2020/04/16 「内々定」取消しに伴う損害賠償責任

来春(2021年春)新卒者の採用に向け企業側の広報活動が本格化しているはずのこの時期、新型コロナウイルス感染症の影響で、会場型の会社説明会やリクナビなどが主催する合同会社説明会は軒並み中止に追い込まれている。また、来春新卒者の採用人数を減らす企業が出てきているほか、この4月に入社予定だった2020年春新卒者の内定を入社直前に取り消すという由々しき事態も発生している。・・・

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2020/04/16 「内々定」取消しに伴う損害賠償責任(会員限定)

来春(2021年春)新卒者の採用に向け企業側の広報活動が本格化しているはずのこの時期、新型コロナウイルス感染症の影響で、会場型の会社説明会やリクナビなどが主催する合同会社説明会は軒並み中止に追い込まれている。また、来春新卒者の採用人数を減らす企業が出てきているほか、この4月に入社予定だった2020年春新卒者の内定を入社直前に取り消すという由々しき事態も発生している。

もっとも、少子化が進行する中、新卒者に対する企業の採用意欲は根強い。これまで経団連が主導していた新卒者の就職活動(以下、就活)のルールは今年から政府が主導することになったが(【2018年10月の課題】就活ルール廃止による中長期的な影響と人事戦略 参照)、今年の就活でも「3月に会社説明の会受付開始、6月から面接・選考解禁」という従来のルールは踏襲されている。しかし、このうち「6月から面接・選考解禁」の方は、競合他社との人材の奪い合いの中で以前から形骸化しており、例年この時期には多く企業が「内々定」を出してきた。今年は新型コロナウイルス感染症の影響で採用活動のスケジュールが遅れ気味となっているものの、“表向き”の面接・選考解禁前に内々定が出る傾向は変わらないと予想される。

ただ、政府の緊急事態宣言を受けた経済活動の停止拡大により企業の業績は急速に悪化している。多くの国民は緊急事態宣言が5月6日で終結するとは思っていないが、万が一現在の状態があと何か月も続けば、企業は改めて来春の新卒採用人数を絞り込まざるを得なくなる可能性もある。

とはいえ、冒頭で触れた「内定取消し」は企業にとって法的リスクが高い。一般的に「内定を出す」とは、応募者からの労働契約締結の申込みを企業が承諾したということであり、「解約権を留保した労働契約」が成立した状態と解されている(最高裁 昭和54年7月20日判決、最高裁 昭和55年5月30日判決)。そして、内定を取り消すということは、企業側が労働契約を一方的に終了させることに他ならず、「解雇」と同じく労働契約法16条の適用を受ける。つまり、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は無効になるということだ。ここでいう「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」であるかどうかは、整理解雇の4要素により判断される(東京地裁 平成9年10月31日決定)。すなわち、(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)解雇手続の妥当性、を総合的に勘案しなければならない。しかも、仮に整理解雇の4要素を満たすということで内定取消し自体は是認されたとしても、企業側の一方的な都合で内定を取り消す以上は、金銭補償なしというわけにはいかず、民事上の損害賠償責任は免れない。内定を取消された側から訴訟を提起されることもあるが、判決が出る前に和解に至るケースが多い。この場合、合意内容は公開されないため損害賠償額の“相場”は計りにくいが、上述のとおり「内定取消し=解雇」であるため、最低でも解雇予告手当(平均賃金の30日分)以上の支払いは必要だろう。理屈上は、就職の機会を1年延期させられたということで「1年分の賃金相当額」、あるいは「別の就職先が決まるまでの(例えば3か月分の)賃金+就職活動費」を請求されることも考えられる(それでも、現在雇用している従業員を解雇するよりは、内定を取り消す方が妥当な経営判断と言えよう)。

解約権を留保 : 就業開始日までの間、雇用者が被雇用予定者との労働契約を解約できる状態のこと
解雇予告手当 : 解雇日の30日以上前に解雇の予告をせず従業員を解雇する場合、労働基準法20条に基づき支払いが義務付けられている手当

こうした内定取消しに伴う法的リスクを回避するため、今後「内々定」を取り消す企業が出て来る可能性もある。「内々定」とは一般的には“内定を内定した状態”だが、「内定」が 企業側に「採用の義務」を、内定者側に「入社の義務」をそれぞれ課した双務契約であり、上記の内定取消しに関する裁判例でも、企業側が双務契約を一方的に解約したことの是非が判断されている。この点からすると、「内々定」は基本的に企業側からの一方的な意思表示(片務契約)に過ぎないため、内々定を取り消しても、企業は労働契約法上の責任も損害賠償責任も問われないのが通常だろう。ただし、片務契約にも「債務不履行」および「(それに基づく)損害賠償請求」という概念はあり、実際、「内々定の取消し」が争点になった裁判例も存在する。この裁判例は、学生に対し5月に内々定を出したマンションデベロッパーが、「正式な内定通知を出す」旨を9月25日に連絡していたにもかかわらず、9月30日にそれを取り消したというもので(内々定取消しの通知は、内定予定日のわずか2日前であった)、裁判所はこのマンションデベロッパーに100万円の慰謝料の支払いを命じている(平成22年6月2日福岡地裁判決)。この事案では、5月に出した内々定の取消し自体よりも、9月25日の連絡が「内定者に期待を持たせた」という点が問題視されたとも言えそうだが、いずれにせよ内々定取消しに関して慰謝料の支払いを命じた裁判例が存在するということを念頭に置き、安易な内々定取消しは避けるべきだろう。

双務契約 : 契約の当事者が互いに債務を負担する契約のこと
片務契約 : 契約の当事者の一方だけが債務を負担する契約のこと

なお、会社は「内々定」と称していても、学生に「入社する」旨を誓約させたり、就活を終わらせるよう圧力をかけたり(いわゆる「オワハラ」)した場合には、実質的に「労働契約が成立している」とみなされる可能性がある。“呼び方”の問題ではないことにも注意したい。

2020/04/15 コロナ渦中の会計上の見積り 「仮定の合理性」の解釈に注意

新型コロナウイルス感染症が3月期決算企業の決算作業・監査対応に大きな影響を及ぼしている。既に大手企業でも決算発表の延期を決めるところが相次いでおり(例えば日立製作所は決算発表を5月中旬以降に延期すると発表)、上場企業の間では「決算の延期はやむなし」という雰囲気が醸成されてきていると言えよう。

こうした中、企業会計基準委員会(ASBJ)は(2020年)4月10日、「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」(以下、「考え方」)を公表したが(2020年4月10日のニュース『コロナ影響下の会計上の見積りにおける「一定の仮定」と開示』参照)、ASBJが求める「一定の仮定の合理性」について、上場企業の間では“縮小解釈”もみられる。・・・

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2020/04/15 コロナ渦中の会計上の見積り 「仮定の合理性」の解釈に注意(会員限定)

新型コロナウイルス感染症が3月期決算企業の決算作業・監査対応に大きな影響を及ぼしている。既に大手企業でも決算発表の延期を決めるところが相次いでおり(例えば日立製作所は決算発表を5月中旬以降に延期すると発表)、上場企業の間では「決算の延期はやむなし」という雰囲気が醸成されてきていると言えよう。

こうした中、企業会計基準委員会(ASBJ)は(2020年)4月10日、「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」(以下、「考え方」)を公表したが(2020年4月10日のニュース『コロナ影響下の会計上の見積りにおける「一定の仮定」と開示』参照)、ASBJが求める「一定の仮定の合理性」について、上場企業の間では“縮小解釈”もみられる。これには、一部のメディアが減損会計の適用の要否について「会計の原理原則に基づき判断すべき」といった比較的厳しい論調を展開したことも影響している。

減損会計 : 固定資産による将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ損失を計上すること。

ASBJの「考え方」のポイントは、「新型コロナウイルス感染症の影響のように不確実性が高い事象についても一定の仮定に基づき見積りを行う必要があるが、その仮定は「明らかに不合理である場合」を除き監査上も認められる」ということだが、ここでいう「明らかに不合理である場合」とは、例えば「5月6日(緊急事態宣言の終了日)を待たずに新型コロナウイルス問題が終息する」といった非現実的な仮定を置くことであり、こうした非現実的な仮定を置かない限りは「会計上の見積り」として会計監査上も認められることが当フォーラムの取材により確認されている。

ASBJが示した「考え方」を受け、日本公認会計士協会(JICPA)も同日「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」を公表したが、そこでは(1)(経営者の見積りを受けて)監査人はその仮定が『明らかに不合理である場合』に該当しないことを確かめる、(2)その際、例えば、見積額の選択が、過度に楽観的又は過度に悲観的な傾向を示しているといった点が検討の指標になる、(3)監査人が、不確実性が極めて高い環境下においても、経営者の過度に楽観的な見積りを許容することや、(監査人が)過度に悲観的な予測を行い、それと異なる経営者の採用した会計上の見積りを重要な虚偽表示と判断することは適切ではない――とされ、「明らかに不合理である場合」の判断基準を「過度に楽観的又は悲観的かどうか」に置いている。

要するに、ASBJ、JICPAの一貫したメッセージとして、会計上の見積りにおいて企業が置いた仮定が「明らかに不合理である」場合を除いて、会計・監査上の問題は生じないということだ。これは、例えば「新型コロナウイルスの感染症の影響が長期間にわたり、企業業績にも悪影響を及ぼし続ける」といった悲観的なシナリオに基づく見積りを行う必要はないということを意味する。決算・監査対応において参考にされたい。

2020/04/14 コロナ騒動で“ウルトラC” 監査未了のままの配当決議の留意点

当フォーラムがお伝えしていたとおり(2020年4月13日のニュース『続報 有報の提出期限さらに延期へ、株主総会延期では「継続会」活用論浮上』、金融庁は4月14日夕方、「4月20日~9月29日まで」の間に提出期限が到来する有価証券報告書、四半期報告書の提出期限を「9月末まで」延期するよう開示府令を改正する旨のリリース「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」を公表した。この結果、3月決算企業の有価証券報告書の提出期限は「9月末」となる。また、12月決算企業においては、第1・第2四半期報告書の提出期限がともに「9月末日」となるため、事実上、第1四半期報告書の提出は不要となる。

これに対し、定時株主総会については異なる対応が検討されていることも上記で引用したニュースで既報のとおり。具体的には、・・・

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2020/04/14 コロナ騒動で“ウルトラC” 監査未了のままの配当決議の留意点(会員限定)

当フォーラムがお伝えしていたとおり(2020年4月13日のニュース『続報 有報の提出期限さらに延期へ、株主総会延期では「継続会」活用論浮上』、金融庁は4月14日夕方、「4月20日~9月29日まで」の間に提出期限が到来する有価証券報告書、四半期報告書の提出期限を「9月末まで」延期するよう開示府令を改正する旨のリリース「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」を公表した。この結果、3月決算企業の有価証券報告書の提出期限は「9月末」となる。また、12月決算企業においては、第1・第2四半期報告書の提出期限がともに「9月末日」となるため、事実上、第1四半期報告書の提出は不要となる。

これに対し、定時株主総会については異なる対応が検討されていることも上記で引用したニュースで既報のとおり。具体的には、有価証券報告書のように「一律延期」はされず、その代わり、計算書類の作成およびそれに対する会計監査が定時株主総会までに間に合わない場合には定時株主総会の後に「継続会」を開催することで対応する案が、金融庁に設置された「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」(以下、連絡協議会)で検討されている。そして4月15日の夕方には、連絡協議会からこの対応策が示される方向であることが当フォーラムの取材で分かった。

継続会 : 会社法上、株主総会は、延期または続行することができるとされている(会社法317条)。ここでいう「延期」とは株主総会の成立後に議事に入らずに開催日を後日に変更することであり、一般的には「延会」と呼ばれ、「続行」とは株主総会の成立後に議事に入るものの、全ての議事の審議を完了せず残りの議事の審議を後日に先送りすることであり、一般的に「継続会」と呼ばれる。

企業にとって最大の懸案となっている基準日を後ろにずらす必要があるのかどうかという問題(上記引用ニュースの3段落目「この点に関する対応策は、・・・」以降参照)については、(1)計算書類等の報告はなしで当初の予定日に定時株主総会を開催し、その後、計算書類等の報告のためのみの継続会を開催する場合には基準日の変更は不要とする一方、(2)剰余金の配当に関する株主総会決議を継続会に先送りした場合には、基準日の変更が必要になるとの考え方が示される模様だ。

基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。定時株主総会の基準日を定款に記載しなければ、毎年、基準日を公告しなければならない。その手間を避けるために、定款に基準日を記載するのが通常である。

基準日を変更すれば、当初の基準日まで株式を保有し、基準日の翌日以降、株主としての権利を確保したとの理解の下で株式を売却した株主は配当を受けることができなくなる(東証の2020年3月24日のリリース「2020年3月期末の配当その他の権利落ちについて」参照)。このような事態を避けるため、現状、多くの企業が基準日を変更することには抵抗感を持っている。

基準日の変更を回避するには、剰余金の配当決議を予定通り定時株主総会で行うしかないが、定時株主総会までに会計監査が完了していない場合、剰余金の配当を決議することにはリスクがある。会計監査の結果、利益が想定していたよりも少なくなり、結果的に配当額が分配可能額を超えてしまうこともあり得るからだ。この場合、取締役がその差額を補填する義務を負うことになる(会社法462条1項)。

もっとも、手元資金を厚く持っておくべき現在の状況の中で、分配可能額ギリギリまで配当をしようという企業は少ないだろう。とはいえ、新型コロナウイルス感染症の影響で先行きが見通せない中、決算の内容について監査法人との間で見解の相違が生じることも考えられる。万が一にも配当額が分配可能額を超えないようにするためには、(1)会計監査で指摘を受け費用が増額する可能性に備え、配当額を保守的に(≒抑え気味に)計算しておく、(2)減損や引当金といった費用が増額しがちな論点について、株主総会招集通知の発送までに監査法人にネゴをしておく――ことが必要になろう。

減損 : 固定資産による将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ計上される損失のこと

2020/04/13 続報 有報の提出期限さらに延期へ、株主総会延期では「継続会」活用論浮上

2020年4月7日のニュース「速報 有価証券報告書の提出期限延期へ  悩ましい株主総会の延期」では、新型インフルエンザ等対策特別措置法第57条を根拠に、有価証券報告書の提出期限が「緊急事態宣言の発令日(2019年4月7日)から最大「4か月」延期される可能性があることをお伝えしたが、さらに提出期限が延期されることが確実になった。「緊急事態宣言の発令日から最大4か月」ということは、本来の有価証券報告書の提出期限(事業年度終了後3か月以内)と比較すれば、プラス1か月強にとどまる。そこで・・・

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2020/04/13 続報 有報の提出期限さらに延期へ、株主総会延期では「継続会」活用論浮上(会員限定)

2020年4月7日のニュース「速報 有価証券報告書の提出期限延期へ  悩ましい株主総会の延期」では、新型インフルエンザ等対策特別措置法第57条を根拠に、有価証券報告書の提出期限が「緊急事態宣言の発令日(2019年4月7日)から最大「4か月」延期される可能性があることをお伝えしたが、さらに提出期限が延期されることが確実になった。「緊急事態宣言の発令日から最大4か月」ということは、本来の有価証券報告書の提出期限(事業年度終了後3か月以内)と比較すれば、プラス1か月強にとどまる。そこで金融庁は、「4月20日~9月29日まで」の間に提出期限が到来する有価証券報告書、四半期報告書の提出期限を「9月末まで」延期するべく、早ければ(2020年)4月14日にも開示府令を改正する。この結果、3月決算企業の有価証券報告書の提出期限は9月末となる。また、本来であれば、12月決算企業の四半期報告の1Qは3月末から45日、2Qは6月末から45日が提出期限となるが、今回の開示府令改正により1Q、2Qの四半期報告書ともに提出期限が「9月末日」となる。

一方、定時株主総会についても「一律延期」を求める声が聞かれるが(日本公認会計士協会が2020年4月7日付で出した会長声明「緊急事態宣言の発令に対する声明」参照)、これは実現しない模様。定時株主総会の開催日を延期するためには基準日も後ろに動かさなければならないということが企業の悩みとなっている中(上記で引用のニュース「速報 有価証券報告書の提出期限延期へ  悩ましい株主総会の延期」参照)、現状、3月決算企業の多くは予定どおり定時株主総会を開催するべく準備を進めている。とはいえ、決算作業の遅れおよびそれに伴う会計監査の遅れは、会社法上の計算書類の作成の遅れにも直結する。場合によっては、株主総会招集通知に計算書類を添付できないケース、あるいは定時株主総会で計算書類を報告できないケースも起こり得る。

この点に関する対応策は、金融庁に設置された「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」(以下、連絡協議会)で検討されており、今週中には明らかにされる見込み。具体的には、計算書類の作成およびそれに対する監査が定時株主総会までに間に合わない場合には、定時株主総会の後に「継続会」を開催することで対応する案が浮上している。ちなみに、連絡協議会には法務省もオブザーバーに名を連ねている。

会社法上、株主総会は、延期または続行することができる(会社法317条)。ここでいう「延期」とは株主総会の成立後に議事に入らずに開催日を後日に変更することであり、一般的には「延会」と呼ばれ、「続行」とは株主総会の成立後に議事に入るものの、全ての議事の審議を完了せず残りの議事の審議を後日に先送りすることであり、一般的に「継続会」と呼ばれる。上述のとおり、今回は基本的に継続会が想定されているようだ。不正会計などにより決算関連手続を完了できず、計算書類等の報告を継続会に先送りする事例は時折見受けられる。最近では、2018年12月決算においてホシザキ株式会社(同社の2019年3月8日付のリリース「第73期定時株主総会及び継続会の開催に関するお知らせ」参照)や2019年3月決算の藤倉コンポジット株式会社(同社の同年6月7日付のリリース「第140回定時株主総会及び継続会の開催に関するお知らせ」参照)が、不正会計の発生に伴い継続会の開催を決めた例がある(その後の顛末は後述)。継続会の開催には株主総会の決議が必要であり(会社法317条)、ホシザキ、藤倉コンポジットいずれのケースでも、「継続会を開催すること」および「継続会の日時及び場所の決定を取締役会に一任すること」を株主総会に諮るとしていた。

上述のとおり、今回の新型コロナウイルス騒動においても「継続会」が活用されることなりそうだが、問題となりそうなのが、「元々の定時株主総会の開催日」と「継続会の開催日」の間隔だ。継続会はあくまで定時株主総会と“一体”であり、それゆえ上記会社法317条でも「株主総会の招集の決定(会社法298条)」や「株主総会の招集の通知(会社法299条)」を改めて行うことを免除している。ただ、「元々の定時株主総会の開催日」と「継続会の開催日」の間隔があまりに空いているとなると、果たして両者は“一体”と言えるのかという疑念が生じかねない。実際、ホシザキの場合、上記のとおり一度は継続会の開催を株主総会に諮ったものの、「開催までに相応の期間を要すると予想されるため、 継続会という形でご報告するより、臨時株主総会を開催してご報告する方が手続きとして適切であると判断したため、 本継続会の開催を本総会にお諮りすることを中止し、別途、臨時株主総会を開催してご報告することとした」として、継続会の開催を中止している(同社の2019年3月26日付のリリース「第73期定時株主総会継続会の開催中止及び臨時株主総会開催に関するお知らせ」参照)。そのうえで、計算書類等の報告に関する臨時株主総会の基準日を2019年4月11日に設定し、同年5月30日に臨時株主総会を開催している。一方、藤倉コンポジットは、元々の定時株主総会の開催日である「2019年6月27日」から2か月近く経過した「2019年8月16日」に継続会を開催したが、あくまで「継続会」として開催し、新たな基準日も設定していない(同社の2019年8月1日付けのリリース「第140回定時株主総会継続会開催ご通知」参照)。

この「元々の定時株主総会の開催日」と「継続会の開催日」の間隔を巡る解釈の一つとして、「株主総会の招集通知は、株主総会の日の2週間前までに株主に対して発送しなければならないこととされており(会社法299条1項)、仮に間隔が2週間以上空くのであれば、改めて招集通知を出すことができるのだから、継続会ではなく臨時株主総会として開催すべき」というものがある。しかし、これは必ずしも通説ではないうえ、上記の藤倉コンポジットのような事例もある中で、現在の非常事態下において、連絡協議会が「2週間」に固執するとは考えにくい。結論として、連絡協議会は、計算書類等の報告なしで当初予定どおりの日程で定時株主総会を開催し、その数か月後(有価証券報告書の提出期限が3か月延期されることを踏まえると、最大3か月となる可能性がある)、計算書類等の報告のための継続会を開催するという手法を示すことも予想できる。

ただし、剰余金配当に関する株主総会決議を継続会に先送りした場合、決議日が基準日から3か月を超えてしまう点は気になるところだ()。この場合、改めて基準日を設定し、基準日および株主が行使することができる権利の内容を基準日の2週間前までに公告しなければならない(会社法124条3項)とする意見も聞かれる。

 会社法124条2項は「基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない」と定めているため、定時株主総会は基準日(通常は決算日)から3か月以内に開催されるのが一般的となっている。

このような事態を避けるためには、最初の株主総会で配当に関する株主総会決議をしておくことが考えられるが、万が一、最初の株主総会の後に会計監査を経て利益が想定していたよりも少なくなり、結果的に配当額が分配可能額を超えてしまった場合には、取締役がその差額を補填する義務を負うことになる(2019年9月17日のニュース『違法な自己株取得を止められなかった「取締役職務執行確認書」』、【失敗学第26回】HOYAの事例 参照)。この点について連絡協議会がどのような考え方を示すのか、注目される。

2020/04/10 【2020年3月の課題】「70歳までの就業機会確保」への対応(会員限定)

改正高齢者雇用安定法“全体”が努力義務

70歳までの就業機会確保を図るための「高齢者雇用安定法」の改正法案が(2020年)3月31日、国会で成立しました。同法の改正は官邸主導で進められ、企業側との調整が十分に行われたとは言えない中、施行が「2021年4月1日~」と、施行までの期間が短いことや、昨年、今年の春季労使交渉では「65歳まで」の定年延長がテーマの一つとなっていただけに、さらにハードルを上げる改正法に対する企業側の評判は必ずしも良いものとは言えません。また、新型コロナウイルス感染症が企業の業績に深刻なダメージを与えつつあり、企業側からは「雇用を守らなければいけないという時に、さらに企業に負担を課すのか」との声も聞かれます。

ただ、改正法の内容を分析すると、直ちに企業に大きな負担(特に財政上の負担)を課すものではないことが分かります。その最大の理由として、今回の高齢者雇用安定法改正の内容の “全体”が「努力義務」であるということが挙げられます。

このことを念頭に置きながら、まずは改正高齢者雇用安定法が求めている7つの「就業確保措置」について見ていきましょう。

「雇用以外の措置」による就業確保も可能に

今回の高齢者雇用安定法の改正の目的は「70歳までの就業機会確保を図る」ことにあります。その方法として示された「就業確保措置」が以下の7つです。

※赤字は「65歳までの雇用確保措置」にはない措置
雇用による措置 (1)定年廃止
(2)70歳までの定年延長
(3)継続雇用制度導入
(4)他の企業との雇用契約
雇用以外の措置 (5)フリーランスへの業務委託
(6)起業する者への業務委託
(7)社会貢献活動への従事を支援する制度の導入

今回導入された就業確保措置の最大の特徴と言えるのが、「雇用以外の措置」として(5)~(7)が設けられたということです。周知のとおり、企業に「65歳」まで従業員の雇用を求める「高年齢者雇用確保措置」(以下、「65歳までの雇用確保措置」という)では、(1)~(3)の3つの選択肢(このうち(2)については「65歳まで」の定年延長)のいずれかを実施することが義務付けられています。すなわち、(4)も65歳までの雇用確保措置にはなかった新設の措置ということになります。以下、「雇用による措置」と「雇用以外の措置」に分けて、それぞれの内容を解説します。

「他の企業との雇用契約」は取引先を想定

上述のとおり、4つの「雇用による措置」のうち(1)定年廃止、(2)70歳までの定年延長、(3)継続雇用制度導入の3つは、65歳までの雇用確保措置における選択肢(「定年廃止」「65歳までの定年延長」「継続雇用」のいずれかの選択を義務付け)と同じものになります。上場企業の多くは継続雇用(60歳以降、嘱託社員となり、65歳まで働く制度)を選択しています。

今回の高齢者雇用安定法の改正により新たに設けられた「(4)他の企業との雇用契約」では、取引先などが想定されています。既に65歳までの雇用確保措置でも設けられている「(3)継続雇用制度導入」では、自社のほか「グループ会社」での雇用が認められていますが、今回の「(4)他の企業との雇用契約」の新設により、グループ会社に加え、取引先に自社の(元)従業員を雇用してもらうケースも選択肢に加えられたということです。

もっとも、65歳になった従業員を取引先で雇用してもらうことは、自社が取引先に対してある程度優位な立場にあるか、自社の従業員を受け入れることに取引先が何らかのメリット(例えば取引の継続、取引の円滑化など)を感じなければ困難でしょう。

「無償」の社会貢献活動は対象外

「雇用以外の措置」である(5)フリーランスへの業務委託、(6)起業する者への業務委託、(7)社会貢献活動への従事を支援する制度の導入は、文字通り「雇用」を伴わず、また、これらの措置の対象とする事業も事業主(以下、「企業」という)が決定できることとされているだけに、企業の負担は「雇用による措置」よりも軽いと言えます。

(5)フリーランスへの業務委託としては、例えば外国語が得意で独立してフリーランスとなった(元)従業員に対して自社が通訳や翻訳の仕事を依頼するようなケースや、社内弁護士として法務部に所属していた従業員が独立して弁護士事務所を開設した場合に、在職時に担当していた契約書のチェックを引き続き依頼するケースなどが想定されます。

(6)起業する者への業務委託では、従業員がベンチャー企業を起業した場合、その企業に対し何らかの仕事を発注することなどを想定しています。今回の高齢者雇用安定法の改正議論の中では、元従業員が起業したベンチャー企業に対し「金融支援」を行う案も浮上していましたが、どのような業種であっても金融支援を行うというのは違和感があるとの意見もあり、結局「業務委託(仕事の発注)」に落ち着いています。

(7)社会貢献活動への従事を支援する制度では、(元)従業員を自社が出資・委託等する団体(例えば三菱財団、アーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)など、自社に関係する組織である必要があります)で働かせることや、自社が実施する社会貢献活動に従事させることが想定されています。前者としては、例えば週に3日間、美術館でガイドとして勤務してもらい、勤務時間に応じて、美術館から時給、日当を支払うといったことが考えられます。後者としては、例えば海岸に行ってゴミ拾いするといった社会貢献活動が考えられます。ただし、ここでいう社会貢献活動は、継続雇用制度など他の就業機会確保措置とのバランス上、「有償」であるものに限られます。すなわち、無償のボランティア活動を(元)従業員に紹介しても「就業機会確保」を図ったことにはならないということです。たとえボランティアに近い性格の活動であっても、交通費や日当が支払われるなど「有償」である必要があります。

業務委託等では、結果的に就業機会を提供できなくても問題なし

上記の「雇用以外の措置」を巡っては、「雇用」を伴わないという点で、今回の高齢者雇用安定法改正の事実上の“抜け穴”なのではないかとの指摘も聞かれます。

例えば(5)フリーランスへの業務委託や(6)起業する者への業務委託では、そうそう頻繁に委託業務が発生するとは限りません。場合によっては、65歳から70歳までの5年間で1回も業務委託の機会がなかったということもあり得ます。(7)社会貢献活動への従事を支援する制度についても、そもそも系列の財団等を持っている上場企業は多くありませんし、もし持っていたとしても募集定員が少なく、その仕事に就ける人は限られるのが現状でしょう。同様に、自社で社会貢献活動を実施すると言っても、頻度、定員には限りがあります。

今回の高齢者雇用安定法の改正議論の中でも、企業側から「結果的に就業機会を提供できなかったしても、『就業機会の確保を図った』ことになるのか」といった質問も出たようですが、就業機会を提供できたかどうかは結果論であるため、問題にはなりません。

リスクの高さに応じて異なる労使間の話し合いの“強度”

さらに、改正高齢者雇用安定法では、(1)定年廃止、(2)70歳までの定年延長“以外の”就業確保措置について、「対象者を限定する基準の設定」が可能です。例えば「人事評価がB以上」の従業員だけを対象にするといったことです。

このように改正高齢者雇用安定法には“抜け穴”となりかねない仕組みも含まれているため、同法では各措置の実施にあたり「労使の話し合い」を求めるとともに、従業員にとってのリスクの高さに応じて、労使の話し合いの“強度”を変えています。具体的には下表のとおりです。

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70歳までの就業を望む従業員にとって確実性が高いのは(1)~(4)になりますので、労使間でも「十分な話し合い」で足りることとされています。(5)~(7)では、上述のとおり5年間で1回も仕事がなかったということもあり得るうえ、独立により労働組合の組合員でなくなる(労働組合の保護を受けにくくなる)という問題もあるここから、「合理するように努める」と、要求水準を上げています。最後の対象者の限定では、理屈上はハードルを上げることで対象者を減らすことも可能であるため、「望ましい」という最も強い表現が使われています。

ここで留意したいのは、改正高齢者雇用安定法では、(1)~(7)のうち複数の選択肢を提示することもできるとされている点です。すなわち、(1)~(7)すべての選択肢を提示することも可能ですが、この場合、労使の話し合いの程度としては「十分に話し合いを行う」ことで足ります。上表のとおり、「合意するよう努める」ことが求められるのは(5)~(7)“のみ”を選択肢として提示した場合であるため、(5)~(7)とともに(1)~(4)も提示した場合には、「合意するよう努める」ことまでは求められません。(元)従業員は、例えば65歳~68歳までは(4)他の企業との雇用契約を選択、68歳~70歳までは(5)フリーランスへの業務委託を選択することも可能であり、このような場合は労使間で「十分な話し合い」が行われていれば足りることになります。

また、(5)~(7)を選択した場合には「従業員」としての立場は失われるため、(5)(6)では企業と(元)従業員の業務委託契約、(7)では企業と(元)従業員、あるいは(団体を介する場合には)「企業と団体」「団体と(元)従業員」の間で契約を締結することが必要になります。改正高齢者雇用安定法では、「労使間で業務内容、報酬、活動への従事を継続しない場合その理由(成果物が求める水準に達していない、健康上の理由、服務規程違反等)」について労使間合意に“努める”よう求めており、労使間の話し合いの結果が契約内容にも反映されることになりますが、詳細は2020年夏以降に公表されるであろう省令、指針、Q&Aなどにより明らかにされるものとみられます。厚生労働省がどこまで詳細な契約書“ひな型”を用意するのか、注目されるところです。

労使間の話し合いを始めておけば「努力義務違反」には該当せず

改正高齢者雇用安定法の施行(2021年4月1日~)まで残された時間は多くありません。こうした中、企業としては何から手を付ければよいでしょうか。

結論から言えば、慌てて上記(1)~(7)の就業確保措置を整備する必要はありません。繰り返しになりますが、改正高齢者雇用安定法はあくまで全体が「努力義務」だからです。実際のところ、厚生労働省から省令や指針、Q&Aなどが公表されるのは2020年夏以降になるうえ、このコロナ騒動の中で、2021年4月1日までに就業確保措置を整備できる企業はまずないと思われます。

ただし、「努力すること」自体は「義務」ですので、果たす必要があります。具体的には、2021年4月1日の時点で、労使間で70歳までの就業確保に向けた「話し合い」を始めていれば、努力義務は果たしたことになります。ここでいう「話し合い」には、例えば勉強会のようなものも含まれると考えられます。

逆に言うと、何も話し合いをしていないという場合には行政措置の対象となり得るので注意が必要です。具体的には、「指導・助言」の対象となり、指導・助言をしても改善しなかった場合には、「計画の作成・提出」が求められることになります(これらの点は、2020年夏以降に公表される「高年齢者等職業安定対策基本方針」に盛り込まれる見込みです)。

このほか、企業が70歳までの就業確保措置を何ら講じない中で70歳未満で退職する従業員に対しては「再就職支援措置()」が努力義務として課されるとともに、上述した対象者を限定する基準によって70歳までの就業確保措置の対象にならず、70歳未満で退職することとなった従業員が多数出た場合には、現行制度上は45歳以上65歳未満を対象とする「多数離職の届出」の提出が義務付けられます。このうち多数離職の届出についは努力義務ではなく「義務」である点、注意が必要です。これは、対象者を限定する基準を不当に高く設定することにより事実上のリストラをしていないかどうかを監視する趣旨です。

 再就職支援措置の内容は次のとおり。
・再就職活動に役立つ教育訓練、カウンセリング等の実施、受講などのあっせん
・求職活動(会社訪問、教育訓練受講、資格試験勉強等)のための休暇の付与
・在職中の求職活動に対する経済的支援(上記休暇中の賃金支給、教育訓練等の実費相当額の支給など)
・民間の再就職支援会社への委託
・求人開拓、求人情報の収集・提供、関連企業などへの再就職のあっせん

多数離職の届出 : 雇用する45歳以上65歳未満の中高年齢者のうち、1か月以内の期間に5人以上が解雇等により離職する場合には、あらかじめ、多数離職の届出をハローワークに提出しなければならない。

70歳までの雇用を望まない従業員もいることを踏まえた選択を

もっとも、いくら努力義務だからと言って、いつまでも「話し合い」だけを続けていればいいというわけにもいきません。65歳までの雇用確保措置は、導入された2000年には「努力義務」でしたが、2006年には「義務化」され(ただし、継続雇用の対象者を労使間で合意した基準により限定することは可)、さらに2013年には、継続雇用制度の対象者を限定する仕組みが廃止され、希望者全員の継続雇用が義務付けられました。70歳までの就業確保措置も同じ途を辿る可能性は否定できません。また、上場企業の中には、企業イメージの観点からも、一定の対応を図るところが少なくないものと思われます。

ただ、昨今は働き方のニーズが多様化しており、従業員が皆70歳までフルタイムで働きたいと考えているわけではないでしょう。地元に帰って父母の介護をしながら少しだけ働きたいという人もいれば、65歳を過ぎたら(現在は)年金が出るので多くの収入はいらないという人、フルタイムで働くのは身体的に厳しいという人も少なくありません。そう考えると、できるだけ多くの選択肢を従業員に示すこと、すなわち(1)~(7)のすべての選択肢を整備することが望ましいと言えます。

70歳まで自社で雇用するのは財政的に難しいというのであれば、例えば67歳までは継続雇用制度、その後は(5)フリーランスへの業務委託、(6)起業する者への業務委託、(7)社会貢献活動への従事を支援する制度の選択制、といった「雇用による措置」と「雇用以外の措置」を組み合わせて提供することも考えられます。少なくとも改正高齢者雇用安定法が「努力義務」である現在は、例えば継続雇用制度をいきなり70歳にしなくても、〇〇年生まれの従業員から66歳、××年生まれの従業員から67歳というように段階を踏むこともできます。自社の財政状態を踏まえながら対応を図っていけばよいでしょう。

また、場合によっては、(5)フリーランスへの業務委託、(6)起業する者への業務委託の対象年齢を独自に引き下げるということも考えられます。現在、日本企業では専門性のない人材の処遇が大きな問題となっており、経団連の中西会長も、「終身雇用はもうもたない」と明言し、自立したキャリアの確立、ジョブ型採用への転換を促しています(【2018年10月の課題】就活ルール廃止による中長期的な影響と人事戦略 参照)。非上場企業の事例となりますが、体重計など計測器の大手メーカーであるタニタは、従業員に起業させ、そこに業務を委託するという独自の就業形態を導入しており、同社の従業員からは「自分のプロフェッショナリズムを磨くことができて、かつ他の会社の仕事もとることができてハッピー」との声も聞かれます。また、欧州企業でも、従業員の兼業・副業を推進し、起業したら仕事を発注するというスタイルが浸透しています。

ジョブ型採用 : 「特定のポスト」や「特定の職種」の専門家として人材を採用する手法であり、欧米で普及している。ジョブ型が浸透した欧米では、様々な企業の経営者を経験した人材も「プロの経営者」として流動化している。

いきなりタニタのような大胆な仕組みを導入するのは困難としても、(5)フリーランスへの業務委託や(6)起業する者への業務委託を選択する従業員が増えるということは、健康保険財政を含め、企業の財政負担を減らすことにもつながりますし、これらに関連する副業・兼業の推進、雇用の流動化、起業の活発化は政府(特に経済産業省)の方針でもあります。多くの日本企業において、企業・従業員双方にとってハッピーな(5)(6)の事例が出て来るようであれば、今回の高齢者雇用安定法の改正は成功だったと言えるのではないでしょうか。

2020/04/10 コロナ影響下の会計上の見積りにおける「一定の仮定」と開示

財務諸表を作成するにあたっては様々な「見積り」が必要になる。繰延税金資産の回収可能性の判断(繰延税金資産については(新用語・難解用語)資産負債法 参照)、減損会計における将来キャッシュ・フローの見積りはその代表例と言える。新型コロナウイルスの感染拡大は経済・企業活動に広範な影響を与えており、また、今後の広がり方や終息時期を予測することは困難な状況にある。このため、会計上の見積り、特に将来損益や将来キャッシュ・フローを予測することも極めて困難となっている。

減損会計 : 固定資産について、将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ損失を計上すること。

こうした中、企業会計基準委員会(ASBJ)は・・・

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