2021/07/08 “アクティビスト・リスク”を回避する特別委員会

6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)のうち、「取締役会等の責務」に関する基本原則4では、「考え方」において、「支配株主を有する上場会社」すなわち上場子会社等に対して「少数株主の利益を保護するためのガバナンス体制の整備」を求めている。具体的には今回新設された補充原則4-8③で示されている2つの方策、①独立社外取締役3分の1以上(プライム市場は過半数)の選任、あるいは②独立性を有する者で構成された特別委員会の設置、のいずれかを実施することが必要になる。

【補充原則4-8③ 】
支配株主を有する上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべきである。

金融庁フォローアップ会議の資料「グループガバナンス/株式の保有構造等」によると、3分の1以上の独立社外取締役を選任している上場子会社は15%にとどまっており、過半数となると1.6%に過ぎない(6ページ参照)。このような実態に鑑みると、プライム市場上場会社を含む上場子会社等の多くは、特別委員会の設置による補充原則4-8③のコンプライを検討しているものと思われる。

では、今回のCGコード改訂以前における特別委員会の先行設置事例はどれほどあるのだろうか。当フォーラムの調査によると、・・・

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2021/07/08 “アクティビスト・リスク”を回避する特別委員会(会員限定)

6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)のうち、「取締役会等の責務」に関する基本原則4では、「考え方」において、「支配株主を有する上場会社」すなわち上場子会社等に対して「少数株主の利益を保護するためのガバナンス体制の整備」を求めている。具体的には今回新設された補充原則4-8③で示されている2つの方策、①独立社外取締役3分の1以上(プライム市場は過半数)の選任、あるいは②独立性を有する者で構成された特別委員会の設置、のいずれかを実施することが必要になる。

【補充原則4-8③ 】
支配株主を有する上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべきである。

金融庁フォローアップ会議の資料「グループガバナンス/株式の保有構造等」によると、3分の1以上の独立社外取締役を選任している上場子会社は15%にとどまっており、過半数となると1.6%に過ぎない(6ページ参照)。このような実態に鑑みると、プライム市場上場会社を含む上場子会社等の多くは、特別委員会の設置による補充原則4-8③のコンプライを検討しているものと思われる。

では、今回のCGコード改訂以前における特別委員会の先行設置事例はどれほどあるのだろうか。当フォーラムの調査によると、特別委員会の設置を開示している事例として下表の上場子会社が把握されている(なお、設置していることを開示していない上場子会社等もあると思われるため、全ての上場子会社等における設置割合などの定量情報は不明)。

社名 親会社 委員会名 構成
大日本住友製薬 住友化学 グループ会社間取引利益相反監督委員会 独立社外取締役3名
蝶理 東レ ガバナンス委員会 独立社外取締役2名と社長
トーエネック 中部電力 親子取引審議委員会 独立社外役員を中心に構成
SCSK 住友商事 ガバナンス委員会 利益相反取引を審議する際は独立社外取締役5名
(指名・報酬を審議する際は会長と社長が加わる)

補充原則4-8③を踏まえると、独立社外取締役3名のみで構成される大日本住友製薬の「グループ会社間取引利益相反監督委員会」は、模範的な“コンプライ事例”になり得ると言えるだろう。蝶理の「ガバナンス委員会」は社内取締役である社長が「支配株主からの独立性を有する者」と言えるかどうかが判断の分かれ目となるが、親会社である東レと資本・事業両面で関係が深い会社の業務執行者である以上、独立者と定義付けるのは困難であると考えられる。SCSKの「ガバナンス委員会」は通常、指名・報酬の任意委員会として機能する一方で、利益相反取引について審議する際には会長・社長をメンバーから除くとしており、コンプライに相当する事例の一つに挙げられる。

上述の通り、補充原則4-8③は、独立社外取締役3分の1以上(プライム市場は過半数)の選任、あるいは②独立性を有する者で構成された特別委員会の設置、のいずれか一方を実施すればコンプライの条件を満たす。しかし、機関投資家にとっては必ずしもこれで十分ではなく、①と②の両方を要求する声も少なくないことは認識しておくべきだろう。例えば、アクティビストとして著名なオアシス・マネジメントは、改訂CGコードのパブリックコメントにおいて以下の意見を提出している。

・補充原則4-8③において、「3分の1」を「過半数」、「プライム市場上場会社においては過半数」を削除、「または」を「かつ」 に変更して以下とすることを提案します。上場子会社の独立社外取締役を過半数にしない限りは、親会社との利益相反を実質的には疎か形式的においてさえ解消出来ません。過半数でなければ意味のない課題に対して、プライム市場は過半数だが、その他市場は3分の1以上と差を設ける必要はないと考えます。
・また、重要取引に関する特別委員会は、2019年6月28日に経済産業省から「公正なM&Aの在り方に関する指針」が示されて以来、多くの会社で設置されてきております。特別委員会さえ設置すれば、独立社外取締役を増員する必要はないとの本末転倒な結果にならない様、独立社外取締役は過半数、かつ、重要取引に関しては特別委員会の設置とすることを提案します

上場子会社等にとって、補充原則4-8③を最低限の努力でコンプライすることよりも、親子上場を批判するアクティビストの矛先を避けることの方が、格段に重要な問題であろう。上述の4社においても、取締役会において独立社外取締役が過半数を占めているところはない。“アクティビスト・リスク”を回避するためにも、補充原則4-8③よりもさらに一歩進んだ「少数株主の利益を保護するためのガバナンス体制の整備」を検討することが望ましいと言えそうだ。

2021/07/07 TCFD開示の4要素のうち有報での開示が必須となりそうな2要素とは?

既報のとおり、 ガバナンスやサステナビリティに関する項目の開示が、近い将来、法定開示書類である有価証券報告書において求められる方向となっている。ガバナンス関連の開示項目として候補に挙がっているのが「取締役会や任意の委員会の活動状況」、サステナビリティ関連の開示項目として候補に挙がっているのが「人的資本や知的財産への投資」等、そして「気候変動」だ(2021年6月25日のニュース「気候変動、有価証券報告書での開示義務化へ」参照)。このうち“気候変動開示”については、今般のコーポレートガバナンス・コード改訂で新設された補充原則3-1③で「特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。」とされたため、法定開示化を待たずして、2022年4月4日の新市場移行後に求められるコーポレート・ガバナンス報告書の提出までに対応を図る必要があることを考えると(プライム市場向けの原則に対応したコーポレート・ガバナンス報告書の提出スケジュールについては、2021年5月26日のニュース「当面のCG報告書の提出時期と内容」参照)、残された時間は多くない。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。

とはいえ、日本企業の気候変動開示への取り組みは遅れており(2021年7月1日のニュース「気候変動への意識は高い日本企業、開示では“周回遅れ”」参照)、TCFDについても、上場企業の経営陣でさえ「よく知らない」というのが実態だろう。

TCFDが推奨する開示を理解するうえで目を通しておく必要があるのが・・・

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2021/07/07 TCFD開示の4要素のうち有報での開示が必須となりそうな2要素とは?(会員限定)

既報のとおり、 ガバナンスやサステナビリティに関する項目の開示が、近い将来、法定開示書類である有価証券報告書において求められる方向となっている。ガバナンス関連の開示項目として候補に挙がっているのが「取締役会や任意の委員会の活動状況」、サステナビリティ関連の開示項目として候補に挙がっているのが「人的資本や知的財産への投資」等、そして「気候変動」だ(2021年6月25日のニュース「気候変動、有価証券報告書での開示義務化へ」参照)。このうち“気候変動開示”については、今般のコーポレートガバナンス・コード改訂で新設された補充原則3-1③で「特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。」とされたため、法定開示化を待たずして、2022年4月4日の新市場移行後に求められるコーポレート・ガバナンス報告書の提出までに対応を図る必要があることを考えると(プライム市場向けの原則に対応したコーポレート・ガバナンス報告書の提出スケジュールについては、2021年5月26日のニュース「当面のCG報告書の提出時期と内容」参照)、残された時間は多くない。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。

とはいえ、日本企業の気候変動開示への取り組みは遅れており(2021年7月1日のニュース「気候変動への意識は高い日本企業、開示では“周回遅れ”」参照)、TCFDについても、上場企業の経営陣でさえ「よく知らない」というのが実態だろう。

TCFDが推奨する開示を理解するうえで目を通しておく必要があるのがTCFDガイダンス2.0だ。同ガイダンスによると、TCFDが推奨する開示は、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの要素(および各要素における合計11の推奨事項)から構成されており、それぞれの内容は下表のとおりとなっている。

1 ガバナンス 2 戦略 3 リスク管理 4 指標と目標
気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンスを開示する。
①気候関連のリスク及び機会についての、取締役会による監視体制を説明する。
②気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する。
気候関連のリスク及び機会がもたらす組織のビジネス・戦略・財務計画への実際の及び潜在的な影響を、そのような情報が重大な場合は、開示する。
①組織が識別した、短期・中期・長期の気候関連のリスク及び機会を説明する。
②気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する。
③2℃以下シナリオを含む、さまざまな気候関連シナリオに基づく検討を踏まえて、組織の戦略のレジリエンスについて説明する。
気候関連リスクについて、組織がどのように識別・評価・管理しているかについて開示する。
①組織が気候関連リスクを識別・評価するプロセスを説明する。
②組織が気候関連リスクを管理するプロセスを説明する。
③組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理にどのように統合されているかについて説明する。
気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を、そのような情報が重要な場合は、開示する。
①組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する。
Scope1Scope2及び当てはまる場合はScope3の温室効果ガス(GHG=GreenHouse Gas)排出量と、その関連リスクについて開示する。
③組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について説明する。

レジリエンス : 気候変動の悪影響に対する脆弱性を減らしつつ、事業の“復元力” や“しなやかな強靭さ”を持つことを意味する。
Scope1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出のこと。
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出のこと。
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出、具体的には「事業者の活動に関連する他社の排出」のこと。

TCFDの開示フレームワークという場合、TCFDが2017年6月に公表した最終提言であるいわゆるTCFD提言を指す。このTCFD提言は、上記4つの要素のうち「ガバナンス」と「リスク管理」については全ての企業が年次財務報告により開示することが望ましいとしている(14ページ「2.提言の実施に向けて」の「b 情報開示の記載箇所と重要性」参照)。一方、「戦略」と「指標と目標」については、気候関連情報の重要性が高いと考えられる企業は年次財務報告に記載することが望ましいとされている(上表の下線部参照)。この点を踏まえると、有価証券報告書における気候変動開示が義務化される際には、「ガバナンス」と「リスク管理」の2つ要素は全ての企業で開示が必須とされる可能性が高い。

既にTCFDの開示フレームワークを意識して気候変動リスクを開示しているのが不二製油だ。同社の場合、これを【事業等のリスク】において行っている。

<【事業等のリスク】におけるTCFD提言に基づく気候変動リスクの開示-不二製油グループ本社2021年3月期>
(TCFD)
 当社グループは、2019年5月にTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)へ賛同を表明しています。TCFDの提言に基づき、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目について、積極的に情報開示を推進していきます。

TCFDの提言に基づく4項目についての情報開示

ガバナンス ・C”ESG”Oの管掌のもと、全社リスクマネジメント体制において気候変動リスク・機会を管理し、TCFDの提言に基づくシナリオ分析を実施し、分析内容を経営会議、取締役会に報告・承認(年1回以上)
・取締役会の諮問機関としてC”ESG”Oが委員長を務めるESG委員会を設置し、活動内容は取締役会に具申。ESGマテリアリティの特定、サステナビリティ戦略の検討・審議、ESGマテリアリティ推進状況のレビュー等を実施。「気候変動の緩和と適応」に関してもESGマテリアリティの1つとして特定し、環境ビジョン2030の実行を通じた取り組みを推進
戦略 ・国内グループ会社及び主要な海外グループ会社を対象に、TCFDが提言する気候変動のシナリオ分析と気候変動リスク・機会の選定、財務インパクトの評価を実施(参照「気候変動リスク・機会および財務インパクトの影響度評価」)。当評価を踏まえ、自社、及び社会や地球へプラスのインパクトをもたらす脱炭素社会を実現するための省エネ活動、再エネ活用等、さらなるCO2排出量削減の推進を目指す。
・当社グループはPlant-Based Food Solutions(PBFS)のコンセプトのもと、植物性食品素材による社会課題解決を目指している。家畜肥育に伴う気候変動への悪影響の懸念による、代替肉等のPlant-Based Food(植物性食品)の市場拡大の可能性に対しても、事業展開を強化する。
リスク管理 ・全社重要リスクを特定し、PDCAサイクルによってリスクを管理する全社リスクマネジメント体制を構築(参照 全社重要リスク)
・気候変動リスクも全社重要リスクの一つと位置付け、当該全社リスクマネジメント体制において管理し、検討・対応内容は年に1回以上取締役会に報告
指標と目標 ・環境ビジョン2030において、2016年比で2030年にCO2の排出量を総量で40%削減することを掲げている
・環境ビジョン2030の目標達成に向け、生産現場での省エネ活動やエネルギー使用量の少ない新設備の導入、再生可能エネルギーの使用等に積極的に取組み、スコープ3データの精度向上、排出量が多いカテゴリ1の削減方法検討、SBT認定を取得した目標を達成するためのグループ内における説明・周知活動等を実施

(2030年CO2排出量削減目標:「スコープ1,2※ 40%削減、スコープ3(カテゴリ1※)18%削減」(基準年:2016年))
※ スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
※ スコープ2:他社から供給された電気、熱 ・蒸気の使用に伴う間接排出
※ スコープ3:事業者の活動に関する他社の排出(カテゴリ1~15)
※ カテゴリ1:原材料
  詳細情報については、「環境ビジョン2030」をご参照ください。

TCFDの開示フレームワークは、将来的にはIFRS財団が設立する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定を目指すこととなる統一的なサステナビリティ開示フレームワークである「サステナビリティ報告基準」に取り込まれる可能性があるが(2021年6月22日のニュース「サステナビリティ開示の将来像」参照)、TCFDの開示フレームワークは既に気候変動開示のグローバルスタンダードとしての地位を確立しつつあるだけに、仮に「サステナビリティ報告基準」に取り込まれたとしても、相当部分が活かされる可能性は高い。この点を踏まえても、そう遠くない将来に日本でも実現する法定開示化に備え、早い段階から“TCFD開示”に取り組んでおいて損はないと言えよう。

2021/07/06 2021年6月総会の役員選任議案動向 ROE基準停止効果がないケースも

ワクチンの効果によりコロナ禍の出口がようやく見えつつあるが、2021年6月株主総会も“コロナ総会”であったと言える。ある東証一部上場会社では、来場制限により、通常であれば3千人程度の株主が来場するところ、今年は30人程度にとどまったという。また、議決権行使助言会社最大手のISSは・・・

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2021/07/06 2021年6月総会の役員選任議案動向 ROE基準停止効果がないケースも(会員限定)

ワクチンの効果によりコロナ禍の出口がようやく見えつつあるが、2021年6月株主総会も“コロナ総会”であったと言える。ある東証一部上場会社では、来場制限により、通常であれば3千人程度の株主が来場するところ、今年は30人程度にとどまったという。また、議決権行使助言会社最大手のISSは、コロナ禍の業績への影響を考慮し、昨年に引き続き今年もROE基準の適用停止を継続した。ところが、低ROE企業で経営トップの選任議案が著しく低い事例が確認されている。賛成率が70%を切ったのが日産車体だ。日産車体の外国人株主比率は30.9%と高いことから、ISSによる助言の影響を受けやすいと考えられるが、ROEが過去5期平均で2.3%、直近期で1.1%と低い(当然ながらISSのROE基準にも抵触)ことが原因で、経営トップの賛成率は67.0%にとどまった。また、過去5期平均のROEがマイナス1.3%、直近期がマイナス2.2%となった中越パルプ工業でも、経営トップの選任議案への賛成率が78.19%と低位に沈んだ。同社の外国人株主比率は5.6%と低いことから、主に国内機関投資家が反対票を投じたものと思われる。両社の結果は、ISSがROE基準の適用を停止していようと、低ROEに対する投資家の目は厳しいということを示している。

ROE基準 : 投資家が経営トップの選任議案などに賛成する条件として、一定以上のROE(Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本))を求めること。ちなみにISSでは、資本生産性が低く(過去5期平均の自己資本利益率[ROE]が5%を下回り)かつ改善傾向(過去5期の平均ROEが5%未満でも、直近の会計年度のROEが5%以上ある場合)にない場合、経営トップ(社長、会長)である取締役の選任議案に反対を推奨するとしている。

このほか、ゴールドクレスト、アリアケジャパンの経営トップの選任議案への賛成率がそれぞれ69.0%、69.94%と、ともに70%を割り込んでいる。このうちゴールドクレストについては、同社社長の安川氏が代表を務める同氏の資産管理会社(株式会社ミューアセット)が約46%の株式を保有しているが、取締役4名中、独立社外取締役が1名しかおらず、ISSの「親会社や支配株主を有する会社で、取締役の1/3以上が独立社外取締役でない場合、経営トップの選任議案に反対助言する」との基準に抵触したことが低賛成率の大きな要因と考えられる(なお、ゴールドクレストの外国人株主比率は21.3%)。

一方、アリアケジャパンについては、ISSの「委員会型機関設計の会社で、株主総会後の取締役会に占める社外取締役(独立性は問わず)が 1/3 未満である場合、経営トップの選任議案に反対助言する」との基準に抵触したことが、70%を割り込んだ大きな原因と考えられる。同社は監査等委員会設置会社であり、ISSがいう「委員会型機関設計の会社」に該当するが、同社の取締役会は社内取締役5名(うち1名は監査等委員である取締役)、社外取締役2名(2名ともに監査等委員である取締役)で構成されているため、「取締役会に占める社外取締役(独立性は問わず)の割合」は2/7で「 1/3 未満」となり、上記のISS基準に抵触することとなった。同社の外国人株主比率が27.5%と比較的高いことも、このISS基準が“効いた”要因と言えよう。

アリアケジャパン以外でも、社外取締役(独立性は問わず)が 1/3 未満の監査等委員会設置会社では、経営トップの選任議案への賛成率が73.54%(明星工業)、74.46%(田中商事)、76.98%(ピーアールホールディングス)と低率にとどまるケースが目に付いた。ISS以外でも、三菱UFJ信託銀行が「社外取締役(独立性は問わず)が取締役総数の 1/3 以上いない場合、取締役候補者全員の選任議案に反対」、三井住友トラスト・アセットマネジメントが「独立取締役が複数かつ取締役総数の 1/3 以上でない場合、取締役候補の選任議案に反対(※経過措置(7ページ③参照)あり)」するという厳しい基準を既に運用しているが、改訂コーポレートガバナンス・コード原則4-8により、プライム市場上場会社に対し独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任することが求められたことを受け、他の機関投資家も今年から来春にかけての議決権行使基準見直しで、同様の基準を導入してくることが予想される。来年の6月総会では、経営トップ(場合によっては取締役全員)の選任議案が低率にとどまる企業が増加する可能性があろう。

2021/07/05 速報・2021年6月株主総会 会社提案が否決された背景

2021年6月の定時株主総会シーズンが終わった。今年の株主総会の特徴の一つが、会社提案議案を巡る経営陣と株主の対立だ。会社提案議案が一部否決された会社は・・・

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2021/07/05 速報・2021年6月株主総会 会社提案が否決された背景(会員限定)

2021年6月の定時株主総会シーズンが終わった。今年の株主総会の特徴の一つが、会社提案議案を巡る経営陣と株主の対立だ。会社提案議案が一部否決された会社は4社あった。具体的には、天馬、大王製紙、乾汽船、東芝の4社である。

このうち「天馬」の“お家騒動”については当フォーラムでも再三取り上げてきたところ(2021年1月19日のニュース『天馬の前取締役に損害賠償請求訴訟も、被告は「従業員」として勤務継続』および同ニュースで引用されているニュース参照)。同社は監査等委員会設置会社であるが、6月の株主総会では「監査等委員である取締役」3名の選任議案への賛成率がそれぞれ「24.75%」「24.93%」「24.69%」という極端な低率で否決されている。その背景には、経営陣と大株主の対立がある。一方、大株主が株主提案として上程した同じく「監査等委員である取締役」3名の選任議案は可決されている。

かつて創業家会長による横領事件が世間を騒がせた大王製紙では、取締役会決議により剰余金の配当を行うことができる規定の新設などを盛り込んだ定款変更議案が否決されている。賛成率は60.88%で、定款変更(特別決議)に必要な2/3に届かなかった。天馬同様、背景には経営陣と大株主の対立がある。

特別決議 : 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の多数による決議。例えば定款変更、事業譲渡、株式の募集、取締役会の途中解任などにはこの特別決議が必要である。

さらに乾汽船も、経営陣と大株主の対立を背景に、執行役員から社長を選任できるようにする規定の新設などを内容とする定款変更議案が賛成率63.54%で否決されている。

4社目は、村上ファンド系のアクティビストであるエフィッシモ・キャピタル・マネジメント(以下、エフィッシモ)に株式を保有されたうえ、経済産業省とともに海外の投資家に圧力をかけ適切な議決権行使を妨げたのではないかとのスキャンダルにも見舞われた東芝だ。エフィッシモは昨年の株主総会で車谷社長(当時。2021年4月14日付で辞任)の取締役再任に反対したが賛成率が57%に達し叶わなかったため、「株主総会に不正があった」との異議を申し立て、同社に調査を求めた。指名委員会等設置会社である東芝は監査委員会が主導し、西村あさひ法律事務所に調査を依頼。結局、「過去の株主総会の運営の公正性に疑義がある」との調査報告書が出されたことから、その責任を追及される形で取締役候補者11名のうち2名の取締役の選任議案が否決された。それぞれの取締役の賛成率は43.74%、25.32%となっている。なお、東芝の取締役選任議案では元々は「13名」の候補者を掲げていたが、当該調査報告書が出された責任を取る形で、このうち2名の選任議案を撤回している。

このほか西松建設では、アクティビストによる株式買増しに対して会社が中止等の要請を行ったことについて他の株主の意思を確認することを内容とする議案を提出する方向だったが、アクティビスト側と株式買増しを行わないことで合意したことから、当該議案を取り下げている(2021年6月10日のニュース「アクティビストに株式買い増しをしないよう求める総会議案の行方」参照)。

このように、会社提案議案の否決あるいは撤回事例の背景には、大株主もしくはアクティビストの存在がある。元々大株主がいる場合、いかんともしがたい面もあるが、東芝の場合、会計不正による経営危機に伴い2017年12月に約6000億円の第三者割当増資を行った際にアクティビストに株式を保有されたことが今回の取締役選任議案の否決・撤回という事態を招いたとも言える。上場会社各社は、東芝の事例を“他山の石”としたいところだ。

2021/07/02 改訂CGコードに対応したCG報告書を提出した企業が早くも出現

3月決算会社の定時株主総会が終了し、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」(CG報告書)の更新が相次ぐ時期となった。コーポレートガバナンス・コード(CGコード)は2021年6月11日に改訂されたものの、3月決算会社がこのタイミングでCG報告書を定期更新するにあたり依拠するCGコードは「改訂前」のものでよいとされており、CG報告書の内容に変更が生じた場合には、「準備ができ次第速やかに、遅くとも2021年12月末日までに変更後のCG報告書を提出する」ことになる(2021年5月26日のニュース「当面のCG報告書の提出時期と内容」参照)。実際、ほとんどの3月決算会社が改訂前のCGコードに基づきCG報告書を更新している。

12月末までに提出する改訂CGコードに対応したCG報告書を作成するにあたり上場会社が対応に頭を悩ませているのが、新たな開示事項が生じることとなる次の2つの補充原則への対応だ。

※赤字は当フォーラムによる
補充原則2-4①
上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。
また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。

補充原則3-1③
上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

「多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針」をまだ定めていない上場会社にとっては、他社の開示事例がある程度集まらないと、どのような方針を定めれば「コンプライ」できる水準と言えるのか、イメージを持ちにくいところだろう。また、統合報告書を作っていない上場会社からは「人的資本や知的財産への投資についての情報」の開示内容のイメージがわかないとの声も聞かれる(なお、補充原則3-1③の第2段落の「特に・・・」以降はプライム市場上場会社のみを対象としているため、2022年4月以降に開催される各社の株主総会の終了後に更新するCG報告書から記載することが想定されたものである。この点については2021年5月26日のニュース「当面のCG報告書の提出時期と内容」参照)。

こうした中、本日(2021年7月2日)時点で改訂CGコードに依拠してCG報告書を更新した3月決算会社が早くも出現している。・・・

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2021/07/02 改訂CGコードに対応したCG報告書を提出した企業が早くも出現(会員限定)

3月決算会社の定時株主総会が終了し、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」(CG報告書)の更新が相次ぐ時期となった。コーポレートガバナンス・コード(CGコード)は2021年6月11日に改訂されたものの、3月決算会社がこのタイミングでCG報告書を定期更新するにあたり依拠するCGコードは「改訂前」のものでよいとされており、CG報告書の内容に変更が生じた場合には、「準備ができ次第速やかに、遅くとも2021年12月末日までに変更後のCG報告書を提出する」ことになる(2021年5月26日のニュース「当面のCG報告書の提出時期と内容」参照)。実際、ほとんどの3月決算会社が改訂前のCGコードに基づきCG報告書を更新している。

12月末までに提出する改訂CGコードに対応したCG報告書を作成するにあたり上場会社が対応に頭を悩ませているのが、新たな開示事項が生じることとなる次の2つの補充原則への対応だ。

※赤字は当フォーラムによる
補充原則2-4①
上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。
また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。

補充原則3-1③
上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

「多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針」をまだ定めていない上場会社にとっては、他社の開示事例がある程度集まらないと、どのような方針を定めれば「コンプライ」できる水準と言えるのか、イメージを持ちにくいところだろう。また、統合報告書を作っていない上場会社からは「人的資本や知的財産への投資についての情報」の開示内容のイメージがわかないとの声も聞かれる(なお、補充原則3-1③の第2段落の「特に・・・」以降はプライム市場上場会社のみを対象としているため、2022年4月以降に開催される各社の株主総会の終了後に更新するCG報告書から記載することが想定されたものである。この点については2021年5月26日のニュース「当面のCG報告書の提出時期と内容」参照)。

こうした中、本日(2021年7月2日)時点で改訂CGコードに依拠してCG報告書を更新した3月決算会社が早くも出現している。下表は、改訂CGコードに対応済みのヤマハ(2021年6月25日更新版)参天製薬(2021年7月1日更新版)のCG報告書のうち、補充原則2-4①と補充原則3-1③に関係する箇所を抜粋し、コーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領(CG報告書記載要領)と比較したものである。

補充原則2-4①
CG報告書 記載要領 ヤマハ 参天製薬
【補充原則2-4① 中核人材の登用等における多様性の確保】
<多様性の確保についての考え方>
(1)女性の管理職への登用
・・・・・
(2)外国人の管理職への登用
・・・・・
(3)中途採用者の管理職への登用
・・・・・
(4)その他の事項(多様性の確保についての総論的な考え方を含む)
・・・・・
<多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標>
(1)女性の管理職への登用
・・・・・
(2)外国人の管理職への登用
・・・・・
(3)中途採用者の管理職への登用
・・・・・
(4)その他の事項
・・・・・
<多様性の確保の状況>
(1)女性の管理職への登用
・・・・・
(2)外国人の管理職への登用
・・・・・
(3)中途採用者の管理職への登用
・・・・・
(4)その他の事項
・・・・・
<多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針、その状況>
・・・・・
【補充原則2-4-1】多様性の確保
「ステークホルダーへの約束」における「人重視の経営(ともに働く人々に対して)」に基づき、多様な人材の視点や価値観を活かし、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努める。
重要ポストの国籍多様化指標や女性管理職比率といった目標値を定め運用しており、今後はグローバルレベルでのダイバーシティ(多様性)推進に一層積極的に取り組んでまいります。
人材の多様性や育成方針については、当社ホームページに掲載しております。
https://www.yamaha.com/ja/csr/
human_rights_and_labor_practices/
【補充原則2-4①】
【中核人材の登用等における多様性の確保】
当社は、基本理念のもと、社内外のさまざまな考え方を積極的に取り込み結集することによって、組織の力を最大限に発揮し、世界中の人々の「眼」に関する多様なニーズに応え、“Happinesswith Vision”を実現します。そのために私たちは、国籍、人種、性別、性自認、性的指向、年齢、障がい、宗教、信条、経験、専門性、価値観、ライフスタイルなど、多様なバックグラウンドを持つ個々人を尊重し受容します。一人ひとりが能力を余すことなく発揮できるよう心理的安全を担保し、個人の力を組織の力として結集して、最大の成果を創出する職場環境を整備します。真のグローバル企業を目指す当社は、ESG戦略・施策の一環として、今後、具体的な指標を設定しダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンをより一層推進します。
当社は、この推進のために制定したダイバーシティ&インクルージョン方針(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン方針に改称を予定しています)に基づき、経営幹部層及び世界全ての組織において、ジェンダー・国籍・視覚障がい者を中心とした更なる多様性の向上、多様な個人が能力を最大限に発揮できる組織づくりと人材育成に取り組み、報酬、教育、昇進機会等について、性別・国籍・視覚障がい等の多様性の如何によらず平等に機会を提供します。
ダイバーシティ&インクルージョン方針は、当社ウェブサイト上に開示しています。
https://www.santen.co.jp/ja/csr/
employees/index.jsp
【補充原則3-1③ サステナビリティについての取組み等】
<サステナビリティについての取組み>
・・・・・
<人的資本、知的財産への投資等>
・・・・・
【コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示】
【補充原則3-1-3】
サステナビリティの取り組み等の開示
1.当社のサステナビリティの取り組み等の開示は、当社ホームページに掲載しております。
統合報告書
https://www.yamaha.com/ja/
ir/publications/

サステナビリティレポートhttps://www.yamaha.com/ja/csr/

2.当社のTCFDへの対応の開示は、当社ホームページに掲載しております。
https://www.yamaha.com/ja/csr/
environment/global_warming/#04

3.ステークホルダーの立場の尊重に係る取組み状況
環境保全活動、CSR活動等の実施
当社は、サステナビリティ方針を制定し、基本理念に基づき、社会の持続的な発展に貢献するとともに、Santenの持続的な成長を目指すことを示しています。
また、以下の4つのESGマテリアリティを特定し、課題を明確にして活動を推進しています。
・社会的意義(Happiness with Vision)のある製品・サービスの開発・安定的供給
・価値創造を促進する組織風土の醸成
・ガバナンス強化・公正公平な社会実現への貢献 
・地球環境保全
地球環境保全については、2050年に向けた環境ビジョン「Santen Vision for the Earth 2050」を策定しました。事業を行うすべての国・地域において、脱炭素社会の実現に向けた、工場・施設のエネルギー源の転換、徹底した再利用、高効率使用等の技術革新などによりカーボンニュートラルを目指す「気候変動対策」と、循環型社会の実現に向けた、すべての製品に対する技術革新による持続可能な資源と素材の全面利用などによる「環境負荷低減」の2分野に取り組みます。
当社のCSR活動に関する詳細は、当社ウェブサイトに公開しています。
https://www.santen.co.jp/ja/csr/

上表のとおり、両社ともCG報告書には詳細を記載せず、自社のウェブサイトを参照させる形をとっている。参照先の内容を、各原則に関するCG報告書記載要領が求める記載要素(冒頭のCGコード中の赤字を参照)ごとに当フォーラムが整理したのが下表である(他社の参考となるよう記載要素によっては各社が参照先としたURLとは異なるURLにリンクさせている)。12月末までに提出する改訂CGコードに対応したCG報告書の“落としどころ”を模索している上場会社は参考にしたいところだ。

補充原則2-4①
CG報告書 記載要領 ヤマハ 参天製薬
多様性の確保についての考え方 ヤマハグループダイバーシティ&インクルージョン方針 ダイバーシティ&インクルージョン方針
自主的かつ測定可能な目標と状況 <目標>
サステナビリティ重点課題の推進」の「サステナビリティ重点課題および進捗状況」
<状況>
ヤマハグループ社会性データ
<目標>
女性の活躍推進」の【第2期行動計画の目標】
<状況>
雇用・人材データ 2020
多様性の確保に向けた人材育成方針 人材育成 人材の育成
社内環境整備方針 ステークホルダーとのかかわりの従業員 人材の育成
補充原則3-1③
CG報告書 記載要領 ヤマハ 参天製薬
サステナビリティへの取組み サステナビリティレポート GRIスタンダード対照表
人的資本への投資 統合報告書の68ページの「人材」 人材の育成
知的財産への投資 統合報告書の65ページの「知的財産」 統合報告書の研究開発
TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示 TCFDへの対応 GRIスタンダード対照表
気候変動対策
温室効果ガス(CO2)の排出量削減

なお、改訂補充原則3-1③が求める開示事項について、ヤマハはCG報告書冒頭の「Ⅰ コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報」の【コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示】で開示しているのに対し、参天製薬はCG報告書末尾の「Ⅲ 株主その他の利害関係者に関する施策の実施状況」の「3.ステークホルダーの立場の尊重に係る取組み状況」で開示している。CG報告書記載要領が「どちらに記載してもよい」としていることから、両社の開示場所も異なることとなった。同様に、改訂補充原則2-4①が求める開示事項もどちらに記載してもよいとされているが、こちらは両社ともCG報告書冒頭で開示している。

また、両社ともに参照方式(CG報告書上には詳細を記載せず、詳細を記載したページのURLなどを記載して、CG報告書の利用者に当該URLのページを参照することを促す方式)を採用しているが、参照方式については今回のCGコードの改訂に先立ち募集されたパブリック・コメントで「参照先の開示事項の変更の履歴が残らない事例が少なくない。そのような実情では、開示内容の変更にかかる変遷・履歴が不明確になってしまうという実務的な問題がある」との指摘が寄せられており、これに対し東証は「参照先の開示事項が変更になり、その情報が投資者の投資判断上重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、上場会社において、速やかにガバナンス報告書を更新いただき、変更した旨を明記することが望まれます。」との考えを示している(パブリック・コメントの概要及びそれに対する当取引所の考え方の44番を参照)。参照先の開示事項を変更した場合には、CG報告書でも変更した旨を明記することを失念しないよう留意したい。