2020/06/30 2020年6月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
「スピンオフ」とは、社内の事業部門やグループの一部を分離し、独立した別の会社や組織とする手法のことですが、「ステップスピンオフ」とは、子会社を上場(IPO)させて子会社株式の一部を売却し、キャッシュに変えるという“ステップ”を踏んた後、スピンオフを実施する手法で、スピンオフの一類型に位置付けられます。スピンオフを省略(スキップ)することを言うのではないので、問題文は誤りです。

こちらの記事で再確認!
2020年6月5日 事業再編研究会が近く指針公表、コロナ禍受け“キャッシュ”意識(会員限定)

2020/06/30 2020年6月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
コロナ禍の影響を強く受けている上場会社は、有価証券報告書の【経理の状況】で「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定」の開示をしなければなりません(日本基準採用会社は、2020年3月期では「追加情報」で開示するのが通常です)。仮に「重要な後発事象」でコロナ禍について開示したとしても、「重要な後発事象」では「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定」は開示されないため、重要な後発事象の開示をしたからといって「追加情報」での「仮定」の開示が免除されるわけではありません(問題文は誤りです)。

こちらの記事で再確認!
2020年6月4日 コロナ収束時期の仮定を追加情報に記載しない場合に生じ得る問題(会員限定)

2020/06/30 2020年6月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
コロナ禍の影響を強く受けている上場会社は、有価証券報告書の【経理の状況】で「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定」の開示をしなければなりません(日本基準採用会社は、2020年3月期では「追加情報」で開示するのが通常です)。仮に「重要な後発事象」でコロナ禍について開示したとしても、「重要な後発事象」では「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定」は開示されないため、重要な後発事象の開示をしたからといって「追加情報」での「仮定」の開示が免除されるわけではありません(問題文は誤りです)。

こちらの記事で再確認!
2020年6月4日 コロナ収束時期の仮定を追加情報に記載しない場合に生じ得る問題(会員限定)

2020/06/29 大戸屋HDでコロワイドの株主提案が否決、トップの言動影響の可能性

2020年6月19日のニュース「“お家騒動”で双方が異なるスキル・マトリックスを示す事態に」では天馬の“お家騒動”をお伝えしたところだが、同じく“お家騒動”で揺れているのが大戸屋ホールディングス(JASDAQ)だ。大戸屋ホールディングスでは、創業者の逝去後、創業家と経営陣が対立し、創業家が保有する株式を外食大手のコロワイド(東証一部)に売却し、同社が筆頭株主となったことで一旦は幕引きとなったかに見えた。しかしその後、経営哲学の違いから両者の間で対立が生じることとなった。「甘太郎」「牛角」「かっぱ寿司」等の店舗を運営するコロワイドがセントラルキッチンを活用した効率的店舗運営を目指しているのに対し、大戸屋ホールディングスが運営する「大戸屋」は「美味しく、かつ健康に資する料理の原点は店内調理にあると確信」(2020年6月25日開催の大戸屋ホールディングスの定時株主総会招集通知の「株主提案に対する反対の理由」より抜粋)とのリリースからも明らかなように、創業時から店内調理にこだわってきた。

セントラルキッチン : 複数店舗で提供する料理を1つの場所で集中的に製造・調理・加工する施設のこと。ファミリーレストランや大手フランチャイズチェーンでよく利用される。食材を途中まで加工して、「半製品」の状態で店舗に配送し、店舗で加熱、解凍、盛り付けなどをしてから、顧客に提供する。

こうした中コロワイドは、値上げによる客離れで業績不振に陥った大戸屋ホールディングスに対し業績改善とコロワイドグループとのシナジー効果の最大化を求めるため、2020年6月25日開催の大戸屋ホールディングスの定時株主総会で、取締役12名を選任する株主提案を行ったが、・・・

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2020/06/29 大戸屋HDでコロワイドの株主提案が否決、トップの言動影響の可能性(会員限定)

2020年6月19日のニュース「“お家騒動”で双方が異なるスキル・マトリックスを示す事態に」では天馬の“お家騒動”をお伝えしたところだが、同じく“お家騒動”で揺れているのが大戸屋ホールディングス(JASDAQ)だ。大戸屋ホールディングスでは、創業者の逝去後、創業家と経営陣が対立し、創業家が保有する株式を外食大手のコロワイド(東証一部)に売却し、同社が筆頭株主となったことで一旦は幕引きとなったかに見えた。しかしその後、経営哲学の違いから両者の間で対立が生じることとなった。「甘太郎」「牛角」「かっぱ寿司」等の店舗を運営するコロワイドがセントラルキッチンを活用した効率的店舗運営を目指しているのに対し、大戸屋ホールディングスが運営する「大戸屋」は「美味しく、かつ健康に資する料理の原点は店内調理にあると確信」(2020年6月25日開催の大戸屋ホールディングスの定時株主総会招集通知の「株主提案に対する反対の理由」より抜粋)とのリリースからも明らかなように、創業時から店内調理にこだわってきた。

セントラルキッチン : 複数店舗で提供する料理を1つの場所で集中的に製造・調理・加工する施設のこと。ファミリーレストランや大手フランチャイズチェーンでよく利用される。食材を途中まで加工して、「半製品」の状態で店舗に配送し、店舗で加熱、解凍、盛り付けなどをしてから、顧客に提供する。

こうした中コロワイドは、値上げによる客離れで業績不振に陥った大戸屋ホールディングスに対し業績改善とコロワイドグループとのシナジー効果の最大化を求めるため、2020年6月25日開催の大戸屋ホールディングスの定時株主総会で、取締役12名を選任する株主提案を行ったが、その人選は両社の対立がいまだ続いていることを示すものとなった。まず、取締役12名のうち5名は会社提案の取締役と重複しているものの、いずれも株主提案の取締役候補者となることを承諾していない。そして、決定的なのが、会社提案の取締役に創業者である三森久実氏(故人。以下、久実氏)の長男である三森智仁氏(以下、智仁氏)が名を連ねていたことだ。智仁氏は久実氏の長男であり、久実氏が逝去した後に、現社長と社長の座を争ったものの敗れたことから、持株を創業者の妻(智仁氏の母)の保有分と合わせてコロワイドに譲渡したという“経歴”の持ち主。今回、コロワイドの力を借りて返り咲きを狙ったことになる。智仁氏が株主提案の取締役候補者に入っていたことで、一旦は収束したかに見えた同社の“お家騒動”が、実はいまだ終わっていないことが判明した。今回の大戸屋ホールディングス定時株主総会における取締役選任議案の対立は、そのまま大戸屋の経営戦略についてのコロワイドと大戸屋の現経営陣の対立を意味するとともに、お家騒動の“延長戦”の意味も有していたと言える。

この株主提案に対しては、大戸屋の現経営陣だけでなく、同社の従業員からも反発の声が上がった。大戸屋の従業員は2020年6月5日に有志一同の名義で「株式会社コロワイドによる株主提案に対する反対意見」を表明している。反対意見の要旨は以下のとおり。

1. 大戸屋グループ従業員が共感・共有している経営理念を根幹から否定する発言をしていること
2.自己都合の観点のみで強引な手法による子会社化を勧めようとしていること
3.買収先企業に対するコロワイド経営者の言動

この反対意見の中でも特に強烈なのが、3の「買収先企業に対するコロワイド経営者の言動」だ。

「コロワイドが、レインズを買収して5年。未だに挨拶すら出来ない馬鹿が多すぎる。」
「個人的に張り倒した輩が何人もいる。」
「私が嫌いで、嫌悪感すら感じるのだろう。そのアホが、何故会社にいる?」
「今更、その程度に私に逆らっても始まらない。所詮、コロワイドが買収した会社。」
「生殺与奪の権は、私が握っている。さあ、今後どうする。どう生きて行くアホ共よ。」

これはコロワイドの代表取締役会長である蔵人金男氏による、同社が買収したレインズ(「牛角」を運営)の従業員を念頭に置いた社内報(こちらを参照)での発言だが、内容があまりに“ブラック”過ぎるとして2017年2月ごろにSNSを中心に話題になっていた。このような“ブラック”な発言が「社内報」という社内の公式文書に平然と掲載されたことには驚きを感じざるを得ないとともに、大戸屋従業員がコロワイドの経営トップの言動に「強い不安と恐怖」を感じるのも当然だろう。M&Aにより企業規模を拡大する戦略を採っているコロワイドにとって、経営トップが今後買収を予定している企業の従業員に不安と恐怖を感じさせる発言をしたことは、当該戦略の遂行にあたり致命傷になると言わざるを得ない。

このような従業員の声が届いたのか、2020年6月25日開催の定時株主総会では会社提案の取締役(11名)選任議案が可決する一方、コロワイドが提案した取締役(12名)選任議案は否決された。大戸屋ホールディングスが2020年6月26日に関東財務局に提出した臨時報告書によると、会社提案の取締役候補者は全員が賛成率6割を超えているものの、コロワイドが提案(株主提案)した取締役候補者については、最も賛成率が高かった蔵人賢樹氏と澄川浩太氏でもわずか15.50%、最も低かった上述の智仁氏は13.96%に過ぎなかった。株主の多くはコロワイドの提案よりも現経営陣および経営方針の維持を支持したことになる。

なお、株主提案の取締役選任議案への賛成率はいずれもコロワイドの持株比率(19.15%)を下回っているが、新聞報道等でも見られたとおり、大戸屋ホールディングスの定時株主総会でコロワイド側の出席者が株主提案の議案の採決時に拍手をせず、大戸屋ホールディングスが選任した総会検査役もそれを現認したことが理由とされている。すなわち、コロワイドの株主提案の取締役候補者の賛成率はコロワイド以外の株主の投票数に基づくものであり、コロワイドの持株数はカウントされていない。仮にコロワイドの持株数を加味しても可決には至らなかったとはいえ、結果としてあまりに低い賛成率だけが事実として残っただけに、コロワイドとしては来年度の定時株主総会で同じ手(取締役選任議案の株主提案)を使いづらくなる可能性があり、痛恨のミスであることは間違いない。逆に言えば、大戸屋ホールディングスにとっては、総会検査役を選任しておいたことが、賛成率を巡るトラブルを回避することにつながったと言える。

総会検査役 : 株主総会の招集手続および決議方法を調査する者(会社法306条1項)。株主総会の開催前に会社または総株主の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が裁判所に請求し、選任してもらう。

株主総会の場では、株主は自身が提案した議案であってもその賛否につき明確な意思表示が求められるとともに、会社はその株主の意思表示を事前に選任しておいた総会検査役に現認させる必要があることは、株主提案をする側、される側ともに知っておきたいところだ。

2020/06/26 コロナ禍で変わる消費者行動とサステナビリティの定義

特にBtoCビジネスにおいては、消費者のニーズを掴むことは企業戦略を立案するうえで必須となるが、コロナ禍は従来の消費者の嗜好を大きく変化させている。

「コロナ後」の消費がどのように変化するのか、・・・

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2020/06/26 コロナ禍で変わる消費者行動とサステナビリティの定義(会員限定)

特にBtoCビジネスにおいては、消費者のニーズを掴むことは企業戦略を立案するうえで必須となるが、コロナ禍は従来の消費者の嗜好を大きく変化させている。

「コロナ後」の消費がどのように変化するのか、戦略コンサルティング会社大手のマッキンゼーの予測を見てみよう(出典:COVID-19: Global Health & Crisis Response”, Apr. 3, 2020, McKinsey & Co. 63ページ 参照)。

コロナ下ではマスク、消毒液にとどまらず、多くの日用品が不足したが、この経験は消費者の行動を大きく変える可能性がある。マッキンゼーは、「商品・サービス信奉プロセスの変化」として、「いつでも手に入るかどうか」が商品選好基準になると見る。また、商品を購入するかどうかの判断において「健康」という視点が追加されるとしている。

また、こうした消費行動はインターネットを含む小売業界の勢力図にも影響を与える。マッキンゼーは、「オンライン・ショッピングのさらなる浸透」を予測、「必需品はオンラインで大量購入しストックされる一方、スーパー等実店舗は主に不足分の補填や、生鮮食品の購入に利用される」というように、「業界の構造的なシフト」が起こると見る。

一方、コロナ下で物が買えない不安感の反動は、「安心感への回帰」を生むとし、大量在庫、強固なサプライ・チェーン等を背景とした、「何時でも何でも揃う」大型ショッピング・センターや長年親しんできたブランドが再評価され、これらのブランドへの信奉回帰も起こるという。

さらに、コロナ禍により景気が大幅に後退する中、低価格帯やプライベート・ブランドといった“バリュー”商品への需要シフトが起こり、安価かつ品切れきしない安心感からを持つディスカウント・スーパーや100均チェーン等、低価格・大量販売業者が隆盛し、“勝ち組”になる可能性があるという。

コロナ禍は「ステイ・ホーム」という習慣も生んだが、ステイ・ホームは同時に人々に自宅が「安価で便利で快適なカフェ、レストラン、ジム、仕事場」になり得るこという認識を持たせた。これにより「食品・日用雑貨以外の商品やサービスを扱う実店舗は、消費者を再び来店に導くための効果的な戦略を展開できるかどうか」が生き残りを左右することになるという。また、食品・日用雑貨についても、「ホーム・クッキングが増え、男性の食品・日用雑貨ショッピングの増加により“売れ筋”が変化」する可能性があると見る。
  
また、ステイ・ホームは、人々に「シェルターとしての住居」を体験させた。住居を「シェルター」と考えた場合、感染者数が爆発した都市部より郊外の方が安全性が高いのは明らかであり、リモートワークの進展とも相まって、人々の居住志向も都心部から郊外へと向かう。「シェルターとしての住居」の体験により、「非都市化」が進む可能性があるとマッキンゼーは見る。「人口動態、行動様式の多様化」も進む。ビジネスマンが仕事帰りに都心の繁華街で会食する光景も少なくなるもかもしれない。飲食業界やアパレル業界の出店計画や不動産業界におけるオフィスビルの建築計画なども見直しを迫られる可能性もあろう。

このほか、企業は「“サステナビリティ”の再定義」を迫られるとマッキンゼーは考える。サステナビリティは、「持続可能性に加え、環境保全、公衆衛生上の目標が同時に合致」している必要があるという。経営陣は、消費者行動の変化に伴う企業戦略の見直し、自社にとってのサステナビリティの再定義に取り組む必要があろう。

2020/06/25 【役員会 Good&Bad発言集】押印手続きの見直し(会員限定)

<解説>
判子を押していた理由を考えれば見えてくる“脱判子”への道

日本企業では、社外文書の多くで「押印」が必要になります。代表的な社外文書をまとめると次のとおりです。

プロセス 時点 社外文書名
販売プロセス 受注前 見積書
受注時 契約書、注文請書
納品・検収時 納品書
納品・検収時 受領書、検収書
仕入プロセス 発注時 契約書、発注書
納品・検収時 納品書
締め後 支払通知書
支払時 領収書(手形や現金での領収時)

このほか、社外文書の作成や入出金の実施にあたっての社内資料(取引申請書、稟議書、請求金額の集計資料、支払申請書、押印申請書、各種伝票等)にもさらに押印が必要になることも多々あります。また、J-SOXの観点からチェックリストや仕訳一覧やインターネットバンキングの出力などにも担当者印の押印が求められることがあります。押される判子も文書の重要性に応じて、代表印、役職社印、角印、担当者印(日付の入るデート印や日付の入らない印)など様々です。

こういったさまざまな「判子」の存在が、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急速に広まったテレワークでクローズアップされることになりました。テレワークをしたくても、「判子」を押すために出社しなければならない状況があちらこちらで見られたからです。今後、新型コロナウイルスの第二波、第三波が予想される中、「判子」を省略できないか模索する企業が増えてきました。

「判子を押す理由」を考えることは、「判子」の省略を検討するにあたり必要不可欠と言えます。そこで、改めてなぜ判子を押すのかを考えてみましょう。日本のビジネスマンにとって判子を押すことはあまりに当然のこととなっていますが、判子を押す理由はおおむね次の3つです。

1 裁判での証拠力確保
2 正統性の外観の作出
3 担当者・承認者の内容確認の証跡

1の代表例は「契約書」です。契約は契約書がなくても口頭でも成立します。つまり、押印は契約の成立には一切影響を与えません。また、契約書を作成すると、契約の内容に応じた印紙税を負担しなければなりません。それでもなお、当事者の数だけ契約書を作成して、押印をしたものを各当事者が保管しておくのは、「将来紛争になった場合に備えたい」のが理由です。印鑑証明書を同時に利用することで、印影と作成名義人の印章が一致することを立証しやすくなり、これにより当該契約書の作成名義人が真実の作成者であることを立証でき、その効果として契約書の真正な成立が推定されます。これにより、万が一当事者同士で争いになった場合に、契約書が証拠としての役割を果たしやすくなります。取締役会議事録への押印も、証拠力確保の意味があります(なお、取締役会議事録の電子署名については【役員会 Good&Bad発言集】取締役会のコロナ対応 を参照)。

2の代表例は「見積書」「請求書」です。「見積書」「請求書」は文書の性質上「将来紛争になった場合に備えたい」というニーズはほとんどありません(ゼロとまでは言い切れませんが)。また、「見積書」「請求書」は作成・提出の機会が契約書よりも断然多いことから、よほど小さい企業を除いては代表印が押されることもありません。見積書や請求書に押されることが多いのは角印です。角印は、「将来紛争になった場合に備える」というよりは、文書に法人内での意思決定を経た外観を作出するために押印するケースが多いと言えます。ある程度のレベルの企業であれば角印を押すのには社内手続きが必要になってくるため、「角印が押されている」イコール「社内での意思決定を経ている」と高い確度で推測され、受け取る側も「しっかりとした文書」だと理解して安心して受領できます。

3の代表例は「稟議書」や「申請書」です。申請を上げる者、受け付ける者、承認する者がそれぞれ押印することで、意思決定過程が明確になり、責任の所在を明確にすることができます。デート印を用いることで、意思決定の日付を明示できます。これらの押印には内部監査、監査役監査、監査人の監査などの監査に備えるという意味もあります。

このように「判子を押す理由」は文書によりさまざまですが、理由が分かることで、代替案の検討の道筋も付きます。たとえば、契約書の押印ですが、そもそも、文書の真正な成立は、相手方がこれを争わない状況下では問題になることはありません。たとえば相手方が争わないことが明確な100%子会社と親会社との間の契約については、契約書という書面である必要はなく、合意内容をPDF(紙に出力すると内容に応じた印紙税が課されます)で保管しておけば十分と言う考え方もありえます。また、電子契約を利用することで、判子から解放されます。取引の相手方が電子契約に難色を示した場合は、フォーマットとしては電子契約を利用しつつ、先方の保管分だけ、紙に出力して押印するという手もあります(判子からは解放されませんが、印紙税を負担するのは先方だけになります)。

また、裁判において「文書の成立の真正」は、本人による押印の有無のみで判断されるものではなく、文書の成立経緯を裏付ける資料など、証拠全般に照らし、裁判所の自由心証により判断されます。換言すれば、他の方法によっても「文書の真正な成立」を立証することは可能です(内閣府・法務省・経済産業省が2020年6月19日に公表した「押印についてのQ&A」の問3参照)。「形式的証拠力を確保するという面からは、本人による押印があったとしても万全というわけではない」以上、テレワークを推進する観点からは、「必ずしも本人による押印を得ることにこだわらず、不要な押印を省略したり、「重要な文書だからハン コが必要」と考える場合であっても押印以外の手段で代替したりすることが有意義である」(「押印についてのQ&A」の問3参照)と言えます。たとえば、メールでのやり取りや電話でのやり取りを記録して形式的証拠力を確保しておけば、押印された文書がなくても裁判で証拠として用いることができます。

そもそも「見積書」「請求書」は、書面に判子を押さなくても効力に影響はないのですが、正統性の外観が失われることを気にする企業(あるいは担当者)があるのも事実です。一昔前は、印影を印刷した「見積書」「請求書」を送付すると、押印されたものを再送することを求める企業(あるいは担当者)も見受けられましたが、さすがにコロナ禍を経て、そういった無理解な企業・担当者も減ってきました。これを機に「見積書」「請求書」については紙で提出せずにPDFでメール送信する方法に切り替えるべきです。なお、PDFを添付したメール送信の場合は、切手代を節約できるというメリットがある反面、誤送信のリスクには注意しなければなりません。クラウド上のサービスを利用する方法もありますが、コストもかかることから、誤送信のリスクとコストをはかりにかける必要があります。

「見積書」「請求書」のPDF送信にあたり注意しなければならないのが、税務への対応です。「見積書」「請求書」のPDF送信は、税務では電子取引()に該当します。国税関係帳簿書類の保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存(または書面で保存)しなければならないこととされています。誤解されやすいところですが、この電子取引の保存(電子帳簿保存法10条による保存)は、後述の電子帳簿保存法4条(5条)に基づく税務署長の事前承認を経たうえでの保存とは異なり、税務署長の事前承認は不要です(一定の保存要件は満たす必要があります)。

 取引情報(取引に関して受領し、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう)の授受を電磁的方式により行う取引をいい、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引等が含まれます。

なお、文書保存の負担軽減を図るために、各税法で保存が義務付けられている書類について、税務署長の事前承認を受けることを前提に、一定の要件の下でプリントアウトをせずに電子的に保存することが認められています(前述の電子帳簿保存法4条(5条)に基づく税務署長の事前承認を経たうえでの保存)。脱判子の流れは文書の電子保存と相性が良いため、脱判子の検討に合わせて電子帳簿保存法に基づく税務署長の承認をもらうことも検討すべきです。これにより、領主所などのスキャナ保存が可能となり、交通費や交際費の精算手続きで精算用紙の裏に領収書を糊付けして判子を押す実務から解放され、テレワークに資すると言えます。

判子をもっとも撤廃しやすいのが、社内文書です。わざわざ高価なワークフローシステムを導入しなくても、クラウド上でPDFと印影を利用したシステムを安価に利用できる時代になりました。社内文書の脱判子化を進める際に注意しなければならないのが、J-SOXです。J-SOX対応として、「●●という文書を作成した担当者が判子を押し、課長が内容を確認して判子を押す」という業務記述書を作り、「課長が内容を確認して判子を押す」という統制をキーコントロールとして位置付け、当該文書を年間25件サンプルして、「判子の有無を確認する」という内部監査が行われている企業が少なくありません。こういう業務の流れをクラウド上でPDFと印影を利用したシステムに移行した場合に、統制が弱くなるようでは、監査役や監査法人から「待った」をかけられる可能性があります。クラウド上の印影の利用権限の厳格化を徹底して、決して統制は弱くなってはいないということを監査法人に説明できるようにしておきましょう。参考までに、内部統制報告制度に関するQ&A(問47)を掲げておきます。

内部統制報告制度に関するQ&A
(問47)【関連書類への印鑑の押印等】
内部統制の整備及び運用の状況に係る記録として、業務の実施者はすべての関連書類に印鑑を押印しなければならないのか。また、当該記録はすべて書面(紙)で保存しなければならないのか。

1.内部統制の整備及び運用状況に係る記録(実施基準Ⅱ3(7)①ホ)については、経営者による評価や監査人による監査が実施できる記録が保存されていればよく、必ずしも、業務の実施者がすべての関連書類に印鑑を押印することは求められてはいない。経営者による評価や監査人による監査においては、業務の実施者がすべての関連書類に印鑑を押印しているという形式が重要なのではなく、内部統制が有効に整備及び運用されていることを確認できることが重要であると考えられる。
2.また、記録の保存の方法は、必要に応じて適時に可視化できればよく、書面(紙)のほか、磁気媒体やフィルムなどに保存しておくことも可能であり、後日、経営者による評価や監査人による監査が可能となるよう、適切に保存しておくことで足りる(実施基準Ⅱ3(7)②)。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役C:「電子帳簿保存法の適用の有無と請求書や見積書をどのような媒体で送付するのかはまったく関係がない話です。ただ、どうせなら電子帳簿保存法を適用すればいいのではないでしょうか。そうすれば交通費や交際費の精算手続きで精算用紙の裏に領収書を糊付けして判子を押すことも不要になるので、テレワークに資すると言えます。」
コメント:電子帳簿保存法10条による電子取引の保存の話と、電子帳簿保存法4条(5条)に基づく税務署長の事前承認を経たうえでの電子帳簿保存の話が、しっかりと区別できています。そのうえで、押印手続きの廃止と相性のよい電子帳簿保存の話に展開していくのはGOODです。

取締役D:「押印手続きを可能な限り廃止することには賛成ですが、「責任者の押印」はJ-SOXの業務手続書の随所でキーコントロールになっています。統制の質が落ちないように代替案を検討する必要があります。」
コメント:押印手続きの廃止はJ-SOXへの影響が少なくありません。取締役Dの発言は、J-SOX実務への配慮ができているGOOD発言です。

BAD発言はこちら
取締役A:
「角印は代表印、銀行印の次に重要な判子であり、請求書や見積書の効力に影響するので簡単になくすわけにはいきません。」
コメント:押印の有無は、請求書や見積書の効力に何ら影響を与えません。押印の意味を熟慮していないBad発言です。
取締役B:
「わが社は電子帳簿保存法の適用を受けていないので、請求書や見積書は紙で発送せざるを得ず、結局とのところ角印の押印は不可避となります。」
コメント:電子帳簿保存法10条による電子取引の保存の話と、電子帳簿保存法4条(5条)に基づく税務署長の事前承認を経たうえでの電子帳簿保存の話を区別できておらず、Bad発言と言わざるを得ません。

2020/06/25 【役員会 Good&Bad発言集】押印手続きの見直し

東証一部上場企業のZ社の取締役会では、監査役の「新型コロナウイルスの第二波に備えて、テレワークへの移行を容易にするために、社内の押印手続きを見直すべきではないか」との発言をきっかけとして押印手続きの見直しについて議論がおきました。下記の4人の発言のうち、誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「角印は代表印、銀行印の次に重要な判子であり、請求書や見積書の効力に影響するので簡単になくすわけにはいきません。」

取締役B:「わが社は電子帳簿保存法の適用を受けていないので、請求書や見積書は紙で発送せざるを得ず、結局とのところ角印の押印は不可避となります。」

取締役C:「電子帳簿保存法の適用の有無と請求書や見積書をどのような媒体で送付するのかはまったく関係がない話です。ただ、どうせなら電子帳簿保存法を適用すればいいのではないでしょうか。そうすれば交通費や交際費の精算手続きで精算用紙の裏に領収書を糊付けして判子を押すことも不要になるので、テレワークに資すると言えます。」

取締役D:「押印手続きを可能な限り廃止することには賛成ですが、「責任者の押印」はJ-SOXの業務手続書の随所でキーコントロールになっています。統制の質が落ちないように代替案を検討する必要があります。」

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2020/06/25 株主の求めによる臨時株主総会は開催すべき?

2020年3月決算会社の定時株主総会が最も集中するのは6月26日(金)であり、747社(全体の32.8%)が開催を予定している。今年は決算作業・監査手続の遅れから基準日を変更し、臨時株主総会を開催する企業も4社ある(2020年6月18日のニュース「基準日変更企業が増加 6月17日現在の決算発表・株主総会動向」参照)。一般に臨時株主総会というと、緊急的な定款変更や増資、合併といった重大な決定事項が発生した場合に文字通り“臨時的に”開催されるものだが、株主側から臨時株主総会の開催を求められることもある。その中には、取締役の交代など、会社側にとってはあまり「嬉しくない」株主提案を議事とするもの少なくない。果たして、このような場合でも、会社側は株主からの臨時株主総会の求めに応じる必要はあるのだろうか。

基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。定時株主総会の基準日を定款に記載しなければ、毎年、基準日を公告しなければならない。その手間を避けるために、定款に基準日を記載するのが通常である。

こうした中、この論点について争われた・・・

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