(下記の取締役Aの発言についてのコメントを参照)。また、人権方針の周知徹底は指導原則が求める要件の1つでもあります。よって、取締役Bの発言は正論であり、Goodです。)
取締役A:「人権方針は『企業の最上級レベルで承認』される必要があると聞いているので、株主総会で人権方針を決議することになるはずです。」
(コメント:確かに国連人権理事会の「ビジネスと人権に関する指導原則」16aによると、人権方針は『企業の最上級レベルで承認』される必要がありますが、ここでいう『企業の最上級レベル』とは通常は経営トップを指します。人権方針に経営トップがしっかりとコミットすることが大事ということであり、企業の最高意思決定機関である株主総会の関与を求める趣旨ではありません。取締役Aの発言は『企業の最上級レベルの意思決定』イコール株主総会という思い込みによるBad発言です。)
取締役C:「人権方針は社内規程のようなものなので、社外への公表にはなじまないと思います。」
(コメント:人権方針は公表されることで、経営トップの人権に対する姿勢を示し、企業活動の中で人権を抑圧することがないように社内外に宣言するだけでなく、社外も含めた関係者に方針を理解してもらい企業活動に反映してもらう必要があります。そのためには人権方針の社外への公表は必須と言えます。人権方針は『単なる社内規程』ではなく、公表されてこそ本領を発揮するものなので取締役Cの発言はBad発言です。)
取締役D:「人権方針をイチから考えるのは手間がかかりますね。多国籍大企業の人権方針であれば、当然人権問題のプロの目を経ているはずなので、それを借用すれば十分ではないでしょうか。」
(コメント:確かに多国籍大企業の人権方針はさまざまな国の人権問題と向き合いながら策定・修正されてきたものであり、ある程度鍛えられたものとなっているはずですが、人権方針は自社の業態や外部環境・内部環境で変わって当然と言えます。そもそも人権方針を検討する手間を惜しんで、他社の人権方針を模倣するという態度こそ、人権問題への意識の低さの現れと言え、Bad発言です。)
取締役E:「そもそも歴史的に見て人権を保護するのは国家の役割ではないでしょうか。いつの間に企業が人権を保護する役割を担わされるようになったのでしょうかね。」
(コメント:国連人権理事会の指導原則が企業に求めているのは『人権の保護』ではなく『人権の尊重』です。歴史的経緯から一般的に『人権の保護』は国家の役割であると考えられています。指導原則も、企業に求められているのは『人権の保護』ではなく『人権の尊重』のみであると整理したことで、指導原則に対する経済界の支持を引き出す転換点となり、今日の「ビジネスと人権」への対応の活発化につながったという経緯があります。取締役Eの発言は、国連人権理事会の指導原則についての理解が乏しいことを露呈してしまったBad発言です。)