2021/07/30 2021年7月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
英国では、TCFDの開示フレームワークに即した気候変動開示を2025年までに段階的に義務化するという取り組みが進んでおり、プレミアム市場上場企業に対しては既に2021年から開示が義務付けられています(問題文は正しいです)。日本では、TCFDに関してようやく有価証券報告書での法定開示の議論が始まったところであり、周回遅れの感は否めません。

こちらの記事で再確認!
2021年7月1日 気候変動への意識は高い日本企業、開示では“周回遅れ”に(会員限定)

2021/07/30 2021年7月度チェックテスト

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【問題1】

すでに英国ではプレミアム市場上場企業にTCFDの開示フレームワークに即した気候変動開示を義務付けている。


正しい
間違い
【問題2】

CG報告書で参照方式(CG報告書上には詳細を記載せず、詳細を記載したページのURLなどを記載して、CG報告書の利用者に当該URLのページを参照することを促す方式)を採用した上場会社が、参照先での開示内容に変更を加えた場合、CG報告書の記載内容に変更がないのであれば、混乱を避けるためCG報告書を更新すべきではない。


正しい
間違い
【問題3】

有価証券報告書でTCFDの開示フレームワークに基づき気候変動リスクを開示している上場会社はまだないが、これから増えていくことが予想される。


正しい
間違い
【問題4】

上場会社で、相談役・顧問制度を廃止する定款変更の株主提案議案に4分の1以上の賛成票が投じられたケースはいまだない。


正しい
間違い
【問題5】

OECD(経済協力開発機構)が検討中の法人税収を各国に配分する新たな課税ルールである「デジタル課税」はGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)など世界各国で莫大な売上・利益を得ているにもかかわらず各国に適切に税金を払っていないデジタル系企業に対する課税強化策であり、デジタル系でない企業には関係がない。


正しい
間違い
【問題6】

2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードには「サステナビリティ委員会の設置」「有価証券報告書の株主総会開催日前提出」「筆頭独立社外取締役の設置」は盛り込まれていない。


正しい
間違い
【問題7】

監査役設置会社が監査等委員会設置会社に移行する場合、監査役だけでなく取締役もいったん退任することになる。


正しい
間違い
【問題8】

プライム市場上場会社が経過措置適用期間中にプライム市場の上場維持基準を満たすことができなくなっても、無条件でスタンダード市場に移行できる。


正しい
間違い
【問題9】

利益剰余金がマイナスの場合に、その他資本剰余金から振り替えることで、利益剰余金を補填することができる。


正しい
間違い
【問題10】

同一事案で薬機法と景表法の双方に違反していた場合、景表法の課徴金に上乗せして薬機法の課徴金を二重に課せられる可能性がある。


正しい
間違い

2021/07/29 【失敗学第86回】アジア開発キャピタルの事例(会員限定)

概要

投資事業を営むアジア開発キャピタル(東証第2部)の子会社で蓄電池の循環取引が行われ売上が水増しされていた(2019年3月期は、連結売上が実際には517百万円のところ、循環取引により1,630百万円に水増しされていた)。

経緯

アジア開発キャピタルが2021年6月22日に公表した「特別調査委員会の調査報告書」(以下、本調査報告書)および『本日付東証適時開示「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」についての補足』(以下、本調査報告書補足)によると、一連の経緯は次のとおり。

2016年
3月11日:アジア開発キャピタルは、過去長期にわたり継続して経常損失を計上し続けており、継続企業の前提に関する注記も継続的に付されている状況にあった。そのような中、アジア開発キャピタルは質屋事業および古物買取販売事業へ進出するため、子会社のエス・エー・コンサルティング(代表取締役はアジア開発キャピタルの元代表取締役社長の網屋氏)の仲介によりトレードセブンの35%の株式を取得。

2017年
3月31日:アジア開発キャピタルがトレードセブンの持分を追加取得して同社を連結子会社にする。
11月28日:トレードセブンにおいて蓄電池取引が開始される。

2021年
1月31日:アジア開発キャピタルの網屋取締役(元代表取締役、元トレードセブン代表取締役)が“健康上の理由”により取締役を辞任。
3月23日:アジア開発キャピタルが証券取引等監視委員会事務局開示検査課(開示検査課)より立ち入り検査を受ける。
4月16日:アジア開発キャピタルが、同社の元取締役2名が子会社のトレードセブンを通じて自身が関係する複数の会社との間に不可解かつ不適切な取引を行っていたことが社内調査によって判明したとして、第三者委員会(4人の委員で構成され、うち3人が同一法律事務所)の設置を公表(リリースはこちら)。
4月13日:アジア開発キャピタルが、会計監査人の異動(アスカ監査法人の退任)および一時会計監査人として監査法人アリアの選任を公表(リリースはこちら)。
4月28日:アジア開発キャピタルが、調査対象となった元取締役2人の代理人から「①第三者委員会の4人の委員のうち3人の委員が同一の法律事務所に所属している場合、および、②本件疑義に関連して当社が行っている行為に対する当社元取締役からの仮処分命令申立手続に、仮に旧委員会の委員が関与している(いた)場合は、日本弁護士連合会が公表している「企業等不祥事に関する第三者委員会ガイドライン」の趣旨に反する」という旨の通知を受領したことから、今後元取締役への調査を円滑に実施するために第三者委員会を解散し、あらたに特別調査委員会を設置したことを公表(リリースはこちら)。
5月13日:アジア開発キャピタルが2021年3月期連結決算発表を延期することを公表(リリースはこちら)。
6月14日:アジア開発キャピタルが第101回定時株主総会を延期するとともに、定時株主総会招集のための基準日を2021年7月1日に設定することを公表(リリースはこちら)。
6月22日:アジア開発キャピタルが特別調査委員会の調査報告書を公表。

内容・原因・改善策

アジア開発キャピタルが2021年6月22日に公表した「特別調査委員会の調査報告書」によると、特別調査委員会の調査により判明した事実ならびに原因および当該不正を受けて策定した改善策は次のとおりとされている。

循環取引
内容 2017年11月から2019年4月までの間に、子会社のトレードセブン等が関与していた蓄電池取引が、実際には蓄電池の現物の納品はなされておらず、単に資金が環流しているだけの取引(いわゆる資金循環取引)であった(最終消費者は西日本高速道路サービス・ホールディングスと説明されていたが、これは虚偽の説明であり、法人名が無断使用されていただけであった)。アジア開発キャピタルの連結売上高に占める蓄電池売上高の比率は、2018年3月期では53.8%、2019年3月期では68.2%を占めるに至っていた。
原因 D-LIGHTによる提案
D-LIGHTは本件蓄電池取引が行われた当時において、金融機関からの借入が困難な事情があり、蓄電池取引を介在させた資金調達方法を計画し、関係者およびその知人等のルートで資金提供者を募ることとした。そして、D-LIGHTは以下のような商流を提案し、商流参加企業の募集を行った。
① 発注は、最終消費者西日本高速道路サービス・ホールディングス(下図のNX)から商流川上に向かって流れる
② 参加企業は製造会社が受注商品の製造に必要な資金を前渡金として支払う
③ 製造会社で受注商品の完成後に伝票上では納品は商流川下に向かって流れる
④ 実際の対象商品の現物は製造会社から最終消費者西日本高速道路サービス・ホールディングスに送られる(直送取引)
⑤ 代金支払は西日本高速道路サービス・ホールディングスから商流川上に向かって順次行われる。
この結果、参加企業は②の前渡金支払額と、⑤の販売代金入金額の差額が利益となる。
57378a
NX:西日本高速道路サービス・ホールディングス
DL:D-LIGHT
T7:アジア開発キャピタルの子会社トレードセブン
IA:インクリージング・アソシエイツ
KS:一般社団法人日本中小企業金融サポート機構
GA:合同会社アドバイザー
MC:エム・シー・シー・インターナショナル

しかし、実際には西日本高速道路サービス・ホールディングスは法人名を無断で利用されただけであり、下図のとおり商流参加企業間で資金を循環させていただけに過ぎなかった。

57378b
取引先であるD-LIGHTの虚偽の説明
D-LIGHTは取引開始時に、西日本高速道路サービス・ホールディングスとD-LIGHT間の偽の基本契約書、D-LIGHTの取扱い製品として蓄電池が紹介されているD-LIGHTのパンフレット等を髙瀬氏(元アジア開発キャピタル取締役、元トレードセブン代表取締役)、谷口氏(元トレードセブン代表取締役、元一般社団法人日本中小企業金融サポート機構代表理事、元インクリージング・アソシエイツ代表取締役)に提示し、本件蓄電池取引が、トレードセブンの資金繰りのために組成された蓄電池売買を装った取引であること(従って、蓄電池現物の製造と西日本高速道路サービス・ホールディングスへの納入は存在しないこと)を偽り、あたかも現実に蓄電池の製造、売買が存在するかのような説明を行っていた。

蓄電池原物を誰一人として確認していなかった
髙瀬氏は、D-LIGHTに対し、蓄電池製造会社の特定を依頼し、また、西日本高速道路サービス・ホールディングスに対する蓄電池取引の直接確認を申し出たが、前者の依頼については、製造会社が取引によって変動し特定できないという理由で、後者の申出に対しては、西日本高速道路サービス・ホールディングスとの取引に支障が出るおそれがある等の理由で、いずれも断られた。
会計処理および財務報告の誤謬のリスク、資金回収リスク、反社・不正関与回避リスクを回避する観点から、蓄電池現物の存在の確認は必須であったが、かかるリスクには思いが至らず、現物の確認を怠った。
また、アスカ監査法人は特別調査委員会の質問に対して、「網屋氏(元アジア開発キャピタル代表取締役、元トレードセブン代表取締役)・髙瀬氏(元アジア開発キャピタル取締役、元トレードセブン代表取締役)に蓄電池現物を見たいと要請したが、直送なので蓄電池現物は見られないとの説明を受けた。そのため2018年2月21日にD-LIGHTの代表取締役に蓄電池の現物を見たいと要請し、承諾を得たものの、その後D-LIGHTの代表取締役との連絡は途絶え蓄電池現物確認の要請は事実上拒否された。」と回答している。

トレードセブンの担当取締役の認識不足
本件蓄電池取引は最終的にトレードセブンが経済的に不利益を被ることになるが、髙瀬氏、谷口氏は、D-LIGHTがそのような不合理なことを行うとは思っておらず、本件蓄電池取引に対し、疑いの目を持つことができなかった。本件蓄電池取引を行うにあたり、髙瀬氏、谷口氏はD-LIGHT経営陣との面談や、D-LIGHTの財務力の裏付けとなる資料および西日本高速道路サービス・ホールディングスとの取引関係の存在を裏付ける資料を要求するなど、一定程度、取引の実態把握に努めたことはうかがえる。しかしながら、最終的には、蓄電池の製造会社や現物の存在を確認しないまま、本件蓄電池取引を開始した。D-LIGHTの説明が巧妙であったにしても、その説明を鵜呑みにすることなく、なお、取引の実態把握のための追加的調査を行うことが不可能であったわけではない。かかる追加的調査を行うことで、取引の実態が明らかになる可能性があったが、髙瀬氏、谷口氏は、それを行わなかった。

アジア開発キャピタルの内部統制(子会社管理体制)上の不備
本件蓄電池取引については、2017年11月28日のトレードセブン取締役会において「高額商品仕入れの件」の承認決議が、2017年12月8日のアジア開発キャピタル取締役会において「西日本高速道路サービス・ホールディングス向けLED 照明器具・蓄電池仕入資金」のための融資枠拡大の承認決議が行われている。しかしながら、いずれの取締役会においても、本件蓄電池取引の可否について、取引の内容に踏み込んだ実質的審理は行われず、監督機能が発揮されることはなかった。
また、アジア開発キャピタル取締役会においては、そもそも本件蓄電池取引の実行の可否は承認決議の対象とはされなかった。付議されたのは、取引の実行を前提とする融資枠の拡大にすぎない。
本件蓄電池取引は、トレードセブンが初めて行う蓄電池の売買であり、かつ、アジア開発キャピタルにとっても、2018年3月期の連結財務諸表における売上高の53.8%、2019年3月期の連結財務諸表における売上高の68.2%を占有するに至る重要な取引である。そうであれば、アジア開発キャピタル取締役会に、その実行の可否自体が決議議案として付議されるべきであった。

不十分な監査
監査役監査および内部監査とも、本件蓄電池取引の実態解明や会計処理の是正について有効に機能しなかった。
監査役は、商流や製造会社が明らかでないことにつき懸念を有したにもかかわらず、結局のところ担当役員を信頼し、取締役会の場で調査の必要性を訴えることも、監査役会で問題提起することもなければ、自ら個別に担当取締役に対し質問し証憑を要求するなど、事実関係解明のための調査を行うこともなかった。

再発防止策 1 経営者リテラシーの向上
(1)会社事業上のリスクおよび役員の職責に対する認識の徹底

今回の不祥事の原因の一つは、会社役員のリスクに対する認識が甘かったことである。役員はその点を反省する必要がある。アジア開発キャピタルは、役員に対し反省と自覚を促すため、アジア開発キャピタルおよび子会社の事業上のリスクの所在やリスク回避の方法、手段、役員が果たすべき職責に関する研修を実施すべきである。
(2)一般的会計不正事例に関する知識の補充
本件蓄電池取引は典型的な資金循環取引である。資金循環取引は、不正会計の手段としては目新しいものではなく、過去、幾度となく、その不正が摘発され、会社決算上注意すべきとして警鐘が鳴らされていた。役員に、あらかじめ資金循環取引の知識があれば、その観点から本件蓄電池取引を調査、観察することで、本件蓄電池取引への関与および不適切な会計処理を回避し得た可能性は高い。
資金循環取引等の典型的会計不正事例に関する知識の欠如が原因で、不適切な会計処理を見過ごすことにならないよう、役員に対して、アジア開発キャピタルおよび子会社が行う取引に関連して、最低限理解しておくべき、会計不正事例に関する研修を実施する。
2 内部統制体制の再構築
(1)社内における内部統制体制の構築

ア 既存取引の見直し
イ 新取引についての調査および検討の徹底
①新取引を行う前の調査および検討の徹底
②新取引開始後のモニタリングの実施
(2)取締役会の監督機能の向上
ア 取締役会への議案付議と十分な情報の提供
① 重要案件のADC 取締役会付議
② 議案についての十分な情報提供
イ 取締役会構成の見直し
① ADC 取締役会の構成
② 子会社取締役会構成
(3)監査体制の整備
ア 監査役監査の強化
① 誠実な職務執行
② 監査能力の向上
③ 社外監査役の知見の活用
④ 監査役会の運営方法の見直し
⑤ 会計監査人および内部監査室との連携
⑥ 監査人員の強化
イ 内部監査の強化
① 監査方法の見直し
② 監査能力の向上
③ 会計監査人・監査役との連携
④ 監査人員の強化
(4)情報および権限集中の排除
ア 役員の担当業務の分散
イ 独立した会計監査窓口の設置
(5)不祥事の早期発見のための取組
アジア開発キャピタルグループ全体の役職員に内部通報制度の存在および意義をあらためて周知、徹底する。
また、コンプライアンス委員会が行うコンプライアンス教育と合わせて、役職員に対するアンケート調査を実施するなど不祥事の早期発見のための取組を行うことが望ましい。
<この失敗から学ぶべきこと>

アジア開発キャピタルが2021年6月22日に公表した「特別調査委員会の調査報告書」では、社名や氏名が仮名になっているのですが、同社が同日に公表した「本日付東証適時開示「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」についての補足の3枚目【別紙】特別調査委員会「調査報告書」における仮名と実名の対応表」によると、実名が分かるようになっているのが目を引きます。実名を分かるようにした理由としてアジア開発キャピタルは、「現役役員等及び元役員等が責任を自覚して再発防止を徹底するため、及び、同様の循環取引を一般に予防する観点から当社が社会的責任を果たすため」と説明しています。

本調査報告書補足に、アジア開発キャピタルが2021年3月23日に本循環取引を含む一連の取引に関して、金融庁証券取引等監視委員会事務局開示検査課(開示検査課)より立ち入り検査を受けた際に、アスカ監査法人の担当会計士2名が「会社を守るために、当局のこれら調査に対して積極的に協力しない方が良い。」との助言を行ったという衝撃的な記述があります。その真偽が気になるところです。

本件では、「現物を見せてくれないこと」「最終消費者へのアクセスを禁じられること」「モノの流れに加わることはなく、書類のやりとりだけで売上が計上されること」「川下企業からの注文が確定する前に川上企業から前渡金請求書を受けること」「物品受領書や請求書が先日付で発行されること」「契約書にはすべてのリスクを商流発案企業が負う旨規定されていること」といった典型的な循環取引の特徴が観察されるにもかかわらず、誰一人として循環取引の可能性排除のためにより踏み込んだ調査を行う者はいませんでした。これだけ様々な企業が循環取引に巻き込まれていてもなお新たな被害企業が出るのは、①被害企業の循環取引に関するリテラシーの低さ、②どの会社もまさか自分の会社でそのような不正が起きているとは思いもしないことが原因と思われます。上場会社では、上記の特徴が自社の取引でも見受けられないか、これを機に取引の再点検をすべきです。

なお、本件では当初の第三者委員会の委員構成に調査対象者から疑義が出され、いったん第三者委員会を解散し、新たに特別調査委員会を設置することとなりました。こういったことがあるとただでさえ時間的制約がある中での調査にかける時間がますます不足することになるため、当初の委員選定は慎重に行いたいものです。

2021/07/28 【役員会 Good&Bad発言集】薬機法の広告規制

東証一部上場のA社では、事業の多角化を進めるため健康食品事業に乗り出すことにしました。一般食品に分類される健康食品を試験的に売り出してからしばらくして開催されたA社の取締役会で、健康食品のインターネット広告が話題にのぼり、ある取締役が「私がインターネットでその商品の宣伝ページを確認したところ、『高血圧の人にぴったり!』と記載されていた。これは薬を連想させる広告表現であり、薬機法の規制がかかってしまい、不適切な広告になるのではないか。社内で誰もチェックしていないのか。」と発言しました。これに対して、次の3人が発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「広告の文言をどうするかは広告代理店に任せていますので、社内で薬機法のチェックまでは実施していません。第一、その広告はプラットフォーマーの審査を通っており、それは薬機法をクリアした適法な広告であることと同義と言え、何か問題があるとは思えません。」

取締役B:「プラットフォーマーの審査を通過したことイコール薬機法クリアという考え方はコンプライアンスの観点からは不十分ではないでしょうか。」

取締役C:「当社は製薬メーカーではありませんし、当社が製造販売しているのは健康食品であり、いわゆる『薬』ではないので、薬機法の対象にはならないと考えます。」

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2021/07/28 【役員会 Good&Bad発言集】薬機法の広告規制(会員限定)

<解説>
健康食品にも適用され得る薬機法66条1項

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の広告が虚偽であったり誇大なものであったりした場合には、国民の保健衛生上、大きな影響を与えるおそれがあることから、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、薬機法)66条で、医薬品等の広告規制が定められています。

薬機法66条1項(誇大広告等)
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

薬機法66条には「何人も」とあることから、虚偽広告・誇大広告に関わっていた者(個人・法人を問わず)全員が同条の規制対象になりうる、非常に適用範囲の広い条項であり、注意が必要です。

薬機法66条1項は、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品」を対象とする定めですが、ここで「医薬品」は薬機法2条1項で次のように定義されています。

薬機法2条1項
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

その上で、「人が経口的に服用する物が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項第2号又は第3号に規定する医薬品に該当するか否かは、医薬品としての目的を有しているか、又は通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうかにより判断することとなる。」(「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日付け薬発第476号、最終改正令和2年3月31日)別紙の「医薬品の範囲に関する基準」より)というように、広く解釈されています。さらに「医薬品の範囲に関する基準」では、「通常人が同項第2号又は第3号に掲げる目的を有するものであると認識するかどうかは、その物の成分本質(原材料)、形状(剤型、容器、包装、意匠等をいう。)及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量並びに販売方法、販売の際の演述等を総合的に判断すべきものである。」とされています。それに加えて、「医薬品の範囲に関する基準」では、「効能効果」について「その物の容器、包装、添付文書並びにチラシ、パンフレット、刊行物、インターネット等の広告宣伝物あるいは演述によって、次のような効能効果が表示説明されている場合は、医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなす。」として、下記のとおり細かく規定されています。

(一) 疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
(例) 糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に、胃・十二指腸潰瘍の予防、肝障害・腎障害をなおす、ガンがよくなる、眼病の人のために、便秘がなおる等
(二) 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果
ただし、栄養補給、健康維持等に関する表現はこの限りでない。
(例) 疲労回復、強精(強性)強壮、体力増強、食欲増進、老化防止、勉学能力を高める、回春、若返り、精力をつける、新陳代謝を盛んにする、内分泌機能を盛んにする、解毒機能を高める、心臓の働きを高める、血液を浄化する、病気に対する自然治癒能力が増す、胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸、病中・病後に、成長促進等
(三) 医薬品的な効能効果の暗示
(a) 名称又はキャッチフレーズよりみて暗示するもの
(例) 延命○○、○○の精(不死源)、○○の精(不老源)、薬○○、不老長寿、百寿の精、漢方秘法、皇漢処方、和漢伝方等
(b) 含有成分の表示及び説明よりみて暗示するもの
(例) 体質改善、健胃整腸で知られる○○○○を原料とし、これに有用成分を添加、相乗効果をもつ等
(c) 製法の説明よりみて暗示するもの
(例) 本邦の深山高原に自生する植物○○○○を主剤に、△△△、×××等の薬草を独特の製造法(製法特許出願)によって調製したものである。等
(d) 起源、由来等の説明よりみて暗示するもの
(例) ○○○という古い自然科学書をみると胃を開き、欝(うつ)を散じ、消化を助け、虫を殺し、痰なども無くなるとある。こうした経験が昔から伝えられたが故に食膳に必ず備えられたものである。等
(e) 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの
(例) 医学博士○○○○の談
「昔から赤飯に○○○をかけて食べると癌にかからぬといわれている。………癌細胞の脂質代謝異常ひいては糖質、蛋白代謝異常と○○○が結びつきはしないかと考えられる。」等

つまり、単なるサプリメントであったとしても、容器や広告などで「高血圧を予防」とうたってしまうと医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなされ、「その物の成分本質(原材料)、形状(剤型、容器、包装、意匠等をいう。)及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量並びに販売方法、販売の際の演述等を総合的に判断」した結果、「医薬品」と認定される可能性があることになります。その結果、「単なるサプリメントでグレーゾーンを攻めた広告」のはずが、「医薬品の誇大広告」と認定されて、薬機法66条1項に違反するという事態になりかねません。

薬機法66条等に関する課徴金制度がスタート

2021年8月1日から薬機法66条等に関して課徴金制度および措置命令制度がスタートします(薬機法の課徴金制度および措置命令制度の詳細は2021年7月27日のニュース「広告コンプラ体制の再点検必須 来月から薬機法の課徴金制度が適用開始」を参照)。これを機に薬機法66条等に関して行政の取締りが活発化することが予想され、薬機法の適用可能性がある事業を有する企業においては、コンプラ体制が十分かどうか、再度点検しておくべきと言えます。

その際に参考にしたいのがステラ漢方事件で従業員が逮捕されたソウルドアウトが策定した「法令順守のための取り組みについて」です。広告会社側の視点で取りまとめられたものですが、同業の広告会社だけでなく、広告主やメディア側でも参考になるものと言えます。

■中立性を保ち、公正な審査を行うための組織体制
・中立性を保ち、公正な審査ができるように、売上に責任を持たない独立部門「審査本部」にて審査を実施
・「審査本部」が公正な審査を行い、その機能を十全に果たしているか、の監査については、別ディビジョンに設置している「法務ガバナンスグループ(審査ポリシー管掌)」が定期的に実施
■「社内審査を通過した広告のみ入稿」の徹底
・美容・健康商材について、入稿までの審査ルールを定めて全社展開
・入稿オペレーションチームは、社内審査を通過した広告でないと入稿できない
・入稿後も定期的な抜き打ちチェックが行われる
■懲戒規程を盛り込んだ広告審査規程の施行
・広告審査規程を施行。これに違反した場合「懲戒規程に準じて懲戒される」と明記して、不正への抑止力とする
■薬機法・健増法、景表法+自社基準でチェック
・薬機法・健増法観点のチェックにおいては、指摘事項として多い項目はもちろん、些細と思われがちな内容も見過ごさないように徹底
・景表法観点においても、体験談、捏造、ドメイン、数値根拠、注釈の位置内容等の自社基準を設けてチェック
■コンサルティング会社の監修によるガイドライン作成、定例会の実施
・社外専門家の意見を聞き、審査の公平性・中立性を常に保てる体制とし、法例、通達等の更新情報にも備えている
・薬事コンサルティング分野で定評のあるコンサルティング会社との週次定例会を開催。
・コンサルティング会社の監修により、社内審査ガイドラインを作成し全社展開
■分野ごとに分けた5冊の社内ガイドラインを作成し全社展開
・化粧品等(医薬部外品・医薬品含む)、 健康食品、 機能性表示食品、 雑貨(美容・健康)、 エステの5分野に分けて社内ガイドラインを作成、全社展開
・それぞれ約70ページ、NG例を交えて解説。全社でファイル共有し、日々の審査を踏まえて追記・更新しながら運用
・事業部社員全員が研修を受けられるよう、研修内容を動画にして全社展開
■社内試験の実施
・社内試験を作成して実施。不合格者へは再受験を促し、2020年12月末までに208名が合格
■取引前の企業審査・商材審査の実施
・他社による出稿を含めて取引前の掲載内容を機械的に収集し、確認できる広告を抽出。その後、目視にて自社基準での審査を行い、重度認定される違反がある場合には取引を認めない
■その他
・広告ページを管理できないアフィリエイトメディアとは取引をしない
・メディアによって審査基準は異なるが、社内の基準は社内ガイドラインに従う

ソウルドアウトは、健康食品に係る広告業界の実情から発生しうる「グレーゾーン」を一定程度緩やかに解釈した内容の広告(いわゆる「攻めた」広告)を制作・運用する動機等が内在的に存在することは否定できないとしつつ、こうした動機と完全に切り離された審査体制を設け、更に、審査部門が公正な審査を実施し、正常に機能しているかの監査を、別部署である法務ガバナンスチーム(審査ポリシー管掌)が定期的に実施するというチェック体制を整備しており、まさにCOSO「内部統制の統合的フレームワーク」が示す“three lines of defense”の概念を意識したリスクマネジメント体制に取り組んだものと評価できます。

COSO : 米国の「Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission」(トレッドウェイ委員会組織委員会)の略称。 COSOフレームワークは内部統制のフレームワークとして世界標準となっている。
three lines of defense : ①現場、②間接部門、③内部監査部門といった独立した3つの部門が牽制しつつそれぞれの役割を発揮することで、不正や誤謬の発生を防止するという考え方。「3線ディフェンス」とも言われる。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役B:「プラットフォーマーの審査を通過したことイコール薬機法クリアという考え方はコンプライアンスの観点からは不十分ではないでしょうか。」
コメント:実際には『高血圧の人にぴったり!』といった明白なNGワードを広告代理店やプラットフォーマーが見逃すことは考えにくいのですが、それはさておき、薬機法66条1項には「何人も」とあることから、たとえ攻めた広告のアイデアを考えたのが広告業者であっても、広告主は薬機法66条1項の責任を負わされることになります。そうであれば、薬機法チェックをプラットフォーマーに任せるのではなく、広告主としても主体的に薬機法チェックを実施する体制を整備・運用する必要があります。以上よりBの発言はGoodです。

BAD発言はこちら

取締役A:「広告の文言をどうするかは広告代理店に任せていますので、社内で薬機法のチェックまでは実施していません。第一、その広告はプラットフォーマーの審査を通っており、それは薬機法をクリアした適法な広告であることと同義と言え、何か問題があるとは思えません。」
コメント:薬機法チェックをプラットフォーマーや広告代理店に任せるのではなく、広告主としても主体的に薬機法をクリアするためのチェック体制を整える必要があるので、Aの発言はBad発言です。

取締役C:「当社は製薬メーカーではありませんし、当社が製造販売しているのは健康食品に過ぎず、いわゆる『薬』ではないので、薬機法の対象にはならないと考えます。」
コメント:健康食品であっても、「医薬品としての目的を有しているか、又は通常人が医薬品としての目的を有するものであると認識するかどうか」により、薬機法上の医薬品と認定され、薬機法の規制を受けるリスクがあります。取締役Cの発言は薬機法の適用対象を正しく理解していないBad発言です。