2020/07/15 監査等委員および監査役選任議案、「独立性」に厳しい視線

TOPIX100採用企業の2020年6月・定時株主総会(以下、株主総会)における議決権行使結果のレポート第三弾では、監査等委員である取締役選任議案および監査役選任議案をとり上げる。・・・

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2020/07/15 監査等委員および監査役選任議案、「独立性」に厳しい視線(会員限定)

TOPIX100採用企業の2020年6月・定時株主総会(以下、株主総会)における議決権行使結果のレポート第三弾では、監査等委員である取締役選任議案および監査役選任議案をとり上げる。

第一弾 2020年7月7日 『2020年6月総会 ROE基準非適用でも賛成率80%割れの取締役選任議案増加
第二弾 2020年7月13日 『「3分の1基準」に抵触で、経営トップへの賛成率が20ポイント下落

※なお、本シリーズでとり上げるTOPIX100採用企業は、8月決算であるファーストリテイリングを除く99社とする。また、本稿の議決権行使結果データには、株主総会を7月に開催する日立製作所とオリンパス、および7月3日時点で臨時報告書が提出されていない日産自動車と住友不動産のものは含まれていない。

TOPIX100採用企業における監査等委員である取締役選任議案は、監査等委員会設置会社15社のうち13社によって52議案(52候補者)が上程された(補欠監査等委員を含む)。1社平均で4.0人となる。

【監査等委員である取締役の低賛成率候補者】
社名 候補者 役職等 賛成率 (前回)
第一生命HD 増田 宏一 【社外】元・あずさ監査法人代表社員 74.97% 73.72%
ENEOS HD 岡 俊子 【社外】元・PwCアドバイザリー合同会社 76.95% -
NTTドコモ 中田 勝已 社外】元・NTTセキュリティ代表取締役社長 80.70% 77.80%
NTTドコモ 寒河江 弘信 【社外】元・NTTデータ取締役常務執行役員 81.71% 81.62%
第一生命HD 長濱 守信 上席常勤監査等委員 84.03% 88.25%
第一生命HD 近藤 総一 常勤監査等委員 84.04% 88.25%

第一生命ホールディングスの監査等委員は株主総会後に5名となり、そのうち3名が社外取締役だが、3名の中で今回改選された1名は会計監査人の出身者であり、独立性が認められないことから、低賛成率にとどまったものとみられる。また、この結果、同社の監査等委員5名のうち独立性のある者(以下、独立者)は2名しかいない状態となってしまうため、過半数を独立者とするべく(=分母を3名とするべく)、社内監査等委員である2名に反対票が集まったものと推測される。

ENEOSホールディングスの社外候補者も監査法人グループの出身者だが、あくまで「アドバイザリー会社」であり監査法人そのものではない。しかし、株主総会招集通知の選任議案には同社に「海外新規事業調査費等」を支払ったとの注記があったことから、コンサルティング業務の発注先として独立性が問題視されたのだろう。NTTドコモの社外候補者2名はグループ会社の出身者であり、やはり独立性が懸念されたものと考えられる。

TOPIX100採用企業における監査役選任議案は、監査役会設置会社である57社のうち、47社によって94議案(94候補者)が上程された(補欠監査役を含む)。1社平均で2.0人となる。

【監査役の低賛成率候補者】
社名 候補者 役職等 賛成率 (前回)
OLC 三枝紀生 【社外】京成電鉄代表取締役会長 72.75% -
住友金属鉱山 吉田亙 【社外】元・国際協力銀行理事 80.15% -
OLC 米川公誠 【社外】関東鉄道相談役 81.16% -
西日本旅客鉄道 小倉真樹 【社外】元・大阪高等裁判所判事 83.35% -

監査役候補者についても、やはり社外監査役の独立性が問われ、グループ会社や金融機関の出身者の候補者に反対票が集まった。オリエンタルランド(OLC)の候補者2名は、それぞれ筆頭株主の現任および関係会社の過去の経営トップである。住友金属鉱山が社外監査役として上程した候補者は、主要借入先の出身者となっている。

なお、西日本旅客鉄道の候補者は元裁判官の弁護士であり、顧問契約など特段の取引関係はない模様である。しかし、株主総会招集通知における選任議案の略歴を見ると過去に同社での勤務経験があることから、独立性が問題視された可能性がある。もっとも、1988年に同社を退職しており、既に30年超が経過している旨、選任議案の略歴にも記載されている。普通に考えれば“クーリングオフ”を認めてよい事例とも言えるが、投資家の間では判断が分かれたということだろう。

2020/07/14 コロナに感染した従業員が情報開示を拒んだ場合の対応

東京都内を中心に新型コロナウイルス感染者数が再び増加に転じている。社内で感染者が出たという企業もあろう。その場合、企業にとって悩ましいのが、感染情報の取扱いだ。感染の拡大防止という観点からは、当然ながら感染した従業員名を迅速に社内に周知し、当該従業員との濃厚接触者を特定する必要がある。ただ、新型コロナウイルスに感染したことを周囲に知られたくないと考える従業員は少なくない。差別につながったり、治癒後も「コロナに感染した人」というレッテルを貼られたり、場合によっては、「他の従業員が自粛している最中に夜の街で遊んでいたから感染したんだろう」などという根拠のない噂を立てられる可能性もある。企業が社内に感染が広がることを懸念しつつも、当該従業員の情報を安易に公表することには、個人情報保護法の観点からも慎重になるのもうなずけるところだ。

しかし、この点について内閣府の・・・

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2020/07/14 コロナに感染した従業員が情報開示を拒んだ場合の対応(会員限定)

東京都内を中心に新型コロナウイルス感染者数が再び増加に転じている。社内で感染者が出たという企業もあろう。その場合、企業にとって悩ましいのが、感染情報の取扱いだ。感染の拡大防止という観点からは、当然ながら感染した従業員名を迅速に社内に周知し、当該従業員との濃厚接触者を特定する必要がある。ただ、新型コロナウイルスに感染したことを周囲に知られたくないと考える従業員は少なくない。差別につながったり、治癒後も「コロナに感染した人」というレッテルを貼られたり、場合によっては、「他の従業員が自粛している最中に夜の街で遊んでいたから感染したんだろう」などという根拠のない噂を立てられる可能性もある。企業が社内に感染が広がることを懸念しつつも、当該従業員の情報を安易に公表することには、個人情報保護法の観点からも慎重になるのもうなずけるところだ。

しかし、この点について内閣府の外局である個人情報保護委員会は、2次感染防止や事業活動の継続のために必要がある場合には、本人の同意を得ずに社内に情報を公表しても問題ないとの見解を明らかにしている(個人情報保護委員会/新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした個人データの取扱いについて」/(別紙)個人情報保護法相談ダイヤルに多くよせられている質問に関する回答 (以下Q&A)の問1 参照)。

個人情報保護委員会 : 内閣府の外局として、内閣総理大臣が所轄する行政委員会。個人情報保護委員会には調査、監督権限が認められており、同委員会の命令違反には罰則が科される。個人情報保護法に基づき、2016年1月1日に設置された。

Q&Aによれば、社内はもちろん、取引先や保健所への情報提供も本人の同意は不要とされている(問2、3参照)。たとえ「従業員本人の同意を取ることが困難」であったとしても、本人の同意を得ることなく情報提供が可能であるとしている点、注目される。

ただ、個人情報保護法には違反しないからと言って、むやみに感染情報を公表をすれば、プライバシー権の侵害に該当することとなり、感染者である従業員から損害賠償責任を問われる可能性があるので要注意だ。当該従業員のプライバシーを侵害しないためには、当該従業員に対し、濃厚接触した可能性がある者が誰なのかをヒアリングし、当該従業員の氏名は濃厚接触者にのみ伝えるといった対応が望ましいと言える。

逆に、プライバシー権の侵害を恐れるあまり、感染者情報を秘匿し、その結果、社内に感染が広がるような事態となれば、従業員の安全義務を怠ったことについて、企業が安全配慮義務違反を問われる可能性がある。労働契約法上、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務がある」とされているからだ(労働契約法第5条)。従業員が新型コロナウイルスに感染する“抽象的な可能性”があるという状況であれば企業の責任が問われることはないが、従業員の感染のリスクが予見される場合、そのような結果を回避することが可能であるにもかかわらず必要な措置を講じることなくリスクを放置すれば、上記義務違反となる点、留意したい。

2020/07/13 「3分の1基準」に抵触で、経営トップへの賛成率が20ポイント下落(会員限定)

2020年7月7日のニュース「2020年6月総会 ROE基準非適用でも賛成率80%割れの取締役選任議案増加」に続くTOPIX100採用企業の2020年6月・定時株主総会(以下、株主総会)における議決権行使結果のレポート第二弾では、取締役選任議案(監査等委員を除く)をとり上げる。

なお、本シリーズでとり上げるTOPIX100採用企業は、8月決算であるファーストリテイリングを除く99社とする。また、本稿の議決権行使結果データには、株主総会を7月に開催する日立製作所とオリンパス、および7月3日時点で臨時報告書が提出されていない日産自動車と住友不動産のものは含まれていない。

TOPIX100採用企業における取締役選任議案(監査等委員を除く)は、92社から931議案(=931候補者)が上程された。1社平均で10.2名となる。機関設計別の内訳は、指名委員会等設置会社が19社、監査等委員会設置会社が15社、監査役会設置会社が57社となっている。最も多かったのは三菱UFJフィナンシャル・グループ(指名委員会等設置会社)と東海旅客鉄道(監査役会設置会社)の16名だった。

【取締役(監査等委員を除く)の低賛成率候補者】
社名 候補者 役職等 賛成率 (前回)
関西電力 森本 孝 代表取締役社長 59.60% 85.00%
関西電力 彌園 豊一 代表取締役副社長執行役員 66.00% 85.00%
関西電力 稲田 浩二 代表取締役副社長執行役員 66.10% 85.00%
関西電力 沖原 隆宗 【社外】三菱UFJ銀行特別顧問 66.40% 82.50%
関西電力 小林 哲也 【社外】近鉄G HD代表取締役会長 66.70% 84.80%
関西電力 杉本 康 常任監査役 67.70% 86.40%
SMC 丸山 勝徳 代表取締役社長 67.90% 86.20%
積水ハウス 阿部 俊則 代表取締役会長 69.27% 69.09%
KDDI 山本 圭司 【社外】トヨタ自動車株式会社執行役員 69.96% 68.60%
KDDI 山口 悟郎 【社外】京セラ代表取締役会長 70.04% 68.68%
エーザイ 内藤 晴夫 代表執行役CEO 71.71% 71.26%
積水ハウス 稲垣 士郎 代表取締役副会長 72.87% 73.44%
三井住友FG 松本 正之 【社外】東海旅客鉄道特別顧問 75.50% -
三菱電機 原田 真治 常務執行役 総務・人事・広報担当 75.57% 92.91%
関西電力 佐々木 茂夫 【社外】元・大阪高等検察庁検事長 76.10% 87.00%
野村HD 園 マリ 【社外】元・新日本有限責任監査法人 76.20% 72.00%
三菱電機 小山田 隆 【社外】三菱UFJ銀行特別顧問 76.30% 80.30%
キリンHD 三好 敏也 常務執行役員 76.58% 97.30%
オリックス 渡辺 博史 【社外】元・日本政策金融公庫副総裁 79.00% -
三菱電機 柵山 正樹 取締役会長 79.52% 95.83%

関西電力の再任取締役は、社内取締役3名のみならず、社外取締役である2名も含め全員、賛成率が70%を割り込んだ。不祥事(元経営幹部らが原子力発電所がある福井県高浜町の元助役から巨額の金品を受け取り)の責任を問われたものと考えられる。また新任の1名も80%を下回っているが、同氏は昨年まで社外監査役を務めており、今年、社外取締役に鞍替えして選任された経緯があるため、やはり不祥事に対する監督責任が問題となったのだろう。他に不祥事が取締役選任議案の賛否に影響したと見られる例としては、積水ハウス(地面師問題およびその後の経営混乱 2018年4月2日のニュース「“有事”における任意の委員会の影響力」参照)、三菱電機(労務問題、情報漏洩、品質データ偽装)が挙げられる。

SMCでは今回の株主総会終了後の社外取締役が全取締役10名中「2名」にとどまっており、機関投資家の多くが今年から導入した「3分の1基準」に抵触したため、経営トップの選任議案への賛成率が前年比で20ポイント近い大幅な低下につながったものと見られる。KDDIの社外取締役2名はいずれも大株主の出身者であり、昨年と同様の多くの反対票が集まった。エーザイについては昨年同様、取締役会の決議で継続している買収防衛策への批判が経営トップへの反対票につながった模様。三井住友フィナンシャル・グループの社外取締役は政策保有先の出身者であること、野村ホールディングスの社外取締役は会計監査人の出身者であることから、多くの反対票が集まった。

キリンホールディングスの社内取締役については、業績や不祥事などが影響したわけではなく、いささか特殊な要因で低賛成率となっている。同社に対しては英国ファンドのフランチャイズ・パートナーズが2名の社外取締役候補者を株主提案しており、そのうち1名については議決権行使助言会社最大手のISSが賛成推奨した。一方でISSは、会社提案による取締役候補者の人数が定款で定めた上限いっぱいであるため、株主提案による候補者が入る余地を確保するため会社提案の社内取締役1名に反対推奨した旨説明している。議決権行使助言会社の影響力が大きくなっていることを表す事象の一つと言えよう。

なお、既報のとおり、今年は新型コロナウイルスの影響を踏まえ、ISSがROE基準(直近または5期平均のROEが5%未満の場合、経営トップの選任議案に反対)の適用を停止した(2020年5月13日のニュース『ISS、継続会を選択した企業に対し「棄権」推奨』参照)。TOPIX100採用企業のうち例年どおりROE基準が適用されていた場合、4社(イオン、日本郵政、京セラ、日本製鉄)が同基準に抵触した可能性があったが、2年任期で取締役選任議案がなかった京セラを除き、いずれの経営トップも80%以上の賛成率を確保している。昨年もROE基準に抵触したイオンの経営トップが賛成率76%だったことを勘案すると、今年の株主総会シーズンで同基準が停止された影響は小さくなかったことがうかがわれる。

ROE基準 : 資本生産性が低く(過去5 期平均の自己資本利益率[ROE]が5%を下回り)かつ改善傾向(過去5 期の平均ROE が5%未満でも、直近の会計年度のROE が5%以上ある場合)にない場合、経営トップ(社長、会長)である取締役の選任議案に反対を推奨するとする基準。

2020/07/13 「3分の1基準」に抵触で、経営トップへの賛成率が20ポイント下落

2020年7月7日のニュース「2020年6月総会 ROE基準非適用でも賛成率80%割れの取締役選任議案増加」に続くTOPIX100採用企業の2020年6月・定時株主総会(以下、株主総会)における議決権行使結果のレポート第二弾では、取締役選任議案(監査等委員を除く)をとり上げる。・・・

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2020/07/10 マザーズ上場会社で大株主が従業員と手を組み経営権奪取

2020年7月3日のニュース「天馬の株主提案は否決、執行役員含む社内融和に期待」では、会社提案の取締役選任議案で3人の候補者が否決、株主提案での全候補者が否決されたケースを紹介したが、マザーズ上場の・・・

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2020/07/10 【2020年6月の課題】リモートワーク導入に伴い検討すべき点(法的問題以外)と対処法(会員限定)

解答者:サイボウズ株式会社 なかむらアサミ

はじめに

新型コロナウィルス感染防止のため、多くの企業がリモートワークを導入しています。緊急事態宣言は解除されましたが、ここ数日東京都内の感染者数が100人、200人を超える日が相次いでいるように決して感染が収束したわけではありませんので、実質的にはワクチン開発がされるまでリモートワークとオフィスワークを併用する働き方が続くでしょう。

本稿では、10年前にリモートワークを導入して以来、日常的に活用してきた弊社の経験を踏まえ、リモートワーク導入に関する疑問にお答えしていきたいと思います。

リモートワークに必要な機器・ツール

まずは、リモートワークに必要な機器やツールを改めて確認してみましょう。
下記の表をご参照ください。御社の現状はいかがでしょうか。

No カテゴリー チェック内容
1 ハードの貸与 会社での仕事はノートPCでも可能だ
2 会社支給のノートPCがある
3 会社支給のノートPCには、業務に必要な最低限のソフトウェアが入っている(Word,Excel,Powerpointなど)
4 会社支給のノートPCは、業務に耐えうる容量がある(50G以上)
5 会社支給のノートPCは、カメラとマイクの使用が可能だ
6 会社支給のスマホがある
7 ネットワーク環境 会社支給のスマホはテザリングが可能だ
8 テザリングの容量は無制限、または通常の業務をこなすのに支障ない容量だ
9 自宅にWi-Fiがある
10 会議への参加 会社が利用を承認しているWeb会議システムがある
11 Web会議システムの使い方を知っており、実際に何回か使用してみたことがある
12 コミュニケーション基盤 グループウェアやチャットツールなど、メール以外のコミュニケーション基盤がある
PCは会社用と在宅用を2台支給

まず、リモートワークに欠かせないパソコンについては、以前は弊社でも社員の私用PCを業務に活用していましたが、セキュリティを担保するための二段階認証やカードリーダーを有効にするためのソフトウェアをインストールすることで私用PCに負荷がかかり動作が重くなること、また、そのような状況が発生した場合に会社に求められる対応を考えると逆にコストがかかることもあり、現在は全社員にリモートワーク用のノートPCを支給しています。つまり、社員には1人2台のノートPC(会社用、在宅用)を支給しているということです。

弊社ではすべてのPCを購入していますが、リースする方法や、テレワーク助成金を活用する方法などもあります。必要台数に応じて検討してみるとよいでしょう。またPCを支給する際に重要なのはPCのスペックです。エクセルを開くと他のソフトが開けないなど、容量が小さすぎると業務に支障が出ます。支給の際には容量をしっかり確認する必要があります。

ガラケーはNG
また、ネットワークについては、オフィスワークとリモートワークを交互に行う形態の場合は、会社支給のスマホのテザリングを使用するのが望ましいと言えます。会社支給の携帯が“ガラケー”ではNGなのはこのためです。

これに対し、緊急事態宣言解除前のような「原則リモートワーク」が続く状態では、自宅にWi-Fi環境(光回線)があることが望ましいと言えます。社員の自宅のネットワーク環境を確認し、ネットワーク環境が十分でなければ、会社でモバイルWi-Fiを支給するといった配慮も必要でしょう。一般的に公共のネットワークはセキュリティ面で安全性が低いことが多いため、使用しないよう注意を喚起してください。

また、社内のシステムにアクセスする際には暗号化によるセキュリティ対策を取る必要があります。どこでセキュリティを担保するかにもよりますが、回線でセキュリティを担保するよりは、暗号化によりセキュリティを担保する方が確実です。ただし、構築できるハードとの照合が必要になるでしょう。

ペーパーレス化を伴わないリモートワークは失敗する
また、リモートワーク導入にあたり、必ず「業務のペーパーレス化」も並行して進めましょう。例えば判子を押すために出社するようでは、リモートワークの意味が失われます。ペーパーレス化を伴わないリモートワークは失敗する可能性が高いということを肝に銘じておく必要があります。

リモートワークの対象

リモートワークは上位の役職者から始めるのが理想
リモートワークは、最終的には全社員を対象とするのが理想です。今般のコロナ禍では、否応なしにそうなった企業も多いと思いますが、PCの手配や、仕事の進め方の確認など、準備段階では少なからず混乱もあったのではないでしょうか。したがって、今後恒常的な制度としてリモートワークを導入する場合には、まず「誰の」「どの業務を」リモートワークの対象にするのかを考えるところから始めるのがよいでしょう。

対象者については、可能であればまずは上位の役職者から始めるのがおススメです。一般社員から始めた場合、上司の理解がないため、リモートワークをしたかったのに結局できなかったというケースをよく耳にします。まず上司層がリモートワークを経験してから部下もそれに追随し、双方でノウハウを溜めていくというやり方が、社内でリモートワークを浸透させ、成功に導く秘訣です。

また、役職者の方は、できれば「毎週〇曜日はリモートワークの日」などと決めておくと、本人のみならず部下にとっても対応がしやすく、双方がリモートワークに慣れるうえで効果的です。

工場のある企業はリモートワークはできない?
「人」ではなく、特定の「部署(部門)」からリモートワークを始めるという方法もあります。いずれはすべての部署をリモートワークの対象にするとしても、このように段階を踏んだ方が、すべての部署が一気にリモートワークに移行するよりも準備がしやすいはずです。

ただ、例えば工場がある企業などは、リモートワークを導入するのは難しいと考えているかもしれません。確かにリモートワークは企画・事務職などホワイトカラーが所属する部署の方が導入しやすい面はありますが、工場職の社員に対しても、リモートワークへのニーズを確認してみるべきです。もしかしたら、週に1日くらいは事務作業等に集中したいというニーズがあるかもしれません。また、リモートワークは基本的に企画・事務職を対象にすることとした場合には、その代わりに、工場職の方には例えば彼らが望む働き方を実現する制度を導入するなど、両者を分けて、それぞれの「働き方改革」を考える必要があります。例えば技術関連書類や図面など多種多様かつ膨大な資料のペーパーレス化による業務効率向上と残業時間の削減を図るなど、できることは多いはずです。

日本企業には、制度をつくる際に「公平」「平等」を最優先に考えようとする癖がありますが、公平や平等の名の下、やりたいことができない人を生むことの方が不幸です。「その人がどういう働き方をしたいか」という希望に一つひとつ応えていく方が、一見遠回りのように見えても、全社員が気持ちよく働ける環境作りへの近道となります。

リモートワークをスムーズに行うためのコツ

情報システム部門と人事総務部門の連携は必須
会社の規模にもよりますが、リモートワークに関しては自社でできることが多々ありますので、リモートワークの導入にあたってコンサルが必要かと言われれば、必ずしも必要ではないと思います。

自力でリモートワークを導入する場合、情報システム部門と人事・総務部門の連携が非常に重要になります。この連携が上手くできていないと、例えば社員がリモートワーク制度の利用を申請をしたにもかかわらず、リモートワークのための環境の準備ができてないといったことが起こりかねませんので注意が必要です。

リモートワークは社員同士のコミュニケーションを希薄にする?
リモートワークについてお話しさせていただくたびに必ずと言ってよいほど出るのが「リモートワークは社員同士のコミュニケーションを希薄にするのか?」という質問です。まず最初に伝えておきたいのは、顔を合わせなければ十分にコミュニケーションできないというのは「幻想」だということです。

もちろん、顔を合わせたことのない人と仕事をするのは困難です。1つ面白い実験を紹介しましょう。ミシガン大学で行われた「分散されたチームの業績低下の予防策を検証する実験」です。

この実験では、「A:全員が顔を合わせて作業をする」「B:いったん全員に顔を合わせてもらい、その後別々の場所で作業をする」「C:最初から別々の場所で作業をする」という3つのチームを作り、業績を比較したところ、結果はAチームの業績が最も高く、BチームはAチームと僅差、Cチームはダントツの最下位という結果になったそうです。

注目されるのは、AチームとBチームの差が僅差、という点です。つまり、何度か顔を合わせてお互いのことをある程度分かり合っていれば、あとは離れていてもパフォーマンスに影響はない、ということです。Bチームはまさにリモートワークの状態と言えるのではないでしょうか。

日本社会には「場」を重視する傾向があり、「顔を合わせた方がいい」という意見もしばしば耳にしますが、オフィスに出勤していても、部長は終日会議でほとんど顔を合わせない、といったことはよくあります。「顔を合わせることが大事」と言っている人が実際に顔を合わせているかどうかは疑わしいものです。顔を合わせることよりも大事なのは、「その人を信頼できるかどうか」であると言えるでしょう。「顔を合わせることが大事」というのはリモートワークの導入に前向きでない人による根拠のない言い訳であり、「私は部下を信頼していません」と言っているようなものです。

メールのやり取りは減らす
リモートワークにおいてはメールでのやりとりは減らしましょう。メールは1対多数の‟閉じた“ツールであるため、「仕事の全体像が見えにくい」「気軽に尋ねにくい」といったデメリットがあります。そのデメリットは、リモートワークになると顕著に表れてきます。リモートワークでは、例えば「きちんと仕事しているのか分からない」「上司の反応が分かりにくい」といった声をよく聞きます。その原因の多くがメールでのやり取りにあります。

チーム間や社内でのやりとりにはチャットツールやグループウェアを活用することがコミュニケーションを円滑にするコツです。

リモートワークは「見えないもの」という思い込みをやめる
リモートワークを導入する企業からよく聞かれる質問が、人事評価のあり方です。ただ、リモートワークを導入するからといって、基本的には人事評価の仕組みを現状から変える必要はないと思います。

そもそも、リモートワークになるから人事評価を変えるという発想の背景には、「リモートワークは『見えないもの』である」という思い込みがあるのではないでしょうか。しかし、リモートであっても、TV会議で参加者全員の顔を見ながら話すこともできますし、1on1ミーティングも、雑談をすることも可能です。リモートワークを10年前に導入して以来、今日まで日常的に行ってきた弊社の経験を踏まえて言えるのは、「会社で出来て家で出来ないことはない」ということです。社員の頑張りが「リモートワークだから見えない」とうこともありません。まずはこうした思い込みをなくしましょう。

もっとも、今回のコロナ禍でリモートワークを採用した企業では、期首の目標値を見直すケースも多いと思います。目標値と評価制度が結びついている企業では、社員の評価方法にも見直しが入ることはあるでしょう。これはリモートワークに限った話ではありませんが、重要なのは、評価制度を変更した場合には、その理由や経緯を社員にきちんと伝えることです。それが社員の納得感や安心感を生み、モチベーションの維持にもつながります。

リモートワークに要した電気代等の費用負担
コロナ禍前のリモートワークは「選べる」ものであったため、電気代などまで負担している企業はほぼ無かったと言えるでしょう。しかし、「withコロナ」の時代となり、密を避けながら経済活動を継続するにあたっては、社員の半分が出社、残りの半分はリモートワークといった状態が日常化する可能性があります。

ちなみに弊社の場合、2月下旬から原則全社員(派遣社員を含む)がリモートワークとなり、現在までそれを継続しているため、4月分からの通勤交通費は「実費」となり、また、全社員に一律2,000円/月の電気代を支給しています。このほか、リモートワークのための自宅の環境整備(机・椅子や健康器具などの購入)のための支援金も一律で支給しました。

夏になるとエアコン費用がかさむこともあり、増額を求める社員も増えてくると思います。そのあたりは話し合いながら決めることになるでしょう。

オフィスは縮小すべき?
例えば社員の半分が出社、半分がリモートワークといった状況になれば、現状のオフィスをどうするのかといった問題も当然出てきます。

おそらく、今後はオフィスを縮小する企業が多数出てくるでしょう。オフィスに関する費用は非常に大きなものになりますので、オフィスを縮小しつつ、それにより浮いた費用を社員のリモートワークの環境整備などに充てるということも検討に値すると思います。

BCP、採用戦略としてのリモートワーク

以上、リモートワークの導入にあたりよくある疑問について解説してまいりましたが、そもそもリモートワークは、事業継続計画(BCP)の観点からも非常に有効な働き方と言えます。現在、私達は、今般のコロナ禍のみならず、大地震、台風・豪雨による水害といった甚大な自然災害にいつ襲われてもおかしくない状況に置かれています。このように災害リスクが身近にある環境において、「事業が継続できる」「働ける環境がある」といったことは、自分達の生活に多くの安心感や未来への希望をもたらします。

また、リモートワークは採用戦略においてもカギを握っています。労働人口が減少している中でいかに優秀な人材を確保していくかということは、多くの企業にとって重要な経営課題となっています。これからは、リモートワーク制度を活用することにより「自社で働ける人」を増やすことに成功した企業が生き残っていくでしょう。実際、リモートワークできる環境があるかないかは、特に若手の求職者にとっては企業を選択する際の重要なチェックポイントになっています。

ちなみに、このコロナ禍で多くの日本人がリモートワークを経験した現在、特に通勤ラッシュの激しい都市圏で、「また毎日出社する日々に戻りたい」と考える人は少ないのではないかと思います。毎日出社するのではなく、リモートワークを取り入れながら、仕事やプライベートの都合に応じて「以前より柔軟に働きたい」と考える人が増えるのではないでしょうか。

リモートワークは、社員の「安心・安全」を確保するためだけのものでなく、企業のイメージにも大きな影響を与える時代となりました。コロナ禍への対応のみにとどまらず、自社の経営戦略の1つとしてリモートワークの導入に取り組んでみてはいかがでしょうか。

サイボウズ チームワーク総研では、リモートワークに際するご相談を随時行っておりますので、お気軽にお尋ねいただけますと幸いです。
お問い合わせ先はこちら

2020/07/10 マザーズ上場会社で大株主が従業員と手を組み経営権奪取(会員限定)

2020年7月3日のニュース「天馬の株主提案は否決、執行役員含む社内融和に期待」では、会社提案の取締役選任議案で3人の候補者が否決、株主提案での全候補者が否決されたケースを紹介したが、マザーズ上場の駅探(えきたん)の定時株主総会で、株主提案により取締役が「全員交代」するという異例の事態が発生した。

乗り換え案内サービスを提供している駅探は、2013年3月期よりCEホールディングス(東証1部上場)の関連会社となっており、駅探の筆頭株主は2013年3月期から2020年3月期まで継続してCEホールディングスである(2020年3月期末は30.87%)。駅探は2020年5月21日、CEホールディングスから2020年6月開催予定の駅探の定時株主総会で社内取締役5名、社外取締役2名、補欠監査役2名を選任する旨の株主提案を受けたことを公表した(駅探のリリースはこちら)。

関連会社 : 関連会社とは、「自社との関係で、人事、技術、取引、資本等によって、支配とはいわないまでも、意思決定に重大な影響力をもつことができる会社」を指す。

今回CEホールディングスが株主提案に踏み切ったきっかけは、CEホールディングスが「駅探の事業展開が遅滞しており企業価値の減少が顕著である」として駅探の状況を調べたところ、「常勤取締役によるパワーハラスメントにより部門長クラスの従業員がほとんど退職したこと」が判明したことにある(CEホールディングスのリリースを参照)。CEホールディングスは、同社の杉本社長が2020年3月13日に駅探の中村社長と面談し、①事実関係調査のための第三者委員会の設置、②パワーハラスメントを行った常勤取締役の職務停止、③ガバナンス機能強化のための諮問委員会(メンバーにCEホールディングス役員2名を含む)の設置と駅探取締役会へのオブザーバー参加、の3点を申し入れたうえで、CEホールディングスの要請に対して合理的で納得のいく回答がない場合、駅探の定時株主総会において、CEホールディングスが駅探経営を負託するのに適切と判断する者を駅探取締役候補者とすることを内容とする株主提案権を行使する用意があることを通知した。それにもかかわらず、駅探からの反応がなかったことから、CEホールディングスは取締役全員の取替案(駅探の従業員からの昇格3名、CEホールディングスの取締役2名派遣、社外取締役2名選任)の提案に踏み切った。

取締役会候補者に駅探の従業員3名が名を連ねていることから分かるように、この株主提案は、駅探の現経営陣から見れば、3名の従業員(駅探のHCビジネス部担当グループ長、コンテンツビジネス部開発第 2 グループ長、総務人事部人事課長)と大株主が手を結んだクーデターとも言える。CEホールディングスが取締役候補者に抜擢した従業員は「『それぞれの社員が価値を創造し、その貢献を実感できるような体制』、『多様性を歓迎し、風通しの良い安心して業務に集中できる環境』の構築を行いたい」との意思表明を行った(CEホールディングスが2020年5月29日に公表した「株式会社駅探に対する株主提案の内容について」を参照)。逆に言えば、従業員が「貢献を実感できない」「風通しの悪さ」について不満を抱いていたことが分かる。

この株主提案を受けた駅探は2020年6月1日に取締役会を開催し、本株主提案に反対することを決議した。駅探の取締役会は反対の理由として、「CEホールディングスが示す新経営陣による当社の経営方針には、具体性・合理性がなく、当社の中期経営計画に定めた成長戦略の継続性が見込まれないこと」に加え、「CEホールディングスが提案する経営陣では、CEホールディングスから独立した当社の経営を行うことは難しいこと」(独立性)を挙げていた。

ここでいう「独立性」には少し説明が必要になる。まず、CEホールディングスが株主提案した取締役候補者7名のうち2名はCEホールディングスの現取締役であり、駅探にとってはCEホールディングスの意向の代弁者に他ならない。また、上記のとおり3名は駅探の現従業員であり、駅探経営陣が「(CEホールディングスが)敢えて接触の上、当社の経営権奪取のために同従業員らに関わったことからすると、その利害関係や関係性に鑑み、かかる取締役候補者らが、提案株主の不利益になる行動を執ることは期待できない」(駅探のリリースを参照)と考えるのも当然だろう。さらに、社外取締役候補者2名は、「特定の当社顧客とのコネクションが強いことや、提案株主の経営方針における提携候補先の代表を務めていること等からすると、類型的に、当社の社外取締役としての監視・監督機能を十分に発揮すること」(同リリースより)は期待しづらい。以上の理由から、駅探の取締役会は、提案株主が提案する経営陣では独立性に疑義があると結論付けていた。

そのうえで駅探は、取締役候補者のうち過半数を社外取締役とする議案(業務執行取締役3名および社外取締役4名の計7名)を提案し、「東証マザーズ上場会社として実現可能な最高レベルのガバナンス体制」(上記の駅探のリリースを参照)を実現するとしていた。しかも、現経営陣にとっては、議決権助言会社最大手のISSが以下のとおり指摘し、株主提案に反対推奨をするという追い風まで吹いていた。

① 株主提案が当社取締役会の支配を目指しているにも関わらず、合理的で詳細な経営方針(「well-reasoned and detailed business plan」)を示すことができていないこと
② 敵対的買収の事例ですら経営陣の完全な交代を主張するケースは稀であり、提案株主のように、提案株主が推薦する役員候補者による方が企業価値に資する、との主張のみに基づいて経営陣の完全交代を求めることは現実的でないこと

さらに、CEホールディングスのリリースによれば、駅探は2020年4月中旬に株式会社アイ・アール ジャパンに委託して「株主さまアンケート」を実施し、回答者全員に500円分のクオカードを進呈することでアンケート回収を促進するとともに、アンケートの返信ハガキに電話番号を記入した株主に電話をかけ、会社提案議案への委任状の提出を依頼していた。CEホールディングスは「駅探が株主様にこのようなアンケートを実施したのは、駅探創業以来確認できていません」として、「一般的に、上記の様な働きかけを社外に委託した場合、1千万円を超える(内容によっては数千万円の)費用がかかると言われております。企業価値向上のための投資は積極的(かつ慎重に)行うべきですが、それとは無関係に現経営陣の保身のために行われているとしたら、重大な問題であります。」と指摘し、駅探経営陣の動きを牽制する局面も見られた。

定時株主総会まで1週間を切った2020年6月24日、事態が大きく動く。経営陣が「十分な賛同を得ることができなかった」として会社提案の役員候補者議案を取り下げたのだ(駅探のリリース「当社第18回定時株主総会における当社上程議案の一部取下げに関するお知らせ」を参照)。駅探が2020年6月30日に公表した臨時報告書によると、個人株主の駅探の議決権数54,763個のうち実際に株主総会の決議に参加したのは40,000個を切っており、約17,000個を保有しているCEホールディングスが株主提案の議案を可決するにはあと3,000個上乗せすれば足りる。最低でも17,000個の議決権は確実に会社提案の議案に対し否決に回る中、駅探経営陣は不利な戦いを強いられていた。駅探経営陣は、事前の“票読み”から判断して、株主総会開催を待たずに白旗を挙げたものと思われる。その結果、2020年6月29日に開催された駅探の定時株主総会では、取締役の選任議案としては株主提案の議案のみが審議の対象となって可決された。駅探の現経営陣は「全員」が退陣し、大株主と手を組んだ従業員を中心とした新経営陣が誕生することとなった。

駅探の利益は、従来型の「乗り換え案内」の月額課金ビジネスがここ数年緩やかに右肩下がりとなっており、3年連続減少していたが、そこに新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛で「乗り換え案内」「お出かけコンテンツ」など自社メディアへのアクセスが「過去に例を見ないレベル」で激減していた(駅探が2020年5月29日に公表した「2020年3月期 決算補足説明資料」5ページを参照)。2020年3月期の「親会社株主に帰属する当期純利益」は23百万円に過ぎず、2020年3月期決算の第3四半期まで稼いでいた195百万円のほとんどがコロナ禍で吹き飛んだ格好だ。旧取締役が総退陣する形で誕生したばかりの新経営陣に求められているのは、過去のしがらみから脱却し、一刻も早くニューノーマルに適したビジネスへの転換を実現することに他ならない。

親会社株主に帰属する当期純利益 : 「(連結上の)親会社の利益」と「(連結上の)子会社の利益のうち親会社帰属分」を合算した利益

2020/07/09 出資先が赤字で減損損失を計上 出資先の取締役を辞任すべき?

近年、事業会社が自社とシナジーのあるベンチャー企業に投資するCVC(Corporate Venture Capital=コーポレート・ベンチャーキャピタル) が活発になっているが、言うまでもなくベンチャー企業への投資にはリスクが伴う。特に将来の財務状況が見えにくいスタートアップ企業への投資はリスクが高く、場合によっては、売上や利益などとの実績値が当初の事業計画を大幅に下回るといった事態になることも珍しいことではない。その結果、投資により取得した株式について、出資元である自社において減損損失の計上をせざるを得なくなることもあろう。

CVC : 投資を本業としない事業会社が自己資金をベンチャー企業に投資すること(又はその組織)。CVCは社内の投資部門や子会社が運営するか、外部のVC(Venture Capital=ベンチャーキャピタル)に運営を委託することが多い。CVCもVCもベンチャー企業に投資を行うという点では同じだが、VCが投資先の将来的な上場によるキャピタルゲインを得ることを目的としているのに対し、CVCは自社とシナジーのあるベンチャー企業に投資し、協業等により本業の成長や拡大を目的としている点、大きく異なる。
減損損失 : 将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ計上される損失のこと。

CVCでは、単に出資するだけではなく、自社の取締役に出資先企業の取締役や社外取締役(以下、取締役)を兼任させるケースも少なくないが、この場合に問題となるのが、減損損失の計上に伴い、出資先企業の取締役を辞任すべきかどうかという点だ。

結論としては、・・・

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