2025/09/08 WEBセミナー『日本におけるAI推進法・ガイドラインと海外のAI関連ルールの最新動向』配信開始!

2025年9月8日(月)より下記のWEBセミナーの配信を開始いたしました。

テーマ 講師
日本におけるAI推進法・ガイドラインと海外のAI関連ルールの最新動向 TMI総合法律事務所
パートナー弁護士
野呂 悠登(のろ ゆうと)様

■WEBセミナーの詳細

セミナー
の内容
業務におけるAIの利用が進む一方で、著作権侵害や個人情報の不適切な取扱いといった思わぬ法的責任が問われるリスクが高まっています。「知らずに使った」では済まされない時代に突入した今、企業にはAI活用に伴う法的リスクへの理解と対策が求められています。本セミナーでは、生成AIを含むAI利活用に関する法的課題に精通したTMI総合法律事務所の野呂悠登弁護士に、2025年5月28日に成立したAI推進法をはじめ、企業が押さえておくべきAI関連ルールの最新動向と実務対応のポイントを解説していただきます。
講師のご紹介 TMI総合法律事務所 パートナー弁護士 野呂 悠登(のろ ゆうと)様
2007年 3月 宮城県仙台第二高等学校卒業
2011年 3月 東北大学法学部卒業
2013年 3月 東京大学法科大学院修了
2013年 11月 最高裁判所司法研修所入所
2014年 12月 第一東京弁護士会登録
2015年 1月 TMI総合法律事務所勤務
2015年 10月 東京大学法科大学院未修者指導講師(〜2017年3月)
2017年 4月 個人情報保護委員会事務局参事官補佐(~2018年3月)
2021年 9月 キングス・カレッジ・ロンドン留学(Intellectual Property & Information Law LLM)
2022年 10月 ロンドンのシモンズ・アンド・シモンズ法律事務所勤務(Digital Business Team)
2023年 7月 TMI総合法律事務所復帰
2023年 10月 国立大学法人東北大学個人情報保護委員会委員
2025年 1月 パートナー就任

会員の方は下記URLよりWEBセミナーを視聴いただくことができます。
■会員向けURL(ログインが必要です)
/member/webseminar-webseminar-l/78350/

非会員の方は下記URLよりWEBセミナーの視聴をお申込みいただけます。
■非会員向けURL(グーグルフォームが立ち上がります)
https://forms.gle/xzK8QDnTeKgCrYAH7

<収録月>
2025年9月

<収録時間>
前半:34分27秒
後半:21分02秒

<視聴環境>
ブラウザー上で視聴できます。インターネットエクスプローラー、エッジで再生できない場合は、ChromeまたはFirefoxなど他のブラウザーをお試しください。また、インターネットに接続する際にプライベートネットワークやプロキシサーバーを経由している場合やファイアーウォールのセキュリティレベルが高い場合には、サンプル動画が再生されない可能性があります。
万が一、こちらのサンプル動画が再生されない場合、端末を管理するシステム管理者にお問い合わせください。

2025/09/08 【Webセミナー】日本におけるAI推進法・ガイドラインと海外のAI関連ルールの最新動向

概略

【WEBセミナー公開開始日】2025年9月8日

業務におけるAIの利用が進む一方で、著作権侵害や個人情報の不適切な取扱いといった思わぬ法的責任が問われるリスクが高まっています。「知らずに使った」では済まされない時代に突入した今、企業にはAI活用に伴う法的リスクへの理解と対策が求められています。本セミナーでは、生成AIを含むAI利活用に関する法的課題に精通したTMI総合法律事務所の野呂悠登弁護士に、2025年5月28日に成立したAI推進法をはじめ、企業が押さえておくべきAI関連ルールの最新動向と実務対応のポイントを解説していただきます。

講師のご紹介 TMI総合法律事務所 パートナー弁護士 野呂 悠登(のろ ゆうと)様
2007年 3月 宮城県仙台第二高等学校卒業
2011年 3月 東北大学法学部卒業
2013年 3月 東京大学法科大学院修了
2013年 11月 最高裁判所司法研修所入所
2014年 12月 第一東京弁護士会登録
2015年 1月 TMI総合法律事務所勤務
2015年 10月 東京大学法科大学院未修者指導講師(〜2017年3月)
2017年 4月 個人情報保護委員会事務局参事官補佐(~2018年3月)
2021年 9月 キングス・カレッジ・ロンドン留学(Intellectual Property & Information Law LLM)
2022年 10月 ロンドンのシモンズ・アンド・シモンズ法律事務所勤務(Digital Business Team)
2023年 7月 TMI総合法律事務所復帰
2023年 10月 国立大学法人東北大学個人情報保護委員会委員
2025年 1月 パートナー就任
セミナー資料 日本におけるAI推進法・ガイドラインと海外のAI関連ルールの最新動向.pdf
セミナー動画(前半)

前半

セミナー動画後半

後半

単に動画を閲覧しただけではマイ研修レポートの「閲覧」記録に反映されません。下の「所感登録画面へ」ボタンを押し遷移する画面の右側の「登録」ボタンを押し下げすることではじめてマイ研修レポートの「閲覧」記録に反映されます。「登録」にあたっては、本Webセミナーを閲覧して感じたことや気付いた点(学んだ点、疑問点、自社の課題など)などをぜひご記入ください。マイ研修レポートの所感等記入欄の書き直しもこちらからどうぞ。

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2025/09/08 【WEBセミナー】日本におけるAI推進法・ガイドラインと海外のAI関連ルールの最新動向(会員限定)

概略

【WEBセミナー公開開始日】2025年9月8日

業務におけるAIの利用が進む一方で、著作権侵害や個人情報の不適切な取扱いといった思わぬ法的責任が問われるリスクが高まっています。「知らずに使った」では済まされない時代に突入した今、企業にはAI活用に伴う法的リスクへの理解と対策が求められています。本セミナーでは、生成AIを含むAI利活用に関する法的課題に精通したTMI総合法律事務所の野呂悠登弁護士に、2025年5月28日に成立したAI推進法をはじめ、企業が押さえておくべきAI関連ルールの最新動向と実務対応のポイントを解説していただきます。

講師のご紹介 TMI総合法律事務所 パートナー弁護士 野呂 悠登(のろ ゆうと)様
2007年 3月 宮城県仙台第二高等学校卒業
2011年 3月 東北大学法学部卒業
2013年 3月 東京大学法科大学院修了
2013年 11月 最高裁判所司法研修所入所
2014年 12月 第一東京弁護士会登録
2015年 1月 TMI総合法律事務所勤務
2015年 10月 東京大学法科大学院未修者指導講師(〜2017年3月)
2017年 4月 個人情報保護委員会事務局参事官補佐(~2018年3月)
2021年 9月 キングス・カレッジ・ロンドン留学(Intellectual Property & Information Law LLM)
2022年 10月 ロンドンのシモンズ・アンド・シモンズ法律事務所勤務(Digital Business Team)
2023年 7月 TMI総合法律事務所復帰
2023年 10月 国立大学法人東北大学個人情報保護委員会委員
2025年 1月 パートナー就任
セミナー資料 日本におけるAI推進法・ガイドラインと海外のAI関連ルールの最新動向.pdf
セミナー動画(前半)

セミナー動画(後半)

単に動画を閲覧しただけではマイ研修レポートの「閲覧」記録に反映されません。下の「所感登録画面へ」ボタンを押し遷移する画面の右側の「登録」ボタンを押し下げすることではじめてマイ研修レポートの「閲覧」記録に反映されます。「登録」にあたっては、本Webセミナーを閲覧して感じたことや気付いた点(学んだ点、疑問点、自社の課題など)などをぜひご記入ください。マイ研修レポートの所感等記入欄の書き直しもこちらからどうぞ。

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2025/09/05 実質株主確認制度、アクティビスト等の議決権行使制限に現実味

既報のとおり、法務省の法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会では現在、会社法の改正議論が進められている(2025年7月15・16日のニュース『「稼ぐ力」を高めるための会社法改正の方向性【前編】【後編】」参照)。議論の対象となっているテーマのうち、【後編】」でお伝えした「実質株主確認制度」については、2025年6月25日に開催されたの第3回会議の資料(19~20ページ)に改正条文案が示されている。条文案の1項および2項は下記のとおり。


実質株主 : 株主名簿の背後に存在する投資判断や議決権を行使する権限を持つ株主のこと。これに対し、株主名簿に載っている株主を名義株主という。個人株主や事業会社が株主となる場合などは「実質株主=名義株主」となるが、信託銀行が信託勘定で「管理」だけをする株式は、実質株主と名義株主は一致しない。機関投資家が保有する株式は基本的に後者のケースとなる。

1 株式会社は、名義株主又は②の規定により情報が提供されたアに規定する権限を有する者に対し、次のア及びイに掲げる事項に係る情報の提供を請求することができる。
 ア 信託契約その他の契約又は法律の規定に基づき、名義株主が有する当該会社の株式に係る議決権の行使について①の規定による請求を受けた者に対して指図を行うことができる権限を有する者(以下「指図権者」という。)の有無
 イ 指図権者がある場合には、その氏名又は名称、住所及び連絡先並びに当該指図権者がアに規定する権限を有する議決権の数
2 ①の規定による請求を受けた者は、当該請求を受けてから一定期間内に、当該請求をした株式会社に対し、①ア及びイに掲げる事項に係る情報を提供しなければならない。

会社は、名義株主(カストディアンなど)の背後に存在する指図権者(アセットマネージャーなど)、さらにその背後に存在する指図権者(アセットオーナーなど)について、「氏名又は名称」「住所及び連絡先」「権限を有する議決権の数」を開示するよう請求できる。請求の手順としては、会社はまずカストディアンに情報提供を請求し、それによって判明したアセットマネージャーに対しても同様の請求をすることで、資金の出し手であるアセットオーナーまでも把握できる仕組みとなっている。


カストディアン : 投資家の代わりに有価証券の保管・管理などの業務を行う金融機関
アセットマネージャー : 例えば野村アセットマネジメント、ブラックロックなどを指す。アセットオーナー(年金基金など)から資金を預かって投資判断やポートフォリオ構築を担い、委託された資金を企業や資産に投資し、リターンを最大化することを目指す。ただし、アセットオーナーの方針に従って運用を行うため、ESG投資などではアセットオーナーの意向に左右されることもある。
アセットオーナー : 年金基金、保険会社、政府系ファンドなどを指す。自ら運用する場合もあるが、一般的には外部のアセットマネージャー(運用機関)に運用を委託する。投資方針やESG方針などの大枠を定め、投資について最終的な責任を負う。

焦点となるのは、・・・

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2025/09/05 実質株主確認制度、アクティビスト等の議決権行使制限に現実味(会員限定)

既報のとおり、法務省の法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会では現在、会社法の改正議論が進められている(2025年7月15・16日のニュース『「稼ぐ力」を高めるための会社法改正の方向性【前編】【後編】」参照)。議論の対象となっているテーマのうち、【後編】」でお伝えした「実質株主確認制度」については、2025年6月25日に開催されたの第3回会議の資料(19~20ページ)に改正条文案が示されている。条文案の1項および2項は下記のとおり。


実質株主 : 株主名簿の背後に存在する投資判断や議決権を行使する権限を持つ株主のこと。これに対し、株主名簿に載っている株主を名義株主という。個人株主や事業会社が株主となる場合などは「実質株主=名義株主」となるが、信託銀行が信託勘定で「管理」だけをする株式は、実質株主と名義株主は一致しない。機関投資家が保有する株式は基本的に後者のケースとなる。

1 株式会社は、名義株主又は②の規定により情報が提供されたアに規定する権限を有する者に対し、次のア及びイに掲げる事項に係る情報の提供を請求することができる。
 ア 信託契約その他の契約又は法律の規定に基づき、名義株主が有する当該会社の株式に係る議決権の行使について①の規定による請求を受けた者に対して指図を行うことができる権限を有する者(以下「指図権者」という。)の有無
 イ 指図権者がある場合には、その氏名又は名称、住所及び連絡先並びに当該指図権者がアに規定する権限を有する議決権の数
2 ①の規定による請求を受けた者は、当該請求を受けてから一定期間内に、当該請求をした株式会社に対し、①ア及びイに掲げる事項に係る情報を提供しなければならない。

会社は、名義株主(カストディアンなど)の背後に存在する指図権者(アセットマネージャーなど)、さらにその背後に存在する指図権者(アセットオーナーなど)について、「氏名又は名称」「住所及び連絡先」「権限を有する議決権の数」を開示するよう請求できる。請求の手順としては、会社はまずカストディアンに情報提供を請求し、それによって判明したアセットマネージャーに対しても同様の請求をすることで、資金の出し手であるアセットオーナーまでも把握できる仕組みとなっている。


カストディアン : 投資家の代わりに有価証券の保管・管理などの業務を行う金融機関
アセットマネージャー : 例えば野村アセットマネジメント、ブラックロックなどを指す。アセットオーナー(年金基金など)から資金を預かって投資判断やポートフォリオ構築を担い、委託された資金を企業や資産に投資し、リターンを最大化することを目指す。ただし、アセットオーナーの方針に従って運用を行うため、ESG投資などではアセットオーナーの意向に左右されることもある。
アセットオーナー : 年金基金、保険会社、政府系ファンドなどを指す。自ら運用する場合もあるが、一般的には外部のアセットマネージャー(運用機関)に運用を委託する。投資方針やESG方針などの大枠を定め、投資について最終的な責任を負う。

焦点となるのは、実質株主確認制度の実効性を確保するための措置、すなわちペナルティだ。資料には第3項の条文案として、以下のA~C案が示されている(C案には第4項もあり)。要約すると、A案は過料、B案は議決権の行使制限、C案は保有割合が5%超などの「特定実質株主」に会社への報告義務を課したうえで、これに違反した特定実質株主に対して会社が議決権の行使制限を行うことを可能とするものとなっている。

A案 3 ②の規定による情報の提供をせず、又は虚偽の情報を提供した者は、過料に処する。
B案 3 次のア又はイに掲げる場合に〔おいて、一定の要件を満たしたとき〕は、株式会社は、①の規定による請求がされた日以後に開催される〔直近の〕株主総会において当該名義株主が有する株式のうち当該ア又はイに定める株式に係る議決権の行使を制限することができる。
 ア ①の請求を受けた名義株主が、その有する株式の全部又は一部について、②の規定による情報の提供をせず、又は虚偽の情報を提供した場合 当該全部又は一部の株式
 イ ①の請求を受けた指図権者が、その指図を行うことができる権限を有する株式の全部又は一部について、②の規定による情報の提供をせず、又は虚偽の情報を提供した場合 当該全部又は一部の株式
C案 3 指図権者で当該会社の議決権の総数に対するその者が議決権の行使について指図を行うことができる権限を有する議決権の数の割合が一定割合〔例えば、5%〕を超えるもの(以下「特定実質株主」という。)は、特定実質株主となった日から一定期間内に、その者の氏名又は名称、住所及び連絡先並びにその者が権限を有する議決権の数を当該会社に提出しなければならない。
4 ③の規定に違反した者があるときは、株式会社は、当該違反の日以後に開催される〔直近の〕株主総会においてその者が権限を有する議決権の行使を制限することができる。

A案に対しては「名義株主や指図権者が外国居住者又は外国法人である場合、これらの者を過料に処することは現実的に困難であるなど、制裁としての実効性に欠ける」との指摘、B案に対しては「一定の実効性が期待できるものの、株主権まで制限するのは過剰ではないか」との指摘があることから、支配力の大きい株主に限定して議決権の行使を制限するC案が発案されたものと考えられる。今後は、そもそも議決権の行使を制限することが「過剰」なのかどうかを見極めつつ、C案を軸に検討が進むものとみられる。

上場会社としては、実質株主確認制度を、対話の促進のみならずアクティビストや株主提案への対応にも活用したいところだろう。それらを実現するうえで、議決権の行使制限という実効性確保措置は極めて有効だと思われる。英国会社法の794条に「会社は裁判所に対し、当該株式に制限を課す命令を求める申立てをすることができる(the company may apply to the court for an order directing that the shares in question be subject to restrictions)」と規定されているように、グローバルな観点からは決して「過剰」とは言えないことから、実現可能性は十分にありそうだ。

2025/09/04 AI役員が台頭 経営の意思決定の新常態

ChatGPTやGoogle Geminiなどの生成AIを含むAI全般の性能向上は、企業における業務を大きく変えつつある。会議の議事録の作成、文書の要約、提案書や顧客宛メールのドラフティング、リサーチ・分析、面接、配送トラックの効率的なルートの探索、電話オペレータの通話内容の評価など、企業内の様々な業務にAIが入り込んでいる。さらにAIは、「単純作業」の代替・効率化にとどまらず、「理解」「対話」「比較」「分析」「提案」「論点の抽出」「評価」「判断」「意思決定」といった人間にしかできないと考えられてきた高度で知的なプロセスも代替しつつある。

会議前の準備段階で生成AIにデビルズ・アドボケイトの役を担わせ、会議で提案する議案の内容をブラッシュアップさせる方法も浸透してきた。論点やリスクの抽出とその解消方法やコストの洗い出しなどを人間と生成AIとの間で事前に“壁打ち”することは、人間同士の議論よりも高レベルかつ有意義なものになる。


デビルズ・アドボケイト : 議論を深めるために意図的に多数派の意見に異を唱える役割のこと。相反する意見の双方を検討することで議論の深化を目指す。デビルズ・アドボケイトとは「悪魔の代弁人」や「悪魔の提唱」を意味し、元々はカトリック教会がローマ法王選出の際に候補者の欠点や奇蹟(人間の力や自然法則を超え、神など超自然のものとされる出来事)の疑わしさを指摘する役割を指す言葉であった。
壁打ち : 生成AIに対して質問を投げかけ、生成された回答をもとにさらに質問を投げかけるということを繰り返して疑問点や論点を抽出・解消することにより、当初の考えを具体化し、ブラッシュアップすること。

こうしたAIとの対話のリアリティをより高めようとすると、AIの返答を、口を動かしたり表情を変えたりするアバターを使って表現する仕組みが必要になる。アバターを用いた「AI役員」を初めて活用したのが三井住友フィナンシャルグループ(東証プライム)だ。2025年7月、同社傘下の銀行で中島社長の姿を模した「AI社長」が導入された(導入時のリリースはこちら)。モニターに表示された中島社長のアバターに対して従業員が質問すると、中島社長の過去の発言、その背景にある考え方、周囲からの印象等のデータを参照しながら、「中島社長であればこう答えるはず」という回答が生成される。従業員にとっては“雲の上の存在”の社長が、AI社長というアバターを通じ、身近に向き合える存在となる。


周囲からの印象 : ここでいう「周囲」とは中島社長と実際に接してきた社員、役員、関係者などを指す。「印象」とは、彼らが中島社長に対して抱いている人物像・性格・価値観・判断傾向などについての認識のことである。

また、三谷産業(東証スタンダード)が導入したのが「AI社外取締役」だ(三谷産業の導入時のリリースはこちら。「AI社外取締役」は株式会社上場ドットコムの登録商標となっている)。2026年6月に新たに設ける予定の「AI社外取締役」(あくまで助言・提言機能に特化した役割に位置づけるとともに、非自然人であるため、法的要件を満たす取締役としては扱わない)候補者として、バーチャルヒューマンの北斗泰山氏を選任する予定。北斗氏には東洋思想の知見を有する「孫子の兵法」の考え方があらかじめインプットされている。今後は他の諸子百家、古典哲学、倫理観、自然観、禅思想といった東洋的な知恵に加え西洋的な思考様式もインプットされるという。7割強の役員・社員がAIやディープラーニングに関するG検定(ジェネラリスト検定)に合格するなど社内にAIが浸透した同社ならではの先進的な取り組みと言えよう。


諸子百家 : 古代中国の春秋戦国時代(紀元前770年〜紀元前221年)に登場した様々な思想家や学派の総称。社会が大きく揺れ動く中で、政治・倫理・軍事・自然などあらゆる分野において多様な考え方が生まれた。
G検定 : 一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する、AI・ディープラーニングの活⽤リテラシー習得のための検定試験の呼称。

三井住友フィナンシャルグループや三谷産業に導入されたAI役員(三谷産業では「AI社外取締役」という呼称を使用している)はそれぞれ1名だが、既に12名ものAI役員を実装済みなのが、・・・

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2025/09/04 AI役員が台頭 経営の意思決定の新常態(会員限定)

ChatGPTやGoogle Geminiなどの生成AIを含むAI全般の性能向上は、企業における業務を大きく変えつつある。会議の議事録の作成、文書の要約、提案書や顧客宛メールのドラフティング、リサーチ・分析、面接、配送トラックの効率的なルートの探索、電話オペレータの通話内容の評価など、企業内の様々な業務にAIが入り込んでいる。さらにAIは、「単純作業」の代替・効率化にとどまらず、「理解」「対話」「比較」「分析」「提案」「論点の抽出」「評価」「判断」「意思決定」といった人間にしかできないと考えられてきた高度で知的なプロセスも代替しつつある。

会議前の準備段階で生成AIにデビルズ・アドボケイトの役を担わせ、会議で提案する議案の内容をブラッシュアップさせる方法も浸透してきた。論点やリスクの抽出とその解消方法やコストの洗い出しなどを人間と生成AIとの間で事前に“壁打ち”することは、人間同士の議論よりも高レベルかつ有意義なものになる。


デビルズ・アドボケイト : 議論を深めるために意図的に多数派の意見に異を唱える役割のこと。相反する意見の双方を検討することで議論の深化を目指す。デビルズ・アドボケイトとは「悪魔の代弁人」や「悪魔の提唱」を意味し、元々はカトリック教会がローマ法王選出の際に候補者の欠点や奇蹟(人間の力や自然法則を超え、神など超自然のものとされる出来事)の疑わしさを指摘する役割を指す言葉であった。
壁打ち : 生成AIに対して質問を投げかけ、生成された回答をもとにさらに質問を投げかけるということを繰り返して疑問点や論点を抽出・解消することにより、当初の考えを具体化し、ブラッシュアップすること。

こうしたAIとの対話のリアリティをより高めようとすると、AIの返答を、口を動かしたり表情を変えたりするアバターを使って表現する仕組みが必要になる。アバターを用いた「AI役員」を初めて活用したのが三井住友フィナンシャルグループ(東証プライム)だ。2025年7月、同社傘下の銀行で中島社長の姿を模した「AI社長」が導入された(導入時のリリースはこちら)。モニターに表示された中島社長のアバターに対して従業員が質問すると、中島社長の過去の発言、その背景にある考え方、周囲からの印象等のデータを参照しながら、「中島社長であればこう答えるはず」という回答が生成される。従業員にとっては“雲の上の存在”の社長が、AI社長というアバターを通じ、身近に向き合える存在となる。


周囲からの印象 : ここでいう「周囲」とは中島社長と実際に接してきた社員、役員、関係者などを指す。「印象」とは、彼らが中島社長に対して抱いている人物像・性格・価値観・判断傾向などについての認識のことである。

また、三谷産業(東証スタンダード)が導入したのが「AI社外取締役」だ(三谷産業の導入時のリリースはこちら。「AI社外取締役」は株式会社上場ドットコムの登録商標となっている)。2026年6月に新たに設ける予定の「AI社外取締役」(あくまで助言・提言機能に特化した役割に位置づけるとともに、非自然人であるため、法的要件を満たす取締役としては扱わない)候補者として、バーチャルヒューマンの北斗泰山氏を選任する予定。北斗氏には東洋思想の知見を有する「孫子の兵法」の考え方があらかじめインプットされている。今後は他の諸子百家、古典哲学、倫理観、自然観、禅思想といった東洋的な知恵に加え西洋的な思考様式もインプットされるという。7割強の役員・社員がAIやディープラーニングに関するG検定(ジェネラリスト検定)に合格するなど社内にAIが浸透した同社ならではの先進的な取り組みと言えよう。


諸子百家 : 古代中国の春秋戦国時代(紀元前770年〜紀元前221年)に登場した様々な思想家や学派の総称。社会が大きく揺れ動く中で、政治・倫理・軍事・自然などあらゆる分野において多様な考え方が生まれた。
G検定 : 一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する、AI・ディープラーニングの活⽤リテラシー習得のための検定試験の呼称。

三井住友フィナンシャルグループや三谷産業に導入されたAI役員(三谷産業では「AI社外取締役」という呼称を使用している)はそれぞれ1名だが、既に12名ものAI役員を実装済みなのが、キリンホールディングスだ。同社のAI役員には過去10年分の取締役会・グループ経営戦略会議の議事録や社内資料などの情報がインプットされている。同社では年間30回以上開催している「経営戦略会議」の前に複数のAI役員同士に議論を交わさせることで抽出しておいた論点や意見を、実際の経営戦略会議の場で経営陣に提示している。これにより、論点の抽出漏れが原因で生じるリスクを未然に防ぐ効果が期待される。

こうしたAI役員の運営に欠かせないのが「RAG(Retrieval-Augmented Generation=検索拡張生成)」と呼ばれる技術である。RAGは社内外の信頼できる情報源(規程、マニュアル、議事録、契約書、提案書、日報、業界レポート、法令データベースなど)から探し出した根拠に基づき回答を生成する。生成された回答には出典を明示できるため、いわゆる“幻覚”を抑制するとともに、説明責任も果たしやすくなる。また、通常の生成AIは学習した時点までの情報しか持っておらず、最新の情報を参照できないが、RAGを用いれば最新のデータベースを参照することが可能になる。さらに、RAGを用いればAIが学習したデータの漏洩が起きなくなるため、安心して社外秘の数値やノウハウをAIに学習させることができる(ただし、人手を介した漏洩は起こりうるため、権限管理監査ログの確保は必須となる)。


幻覚 : 生成AIが事実と異なる情報をさも真実であるかのように回答してしまうこと。
権限管理 : システムやデータへのアクセスを制限・管理する仕組み。
監査ログ : システム上で「誰が・いつ・何をしたか」を記録する仕組み。

近い将来、「AI役員の存在」が高度なコーポレートガバナンスを有していることの前提となる時代が到来するかもしれない。また、取締役会のスキルマトリクスに「AIの活用能力」が新たなスキル項目として加わるとともに、役員一欄の末尾に「AI役員」の存在が記載される日が来るかもしれない。そうなった場合、人間の社外取締役には、社内役員がAI役員の判断を歪めていないか(例えば、AI役員が提案した「不採算事業からの撤退」や「株主にとって有意義なM&A」が社内役員にとって不都合()である場合、社内役員がこれらの提案を意図的に過小評価していないか)のチェック係としての役割が期待されるだろう。生成AIは、もはや単なるツールではなく、「経営のパートナー」として企業の未来を切り拓く重要な存在になりつつある。この変革の波に乗り遅れないことが、今後の企業経営における最重要課題となろう。

* 日本では、例えば株主にとって有意義なM&A提案であっても、当該M&Aにより地位を失う可能性のある社内取締役は当該提案に反対する傾向にあり、その理由として、他社で同等のポジションを見つけることが容易ではないことなどが指摘されている(2025年8月20日「日本のM&A市場に残る3つのハードル」参照)。

2025/09/03 【2025年8月の課題】自社の株主総会における各議案の賛成率分析 解答(会員限定)

ジェイ・ユーラス・アイアール株式会社
マネージャー 水嶋 創

上場企業各社にとって株主総会後の大きな関心事となるのが、各議案に対する賛成率です。特に「低賛成率議案」には世間の注目が集まりやすいこともあり、役員や株主総会担当者の多くは、同業他社と比較して賛成率が高かったのか、あるいは低かったのかという点を気にかけているようです。

もっとも、一般的に会社提案議案に反対することが多いのは機関投資家であり、機関投資家による保有が多い企業ほど賛成率が低くなる傾向があります。したがって、議案の賛成率を他社と比較することは必ずしも有益であるとは言えません。むしろ重要なのは、「前年の自社の株主総会」と比較した賛成率の変化を見ることです。前年から株主構成に大きな変化がないにもかかわらず賛成率が相当程度下がった場合には、自社に対する株主の評価の低下を意味している可能性があります。例えば前年に比べて業績が悪化したということであれば原因も明確ですが、業績が変わらない場合、株主の求める水準が厳しくなったということもあり得るので注意が必要です。

本稿では、自社の株主総会における議案の賛成率を分析していただく一助となるよう、本年の株主総会で把握された低賛成率議案について、議案の種類ごとに低賛成率の背景等を分析します。併せてどのような株主提案の賛成率が高くなる傾向があるのかも紹介します。こちらは自社が株主提案の対象となった場合のリスクシナリオとしてご活用ください。

剰余金処分議案
(賛成率が低位となる主なケース)
・配当性向や総還元性向が低く、ROEも低い
・キャッシュリッチ企業であるにもかかわらず、配当性向/総還元性向が高水準でない
・計算書類の監査が未了である


総還元性向 : 企業が利益をどの程度株主に還元しているかを示す指標。「総配分性向」「株主還元性向」とも言われる。「(配当金+自社株買いの金額)÷当期純利益」によって計算される。ちなみに、「配当性向」は当期純利益に占める「配当金」のみの割合を示す。自社株買いも株主還元の1つであるため、最近は配当性向とともに、総還元性向を開示する企業が多い。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
ROE : ROE(Return On Equity = 株主資本利益率)とは株主資本に対する当期純利益の割合であり、「当期純利益 ÷ 株主資本」により算出される。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

一般的に剰余金処分議案の賛成率が低位となることは稀であり、90%を切ることも珍しいと言えます。低賛成率となる背景の一つが、海外機関投資家の行使判断に大きな影響を与える議決権行使助言会社ISSのスタンスです。ただ、同社の配当議案に関する基準は「配当性向が15%から100%の場合、通常は賛成を推奨する」という内容であり、日本企業がこれに抵触することはあまりありません。

国内機関投資家の求める水準はこれよりも高く、配当性向あるいは総還元性向「30%以上」が主流となっています。ただ、特に東証のPBR改善要請以降、各社とも株主還元の強化を進めており、この水準を下回るケースは少なくなっています。


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

もっとも、自己資本比率が高く、多額の現預金等も保有するなど、いわゆるキャッシュリッチ企業に対しては、さらに高い還元水準が求められることがある点には注意が必要です。特にインフレが進行する中での現金保有に対しては、株主から厳しい目が向けられるケースが増えているようです。また、現金だけでなく政策保有を含む有価証券の保有額が大きい場合にも「キャッシュリッチ」とみなされることがあります。

なお、配当水準如何にかかわらず、計算書類の監査が未了という状況下での剰余金処分議案に対しては、国内外の機関投資家から多くの反対行使がなされています。本年も決算手続きの遅れにより株主総会で計算書類の内容報告ができない事態となった企業の剰余金処分議案への賛成率が、前年から大きく低下した事例が確認されています。

定款変更議案
(反対の多かった定款変更の内容)
・剰余金の配当等を取締役会決議により決定する旨の変更
バーチャルオンリー型株主総会の開催を可能とする旨の定款変更
・取締役の員数(人数の上限)を変更する旨の定款変更


バーチャルオンリー型株主総会 : リアル株主総会を開催せず、全出席者が遠隔地からインターネット等で参加する株主総会。日本の会社法では、株主総会を招集するには、開催する「場所」を定めることを求めていることから(会社法298条1項1号)、実現は困難とされていたが、2021年6月19日より施行された改正産業競争力強化法において上場会社に限り会社法の特例として「場所の定めのない株主総会」の開催が可能となった。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

機関投資家をはじめとする株主からの反対により賛成率が低位となった定款変更議案としては、剰余金の配当等の決議を株主総会で行っている企業がこれを取締役会で決議(取締役会に授権)できるようにする旨の定款変更や、バーチャルオンリー型株主総会の開催を可能とする旨の定款変更が挙げられます。両方ともISSが原則反対推奨のスタンスをとっていることもあり、主に海外機関投資家からの反対が多かったものと推測されます。

また、取締役の員数(人数の上限)の変更について株主から反対を受けるケースもあります。機関投資家は基本的にコンパクトな取締役会規模を望んでいます。こうした中、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行に伴い取締役の員数を「30名」とする旨の規程を含む定款変更議案の賛成率が93%に留まった事例などがあります。

一方、員数を13名から11名に減少させる定款変更の賛成率が83%という低位となった事例も確認されています。この事例では、株主総会後の取締役の人数が11名となる見込みであるところ、これと同数の員数とすることは株主による取締役の追加選任を妨げる可能性があるという点が問題視されたものと考えられます。

取締役選任議案
(想定される主な反対理由)
・業績基準(ROE)への抵触
・政策保有株式が過大である
・女性取締役が少ない
・社外取締役の独立性に疑義がある

特定の大株主からの反対を受けた場合を除き、取締役選任議案の賛成率が低位となる要因として最も多いのは、業績基準への抵触であると考えられます。特にISSのROE基準(過去5期平均5%未満かつ直近5%未満)に抵触する場合には、多くの海外機関投資家から反対を受けることが想定されます。

一方、国内機関投資家は、ROE基準として「プライム市場上場企業の下位1/3」や「同一業種内の下位25%」といった相対的な基準を設定していることがあります。したがって、例えば業績が好調な業種に属する企業は、求められるROEのハードルが高くなることもあります。さらに、「ROE5%」など絶対的な基準を設定している機関投資家においても、徐々に基準の厳格化の傾向が見られることには注意が必要です。

政策保有株式については、純資産比でおおむね20%を目安として「過大」に当たるか否かが判断されている現状に大きな変化はないようです。ただし、「20%以上ではあるが、縮減が進捗しているため反対を控える」といった定性的な判断は厳しくなりつつあります。また、保有目的を政策保有から純投資に変更することにも厳しい目が向けられています。

ジェンダー基準については、女性取締役の選任が進んでいることもあり、女性取締役が少ないということが低賛成率の主要因になる事例はあまり見られなくなっています。ただし、従来「1名以上」であった基準を「10%以上」や「2名以上」に引き上げることを表明する機関投資家も出てきています。ジェンダー基準は、「2030年に30%以上」という政府の方針に沿って厳格化が進むことが見込まれます。

社外取締役の独立性の欠如を理由とした反対行使も全体的にはやや減少傾向にあるようです。ただし、社外取締役の独立性に対する機関投資家の判断基準は非常に似通っていることから、例えば在任期間が「12年」に達した場合には、多くの機関投資家から一斉に反対行使を受ける可能性がある点には注意が必要です。

株主提案
(賛成率が高くなることが多い株主提案の例)
・剰余金の配当等の決定機関の変更を求める提案
・取締役報酬の個別開示を求める提案
・顧問・相談役の廃止を求める議案
・取締役任期の短縮を求める提案

本年6月の株主総会で可決された株主提案議案としては、剰余金の配当や自己株式の取得の決定機関を取締役会と定めている企業に対し、株主総会でも決議可能とするよう求めたものが挙げられます。いわゆるアクティビストからの提案であったことや、特別決議となる定款変更議案であるにもかかわらず73%という高い賛成率で可決したことなどから大きな注目を集めました。同時に付議された自己株式の取得を求める株主提案は否決されており、企業の還元方針に対しては株主から一定の理解を得られた一方で、当該定款変更議案に対してはほとんどの機関投資家が賛成行使したものと推測されます。


特別決議 : 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の多数による決議。例えば定款変更、事業譲渡、株式の募集、取締役会の途中解任などにはこの特別決議が必要である。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

例年、取締役報酬の個別開示を求める提案に対しては機関投資家を中心に多くの賛成が集まり、賛成率が高くなる事例が確認されています。特に報酬委員会が設置されていない場合や委員会の独立性が不十分な場合に、賛成率が高くなる傾向があるようです。また、顧問・相談役の廃止を求める提案や取締役の任期を2年から1年に短縮するよう求める提案は、機関投資家を中心とした株主から賛成を集めることが多くなっています。

株主提案の内容は多岐にわたることから、事前の備えが難しいことは事実です。とはいえ、上記で挙げたような議案は、仮に提案された場合に賛成率が高くなり、株主構成によっては可決のおそれもあります。自社の株式がアクティビストによって一定程度保有されているというような場合には、これらを念頭に置きつつ、問題が発生してから対応するのではなく事前に対策を講じるプロアクティブな対応が求められます。

2025/09/02 監査等委員会設置会社への移行に伴うコーポレートガバナンスの変化

2025年8月27日のニュース「監査等委員会設置会社への移行に伴う株価・財務パフォーマンスの変化」では、TOPIX100採用銘柄(銀行業・保険業を除く)について機関設計別に株価および財務パフォーマンスを比較し、監査等委員会設置会社に移行しても直ちに市場の評価(株価)にはつながっていない現状をお伝えしたところだ。その背景の一つには、各機関設計のコーポレートガバナンスに対する信認度の差異がある。もっとも、コーポレートガバナンスの優劣は必ずしも機関設計だけで決まるわけではない。そこで当フォーラムでは、監査等委員会設置会社のコーポレートガバナンスの実態を把握すべく、TOPIX100採用銘柄(銀行業・保険業を除く90社)について、機関設計別に取締役会の構成などコーポレートガバナンスの状況を分析した(2025年7月31日時点)。

【TOPIX100採用銘柄の機関設計別社数】
機関設計 社数
指名委員会等設置会社 22社
監査等委員会設置会社 24社
監査役会設置会社 44社

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2025/09/02 監査等委員会設置会社への移行に伴うコーポレートガバナンスの変化(会員限定)

2025年8月27日のニュース「監査等委員会設置会社への移行に伴う株価・財務パフォーマンスの変化」では、TOPIX100採用銘柄(銀行業・保険業を除く)について機関設計別に株価および財務パフォーマンスを比較し、監査等委員会設置会社に移行しても直ちに市場の評価(株価)にはつながっていない現状をお伝えしたところだ。その背景の一つには、各機関設計のコーポレートガバナンスに対する信認度の差異がある。もっとも、コーポレートガバナンスの優劣は必ずしも機関設計だけで決まるわけではない。そこで当フォーラムでは、監査等委員会設置会社のコーポレートガバナンスの実態を把握すべく、TOPIX100採用銘柄(銀行業・保険業を除く90社)について、機関設計別に取締役会の構成などコーポレートガバナンスの状況を分析した(2025年7月31日時点)。

【TOPIX100採用銘柄の機関設計別社数】
機関設計 社数
指名委員会等設置会社 22社
監査等委員会設置会社 24社
監査役会設置会社 44社

機関設計別の独立社外取締役の人数および取締役会に占める割合は下表のとおりとなっている。取締役の数は監査等委員会設置会社が12人と最も多く、監査役会設置会社が10人強と最も少ない。監査等委員会設置会社の取締役の人数が多いのは、監査役会設置会社から機関設計を変更する際に、監査役の多くが取締役監査等委員にスライドしたからであろう。逆に指名委員会等設置会社の取締役人数がさほど多くないのは、業務執行と監督を分離したモニタリングモデルを採用する指名委員会等設置会社では、取締役は業務執行をせず監督に専念するため、取締役の人数を必要以上に増やす必要がないからだと考えられる。指名委員会等設置会社における独立取締役の平均人数は約7人だが、取締役会に占める割合はほぼ3分の2に達しており、社外取締役による監督機能が中心の取締役会運営が行われていることがうかがえる。一方、監査等委員会設置会社では独立社外取締役が半数を若干上回る程度にとどまっており、監査役会設置会社と大きな差はない。監査役会設置会社だった当時のマネジメントボードとしての役員構成、社内取締役による執行機能が継続しているとみられる。


モニタリングモデル : 取締役会が経営の監督に専念し、業務執行は経営陣に委ねるというコーポレートガバナンスの枠組み
マネジメントボード : 業務執行におけるコンセンサスを形成する場としての取締役会のこと。これに対し、経営陣の監督を主たる役割・任務とする取締役会のことをモニタリング・ボード という。

【独立社外取締役の人数および割合】
機関設計 取締役 独立社外取締役の人数 割合
指名委員会等設置会社 10.86人 7.09人 65.94%
監査等委員会設置会社 12.08人 6.29人 52.62%
監査役会設置会社 10.23人 4.77人 46.77%

独立社外取締役「過半数」で線引きしてみると、機関設計別の社数および割合は下表のとおりとなる。指名委員会等設置会社では過半数が当然となっている一方、監査等委員会設置会社、監査役会設置会社ではそれぞれ4割未満、3割未満にとどまっており、指名委員会等設置会社とは取締役会の在り方(モニタリングボードorマネジメントボード)に大きな差異があることが分かる。

【独立社外取締役が過半数を占める会社の数および割合】
機関設計 社数 割合
指名委員会等設置会社 20社 90.91%
監査等委員会設置会社 9社 37.50%
監査役会設置会社 12社 27.27%

取締役会の監督機能を高めるもう一つの重要な要素として「取締役会議長の属性」が挙げられる。取締役会議長は社外取締役が務めることが望ましいが、指名委員会等設置会社の半数がこれを実現している一方、監査等委員会設置会社、監査役会設置会社では2割程度しか実現していない。監査等委員会設置会社、監査役会設置会社における議長の属性として最も多いのは会長(社長が兼任しているケースを除く)であり、監督と執行を分離するという意味では一定の取り組みがなされているとの見方もできなくない。ただ、会長が「代表取締役会長」であるなど執行側でないと言い切れないケースや、そもそも執行側を代表する元社長が会長に繰り上がっているケースが少なくないこともあり、投資家に対する説得力に欠けることは認識する必要がある。

【取締役会議長の属性】
機関設計 社外取締役 会長(社長の兼任を除く) 社長
指名委員会等設置会社 50.00% 27.27% 22.73%
監査等委員会設置会社 20.83% 50.00% 25.00%
監査役会設置会社 20.45% 47.73% 25.00%

最後に役員構成の多様性を機関設計別に比較してみよう。下表のとおり、指名委員会等設置会社では女性役員の人数が多いわりに比率が低くなっているが、これは役員の中に執行役が含まれているため母数(役員の数)が膨らみ、女性役員の割合が相対的に小さくなることによる。逆に、監査等委員会設置会社は人数が最も少ないにもかかわらず、比率は最も高い。機関設計の変更に際し、女性監査役を取締役監査等委員にスライドさせることにより、効率よく女性比率を高めることに成功した結果であろう。

【女性役員の人数および比率】
機関設計 女性役員数 女性役員比率
指名委員会等設置会社 3.86人 20.32%
監査等委員会設置会社 2.96人 24.29%
監査役会設置会社 3.25人 21.33%

以上のとおり、監査等委員会設置会社は、機関設計の変更に伴い取締役会のジェンダーダイバーシティは進展したものの、指名委員会等設置会社と比較すると取締役会の機能に大きな差異があり、監査役会設置会社と同様、依然としてマネジメントボードを踏襲しているケースが多いことが明らかとなった。モニタリングボードを期待する投資家からの評価を獲得するためには、監督機能に軸足を置いた取締役会改革を断行することが求められていると言えよう。