2021/05/18 監査役をスキルマトリックスの対象に含めるべきか(会員限定)

(2021年)5月7日まで東証からパブリックコメントに付されていた改訂コーポレートガバナンス・コードのうち下記の改訂補充原則4-11①は「いわゆるスキル・マトリックスをはじめ」とした適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせの開示を求めている。この改訂を受け、早ければ今年6月の株主総会シーズンでは、招集通知にスキル・マトリックスを記載する企業が増加することが予想される。まさに現在、多くの企業で開示内容や方法の検討が進んでいるところだろう。

補充原則4-11①(赤字が改訂部分)
取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。

その際に論点となり得るのが、スキル・マトリックスの対象に監査役を含めるべきか、という点だ。改訂補充原則4-11①はあくまで「取締役」の有するスキル等の組み合わせの開示を求めており、少なくとも同原則をコンプライするうえで監査役を対象に含める必要はない。ここでのテーマは、自社が監査役会設置会社である場合、任意で監査役も対象に含めることが相当かどうかということである。

まず明確にしておきたいのは、監査役は「独任制」の機関であるということだ。監査役会も常勤監査役の選任など一定の権限は持っているが、基本的には個々の監査役が業務監査を有効に実施するための補助にとどまる。したがって、「組織」として経営の監督および意思決定をする取締役会とは異なり、監査役会に「スキルの組み合わせ」は要求されていないと解釈できる。改訂補充原則4-11①が取締役会のみにスキル・マトリックスを要求しているのはこのためだ。監査役については、原則4-11において個人に対して必要とする資質を示すにとどまっている。

独任制 : 自らの権限で自ら監査を行うこと。
業務監査 : 監査対象部署の実際の業務があらかじめ定めておいた業務フロー通りに行われているかどうかをチェックするための監査。

原則4-11(抜粋)
また、監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。

ただし、監査役には取締役会に出席して意見を陳述する権利がある。この点からすると、個々の監査役が取締役会における議論にしっかりと参加できるように、取締役会全体に求められるスキルの一部をそれぞれが有することを示すのも一定の意義はあろう。すなわち、取締役会のスキル・マトリックスに監査役も加え、スキルの保有状況を示すということだ。

実例として、資生堂の招集通知におけるスキル・マトリックスが挙げられる(同社の2021年3月株主総会招集通知16ぺージ参照)。取締役とともに監査役についても「経営・国際経験」「マーケティング・当社事業および業界経験」「ESG(環境・社会・ガバナンス)」といったスキルの保有状況を説明しており、取締役と遜色のないバックグラウンドを有する監査役が取締役会の議論に参加している様子が窺える。

また、キリンホールディングスはIR資料において「監査役会のスキルセット」を開示している(7ページ参照)。資生堂と同様、スキル項目は取締役会と全く同じもの(企業経営、ESG/サステナビリティ、財務・会計、人事・労務/人材開発など)となっている。やはり監査役会に特有のスキルを示すのではなく、あくまで取締役会での議論を想定したものと言える。

なお、キリンの上記資料では、取締役会と同じスキル項目を用いて「執行役員のスキルセット」も開示されている。執行役員は必ずしも取締役会で議論に参加する立場ではないが、補充原則4-11①が「取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべき」としているように、スキル・マトリックスは取締役の選任に活用することが期待されている。その意味では、サクセッション・プランの一環として執行役員のスキル・マトリックスを開示することには意義があると言えるだろう。

2021/05/17 政策保有株売却やTCFD関連でアクティビストの株主提案相次ぐ

アクティビストの活発化に伴い、株主総会における株主提案が年々目に付くようになってきた。今年も4月下旬あたりから、株主提案を受けた3月決算の上場会社の取締役会による(株主提案への)反対意見のリリースが出始めている。

その中で最も話題となっているのは、・・・

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2021/05/17 政策保有株売却やTCFD関連でアクティビストの株主提案相次ぐ(会員限定)

アクティビストの活発化に伴い、株主総会における株主提案が年々目に付くようになってきた。今年も4月下旬あたりから、株主提案を受けた3月決算の上場会社の取締役会による(株主提案への)反対意見のリリースが出始めている。

その中で最も話題となっているのは、東京証券取引所ビルを所有することで知られる平和不動産に対する香港のLIM JAPAN EVENT MASTER FUNDの株主提案だ。同ファンドは「JPX(日本取引所グループ)からの天下りの禁止」を定款に盛り込むよう求めるとともに、「政策保有株式として保有するJPXの株式の全てを処分する」旨の定款変更も提案している。その理由として、「東証から天下り慣行のもと、東証ビルの賃料は低下を続け、周辺地域よりも低い」と指摘したうえで、平和不動産がJPX株式の保有目的とする「当社の旗艦ビルである東京証券取引所ビルや大阪証券取引所ビル等のテナントとして、不動産賃貸に係る取引実績があり、同社との取引関係の強化を図ることは、中長期的な事業展開上有益であると考えられる」との主張は誤っており、「JPX 株式の保有は当社(平和不動産)のメリットとなるどころか、かえって当社株主の利益が損なわれる事態となっている」ことを挙げている。

政策保有株式関連の定款変更と言えば、国内アクティビストのストラテジックキャピタルの動きも見逃せないところだ。ストラテジックキャピタルはここ数年、定款変更により政策保有株式売却や資本コストの開示を求める内容の株主提案を投資先に対して実施している。今年(2021年)、ストラテジックキャピタルが株主提案を実施している投資先は下記の5社となっている(このほか、文化シャッターに対しても株主提案を実施していたものの、株主提案の書面が会社法の定める株主提案の行使期限(株主総会開催予定日の8週間前まで)である2021年4月26日に到達しなかったため当該提案は不受理となっている)。

資本コスト : 株主など資本提供者の期待利回りのこと。資本コストが小さい=投資家にとってのリスクが小さいということになる。ここで「株主など」としたのは、負債にも資本コストはあるためである。株主資本により資金調達を行った場合のコストが「株主資本コスト」であり、株主資本の提供者である株主が期待する収益率のことを指す。一方、他人資本コストとは要するに借入金の金利を指す。この株主資本と他人資本を合わせた「総資本」のコストが「総資本コスト」である。総資本コストは、株主資本コストと他人資本コストを、株主資本(株式の時価総額)と他人資本(負債総額)の合計額に占めるそれぞれ額で按分(加重平均)した上で合計するため「加重平均資本コスト」、英語では「Weighted Average Cost of Capita=WACC(ワック)」と呼ばれる。

・極東貿易
・有沢製作所
・世紀東急工業
・淺沼組
・ワキタ

このうち極東貿易に対しては、定款に「有価証券の投資や運用」を目的として定めていないにもかかわらず純投資目的の上場株式を保有している点について、「極東貿易への株主提案(2021年)に関する特集サイト」まで設けたうえで、「株式会社極東貿易の純投資目的株式の保有は定款に違反?」と問題提起している。

極東貿易のように、純投資目的の株式を有する一方で、定款に「有価証券の投資や運用」といった目的を定めていない上場会社は少なくない。もっとも、上場会社が定款に「有価証券の投資や運用」といった目的を追加すべきかというと、そうとは言えない。政策保有株式に対する厳しい視線が注がれる中、株主総会で「有価証券の投資や運用」を定款の目的に追加するための会社提案を行うことはまさに“藪蛇”となる。実際、定款の目的に「有価証券の保有及び運用」を入れている有沢製作所は、ストラテジックキャピタルから同目的を定款から削除するよう株主提案を受けている。要するに、仮に定款に「有価証券の投資や運用」を目的として定めたとしても、結局は定款変更を迫られるだけなので意味がないということだ。

ちなみに、ストラテジックキャピタルが昨年(2020年)実施した同様の株主提案の際の賛成率(小数点未満を四捨五入)は下表のとおり。定款変更の要件である3分の2の賛成には程遠いとは言え、一定数の賛成を得たという事実をもって会社にプレッシャーをかけてくることは間違いない。資本コストの低い上場会社や政策保有株式を数多く抱えている上場会社にとってはやはり気になる存在と言えよう。

  極東貿易 有沢製作所 世紀東急工業 淺沼組
資本コストの開示に係る定款変更の件 37% 20% 28% 株主提案なし
政策保有株式を売却するよう求める定款変更の件 31% 11% 株主提案なし 21%

(2021年)5月7日までパブリックコメント手続きに付されていたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂案で、はじめてCGコードに明文化され、にわかに脚光を浴びているのが「TCFD」(気候関連財務情報開示タスクフォース。改訂案の補充原則3-1③参照)だが、TCFD関連の株主提案も散見される。昨年(2020年)、日本のNPO気候ネットワークがみずほフィナンシャルグループに対して「パリ協定の目標に沿った投資のための経営戦略を記載した計画の開示」を定款に定めるよう定款の一部変更を求める株主提案を行ったものの、否決された。賛成率は34%であり、定款変更に必要な賛成率(3分の2)の半分程度の賛成票しか集められなかったが、気候ネットワークによる調査()によると、機関投資家213機関・団体のうち8割を超える172機関・団体(系列会社による議決権行使結果を含む)が同株主提案に賛成していた点は注目に値する。これには、同株主提案に議決権行使助言会社大手のISSおよびグラスルイスが賛成を推奨したことも影響したものと思われる。気候ネットワークは、今年(2021年)は三菱UFJフィナンシャル・グループにTCFD関連の株主提案を実施している(気候ネットワークのリリースはこちら)。三菱UFJフィナンシャル・グループにおける株主提案の賛成率がどの程度の水準になるのか、気になるところだ。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。この開示フレームワークは制度開示書類、つまり日本においては有価証券報告書への適用を想定しているが、日本においては現状、金融庁が気候変動リスクについて「開示義務化の予定はない」と明言しており、有価証券報告書だけでなく、統合報告書など投資家向け任意開示書類を含む開示媒体への“自主的な”記載が推奨されている。
パリ協定 : 2015年末にパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み。パリ協定では、18世紀後半に起きた産業革命前と比較し、気温の上昇を「2℃以内」にとどめることを目標としており、各国に対し、温室効果ガスの排出削減目標を設定のうえ、5年ごとに進捗報告およびより厳しい目標への更新を行うことを義務付けている。

 気候ネットワークが、機関投資家の議決権行使結果について公開情報に基づき実施した調査(2020年12月末時点)

また、住友商事はオーストラリアの環境NGO MARKET FORCESからの株主提案で「石炭、石油、ガス事業関連資産の保有量、事業規模をパリ協定の目標に沿ったものにするための指標と短期、中期、長期の目標を含む事業戦略を記載した計画を決定し、年次報告書にて開示する。」との条項を定款に規定することを求められている。MARKET FORCESは、提案の理由として「他の商社が石炭関連資産(一般炭鉱及び発電所)を処分する中、当会社の石炭事業方針は現在でも、既存の炭鉱取得や発電所新設を許容している。当会社は、石油、ガス事業に関しても、パリ協定と整合するカーボンニュートラル化への道筋を示していない。」ことを挙げているが、住友商事の取締役会は「当社は本株主提案に含まれる事業戦略を記載した計画の策定や開示に既に取り組んでおり、本株主提案が求める内容を新たに定款に記載する必要はございません。なお、定款は会社の組織等に関する基本的な事項を定めるものであり、また、必要に応じて機動的に方針や計画を変更し、それを速やかに実行していく観点から、個別具体的な方針等を定めることはせず、現行定款の内容を維持したいと考えています。」として本株主提案に反対の方針を示している(住友商事のリリースはこちら)。

みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、住友商事のいずれも気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同の意を表明していることが株主提案のきっかけの一つになっており、TCFDに賛同している企業(2021年4月30日時点で386の企業・機関)も同様の株主提案を受ける可能性はゼロではない。TCFDに賛同した上場会社は、株主から定款変更を求められても「気候変動に関連する計画は策定済みで、開示も十分に行っているので定款変更の必要はない」と反駁できるようにしておきたい。

2021/05/15 【役員会 Good&Bad発言集】流通株式の定義変更

東京証券取引所市場第一部に上場しているA社(3月決算)では、2021年5月に開催された取締役会で総務担当取締役が東証の市場再編に係る第二次制度改正の内容と流通株式の定義変更がもたらすA社への影響について報告を行ったところ、次の3人が発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「『上場株式のうち、国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等(金融機関及び金融商品取引業者以外の法人)が所有する株式』に取引先持株会が保有する株式は含まれないことになったとはいえ、取引先持株会は形を変えた政策保有であることから、これを解消していくことが課題であると思います。」

取締役B:「確かに東証が実施したパブコメ手続きに寄せられたコメントを読むと、投資家が取引先持株会や従業員持株会といった持株会に対して厳しい視線を注いでいることを痛感しました。」

取締役C:「当社の株主には保険会社や取引先企業も少なくないので、それらが保有している当社株式について、所有目的が『純投資』である旨当社が作成する書面を東証に提出する方法が認められたのは大変助かりますね。」

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2021/05/15 【役員会 Good&Bad発言集】流通株式の定義変更(会員限定)

<解説>
東証、第二次制度改正事項確定版を公表

2021年5月13日のニュース『流通株式時価総額基準クリアへ「意思表明」のリリース相次ぐ可能性も』でお伝えしたとおり、東京証券取引所が2021年4月30日に「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備に伴う有価証券上場規程等の一部改正について(第二次制度改正事項)」を公表しました(新旧対照表はこちら)。第二次制度改正事項は、プライム・スタンダード・グロースの3つの新市場区分の上場制度、上場会社の市場選択の手続きおよび新市場区分の上場維持基準を充たさない場合の経過措置を定めるものです(施行は2022年4月4日から)。

東証では2020年12月25日から2021年2月26日にかけて第二次制度改正事項のパブコメ案を公表し、パブコメを広く募集していました。寄せられたコメントのうちもっとも多かったのが流通株式の定義変更に関する質問や反対意見でしたので、以下、東証の考え方とともに紹介します。定義が変更された流通株式についての理解を進めるためにぜひ参考にしてください。

流通株式の定義変更について
■大量保有報告書等の届出がない場合の所有目的の判定について
番号 コメント 東証の考え方
30 大量保有報告書等の届出がない場合は、どのような手続きになるのか。大量保有報告書の提出義務のない5%以下保有で、実質的に純投資として保有している事業法人等も多くいると思われ、それらを流通株式としてカウントしないと上場維持基準をクリアできないケースが出てくることから追加的申告により流通株式としてカウントできるよう検討をお願いしたい。 原案を一部修正し、次のとおり取り扱うものといたします。
※ 国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等が所有する株式のうち、所有目的が「純投資」であって、最近5年間における取引の実績があるものについて、例外的に流通株式として取り扱うものとします。
※ 所有目的の確認は、大量保有報告書及び変更報告書の「保有目的」欄の記載に加えて、大量保有報告書の提出対象とならない場合(保有割合が5%未満である場合)において、上場会社が当取引所所定の様式に基づいて株主が作成した書面を提出したときは、当該書面に基づいて行うものとします。この場合において、上場会社及び株主は、当取引所が提出された書面を公衆の縦覧に供することに同意するものとします。
※ また、株主の所有目的や売買実績の確認方法を含め、より実態に即した流通株式の客観的で透明性の高い判定方法について検討を深めるとともに、新たな市場区分への移行後の状況を踏まえた見直しを行うものとします。
31 大量保有報告書の提出義務者に該当しない株主であっても、純投資を目的とした投資家は数多くいると思われ、そのような投資家に純投資目的の所有であるという書面(統一フォーマット)を提出いただき、「流通性の乏しい有価証券」から除外することが正しい流通株式把握につながると考える。
35 法人持株は、たとえ1単元の小口の所有であっても流動株から外すという考えは現実に即しているとは言えないのではないか。

東証が原案を一部修正した結果、下図(東証の図解資料「流通株式の定義見直しについて」より)のように、流通株式から除く「国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式」の「例外」に「5年以内の売買実績が確認できる株主の所有分に限る」が加わるとともに、「大量保有報告書等」の「等」には「所有目的を記載した株主作成の書面」が加わることになります。
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■保険会社保有分について
番号 コメント 東証の考え方
39 生命保険会社が統合報告書等で純投資と開示している場合についても、流通株式として取り扱うべきである。具体的には、「純投資目的」と「純投資目的以外の目的」の区分を明確化し、「純投資目的以外の目的」である投資株式についての詳細を開示することで、当該株式以外を純投資とみなすことについて検討いただきたい。 保険会社が所有する株式についても、所有目的が「純投資」であること及び最近5年間の売買実績が確認できる場合には、流通株式として取り扱うことといたします。
・保険会社が保険業法に基づき開示している資料(例えば、ご指摘の統合報告書やディスクロージャー誌)において、個々の銘柄別の所有目的及び売買実績が開示されている場合に、上場会社は、当該開示資料を株主が作成する当取引所所定の書面に代えて、当取引所に提出できるものとします。
41 保険会社の所有する株式は流通株式から除外されることになっているが、生保や損保は「純投資」として所有しているケースが多く、議決権行使に当たっても投資家としてスチュワードシップ・コードや各社独自の議決権行使基準に基づいて行使しているため、流通株式に含めるべき。
■中小企業投資育成株式会社保有分について
番号 コメント 東証の考え方
42 中小企業投資育成株式会社の上場会社の株式所有に関して、当該会社の設立法令に基づく事業に関する規則において、「投資先企業の上場後に本会社の保有する株式を売却する場合には、市場の動向等を勘案しつつ売却するものとする」とあり、上場後は必ずしも長期継続所有を前提としていないとの観点から、流通株式数の計算方法において事業法人等から当該会社を除き、流通株式として取扱うことが相当。 中小企業投資育成株式会社が所有する株式についても、上述のとおり、所有目的が「純投資」であること及び最近5年間の売買実績が確認できる場合には、流通株式として取り扱うことといたします。
■信託銀行保有分について
番号 コメント 東証の考え方
46 信託銀行名義にて信託化されているもののうち、退職給付信託等ではなく、単純に管理を委託しているだけの信託口の所有分に関する取扱いはどうなるか。実質的に持合が認容されることとなるのではないか。また、潜脱目的で信託化した場合の罰則を設ける予定はあるか。 今般の流通株式の定義の見直しでは、信託銀行名義の株式については、市場における一定の流動性が確認されたことから、流通株式から除かないこととしています。
一方で、信託銀行名義の株式のうち、銀行勘定として保有されている株式は、市場における流動性が低いとのご指摘があったことを踏まえ、今後、その実態の検証を行ったうえで、当該株式数を把握するための実務上の対応等について検討することといたします。
なお、信託設定により信託銀行名義に変更された場合であっても、当取引所が上場基準の潜脱が行われたと認めるときには、「その他当取引所が固定的と認める株式」に該当し、流通株式から除かれる場合があります。
■取引先持株会保有分について
番号 コメント 東証の考え方
47 取引先持株会の取引先会社が保有する株式は、「上場株式のうち、国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等(金融機関及び金融商品取引業者以外の法人)が所有する株式」に該当するという理解でよいか。また、取引先持株会の会員には個人も含まれるが(フランチャイズオーナーや損保代理店経営者等)、個人所有分は持合株式に該当しないという理解でよいか。 取引先持株会やその他法人格を有さない「組合」が所有する株式については、国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等が所有する株式には、定義上、該当いたしません。
財団法人については、事業法人等に該当することから、今般の流通株式の定義見直しにおいて、流通株式から除くこととなります。
49 必ずしも事業法人の定義に入るか明確ではないと思われる安定株主、取引先持株会や財団は、流通株式に含めるべきではない。取引先持株会は形を変えた政策保有であり、財団についても近年は安定株主として設立するケースもあり、いずれも流通株式にいれるのは不適当であると考える。
■把握が難しい株主の有する株式について
番号 コメント 東証の考え方
50 流通株式の定義に係る見直しでは、「上場会社の役員の配偶者及び二親等以内の血族」と「上場会社の関係会社及びその役員」の持株数が控除される案となっている。この点に関してそれぞれ非常に広範囲となる可能性があり、上場会社及び対象者にとって非常に負担が大きい他、原案では個人情報の観点からも運営上の懸念があるのではないか。また、実効性の観点からも問題が生じる恐れがあると考えられるため、再考いただきたい。 ・今般の市場区分の見直しでは、上場審査基準との共通化を図る観点から、上場維持基準においても「役員以外の特別利害関係者」として、①上場会社の役員の配偶者及び二親等内の血族、②役員又は前①に掲げる者が議決権の過半数を所有する会社、③上場会社の関係会社及びその役員の所有分を流通株式から除くこととしております。
・お寄せいただいたご意見のとおり、上場会社において上述の①~③の所有状況の把握が難しい場合があることを踏まえ、現に把握可能な範囲で当取引所に報告を行うことで足りることとします。例えば、①のうち役員と同居していない者や海外に居住している者、③のうち有価証券報告書等の「第一部 企業情報」「第1 企業の概況」「4.関係会社の状況」において個別名の記載のない関係会社及びその役員の所有分などについては、把握が難しい場合があるものと考えられます。
・なお、上述の①~③のうち、所有状況の把握が難しい者が存在する場合には、当取引所にその旨及び理由をご報告いただくこととします。
51 流通株式の定義に係る見直しにおいて、役員の「配偶者及び二親等以内の血族」(例えば、兄弟姉妹)から、保有株式の申告について協力を拒否された場合は、上場会社としては、どのように「株券等の分布状況表」を提出すればよいか。
54 「上場会社の関係会社の役員」の所有株式を確認・把握することについて、たとえば、1,000名を超過する場合にも、この全員について基準日時点の保有株式数を正確に把握することが求められるのか。基準日以降、膨大な準備、情報集約、計算、検証に膨大な労力および個人情報の取り扱いによるリスク等が想定される。
■役員持株会のうち執行役員保有分の扱い
番号 コメント 東証の考え方
55 役員持株会について、会社法上の役員と執行役員等が会員になっている場合において、会社法上の役員の保有分のみが非流通株式という理解でよいか。 役員持株会については、現行どおり、役員の所有する株式に該当するものとして取り扱うこととします。なお、会社法上の役員及び執行役員等が会員になっている場合は、会社法上の役員の所有分のみが流通株式から除かれます。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役A:「『上場株式のうち、国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等(金融機関及び金融商品取引業者以外の法人)が所有する株式』に取引先持株会が保有する株式は含まれないことになったとはいえ、取引先持株会は形を変えた政策保有であることから、これを解消していくことが課題であると思います。」
コメント:Aの発言のとおり、『上場株式のうち、国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等(金融機関及び金融商品取引業者以外の法人)が所有する株式』に取引先持株会が保有する株式は含まれないことになりました。また、「取引先持株会は形を変えた政策保有である」との問題意識のもと、解消することを課題として認識できているAの発言はGoodです。

BAD発言はこちら

取締役B:「確かに東証が実施したパブコメ手続きに寄せられたコメントを読むと、投資家が取引先持株会や従業員持株会といった持株会に対して厳しい視線を注いでいることを痛感しました。」
コメント:東証が実施したパブコメ手続きに寄せられたコメントには取引先持株会に対する厳しい視点のものが見受けられました(例えば10番のコメント49番のコメントなど)が、従業員持株会についてのコメントは見受けられませんでした。「取引先持株会」と「従業員持株会」は、「持株会」という括りでは同じですが、「取引先持株会」は形を変えた政策保有であるとともに、参加者である取引先の資金繰りに確実にマイナスの影響を与え、主催会社が優越的地位を利用して下請けに対して持株会へ加入するようプレッシャーを強めるなど評判が悪い仕組みであるのに対し、「従業員持株会」は奨励金を併用することで従業員の長期の資産形成を実現するとともに、従業員が自社の株価を意識するようになるなど一般的に評判が良い仕組みと言え、同列に論じることはできません。実際に東証が実施したパブコメ手続きに寄せられたコメントには従業員持株会に対する厳しい視線が注がれたコメントはないことから、Bの発言はBad発言です。

取締役C:「当社の株主には保険会社や取引先企業も少なくないので、それらが保有している当社株式について、所有目的が『純投資』である旨当社が作成する書面を東証に提出する方法が認められたのは大変助かりますね。」
コメント:東証がパブコメの結果を受け確定版で採用したのは、所有目的が『純投資』である旨「株主」が作成する書面を東証に提出する方法であり、Cの「当社」が作成するとのくだりは書面作成主体を誤ったBad発言です。