2020/09/08 コロナ前後の地価変動がもたらす弊害(会員限定)

コロナ禍の中で緊急措置として導入したリモートワークの“恒久化”とともに、オフィスの縮小を検討している企業は少なくない。こうした中、オフィスビルの空室率の上昇が懸念されているが、この流れを加速させる可能性があるのが、固定資産税の“増税”だ。

固定資産税額の算定基礎となる課税標準は3年に1度見直されることになっている。固定資産税の課税標準の見直しを「評価替え」というが、令和3年度(2021年度)はこの評価替えの年に当たる。すなわち、令和3年度の課税標準は令和4年度、5年度と据え置かれることになる。令和3年度から3年間適用されることになる課税標準は「令和2年1月1日」現在の公示地価に基づいて算定されるルールとなっているが、同日の公示地価は“コロナ前”の長期景気拡大を反映し、上昇している。公示価格の上昇は大都市のみならず地方都市にも広がっており、三大都市圏及び地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)を除く「その他の地方都市」においても、全用途平均及び商業地の公示価格は実に28年ぶりに上昇している。

公示地価 : 適正な地価の形成に役立てるため国(国土交通省)が公表しているもので、毎年1月1日時点の土地の価格を評価し、3月下旬に納税者に通知する。

しかし、コロナ禍により企業の業績が悪化し、景気後退が鮮明となる中、現在の土地の実勢価格がコロナ前の今年1月1日時点の公示地価を下回っているのは明らかだ。したがって、仮にこのまま予定通り3年に1度の評価替えが行われれば、実勢価格を反映していない“割高な”固定資産税が令和3年度から3年間にわたり課されることになる。これは実質的な増税であり、多くの企業に影響が及ぶことになる。増税額は全国で1,000億円を超えるとの試算もある。

こうした中、企業側からは「一定期間、固定資産税の課税標準を据え置くべき」との声が高まっており、政府内でも企業側の要望への理解が広がっている。これに対し、本来であればコロナ前の地価上昇に伴って得られたはずの固定資産税の増収が幻のものとなる市区町村からは抵抗も予想されるが、企業側からは「固定資産税を据え置いて欲しいと言っているだけで、減税まで求めているわけではない。実勢価格が反映されていない課税標準をもって固定資産税を“増税”するのはおかしい」といった強い批判も聞かれる。

コロナ禍という異常事態により企業が業績悪化にあえぐ中、固定資産税だけ平時と同じ前提で引き上げることは現実的には困難だろう。固定資産税の一時的な据え置き措置が実施される可能性は高そうだ。

2020/09/07 速報・改正会社法政省令 来年の株主総会参考書類、事業報告に記載が必要な事項

(2019年)9月1日、令和元年改正会社法(令和元年法律第70号。以下「改正法」という)の施行に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正案が公表され、パブリックコメントに付されたところだ(意見提出期日は9月30日)。パブリックコメントに際して、改正法は2021年(令和3年)3月1日から施行する予定であることが明らかにされている(改正法の全体像は2019年1月16日のニュース「会社法制(企業統治等関係)部会、会社法見直し要綱案を確定」、【WEBセミナー】~上場会社に求められる対応と優先順位~ 「会社法(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」のポイント 参照)。また、株主総会資料の電子提供制度の創設等に関する改正規定は2022年度(令和4年度中)の施行を予定している。

改正会社法施行規則(以下「改正規則」という)の内容が明らかになるとともに、改正法の施行日が2021年(令和3年)3月1日(予定)とされたことから、2021年6月株主総会から対応が必要になる事項が明らかになった。本稿では、来年の株主総会の株主総会参考書類、事業報告の作成に際して対応が求められる記載事項の変更点を解説する。

まず株主総会参考書類については、・・・

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2020/09/07 速報・改正会社法政省令 来年の株主総会参考書類、事業報告に記載が必要な事項(会員限定)

(2019年)9月1日、令和元年改正会社法(令和元年法律第70号。以下「改正法」という)の施行に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正案が公表され、パブリックコメントに付されたところだ(意見提出期日は9月30日)。パブリックコメントに際して、改正法は2021年(令和3年)3月1日から施行する予定であることが明らかにされている(改正法の全体像は2019年1月16日のニュース「会社法制(企業統治等関係)部会、会社法見直し要綱案を確定」、【WEBセミナー】~上場会社に求められる対応と優先順位~ 「会社法(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」のポイント 参照)。また、株主総会資料の電子提供制度の創設等に関する改正規定は2022年度(令和4年度中)の施行を予定している。

改正会社法施行規則(以下「改正規則」という)の内容が明らかになるとともに、改正法の施行日が2021年(令和3年)3月1日(予定)とされたことから、2021年6月株主総会から対応が必要になる事項が明らかになった。本稿では、来年の株主総会の株主総会参考書類、事業報告の作成に際して対応が求められる記載事項の変更点を解説する。

まず株主総会参考書類については、役員選任議案、役員報酬議案で下記のような記載事項が追加等されるとともに、新たに改正法で導入される株式交付について、「株式交付」計画承認議案の記載事項が明らかにされている。

株式交付 : 株式を交付する会社(これを株式交付親会社という)が他の株式会社を子会社(これを株式交付子会社という)とするため、株式交付子会社の株主(譲渡人)から株式を譲り受け、譲渡人に対して株式交付親会社の株式を交付する組織再編の手法のこと。株式交付とは、分かり易く言えば「自社の株式を対価に、“100%子会社でない子会社”を創る手法」のこと。自社株を対価として子会社を創る手法というと「株式交換」が思い浮かぶところだが、株式交換とはあくまで「100%子会社」を創るための手法であるのに対し、株式交付は100%子会社とすることまでは考えていない場合(例えば議決権の3分の2を取得したい場合)にも使えるという点で、株式交換とは異なる。

【役員選任議案の変更点】
役員選任議案の変更点は下表のとおり。改正法で規定が新設された「補償契約」(詳細は2019年5月29日のニュース「会社補償契約のメリット」参照)や「役員等賠償責任保険契約(D&O保険契約)」についての記載、社外取締役候補者に期待される役割についての記載が新たに求められるとともに、親会社等との関係に関する記載について「記載すべき期間」が伸長される一方、「社外取締役を置くことが相当でない理由」の記載は社外取締役の設置義務化に伴い不要となる。

補償契約 : 株式会社の役員が第三者から損害賠償責任を追及された場合に、会社が損害賠償額や争訟費用を補償することを約する契約のこと。

※1 施行日後に締結される補償契約、D&O保険契約について適用(改正規則附則2条6項)
※2 施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会より前に開催される株主総会の株主総会参考書類の記載については、旧規定が適用される(同条7項)
※3 ※2の株主総会参考書類の記載に係る社外役員および社外取締役候補者には旧規定が適用される(同条8項)
※4 ※1~※3のほか、施行日前に招集の手続が開始された株主総会に係る株主総会参考書類の記載については旧規定が適用される(同条9項)。
記載項目 概要
「補償契約」、「役員等賠償責任保険契約(D&O保険契約)」の内容の概要の新設(改正規則74条1項5号、6号等)※1、※4 役員候補者との間で補償契約(改正法430条の2)、候補者を被保険者とするD&O保険契約(改正法430条の3)を締結しているときは、それらの契約の内容の概要を記載しなければならない。
役員候補者と親会社等の関係に関する記載事項の拡充(改正規則74条3項3号、4項7号ロ、ハ等)※2、※3、※4 記載事項である「役員候補者が過去5年間において親会社等の業務執行者であったこと等を知っている場合」における「過去5年間」を「過去10年間」に伸長する。
社外取締役候補者に期待される役割の新設(改正規則74条4項3号等)※4 社外取締役候補者については、社外取締役候補者に期待される役割を記載しなければならない。
社外取締役を置くことが相当でない理由の削除(改正規則74条の2の削除)※2、※3、※4 社外取締役の設置義務付けに伴い、社外取締役を置くことが相当でない理由の記載は不要とする。

【役員報酬議案の変更点】
改正法では、取締役または執行役の報酬等として株式、新株予約権、またはこれらと引き換えるための払込みに充てる金銭を付与する場合に、定款または株主総会で定めるべき事項を規定している。定款または株主総会で定めるべき事項の詳細が改正規則で明らかにされた。取締役報酬議案で記載する必要がある事項は下表のとおり。

取締役の報酬等の分類 定款または株主総会で定めるべき事項
取締役の報酬等のうち会社の募集株式について定めるべき事項

募集株式 : 株式会社が、募集に応じて株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式のこと。新株の発行や自己株式の処分のことを、「募集株式の発行等」という。

・募集株式の数の上限(改正法361条1項3号)
・一定の事由が生ずるまで当該募集株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨および当該一定の事由の概要(改正規則98条の2第1号)
・一定の事由が生じたことを条件として当該募集株式を当該会社に無償で譲り渡すことを取締役に約させることとするときは、その旨および当該一定の事由の概要(同条2号)
・その他、取締役に対して当該募集株式を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要(同条3号)
取締役の報酬等のうち会社の募集新株予約権について定めるべき事項

募集新株予約権 : 株式会社の募集に応じて新株予約権の引き受けの申し込みをした者に対して割り当てる当該新株予約権のこと。

・募集新株予約権の数の上限(改正法361条1項4号)
会社法236条1項1号から4号までに掲げる事項(改正規則98条の3第1号)
・一定の資格を有する者が当該募集新株予約権を行使することができることとするときは、その旨および当該一定の資格の内容の概要(同条2号)
・その他の募集新株予約権の行使の条件を定めるときは、その条件の概要(同条3号)
会社法236条1項6号に掲げる事項(同条4号)
会社法236条1項7号に掲げる事項の内容の概要(同条5号)
・取締役に対して当該募集新株予約権を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要(同条6号)

会社法236条1項1号から4号 : 新株予約権の内容として以下のものを指す。「新株予約権の目的である株式の数又はその数の算定方法」「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」「金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額」「新株予約権を行使することができる期間」
会社法236条1項6号:新株予約権の内容として以下のものを指す。「譲渡による新株予約権の取得について株式会社の承認を要することとするときは、その旨」
会社法236条1項7号:当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、次に掲げる事項「イ 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその新株予約権を取得する旨及びその事由」

取締役の報酬等のうち新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭について定めるべき事項 ・取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限(改正法361条1項5号ロ)
会社法236条1項1号から4号までに掲げる事項(改正規則98条の4第2項1号)
・一定の資格を有する者が当該募集新株予約権を行使することができることとするときは、その旨および当該一定の資格の内容の概要(同項2号)
・その他、募集新株予約権の行使の条件を定めるときは、その条件の概要(同項3号)
会社法236条1項6号に掲げる事項(同項4号)
会社法236条1項7号に掲げる事項の内容の概要(同項5号)
・取締役に対して当該募集新株引受権と引換えにする払込みに充てるための金銭を交付する条件または取締役に対して当該新株予約権を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要(同項6号)

会社法236条1項1号から4号 : 株式会社が新株予約権を発行するときは、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。「一 当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法」「二 当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」「三 金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額」「四 当該新株予約権を行使することができる期間」
会社法236条1項6号 : 六 譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨
会社法236条1項7号 : 七 当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、次に掲げる事項「イ 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその新株予約権を取得する旨及びその事由」「ロ 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨」「ハ イの事由が生じた日にイの新株予約権の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する新株予約権の一部の決定の方法」「ニ イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式を交付するときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその算定方法」「以下(ホ、へ、ト、チ)省略」

また、現行法上、不確定額報酬(会社法361条1項2号)、非金銭報酬(同項3号)については、株主総会で決議を求める際に「相当とする理由」を説明しなければならないとされ、当該理由は株主総会参考書類にも記載しなくてはならない(会社法施行規則73条1項2号)。改正法では、確定額報酬(会社法361条1項1号)についても「相当とする理由」の説明が求められる(改正法361条4項)ので、報酬枠改定議案や退職慰労金支給議案を付議する際には留意が必要だ。

【株式交付計画承認議案】
改正法で創設される株式交付については、株式交付計画の承認に関する議案の記載事項が次のとおり定められている(改正規則91条の2)。
・当該株式交付を行う理由
・株式交付計画の内容の概要
・当該株式会社が株式交付親会社である場合において、会社法298条1項の決定をした日における改正規則213条の2各号(5号、6号を除く)に掲げる事項があるときは、当該事項の内容の概要

会社法298条1項 : 取締役(株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。「一 株主総会の日時及び場所」「二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項」「三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨」「四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨」

次に事業報告については、親会社との間の重要な財務および事業の方針に関する契約等の内容の概要、補償契約の内容の概要、役員等賠償責任保険契約(D&O保険契約)の内容の概要、報酬等として付与された株式や新株予約権等に関する事項、社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要について新たな規定が設けられるとともに、会社役員の報酬等に関する記載事項の拡充、社外取締役を置くことが相当でない理由が削除されている。

※1 補償契約、D&O保険契約に係る記載は、施行日後に締結された補償契約およびD&O保険契約について適用する(改正附則2条10項)
※2 ※1のほか、施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る事業報告の記載については、旧規定が適用される(改正附則2条11項前半部分)
※3 ※1のほか、施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る事業報告における改正前の会社法施行規則124条2項の理由の記載については、旧規定が適用される(改正附則2条11項後半部分)
※4 ※2の事業報告の記載に係る社外役員については、改正規則2条3項5号の規定にかかわらず、なお従前の例による(改正附則12項)
記載項目 概要
親会社との間の重要な財務および事業の方針に関する契約等の内容の概要が重要な親会社の状況に含まれることを明示(改正規則120条1項7号)※2、※4 親会社との間に会社の重要な財務および事業の方針に関する契約等が存在するときは、その内容の概要を記載しなければならない。
「補償契約」、「役員等賠償責任保険契約(D&O保険契約)」の内容の概要の新設(改正規則119条2号の2、121条3号の2から3号の4まで、121条の2等)※1、※2、※4 ・会社役員または会計監査人(以下「会社役員」)との間で補償契約を締結しているときは、当該会社役員等の氏名、当該補償契約の内容の概要、会社が補償契約に基づき防御費用を補償した場合において当該会社役員等に法令違反が認められたことを知ったときはその旨、損失を補償したときはその旨および補償した金額を記載しなければならない。
・会社が保険者との間でD&O保険契約を締結しているときは、当該保険者の氏名または名称、被保険者の範囲、当該D&O保険契約の内容の概要を記載しなければならない。
会社役員の報酬等に関する記載事項の拡充(改正規則121条4号イ、ロ、5号の2から6号の3まで)※2、※4 ・報酬等について、業績連動報酬等または非金銭報酬等がある場合には、業績連動報酬、非金銭報酬等、それら以外の報酬等に区分して総額等を記載しなければならない。
・業績連動報酬等がある場合には、当該業績連動報酬等の額または数の算定の基礎として選定した業績指標の内容、当該業績指標を選定した理由、当該業績連動報酬等の額または算定方法、算定に用いた上記業績指標の数値を記載しなければならない。
・非金銭報酬等がある場合には、当該非金銭報酬等の内容を記載しなければならない。
・会社役員の報酬等に係る定款または株主総会の決議による定めについて、当該定めを設けた日または株主総会決議の日、当該定めの内容の概要、当該定めに係る会社役員の員数を記載しなければならない。
・取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を定めているときは、当該方針の決定方法、内容の概要、当該事業年度の個人別の報酬等の内容が当該方針に沿うものであると取締役会(指名委員会等設置会社は報酬委員会)が判断した理由を記載しなければならない。
・各役員の報酬等の額または算定方法に係る決定方針(上記を除く)を定めているときは、当該方針の決定方法およびその方針の内容の概要を記載しなければならない(監査役会設置会社(公開会社かつ大会社である有報提出会社)、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社でない会社は記載を省略することができる
・取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者が、当該事業年度の取締役の個人別の報酬等の内容の全部または一部を決定したときはその旨、当該委任を受けた者の氏名ならびに当該内容を決定した日における地位および担当、委任された権限の内容、当該権限を委任した理由、当該権限が適切に行使されるようにする措置を講じた場合にあってはその内容を記載しなければならない(指名委員会等設置会社は記載不要)

公開会社 : (定款で)株式に譲渡制限を付していない会社のこと(会社法2条5号)。発行する株式のうち1株でも譲渡制限を付していなければ、公開会社となる。したがって、上場会社はすべて公開会社である。
大会社 : 負債200億円以上または資本金5億円以上の株式会社

報酬等として付与された株式や新株予約権等に関する事項の新設等(改正規則122条1項2号、123条1号)※2、※4 ・当該事業年度中に報酬等として交付された株式があるときは、次に掲げる者の区分ごとの株式の数および株式を有する者の人数を記載しなければならない
 イ 取締役(監査等委員である取締役および社外役員を除き、執行役を含む)
 ロ 社外取締役(監査等委員である取締役を除き、社外役員に限る) 
 ハ 監査等委員である取締役
 ニ 取締役(執行役を含む)以外の会社役員
・事業報告に記載する報酬等として交付された新株予約権等につき、会社役員に対して職務執行の対価として募集新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を交付した場合において、当該金銭の払込みと引換えに新株予約権を交付したときにおける当該新株予約権を含む旨を明確化
社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要の新設(改正規則124条4号ホ)※2、※4 社外取締役であるときは、当該社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要を記載しなければならない
社外取締役を置くことが相当でない理由の削除(会社法施行規則124条2項、3項の削除)※2、※3、※4 社外取締役の設置義務付けに伴い、社外取締役を置くことが相当でない理由の記載は不要

なお、改正法では、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社である有報提出会社)および監査等委員会設置会社に取締役の報酬等の決定方針を決定することが義務付けられる。取締役の報酬等の決定方針として取締役会で決定すべき事項は改正規則98条の5に定められているため、対象となる会社は施行日(2021年3月1日)までに取締役会で取締役の報酬等の決定方針を決定しなければならないことにも留意したい。すでに任意に取締役の報酬等の決定方針を定めていて、改正規則98条の5に定める各事項がカバーされているという場合には、重ねての決議は不要である。

2020/09/05 緊急WEBセミナー「機関投資家が今、求めているガバナンス」配信開始!

新型コロナウイルス禍において会員の皆様に必要な情報をいち早くお届けするべく、2020年9月5日(土)より下記のWEBセミナーの配信を開始いたしました。

テーマ 講 師
~2020年株主総会を踏まえて~
機関投資家が今、求めているガバナンス
日本シェアホルダーサービス
研究開発/コンサルティング部
チーフコンサルタント
藤島 裕三 様
    
研究開発/コンサルティング部
コンサルタント
矢幡 静歌 様

■WEBセミナーの詳細

セミナー
の内容
2020年6月の株主総会シーズンでは、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、ISSや一部の機関投資家がROE基準(ROEが数年連続して一定水準を満たさない企業の経営トップの選任議案に反対するといった基準)を適用しない方針を打ち出すなど、投資家側にもコロナ禍の影響が及ぶこととなりました。ただ、低賛成率の取締役候補者は昨年よりも増加するなど、上場企業各社の「ガバナンス」に対しては引き続き投資家の厳しい視線が注がれています。本セミナーでは、「機関投資家が今、求めているガバナンス~2020年株主総会を踏まえて~」と題し、コーポレートガバナンス研究の第一人者である日本シェアホルダーサービス 研究開発/コンサルティング部 チーフコンサルタントの藤島裕三様に、TOPIX100企業の2020年株主総会を踏まえ、現在投資家が求めているガバナンス、そして2021年に向け企業が取るべき対応などについて解説していただきます。
また、後半では、同社研究開発/コンサルティング部 コンサルタントの矢幡静歌様に、TOPIX100企業の2020年6月株主総会における女性取締役の選任状況、属性など詳細な独自調査データをご紹介いただきつつ、取締役会の多様性確保の観点から、女性取締役の選任における課題について解説していただきます。
講師の
ご紹介
藤島 裕三(ふじしま ゆうぞう)様
日本シェアホルダーサービス 研究開発/コンサルティング部 チーフコンサルタント
慶應義塾大学大学院法学研究科修了後、1994年に株式会社大和総研入社。企業調査部アナリスト、同社経営戦略研究所経営戦略研究部 主任研究員 、企業経営コンサルティング部 副部長・シニアコンサルタントを経て2014年、EY総合研究所に入社、未来経営研究部 部長 主席研究員に就任。コーポレートガバナンス改善計画の策定支援、敵対的買収対応に関わる体制整備の支援、IRや株主対応に関する改善支援・アドバイザリーなどに従事。2017年9月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員。慶應義塾大学非常勤講師(2003-2005年)、京都大学大学院非常勤講師(2006―2008年)、財務省 財政投融資ガバナンス委員会 委員(2005ー2006年)、経済産業省コーポレート・ガバナンスの対話の在り方分科会 委員(2013年-)。
『コーポレートガバナンス・マニュアル 21世紀日本企業の条件』(中央経済社、第1版 2005年1月、第2版2008年1月):共著、『現代の財務経営1 コーポレートファイナンス』(中央経済社、2009年3月):共著、『ガイダンス コーポレートガバナンス』(中 央経済社、2009年10月):共著など著書・論文多数。

矢幡 静歌(やはた しずか)様
日本シェアホルダーサービス株式会社 研究開発/コンサルティング部 チーフコンサルタント。大和総研を経て現職。

会員の方は下記URLよりWEBセミナーを視聴いただくことができます。
■会員向けURL(ログインが必要です)
https://govforum.jp/member/webseminar-webseminar-l/52224

非会員で視聴をご希望の方はjimukyoku@govforum.jpまでご連絡いただければメールにてお申し込み方法をお知らせいたします(有料(11,000円)となります)。

<視聴環境>
ブラウザー上で視聴できます。インターネットエクスプローラー、エッジで再生できない場合は、ChromeまたはFirefoxなど他のブラウザーをお試しください。また、インターネットに接続する際にプライベートネットワークやプロキシサーバーを経由している場合やファイアーウォールのセキュリティレベルが高い場合には、サンプル動画が再生されない可能性があります。
万が一、こちらのサンプル動画が再生されない場合、端末を管理するシステム管理者にお問い合わせください。

2020/09/05 【WEBセミナー】機関投資家が今、求めているガバナンス(会員限定)

概略

【セミナー収録日】2020年8月24日(月)

2020年6月の株主総会シーズンでは、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、ISSや一部の機関投資家がROE基準(ROEが数年連続して一定水準を満たさない企業の経営トップの選任議案に反対するといった基準)を適用しない方針を打ち出すなど、投資家側にもコロナ禍の影響が及ぶこととなりました。ただ、低賛成率の取締役候補者は昨年よりも増加するなど、上場企業各社の「ガバナンス」に対しては引き続き投資家の厳しい視線が注がれています。本セミナーでは、「機関投資家が今、求めているガバナンス~2020年株主総会を踏まえて~」と題し、コーポレートガバナンス研究の第一人者である日本シェアホルダーサービス 研究開発/コンサルティング部 チーフコンサルタントの藤島裕三様に、TOPIX100企業の2020年株主総会を踏まえ、現在投資家が求めているガバナンス、そして2021年に向け企業が取るべき対応などについて解説していただきます。
また、後半では、同社研究開発/コンサルティング部 コンサルタントの矢幡静歌様に、TOPIX100企業の2020年6月株主総会における女性取締役の選任状況、属性など詳細な独自調査データをご紹介いただきつつ、取締役会の多様性確保の観点から、女性取締役の選任における課題について解説していただきます。

【講師】日本シェアホルダーサービス
    研究開発/コンサルティング部 チーフコンサルタント
    藤島 裕三 様
    
    研究開発/コンサルティング部 コンサルタント
    矢幡 静歌 様

セミナー資料 機関投資家が今、求めているガバナンス.pdf
セミナー動画
①ガバナンスと行使結果

②女性取締役の選任状況について
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2020/09/05 【WEBセミナー】機関投資家が今、求めているガバナンス

概略

【セミナー収録日】2020年8月24日(月)

2020年6月の株主総会シーズンでは、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、ISSや一部の機関投資家がROE基準(ROEが数年連続して一定水準を満たさない企業の経営トップの選任議案に反対するといった基準)を適用しない方針を打ち出すなど、投資家側にもコロナ禍の影響が及ぶこととなりました。ただ、低賛成率の取締役候補者は昨年よりも増加するなど、上場企業各社の「ガバナンス」に対しては引き続き投資家の厳しい視線が注がれています。本セミナーでは、「機関投資家が今、求めているガバナンス~2020年株主総会を踏まえて~」と題し、コーポレートガバナンス研究の第一人者である日本シェアホルダーサービス 研究開発/コンサルティング部 チーフコンサルタントの藤島裕三様に、TOPIX100企業の2020年株主総会を踏まえ、現在投資家が求めているガバナンス、そして2021年に向け企業が取るべき対応などについて解説していただきます。
また、後半では、同社研究開発/コンサルティング部 コンサルタントの矢幡静歌様に、TOPIX100企業の2020年6月株主総会における女性取締役の選任状況、属性など詳細な独自調査データをご紹介いただきつつ、取締役会の多様性確保の観点から、女性取締役の選任における課題について解説していただきます。

【講師】日本シェアホルダーサービス
    研究開発/コンサルティング部 チーフコンサルタント
    藤島 裕三 様
    
    研究開発/コンサルティング部 コンサルタント
    矢幡 静歌 様

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①ガバナンスと行使結果

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②女性取締役の選任状況について

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2020/09/04 税務調査の結果をそのまま受け入れるリスク

有名企業が税務調査の結果追徴課税を受け、新聞等で「〇〇社が××億円の所得隠し」などと報道されるケースは少なくない。企業側は、追徴課税の内容に不服があれば国(課税当局)を相手取り訴訟を提起することもできるが、実際には大部分の企業が追徴課税を受け入れており、訴訟にまで発展することは稀だ。その背景には、・・・

追徴課税 : 申告漏れや脱税などの理由により、会社が本来納めるべき税金の全部または一部を納めていなかったことが税務調査などにより発覚した場合に、追加で課税を受けること。

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2020/09/04 税務調査の結果をそのまま受け入れるリスク(会員限定)

有名企業が税務調査の結果追徴課税を受け、新聞等で「〇〇社が××億円の所得隠し」などと報道されるケースは少なくない。企業側は、追徴課税の内容に不服があれば国(課税当局)を相手取り訴訟を提起することもできるが、実際には大部分の企業が追徴課税を受け入れており、訴訟にまで発展することは稀だ。その背景には、日本企業では、国(課税当局)を相手取って訴訟をすること自体がレピュテーションリスクと考える傾向があることや、課税当局と争えば今後の税務調査がさらに厳しくなるのではないかといった懸念がある。しかし、まず後者は誤解であるうえ(大企業の税務調査を数多く手掛けた元国税調査官への取材によると、むしろ、税務調査結果に対し反論しない企業ほど追徴課税額が多くなる傾向にあるという)、追徴課税の内容に納得できないにもかかわらず争わなければ、株主から批判を受ける可能性がある。特に注意したいのが、同業他社で同様の追徴課税が頻発しているケースだ。

追徴課税 : 申告漏れや脱税などの理由により、会社が本来納めるべき税金の全部または一部を納めていなかったことが税務調査などにより発覚した場合に、追加で課税を受けること。

2018年4月10日のニュース「同種の追徴課税で東証一部上場企業2社が異なる対応」では、マンション販売事業者が相次いで消費税の追徴課税を受けている問題(詳細は2018年2月14日のニュース「消費税率アップで一部業界が苦境に」参照)で、ともに東証一部に上場するムゲンエステートが追徴課税を不服として訴訟を提起したのに対し、積水ハウスは追徴課税を受け入れたことをお伝えしたが、昨日(2020年9月3日)には、同種の追徴課税を受けていたエー・ディー・ワークス社(東証一部)が東京地裁で国に勝訴し、同社への追徴課税が全面的に取り消されている(エー・ディー・ワークス社のリリースはこちら)。エー・ディー・ワークス社の勝訴判決は新聞等でも比較的大きく報じられた。同社が争った追徴課税額は約5億3千万円と、上場企業の税務訴訟としてはそれほど大きな金額ではないが、そのわりに新聞等での取り上げ方が大きかったのは、同様の課税が同業他社で多数発生しているからだ。当フォーラムの取材によると、既に国税不服審判所への不服申立て(法人税や消費税など国税に関する訴訟は、裁判の前に国税不服審判所で争うのが原則となっている)や訴訟が十数件発生し、今回のエー・ディー・ワークス社の東京地裁判決以外は、企業(=納税者)側が全敗している模様。ムゲンエステート社も東京地裁では敗訴(2019年10月11日判決)し、現在は東京高裁で争っており、(2020年)11月18日に判決が言渡しされる予定となっている。

東京地裁でエー・ディー・ワークス社に敗訴した国は控訴する可能性が高く、まだ最終決着までの道のりは遠いが、今回の同社の勝訴判決が他企業に示したのは、税務調査の結果をそのまま受け入れることのリスクだ。特に同業界で同様の否認事案が起きている場合には、今回のエー・ディー・ワークス社のように、訴訟の結果、否認をひっくり返す事例が出て来る可能性がある。仮に同業他社が課税当局と争った結果追徴税額を取り返したにもかかわらず、自社は同様の否認事案について課税当局の言うがままに漫然と追徴税額を払ったということになれば、それは、「回避することができたキャッシュの流出」により株主価値を毀損していることに他ならないため、最悪の場合、善管注意義務違反、忠実義務違反に問われるリスクは否定できない(もっとも、過去の裁判例では、追徴課税を受けたことについて取締役(あるいは監査役)の責任が認定されたケースは多くない。この点は、2015年11月25日のニュース「追徴課税に対する取締役の責任」参照)。

否認 : 認めないこと、承認しないこと
忠実義務 : 取締役には、会社との委任関係に基づいて「善良な管理者の注意をもって職務を遂行する義務」である善管注意義務(会社法330条、民法644条)と、「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行なう義務」である忠実義務(会社法355条)がある。この忠実義務と善管注意義務の関係を説明する学説は諸説あるが、忠実義務とは「善管注意義務を明確化したもの」と考えればよい。取締役は会社に対して善管注意義務を怠って会社に損害が生じた場合には、これを賠償する責任を負うことになる(会社法423条1項)。

したがって、追徴税額を受けた場合には、それが自社特有のものなのか、あるいは業界横断的に同様の追徴課税が行われているのか(行われる可能性があるのか)を見極め、後者の場合には、同業他社の動きをウォッチし(訴訟を提起するような場合には、自社HPのIRニュースなどでリリースを出すのが通常である)、課税当局と争うようであれば、自社もそれに追随するか、更正請求を行う準備をしておく必要があろう。

更正請求 : 税金の計算を誤ったことにより、税金を払い過ぎてしまった場合や還付金が少なくなってしまった場合に、正しい額への変更を要求する手続き(払いすぎてしまった税金を取り戻す、あるいは還付金を追加でもらうための手続き)のこと。更正請求の期限は原則として申告期限から「5年以内」とされているが、「後発的理由」が生じたことにより更正請求をすべきこととなった場合には、5年経過後であっても、当該後発的理由が生じた日から2月以内に更正請求をすることができる(国税通則法23条2項)。
















2020/09/03 副業する従業員の労働時間を容易に管理する方法

従業員に多様な働き方を実現するため副業を認めることを検討中の企業は少なくないが、いざ副業を認めるとなった場合にネックとなるのが、副業時間も含む労働時間管理の難しさだ(2019年7月26日のニュース「副業先での労働時間を通算しない案が浮上」参照)。労働基準法上、従業員が複数の企業(事業主)の下で労働する場合は、労働時間を通算(本稿でいう「通算」とは、各事業主の下での労働時間を合計することを指す)しなければならないが、副業時間が多い場合、労働者にとっては人事部門等への申告に手間がかかるうえ、自社および他社の双方において所定外労働(所定労働時間を超える労働)がある場合、それはどの事業主の下での残業となるのかの判断や、両事業主の下での労働時間を通算した時間が労働基準法上の労働時間規制()を超えないようにするためにはいかにして労働時間を管理すべきかといった労働時間の「通算管理」の難しさがある。

所定労働時間 : 労働者が働くこととなっている時間のこと。通常は、就業規則や雇用契約書に記載されている始業時間から終業時間までの時間から休憩時間を差し引いた時間のことをいう。例えば始業時間が午前9時、終業時間が午後7時、休憩時間が1時間であれば、所定労働時間は「7時間」となる。労働時間の限度を意味する「法定労働時間」とは異なる。

 副業する労働者と先に労働契約を締結していた事業主(以下、「使用者A」という)の事業場における法定外労働時間と、後から労働契約を締結した事業主(以下、「使用者B」という)の事業場における労働時間(所定労働時間および所定外労働時間)を合計した時間数が単月で100時間未満、複数月平均で80時間以内に収まる必要がある。

労働時間の通算管理の難しさを理由に従業員の副業を認めることを躊躇している企業にとって参考になるのが、・・・

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2020/09/03 副業する従業員の労働時間を容易に管理する方法(会員限定)

従業員に多様な働き方を実現するため副業を認めることを検討中の企業は少なくないが、いざ副業を認めるとなった場合にネックとなるのが、副業時間も含む労働時間管理の難しさだ(2019年7月26日のニュース「副業先での労働時間を通算しない案が浮上」参照)。労働基準法上、従業員が複数の企業(事業主)の下で労働する場合は、労働時間を通算(本稿でいう「通算」とは、各事業主の下での労働時間を合計することを指す)しなければならないが、副業時間が多い場合、労働者にとっては人事部門等への申告に手間がかかるうえ、自社および他社の双方において所定外労働(所定労働時間を超える労働)がある場合、それはどの事業主の下での残業となるのかの判断や、両事業主の下での労働時間を通算した時間が労働基準法上の労働時間規制()を超えないようにするためにはいかにして労働時間を管理すべきかといった労働時間の「通算管理」の難しさがある。

所定労働時間 : 労働者が働くこととなっている時間のこと。通常は、就業規則や雇用契約書に記載されている始業時間から終業時間までの時間から休憩時間を差し引いた時間のことをいう。例えば始業時間が午前9時、終業時間が午後7時、休憩時間が1時間であれば、所定労働時間は「7時間」となる。労働時間の限度を意味する「法定労働時間」とは異なる。

 副業する労働者と先に労働契約を締結していた事業主(以下、「使用者A」という)の事業場における法定外労働時間と、後から労働契約を締結した事業主(以下、「使用者B」という)の事業場における労働時間(所定労働時間および所定外労働時間)を合計した時間数が単月で100時間未満、複数月平均で80時間以内に収まる必要がある。

労働時間の通算管理の難しさを理由に従業員の副業を認めることを躊躇している企業にとって参考になるのが、厚生労働省が(2020年)9月1日に改定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で提案されている「管理モデル」だ(新旧対照表はこちら)。

管理モデルとは、事業主がそれぞれ労働時間の上限(枠)を設定しておき、その枠の範囲内に収まるよう労働時間を管理する手法。具体的には、自社の従業員が副業を開始する前に、自社(使用者A)における所定外労働時間と、後から労働契約を締結する別の使用者(使用者B)における労働時間(所定労働時間および所定外労働時間)とを「合計」した時間数が労働基準法上の労働時間規制(残業時間が単月で100時間未満、複数月平均で80時間以内)に収まる範囲内でそれぞれの使用者が労働時間の上限を設定しておき、その範囲内で労働させることになる。当然ながら、先に労働契約を結んだ使用者Aの方が優先して「枠」を設定できる。実際の運用上は、自社の人事部門が副業を行おうとしている労働者を経由して使用者Bに対して本管理モデルにより副業・兼業を行うことを提案し、使用者Bに同意してもらう必要がある。

具体的な事例で、どちらの使用者に割増賃金を支払い義務が生じるのか見てみよう。まず、使用者Aに所定外労働がないケースを想定する。このケースでは、使用者Bに36協定がなければ、副業する従業員は、使用者Bの下では法定労働時間に達するまでしか副業ができない(下図の上側参照)。一方、使用者Bに36協定があれば、使用者Bにおいて36協定の範囲で副業が可能になる。この場合、使用者Bは赤い線(法定労働時間)より右側の労働時間に対して割増賃金を支払わなければならない。

36協定 : 労働基準法36条に定める労使協定を指していることから「サブロク協定」と呼ばれる。本来であれば、労働基準法32条に定める時間を超えて従業員に労働をさせることはできないが、「36協定」を労使で締結し、労働基準監督署に届け出れば、労働時間の延長が可能になる。

Aに所定外労働がない場合第161回労働政策審議会労働条件分科会(資料)No.1の23ページより引用)
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管理モデルによれば、使用者Aおよび使用者Bは、それぞれがあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させている限り、自社以外の実労働時間をわざわざ把握しなくても、労働基準法の労働時間規制をクリアすることが可能となる。また、総労働時間の上限が固定されることから、副業する従業員の“働きすぎ”を防止することができる。さらに、使用者Bにとっては使用者Aでの労働時間が明確になることから、結果として割増賃金が必要になる時間数も明確になる。

次に、使用者Aにおいて所定外労働があるケースをみてみよう。この場合、使用者Aは所定外の労働時間も含めて「枠」を設定することになる。

使用者Aに所定外労働がある場合第161回労働政策審議会労働条件分科会(資料)No.1の23ページより引用)
52209b

後から労働契約を結んだ使用者Bにおける従業員の労働時間は上図の赤線より右側であることから、そのすべてが法定労働時間を超える部分にあたることになり、結果として使用者Bでの労働時間のすべてが割増賃金の対象となる。

こういった管理モデルを自社で採用するためには、副業を認めるにしても“放任”するのではなく、許可制あるいは届出制にしたうえで、副業先の事業者に自社の「枠」について合意してもらう機会を持つ必要がある。逆に、自社が“使用者B”(=後から労働契約をした使用者)に該当するケースでは、副業する労働者との労働契約締結にあたり、使用者Aに相当する企業との間で管理モデルを採用することについて合意しておくべきであろう。