2022/01/25 創業者一族の“配当節税”にメス、税負担倍増も

「パブリックカンパニー」「社会の公器」とも言われる上場会社だが、実は同族色・オーナー色が強いところも少なくない。創業家一族が自社の株式を直接大量に保有しているケースもあるが、直接的な保有は抑え、創業家一族が支配する資産管理会社に保有させるケースも多い。その理由の一つとして、株式の保有に伴い受ける配当への税金の問題がある。

上場株式の配当については、20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率による源泉徴収だけで課税関係を完結させることが可能とされている。ただし、持株割合3%以上の“大口”の個人株主の場合、源泉徴収の税率は24.9%とされ、さらに上場株式に係る配当は給与など他の所得と合算され「総合課税」の対象となる。総合課税では、所得が増えれば増えるほどより高い税率(最大49.44%)が課されることになる(これを「累進課税」という)。

こうした中、上場会社である自社の株式は資産管理会社に保有させ、個人株主としての持株割合は3%未満に抑えるという節税が広く行われているという実態がある。この問題は、会計検査院が令和3年11月5日に公表した「令和2年度決算検査報告」でも指摘されている。実際、会計検査院の報告によれば、持株割合3%以上の大口の個人株主の所得税等の負担割合は原則どおり24.9%であるのに対し、同族会社(資産管理会社等)を通じて3%以上の上場株式を保有している場合の負担割合は15.3%と低くなっている。

会計検査院 : 会計検査院は、国や政府関係機関等の会計検査を行うだけの機関と思われがちだが、税制改正においてもその“発言権”は大きい。会計検査院は、「会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合」には、本属長官等に対し意見表示等をすることができるとされ(会計検査院法34条)、これに基づき税制の問題点が指摘され、その結果、税制改正につながることが少なくない。

この指摘を受け令和4年度(2022年度)税制改正では、・・・

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2022/01/25 創業者一族の“配当節税”にメス、税負担倍増も(会員限定)

「パブリックカンパニー」「社会の公器」とも言われる上場会社だが、実は同族色・オーナー色が強いところも少なくない。創業家一族が自社の株式を直接大量に保有しているケースもあるが、直接的な保有は抑え、創業家一族が支配する資産管理会社に保有させるケースも多い。その理由の一つとして、株式の保有に伴い受ける配当への税金の問題がある。

上場株式の配当については、20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率による源泉徴収だけで課税関係を完結させることが可能とされている。ただし、持株割合3%以上の“大口”の個人株主の場合、源泉徴収の税率は24.9%とされ、さらに上場株式に係る配当は給与など他の所得と合算され「総合課税」の対象となる。総合課税では、所得が増えれば増えるほどより高い税率(最大49.44%)が課されることになる(これを「累進課税」という)。

こうした中、上場会社である自社の株式は資産管理会社に保有させ、個人株主としての持株割合は3%未満に抑えるという節税が広く行われているという実態がある。この問題は、会計検査院が令和3年11月5日に公表した「令和2年度決算検査報告」でも指摘されている。実際、会計検査院の報告によれば、持株割合3%以上の大口の個人株主の所得税等の負担割合は原則どおり24.9%であるのに対し、同族会社(資産管理会社等)を通じて3%以上の上場株式を保有している場合の負担割合は15.3%と低くなっている。

会計検査院 : 会計検査院は、国や政府関係機関等の会計検査を行うだけの機関と思われがちだが、税制改正においてもその“発言権”は大きい。会計検査院は、「会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合」には、本属長官等に対し意見表示等をすることができるとされ(会計検査院法34条)、これに基づき税制の問題点が指摘され、その結果、税制改正につながることが少なくない。

この指摘を受け令和4年度(2022年度)税制改正大綱では、たとえ「個人」による上場株式の保有割合が3%未満であっても、当該個人の保有割合と、当該個人が株主となっている同族会社(資産管理会社等)による上場株式の保有割合を合計すると3%以上となる場合には、当該個人株主が支払いを受ける配当は「総合課税」の対象にすることとされた。この改正は、令和5年(2023年)10月1日以後に支払われる配当から適用される(令和4年度税制改正大綱27ページ参照)。

法人税法上の「同族会社」とは、簡潔に言えば「3人以下の株主、及びこれらと特殊な関係にある個人や法人により、実質的にその会社の株式の50%超を所有されている会社」のことを指す(法人税法2条10号)。今回の改正における同族会社の定義もこれまでと変わらないことが当フォーラムの取材により確認されている。

「これらと特殊な関係にある個人」には、例えば3人の株主の親族(配偶者、六親等以内の血族、三親等以内の姻族)が該当するが、親族が同族会社の株式を全く保有していなければ、当該親族は今回の改正の対象外となる。逆に、わずかでも同族会社の株式を保有している場合には、「個人」としての上場株式の保有割合と、同族会社(資産管理会社等)が保有する上場株式の保有割合の“合計”が3%以上となれば、その個人株主が支払いを受ける配当は総合課税の対象となる。創業者一族で資産管理会社の株式を保有しているケースも多いだけに、今回の改正は創業家一族の各者の所得税負担を増加させる可能性があろう。

なお、上場会社の創業家一族が社団法人や財団法人を資本政策に活用するケースは少なくないが(2021年3月30日のニュース『シノケングループ、財団への自己株式「1円」売却を撤回』、2017年4月18日のニュース『「財団への第三者割当」を巡る投資家目線の論点』参照)、今回の改正の対象はあくまで「同族会社」であり、社団法人や財団法人を通じて上場株式を管理している場合は今回の改正の対象外となる。

上記に関連する改正として、令和4年度税制改正大綱では、配当を支払う上場会社は、「持株割合1%以上の個人株主の氏名、マイナンバー、持株割合」などを記載した報告書を、配当の支払確定日(配当の支払いに係る基準日
)から1か月以内に所轄税務署長に提出しなければならないこととされた(本改正も、令和5年(2023年)10月1日以後に支払われる配当から適用される。令和4年度税制改正大綱27ページ参照)。上場会社の場合、対象者の洗い出しは信託銀行を通じて行うことになるが、マイナンバーが分からないケースも想定される。その場合、判明している分だけを報告書に記載すればよいことも当フォーラムの取材により確認されている。

基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。定時株主総会の基準日を定款に記載しなければ、毎年、基準日を公告しなければならない。その手間を避けるために、定款に基準日を記載するのが通常である。

2022/01/24 岸田総理が「有価証券報告書」における男女別賃金の開示を明言

2022年1月18日のニュース「男女別の賃金開示、復活の可能性」では、(2022年)1月17日)招集された通常国会の冒頭における岸田総理の施政方針演説で、男女の賃金格差を是正するため企業の開示ルールの見直す方針が示されたことをお伝えしたが(「3 新しい資本主義」の(中間層の維持)」6、7行目参照)、・・・

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2022/01/24 岸田総理が「有価証券報告書」における男女別賃金の開示を明言(会員限定)

2022年1月18日のニュース「男女別の賃金開示、復活の可能性」では、(2022年)1月17日)招集された通常国会の冒頭における岸田総理の施政方針演説で、男女の賃金格差を是正するため企業の開示ルールの見直す方針が示されたことをお伝えしたが(「3 新しい資本主義」の(中間層の維持)」6、7行目参照)、1月20日に開催された衆議院本会議で、岸田総理は日本共産党の志位委員長からの提案に対し、「男女の賃金格差を有価証券報告書の開示項目にする」ことを明言した。該当部分の答弁は下記のとおり。

日本共産党 志位委員長
提案1~4 略
5.ジェンダー平等の視点をつらぬくこと。12年連続でジェンダー平等1位のアイスランドの総理は男女の賃金格差をなくすため、企業に同一賃金の証明を義務付け、違反があれば罰金を課すという仕組みの中で、経済を強くするという副産物が生まれたと言っています。日本も学ぶべきではないか。年収で240万円もの男女の賃金格差の解消に向けて、企業に実態を公表することを義務付けるべきではありませんか。

岸田総理
男女平等は日本政府の重要かつ確固たる方針であるとともに、国際社会で共有されている規範です。特に人生や家族のあり方が多様化する中、女性の経済的自立に取り組む必要があります。その中で、男女の賃金格差については、その是正に向けて、有価証券報告書の開示項目にする等、企業の開示ルールの在り方を具体的に検討してまいります。

現在、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)では気候変動開示などについて議論が行われているが、この岸田総理の発言を受け、今後は男女別の賃金開示も新たに議論のアイテムとして加わる可能性が高い。

上場企業各社にとってまず関心事となるのが開示の対象範囲だろう。上場企業にあっては海外子会社を有するところが多いが、関係者への取材によると、国会でテーマとなっているのはあくまで「日本における」女性活躍であることから、海外子会社までを含めた開示が求められることは考えにくいとの意見も聞かれる。

また、開示対象を連結ベースにするのか単体ベースにするのかということも論点になりそうだ。連結決算導入前の1999年3月期までは、有価証券報告書の「従業員の状況」欄で、従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均給与月額について“男女別”の開示が行われていたが、連結決算が導入された2000年3月期からはこれが廃止され、これらを男女分けずに開示することとなったのは既報のとおりだが(上記ニュース参照)、当時は、連結ベースでのデータを把握するのは事務負担が大きいなどの声が企業側から上がり、連結ベースでの男女別開示は見送られたという経緯がある。

また、持株会社が上場している場合、持株会社のデータだけを出しても意味がないため、中核的子会社についても開示が求められることになる可能性が高いだろう。

いずれにせよ、岸田総理の発言からすれば、男女別の賃金開示は早期に実現することが予想される(最速で2023年3月期に係る有価証券報告書~)。DWGにおける議論の動向が注目される。

2022/01/21 CGコードに続き気候変動開示でも英国が“手本”になる可能性

既報のとおり、昨年(2021年)11月に開催されたCOP26では、IFRS(国際財務報告基準)を策定するIFRS財団が、国際的に統一された気候変動開示のルールをはじめとする「サステナビリティ報告基準」を策定するため、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)の設立を発表したところだ(2021年12月1日のニュース「IFRS財団におけるISSBの設立と日本の対応」)。今年6月の完成を目指すサステナビリティ報告基準はビルディング・ブロック方式(いくつかの構成要素を積み上げる方式)を採用することとなっており、ISSBは土台となる基準を作成するのみで、より詳細・具体的な開示基準作りは各国に委ねられることになる(2021年6月22日のニュース「サステナビリティ開示の将来像」の図参照)。ISSBの動きを受け、各国においては気候変動開示等のルール作りが急ピッチで進んでいる。日本でも、金融庁に設置された企業情報の開示の在り方に関する金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループでは、気候変動を含むサステナビリティに関する情報開示について議論を進めている。

COP26 : 英国グラスゴーで2021年11月1日~12日に開催された「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」のこと。COP26では、「パリ協定」と「気候変動に関する国際連合枠組条約」の目標達成に向けた行動を加速させるため、締約国が一堂に会して議論する。COPとは「Conference Of the Parties」の略で「コップ」と読む。「Parties」とは条約を結んだ締約国の集まりのことである。

<ディスクロージャーワーキング・グループに関する過去記事>
2021年9月28日『気候変動など非財務の「開示基準」の行方
2021年10月5日「有価証券報告書における気候変動開示の論点
2021年11月12日「ダイナミックマテリアリティとTCFD開示の関係
2021年11月17日「有価証券報告書において任意開示書類を参照することの是非
2021年12月1日「IFRS財団におけるISSBの設立と日本の対応
2021年12月9日『有価証券報告書に「サステナビリティ情報」欄が新設された場合の留意点

こうした中、他国に先行して、着々と気候変動開示のルール整備を進めているのが英国だ。英国政府は、2020年10月に・・・

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2022/01/21 CGコードに続き気候変動開示でも英国が“手本”になる可能性(会員限定)

既報のとおり、昨年(2021年)11月に開催されたCOP26では、IFRS(国際財務報告基準)を策定するIFRS財団が、国際的に統一された気候変動開示のルールをはじめとする「サステナビリティ報告基準」を策定するため、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)の設立を発表したところだ(2021年12月1日のニュース「IFRS財団におけるISSBの設立と日本の対応」)。今年6月の完成を目指すサステナビリティ報告基準はビルディング・ブロック方式(いくつかの構成要素を積み上げる方式)を採用することとなっており、ISSBは土台となる基準を作成するのみで、より詳細・具体的な開示基準作りは各国に委ねられることになる(2021年6月22日のニュース「サステナビリティ開示の将来像」の図参照)。ISSBの動きを受け、各国においては気候変動開示等のルール作りが急ピッチで進んでいる。日本でも、金融庁に設置された企業情報の開示の在り方に関する金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループでは、気候変動を含むサステナビリティに関する情報開示について議論を進めている。

COP26 : 英国グラスゴーで2021年11月1日~12日に開催された「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」のこと。COP26では、「パリ協定」と「気候変動に関する国際連合枠組条約」の目標達成に向けた行動を加速させるため、締約国が一堂に会して議論する。COPとは「Conference Of the Parties」の略で「コップ」と読む。「Parties」とは条約を結んだ締約国の集まりのことである。

<ディスクロージャーワーキング・グループに関する過去記事>
2021年9月28日『気候変動など非財務の「開示基準」の行方
2021年10月5日「有価証券報告書における気候変動開示の論点
2021年11月12日「ダイナミックマテリアリティとTCFD開示の関係
2021年11月17日「有価証券報告書において任意開示書類を参照することの是非
2021年12月1日「IFRS財団におけるISSBの設立と日本の対応
2021年12月9日『有価証券報告書に「サステナビリティ情報」欄が新設された場合の留意点

こうした中、他国に先行して、着々と気候変動開示のルール整備を進めているのが英国だ。英国政府は、2020年10月に「持続可能な投資のためのロードマップ」を公表。2025年をゴールに置いたうえで、それまでの5年間において、TCFDが開示を推奨している4つの要素・11項目(下表参照。詳細は2021年7月7日のニュース「TCFD開示の4要素のうち有報での開示が必須となりそうな2要素とは?」参照)について情報開示を段階的に義務化し、投資家や消費者に気候変動に関する情報提供を行うとしている。既に気候変動開示の義務化はスタートしており、ロンドン証券取引所のプレミアム市場上場企業に対しては2021年1月から、スタンダード市場上場企業に対しては2022年1月から開示義務が課されている(ただし、コンプライ・オア・エクスプレイン ベース)。2022年4月からは対象を英国でビジネスを展開する一定規模以上の企業に、その1~2年後にはさらに対象企業を拡大することも検討されている。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。

【TCFD開示推奨項目(全セクターを対象)】
ガバナンス ① 取締役会の監督体制
② 経営者の役割
戦略 ③ 短・中・長期のリスクと機会の認識
④ 事業、戦略、財務計画への影響
⑤ 様々なシナリオの下での戦略の強靭
リスク管理 ⑥ 気候変動リスクの識別・評価のプロセス
⑦ 気候変動リスクを管理するプロセス
⑧ 統合的なリスク管理の組込み
指標と目標 ⑨ リスクと機会の評価のための指標
⑩ 温室効果ガス排出量と関連リスク
⑪ リスクと機会の管理目標および成果

英国が策定を進めている気候変動開示ルールは「Sustainability Disclosure Requirements (SDR)」と名付けられ、同国は世界各国の“手本”となるような基準作りを目指している。SDRは上述のとおりTCFD勧告をベースとしつつ、現在ISSBが策定を進めているサステナビリティ報告基準も採用する。また、英国は独自のグリーン・タクソノミーの検討も進めており、いずれはSDRとリンクさせる方向だ。

グリーン・タクソノミー : 本来は「分類」を意味する生物学用語。ここでは、持続可能(サステナブル)な経済活動を分類し、列挙したものをいう。

SDRの大きな特徴は、「企業」にとどまらず、歴史的に金融業を強みとしてきた英国らしく「アセットマネジャー・アセットオーナー」「投資商品」も対象とし、それぞれについて気候変動情報等の開示の“完全義務化”を求めている点にある。したがって、アセットマネジャー(運用会社)とアセットオーナー(年金基金等)には、「企業」として自社の気候変動開示を行うとともに、個々の「投資商品」についても開示が求められることになる。投資商品については、気候変動にとどまらず、広くサステナビリティ分野を対象とし、サステナビリティにおけるリスクと機会、影響に関するより詳細な情報開示を求めることが検討されており、この点ではTCFDを超える内容となっている。また、投資商品を“サステナビリティ基準”によって分類し、個人投資家にもサステナビリティへの対応状況が分かりやすいよう「ラベル」を付けることも提案されている。

上述のとおり、ISSBが策定中のサステナビリティ報告基準が2022年6月に公開される見込みであることから、それ以降は各国で気候変動開示関連のルール作りが大きく進展することが予想されるが、英国では既にSDRの政府案が公表されており、2022年第2四半期には具体的な規制の内容についてのパブリックコメントが実施される予定となっている。現時点ではG20諸国の中でも英国がこの分野のトップランナーと言えよう。2025年をゴールに着々と開示ルールの整備を進める英国のSDRは、日本が手本にした同国のコーポレートガバナンス・コード同様、日本における開示ルール作りにも大きな影響を与える可能性がありそうだ。

2022/01/20 WEBセミナー「ISS・グラスルイスの2022年版議決権助言方針」近日配信予定!

新型コロナウイルス禍において会員の皆様に必要な情報をいち早くお届けするべく、近日中に下記のWEBセミナーの配信を予定しております。

テーマ 講 師
ISS・グラスルイスの2022年版議決権助言方針 日本シェアホルダーサービス
研究開発/コンサルティング部 チーフコンサルタント
藤島 裕三(ふじしま ゆうぞう)様

■WEBセミナーの詳細

セミナー
の内容
本セミナーでは、運用会社の議決権行使に大きな影響を与えるISSおよびグラスルイスの2022年版議決権助⾔方針を中心に、両社の議決権助言方針に精通する日本シェアホルダーサービス 研究開発/コンサルティング部でチーフコンサルタントを務める藤島 裕三 様にご講演いただきます。
2022年版ポリシーでは、ISSが、取締役会に女性取締役が1人もいない企業の経営トップの選任議案に反対するという新たな方針を設定(2023年2月以降適用)、既に同様の方針(女性役員が1名)を導入していたグラスルイスは、その対象を東証1・2部上場会社から全上場会社に拡大したほか、2023年以降は、女性役員を「女性取締役」としたうえで、人数ではなく10%という「割合」をプライム市場上場会社に対して求めることとしました。また、ISSは、「純資産の20%以上」に相当する過度な政策保有株式を保有する企業の経営トップの選任議案に反対する方針の適用猶予期間を今年から解除します。本セミナーでは、ジェンダーダイバーシティ、社外取締役、政策保有に関する投資家の議決権行使基準全般についても解説していただきます。
講師の
ご紹介
藤島 裕三(ふじしま ゆうぞう)様
日本シェアホルダーサービス 研究開発/コンサルティング部 チーフコンサルタント
慶應義塾大学大学院法学研究科修了後、1994年に株式会社大和総研入社。企業調査部アナリスト、同社経営戦略研究所経営戦略研究部 主任研究員 、企業経営コンサルティング部 副部長・シニアコンサルタントを経て2014年、EY総合研究所に入社、未来経営研究部 部長 主席研究員に就任。コーポレートガバナンス改善計画の策定支援、敵対的買収対応に関わる体制整備の支援、IRや株主対応に関する改善支援・アドバイザリーなどに従事。2017年9月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員。慶應義塾大学非常勤講師(2003-2005年)、京都大学大学院非常勤講師(2006―2008年)、財務省 財政投融資ガバナンス委員会 委員(2005ー2006年)、経済産業省コーポレート・ガバナンスの対話の在り方分科会 委員(2013年-)。
『コーポレートガバナンス・マニュアル 21世紀日本企業の条件』(中央経済社、第1版 2005年1月、第2版2008年1月):共著、『現代の財務経営1 コーポレートファイナンス』(中央経済社、2009年3月):共著、『ガイダンス コーポレートガバナンス』(中央経済社、2009年10月):共著など著書・論文多数。

2022/01/20 WEBセミナー「野村アセットマネジメントの議決権行使」近日配信予定!

新型コロナウイルス禍において会員の皆様に必要な情報をいち早くお届けするべく、近日中に下記のWEBセミナーの配信を予定しております。

テーマ 講 師
野村アセットマネジメントの議決権行使 野村アセットマネジメント
責任投資調査部シニアESGスペシャリスト
深澤 寛晴(ふかさわ ひろはる)様

■WEBセミナーの詳細

セミナー
の内容
本セミナーでは、国内トップクラスの運用会社である野村アセットマネジメントの責任投資調査部でシニアESGスペシャリストを務める深澤 寛晴 様をお招きし、野村アセットマネジメントの議決権行使の方針、コーポレートガバナンスの考え方、2022年の株主総会を対象とした議決権行使基準の概要について解説していただきます。
同社は他の運用会社に比べて早い時期(毎年11月)に議決権行使基準を改定することから、運用会社全般の動向を把握するうえでも参考になることが期待されます。本セミナーは、2022年の株主総会に向け、運用会社の議決権行使の責任者の声を聞く貴重な機会となります。
講師の
ご紹介
深澤 寛晴(ふかざわ ひろはる)様
1994年 大和総研入社 エコノミスト、通商産業省(現在の経済産業省)出向等を経て2001年よりジャーディン フレミング投信投資顧問(現在のJ.P.モルガン・アセット・マネジメント)にて営業支援。2004年より大和総研にてファイナンシャル・アナリスト、コンサルタント。2014年よりEY総合研究所。2017年より現職(野村アセットマネジメント 責任投資調査部シニアESGスペシャリスト)。

2022/01/20 補充原則3-1②の英文開示で「必要とされる情報」の意味

東京証券取引所が2022年1月11日に公表した「上場会社による新市場区分の選択結果」によると、プライム市場を選択した会社は1,841社に上る。これは2022年1月11日時点の全上場会社3,777社の約半数(49%)に相当する。1,841社のうちプライム市場の上場維持基準に適合していない296社をはじめとして、「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」というプライム市場のコンセプトに現時点ではフィットしない会社も相当数プライム市場を選択したものと思われる。このように“背伸び”をした会社であっても、2022年4月4日の市場再編日に向けて着々と準備を進めているのが、・・・

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2022/01/20 補充原則3-1②の英文開示で「必要とされる情報」の意味(会員限定)

東京証券取引所が2022年1月11日に公表した「上場会社による新市場区分の選択結果」によると、プライム市場を選択した会社は1,841社に上る。これは2022年1月11日時点の全上場会社3,777社の約半数(49%)に相当する。1,841社のうちプライム市場の上場維持基準に適合していない296社をはじめとして、「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」というプライム市場のコンセプトに現時点ではフィットしない会社も相当数プライム市場を選択したものと思われる。このように“背伸び”をした会社であっても、2022年4月4日の市場再編日に向けて着々と準備を進めているのが、「英文開示」だ。英文開示なくして「グローバルな投資家との建設的な対話」は不可能であるため、2021年6月に実施されたコーポレートガバナンス・コードの改訂では補充原則3-1②の後段に下記の赤字部分が追加され、プライム市場上場会社に英文開示が求められることとなった。

補充原則3-1② 上場会社は、自社の株主における海外投資家等の比率も踏まえ、合理的な範囲において、英語での情報の開示・提供を進めるべきである。
特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべきである。

実際、東証が2022年1月17日に公表した「英文開示実施状況調査結果(2021年度) 」によると、プライム市場選択会社のうち2021年12月末時点で英文開示を実施している会社は85.8%に上っており、2020年12月末時点から6%増加している。さらに、英文開示を開始する予定の会社も含めると88.9%に達する。全市場平均(下の右側のグラフ)と比べると、プライム市場選択会社は「グローバルな投資家との建設的な対話」に向け積極的に英文開示に対応しようとしていることが分かる。

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この調査に対してはプライム市場選択会社のうち外国会社1社を除く全社(1,840社)が回答していることから、この調査結果がそのままプライム市場上場会社における補充原則3-1②後段のコンプライ率となりそうだが、必ずしもそうとは言えない。なぜなら、上記「英文開示実施状況調査結果(2021年度)」では、下記の開示資料のいずれかを英文開示していれば英文開示を「実施している」ものとしてカウントしているからだ。
・決算短信
・適時開示資料(重要事実)
・株主総会招集通知
・コーポレート・ガバナンスに関する報告書
・有価証券報告書
・IR説明会資料
・その他の英文資料

東証が2021年8月30日に公表した「英文開示に関する海外投資家アンケート調査結果」(調査期間:2021年7月1日~2021年8月13日、回答数:54件(うち機関投資家48件))によると、海外投資家が特に英文開示を求めているのは決算短信(「必須」「必要」の両回答を合わせると80%)とIR説明会資料(同74%)であり、それらに比べるとESG報告書(同59%)や株主総会招集通知(同56%)などはそれほど重要視されていないことが分かる(海外投資家アンケートについては2021年9月2日のニュース「英文開示で海外投資家を満足させるためのチェックリスト」を参照)。ちなみに、「英文開示実施状況調査結果(2021年度)」によると、決算短信およびIR説明会資料の英文開示実施率(開始予定含む)はそれぞれ73.3%(前年末比+11.0ポイント)、67.1%(前年末比+6.7ポイント)と上昇しているものの、上述の88.9%には遠く及ばない。決算短信は15.6%(=88.9%-73.3%)、IR説明会資料は21.8%(=88.9%-67.1%)の会社が英文開示をしていないにもかかわらず、他の開示資料で英文開示をしているものが1つでもあれば「英文開示を実施している(実施予定も含む)」の88.9%にカウントされていることになる。

海外投資家のニーズの高い開示資料を英文化せずに、ニーズの低い開示資料の英文化にリソースを費やせば、海外投資家から「本当に対話をする気があるのか」との疑念を持たれかねない。また、英文での開示が日本語での開示日よりも大幅に遅れる(例えば3か月後)のも同様だ。プライム市場選択会社にとっては、補充原則3-1②後段の「開示書類のうち必要とされる情報」の意味(開示資料の適切な優先順位付け、英文化の迅速さ)を正しく理解できているのかを自問することが「グローバルな投資家との建設的な対話」の第一歩と言えそうだ。