不正解です。
問題文のとおり、剰余金の配当などを株主総会で決議している企業が、その権限を取締役会に委譲しようとする定款変更の議案には、機関投資家、特に海外の機関投資家から反対されがちです(問題文は正しいです)。
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2025年9月3日 【2025年8月の課題】自社の株主総会における各議案の賛成率分析(会員限定)
不正解です。
問題文のとおり、剰余金の配当などを株主総会で決議している企業が、その権限を取締役会に委譲しようとする定款変更の議案には、機関投資家、特に海外の機関投資家から反対されがちです(問題文は正しいです)。
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2025年9月3日 【2025年8月の課題】自社の株主総会における各議案の賛成率分析(会員限定)
正解です。
問題文のとおり、剰余金の配当などを株主総会で決議している企業が、その権限を取締役会に委譲しようとする定款変更の議案には、機関投資家、特に海外の機関投資家から反対されがちです(問題文は正しいです)。
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2025年9月3日 【2025年8月の課題】自社の株主総会における各議案の賛成率分析(会員限定)
正解です。
指名委員会等設置会社は、監査等委員会設置会社や監査役会設置会社よりも、取締役の人数が少ない傾向にあります(問題文は誤りです)。これは、業務執行と監督を分離したモニタリングモデルを採用する指名委員会等設置会社では、取締役は業務執行をせず監督に専念するため、取締役の人数を必要以上に増やす必要がないからだと考えられます。
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2025年9月2日 監査等委員会設置会社への移行に伴うコーポレートガバナンスの変化(会員限定)
不正解です。
指名委員会等設置会社は、監査等委員会設置会社や監査役会設置会社よりも、取締役の人数が少ない傾向にあります(問題文は誤りです)。これは、業務執行と監督を分離したモニタリングモデルを採用する指名委員会等設置会社では、取締役は業務執行をせず監督に専念するため、取締役の人数を必要以上に増やす必要がないからだと考えられます。
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2025年9月2日 監査等委員会設置会社への移行に伴うコーポレートガバナンスの変化(会員限定)
中小企業庁は、毎年3月と9月を「価格交渉促進月間」と定め、事業者の価格交渉や価格転嫁を後押しするために、広報活動や講習会、フォローアップ調査などを実施しています。対象月が3月と9月に設定されているのは、企業の多くが半期ごとにあたる4月と10月に価格改定を行うため、その直前月を交渉促進のタイミングとしたものです。
上場会社やその子会社は、価格交渉の場で、内閣官房および公正取引委員会が2023年11月29日に連名で公表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(以下、本指針)を遵守することを期待されるのが通常です。今回の役員会 Good&Bad発言集では、先月に引き続き、本指針を取り上げます。
2024年2月7日のニュース「サプライチェーン全体を通じた構造的な賃上げへの経営トップと社外取締役の関わり方」では、本指針を分かりやすく紹介しています。同ニュースに記載した表のうち、行動指針(4)から(6)までを再掲します(右列は当フォーラムによる解説)。
| 行動指針 | 内容 | 解説 |
| (4)サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと | 労務費をはじめとする価格転嫁に係る交渉においては、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁による適正な価格設定を行うため、直接の取引先である受注者がその先の取引先との取引価格を適正化すべき立場にいることを常に意識して、そのことを受注者からの要請額の妥当性の判断に反映させること | 価格転嫁がサプライチェーンを通じて適切に行われるためには、発注者がサプライチェーン全体を考えて行動すべきである。本指針では、「サプライチェーン全体の付加価値向上を図るため、毎月実施している直接の取引先である受注者(一次取引先)との会合において、二次取引先以降の値上げも含めて転嫁を求めてくるように声がけをすることを要請している。具体的には、ある一次取引先が4社の二次取引先を有しており、そのうち3社と取引価格を引き上げることに合意し、その分の転嫁を求めてきたことから、残りの1社に対しても、取引価格の引上げの必要性を確認するように求めたといった取組事例が紹介されている(本指針の10ページを参照)。 |
| (5)要請があれば協議のテーブルにつくこと | 受注者から労務費の上昇を理由に取引価格の引上げを求められた場合には、協議のテーブルにつくこと。労務費の転嫁を求められたことを理由として、取引を停止するなど不利益な取扱いをしないこと。 | ・エネルギーコストの上昇を理由とした取引価格の引上げは認められやすいが、労務費の上昇を理由にした場合は協議のテーブルについてもらえないケースが散見されることが、(5)の指針が制定された背景にある。 ・(2)の「発注者側からの定期的な協議」があることを理由に、受注者からの協議の要請を断らないようにしたい。 ・持続的な賃上げの実現の観点からは、受注者が過去に引き上げた賃金分の転嫁だけでなく、今後賃金を引き上げるために必要な分の転嫁についても同様に、協議のテーブルにつくことが求められる(本指針の11ページを参照)。 |
| (6)必要に応じ考え方を提案すること | 受注者からの申入れの巧拙にかかわらず受注者と協議を行い、必要に応じ労務費上昇分の価格転嫁に係る考え方を提案すること。 | 「申入れの巧拙にかかわらず」は分かりづらい表現だが、受注者の中には、労務費を理由とした取引価格の引上げの具体的な理由や要請額の算定方法などの説明が上手ではない者もいるであろうことを踏まえ、発注者は「説明の上手な受注者」が用いていた算定方法の例を「説明が上手ではない受注者」にアドバイスするなど、受注者に寄り添った対応が求められるということを指している。 |
さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
取締役C:「当社が取引をしている相手の外注先、その外注先が取引をしている更なる外注先などでも労務費は発生している以上、当社はサプライチェーン全体を考えて行動すべきです。具体的には、経営トップが主導して、二次取引先以降の値上げも含めて転嫁を求めてくるように声がけをするよう方針を定め、現場が動きやすいようにしてはどうでしょうか。」
(コメント:取締役Cの発言は、本指針の「(4)サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと」を理解したうえでのGOOD発言です。経営トップが労務費の転嫁の具体的な取組方針を定める旨の発言もGOODです。)
取締役A:「前回の定期価格協議からまだ半年しか経っていないということなので、次の定期価格協議のタイミングまで待ってもらって、そこで議論するようにしてもらいましょう。あまりうるさいようだと、取引停止をちらつかさざるを得ないですね。」
(コメント:取締役Aの発言は、「臨時の価格協議の申し入れに対する拒絶」「労務費の転嫁を求められたことを理由とする取引を停止するなどの不利益な取扱いの実施」を提案するものであり、本指針の趣旨を理解していないBAD発言です。)
取締役B:「労務費の転嫁については、当社が実際に取引をしている相手の労務費を考慮すれば十分です。二次取引先のような当社の直接の取引相手より先のことは当事者間で解決する話であり、当社が関与すべき話ではありません。」
(コメント:取締役Bの発言は、本指針が求める「労務費をはじめとする価格転嫁に係る交渉においては、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁による適正な価格設定を行う」ことの趣旨を理解していないBAD発言です。)
上場会社R社では取引先との間で年1回の定期価格協議を行っていますが、今回、取引先から「労務費の急激な上昇」と「二次取引先(R社から見て)からの労務費転嫁要請」を理由に臨時価格協議の開催(前回は半年前に定期価格協議を実施)を求められました。R社の取締役会ではこの件が話題となり、次の3人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?
取締役A:「前回の定期価格協議からまだ半年しか経っていないということなので、次の定期価格協議のタイミングまで待ってもらって、そこで議論するようにしてもらいましょう。あまりうるさいようだと、取引停止をちらつかさざるを得ないですね。」
取締役B:「労務費の転嫁については、当社が実際に取引をしている相手の労務費を考慮すれば十分です。二次取引先のような当社の直接の取引相手より先のことは当事者間で解決する話であり、当社が関与すべき話ではありません。」
取締役C:「当社が取引をしている相手の外注先、その外注先が取引をしている更なる外注先などでも労務費は発生している以上、当社はサプライチェーン全体を考えて行動すべきです。具体的には、経営トップが主導して、二次取引先以降の値上げも含めて転嫁を求めてくるように声がけをするよう方針を定め、現場が動きやすいようにしてはどうでしょうか。」
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食品大手の味の素(東証プライム)が、冷凍宅配食「あえて、」の自社販売サイトにおいて、ステルスマーケティング(以下、ステマ)に該当する可能性のある表示を行っていた疑いがあることが、消費者庁の調査で明らかになった。
ステルスマーケティング : 広告であるにもかかわらず広告であることを隠す手法。ステルスには「隠密」「こっそり行う」といった意味がある。
消費者庁によれば、同社は商品を無償提供する条件で第三者にInstagram投稿を依頼し、その投稿を自社サイトの「レビュー」欄等に転載していた。このように広告であるにもかかわらずその旨を明示しない表示はステマに該当し、2023年10月から景品表示法5条3号(いわゆる「ステマ告示」)に基づき禁止されている。これまでもRIZAPグループや大正製薬の事案(詳細は2024年9月4日のニュース「ステマ規制第2号案件から学ぶべきこと」、同12月9日のニュース「コンプライアンスに敏感な大企業で安易なステマ規制違反が起こる背景」参照)はあったが、味の素のような連結売上高1兆円超クラスの企業がステマ違反の可能性を指摘されるのは初めてである。
もっとも、今回の味の素のケースは過去にステマ違反で摘発されたRIZAPグループや大正製薬と同列に論じるべきではない。なぜなら、・・・
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食品大手の味の素(東証プライム)が、冷凍宅配食「あえて、」の自社販売サイトにおいて、ステルスマーケティング(以下、ステマ)に該当する可能性のある表示を行っていた疑いがあることが、消費者庁の調査で明らかになった。
ステルスマーケティング : 広告であるにもかかわらず広告であることを隠す手法。ステルスには「隠密」「こっそり行う」といった意味がある。
消費者庁によれば、同社は商品を無償提供する条件で第三者にInstagram投稿を依頼し、その投稿を自社サイトの「レビュー」欄等に転載していた。このように広告であるにもかかわらずその旨を明示しない表示はステマに該当し、2023年10月から景品表示法5条3号(いわゆる「ステマ告示」)に基づき禁止されている。これまでもRIZAPグループや大正製薬の事案(詳細は2024年9月4日のニュース「ステマ規制第2号案件から学ぶべきこと」、同12月9日のニュース「コンプライアンスに敏感な大企業で安易なステマ規制違反が起こる背景」参照)はあったが、味の素のような連結売上高1兆円超クラスの企業がステマ違反の可能性を指摘されるのは初めてである。
もっとも、今回の味の素のケースは過去にステマ違反で摘発されたRIZAPグループや大正製薬と同列に論じるべきではない。なぜなら、消費者庁は、味の素および共同販売の非上場企業イングリウッドの2社から申請された「確約計画」(コンプライアンス強化の実施計画)を認定したに過ぎず、RIZAPグループや大正製薬のようにステマ規制に違反したと認定したわけではないからだ(消費者庁のリリースはこちら。味の素のリリースはこちら)。
「ステマ規制に関する確約計画の認定」と「ステマ規制違反の認定」は明確に異なる。このことを理解するには、ステマ規制に関する確約手続(以下、確約手続)について理解しておく必要がある。まず、確約手続はステマ規制に違反した疑いを持たれた事業者(以下、違反被疑行為者)全員が利用できるわけではない。あくまで消費者庁がその疑いの理由となった行為(以下、違反被疑行為)について確約手続に付すことが適当であると判断した場合に限り利用可能な手続となっている。では、消費者庁はどのような判断基準で、確約手続に付すことが適当かどうかを判断しているのだろうか。この点について、「確約手続に関する運用基準」(令和6年4月 18 日 消費者庁長官決定。以下、運用基準)には「個別具体的な事案に応じて、違反被疑行為等を迅速に是正する必要性、あるいは、違反被疑行為者の提案に基づいた方がより実態に即した効果的な措置となる可能性」などの観点から判断すると記載されている。また、違反被疑行為がなされるに至った経緯、違反被疑行為の規模および態様、一般消費者に与える影響の程度並びに確約計画において見込まれる内容その他当該事案における一切の事情が考慮される。ただし、過去10年以内に景表法関連の法的措置を受けたことがある場合や景表法違反の事実を知った上であえて当該表示を行っているなど、「悪質かつ重大な違反被疑行為」となると話は別だ。こうした場合には、違反被疑行為等の迅速な是正を期待することができず、違反行為を認定して法的措置をとることにより厳正に対処する必要があるため、確約手続の対象にならない。
違反被疑行為者は、消費者庁が確約手続通知を行ってから60日以内(*)に確約認定申請を行い、確約計画を提出する。確約計画には是正措置(または影響是正措置(ステマのウェブ広告を取り下げるなど既に違反行為そのものはやめたものの、その行為によって消費者に誤解や悪影響が残っている場合に、その影響を取り除くために行う対応))として、下記の内容等を実施期限とともに個別具体的に記載する必要がある。
(1)違反被疑行為を取りやめること
(2)一般消費者への周知徹底
(3)違反被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための措置
(4)履行状況の報告
(5)一般消費者への被害回復
(6)契約変更
(7)取引条件の変更
消費者庁は、違反被疑行為者が提出した確約計画に対して「措置内容の十分性」と「措置実施の確実性」(例えば、確約措置として一般消費者への被害回復を行う場合には、当該措置の内容や当該措置の実施に必要な資金の額及びその調達方法などが具体的に明らかにされていなければならない)について審査を行い、確約措置が認定要件に適合すると判断されれば、当該確約計画を認定することになる。
味の素は消費者庁の調査を受けステマ規制に関する疑義を受けたが、確約計画の申請・認定により、直ちに「クロ」と断定されることを回避した形で(いわば「クロ」でも「シロ」でもない「グレー」として)自主的に是正を進める道を選んだ。味の素が確約手続を選択したのは、明確な違反認定の回避と、手続の迅速化というメリットの享受するためだと考えられる。運用基準では、確約計画の認定が違反認定と同義ではないことが明記されており、今回の消費者庁のリリースでも「本認定は、消費者庁が味の素の行為が景表法の規定に違反することを認定したものではない」旨が示されている。結果として、味の素はレピュテーションリスクの一定程度の抑制を実現できたと言えよう。また、確約手続の選択により課徴金の賦課可能性も相対的に低減し得る(直ちに免除されるわけではない)。一方で、確約計画の履行義務は生じるが、上場企業のように高度なコンプライアンス体制を前提とする事業者にとっては過大なデメリットとは言い難い。ただし、計画不履行や再発があれば認定取消から通常の執行(措置命令等)に移行し、かえって不利益が大きくなる点には留意が必要だ。
冷凍宅配食「あえて、」の販売サイトの「会社概要」欄の「会社名」には「味の素株式会社」と記載されているが、「特定商取引法に基づく表記」欄の「販売業者名」が「株式会社イングリウッド」となっており、同事業は味の素とイングリウッドの共同事業であることがうかがえる。こうした共同事業では、とかく責任が曖昧になりがちであり、法令違反が生じやすい。共同事業の遂行に先立ち、両者の役割分担を明確にするようにしたい。
横塚 仁士 : 日本経済新聞社などで記者として活動した後、大和総研にてシンクタンク研究員として調査・研究に従事し、企業や社会課題の解決に関する知見を蓄積。その後はみずほ銀行、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどで、ガバナンス・リスク・コンプライアンス(GRC)、クロスボーダーM&A、ESG・サステナビリティ、DXなど幅広いテーマで企業を支援。農業系ベンチャー企業では新規事業開発や地方創生案件を担当。2025年6月、「100年続く仕組みを創る」をビジョンに株式会社百年創造を設立。
【前編】ではサイバーセキュリティに関する国内外の規制について取り上げたが、
こうした規制動向を受け、サイバーセキュリティを重要な経営テーマとして位置付け、これに取り組む企業も増えつつある。一方で、依然として同分野における課題を有する企業も多い。その一つが、・・・
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横塚 仁士 : 日本経済新聞社などで記者として活動した後、大和総研にてシンクタンク研究員として調査・研究に従事し、企業や社会課題の解決に関する知見を蓄積。その後はみずほ銀行、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどで、ガバナンス・リスク・コンプライアンス(GRC)、クロスボーダーM&A、ESG・サステナビリティ、DXなど幅広いテーマで企業を支援。農業系ベンチャー企業では新規事業開発や地方創生案件を担当。2025年6月、「100年続く仕組みを創る」をビジョンに株式会社百年創造を設立。
【前編】ではサイバーセキュリティに関する国内外の規制について取り上げたが、こうした規制動向を受け、サイバーセキュリティを重要な経営テーマとして位置付け、これに取り組む企業も増えつつある。一方で、依然として同分野における課題を有する企業も多い。その一つが、委託先においてサイバーセキュリティ上のインシデントが生じても、それに対応する体制が整備されていないということだ。一般社団法人日本IT団体連盟が実施した「サイバーインデックス企業調査2024」によると、「委託先などの取引先に関するリスクを分析し、契約書などで対策を明確化し、対策状況の報告を受けて適宜見直す」という対応について企業の取り組み状況を5段階で評価した平均スコアは約2.9にとどまっており、全調査項目の中で最低となっている(12ページ参照)。本件を含め、日本企業が陥りやすい「落とし穴」として以下が挙げられる。
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●形式主義:ガイドラインや外部アドバイザーの助言をもとに体制を構築したものの、取締役会の議題にはのぼらない。 ●ツールへの過度な信頼:導入したセキュリティ製品に対して過度な高評価を与える。導入した製品の「数」が成果であると考え、実際の運用上のKPIを設けない。 ●委託先リスクの盲点:重要委託先・取引先に監査を実施せず、インシデント発生時に初めてリスクが顕在化、脆弱性が発覚する。 ●開示遅延:情報開示に関する判断の遅れで消費者や投資家への報告が後手に回り、二次被害が拡大する。 |
これらの「落とし穴」は、経営陣が実務を監督する仕組みを構築し、機能させることで回避できる可能性が高まる。具体的には、以下のようなテーマを取締役会で議論し、その結果を社内で推進することが求められる。
1.リスク許容度を明文化する
ITインフラや業務システム等の停止時間による操業への影響や損害額等を取締役会で議論し、どこまで受容できるか、またはできないかを線引きする。
2.KPIの設定と四半期ダッシュボードの導入
例えば脆弱性管理、インシデントの平均検知時間/平均復旧時間、防御体制、委託先管理、開示対応といったKPIを設定した上で、取締役会がKPIを継続的にモニタリングし、改善サイクルを四半期ごとに回す。
3.「4営業日ルール」等の実施
米国SEC「サイバーセキュリティ開示規則」(【前編】参照)等に基づく「発生→判断→初報→続報の流れ」を4営業日で行うためのフローを描き、社内の関連部署(法務・広報IR等)を交えた訓練を実施する。
4.委託先に対するガバナンス・リスク管理の強化
調達契約にサイバーセキュリティに関する条項を組み込み、重要な取引先には監査と是正を義務付ける。
5.経営層が参加するシナリオ演習の実施
「システム停止時に公表するか」「復旧を優先するか」といった複数のシナリオを取締役会が想定して模擬演習を実施し、経営判断の精緻化に役立てる。
サイバーセキュリティは、単なる技術的対策の積み重ねではなく、競争優位を築くためのコーポレートガバナンス上の「資産」とも言える。例えば顧客に「取引データが安全に扱われている」ことを示せば顧客からの信頼性が高まり、ブランド価値の向上につながる。また、投資家に向けて「サイバーセキュリティ対策を取締役会のテーマとしている」と開示すれば、資本コストの低減につながる可能性がある。
資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。
いま日本企業に求められているのは、「どのように守るか」から「いかにして強みにするか」への発想の転換である。取締役会が課題を理解し、脆弱性対応の迅速性や委託先リスクの監査などを定期的に監督する仕組みを整えることで、透明性と即応力を備えた「サイバーセキュリティ・ガバナンス」を実装できる。それは国際市場で競争力を維持し続けるための前提条件となろう。
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