2020/10/30 2020年10月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
2021年3月1日に施行される改正会社法202条の2(取締役の報酬等に係る募集事項の決定の特則)により、「無償」で株式報酬を支給することが可能となります(問題文の前段は正しいです)。もっとも、この特則は、上場しているホールディングカンパニーが非上場の子会社の役員報酬として用いることはできません。つまり、子会社の取締役には無償での株式を交付することはできないということです(以上より、問題文の後段は誤りです)。

こちらの記事で再確認!
2020年10月5日 子会社の取締役等に株式が無償交付できないことにより生じる手間(会員限定)

2020/10/30 2020年10月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
2022年3月期から有価証券報告書の財務諸表以外の非財務情報(その他の記載内容)について、従来の監査報告書に独立した区分を設けたうえで、会計監査人に対し「その他の記載内容」を特定するとともにそれに関する監査人の責任や作業の結果の記載を求めるよう監査基準が改正される見込みです。そして監査基準改正後は、取締役会議事録は監査人が「その他の記載内容」を理解するうえで必要となる根拠資料として今以上に監査人にとっての重要性が高まるものと思われます。監査人が取締役会への出席を求める声もあるだけに、その高まりを防止するために企業には取締役会議事録の記載の充実が必須となってくることは間違いありません(問題文は正しいです)。

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2020年10月2日 改訂監査基準案が明らかに 監査法人の取締役会出席を防ぐには?(会員限定)

2020/10/30 2020年10月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
2022年3月期から有価証券報告書の財務諸表以外の非財務情報(その他の記載内容)について、従来の監査報告書に独立した区分を設けたうえで、会計監査人に対し「その他の記載内容」を特定するとともにそれに関する監査人の責任や作業の結果の記載を求めるよう監査基準が改正される見込みです。そして監査基準改正後は、取締役会議事録は監査人が「その他の記載内容」を理解するうえで必要となる根拠資料として今以上に監査人にとっての重要性が高まるものと思われます。監査人が取締役会への出席を求める声もあるだけに、その高まりを防止するために企業には取締役会議事録の記載の充実が必須となってくることは間違いありません(問題文は正しいです)。

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2020年10月2日 改訂監査基準案が明らかに 監査法人の取締役会出席を防ぐには?(会員限定)

2020/10/29 【失敗学第77回】理研ビタミンの事例(会員限定)

概要

理研ビタミン(東証一部上場)の中国子会社において、実在性を確認できない取引があり、監査法人が監査意見を表明できなくなった(意見不表明)。

経緯

理研ビタミンが2020年9月23日にリリースした「特別調査委員会の調査報告書」によると、一連の経緯は次のとおり。

1994年
理研ビタミンが中国の青島福生食品の株式100%を取得し、同社を子会社化する。

2018年
11月29日:青島福生食品で、エビの加工販売取引(代表的な加工例はブロック凍結された原料の大きな塊を解凍し、水に浸し、小さな塊にして再凍結をするというもの)が始まり、2020年4月まで続く。青島福生食品における2018年12月期のエビ加工販売取引に係る売上高は42億円であった。

2019年
青島福生食品における2019年12月期のエビ加工販売取引に係る売上高は116億円に増え、ほとんどが特定の会社に対する売上であった。そしてそれらの売上の実在性を示すエビデンスが極端に不足していた。

2020年
4月20日:理研ビタミンは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、一部の海外子会社の決算業務および監査手続きに遅れが生じているとして、4月27日に予定していた2020年3月期決算の決算発表を5月14日に延期することを公表する。
5月中旬:理研ビタミンは、会計監査人の有限責任あずさ監査法人(以下、あずさ監査法人)から、青島福生食品におけるエビの加工販売の取引について、取引の実在性を確認するために追加手続きを実施する必要があり、会社法上の監査報告書を当初の予定どおりに提出することができない旨の通知を受ける。
7月20日:理研ビタミンは、あずさ監査法人から、KPMG(中国)が実施した追加手続きでは取引の実在性を確認するに足る外部証憑を入手することができず、また青島福生食品から十分な協力を得られなかったことなどにより、現時点において監査意見を表明するに足る十分な監査証拠を得られておらず、無限定適正意見を表明できない可能性がある旨の通知を受ける。
7月27日:理研ビタミンは、2020年3月期決算の決算発表を引き続き延期することを公表。また、より主体的な調査を行うために、外部の専門家である弁護士および公認会計士並びに社外取締役監査等委員で構成される特別調査委員会を設置して調査を行うことを、臨時取締役会において決議する。
9月23日:理研ビタミンは「特別調査委員会の調査報告書」を公表する。
9月30日:理研ビタミンは関東財務局に2020年3月期の有価証券報告書および過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を提出(あずさ監査法人は訂正した会計処理について裏付けとなる十分な記録及び資料を会社から入手することができず十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかったとして限定付適正意見を表明)。また、理研ビタミンは2021年3月期の第1四半期報告書を9月30日の提出期限には提出できなくなったとして、関東財務局へ提出期限を10月16日に延長することの承認申請を行い、承認される。
10月7日:理研ビタミンは青島福生食品において棚卸資産の評価に関する不適切な会計処理の疑義が判明したことから、あらためて特別調査委員会に調査を委嘱することを決定する。
10月15日:理研ビタミンは、2021年3月期第1四半期報告書を関東財務局より延長承認された提出期限である2020年10月16日までに提出できない旨の開示を行う。
10月28日:理研ビタミンは2016年3月期、2017年3月期、2018年3月期、2019年3月期の決算について、青島福生食品の棚卸資産の評価が適切に行われていなかったと判断し、連結財務諸表の再訂正を行う。また、2020年3月期の連結財務諸表についても同じ理由で訂正を行う。また、提出が遅れていた四半期報告書もようやく関東財務局に提出する。これに対して、あずさ監査法人は、「当該たな卸資産の評価に関する事実関係、他の財務数値への影響及び内部統制への影響についての調査を継続中であるため、当監査法人は当該調査の結果を評価できておらず、また、青島福生食品有限公司の全社的な内部統制に重要な不備が存在するため、同社の他の財務数値において、上記の(四半期)連結財務諸表に重要な虚偽表示を生じさせる取引やその他の事象があるか否かについて判断することができない」として、監査意見(四半期についてレビュー意見)を表明しなかった(意見不表明)。

内容・原因・改善策

理研ビタミンが2020年9月23日に公表した「特別調査委員会の調査報告書」やその後にリリースした内容、あずさ監査法人の監査報告書等によると、中国子会社において実在性を確認できない取引が生じたことやあずさ監査法人が意見を表明できなくなったことの原因等は次のとおりとされている。

実在性を確認できない取引
内容 理研ビタミン(東証一部上場)の中国子会社において、実在性を確認できない取引があった。
原因 (親会社の中国子会社への関与不足)
理研ビタミンは青島福生食品とは事業上の関係が希薄であったことから、理研ビタミンが青島福生食品に人材派遣をすることもなく、青島福生食品の経営は現地に大幅に任せていた。
(親会社の中国子会社への監督不足)
理研ビタミンが、実際に青島福生食品の納入先まで辿って売掛金が回収されているか否か等のチェックを行ったり、人事労務やコンプライアンスに関する問題等の日常的な報告を受けたりするような仕組みは採られていなかった。また、青島福生食品の社内における昇格、降格、ローテーション、新規採用等の人事について理研ビタミンが関与する仕組みも採られていなかった。
(親会社の監査部による監査がJ-SOXに重きを置き過ぎており、業務監査が行われていなかった)
理研ビタミン監査部は、青島福生食品との関係では、J-SOX制度対応として、全社統制、決算・財務報告プロセスの評価に加えて、業務プロセスに関し、購買プロセス及び在庫管理プロセスを評価対象としている。その一方で、販売プロセスについては評価の対象としておらず、また業務監査については実施されていなかった。
(IT管理の状況)
青島福生食品ではシステムのIT化が進んでおらず、手書きの証憑類を用いていた。
対応策 【青島福生食品における改善提案】
(1) 適切な証憑の作成及び管理の徹底
本調査は取引の実在性を確認することができないという結果に終わったが、その背景としては、青島福生食品において適切な証憑を作成し管理することが徹底されていなかったことが挙げられる。証憑の作成および管理は、企業間の取引、とりわけ上場会社のグループ会社における取引においては基本的な事項であり、今後、青島福生食品において改善する必要がある。また、その実効性を高めるために、研修等による従業員教育、外部の専門家や理研ビタミンによる定期・不定期の状況確認等が行われる必要がある。

(2) IT管理の導入
上記のとおり、青島福生食品では、仕入れ、在庫管理、加工、販売等の各プロセスについて、ITシステムを導入した管理が行われていない。ITシステムによる管理を充実させることで過去における各プロセスの状況を網羅的かつ正確に検証することが可能となると考えられる。理研ビタミンにおいては、青島福生食品への ITシステムの導入の必要性を認識しながらも先延ばしとなっていた経緯があるが、早急な整備が求められる。
また、ITシステムを導入した場合には、それを適切に活用することのできる人材が必要であるため、外部からの人材採用や、ITシステムに関する従業員教育を図る必要がある。

(3) 青島福生食品の内部管理体制の改善
青島福生食品には独自の監査部門がなく、コンプライアンス上の問題や不正事案について内部で管理する機能が十分に備わっていないが、これらは、適法かつ適切な事業運営を行っていくために必要な機能であり、整備することが求められる。また、青島福生食品から理研ビタミンに対して問題事象を含めた情報が集約される仕組みを整備することも、グループ・ガバナンスの観点から求められる。

(4) コミュニケーションのルートの充実化
現在は、理研ビタミンの役職員が青島福生食品の役職員とコミュニケーションをとろうとする場合、青島福生食品の日本語話者または理研ビタミンの中国語話者のいずれかを介してコミュニケーションをとっている。理研ビタミンと青島福生食品との間のコミュニケーションをより密にしていく必要があると考えられるところ、上記 2 名はいずれも単なる通訳ではなく実務を担っているため、即時に気軽に通訳を依頼することができるとは限らない面もあると考えられる。その観点からは、上記の 2 名に限られず、単純な通訳の人員も含めて、より人員を充実させることも検討されるべきである。
また、理研ビタミンの役職員の中国語教育や青島福生食品の役職員の日本語教育も検討されるべきである。

(5) サクセッションプランの策定
青島福生食品は、理研ビタミンによる買収から現在に至るまでFA氏が総経理を務め、全権を掌理してきたが、次世代の経営陣について理研ビタミンでは構想を有していない。
今後も青島福生食品が企業として継続した事業運営を行っていくためには、同氏の代替または後継になる人物をどのように採用または育成するのか、サクセッションプランの策定が急務である。また、平時からの指揮命令系統の明確化に加えて、同氏の突然の不在その他の緊急事態に対応するためBCPの策定も急務といえる。

(6) グループ・ガバナンス体制の全体的な見直し
青島福生食品が理研ビタミングループの基本的な理念や価値観を共有することが必須である。そして、そのためには、たとえば、頻繁なメッセージの発信、人材の相互交流等により、相互のコミュニケーションの量および質を飛躍的に高める必要がある。
また、経営陣または管理職の一部を理研ビタミンから派遣するなどによって、現地における事業運営の状況を理研ビタミンの視点からより的確かつ適時に把握することも肝要である。青島福生食品は、製品の種類においてもビジネス環境においても理研ビタミンとは異なるところが大きく、理研ビタミンとしても、青島福生食品の日常の業務運営そのものに接し、青島福生食品の実態を理解することが、ガバナンスを機能させる前提として重要となる。
また、現状、青島福生食品における昇格、降格、ローテーション、採用等の人事については、理研ビタミンが関与することはないが、実効的なガバナンスを確立するという観点から、この仕組みは再検討に値する。
監査部による青島福生食品に対する監査は、J-SOX 制度の対応に限定され、また業務プロセスの評価対象は購買・在庫管理プロセスに限定されていたが、販売プロセスを評価範囲に加えることも検討に値する。また、J-SOX 制度の対応だけでなく、重点テーマを明確にした業務監査を行うことも有用であると考える。

【持分の見直し】
買収後25年以上が経過し、上記の経緯を踏まえれば、改善策を実効的に行えない場合も想定し得る。そのような場合には、理研ビタミンとしては、同社を理研ビタミングループに保有し続けることの意味を再検討し、持分の見直しも含めた関係の検討を行うべきである。

監査法人の意見不表明
内容 理研ビタミン(東証一部上場)の中国子会社において、実在性を確認できない取引があった(上記)ことから特別調査委員会がいったん報告書を提出し同社が会計処理の訂正を行ったが、監査法人は訂正の会計処理について裏付けとなる十分な記録および資料を会社から入手することができず十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかったとして限定付適正意見を表明した。そのあとすぐに別の問題(棚卸資産の評価の問題)も発覚したことから再度特別調査委員会が調査をすることとなり、その結論が出る前に同社が財務報告の訂正や四半期報告書の提出を行ったため、監査法人は意見を表明できなくなった(意見不表明)。
原因 (一度目の特別調査委員会の調査が不十分なままに終わった理由)
① 青島福生食品の設立以来の総経理であり、本件取引に関する事実関係も一番知っているFA氏は、調査開始後間もなく体調悪化による入院を理由として青島福生食品に出社しなくなり、その後は青島福生食品において理研ビタミンとのコミュニケーションを担当するFB氏を通じて連絡をとることしかできなくなった。そのため、青島福生食品に対する特別調査委員会の調査への対応の中心人物が不在の状態となった。
② 特別調査委員会の調査が進むにつれ青島福生食品の財務部部長のFC氏は体調不良を理由に、また出納担当者FD氏は家庭内の事情等を理由に休みがちとなり、インタビューの実施が困難となった。また他の財務部スタッフも調査期間中に一部の資料提出を拒む姿勢を継続したため、青島福生食品から十分な資料の提供を適時に受けることができなかった。
③ 特別調査委員会がデジタルフォレンジック調査を行おうとしたものの、青島福生食品では会社のサーバーが存在せず役職員はフリーメールを業務利用しており、また、業務で利用するPCについてIT担当者による管理もされていないため、個々の業務用PCについて役職員の同意を得てデータを保全する必要があった。FA氏はデジタルフォレンジック調査の実施に一旦は同意したものの、同氏不在中の総経理代行として調査対応の責任者となった副総経理であるFE氏から実施を拒絶された。同氏によれば、国家機密が存在する可能性、社内の共産党委員会に関係する情報の存在、従業員のプライバシー等の問題があり、これらに関する懸念が払拭できないためとのことであった。特別調査委員会は複数回にわたり説得を試みたが、合理的な期間内に実効性のあるデジタルフォレンジック調査を実施する目途が立たなかったため、実施を断念した。
④ 本件取引の相手方については、一定の範囲でインタビューを実施することができたが、特別調査委員会からの質問に対して十分な回答を得るには至らず、また、本件取引に関する証憑類の提出を依頼したが、仕入先1社から出荷関連の証憑の一部のサンプルを取得した以外は拒否された。
⑤ コロナウイルス感染症拡大防止策の観点から、特別調査委員会の委員または日本の調査チームは青島福生食品を訪問することができず、また、理研ビタミンからも青島福生食品に対して調査対応支援のための役職員を派遣することができなかった。

(二度目の特別調査委員会の調査の結果が出てきていないのに財務報告の訂正や四半期報告書の提出を行った理由)
一度目の特別調査委員会の調査結果が公表されてから2021年3月決算の第1四半期報告書の提出期限(関東財務局が延長承認したのは2020年10月16日)までに2021年3月決算の第1四半期報告書を提出しようとしたところ、すぐに棚卸資産の評価の問題が判明し、特別調査委員会が2度目の調査を開始したものの2020年10月16日に2021年3月決算の第1四半期報告書の提出を行うことができなくなり(四半期報告書の提出遅延)、当該承認を得た期間の経過後8日目(休業日を除外)以内に四半期レビュー報告書を添付した四半期報告書を提出しないと上場廃止になることから、理研ビタミンとしては、当該承認を得た期間の経過後8日目(休業日を除外)にあたる2020年10月28日に、特別調査委員会の2度目の調査結果を待たずに四半期報告書を提出せざるを得なくなった。一方、あずさ監査法人としては、「当該たな卸資産の評価に関する事実関係、他の財務数値への影響及び内部統制への影響についての調査を継続中であるため、当監査法人は当該調査の結果を評価できておらず、また、青島福生食品有限公司の全社的な内部統制に重要な不備が存在するため、同社の他の財務数値において、上記の四半期連結財務諸表に重要な虚偽表示を生じさせる取引やその他の事象があるか否かについて判断することができなかった」ことから、2021年3月決算の第1四半期報告書の四半期連結財務諸表に対する四半期レビューの結論を表明しえなかった。

<この失敗から学ぶべきこと>

本件では理研ビタミンの特別調査委員会が青島福生食品の不正会計を調査しようとしても、調査にさまざまな制約が生じたことに加え、エビデンスが著しく不足していることも判明したことから、取引の実在性の確認することはできないのはもちろんのこと、取引を取り消したことの正当性すら確認できないという結果に終わりました。つまりエビデンスが極端に不足していたため「進むこと」(取引が実在していることの立証)も「戻ること」(取引を取り消すことの正当性の立証)も困難となったわけです。また「共産党委員会に関係する情報の存在」を理由に業務用PCのフォレンジック調査も拒否されるとは驚きの念を禁じ得ません。コロナ禍における調査の困難性、中国子会社の特殊リスクが改めて浮き彫りになったと言えます。

特別調査委員会の調査報告書によると、理研ビタミンの監査部による青島福生食品に対する監査は、J-SOX制度の対応に限定されていたそうです。J-SOX制度の導入により内部監査の職務がJ-SOX対応偏重になっている上場会社は少なくありません。従来型の業務監査の重要性を今一度見直すようにしたいところです。

理研ビタミンが意見不表明の事態を甘んじて受け入れてでも2020年10月28日までに四半期報告書を提出することを選択したのは、理研ビタミンのリリース等からは読み取れないものの、東京証券取引所の上場廃止基準の規定ぶりにも理由があるものと推測されます。すなわち、東京証券取引所の上場廃止基準には、四半期レビュー報告書の提出遅延をした場合は直ちに上場廃止になるのに対して、四半期レビュー報告書に「意見の表明をしない」旨が記載された場合は「直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき」に上場廃止にすると定められています。四半期レビュー報告書の提出遅延は問答無用で上場廃止になるのに対し、意見不表明であれば東証の判断が入ることから上場廃止にならない可能性があるわけです。もちろん四半期レビュー報告書の提出遅延の再延長も可能ですが、先行きが不透明であれば、いったん意見不表明でもいいので第1四半期を決着させたいというニーズがあったものと推測されます。今後同社の上場が維持されるかどうかは、特別調査委員会の2回目の調査結果と東証の判断に委ねられることとなります。

2020/10/28 アクティビストの業務改善提案への対応が遅れ社長の解任請求へ

従来のアクティビストの提案は増配や自己株取得などの株主還元が中心であったが、最近は政策保有株式の売却や社外役員の選任(増員)などガバナンス領域にも踏み込んできている(2020年7月29日のニュース「日英投資ファンドからの株主提案が示唆する“アクティビズム”の幕開け」参照)。こうした中、アクティビストからさらにもう一歩踏み込んだ提案を受けたのが・・・

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2020/10/28 アクティビストの業務改善提案への対応が遅れ社長の解任請求へ(会員限定)

従来のアクティビストの提案は増配や自己株取得などの株主還元が中心であったが、最近は政策保有株式の売却や社外役員の選任(増員)などガバナンス領域にも踏み込んできている(2020年7月29日のニュース「日英投資ファンドからの株主提案が示唆する“アクティビズム”の幕開け」参照)。こうした中、アクティビストからさらにもう一歩踏み込んだ提案を受けたのが東京ドーム(東証一部上場)だ。

香港のファンドOasis Investments II Master Fund Ltd.(以下、オアシス)が東京ドームの発行済株式の5%以上の株式を取得したことは、同社が2019年12月に提出した大量保有報告書で明るみになった。オアシスが東京ドームに目を付けたのは、東京ドームが好立地にある施設を充分に活かせておらず、事業展開に改善の余地が高いと踏んだからだ。オアシスは2020年2月に「より良い東京ドームへ」と題する業務改善計画案を東京ドームに提案し、改革を迫った。この業務改善計画案から伝わってくるのが、オアシスの“本気度”だ。オアシスの提案には、他のアクティビストの提案に多く見られる「株主還元」や「ガバナンス」関連の事項ではなく、現地に足を運んで探り出した問題点、改革に資する見積りや経済効果まで記載されるなど、リアリティに満ちたものとなっている。また、他の球場やサッカー場の状況やウェイバックマシンのデータも活用するなどエビデンスが充実しており、説得的な内容となっている。一度でも東京ドームに訪れた者であれば「確かにそうだな」と首肯せざるを得ない提案ばかりであり、もはやアクティビストの枠を超え、腕利きの業務改善コンサルタントが“無料”で改善コンサルティングをしてくれているようなものと言っても過言ではない。

ウェイバックマシン : アメリカの非営利団体が運営しているインターネットアーカイブ(書庫)。既に更新されて通常であれば見ることができない過去のウェブサイトの情報も保存されている。

もっとも、この提案自体は“無料”とは言っても、あくまで5%以上の株式を有するアクティビストの提案であり、決して無視できるものではない。東京ドームもそれを承知の上で対応を進めていた。その内容は同社が読売新聞社・読売巨人軍と連名で公表した2020年7月20日付けの「世界トップレベルの清潔・安全・快適なスタジアムを目指して」で明らかにされている。ただ、東京ドームの提案はオアシスの目にはまだまだ不十分と映ったようだ。オアシスは2020年10月19日に東京ドームに対して、「同社の改革は十分ではなく、現経営陣に任せていては同社が本来有する企業価値を著しく毀損する」として、代表取締役を含む3名の取締役を解任するための臨時株主総会の招集を請求した。これを受け東京ドームは10月20日、2020年12月中旬を目途に開催する臨時株主総会の基準日を11月11日に設定する旨のリリースを行っている。

両者の主張(対応策)を対比させると下表のとおり。なお、オアシスの提案はコロナ禍が深刻化する前のものであるため、「インバウンド観光の活発化の享受」など今となっては色あせた提案も含まれていることは否めないが、それでもなお高い説得力を有していると言える。

論 点 オアシスの主張 東京ドームの対応 東京ドームの対応に対するオアシスの評価
東京ドームの資産活用 広告収入極大化とスポンサーのコンフリクト解消のため、デジタルサイネージ(電子看板システム)を導入すべき。これにより、2021年度の利益を14億円押し上げる効果が期待できる(オアシス試算)。また、いまの広告主の多くはB2B企業(アズビル、フジテック、東洋水産等)であるが、経営陣はB2C企業を開拓していく必要性がある。

コンフリクト : オアシスの調査によれば、東京ドームがラグビーワールドカップ2019日本大会と2020年の東京オリンピックの会場に選ばれなかったのは、各大会のスポンサーと東京ドーム内のアナログ看板のスポンサーが競合関係にあったことが原因とされている。

メインビジョンを第1期工事(2022年プロ野球開幕に向けて更新)と第2期工事(2023年プロ野球開幕に向けて更新)でデジタル化し、スコアボードや試合演出のみならず、デジタルサイネージなど、新たな情報発信デバイスとして機能拡張。 抜本的な業務改善策というにはほど遠く、オアシスが「より良い東京ドームへ」で提案したような、デジタルサイネージについての言及があるものの、3年越しの計画となっておりスピード感が欠けている。
命名権契約による収益化をしておらず、収益機会を逸失している。命名権契約締結をすべき。2021年度には6億円の利益押し上げ余地が期待できる(オアシス試算)。 対応状況や対応方針は公表資料からは明らかではない。 オアシスが「より良い東京ドームへ」の中で指摘した問題と課題に対応する具体的な工程と計画を策定できていない。
テクノロジーへの投資が不十分。例えば、イギリスのウェンブリー・スタジアムではeチケットが導入されており、入場ゲートは携帯電話を用いて入場することのできる回転式ゲートの設置により無人化されているのに対し、東京ドームではeチケットは導入されておらず、入場の際に仮設フェンスと大量のスタッフの間を抜ける必要がある。また、イギリスのトッテナム・ホットスパー・スタジアムのコンコースはデジタルサイネージの導入によりイベントごとへの対応が容易であるのに対し、東京ドームではイベントごとにアナログ看板を設置し直している。 ・2022年シーズンに向けコンコースのデジタルサイネージの研究を進める。
・2020年シーズンからスタートするジャイアンツ公式アプリを活用した「スマホチケットの導入」ならびに紙チケットによる入場者に対して「バーコード読取端末による入場チェックの電子化と自動ゲートの導入」を行い、入場列の混雑緩和、スタッフとの接触機会の回避、顧客の利便性向上を図る。
・2021年シーズンよりスマホチケットと自動ゲートを導入。
モバイルアプリを導入すれば、座席のアップグレードやテイクアウト用の飲食物の注文、リプレイ再生、選手情報の表示を可能にして収益化を図れるが、東京ドームにはそのようなモバイルアプリはない。また、モバイルPOSも導入できていない。東京ドームはテクノロジーに投資してゲスト体験の向上と飲食・広告による収入の拡大を図るべき。 読売巨人軍は2020年6月に読売ジャイアンツ公式アプリ「GIANTS APP」をリニューアルし、試合に連動してジャイアンツ選手情報を表示したり、ジャイアンツ選手にエールを送ったりできる機能を追加済み(こちらを参照)。
東京ドームにおける飲食部門の平均客単価は、主要球場の平均を大きく下回っている。客単価の増加・会場内の滞在時間の増加・購買に係る待ち時間の短縮などを実施すべき。これにより、2021年度に利益を12億円押し上げる効果を期待できる(オアシス試算)。 2020年に東京ドーム内 4F『タベルバ!』・『グッズバ!』をオープン。
来客者へのプレミアムシートの提供が不十分。ボックス等の座席構成を見直してよりグレードの高いプレミアム席をつくり、改善すべき。これにより、2021年度に利益を4億円上昇させる効果を期待できる(オアシス試算)。 2階内野コンコースに新たにスイートルーム「MASU SUITE」を設置し、ラグジュアリーな観戦体験の提供と、コンコースの混雑緩和を推進。
東京ドームホテルのオペレーター変更 都内のホテルは全体的に売上と平均客室単価が上昇傾向にあるにもかかわらず、東京ドームホテルは過去2年間でむしろ、売上と稼働率が低下し、宴会事業も低下している。また、設備投資も不十分(ウェイバックマシンによる比較はこちらを参照)。世界的なホテルブランド事業者(ハイアット、インターコンチネンタル、ヒルトン、マリオット)と提携してオペレーションを改善することで、2021年度には利益が12億円上昇する見込み(オアシス試算)。 対応状況や対応方針は公表資料からは明らかではない。
遊園地事業(東京ドームアトラクションズ)の改革 東京ドームアトラクションズにはテーマやストーリー性がない。投資も十分ではなく、日本のインバウンド観光の活発化を享受できずにいる。結果として、ゲスト一人当たりの売上額は著しく低下している(東京ドームアトラクションズのゲスト一人当たりの売上は2019年度で618円であり、2012年と比べると27%も減少)。日本のコンテンツ制作会社との提携を行って東京ドームアトラクションズを現代的なテーマパークにすることで、2021年度には13億円の押し上げ効果がある(オアシス試算)。 対応状況や対応方針は公表資料からは明らかではない。
ノンコア資産の見直し 経営陣は熱海ベイリゾート後楽園と松戸競輪場の戦略的再検討を実施し、こうした資産を処分するか、引き続き経営するかを検討すべき 対応状況や対応方針は公表資料からは明らかではない。
コーポレート・ガバナンスの改革 東京ドームの2019年度の役員報酬は、同社の業績や株価との連動性がほとんどないため経営陣が企業価値を最大化しようとするインセンティブは、最低限にとどまっていた。 2020年度から役員の報酬に株式報酬を導入し、固定報酬の20%程度相当が置き換わる予定。 ・東京ドームでは役員が株式報酬を受け取ることができるのは退任時に限られるため、東京ドームでの在任期間中はキャピタルリスクが乏しい。
・業績連動報酬の報酬全体額に占める割合が小さい。
・業績連動報酬の主要業績評価指数(KPI)が開示されていない。
・取締役会は独立性に欠け、独立の会長が存在せず、多様性がない(全員が日本人男性)
・長岡勤代表取締役社長が東京ドームの取締役会議長を兼任している。真に独立した独立社外取締役を取締役会議長とすべき。
・独立社外取締役の割合を上げるべき。また独立性についてより厳しい条件とし、在任期間の長い取締役(秋山智史氏(16.8年)、森信博氏(14.8年)、井上義久氏(12.8年)、または同社株式持ち合い企業の関係者を除外すべき。
・東京ドームは「指名委員会等設置会社」へ移行すべき。
対応状況や対応方針は公表資料からは明らかではない。 下記の3名は解任が相当。
・長岡勤代表取締役社長は、長期に亘り当社の保有資産を有効活用できないまま潜在的な企業価値を引き出せなかったことや、オアシスからの業務 改革の提案に対して対話を回避してきたことへの責任があることから取締役として不適任。
・社外取締役である秋山智史氏は在任期間が長すぎる(16.8年)ので交代が必要。
・森信博氏は在任期間が長すぎる(14.8年)ことに加え、出身母体(銀行)の関係性から独立社外取締役としての適格性に疑問がある。

なお、東京ドームはコロナ禍の中で、主にコロナ対策として下記の改装工事を実施していた。

・コンコースに大型の送風機を30台設置
・選手ロッカー・監督コーチ室等のエリア並びにスイート倶楽部・パーティルーム全室に紫外線照射装置を設置
・2階スタンドの観客の飛沫が1階スタンドに落ちないための工夫として、「透明のひさし」を2階スタンド最前部に設置
・手洗いスポットを12箇所新設

もちろん、こうした衛生面の投資も必要ではあるが、東京ドームのようなアミューズメント施設では、改装工事中に収益が落ち込むのは確実であるため、コロナ禍の中で営業規模を縮小せざるを得ない状況を寧ろ好機として抜本的な業務改善策を実行し、コロナ後の将来の収益機会を拡大すべきであったというオアシスの指摘はもっともと言わざるを得ない。

東京ドームが2020年12月に開催する予定の臨時株主総会でオアシス以外の株主がどのような判断を下すのか、注目されるところだ。

2020/10/27 近年反対行使が相次ぐ退職時報酬を支給した各社の工夫

近年、取締役等への退職慰労金支給議案について機関投資家の賛成を得るのはますます厳しくなっているが(2020年9月24日のニュース『議決権行使結果の個別開示で判明、「平均反対率」が最も高い運用機関は?』参照)、当フォーラムがTOPIX100採用企業の2019年度版有価証券報告書(以下、有報)における役員報酬に関する記載を分析したところ、・・・

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2020/10/27 近年反対行使が相次ぐ退職時報酬を支給した各社の工夫(会員限定)

近年、取締役等への退職慰労金支給議案について機関投資家の賛成を得るのはますます厳しくなっているが(2020年9月24日のニュース『議決権行使結果の個別開示で判明、「平均反対率」が最も高い運用機関は?』参照)、当フォーラムがTOPIX100採用企業の2019年度版有価証券報告書(以下、有報)における役員報酬に関する記載を分析したところ、取締役等の退任時に何らかの退職時報酬を計上した企業は4社にとどまることが判明した。下表は4社の退職時報酬の概要である。

会社名 機関設計 報酬内容 対象 人数 金額
SMC 監査役会設置会社 退職慰労金 社内取締役 9人 3千5百万円
三菱商事 監査役会設置会社 積立型退任時報酬 社内取締役 9人 9千7百万円
三菱電機 指名委員会等設置会社 退任慰労金 社内取締役 3人 4千6百万円
執行役 21人 2億7千3百万円
社外取締役 6人 1千3百万円
ソニー 指名委員会等設置会社 株式退職金 社外取締役 3人 1億1千1百万円

積立型退任時報酬 : 毎年基本報酬の一定割合の金額を積み立て、役員の退任時に累計額を算出し、取締役会で支給額を決定の上、支給するもの。

近年批判を浴びて来た典型的な退職慰労金を支給したのがSMCだ。一般に退職慰労金は在任期間に応じて金額が高くなるように設計されており、また、金額決定プロセスが不透明であることが多い。役員報酬に適切なインセンティブ性を求める観点から、同種議案に対しては機関投資家が積極的に反対行使しており、これを受けて同制度の打切りが進展している(なお、打切り支給議案に対しても、制度自体に対する批判票なのか、機関投資家による反対行使が目立つ)。

打切り支給 : 退職金制度の変更や役員への昇格、定年延長による雇用形態の変更などに伴い、「在職中」に退職金を支払うこと。

上記の流れを受けて、SMCは本年6月の株主総会で、2名の退任取締役に対する退職慰労金の贈呈議案と共に、制度廃止に伴う打切り支給の議案を上程した。もっとも、前者の賛成率は84.3%、後者は88.1%を確保しており、過半数を外国人投資家が占める同社の株主構成を勘案すると、相当に“健闘”した数字とも言える。これは、同社が株主総会招集通知(以下、招集通知)において退任者2名に対する合計支給金額の上限を6億5千8百万円、打切り支給対象者6名に対する打切り支給の合計額を2億6千1百万円と開示したことが、「一定の透明性を確保している」と評価されたのだろう。

一方、三菱商事の積立型退任時報酬は、昨年6月の株主総会に関する招集通知において、「職務執行の対価として、毎年基本報酬の一定割合の金額を積み立て、役員の退任時に累計額を算出し、支給額を取締役会で決定の上、支給」するものと説明されている。すなわち毎年の基本報酬の一部を後払いにしたものであり、いわゆる退職慰労金とは別のものと理解できる。積立型退任時報酬は株主総会において賞与を除く全報酬の枠の中で承認されており、当該承認以降は取締役会決議によって支給することが可能となっている。

三菱電機の退任慰労金は、有報で「報酬月額及び在任年数等に基づき」金額が決まると説明されており、一見するとSMCの退職慰労金と変わらない。ただし、同社は指名委員会等設置会社であるため、株主総会の決議を経ることなく報酬委員会で退職慰労金の支給を決定することができる。同社の報酬委員会は会社法に従って過半数が社外取締役で構成されているのみならず、委員長も社外取締役が務めるなど独立性が高いことから、退任慰労金についても株主から一定の理解を得られる可能性があろう。

ソニーの株式退職金は、有報で退任者に対する金額だけを計上しているとおり、直近年度における該当者は社外取締役のみだったが、その対象には社内取締役および執行役も含まれる。ソニーも三菱電機と同じく指名委員会等設置会社であるため、株主総会の決議を経ることなく報酬委員会が株式退職金の支給を決定できる。さらに、有報で支給額について「在任年度ごとに報酬委員会にて定められるポイントを上級役員に付与し、退任時にその累積数に当社普通株式の株価を乗じて算出される金額」と説明しているとおり、ソニーの株式退職金は株式を活用したインセンティブ報酬の側面も備えていることから、株主の支持を得やすいと評価できる。

後払いの報酬制度そのものは、適切に設計・運用すれば「長期的なインセンティブ報酬」として機能することも十分に考えられる。問題となるのは決定プロセスの不透明性であり、退職時報酬を一律に“悪”とみなす必要はないだろう(2017年9月13日のニュース「“退任後給付スキーム”に復活の余地」参照)。上記の各社事例はいずれも株主の理解を得るための工夫の跡が見えるものと言えそうだ。

2020/10/26 KAM導入で高まる会社法監査への任意適用と有報開示早期化へのプレッシャー

周知のとおり上場会社には2021年3月期からKAMが強制適用されるが、KAMは投資家との対話におけるテーマとなることは間違いないだけに、経営陣としては、監査人が自社のKAMとしてどのような項目を選定するのか大いに気になるところだろう。

自社のKAMを予想するうえで参考になるのが、・・・

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