2021/04/05 改訂CGコード解説(1) 「取締役会の機能発揮」に関する原則・補充原則

既報のとおり、(2021年)3月31日に開催された金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)の第26回会合に「コーポレートガバナンス・コード改訂案」(以下、CGコード改訂案)が諮られたところだが、今回改訂された17原則のうち、「中長期的な持続可能性」がともに今回の改訂のメインテーマとなったのが、「取締役会の機能発揮」だ(2021年4月1日のニュース『速報・CGコード改訂 プライム市場向け特則は「独立性の向上」と「情報開示の充実」で各3原則』参照)。今回の改訂に向け昨年秋に再開したフォローアップ会議では比較的前半に議論されたテーマであり、12月18日に公表された意見書(5)「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保」(以下、意見書(5))で既に論点が整理されていた。以下、今回改訂された「取締役会の機能発揮」に関する原則・補充原則について解説する。・・・

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2021/04/05 改訂CGコード解説(1) 「取締役会の機能発揮」に関する原則・補充原則(会員限定)

既報のとおり、(2021年)3月31日に開催された金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)の第26回会合に「コーポレートガバナンス・コード改訂案」(以下、CGコード改訂案)が諮られたところだが、今回改訂された17原則のうち、「中長期的な持続可能性」がともに今回の改訂のメインテーマとなったのが、「取締役会の機能発揮」だ(2021年4月1日のニュース『速報・CGコード改訂 プライム市場向け特則は「独立性の向上」と「情報開示の充実」で各3原則』参照)。今回の改訂に向け昨年秋に再開したフォローアップ会議では比較的前半に議論されたテーマであり、12月18日に公表された意見書(5)「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保」(以下、意見書(5))で既に論点が整理されていた。以下、今回改訂された「取締役会の機能発揮」に関する原則・補充原則について解説する。

原則4-8 独立社外取締役の有効活用
現行 改訂
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。
また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。
また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

プライム市場の上場会社に対し、独立社外取締役の3分の1選任が実質的に義務付けられ(3分の1未満の場合はエクスプレイン)、さらに「必要と考える」会社では過半数とすべきとの内容は意見書(5)と同じであり、想定内の改訂と言える。

ただ、フォローアップ会議で独立社外取締役の過半数の選任を求める意見が相次いだことを勘案すると、ここで改めて考えておきたいのが、「過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社」とは何かという点だ。例えば以下のような観点から「必要と考える」会社かどうかを判断することが想定される。

業種・・・グローバル展開していること
規模・・・時価総額が大きいこと
事業特性・・・迅速・果断な意思決定が必要なこと
機関設計・・・指名委員会等設置会社であること
会社を取り巻く環境・・・不祥事等により、投資家から厳しい視線が注がれていること
補充原則4-10① 独立した指名・報酬委員会
現行 改訂
上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。 上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名(後継者計画を含む)・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする独立した指名委員会・報酬委員会を設置することにより、ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、これらの委員会の適切な関与・助言を得るべきである。
特に、プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきである。

本改訂補充原則は「独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合」に適用されるものであり、独立社外取締役が過半数いる監査役会設置会社または監査等委員会設置会社には適用されない。もっとも、指名委員会等設置会社では指名・報酬委員会の設置が法定されていることに鑑みると、基本的には全ての上場会社が両委員会を設置することが望ましいと言える。

今回の改訂では、カッコ書きにより指名委員会の機能の一つに「後継者計画」があることが示された。指名委員会で後継者計画について審議していない場合や、そもそも後継者計画が策定されていない場合には、本改訂補充原則についてエクスプレインすることは避け難いだろう。

また、指名・報酬委員会には「ジェンダー等の多様性やスキルの観点」が必要とされた。特に指名委員会における役員の選任議論においては、ダイバーシティの促進や(スキル・マトリックスを活用するなどして)スキルの組み合わせを意識する必要がある。

さらに、プライム市場向けの特則として、「独立社外取締役を過半数とすること」が基本、とされた。ここで注目したいのは「基本」という文言だ。「基本」という以上、仮に各委員会の構成員の過半数が独立社外取締役でなかったとしても、必ずしもエクスプレインが求められることにはならないと考えられる。例えば独立社外取締役と社内取締役が半数ずつで、委員長は独立社外取締役というケースなどはコンプライすることも許容され得るだろう。

ただし、本特則ではプライム市場上場会社に対し、①委員会構成の独立性に関する考え方、②権限・役割等、を開示することを求めている。すなわち、本特則はいわゆる開示原則()に該当し、コーポレートガバナンス報告書にこれらの事項を記載しなければならない。①は各委員会の過半数が独立取締役であることや、過半数には達していないものの独立性を確保できている理由など、②は指名委員会であれば後継者計画を含むこと、報酬委員会であれば報酬体系の策定に関与すること、などが記載内容として考えられる。

 現行CGコード上は以下の11の原則が開示原則に該当する。
・原則1‒4 政策保有株式
・原則1‒7 関連当事者間の取引
・原則2‒6 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮
・原則3‒1 情報開示の充実
・補充原則4‒1① 経営陣に対する委任の範囲
・原則4‒9 社外取締役となる者の独立性判断基準および資質
・補充原則4‒11① 取締役会のメンバーのバランス・多様性・規模に関する考え方と取締役の選任に関する方針・手続き
・補充原則4‒11② 社外役員の兼任状況
・補充原則4‒11③ 取締役会全体の実効性についての分析・評価
・補充原則4‒14② 取締役・監査役に対するトレーニングの方針
・原則5‒1 株主との建設的な対話に関する方針
補充原則4-11 取締役会の多様性
現行 改訂
取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法律に関する知識を有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。
取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。
取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法律に関する知識を有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。
取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。

取締役会が備えるべき多様性として、現行CGコードに規定されている①ジェンダーと②国際性に加え、③職歴と④年齢が新たに追加された。このうち③職歴は、冒頭で挙げた原則4-8【独立社外取締役の有効活用】が求める割合(3分の1)の独立社外取締役を選任すれば、自然と確保できることもあろう。一方、④年齢は意識的に年齢層を分散させる必要があり、例えば全員が60歳以上であるような場合には、エクスプレインを検討するべきと考えられる。

なお、フォローアップ会議では「女性取締役の選任(1名など)を義務付けるべき」などの意見も出たが、CGコード改訂案には盛り込まれなかった。数値基準が独り歩きすることで「1名だけいればよい」といった意識が生じることを懸念したものと考えられる。ちなみに、「投資家と企業の対話ガイドライン」(現行および改訂案)は「取締役として女性が選任されているか」を「重点的に議論することが期待される事項」に挙げている(3-6)。

補充原則4-11① 取締役会の多様性の開示
現行 改訂
取締役会は、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。 取締役会は、事業戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。

本改訂原則では、取締役会の構成に関する考え方を「事業戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定」して定めること、すなわち、一般論等ではなく、自社戦略に紐づく独自性の伴った方針を「取締役の有するスキル等の組み合わせ」として開示することが求められている。

具体的な開示方法として、スキル・マトリックスが挙げられているが、「スキル・マトリックスをはじめ」という表現からは、スキル・マトリックスはあくまで例示であって、スキル・マトリックス自体の開示は必須ではないとの解釈もできるが、「例えばスキル・マトリックスなど」といった緩和表現ではなく「はじめ」という強調表現が使用されていることを踏まえれば、本改訂原則をコンプライしていると言えるには、少なくともスキル・マトリックス同様の情報量を提供することが求められよう。

また、本改訂原則には、独立社外取締役に「他社での経営経験」を求める内容も含まれている。企業経営者(もしくは企業経営経験者)である独立社外取締役がいない場合には、エクスプレインを検討すべきである。なお、3月31日に開催されたフォローアップ会議における説明資料には、他社での経営経験について「CEO等の経験者に限られるという趣旨ではない」との注記がある(2ページ下部参照)。例えば副社長、CFOなど、経営トップでなくても「他社での経営経験を有する者」に該当すると考えられる。

補充原則5-1① 対話における面談者
現行 改訂
株主との実際の対話(面談)の対応者については、株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で、経営陣幹部または取締役(社外取締役を含む)が面談に臨むことを基本とすべきである。 株主との実際の対話(面談)の対応者については、株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で、経営陣幹部、社外取締役を含む取締役、または監査役が面談に臨むことを基本とすべきである。

面談の対応者としての「社外取締役」について、今回の改訂によりカッコが外されたことで、より必要性が強調された形となっている。もっとも、その前後には「合理的な範囲で」および「基本とすべき」との緩和表現は現行CGコードのまま残されていることから、現状は社外取締役による面談を実施していなくても必ずしもエクスプレインとしなくてもよいと考えられる。なお、CGコード改訂案とともに明らかにされた「投資家と企業の対話ガイドライン」の改訂案では、面談の対応者に関する適切な取り組みとして「筆頭独立社外取締役」の設置を例示している(2021年4月2日のニュース「改訂対話ガイドラインの位置付け」参照)。

また、面談の対応者として新たに監査役が追加された点も注目される。今回の改訂には「監査の信頼性の確保」に関するものも含まれており(改訂補充原則4-3④、改訂原則4-4、改訂補充原則4-13③参照)、監査の実効性を高める観点から監査役に対する期待が高まっていることが背景にあると言えそうだ。

2021/04/02 改訂対話ガイドラインの位置付け

(2021年)3月31日に開催された金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)にはコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の改訂案とともに、投資家と企業の対話ガイドライン(以下、対話ガイドライン)の改訂案が諮られている。CGコードは東証、対話ガイドラインは金融庁の所管という明確な違いはあるが、対話ガイドラインについては・・・

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2021/04/02 改訂対話ガイドラインの位置付け(会員限定)

(2021年)3月31日に開催された金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)にはコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の改訂案とともに、投資家と企業の対話ガイドライン(以下、対話ガイドライン)の改訂案が諮られている。CGコードは東証、対話ガイドラインは金融庁の所管という明確な違いはあるが、対話ガイドラインについてはCGコードとの関係、より端的に言えば企業をどの程度“拘束”するものなのかが明らかでないとの指摘も聞かれる。対話ガイドラインの前文では、対話ガイドラインを「両コード(スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コード)の附属文書」と位置付けたうえで、「このため、本ガイドラインは、その内容自体について、コンプライ・オア・エクスプレインを求めるものではないが、両コードの実効的なコンプライ・オア・エクスプレインを促すことを意図している。企業がコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施する場合(各原則が求める開示を行う場合を含む)や、実施しない理由の説明を行う場合には、本ガイドラインの趣旨を踏まえることが期待される。」と説明されていることからすると、CGコードに準ずる規範性を有しているようも見える。

今回示された改訂対話ガイドラインには、額面通り受け取れば企業に重い負担を課す内容も含まれている。企業としては、果たしてどこまで対応すべきか、悩ましいところだろう。例えば「(1)株主総会の在り方」には下記の項目が新設されている(改訂対話ガイドラインの5ページ参照)。

4-1-1. 株主総会において可決には至ったものの相当数の反対票が投じられた会社提案議案に関して、株主と対話をする際には、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析結果、対応の検討結果が、可能な範囲で分かりやすく説明されているか。
4-1-2. 株主総会の招集通知に記載する情報を、内容の確定後速やかにTDnet及び自社のウェブサイト等で公表するなど、株主が総会議案の十分な検討期間を確保することができるような情報開示に努めているか。
4-1-3. 株主総会が株主との建設的な対話の場であることを意識し、例えば、有価証券報告書を株主総会開催日の前に提出するなど、株主との建設的な対話の充実に向けた取組みの検討を行っているか。 また、不測の事態が生じても株主へ正確に情報提供しつつ、決算・監査のための時間的余裕を確保できるよう、株主総会関連の日程の適切な設定を含め、株主総会の在り方について検討を行っているか。

以下略

このうち、例えば4-1-3の「有価証券報告書を株主総会開催日の前に提出する」ことなどは企業にとってハードルが高い。しかし、対話ガイドラインとはいわば“投資家との対話における留意点”であり、投資家の関心事や投資家から問われる可能性のある論点を指摘・整理したものと考えておけばよいだろう。したがって、今回の改訂項目についても、必ずしも実現することが求められているわけではない。同じく4-1-3にある「株主総会関連の日程の適切な設定」には株主総会開催日の後ろ倒しが含まれると考えられるが、後ろ倒しのボトルネックとなっていた法令を改正するなど政府が環境を整えても結局普及していない(2017年12月20日のニュース「会社法施行規則改正案が公表、株主総会の後ろ倒しに向けた条件すべて整う」参照)ことが示すように、これらの項目が改訂CGコードではなく改訂対話ガイドラインに盛り込まれたことには理由がある。

同様に、「(4)株主と企業の対話の充実」として「4-4-1. 株主との面談の対応者について、株主の希望と面談の主な関心事項に対応できるよう、例えば、筆頭独立社外取締役の設置など、適切に取組みを行っているか」との内容が盛り込まれた点も注目される。筆頭独立社外取締役の設置については、昨年末(2020年12月18日)に公表され、その内容の多くが改訂CGコードにも反映されたフォローアップ会議の意見書(5)「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保」において、「今後、コーポレートガバナンス・コード改訂に向け、検討を更に深めていく」論点として明記されていた(同意見書の3ページ冒頭参照)。これが改訂CGコードではなく改訂ガイドラインに盛り込まれた背景には、企業側からは「筆頭独立社外取締役の役割がはっきりしてない」「社外取締役の間で序列をつけることには違和感がある」といった声が上がっていたことがある。それは、「例えば」「など」という“緩和表現”が入ったことからもうかがえる。

このように対話ガイドラインはCGコードより位置付けは下がるとはいえ、無視してよいというわけではない。例えば今回新設された1-3には「取締役会の下または経営陣の側に、サステナビリティに関する委員会を設置するなど、サステナビリティに関する取組みを全社的に検討・推進するための枠組みを整備しているか」との記述がある。ここでは、「委員会の設置」はあくまでも例示であって、後段の「サステナビリティに関する取り組みを全社的に検討・推進するための枠組みの整備」の方に重点が置かれている。すなわち、委員会を設置することは必須ではないものの、サステナビリティが投資家の大きな関心事であることは言うまでもない。サステナビリティについて何も取り組まない企業は投資家から見放されることにもなりかねない。上述のとおり「投資家との対話における留意点」をまとめた対話ガイドラインの内容が実際の対話でテーマとなったり、投資家からそれらへの取り組みについて質問を受けたりする可能性は十分にある。企業としては少なくとも回答は用意しておきたいところだ。

2021/04/01 速報・CGコード改訂 プライム市場向け特則は「独立性の向上」と「情報開示の充実」で各3原則

昨日(2021年3月31日)に開催された金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)の第26回会合に、昨年秋から検討されてきた「コーポレートガバナンス・コード改訂案」(以下、CGコード改訂案)が諮られた。今後は、今回のフォローアップ会議での議論を踏まえて必要な加筆・修正が行われたうえで、4月中には東証によりパブリックコメントに付されることになる。

今回改訂が予定されている原則は、・・・

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2021/04/01 速報・CGコード改訂 プライム市場向け特則は「独立性の向上」と「情報開示の充実」で各3原則(会員限定)

昨日(2021年3月31日)に開催された金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)の第26回会合に、昨年秋から検討されてきた「コーポレートガバナンス・コード改訂案」(以下、CGコード改訂案)が諮られた。今後は、今回のフォローアップ会議での議論を踏まえて必要な加筆・修正が行われたうえで、4月中には東証によりパブリックコメントに付されることになる。

今回改訂が予定されている原則は、「新設が5」、「修正が11」の合計「16」原則におよぶ(2018年に実施された前回改訂時は新設5、修正9の合計14)。これらのうち6つの原則において、プライム市場向けの「特則」が入っている。なお、本文ではなく「考え方」が修正された基本原則2、および「サステナビリティー」の「ー」と「(持続可能性)」というカッコ書きをカットしたのみの原則2-3は、今回「改訂された原則」からは除外している(これらを含めれば18原則が改訂されたことになる)。

原則 修正
/新設
内容 今回の改訂
1-2④ 修正 電子行使/英訳 プライム市場上場会社は機関投資家が ICJ を利用可能とすべき
2-3① 修正 持続可能性への取り組み 重要なサステナビリティ課題を例示し、収益機会につながるものと意識付け
2-4① 新設 多様性の確保 ・多様性確保の考え方と測定可能な目標および達成状況を開示すべき
・人材育成方針と社内環境整備方針を、実施状況と併せて開示すべき
3-1② 修正 英語での情報開示 プライム市場上場会社は招集通知のみならず必要な開示資料を英語で開示・提供すべき
3-1③ 新設 サステナビリティの開示 ・戦略開示の際、サステナビリティ課題や人材・知財の投資について開示すべき
プライム市場上場会社 TCFD などのフレームワークで気候変動リスクを開示すべき
4-2② 新設 サステナビリティの監督 ・取締役会はサステナビリティへの取り組みについて基本方針を策定すべき
・取締役会は経営資源の配分や事業ポートフォリオ戦略を実効的に監督すべき
4-3④ 修正 リスク管理 グループ全体のリスク管理体制を、内部監査部門を活用して監督すべき
4-4 修正 監査役(会)の役割・責務 監査役・監査役会は、監査役の選解任について適切な判断を行うべき
4-8 修正 独立社外取締役の有効活用 プライム市場上場会社は、独立社外取締役を3分の1、必要なら過半数選任すべき
4-8③ 新設 上場子会社等の規律付け ・支配株主がいる場合は、独立社外取締役を3分の1選任すべき
・支配株主がいるプライム市場上場会社は独立社外取締役を過半数選任するか、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべき
4-10① 修正 独立した指名報酬委員会 ・指名委員会において後継者計画を扱うべきことを明確化
プライム市場上場会社では過半数を独立社外取締役とし、委員会の権限など開示すべき
4-11 修正 取締役会の多様性 取締役会が備えるべき多様性として「職歴、年齢」を追加
4-11① 修正 取締役会の多様性の開示 ・いわゆるスキル・マトリックスをはじめ、スキルの組み合わせを開示すべき
・他社での経営経験を有する者を独立社外取締役に含めるべき
4-13③ 修正 内部監査部門との連携 内部監査部門が取締役会・監査役会に直接報告する仕組みが望ましい
5-1① 修正 対話における面談者 面談への対応者には社外取締役を含まれるべきことを強調、また、監査役を追加
5-2① 新設 事業ポートフォリオの説明 戦略公表の際、事業ポートフォリオの基本方針や見直し状況を示すべき

ICJ : 東証と米国Broadridge社の合弁会社。ICJ(インベスター・コミュニケーションズ・ジャパン)社は2004年から機関投資家向け電子投票システム「議決権電子行使プラットフォーム」の提供を開始している。
TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。この開示フレームワークは制度開示書類、つまり日本においては有価証券報告書への適用を想定しているが、日本においては現状、金融庁が気候変動リスクについて「開示義務化の予定はない」と明言しており、有価証券報告書だけでなく、統合報告書など投資家向け任意開示書類を含む開示媒体への“自主的な”記載が推奨されている。

改訂された16原則を、フォローアップ会議が検討項目として設定した「コーポレートガバナンスの課題」の項目(カテゴリー)別に分けると、「取締役会の機能発揮」が5原則と最も多く、これに「中長期的な持続可能性」が4原則で続いている。いずれも2020年12月18日に公表された意見書(5)「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保」において取り上げられたテーマであり、今回の改訂におけるメインテーマと位置付けられる。次に多いのは「監査の信頼性の確保」の3原則だが、これは2019年4月24日に公表された意見書(4)「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」で指摘されていたテーマであり、積み残していた課題に対応したものと言えるだろう。また「意見書(4)」では「グループガバナンスのあり方」、特に上場子会社の利益相反問題も指摘されていた。

上場子会社の利益相反問題 : 例えば親会社の要請を受け、上場子会社のサービスを親会社にだけ一般価格よりも割安の価格で提供した場合、親会社はコストダウンを図ることができる一方で、子会社の収益機会はその分損なわれ、ひいては子会社の一般株主の配当減や株価下落につながることになる。

ガバナンス課題の項目 原則 内容
取締役会の機能発揮 4-8
4-10①
4-11
4-11①
5-1①
独立社外取締役の有効活用
独立した指名・報酬委員会
取締役会の多様性
取締役会の多様性の開示
対話における面談者
資本コストを意識した経営 5-2① 事業ポートフォリオの説明
監査の信頼性の確保 4-3④
4-4
4-13③
リスク管理
監査役(会)の役割・責務
内部監査部門との連携
グループガバナンスのあり方 4-8③ 上場子会社等の規律付け
株主総会関係 1-2④
3-1②
電子行使/英訳
英語での情報開示
中長期的な持続可能性 2-3①
2-4①
3-1③
4-2②
持続可能性への取り組み
多様性の確保
サステナビリティの開示
サステナビリティの監督

なお、プライム市場向けの特則が設定された6原則は、大きく「独立性の向上」と「情報開示の充実」に分けられる(各3原則)。プライム市場は「我が国を代表する投資対象として優良な企業が集まる市場」として、グローバル投資家の投資対象となることが想定されているため、グローバル投資家の主要な関心事である「独立性の向上」と「情報開示の充実」を図ったということだ。このようなグローバル投資家の要請に応えられるか、あるいは応える必要があるかによって、各上場会社はプライム市場を選択すべきかどうかを判断することになろう。

独立性の向上 情報開示の充実
取締役会の機能発揮 4-8 独立社外取締役の有効活用 株主総会関係 1-2④ 電子行使/英訳
4-10① 独立した指名・報酬委員会 3-1② 英語での情報開示
グループガバナンス
のあり方
4-8③ 上場子会社等の規律付け 中長期的な
持続可能性
3-1③ サステナビリティの開示

2021/03/31 2021年3月度チェックテスト

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【問題1】

2022年1月1日以降は「税務署長への届け出」だけで電子帳簿等保存制度の利用が可能になる。


正しい
間違い
【問題2】

粉飾決算が発覚した場合、粉飾決算を行っていた期間に有価証券届出書の提出が必要となる資金調達をしていれば、金融商品取引法上の課徴金の額が膨れ上がることとなる。


正しい
間違い
【問題3】

監査法人が監査クライアントから対価性のない報酬を受け取ると、公認会計士法上、当該クライアントに対して監査サービスを提供できなくなってしまう。


正しい
間違い
【問題4】

「現物出資スキーム」により株式報酬を付与した場合や改正会社法(2021年3月1日施行)で新たに認められた取締役等への株式の無償交付を行った際には、関連当事者取引注記を行う必要がある。


正しい
間違い
【問題5】

独立社外取締役の増加に伴い、筆頭独立社外取締役を選任することの有用性は高まっている。


正しい
間違い
【問題6】

職場で容姿等を揶揄するようなハラスメント発言があったとしても、それを言われた本人が不快に感じていなければ、「第三者」が民事訴訟を起こすことはできない。


正しい
間違い
【問題7】

スキル・マトリックスを開示する際に、そもそも何故そのスキルが自社にとって必要なのか、何故そのスキルを自社で発揮してもらいたいのかといった「理由」もあわせて開示している日本企業が多い。


正しい
間違い
【問題8】

企業によって「取締役会の実効性評価への外部機関の関与の方法」は「実効性評価の全体を外部機関にアウトソーシングする」「社内事務局による実効性評価の実施を外部機関がサポートする」「社内事務局が実施した評価を外部機関がレビューする」など様々である。


正しい
間違い
【問題9】

開示ルールが改正され、2021年3月決算企業から「重要な会計上の見積りに関する注記」として感応度分析の開示が必須となった。


正しい
間違い
【問題10】

上場会社が社長の管理する財団に自己株式を破格の値段で譲渡すると同時に、同じ株数だけ市場から自己株式の取得を行えば、非支配株主にとっては“株式の希薄化を回避”できることから、非支配株主が何ら実質的な損を蒙ることはない。


正しい
間違い

2021/03/31 2021年3月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
上場会社が社長の管理する財団に自己株式を破格の値段で譲渡すると同時に、同じ株数だけ市場から自己株式の取得を行うことをもって、非支配株主にとっては“株式の希薄化を回避”できると主張した実際の事例をもとにした設問です(事例の詳細については下記のニュースを参照してください)。そもそも相応の価値のある会社財産(自己株式)を破格の値段で社長の管理する財団に譲渡した時点で非支配株主は実質的に損をすることになります(以上より、問題文は誤りです)。本当に“株式の希薄化を回避”したいのであれば、そもそも自己株式を破格の値段で社長の管理する財団に譲渡しなければよいだけです。また、本気で非支配株主の持分の価値を高めたいのであれば、シンプルに自己株式の追加取得・消却だけをすればよいはずです。もし社長が心から財団の安定運営を望むのであれば、社長自身が保有する株式を財団に寄付すればよいはずです。それにもかかわらず、株主に「財団への自己株式の破格での譲渡」と「市中からの自己株式の取得」を同時に行うことで“株式の希薄化を回避”できるので「財団への自己株式の破格での譲渡」を認めろというのは詭弁に過ぎず、非支配株主を軽視した施策と言わざるを得ません。

こちらの記事で再確認!
2021年3月30日 シノケングループ、財団への自己株式「1円」売却を撤回(会員限定)

2021/03/31 2021年3月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
上場会社が社長の管理する財団に自己株式を破格の値段で譲渡すると同時に、同じ株数だけ市場から自己株式の取得を行うことをもって、非支配株主にとっては“株式の希薄化を回避”できると主張した実際の事例をもとにした設問です(事例の詳細については下記のニュースを参照してください)。そもそも相応の価値のある会社財産(自己株式)を破格の値段で社長の管理する財団に譲渡した時点で非支配株主は実質的に損をすることになります(以上より、問題文は誤りです)。本当に“株式の希薄化を回避”したいのであれば、そもそも自己株式を破格の値段で社長の管理する財団に譲渡しなければよいだけです。また、本気で非支配株主の持分の価値を高めたいのであれば、シンプルに自己株式の追加取得・消却だけをすればよいはずです。もし社長が心から財団の安定運営を望むのであれば、社長自身が保有する株式を財団に寄付すればよいはずです。それにもかかわらず、株主に「財団への自己株式の破格での譲渡」と「市中からの自己株式の取得」を同時に行うことで“株式の希薄化を回避”できるので「財団への自己株式の破格での譲渡」を認めろというのは詭弁に過ぎず、非支配株主を軽視した施策と言わざるを得ません。

こちらの記事で再確認!
2021年3月30日 シノケングループ、財団への自己株式「1円」売却を撤回(会員限定)

2021/03/31 2021年3月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
開示ルールが改正され、2021年3月決算企業から「重要な会計上の見積りに関する注記」の開示が必要となりましたが、感応度分析の開示は必ず記載しなければならない項目ではありません(問題文は誤りです)。とは言え、投資判断への影響を考えれば感応度分析の結果は積極的な開示が望まれるところです。

こちらの記事で再確認!
2021年3月25日 (新用語・難解用語)感応度分析(会員限定)