2025/10/31 2025年10月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
二重価格表示において、将来の販売価格(例:キャンペーン終了後の価格)を比較対照価格として用いる場合、消費者庁および公正取引委員会(以下、消費者庁等)は、当該価格での「合理的かつ確実な将来の販売計画」の存在を要件としています。(株)ジャパネットたかた(以下、ジャパネット)のおせち料理に関する二重価格表示について、消費者庁等は、ジャパネットが「通常価格」と称する金額での「合理的かつ確実な将来の販売計画」が存在しない点を問題視しました。消費者庁等は、この「通常価格」が実際には将来適用されることのない価格でありながら、これを比較対照価格として用いた表示は、消費者に不当な割安感を抱かせる有利誤認表示に該当すると判断し、景品表示法に基づく措置命令を発出しました。この措置命令に納得のいかないジャパネットは、「本件表示は有利誤認には該当しないものと考えている」との見解を示し、消費者庁に対して行政不服審査法に基づく審査請求を提出しています。

こちらの記事で再確認!
2025年10月3日 ジャパネットが消費者庁の措置命令に納得できない理由(会員限定)

2025/10/31 2025年10月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
二重価格表示において、将来の販売価格(例:キャンペーン終了後の価格)を比較対照価格として用いる場合、消費者庁および公正取引委員会(以下、消費者庁等)は、当該価格での「合理的かつ確実な将来の販売計画」の存在を要件としています。(株)ジャパネットたかた(以下、ジャパネット)のおせち料理に関する二重価格表示について、消費者庁等は、ジャパネットが「通常価格」と称する金額での「合理的かつ確実な将来の販売計画」が存在しない点を問題視しました。消費者庁等は、この「通常価格」が実際には将来適用されることのない価格でありながら、これを比較対照価格として用いた表示は、消費者に不当な割安感を抱かせる有利誤認表示に該当すると判断し、景品表示法に基づく措置命令を発出しました。この措置命令に納得のいかないジャパネットは、「本件表示は有利誤認には該当しないものと考えている」との見解を示し、消費者庁に対して行政不服審査法に基づく審査請求を提出しています。

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2025年10月3日 ジャパネットが消費者庁の措置命令に納得できない理由(会員限定)

2025/10/30 【役員会 Good&Bad発言集】下請法の改正(1)

上場会社S社(製造業)の取締役会で管理担当取締役が「2026年1月から改正下請法が施行され、当社が中小受託事業者になりうる」と発言したのをきっかけに、次の3人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「当社は他社への業務委託のほか、他社からの業務受託も行っております。とは言え、当社は資本金が20億円ある以上、当社が『親事業者』として公取から調査を受け指導されることはあっても、『下請事業者』として保護対象になることはありえないです。」

取締役B:「改正下請法では従業員基準が導入されたのですよね。当社の業態だと300人が基準となります。当社に製造を委託している得意先は従業員が300人を超えているところばかりなので、従業員基準で当社が中小受託事業者になりますね。」

取締役C:「2026年1月から資本金3億超の会社が従業員300人以下の会社に製造委託をすると改正下請法が適用されます。当社の製造委託等代金の回収サイトがだいぶ改善されるのではないでしょうか。」

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2025/10/30 【役員会 Good&Bad発言集】下請法の改正(1)(会員限定)

<解説>
あらたに従業員基準が導入、準備期間はあと2か月

2026年1月から改正下請法が施行され、法律名も「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変更されます(新通称は「取適法(とりてきほう)」)。下請法では適用の有無の基準として資本金基準が用いられていましたが、取適法では、下図のとおり取引の内容に応じて資本金基準に加えて「常時使用する従業員」の数につき「300人」または「100人」という基準も新たに導入されました。

取適法の適用対象取引(取適法のパンフレットより抜粋)
     78635

また、改正に伴い、下図のとおり言い回しも変更されました(公取の改正ポイント説明会資料5ページから抜粋)を参照)。

78635

従業員基準が導入された背景には、従来の資本金基準だけでは保護が不十分であり、『下請法逃れ』を許してしまうという問題がありました。具体的には、資本金のみを基準としていたことで、
・事業規模は大きいにもかかわらず、資本金が少額な事業者と取引する受注者が、保護対象から外れてしまう
・発注者が受注者に増資を働きかけ、意図的に下請法の適用を回避する
といったケースが発生していました。 従業員基準は、こうした資本金基準の抜け穴を防ぎ、事業規模の実態をより正確に判定するために導入されたものです。

「常時使用する従業員」とは その事業者が使用する労働者(労働基準法第9条に規定する労働者をいう)のうち、日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用される者を除く)以外のものを指します。そして、「常時使用する従業員の数」は、当該事業者の賃金台帳の調製対象となる「常時使用する従業員」(労働基準法第108条及び第 109条、労働基準法施行規則第55条及び様式第20号等)の数によって算定します。原則として、製造委託等を行った時の「常時使用する従業員の数」によって判断します。

この従業員基準は資本金基準が適用されない場合に適用されます。すなわち、まず資本金基準で判断し、資本金基準の要件を満たさない場合に従業員基準を検討します(下図は公取の改正ポイント説明会資料22ページより抜粋)。

78961a

また、資本金基準と従業員基準がクロスすること(たとえば、委託事業者を資本金で判断しつつ、中小受託事業者を従業員数で判断したり、逆に委託事業者を従業員数で判断しつつ、中小受託事業者を資本金で判断したりすること)もありません。あくまで委託事業者の従業員数と中小受託事業者の従業員数の比較になります。

下請法では、資本金基準しかなかったため、下請法が適用される関係では相互に委託していても取引当事者のうち保護される側(下請事業者)は固定的でしたが、取適法下では相互に委託していれば保護される側(中小受託事業者)が取引によって異なる(下図のとおり、資本金基準では取適法上の中小受託事業者である会社が、委託側に回ると従業員基準で取適法上の委託事業者になる。またはその逆。)ことはあり得ます(下図は公取の改正ポイント説明会資料22ページより抜粋)。

78961b

従来、下請法上の保護対象となる「下請事業者」の判定は資本金基準だけで行われていたため、上場会社の立ち位置は通常「親事業者」側であり、上場会社が「下請事業者」に該当するケースは多くありませんでした。しかし、新たに取適法で従業員基準が導入された結果、上場会社(とくにグロース市場上場会社)が「中小受託事業者」に該当するケースが増加することが見込まれています(従業員基準で中小受託事業者に新たに該当することになれば、それを契機に取適法の保護を受けられるようになるため、「製造委託等代金の回収サイトの改善」などが見込まれます)。逆に、資本金基準では「親事業者」に該当しなかった会社が、取適法下で従業員基準により「委託事業者」に該当するようになることも十分に考えられます(従業員基準で委託事業者に該当することになれば、それを契機に取適法の保護を受けられるようになった取引先の中小受託事業者を保護すべく「製造委託等代金につき60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定める」など取適法が定める委託事業者の4つの義務の履行が必須になり、11の禁止項目も課されます。詳細は下図(取適法のパンフレットより抜粋)を参照)。なお、従業員基準は法人単位で判断するため、資本金基準では「親事業者」に該当しない子会社が、取適法下で「委託事業者」に該当することも十分に考えられます。資本金基準では「親事業者」に該当しない子会社はこれまで下請法の備えが十分でない可能性もあります。施行まで残された期間は2か月しかなく(施行後の経過措置もありません)、まずは子会社も含めて、グループ内の各社が従業員基準の観点から自社の取引のうちどの取引に取適法が適用されるのか、判定を急ぐべきです。

78961c

なお、委託事業者に「中小受託事業者が常時使用する従業員の数」を確認する「義務」はありませんが、中小受託事業者に対して「常時使用する従業員の数」についての回答を求める必要はあります(2025年10月7日のニュース「改正下請法、従業員基準への批判的な意見相次ぐ~パブコメ結果の解説①~」を参照)。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役B:「改正下請法では従業員基準が導入されたのですよね。当社の業態だと300人が基準となります。当社に製造を委託している得意先は従業員が300人を超えているところばかりなので、従業員基準で当社が中小受託事業者になりますね。」
コメント:取締役Bは、下請法の改正内容(従業員基準の導入)を正確に把握したうえで、自社に正しくあてはめができておりGOODです。

BAD発言はこちら

取締役A:「当社は他社への業務委託のほか、他社からの業務受託も行っております。とは言え、当社は資本金が20億円ある以上、当社が『親事業者』として公取から調査を受け指導されることはあっても、『下請事業者』として保護対象になることはありえないです。」
コメント:取締役Aの発言は、下請法の資本金基準のみを念頭に置いたものであり、取適法下では自社が『下請事業者』として保護の対象になり得ることを理解できていない点で不適切です。

取締役C:「2026年1月から資本金3億超の会社が従業員300人以下の会社に製造委託をすると改正下請法が適用されます。当社の製造委託等代金の回収サイトがだいぶ改善されるのではないでしょうか。」
コメント:従来の回収サイトが60日超であれば、取締役Cの発言のうち、取適法適用により「製造委託等代金の回収サイトの改善」が見込まれる旨の後半の指摘は正しいと言えます。しかし、資本金基準と従業員基準はそれぞれが独立した基準であり、両基準がクロスすること(たとえば、委託事業者を資本金で判断しつつ、中小受託事業者を従業員数で判断したり、逆に委託事業者を従業員数で判断しつつ、中小受託事業者を資本金で判断したりすること)はないため、前半の発言はBADと言わざるを得ません。

2025/10/29 【2025年9月の課題】スチュワードシップコードの改訂を踏まえた企業年金の対応 解答(会員限定)

スチュワードシップ・コード第三次改訂の意義

周知のとおり、2025年6月にスチュワードシップ・コードが改訂されました。今回の改訂には、アセットオーナーである機関投資家として年金資産を運用する企業年金基金に対しても、より高度な受託者責任の遂行を求める趣旨の内容(後述)が含まれます。

上場会社をはじめ日本の大企業の多くは企業年金基金を設立しており、その存在は資本市場において大きな影響力を持っています。そこで、コーポレートガバナンス・コードの原則2-6は、年金基金が年金資産を適切に管理・運用するための体制整備を求めています。今回のスチュワードシップ・コード改訂は、この「年金資産の適切な管理・運用」について具体的な取り組みを促すものであり、企業年金基金も対応する必要があります。

【原則2-6.企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】
上場会社は、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、企業年金が運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取組みの内容を開示すべきである。その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。

今回のスチュワードシップ・コード改訂は、特に「協働エンゲージメントの推進」と「実質株主による保有状況の透明化」」を強く促しています。以下では、改訂のポイントと、改訂を受けて企業年金基金が取り組むべき施策について解説します。


協働エンゲージメント : 複数の機関投資家が連携し、投資先企業に対して対話を行う取り組みのこと。単独では影響力が限定的な投資家も、協働することで企業に対する要請力を高め、ガバナンス改善や企業価値向上を促すことが可能になる。
実質株主 : 株主名簿の背後に存在する投資判断や議決権を行使する権限を持つ株主のこと。これに対し、株主名簿に載っている株主を名義株主という。個人株主や事業会社が株主となる場合などは「実質株主=名義株主」となるが、信託銀行が信託勘定で「管理」だけをする株式は、実質株主と名義株主は一致しない。機関投資家が保有する株式は基本的に後者のケースとなる。

協働エンゲージメントの推進(指針4-6)
改訂後 改訂前
機関投資家が投資先企業との間で対話を行うに当たっては、単独でこうした対話を行うほか、他の機関投資家と協働して対話を行うこと(協働エンゲージメント)も重要な選択肢である。対話のあり方を検討する際には、投資先企業の持続的成長に資する建設的な対話となるかを念頭に置くべきである。 機関投資家が投資先企業との間で対話を行うに当たっては、単独でこうした対話を行うほか、必要に応じ、他の機関投資家と協働して対話を行うこと(協働エンゲージメント)が有益な場合もあり得る

複数の機関投資家が連携して投資先企業と対話を行う「協働エンゲージメント」の位置づけが従来の「有益な場合もあり得る」から「重要な選択肢である」へと変更され、より一層、協働エンゲージメントが重視されることになりました。企業年金基金としては、運用委託先が他の機関投資家とどのように連携し、また、協働エンゲージメントを含めどのようなエンゲージメント活動を行っているかをこれまで以上に詳細に把握し、評価する必要があります。そのための具体的な施策は以下のとおりです。

  • 運用委託先に対する報告要請
  • 運用委託先に対し、協働エンゲージメント活動に関する実績や、具体的なテーマ・成果について定期的な報告を求めます。これによって協働エンゲージメントの実施状況を把握し、受託者責任が適切に果たされているかを確認することができます。

  • エンゲージメントに関する方針の共有
  • 運用委託先が協働エンゲージメントをはじめ年金基金の長期的な運用目標に沿ったエンゲージメント活動を行うよう、ESGに関する投資方針や具体的なエンゲージメントテーマを共有することで、年金基金としての意向をエンゲージメント活動に反映させます。

  • 業界団体の活用や他の企業年金基金との連携
  • 個々の企業年金基金では人員や専門性が不足しがちです。そのため、企業年金連合会企業年金スチュワードシップ推進協議会などのプラットフォームを活用し、他の企業年金基金と情報共有や意見交換をすることで、運用委託先に対するモニタリング活動をより高水準なものへと高めていきます。

3.実質株式保有の透明化(指針4-2)
改訂後 改訂前
機関投資家は、投資先企業との間で建設的に対話を行うために、投資先企業からの求めに応じて、自らがどの程度投資先企業の株式を保有しているかについて企業に対して説明すべきであり、投資先企業から求めがあった場合の対応方針についてあらかじめ公表すべきである。 註15.株式保有の多寡にかかわらず、機関投資家と投資先企業との間で建設的な対話が行われるべきであるが、機関投資家が投資先企業との間で対話を行うに当たっては、自らがどの程度投資先企業の株式を保有しているかについて企業に対して説明することが望ましい場合もある

投資先企業から機関投資家に株式保有状況の照会があった場合、機関投資家は「説明することが望ましい場合もある」とされていたところ、これが「説明すべき」に変更され、より積極的な対応が求められることになりました。この改訂により、運用受託機関は投資先企業の求めに応じて「実質的な株主」である企業年金基金の情報(保有株式数など)を開示するケースが増えると考えられます。さらには、企業年金基金が投資先企業から直接対話の機会を求められる可能性も高まります。企業年金基金は以下の対応を検討すべきでしょう。

  • 情報情報開示方針の策定
  • 投資先企業からの問い合わせに統一的かつ適切に対応できるよう、どの程度の情報を、どのような場合に開示するかについて運用委託先と協議し、開示方針を策定します。

  • 対話する体制の構築
  • 投資先企業からの直接的な問い合わせに対応する担当部署や担当者を明確にします。企業価値の向上を通じた年金資産の長期的なリターンに貢献し得る投資先企業との建設的な対話には積極的に対応したいところです。

  • 利益相反管理
  • 実質的な株式の保有状況が明らかになると、母体企業の事業利益と年金基金の受益者利益との間に潜在する利益相反リスクが可視化されます。特に年金基金が投資している企業が母体企業と取引関係にある場合、投資判断が受益者の利益ではなく、母体企業の事業上の都合に影響される可能性があります。そこで、母体企業と取引関係のある企業への投資に関する利益相反管理の方針を再確認するべきです。

4.スチュワードシップ・コードの受け入れ

今回の改訂は、企業年金基金がアセットオーナーとしての自らの役割を再認識する絶好の機会です。改訂への対応を契機にコード自体も受け入れることを宣言し、より高度なスチュワードシップ責任を資本市場に表明することは、母体企業である上場会社にとっても望ましい取り組みだと言えるでしょう。コードを受け入れることによる具体的な意義としては以下のようなものが考えられます。

  • 受託者責任の強化
  • 投資先企業の持続的成長は、年金資産の長期的なリターン向上に直結します。コードを受け入れることは、加入者・受給者のために受託者責任を果たすという強力な意思表明となります。

  • 資本市場における信頼向上
  • コードに対するコミットメントを公にすることで、年金加入者や資本市場からの信頼を高め、母体企業の資本市場におけるレピュテーション向上にもつながります。

  • 運用委託先との関係強化
  • コードがアセットオーナーに求めるスチュワードシップ責任に従って運用委託先とより深く対話することで、両者のパートナーシップを深化させ、資産運用の質を高めることができます。

ここで留意すべきは、形式的な受け入れを回避するということです。単にコードを受け入れたことを表明するだけでなく、各原則に対する具体的な対応方針を策定し、実効性ある取り組みを着実に実行することが重要です。例えばエーザイ企業年金基金は、コードの受入れ方針において、下記のとおりESGやサステナビリティに対する高い意識を示しています。このような方針を策定・開示することは、長期的な年金運用のリターン向上を目指す姿勢として、資本市場の信頼獲得に資するものと言えます。

エーザイ企業年金基金 原則への対応
原則の内容 原則への対応
原則1 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。 当基金は、運用受託機関に対して「日本版スチュワードシップ・コード」の受入れを求めます。また運用受託機関のスチュワードシップ活動に関して、実効的な活動を通して投資先企業の企業価値向上やESGを含めたサステナビリティに関する課題への取り組みを促すことを求めるとともに、当基金が求める事項や原則に整合的であるかをモニタリングいたします。
原則4 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。 当基金は、運用受託機関に対して、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて投資先企業と認識の共有を図るとともに、ESGを含めたサステナビリティに関する課題への取り組みを促してその課題改善に努めることを求めます。
原則7 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティの考慮に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。 当基金は、投資先企業の持続的成長に資するよう、運用受託機関に対して、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく対話やESGを含めたサステナビリティに関する考慮に基づいたスチュワードシップ活動を適切に行える実力や体制を備えることを求めます。 また、当基金は運用受託機関が取り組むスチュワードシップ活動を評価する実力を備えるよう努めます。
5.確定拠出年金におけるスチュワードシップ責任の検討

周知のとおり、確定拠出年金(401k)は個々の加入者(従業員)が自らの責任で運用商品を選択・運用する制度であり、企業年金基金が運用責任を担う確定給付型制度とは運用主体が異なります。しかしながら、確定拠出年金導入企業もスチュワードシップ責任とは無縁ではありません。金融庁は、2018年のコーポレートガバナンス・コード改訂時のパブリックコメントへの「考え方」において、「確定拠出年金についても、運用が従業員の資産形成に影響を与えることは確定給付年金と同様である」として、適切な取り組みへの期待を表明しています。具体的には以下のような取り組みが望まれます。

  • 運用機関・運用商品の選定における取り組み
  • 確定拠出年金導入企業は、加入者が選択できる運用商品のラインナップを選定し、提示する責任を負っています。その際、単に運用パフォーマンスだけでなく、運用会社がスチュワードシップ責任を適切に果たしているかを、運用商品選定にあたっての評価基準に加えることが望まれます。また、今回の改訂を踏まえ、「協働エンゲージメント」の実施状況や「実質株式保有の透明化」に関する取り組み状況を基準に取り込むことも考えられます。

  • 資産運用に関する情報提供・教育
  • 導入企業は加入者が適切な判断を行えるよう、運用商品に関する情報提供と投資教育を継続的に行う義務があります。この教育内容には、運用会社のスチュワードシップ活動の意義や、その確認方法(スチュワードシップ報告書、議決権行使結果など運用会社の開示資料の読み方など)を盛り込みたいところです。今回の改訂によるスチュワードシップ責任の強化についても情報提供することが求められます。

6.改訂コードに対応するための課題

今回の改訂は、企業年金基金にこれまで以上の人的リソースと専門性を求めるものです。多くの基金が抱えている以下のような課題を克服することが、高度化するスチュワードシップ責任を適切に全うするための鍵となるでしょう。

  • 体制強化および人材育成
  • 少人数で運営されている基金が多い中、スチュワードシップに関する専門知識を持った人材の確保・育成が急務となっています。外部から採用することも有効な手段となります。

  • 運用委託先の報告内容の実質化と対話の促進
  • 運用委託先から提供される報告が形式的なものとならないよう、評価・モニタリングの方法を工夫する(例えば、①単なる数値やパフォーマンス報告だけでなく、議決権行使の理由やエンゲージメントの成果などスチュワードシップ活動の中身を評価対象に含める、②報告フォーマットを見直し、基金の関心事項(ESG対応状況など)に沿った情報提供を依頼する)とともに、継続的なコミュニケーションを図る必要があります。

  • 情報開示と対話の積極化
  • 年金基金としてのスチュワードシップ活動を内外に開示するとともに、投資先企業からの対話要請には迅速かつ前向きに対応することが求められます。

企業年金基金が長期的なリターンを確保するためには、母体企業の経営陣の理解と関与が不可欠です。年金基金を単なる福利厚生制度としてではなく、資本市場における責任ある投資主体と位置づけ、その活動を継続的かつ積極的に支援する姿勢が求められます。

2025/10/28 取適法下での「協議に応じない一方的な代金の決定」の実務対応~パブコメ結果の解説③~

改正内容のインパクトの大きさから上場会社の間でも関心を呼んでいる改正下請法(新通称は取引適正化法(取適法:とりてきほう))の実務対応に極めて有益なパブコメ結果を解説するシリーズの第3弾では、「協議に応じない一方的な代金の決定」について取り扱う。

第1弾:2025年10月7日のニュース『改正下請法、従業員基準への批判的な意見相次ぐ~パブコメ結果の解説①~
第2弾:2025年10月17日のニュース『取適法下での特定運送委託に関する実務対応~パブコメ結果の解説②~

今回の下請法改正の目玉の一つとして挙げられるのが、「協議に応じない一方的な代金の決定」が禁止事項に追加されたということだ。「協議に応じない一方的な代金の決定」は以下のとおり定義された。

取適法運用基準における「協議に応じない一方的な代金の決定」
協議に応じない一方的な代金決定(法第5条第2項第4号)とは、中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定することにより、中小受託事業者の利益を不当に害すること

さらに、公正取引委員会(以下、公取)は各赤字部分について以下のとおり解説している(公取の改正ポイント説明会資料53ページから抜粋)。

「協議に応じない一方的な代金の決定」が取適法の禁止事項として新たに追加された目的は、中小受託事業者がコスト上昇分を適切に価格に転嫁できる取引環境を整備することにある。

「協議に応じない一方的な代金の決定」は一見すると、従来の下請法でも禁止行為とされ取適法にも引き継がれた禁止行為である「買いたたき」に似ている。しかし、「協議に応じない一方的な代金の決定」と「買いたたき」では、問題となる行為の性質がまったく異なる。具体的には、「買いたたき」とは、類似品の価格または市価と比較して著しく低い下請代金を不当に定める行為を指し、実際に対価の引下げが生じているか、あるいはコスト上昇を取引価格に反映しないという点に特徴がある。このように「買いたたき」が“対価そのもの”に着目した行為であるのに対し、“交渉プロセス”に着目した行為が「協議に応じない一方的な代金の決定」だ。「協議に応じない一方的な代金の決定」では、コストが上昇し利益が圧迫されている中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明をしなかったりするなど、一方的に代金を決定するといった交渉プロセスの不適正さが問題となる(公取の改正ポイント説明会資料52ページの図参照。緑の「現行」が買いたたきを指している)。

「買いたたき」(緑)と「協議に応じない一方的な代金の決定」(ピンク)の違い
789182

取適法の運用基準では具体的に次のような違反事例が想定されている(「9-1」などの数字は運用基準におけるインデックス)。

運用基準において想定されている違反行為事例
違反行為事例 説明
9-1 拒否等により委託事業者が協議に応じない例 中小受託事業者が、量産期間が終了し、補給品として僅かに発注されるだけで発注数量が大幅に減少し、製造に要する費用が上昇していることを理由に、量産時の大量発注を前提とした単価の引上げに係る協議を求めたにもかかわらず、これを拒否し、無視し、又は回答を引き延ばす等して、従前の単価が適用された場合
9-2 詳細な情報提示要求により委託事業者が協議に応じない例 中小受託事業者がコスト上昇分につき経済の実態が反映されていると考えられる公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など。以下同じ。)に基づき具体的な引上げ額を提示して代金の額の引上げを求めたにもかかわらず、協議に先立ち、コスト上昇の根拠として具体的に算定することが容易でない詳細な情報の提示を求め、協議の実施を困難にさせ、結果として、僅かに引き上げた額を代金の額と定めた場合
9-3 中小受託事業者が協議を求めた事項について必要な説明又は情報を提供しない例 (1)中小受託事業者がコスト上昇分につき経済の実態が反映されていると考えられる公表資料に基づき具体的な引上げ額を提示して代金の額の引上げを求めたのに対し、コスト上昇の状況を踏まえた理由の説明や根拠資料の提供を一切することなく、従前の代金の額を据え置き、又は僅かに引き上げた額を代金の額と定めた場合
(2)中小受託事業者が委託事業者による原価低減要請に関し、その理由に関する説明を求めたのに対し、要請に応じない場合には取引を減らしたり打ち切ったりすることを示唆した上で、他に理由の説明や根拠資料の提供をすることなく、従前の代金の額から引き下げた額を代金の額と定めた場合

中小受託事業者が求める協議の内容は、必ずしも「代金の引上げ」を求めるものに限られない。例えば、・・・

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2025/10/28 取適法下での「協議に応じない一方的な代金の決定」の実務対応~パブコメ結果の解説③~(会員限定)

改正内容のインパクトの大きさから上場会社の間でも関心を呼んでいる改正下請法(新通称は取引適正化法(取適法:とりてきほう))の実務対応に極めて有益なパブコメ結果を解説するシリーズの第3弾では、「協議に応じない一方的な代金の決定」について取り扱う。

第1弾:2025年10月7日のニュース『改正下請法、従業員基準への批判的な意見相次ぐ~パブコメ結果の解説①~
第2弾:2025年10月17日のニュース『取適法下での特定運送委託に関する実務対応~パブコメ結果の解説②~

今回の下請法改正の目玉の一つとして挙げられるのが、「協議に応じない一方的な代金の決定」が禁止事項に追加されたということだ。「協議に応じない一方的な代金の決定」は以下のとおり定義された。

取適法運用基準における「協議に応じない一方的な代金の決定」
協議に応じない一方的な代金決定(法第5条第2項第4号)とは、中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定することにより、中小受託事業者の利益を不当に害すること

さらに、公正取引委員会(以下、公取)は各赤字部分について以下のとおり解説している(公取の改正ポイント説明会資料53ページから抜粋)。

789181

「協議に応じない一方的な代金の決定」が取適法の禁止事項として新たに追加された目的は、中小受託事業者がコスト上昇分を適切に価格に転嫁できる取引環境を整備することにある。

「協議に応じない一方的な代金の決定」は一見すると、従来の下請法でも禁止行為とされ取適法にも引き継がれた禁止行為である「買いたたき」に似ている。しかし、「協議に応じない一方的な代金の決定」と「買いたたき」では、問題となる行為の性質がまったく異なる。具体的には、「買いたたき」とは、類似品の価格または市価と比較して著しく低い下請代金を不当に定める行為を指し、実際に対価の引下げが生じているか、あるいはコスト上昇を取引価格に反映しないという点に特徴がある。このように「買いたたき」が“対価そのもの”に着目した行為であるのに対し、“交渉プロセス”に着目した行為が「協議に応じない一方的な代金の決定」だ。「協議に応じない一方的な代金の決定」では、コストが上昇し利益が圧迫されている中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明をしなかったりするなど、一方的に代金を決定するといった交渉プロセスの不適正さが問題となる(公取の改正ポイント説明会資料52ページの図参照。緑の「現行」が買いたたきを指している)。

「買いたたき」(緑)と「協議に応じない一方的な代金の決定」(ピンク)の違い
789182

取適法の運用基準では具体的に次のような違反事例が想定されている(「9-1」などの数字は運用基準におけるインデックス)。

運用基準において想定されている違反行為事例
違反行為事例 説明
9-1 拒否等により委託事業者が協議に応じない例 中小受託事業者が、量産期間が終了し、補給品として僅かに発注されるだけで発注数量が大幅に減少し、製造に要する費用が上昇していることを理由に、量産時の大量発注を前提とした単価の引上げに係る協議を求めたにもかかわらず、これを拒否し、無視し、又は回答を引き延ばす等して、従前の単価が適用された場合
9-2 詳細な情報提示要求により委託事業者が協議に応じない例 中小受託事業者がコスト上昇分につき経済の実態が反映されていると考えられる公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など。以下同じ。)に基づき具体的な引上げ額を提示して代金の額の引上げを求めたにもかかわらず、協議に先立ち、コスト上昇の根拠として具体的に算定することが容易でない詳細な情報の提示を求め、協議の実施を困難にさせ、結果として、僅かに引き上げた額を代金の額と定めた場合
9-3 中小受託事業者が協議を求めた事項について必要な説明又は情報を提供しない例 (1)中小受託事業者がコスト上昇分につき経済の実態が反映されていると考えられる公表資料に基づき具体的な引上げ額を提示して代金の額の引上げを求めたのに対し、コスト上昇の状況を踏まえた理由の説明や根拠資料の提供を一切することなく、従前の代金の額を据え置き、又は僅かに引き上げた額を代金の額と定めた場合
(2)中小受託事業者が委託事業者による原価低減要請に関し、その理由に関する説明を求めたのに対し、要請に応じない場合には取引を減らしたり打ち切ったりすることを示唆した上で、他に理由の説明や根拠資料の提供をすることなく、従前の代金の額から引き下げた額を代金の額と定めた場合

中小受託事業者が求める協議の内容は、必ずしも「代金の引上げ」を求めるものに限られない。例えば、上記の9-3の(2)の事例では、中小受託事業者が「原価低減要請の理由についての協議」を求めている。

禁止事項として新たに追加された「協議に応じない一方的な代金決定」についてパブコメで寄せられた意見とそれに対する公取の考え方のうち重要なものをとりまとめたのが下表だ(備考欄は当フォーラムが作成)。2026年1月から禁止される「協議に応じない一方的な代金決定」の実務対応の参考にされたい。

(3)協議に応じない一方的な代金決定に関する意見について(コメント184から242まで)
No. 意見の概要 考え方 備考
186 運用基準9(3)の「協議を求めた」とは、「書面か口頭かを問わず、明示的に協議を求める場合のほか、協議を希望する意図が客観的に認められる場合を含む。」の記述に関連して)
「協議を希望する意図が客観的に認められる場合」の例を記載いただきたい。
「協議を希望する意図が客観的に認められる場合」とは、例えば、中小受託事業者が従来の単価を引き上げて計算した見積書等を提示した場合などが想定されます。今後、中小受託取引適正化法のテキスト等にその旨記載する予定です。 「中小受託事業者が明示的に協議を求めてはいないものの、協議を希望する意図が客観的に認められる場合」とは一体どのようなケースを想定しているのかがイメージできず、このままでは予見可能性に欠けるという問題意識に基づく意見であり、同様の意見が多数寄せられた(No.190225232233237239等を参照。例えばNo.233では、『委託事業者側の担当者の「察しが悪い」ことを理由に取適法違反を問われかねない内容であり、委託事業者側としては、事業者間の交渉に予見可能性がなくなってしまうことに不安を覚える。』との意見が寄せられた)。これに対し公取は、「中小受託事業者が従来の単価を引き上げて計算した見積書等を提示した場合」を想定していることを「考え方」で明らかにした。
187 5買いたたき
〈特定運送委託において想定される違反行為事例〉
5-18 製造委託等代金を据え置くことによる買いたたき

「十分に協議をすることなく、一方的」、「通常の対価を大幅に下回る製造委託等代金の額」について、企業によって判断が異なる可能性があるため、具体的な例を示して解釈の明確化を図るべきである。
買いたたきに該当するか否かは、製造委託等代金の額の決定に当たり中小受託事業者と十分な協議が行われたかどうか等対価の決定方法、差別的であるかどうか等の決定内容、通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況及び当該給付に必要な原材料等の価格動向等を勘案して総合的に判断されるものであり、網羅的な例示が困難であるため、原案どおりとします。 ちなみに運用基準5-18では、 「製造委託等代金を据え置くことによる買いたたき」の具体例として、「委託事業者は、製造を請け負う物品
の運送を中小受託事業者に委託しているところ、燃料価格の高騰や労務費の上昇が明らかな状況において、中小受託事業者が燃料価格の高騰や労務費の上昇を理由に単価の引上げを求めたにもかかわらず、中小受託事業者と十分に協議をすることなく、一方的に、従来どおりに単価を据え置くことにより、通常の対価を大幅に下回る代金の額を定めた。」という事例を示している。
188 5-19 その他の買いたたき
5-18と同様に、「十分に協議をすることなく、一方的」、「通常の対価を大幅に下回る製造委託等代金の額」について、企業によって判断が異なる可能性があるため、具体的な例を示して解釈の明確化を図るべきである。
No.187の御意見に対する考え方を御参照ください。 ちなみに運用基準5-19では、「その他の買いたたき」の具定例として、「委託事業者は、自己の販売する商品の運送を委託している中小受託事業者と年間運送契約を結んでおり、双方に異議のない場合は自動更新されることとなっていたところ、年度末の契約の更新の直前に、人件費、燃料費等について大幅な変更がないのに、翌年度の契約書であるとして前年に比べて大幅に単価を引き下げた運送契約書を中小受託事業者に送付し、中小受託事業者と十分な協議をすることなく、一方的に通常の対価を大幅に下回る代金の額を定めた。」という事例を示している。
189 9 協議に応じない一方的な代金決定
(1)協議の水準と必要な資料
委託事業者として、中小受託事業者とはどの程度までの協議を行い、どのような資料を保管しておけば、「協議に応じない一方的な代金決定」と判断されないのか、具体的な例を示して解釈の明確化を図るべきである。
委託事業者が中小受託事業者の求めに応じて「必要な説明若しくは情報の提供」をしたか否かは、中小受託事業者の給付に関する事情の内容、中小受託事業者が求めた事項、これに対し委託事業者が提示した内容及びその合理性、中小受託事業者との間の協議経過等を勘案して総合的に判断されることとなるため、原案どおりとします。なお、協議経過については、当事者間の認識に齟齬を生じないよう、書面・電子メール等の記録を作成・保存しておくことが望ましいと考えられます。 「考え方」には書面・電子メール等の記録を作成・保存しておくことが「望ましい」とあるが、実務上は将来の疎明に備えて「必須」と位置付けるのが妥当。
193 『協議に応じない一方的な代金の決定』が、禁止事項の一類型として明文で追加されたことについて、以下の点を確認させていただきたい。これまで、こうした行為は公正取引委員会の運用基準により「買いたたき」として扱われてきたと理解している。今回の法改正で、禁止事項として明文化されたことは自然な流れだと思う。ただし、現時点で運用基準の「買いたたき」に関する記載に変更が見られない場合、従来通りの基準に基づいて、引き続き「買いたたき」として扱われる可能性もあるのではないかと考えている。そのため、法改正に伴う運用基準の変更の有無や、今後の対応方針について、明確にご説明いただきたい。 協議に応じない一方的な代金決定の禁止規定の新設によって、買いたたきに該当するか否かについての解釈が変わるものではありません。
例えば、コスト上昇局面などにおいて、委託事業者が中小受託事業者に対して一方的に設定した価格を押し付けるような行為については、事案に応じ、買いたたきの禁止と協議に応じない一方的な代金決定の禁止のいずれの規定についても、適用される可能性があることとなります。
「買いたたき」の解釈に変更はないこと、「買いたたき」と「協議に応じない一方的な代金決定」の禁止の双方が同時に適用される可能性もあることが明示された。
194 受注者が「協議に応じることを契約書の文言として入れてほしい」と申し出たところ、発注者が「契約書の文言に入れることまでは取適法に明記されていないので義務ではない。実質的に取適法を遵守する」と言った場合、「(実際には取適法違反にあたる行為をしなくとも)契約書の文言として入れることを断ること」も「協議に応じない」にあたるでしょうか。 本号は、御指摘のような「契約書の文言に入れること」を求めるものではありませんが、契約書の記載の有無にかかわらず、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず当該協議に応じず、一方的に製造委託等代金の額を決定した場合には、本号に該当し得ます。 「協議に応じること」を「契約書の文言に入れること」は取適法対応として必須ではない旨が明示された。いずれにせよ契約書の記載の有無にかかわらず「協議に応じない一方的な代金決定」の違反の有無が判断されることから、契約書に記載するかどうかは論点にならないと言えよう。
204 「「中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず」とは、中小受託事業者が求めた特定の事項について、その自由な意思により製造委託等代金の額を決定するために必要な説明又は根拠となる情報の提供をしないことをいう。」とあるが、例えば、フードデリバリー業界全体では、各事業者において、報酬体系の変更時には十分な時間の余裕を持って取引の相手方である中小受託事業者に広く周知・説明するなどの取組を実施しているところ。このような場合には、「中小受託事業者が求めた特定の事項について、その自由な意思により製造委託等代金の額を決定するために必要な説明又は根拠となる情報の提供をしないこと」には該当しないとの理解で良いか。 委託事業者が中小受託事業者の求めに応じて「必要な説明若しくは情報の提供」をしたか否かについては、個々の製造委託等について判断されるものであり、一概にお答えすることはできません。 フードデリバリー業界からのコメントと思われる。他の業界においても、委託事業者は何をもって「必要な説明若しくは情報の提供」をしたと言えるのかを慎重に判断すべきである。
205 フードデリバリー業界のように多数の受注候補者(中小受託事業者)が発注者から提示された報酬額を任意に選択する取引類型の場合、すなわち、取引に際し、個々の配達案件についてその需給等を考慮して報酬額が提示され、提示を受けた受注候補者が、当該取引条件で取引決定する複数の同業の受注候補者が存在することを踏まえ、その報酬額で取引を受託するかどうかを判断する場合には、「一方的に製造委託等代金の額を決定すること」には当たらないとの理解で良いか。 「一方的に製造委託等代金の額を決定すること」とは、中小受託事業者の自由な意思による価格交渉を経ずに代金の額を設定することをいい、「協議」に応じない場合には、通常は、これに該当します。
もっとも、入札・せり上げ等の方式において、次の事情をいずれも満たす場合には、代金決定に係るプロセスの過程で、その額で取引を行うか否かに関し中小受託事業者が自由な意思に基づき判断していると認められるため、「一方的に製造委託等代金の額を決定」することには該当しません。
代金の額の決定に際し、
① あらかじめ代金の額以外の主要な取引条件(給付の内容等)が確定していること
② 委託事業者が指名する者でない①の取引条件で取引し得る複数の同業者が代金の額を提示することのできる仕組みが整えられていること
③ ②の事業者において、代金の額の決定方法に関する考え方その他取引を行うか否かを判断するために必要な情報を認識し得る状態にあること

御質問の方式においても、上記の事情に照らし(②については、「委託事業者が指名する者でない①の取引条件で取引し得る複数の同業者に対し代金の額を提示することのできる仕組みが整えられていること」と読み替えた上で)、中小受託事業者が、取引を行うか否かに関し、自由な意思に基づき判断することを通じ、自ら代金の額を決定していると評価することができる場合には、「一方的に製造委託等代金の額を決定」することには該当しません。他方、委託事業者が中小受託事業者に対し、自ら提示する代金の額での受注を見送る場合には取引を減らしたり、打ち切ったりすることを示唆した上で、これを代金の額と定めるような場合には、これに該当します。

フードデリバリー業界のみならず、リバース・オークションによるインターネット調達システムを構築している企業でも同様の状況が生じる。
206 (前略)
「中小受託事業者の利益を不当に害」するものではない事例として、例えば、「多数の下請事業者からの意見を募集・集約し当該意見及びコスト上昇等を勘案した製造委託等代金の額を定めた場合」など、多数の中小受託事業者に対し類似の取引を委託する委託事業者が現実的に実現可能な方法で本号(法第5条第2項第4号)を遵守できるような事例を可能な限り追記すべきである。
(後略)
(前略)
「多数の下請事業者からの意見を募集・集約し当該意見及びコスト上昇等を勘案した製造委託等代金の額を定めた場合」について、他の中小受託事業者の意見等を勘案する場合であっても、協議を求めた中小受託事業者との関係で当該協議に応じないことは、通常、その中小受託事業者の自由な意思による価格交渉によって実現される利益が害されるといえ、本号に該当すると考えられます。
(後略)
多数の下請事業者との間で製造委託等代金の額の増額を一律に行う場合であっても、結局のところ、協議を求めた中小受託事業者との関係で当該協議に応じるかどうかが取適法違反に当たるか否かの判断において重要な要素であることが明示された。
207 (前略)
委託事業者が真摯に協議に応じた場合は、その協議結果が中小受託事業者の要求通りにならなかったとしても、了承されると認識している為、その旨を明記頂きたい。(競争力の観点も踏まえて価格は協議されるべきであり、受託事業者の不合理な要求もありえるため、必ずしも要求通りにはならない。こうした自由な競争を阻害する様な規制は導入されるべきでは無い。)(後略)
(前略)
最終的な製造委託等代金の額は委託事業者と中小受託事業者との協議により定められるものですが、中小受託事業者からの要請額を受け入れられない場合には、その理由や考え方の根拠を十分に説明することが必要となります。
(後略)
理由、考え方の根拠の説明内容を、将来の疎明に備えて記録しておくべきである。
209 3価格交渉に関する実務上の懸念
現在の取引価格には、手形サイトを前提とした金利が織込まれていることが一般的である。今回の法改正により、サイトが短縮されることで、その金利相当分の見直し交渉を行った場合、「不当な減額要求」とされる強い懸念を抱いている。これは、今回の法改正の主旨からは少し逸れるかもしれないが、商構造に基づいた適正な取引関係そのものを阻害し、取引の安定性を損なうおそれがある。
手形の交付の禁止に伴い、委託事業者において、支払手段を手形から現金による支払に変更した上で、製造委託等代金から一定額を割引料として減じて支払うような行為は、減額等に該当し得ます。 手形払いを現金払いに変更する際に、支払サイトの短縮分の金利相当額(として委託事業者が主張する額)を減額する行為は下請法違反となる。
210 (前略)
(4)労務費転嫁指針との関係整理
令和5年11月29日に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が公表されているが、当該指針と取適法の関係が整理されておらず、取適法の範囲を遵守していれば足りるのか、それとも指針と取適法の差異を踏まえての対応を求める意図かがわからない。両者の関係性や優先順位を明確にしていただきたい。
(後略)
(前略)
労務費転嫁指針については、同指針上、明らかにしているとおり、同指針に記載の全ての行動を適切に採っている場合には、取引条件の設定に当たり取引当事者間で十分に協議が行われたものと考えられ、通常は独占禁止法及び本法上の問題は生じないと考えられることから、独占禁止法及び本法違反行為の未然防止の観点からも、同行動に沿った積極的な対応が求められるものです。
(後略)
委託事業者としては、労務費転嫁指針に沿った行動をとるよう心掛けたい。
212 (前略)
見積体系上、各費用がどの費目に含まれているかを説明し、一定回数(訪問/電話/メールなど)を呼びかけても不足有無の協議を呼びかけても問題有の回答が無い場合、価格据え置きの合意がなされたとし、その経緯を記録に残し、価格据え置きの合意ができたものとする運用を可としたい。
(後略)
協議に応じない一方的な代金決定は、「中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めた」ことが要件となるものであり、中小受託事業者から応答がない場合については、本号には該当しません。かかる経過についても、当事者間の認識に齟齬を生じないよう、書面・電子メール等の記録を作成・保存しておくことが望ましいと考えられます。 中小受託事業者に協議を呼び掛けても応答がない場合、「協議に応じない一方的な代金決定」には該当しないことが明示された。
240 (運用基準の第4の9-2詳細な情報提示要求により委託事業者が協議に応じない例「中小受託事業者がコスト上昇分につき経済の実態が反映されていると考えられる公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など。以下同じ。)に基づき具体的な引上げ額を提示して代金の額の引上げを求めたにもかかわらず、協議に先立ち、コスト上昇の根拠として具体的に算定することが容易でない詳細な情報の提示を求め、協議の実施を困難にさせ、結果として、僅かに引き上げた額を代金の額と定めた場合」を踏まえて)「具体的に算定することが容易でない詳細な情報の開示を求め」とあるが、実際の価格交渉では、公表資料を単に提示したからといって値上げが決まることはまずなく、その委託料の内訳の開示を求め、内訳と値上げ理由を詳細に突合しながら価格を交渉するのが通常である。また、その過程で、実は削減できたコストや不要な業務の洗い出しにもつながっているというように、詳細な情報の開示は、なあなあな交渉や不要な業務の委託の中止など当事者双方にとって有意義な場となることも多々ある。にもかかわらず、「具体的に算定することが容易でない詳細な情報の開示を求め」るという記載だと、委託事業者は、中小受託事業者からの要求があれば、内訳の精査を詳細にできずに値上げに応じることになり、とりわけ上場企業では対株主への説明責任が十分に果たせないことになりかねない。以上を踏まえて、表現を「具体的に算定することが社会通念上著しく困難な詳細な情報の開示を求め」に改めていただきたい。 委託事業者が「コスト上昇の根拠として具体的に算定することが容易でない詳細な情報の提示を求め」る場合とは、委託事業者が中小受託事業者に対して合理的な範囲を超えて詳細な情報の提示を要請し、自ら協議の実施を困難にさせる場合を示した事例であるため、原案どおりとします。 パブコメ案から変更なし。
241 (運用基準第4の9の(6)「多数の中小受託事業者に対し類似の取引を委託する委託事業者が、個別協議を実施せず一律に、コスト上昇分に十分見合うよう従前の代金からの引上げを決定し、当該中小受託事業者の申し入れた引上げ額を上回る代金の額が定められた場合などは、一方的な代金決定によっても、「受託事業者の利益を不当に害」するものであるとはいえない。」を踏まえて)多数の中小受託事業者に対し類似の取引を委託する委託事業者が、個別協議を実施せず一律に、コスト上昇分に見合うと当該委託事業者が考える分だけ値上げをした場合であって、中小受託事業者Aの申し入れた引上げ額よりは当該値上げ額は大きいものの、中小受託事業者Bの申し入れた引上げ額よりは当該値上げ額が小さい場合、Bとの関係で、委託事業者は、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律違反になるという理解でよいか。
(後略)
御理解のとおりです。協議に応じない一方的な代金決定の禁止は、協議に応じず又は必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定することを禁止するものであり、該当箇所の記載は、「一方的に製造委託等代金の額を決定すること」に該当する場合であっても、例外的に本号に該当することにはならない事例として、一例を示したものです。
(後略)
パブコメ案から変更なし。
複数の中小受託事業者を相手に個別対応せず一方的に代金を決定する場合には、「コスト上昇分に十分見合う」レベル(=いずれの受託事業者の利益も害さないレベル)である必要がある。


疎明 : 裁判官に「一応確からしい」と推測させるための説明や証拠提出のこと。証明より軽い証拠基準と位置付けられる。
リバース・オークション : 物品やサービスの買い手が提示した価格や条件に対し、複数の売り手が価格を吊り下げて競争する方式。通常の「オークション」方式の逆(リバース)となる。
支払サイト : 代金の請求から支払いまでの期間

このほか多くの意見が寄せられた論点として、上表「運用基準において想定されている違反行為事例」で挙げた違反行為事例9-1「拒否等により委託事業者が協議に応じない例」の「中小受託事業者が代金の額の引上げに係る協議を求めたにもかかわらず、これを拒否し、無視し、又は回答を引き延ばす等により、協議に応じないこと。」という部分がある。委託事業者からは「厳しすぎる」として、これを「委託事業者の繁忙状況もあるため『協議の実施を繰り返し“意図的に”先延ばしにしたりして』としていただきたい。」と修正(委託事業者視点での緩和)するよう求める意見が複数(No. 197199)寄せられたものの、公取は原案を修正しなかった(パブコメ案のまま確定)。つまり、中小受託事業者から協議の依頼を受けたにもかかわらず何らかの理由で返答を失念した場合、それが意図的かどうかを問わず取適法上の禁止事項に該当することとなるので留意したい。

価格の交渉の場における協議のあり方についても注意が必要だ。労務費、原材料価格、エネルギーコスト等の上昇分を取引価格に反映せず、従来どおりに取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用または従来の下請法上の買いたたきとして問題になるおそれがあることは運用基準において明確化されており、この点は下請法が取適法に移行しても変更はない。一方、取適法では新たに「協議に応じない一方的な代金の決定」が禁止事項として追加されたため、委託事業者は「中小受託事業者が協議を求めたか否か」ばかりに注意を向けがちだが、中小受託事業者が協議を求めなくても、そもそも価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来の取引価格を据え置けば「買いたたき」に該当するおそれがある。したがって、委託事業者としては、中小受託事業者から代金の額の引上げに関する協議を求められていない場合であっても、自ら協議の場を設けることを心掛けたい(No.202の「考え方」を参照)。

2025/10/27 CGコードの改訂に関する有識者会議がスタート、各論点への賛否状況は?

コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議の第1回会合が、2025年10月21日に開催された(同会議の方向性については2025年10月15日のニュース「一部原則は廃止も CGコードの大幅見直しへ来週から議論再開」参照)。同会議における議論のテーマを示すのが、金融庁が提出した事務局資料中の「ご議論いただきたい事項」と題するスライド(資料4のスライド14)だ。以下、各論点について解説する。

(1)企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上というコーポレートガバナンス改革の趣旨に照らして、コーポレートガバナンス・コードが果たしている役割と、コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた今後の課題をどう考えるか。そうした課題を踏まえ、アクション・プログラム2025で示唆された検討の方向性(スライド9)について、どう考えるか。

「アクション・プログラム2025で示唆された検討の方向性」とは以下の4項目であり、「総論」としてのコードのスリム化と、3つの各論から構成される。

【全体(総論)】
コードのスリム化/プリンシプル化
【個別(各論)】
□ 多様な投資機会があることを認識することの重要性、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例えば現預金を投資等に有効活用できているかの検証・説明責任の明確化(現預金の有効活用)
□ 有価証券報告書の定時株主総会前の開示
□ 取締役会事務局の機能強化

総論としてのスリム化については、有識者会議の・・・

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2025/10/27 CGコードの改訂に関する有識者会議がスタート、各論点への賛否状況は?(会員限定)

コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議の第1回会合が、2025年10月21日に開催された(同会議の方向性については2025年10月15日のニュース「一部原則は廃止も CGコードの大幅見直しへ来週から議論再開」参照)。同会議における議論のテーマを示すのが、金融庁が提出した事務局資料中の「ご議論いただきたい事項」と題するスライド(資料4のスライド14)だ。以下、各論点について解説する。

(1)企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上というコーポレートガバナンス改革の趣旨に照らして、コーポレートガバナンス・コードが果たしている役割と、コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた今後の課題をどう考えるか。そうした課題を踏まえ、アクション・プログラム2025で示唆された検討の方向性(スライド9)について、どう考えるか。

「アクション・プログラム2025で示唆された検討の方向性」とは以下の4項目であり、「総論」としてのコードのスリム化と、3つの各論から構成される。

【全体(総論)】
コードのスリム化/プリンシプル化
【個別(各論)】
□ 多様な投資機会があることを認識することの重要性、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例えば現預金を投資等に有効活用できているかの検証・説明責任の明確化(現預金の有効活用)
□ 有価証券報告書の定時株主総会前の開示
□ 取締役会事務局の機能強化

総論としてのスリム化については、有識者会議の全メンバーが賛成する意向を表明した。その上で一部のメンバーからは、「スリム化には賛成だが、必要なものを削除しないよう、慎重に検討すべき」「実務上の要望があって追加されたものを削除すれば、政策的な退行との批判を受ける」「削除すると『やらなくてよい』と思われかねない」などの指摘があった。ダイバーシティやサステナビリティに関する諸原則が念頭にあるものと思われる。一方、当該諸原則に対しては「削除または統合すべき」との意見も複数のメンバーから出されており、結論に至るまでには紆余曲折の展開が予想される。

3つの個別テーマについては、全体的には賛成意見が多数を占めたものの、下表のような意見も出ている。新たにCGコードに盛り込むという方向性に変更はないと考えられるが、書きぶりが穏当になるよう調整される、対象をプライム市場上場会社に限るなどの対応はあり得るだろう。

現預金の有効活用 ● 現預金に限って説明責任を求めることには抵抗感がある
● 現預金保有の合理性自体を否定すべきではない
● 経営資源の適切な配分(キャピタルアロケーション)は、経営者自身が考えるべきマターである
有報の総会前開示 ● 実現可能性を踏まえた検討が必要である
● 企業の負担が重く、制度横断的に見直してほしい
● 開示書類の削減/統合など軽減措置が必要となる
取締役会事務局 ● 海外投資家に理解されるには「カンパニーセクレタリー」という文言を用いる方が良い


キャピタルアロケーション : 調達した資金、事業活動を通じて得た資金をどこに投資するか、どのように使うかを判断すること。

また、上記3つのテーマの他に、改訂CGコードに盛り込むべき重要事項として、「取締役会の機能強化」および「政策保有株式の削減」に関する論点が複数のメンバーから提起された。このうち「取締役会の機能強化」については、下表のとおり、現行CGコードにおいて監督と執行が明確に意識されていないとの指摘とともに、新たな章立てを求める声もあった。グローバル・スタンダードであるモニタリング・ボード化を意識した改訂がどの程度まで進むのか、注目される。


モニタリング・ボード : 経営陣の監督を主たる役割・任務とする取締役会のこと。これに対し、業務執行におけるコンセンサスを形成する場としての取締役会のことを「マネジメント・ボード」という。

取締役会の機能強化 ● 現CGコードでは経営陣と取締役の責務が区別されていない
● 「独立社外取締役の責務と役割」を新たに章立てすべき
● 取締役会の過半数を独立社外取締役とする
● 議長を独立社外取締役とする
● プライム市場上場会社は三委員会(監査、報酬、指名)体制とする
● 企業買収など利益相反(売手企業の取締役とその株主間)が起こり得る局面では社外取締役が中心的な役割を果たすべきことを明示する
● 取締役会の多様性やスキルがまだまだ不足している
政策保有株式の削減 ● 一定期間内で売却することを推奨すべき
● 純投資に振り替えた株式の適切な対応を規律付ける(振り替え理由や今後の方針を開示させ、形式的な振り替えを防ぐ)
● 政策保有先の所属・出身である社外取締役については独立性を認めるべきでない

(2)コーポレートガバナンス・コードの中で、形式的な遵守にとどまっていることにより、ガバナンス改革の実質化の妨げとなっている原則はあるか。

この論点と軌を一にする意見としては、「独立社外取締役の割合を満たすことが目的化している」「過去の改訂で追加された新しい論点について形式的な対応が目立つ」「執行サイドで考えるべきもの、ガバナンスとは粒度が違うものが混ざっている」「ハウツー的な内容の原則が残っている」といったものが確認された。独立社外取締役比率の目的化などは取締役会の機能強化などCGコードの実質化により対応すべきものと言えるが、過去の改訂で追加されたもの、執行が考えるべきもの、ハウツー的なものはスリム化の対象となり得る。ダイバーシティやサステナビリティ関連について「削除すべきでない(むしろ増やすべき)」とする主張とのせめぎ合いになろう。

(3)補充原則を中心に再整理を行うこと(スライド11の方向性)について、どう考えるか。

現行コードは5個の基本原則、31個の原則、47個の補充原則から構成されている。資料4のスライド11では、補充原則をスリム化の対象とし、①特に重要なものは原則に格上げ、②内容的に重要なものは「考え方」に統合、③重要性が低いもの/重複しているものは削除、との改訂案が示されている。改訂案がそのまま実現した場合、コンプライ・オア・エクスプレインの対象は①のみとなり、②を参照することで「実質的な対応」とすることが期待される、という整理となる。

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補充原則をスリム化の対象とすることについては、基本的に全てのメンバーから賛同が得られており、今後は具体的にどの補充原則を①②③に振り分けるかが焦点となろう。ただし、一部のメンバーからは「良いことを言っている補充原則もあるので、削除は慎重にすべき」との意見が出されているため、金融庁が意図するようなスリム化が実現しない可能性も否定はできない。

(4)上記に加えて、スリム化の観点から、複数箇所に記載されている同一のテーマの事項を統合することについて、どう考えるか。
 (例) 株主に関する記載(第1章(株主の権利・平等性の確保)・第5章(株主との対話))、サステナビリティ課題への対応、経営戦略等の策定・実行等と経営資源の配分

各メンバーからは、統合すべき「同一のテーマ」として、以下のような具体的な意見が出された。

● 価値創造ストーリーに関する記載が複数個所に散らばっている
● 指名・報酬委員会という用語が様々な原則にまたがっている
● サステナビリティ関連の原則は改訂の度に増えているので整理すべき
● サステナビリティは取締役会の責務、取締役の受託者責任としてまとめるべき
● 内部通報は取締役会のコンプライアンス責任としてまとめるべき
● リスクマネジメントや内部監査は「守りのガバナンス」としてまとめるべき

ただし、複数のメンバーから、今回出した意見あくまで例示であり、詳細は後日、事務局(金融庁)に提案する旨の補足があった。また、第1章と第5章が俎上に載せられていることについて、「株主との対話の重要性が低下しないようにして欲しい」と要望したメンバーもいた。同一テーマの統合は個別論点に踏み込んだ検討が必要になることから、調整が難航する可能性もある。

(5)プリンシプルベース、コンプライ・オア・エクスプレインの趣旨を再周知する観点から序文を設けることについて、どう考えるか。

「実質的」なコンプライ・オア・エクスプレインを引き出すためには、その趣旨をCGコードの序文として明確に意識付けるべきとの提案である。元々、CGコードが策定された際には、その原案に序文があり、現在でも東証のウェブサイトで閲覧することができる。事務局(金融庁)は資料4にこれを引用し(スライド12・13参照)、同様の趣旨で序文を改めて設けるべきとの意向を持っている。

コード原案の序文には「攻めのガバナンス」「健全な企業家精神の発揮」「経営手腕を振るえるような環境を整える」といった企業価値向上に向けたコンセプト、「各原則の適用の仕方は、それぞれの会社が自らの置かれた状況に応じて工夫すべきもの」「会社が各々の置かれた状況に応じて、実効的なコーポレートガバナンスを実現」といった原則主義(プリンシプルベース)の考え方が明示されている。各メンバーからは、改めて序文を設けることについて「今までなかったのがおかしい」「経営者がコードを理解するために必要」など肯定的な意見が多く出ており、今回の改訂では既定路線として検討が進むことになりそうだ。

今回の議論および各メンバーからの個別意見の聴取を経て、次回の有識者会議ではCGコード改訂案の叩き台が提示されるものと見られる。ただし、上述のとおりテーマによっては慎重な意見も出ており、年内に第2回目の会議を開催することは現状では難しい模様。それでも、3・4月にパブリックコメント実施し、6月頃に内容を確定させるというスケジュールは既定路線と言える。上場会社には先を読んだ対応が求められよう。