2020/07/09 出資先が赤字で減損損失を計上 出資先の取締役を辞任すべき?(会員限定)

近年、事業会社が自社とシナジーのあるベンチャー企業に投資するCVC(Corporate Venture Capital=コーポレート・ベンチャーキャピタル) が活発になっているが、言うまでもなくベンチャー企業への投資にはリスクが伴う。特に将来の財務状況が見えにくいスタートアップ企業への投資はリスクが高く、場合によっては、売上や利益などとの実績値が当初の事業計画を大幅に下回るといった事態になることも珍しいことではない。その結果、投資により取得した株式について、出資元である自社において減損損失の計上をせざるを得なくなることもあろう。

CVC : 投資を本業としない事業会社が自己資金をベンチャー企業に投資すること(又はその組織)。CVCは社内の投資部門や子会社が運営するか、外部のVC(Venture Capital=ベンチャーキャピタル)に運営を委託することが多い。CVCもVCもベンチャー企業に投資を行うという点では同じだが、VCが投資先の将来的な上場によるキャピタルゲインを得ることを目的としているのに対し、CVCは自社とシナジーのあるベンチャー企業に投資し、協業等により本業の成長や拡大を目的としている点、大きく異なる。
減損損失 : 将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ計上される損失のこと。

CVCでは、単に出資するだけではなく、自社の取締役に出資先企業の取締役や社外取締役(以下、取締役)を兼任させるケースも少なくないが、この場合に問題となるのが、減損損失の計上に伴い、出資先企業の取締役を辞任すべきかどうかという点だ。

結論としては、自社から出資先企業の取締役に就任している者が善管注意義務を尽くしていると言える状況にある限りは、結果的に自社が減損損失を計上せざるを得なくなったとしても、そのまま出資先企業の取締役等を兼任しても問題は生じない。

これに対し、出資先企業において取締役等としての善管注意義務を尽くしてきたとは言えず、さらに「今後」も善管注意義務を尽くすことが難しい状況にある場合には、出資先企業の取締役としての善管注意義務違反だけでなく、出資元企業の取締役としても善管注意義務違反を問われかねないので、これ以上リスクを抱え込まないためにも、今すぐ辞任すべきと言えよう。

ただし、仮に辞任したとしても、過去の善管注意義務違反が治癒されるわけではない点、留意する必要がある。減損損失を計上した時点では出資先企業の取締役であった以上、当該損失を計上したことについて善管注意義務違反があった場合には、その責任を問われる可能性は否定できないであろう。

2020/07/08 業績予想を示せない企業が取り組むべき開示

東京都内における新型コロナウイルスへの感染者数が連日100人を超え、第二波の到来と経済への悪影響が懸念されている。現在の状況を踏まえ一層明確になったのは、コロナ禍は容易には収束しないということだ。コロナ禍というものが日本国内でも認識されるようになって以来、決算発表時に業績予想を「未定」とする上場企業が相次いでいるが、依然として業績予想は困難なままと言える。

こうした中、業績予想の開示に代えて、足元の状況や今後見込まれる影響を限定的に開示する企業が出てきた。業績予想が困難となっている企業が参考にしたいのが、・・・

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2020/07/08 業績予想を示せない企業が取り組むべき開示(会員限定)

東京都内における新型コロナウイルスへの感染者数が連日100人を超え、第二波の到来と経済への悪影響が懸念されている。現在の状況を踏まえ一層明確になったのは、コロナ禍は容易には収束しないということだ。コロナ禍というものが日本国内でも認識されるようになって以来、決算発表時に業績予想を「未定」とする上場企業が相次いでいるが、依然として業績予想は困難なままと言える。

こうした中、業績予想の開示に代えて、足元の状況や今後見込まれる影響を限定的に開示する企業が出てきた。業績予想が困難となっている企業が参考にしたいのが、東京証券取引所が2020年6月24日に公表した「新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示例(その4)」でも紹介されているエヌ・シー・エヌ(JASDAQ 3月決算)の開示例だ。

エヌ・シー・エヌが2020年5月25日に開示した「新型コロナウィルスによる影響と連結業績予想についてのお知らせ」 によると、同社は2020年5月21日に首都圏・北海道を除き緊急事態宣言の解除が発表されたことを受け、現在の営業状況および外出自粛期間における影響について次のとおり開示している。

■エヌ・シー・エヌの新型コロナウィルスによる影響と連結業績予想についてのお知らせ」(2020年5月25日に開示)より抜粋
51351

同社は、連結業績自体を予想できる状況には至っていないとして連結業績予想の発表は控えつつも、それまでの“つなぎ”として、住宅展示場への来場者数の前年度比を開示している(なお、同社の開示の「2.今後の決算に対する影響について」にある「1040」という数字は、今年度の売上予想が前年度比100%の月が10か月(100%×10か月=1,000%)、20%の月が2か月(20%×2か月=40%)あると仮定し、それらを合計すると1040%になるという意味)。

生活の基盤である住宅のように、コロナ禍においても根本的なニーズには変化がない製・商品については、売上の起点となるドライバー(同社の場合、住宅展示場への来場者数)の落ち込みを数量的に示してあげれば、あとは投資家が「コロナ禍収束までの予想期間」「景気減退の影響」「売上原価「販売費及び一般管理費に含まれる固定費の比率」を推測することで、企業側の業績予想の開示を待たずして、利益の見込みをある程度推定できる。さらに同社では、上記開示の「4.売上高に影響が発生する時期について」において、「住宅展示場への来場→契約→着工→上棟」までの平均期間が150日であること(すなわち、同社では緊急事態宣言発出の影響が売上の落ち込みとなって現れるまでに150日のタイムラグがある)もあわせて開示している。これにより投資家は、緊急事態宣言期間中の住宅展示場への来場者数の減少が同社の売上高にもたらす影響をより精緻に予測しやすくなる。

業績予想を示すことができていない上場企業では、投資家が将来への不安を抱き株式を売却する可能性が高まる。投資家を安心させるためにも、エヌ・シー・エヌのように、投資家にとって予測の材料となる各種実績値やデータ(とりわけ外出自粛期間中のデータ)の開示に取り組みたいところだ。

2020/07/08 【WEBセミナー】2020年6月総会の状況(速報版)

概略

【セミナー収録日】2020年7月1日

一部の企業が定時株主総会(以下、株主総会)の延期や継続会の開催を表明しているものの、2020年3月決算企業の大部分がほぼ例年どおり、6月中に株主総会を終えています。コロナ禍の下で開催された株主総会は、大幅に規模が縮小されるとともに時間も短縮されるなど、まさに「異例ずくし」という言葉がふさわしいものとなりました。株主総会を延期している企業や継続会を開催する企業はもちろん、既に株主総会を終えた企業にとっても、他社の株主総会がどのような形・内容で開催されたのかは大いに気になるところでしょう。そこで本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様に、「2020年6月総会の状況(速報版)」と題し、株主総会への来場者数や所要時間、バーチャル株主総会など株主総会の開催方法、株主による発言の動向といったコロナ禍における株主総会の概況を分析していただくとともに、議決権行使基準の厳格化とそれに伴う各議案への賛否動向や株主提案の動向など投資家の動き、また、それを踏まえた企業側のコーポレートガバナンス強化への取り組みなどについてもレポートしていただきます。

【講師】三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部
中川 雅博(なかがわ まさひろ)様

セミナー資料 2020年6月総会の状況(速報版).pdf

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セミナー動画
2020年6月総会の状況(速報版)(1)

55846a

2020年6月総会の状況(速報版)(2)

55846b

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2020/07/08 【緊急WEBセミナー】2020年6月総会の状況(速報版)(会員限定)

概略

【セミナー収録日】2020年7月1日

一部の企業が定時株主総会(以下、株主総会)の延期や継続会の開催を表明しているものの、2020年3月決算企業の大部分がほぼ例年どおり、6月中に株主総会を終えています。コロナ禍の下で開催された株主総会は、大幅に規模が縮小されるとともに時間も短縮されるなど、まさに「異例ずくし」という言葉がふさわしいものとなりました。株主総会を延期している企業や継続会を開催する企業はもちろん、既に株主総会を終えた企業にとっても、他社の株主総会がどのような形・内容で開催されたのかは大いに気になるところでしょう。そこで本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様に、「2020年6月総会の状況(速報版)」と題し、株主総会への来場者数や所要時間、バーチャル株主総会など株主総会の開催方法、株主による発言の動向といったコロナ禍における株主総会の概況を分析していただくとともに、議決権行使基準の厳格化とそれに伴う各議案への賛否動向や株主提案の動向など投資家の動き、また、それを踏まえた企業側のコーポレートガバナンス強化への取り組みなどについてもレポートしていただきます。

【講師】三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部
中川 雅博(なかがわ まさひろ)様

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2020年6月総会の状況(速報版)(1)

2020年6月総会の状況(速報版)(2)
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2020/07/08 緊急WEBセミナー「2020年6月総会の状況(速報版)」配信開始!

新型コロナウイルス禍において会員の皆様に必要な情報をいち早くお届けするべく、2020年7月8日(水)より下記のWEBセミナーの配信を開始いたしました。

テーマ 講 師
2020年6月総会の状況(速報版) 三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部
中川 雅博(なかがわ まさひろ)様

■WEBセミナーの詳細

セミナー
の内容
一部の企業が定時株主総会(以下、株主総会)の延期や継続会の開催を表明しているものの、2020年3月決算企業の大部分がほぼ例年どおり、6月中に株主総会を終えています。コロナ禍の下で開催された株主総会は、大幅に規模が縮小されるとともに時間も短縮されるなど、まさに「異例ずくし」という言葉がふさわしいものとなりました。株主総会を延期している企業や継続会を開催する企業はもちろん、既に株主総会を終えた企業にとっても、他社の株主総会がどのような形・内容で開催されたのかは大いに気になるところでしょう。そこで本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様に、「2020年6月総会の状況(速報版)」と題し、株主総会への来場者数や所要時間、バーチャル株主総会など株主総会の開催方法、株主による発言の動向といったコロナ禍における株主総会の概況を分析していただくとともに、議決権行使基準の厳格化とそれに伴う各議案への賛否動向や株主提案の動向など投資家の動き、また、それを踏まえた企業側のコーポレートガバナンス強化への取り組みなどについてもレポートしていただきます。
講師の
ご紹介
中川 雅博(なかがわ まさひろ)様
大阪大学法学部卒、大阪大学大学院法学研究科(修士課程)修了。1990年、東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に入社。以後、証券代行部門・法人ビジネス部門に所属し、一貫して会社法務に関するコンサルティングを行う。現在、三菱UFJ信託銀行(株)法人コンサルティング部に所属し、全国株懇連合会理事、東京株式懇話会常任幹事(研究部 研究第2部担当)も務める。
ハンドブックシリーズ1「株主総会」(共著:2002年12月・商事法務)、ハンドブックシリーズ2「株式実務」(共著:2003年4月・商事法務)、「委員会等設置会社への移行戦略」(共著:2003年5月・商事法務)、「株券電子化と移行のポイント」(共著:2008年5月・商事法務)、「株券電子化-その実務と移行のすべて」(共著:2008年8月・きんざい)、「全株懇モデル[新訂2版]」(共著:2009年3月・商事法務)、「株式事務の基礎知識」(2009年11月・商事法務)、「株主総会ハンドブック第3版」(共著:2015年3月・商事法務)、「株主総会・取締役会・監査役会の議事録作成」(共著:2015年3月・清文社)、「監査等委員会設置会社の活用戦略」(共著:2015年9月・商事法務)、「新株主総会実務なるほどQ&A」(共著:2017年3月・中央経済社)、「株主総会の準備実務・想定問答」(共著:2018年1月・中央経済社)など著書多数。

会員の方は下記URLよりWEBセミナーを視聴いただくことができます。
■会員向けURL(ログインが必要です)
https://govforum.jp/member/webseminar-webseminar-l/51334

非会員で視聴をご希望の方はjimukyoku@govforum.jpまでご連絡いただければメールにてお申し込み方法をお知らせいたします(有料(11,000円)となります)。

<視聴環境>
ブラウザー上で視聴できます。インターネットエクスプローラー、エッジで再生できない場合は、ChromeまたはFirefoxなど他のブラウザーをお試しください。また、インターネットに接続する際にプライベートネットワークやプロキシサーバーを経由している場合やファイアーウォールのセキュリティレベルが高い場合には、サンプル動画が再生されない可能性があります。
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2020/07/07 2020年6月総会 ROE基準非適用でも賛成率80%割れの取締役選任議案増加

2020年6月の定時株主総会(以下、株主総会)シーズンが一区切りを迎えた。ここで「終わった」という表現を使わなかったのは、7月以降に株主総会を延期または継続会を開催する企業が少なからず存在するためである。その意味では今年の株主総会について総括するのは厳密には時期尚早ということになるが、「現時点」における速報として、TOPIX100採用企業の議決権行使結果をレポートする。第1回目は、今年の株主総会を俯瞰する観点から、上程された議案および賛成率が80%未満だった議案の種類ごとの数、対前年比を示しつつ、増減の原因を分析する。・・・

継続会 : 会社法上、株主総会は、延期または続行することができるとされている(会社法317条)。ここでいう「延期」とは株主総会の成立後に議事に入らずに開催日を後日に変更することであり、一般的には「延会」と呼ばれ、「続行」とは株主総会の成立後に議事に入るものの、全ての議事の審議を完了せず残りの議事の審議を後日に先送りすることであり、一般的に「継続会」と呼ばれる。

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2020/07/07 2020年6月総会 ROE基準非適用でも賛成率80%割れの取締役選任議案増加(会員限定)

2020年6月の定時株主総会(以下、株主総会)シーズンが一区切りを迎えた。ここで「終わった」という表現を使わなかったのは、7月以降に株主総会を延期または継続会を開催する企業が少なからず存在するためである。その意味では今年の株主総会について総括するのは厳密には時期尚早ということになるが、「現時点」における速報として、TOPIX100採用企業の議決権行使結果をレポートする。第1回目は、今年の株主総会を俯瞰する観点から、上程された議案および賛成率が80%未満だった議案の種類ごとの数、対前年比を示しつつ、増減の原因を分析する。

継続会 : 会社法上、株主総会は、延期または続行することができるとされている(会社法317条)。ここでいう「延期」とは株主総会の成立後に議事に入らずに開催日を後日に変更することであり、一般的には「延会」と呼ばれ、「続行」とは株主総会の成立後に議事に入るものの、全ての議事の審議を完了せず残りの議事の審議を後日に先送りすることであり、一般的に「継続会」と呼ばれる。

※なお、本シリーズでとり上げるTOPIX100採用企業は、8月決算であるファーストリテイリングを除く99社とする。また、本稿の議決権行使結果データには、株主総会を7月に開催する日立製作所とオリンパス、および7月3日時点で臨時報告書が提出されていない日産自動車と住友不動産のものは含まれていない。

TOPIX100採用企業の2020年6月株主総会における会社提案の議案数(役員選任議案は候補者ごとに1議案とする)は1,210議案で、前年から約5%の減少となった。監査等委員を含む取締役選任議案と定款変更議案は増加、監査役選任議案および役員報酬議案、その他の議案は減少している。

【議案数(会社提案)の昨年対比】
 監査等委員を除く
  2019年 2020年
議案の種類 議案数 構成比 議案数 構成比
取締役( 951 74.2% 968 80.0%
監査等委員 26 2.0% 52 4.3%
監査役 142 11.1% 96 7.9%
剰余金 71 5.5% 66 5.5%
定款変更 12 0.9% 23 1.9%
役員報酬 55 4.3% 4.3% 4.3%
その他 12 0.9% 7 0.6%
合計 1,281 100.0% 1,210 100.0%

取締役(監査等委員を除く)選任議案が増加したのは、社外取締役の増員を図った企業が多かったためと考えられる。その背景には、多くの機関投資家が議決権行使基準において、取締役会に占める社外取締役の割合が「3分の1」に満たない企業の経営トップの選任議案に反対するスタンスを示したことがある。監査等委員選任議案の増加と監査役選任議案の減少には、それぞれの任期(2年、4年)の巡り合わせに加え、今年新たに3社(日本製鉄、日本電産、NTTドコモ)が監査等委員会設置会社に移行したことが影響している。定款変更議案には、機関設計の変更(監査等委員会設置会社に移行した上記3社に、指名委員会等設置会社に移行した関西電力を加えた4社)、取締役任期の短縮(2年から1年に短縮した4社)、相談役制度の廃止(2社)などガバナンス関連の取り組みが目立った。役員報酬議案が減少したのは、譲渡制限付株式報酬の導入が昨年ピークだったためと考えられる。

譲渡制限付株式報酬 : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬で、企業が株式を無償取得することとなる事由(没収事由:例えば所定の期間勤務を継続しない、目標の業績に未達など)が定められているものを指す。リストリクテッド・ストック(restricted stock)という呼称も定着している。

“低賛成率”のハードルを80%に設定すると、これをクリアできなかったのは25議案(全体の2.1%)で、昨年の31議案(同2.4%)から減少している。議案の種類別に見ると、監査等委員を含む取締役選任議案では低賛成率だった候補者が増加したものの、それ以外の議案については軒並み減少している。なお、今年の株主総会で買収防衛策の導入(継続を含む)議案を上程した企業は1社もなかった(昨年は住友不動産と住友金属鉱山の2社)。

【賛成率80%未満の議案分布】
 監査等委員を除く
  2019年 2020年
議案の種類 議案数 構成比 議案数 構成比
取締役( 15 48.4% 20 80.0%
監査等委員 1 3.2% 2 8.0%
監査役 6 19.4% 1 4.0%
役員報酬 6 19.4% 2 8.0%
買収防衛策 2 6.5% 0 -
剰余金処分 1 3.2% 0 -
80%未満計 31 100.0% 25 100.0%

今年の株主総会では新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、議決権行使助言会社最大手のISSおよび少なからぬ機関投資家がROE基準を適用しない方針をとったが、これによって2年連続で経営トップの賛成率が80%台を割ることを回避できたのはイオン1社だけだった。もっとも、昨年の株主総会でROE基準の影響を受けつつも賛成率80%はクリアしていた企業で、今年は同基準の非適用による恩恵を受けて賛成率が上昇したとみられる事例が2社確認された(武田薬品工業、京セラ)。

ROE基準 : 投資家が経営トップの選任議案などに賛成する条件として、一定以上のROE(Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本))を求めること。ちなみにISSでは、資本生産性が低く(過去5 期平均の自己資本利益率[ROE]が5%を下回り)かつ改善傾向(過去5 期の平均ROE が5%未満でも、直近の会計年度のROE が5%以上ある場合)にない場合、経営トップ(社長、会長)である取締役の選任議案に反対を推奨するとしている。

少なからぬ機関投資家がROE基準を非適用としたにもかかわらず賛成率80%を割った取締役選任議案が増加した最大の理由は、元経営幹部らが原子力発電所がある福井県高浜町の元助役から巨額の金品を受け取るなどの不祥事が相次いで明るみとなった関西電力において、取締役候補者13人のうち7人(再任の社外取締役2名を含む)への賛成率が80%を割ったことにある。不祥事やガバナンス体制の不備など「非財務」面の問題は当然取締役選任議案への反対票の増加要因となり得るが、少なくともTOPIX100企業の今年の株主総会に関して言えば、昨年より非財務面の判断基準が目立って厳格化したとは断定できないだろう。

2020/07/06 “雇用維持対策”としての出向

コロナ禍に伴う経済活動の縮小に伴い社会全体で雇用過剰の傾向が強まる一方で、一部の業界(陸上貨物運送業、倉庫業、大規模小売店、IT企業など)では人手不足が顕著になっている。このアンバランスを解消するための方策として考えられるのが「出向」だ。「出向」には、出向元に雇用されたまま他社に勤務する「在籍出向」と、「転籍」とも呼ばれる「移籍出向」があるが、ここでいう出向とは「在籍出向」を指す(以下、単に「出向」という)。これまで出向は、経営・技術指導、職業能力開発、人事交流などを目的として、多くは同一の企業グループ内で行われてきた。しかし、このところ、雇用過剰となっている業界の企業が、全く畑の違う人出不足の業界の企業への出向を検討するケースが増えている。

国側も・・・

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2020/07/06 “雇用維持対策”としての出向(会員限定)

コロナ禍に伴う経済活動の縮小に伴い社会全体で雇用過剰の傾向が強まる一方で、一部の業界(陸上貨物運送業、倉庫業、大規模小売店、IT企業など)では人手不足が顕著になっている。このアンバランスを解消するための方策として考えられるのが「出向」だ。「出向」には、出向元に雇用されたまま他社に勤務する「在籍出向」と、「転籍」とも呼ばれる「移籍出向」があるが、ここでいう出向とは「在籍出向」を指す(以下、単に「出向」という)。これまで出向は、経営・技術指導、職業能力開発、人事交流などを目的として、多くは同一の企業グループ内で行われてきた。しかし、このところ、雇用過剰となっている業界の企業が、全く畑の違う人出不足の業界の企業への出向を検討するケースが増えている。

国側も「雇用を守る出向支援プログラム2020」を題する施策を打ち出し、このようなパターンの出向を後押ししている。具体的には、産業雇用安定センター(各都道府県庁所在地に地方事務所を有する)に提供された「人材送出情報」と「人材受入情報」を無償でマッチングしている。人材送出情報・人材受入情報は、いずれも業界団体が傘下企業の情報を取りまとめて同センターに提供することを原則としているが、個々の企業から直接同センターに情報提供して支援を受けることもできる。

また、従業員を出向させて雇用維持に努めた企業は「雇用調整助成金」を受給できる可能性があるので、自社のケースが受給要件を満たすかどうかも検討しておきたいところだ。出向による雇用調整助成金は、売上高の減少など一般的な雇用調整助成金の支給要件に加え、以下の要件をクリアする必要がある点、注意したい。

(1)人事交流・経営戦略・業務提携・実習等のためではなく雇用調整のための出向である
(2)出向先が、資本的・経済的・組織的関連性等から見て独立性が認められる
(3)過半数労働組合または過半数代表者と「出向協定」を締結している
(4)出向期間が、1か月以上(「3か月以上」を特例で緩和)1年以内である
(5)出向元が賃金の全部を負担しない

過半数労働組合 : 労働者の過半数により組織されている労働組合のこと
過半数代表者 : 労働者の過半数を代表する者のこと
出向協定 : 出向期間やその短縮・延長などの取り決め、出向期間中の出向元会社での扱い、給与や社会保険、労災保険、交通費などの取り決めなどを明記した書面のこと。

さらに、これは通常の出向でも言えることだが、上記(3)で「出向協定」の締結が求められているように、出向にあたっては、出向元と出向先で賃金をどのように負担するか、退職金の算定にあたり、出向期間を(出向元における)勤続年数に含めるかどうかなどもあらかじめ決めておく必要がある。

ワクチンが完成し国内外に行き渡るまでは景気の本格的な回復が見通せない中、使える手段はすべて使って雇用を維持することは、現在経営者に課されている使命と言えよう。