2025/08/29 2025年8月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
問題文のとおり、東証の企業行動規範が改正され、2025年7月22日より東証上場会社におけるその他の関係会社等による完全子会社化の際にも特別委員会からの意見取得および当該意見の適時開示が必要になりました。

こちらの記事で再確認!
2025年8月4日 東証、企業再編の利益相反対応を強化 MBO等の手続が厳格に(会員限定)

2025/08/29 2025年8月度チェックテスト

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【問題1】

東証の企業行動規範が改正され、2025年7月22日より東証上場会社におけるその他の関係会社等による完全子会社化の際にも特別委員会からの意見取得および当該意見の適時開示が必要になった。

正しい
間違い
【問題2】

2025年3月に行われた金融担当大臣による要請を受け、株主総会開催日の1週間以上前に有価証券報告書を開示する上場会社が、2025年3月期上場会社の過半数を占めた。

正しい
間違い
【問題3】

東証の企業行動規範が改正され、2025年7月22日より東証上場会社がMBOを行う際には株式価値算定書そのものを投資家に開示しなければならなくなった。

正しい
間違い
【問題4】

オルツの粉飾では、損益計算書上、売上と広告費が並び立ち、その差額にあたる手数料分(循環取引に協力する他社が受け取る)が損失として積み上がっていた。

正しい
間違い
【問題5】

独立社外取締役としての「独立性」をチェックするうえで、「経済的な独立性」は考慮不要である。

正しい
間違い
【問題6】

違法ないし違反にならない範囲が明確化されていることをセーフハーバー・ルールと称することがある。

正しい
間違い
【問題7】

日本では上場会社がたとえ株主から見て魅力的なM&Aの提案を受けたとしても、社内取締役が自らの保身の観点から自社の売却に反対する傾向にあり、その要因の一つとして取締役の人材マーケットの流動性の低さがあることが指摘されている。


正しい
間違い
【問題8】

発注者以外の者が検収をすると検収が非効率になることから、内部統制の観点からは望ましくない。

正しい
間違い
【問題9】

東証プライム市場では監査等委員会設置会社の数が監査役会設置会社の数を上回った。

正しい
間違い
【問題10】

「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に沿った対応をするのであれば、仕入先・外注先から労務費の転嫁を理由に値上げを求められた場合に備えて、経営トップが取組方針又はその要旨などを書面等の形に残る方法で社内外に示すべきである。

正しい
間違い

2025/08/28 【役員会 Good&Bad発言集】労務費の適切な転嫁(1)(会員限定)

<解説>
公取がまとめた「12の行動指針」

内閣官房および公正取引委員会は2023年11月29日、連名で「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(以下、本指針)を策定し、公表しました。本指針は公正取引委員会が行った業界ごとの実態調査を踏まえて、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストのうち、労務費の転嫁に係る価格交渉について、発注者および受注者それぞれが採るべき行動/求められる行動を「12の行動指針」として取りまとめたものです。2025年1月16日には日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会の経済三団体が合同でとりまとめた声明『社会全体における「価格転嫁の商習慣」の定着に向けて』においても、この12の行動指針に沿う行為を徹底することがうたわれています。

今回の役員会 Good&Bad発言集では、2024年2月7日のニュース「サプライチェーン全体を通じた構造的な賃上げへの経営トップと社外取締役の関わり方」に記載した表のうち、本指針(1)から(3)までを再掲します(右列は当フォーラムによる解説)。

<発注者側(労務費の転嫁を理由に値上げを求められた場合)の行動指針>
行動指針 内容 解説
(1)本社(経営トップ)の関与 ①労務費の上昇分について取引価格への転嫁を受け入れる取組方針を具体的に経営トップまで上げて決定すること。
②経営トップが同方針又はその要旨などを書面等の形に残る方法で社内外に示すこと。
③その後の取組状況を定期的に経営トップに報告し、必要に応じ、経営トップが更なる対応方針を示すこと。
・取引先から労務費の転嫁を理由に値上げを求められても、その是非を交渉現場の担当者だけで判断させることはやめさせるべきである。なぜなら、担当者は、業績向上に貢献し自身の評価が上がることを第一に考えがちなため、値上げ要請を一方的にはねつけて協議が終わる可能性があるからだ。そうならないためには、「経営トップが方針を示すこと」「交渉現場の担当者が当該方針を認識していること」「交渉現場の担当者から経営トップへのフィードバック」が重要となる。
・②の「社外」への方針提示のやり方としては「パートナーシップ構築宣言」が考えられる(「パートナーシップ構築宣言」については、2021年10月1日のニュース『「パートナーシップ構築宣言」を利用したSDGsウオッシュに懸念の声』を参照)。
・経営トップのコミットメントに加え、調達部門から独立して労務費の転嫁を含む価格転嫁の状況を把握する専門部署や受注者からの相談窓口を設置したり、親会社だけでなくグループ会社においても親会社に倣った対応をしたりすることも、円滑な労務費の転嫁を進める上で有効かつ適切である(本指針の4ページを参照)。
(2)発注者側からの定期的な協議の実施 ・受注者から労務費の上昇分に係る取引価格の引上げを求められていなくても、業界の慣行に応じて1年に1回や半年に1回など定期的に労務費の転嫁について発注者から協議の場を設けること。特に長年価格が据え置かれてきた取引や、スポット取引と称して長年同じ価格で更新されているような取引においては転嫁について協議が必要であることに留意が必要である。
・協議することなく長年価格を据え置くことや、スポット取引とはいえないにもかかわらずスポット取引であることを理由に協議することなく価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用又は下請代金法上の買いたたきとして問題となるおそれがある。
・少なくとも定期的な協議の場があれば、受注者としても交渉しやすくなり、協議を経た上での価格据え置きであれば、発注者としても優越的な地位の濫用や下請代金法上の買いたたきを問われにくくなる。
(3)説明・資料を求める場合は公表資料とすること 労務費上昇の理由の説明や根拠資料の提出を受注者に求める場合は、公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など)に基づくものとし、受注者が公表資料を用いて提示して希望する価格については、これを合理的な根拠があるものとして尊重すること。 ・公表数値(下記は例示)を用いることで相互に納得感のある公平な協議が可能となる。
「都道府県別の最低賃金やその上昇率」
「春季労使交渉の妥結額やその上昇率」
「国土交通省が公表している公共工事設計労務単価における関連職種の単価やその上昇率」
「一般貨物自動車運送事業に係る標準的な運賃」
「厚生労働省が公表している毎月勤労統計調査に掲載されている賃金指数、給与額やその上昇率」
「総務省が公表している消費者物価指数」
「ハローワーク(公共職業安定所)の求人票や求人情報誌に掲載されている同業他社の賃金」
・受注者から当該公表資料に基づいて提示された額は合理性を有するものとして尊重し、仮に発注者がこれを満額受け入れない場合には、その根拠や合理的な理由を説明することが求められる(本指針の7ページを参照)。
・発注者が過度に詳細な理由の説明や根拠資料を求めたり、受注者が明らかにしたくない内部情報に係るものの説明や根拠資料の提出を求めたりした結果、受注者が転嫁の要請を断念することもあるので、経営トップの方針には本指針(3)の内容を明記しておくことが望ましい。
・価格交渉を行うための条件として、公表資料に基づく労務費上昇の理由の説明や根拠資料が提出されているにもかかわらず、これに加えて詳細な資料等や受注者のコスト構造に関わる内部情報まで求めることは、そのような情報を用意することが困難な受注者や取引先に開示したくないと考えている受注者にとっては、実質的に受注者からの価格転嫁に係る協議の要請を拒んでいるものと評価され得る。こうした中、これらが示されないとして明示的に協議することなく取引価格を据え置けば、独占禁止法上の優越的地位の濫用又は下請代金法上の買いたたきとして問題となるおそれがあることに、発注者は留意が必要である(本指針の9ページを参照)。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役B:「従業員に任せるにしても、まずは経営トップが方針を定める必要があります。そして当該方針を公表するとともに、取組状況につき定期的に報告を受けるようにしてください。また、労務費を転嫁したいことを明らかにしていない受注者との間でも協議の場を設けるようにすべきです。」
コメント:取締役Bの「経営トップが方針を定める」「方針を公表する」「経営者が取組状況に付き定期的に報告を受ける」といった発言は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の「行動指針(1)本社(経営トップ)の関与」を踏まえたGOOD発言です。

BAD発言はこちら

取締役A:「当社では外注先から労務費上昇分の転嫁の打診を受けた場合、方針の決定も含めて現場の従業員にすべてを任せています。価格交渉は上がとやかく言うのではなく、コスト責任を有する現場の裁量にすべてを委ねるべきです。」
コメント: 取引先から労務費の転嫁を理由に値上げを求められても、その是非を交渉現場の担当者だけで判断させることはやめさせるべきです。なぜなら、担当者は、業績向上に貢献し自身の評価が上がることを第一に考えがちなため、値上げ要請を一方的にはねつけて協議が終わる可能性があるからです。そうならないためには、「経営トップが方針を示すこと」「交渉現場の担当者が当該方針を認識していること」「交渉現場の担当者から経営トップへのフィードバック」が重要となります。

取締役C:「なぜ、労務費を転嫁したいことを明らかにしていない受注者のことまで考慮する必要があるのでしょうか。自ら墓穴を掘るようなものです。労務費の転嫁の要請があった受注者にだけ対応すれば十分です。もっとも、受注者が生産性を高めるのが先決ですね。そのうえで、受注者からコスト構造の詳細な説明が得られるのであれば、労務費転嫁の可能性について検討の余地はあるでしょう。」
コメント:受注者から労務費の上昇分に係る取引価格の引上げ要請がなくても、業界の慣行に応じて、年1回や半期ごとなど定期的に労務費の転嫁について発注者側から協議の場を設ける必要があります(「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」行動指針(2) 発注者側からの定期的な協議の実施 参照)。したがって、「労務費を転嫁したい意思を明らかにしていない受注者まで考慮する必要があるのか」という問い自体、指針の趣旨への理解が不足した不適切な発言です。また、発注者は、労務費上昇の理由説明や根拠資料の提出を受注者に求める場合には、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額や上昇率等の公表資料に基づくこと、そして受注者が公表資料を用いて提示する希望価格を合理的根拠のあるものとして尊重することが求められています。にもかかわらず、「受注者のコスト構造を詳しく示してほしい」といった姿勢は、受注者の内部情報の提出を要求する行為に当たり、その準備が困難な受注者や開示を望まない受注者に対しては、実質的に価格転嫁に係る協議の要請を拒むものと評価され得ます。また、「受注者が生産性を高めるのが先決」といった姿勢も、やはり、実質的に価格転嫁に係る協議の要請を拒むものと評価され得ます。このような状況で、これらの資料等が示されないことを理由に明示的な協議を行うことなく取引価格を据え置くと、独占禁止法上の優越的地位の濫用又は下請代金法上の買いたたきとして問題となるおそれがあります。

2025/08/28 【役員会 Good&Bad発言集】労務費の適切な転嫁(1)

上場会社R社の取締役会において労務費の転嫁が話題になり、次の3人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「当社では外注先から労務費上昇分の転嫁の打診を受けた場合、方針の決定も含めて現場の従業員にすべてを任せています。価格交渉は上がとやかく言うのではなく、コスト責任を有する現場の裁量にすべてを委ねるべきです。」

取締役B:「従業員に任せるにしても、まずは経営トップが方針を定める必要があります。そして当該方針を公表するとともに、取組状況につき定期的に報告を受けるようにしてください。また、労務費を転嫁したいことを明らかにしていない受注者との間でも協議の場を設けるようにすべきです。」

取締役C:「なぜ、労務費を転嫁したいことを明らかにしていない受注者のことまで考慮する必要があるのでしょうか。自ら墓穴を掘るようなものです。労務費の転嫁の要請があった受注者にだけ対応すれば十分です。もっとも、受注者が生産性を高めるのが先決ですね。そのうえで、受注者からコスト構造の詳細な説明が得られるのであれば、労務費転嫁の可能性について検討の余地はあるでしょう。」

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2025/08/27 監査等委員会設置会社への移行に伴う株価・財務パフォーマンスの変化

2025年5月9日付ニュース「監査等委員会設置会社に移行する際の投資家への説明のポイント」などでもお伝えしたとおり、監査等委員会設置会社への移行が継続的に増加しており、2025年6月の株主総会後には監査等委員会設置会社がプライム市場において最も多い機関設計となっている。東証コーポレートガバナンス情報サービスにて各市場に上場する会社の機関設計を確認したところ、プライム市場では監査等委員会設置会社が全体の48.2%と、監査役会設置会社の46.8%を1.4ポイント上回っていた(2025年7月31日時点)。スタンダードおよびグロース市場では依然として監査役会設置会社が多数派ではあるものの、監査等委員会設置会社の割合は着実に高まっており、スタンダード市場においては大きな差はなくなっている。

【3市場における各機関設計の割合】
機関設計 プライム スタンダード グロース
指名委員会等設置会社 82社(5.1%) 11社(0.7%) 3社(0.5%)
監査等委員会設置会社 780社(48.2%) 703社(44.7%) 226社(37.2%)
監査役会設置会社 757社(46.8%) 858社(54.6%) 378社(62.3%)

下表のとおり、東証はプライム市場を「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業」向けの市場と位置付けるとともに、同市場には「建設的な対話の実効性を担保する基盤」としてのガバナンスを有する銘柄を選定するとしている。

【プライム市場のコンセプト・上場基準】
プライム市場の
コンセプト
多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場
上場基準の
考え方・狙い
流動性 多様な機関投資家が安心して投資対象とすることができる潤沢な流動性の基礎を備えた銘柄を選定する。
ガバナンス 上場会社と機関投資家との間の建設的な対話の実効性を担保する基盤のある銘柄を選定する。
経営成績
財政状態
安定的かつ優れた収益基盤・財政状態を有する銘柄を選定する。

では、プライム市場に上場している監査等委員会設置会社は、他の機関設計と比較して「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミット」していると言えるのだろうか。当フォーラムでは、TOPIX100採用銘柄(銀行業・保険業を除く90社)について、3つの機関設計別に株価パフォーマンスおよび財務パフォーマンスを比較することで、それぞれの機関設計における収益構造の特徴および投資家の評価を検討した。具体的には、①PBR(株価純資産倍率)=PER(株価収益率)×ROE(自己資本利益率)、②ROE=財務レバレッジ(自己資本比率の逆数)×ROA(総資産利益率)」③ROA=ATR(総資産回転率)×ROS(売上高営業利益率)、の3つの指標および分解式を活用して分析している(株価データは2025年6月末時点、財務データは2020-2024年度の平均値を使用)。・・・


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。
PER : Price Earnings Ratio=株価収益率(株価/1株当たり純利益)。PERが高いほど、株価がその企業の利益に対して「割高」に評価されているということになるが、それは必ずしも「悪い」わけではなく、一般的には、将来の成長期待が大きいということを意味する。
ROE : ROE(Return On Equity = 株主資本利益率)とは株主資本に対する当期純利益の割合であり、「当期純利益 ÷ 株主資本」により算出される。
財務レバレッジ : 株主資本(自己資本)を1とした場合、その何倍の総資産を有しているかを示す数値。「総資産/株主資本」によって計算される。財務レバレッジ(=テコ)が大きい会社とは、借入金の大きい会社である。財務レバレッジが高ければ、株主資本よりも大きな取引を行うことができる。ただし、その反面、有利子負債が増加して、金利負担、返済負担が増加し、会社の収益性が下がったり、財務リスクを抱えたりする可能性がある。
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。
ATR : 「Asset Turnover Ratio」 の略で、企業が保有する総資産を使ってどれだけ効率的に売上を生み出しているかを示す指標で、「売上高÷総資産」によって算出される。資産活用の度合いを測る財務分析に用いられる。
ROS : 「Return on Sales」の略で、企業が売上に対してどれだけ効率よく利益を出しているかを示す。「営業利益 ÷ 売上高」によって計算され、ROSが低い場合には、売上に対してコストがかかりすぎており、利益が出ていない可能性がある。

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2025/08/27 監査等委員会設置会社への移行に伴う株価・財務パフォーマンスの変化(会員限定)

2025年5月9日付ニュース「監査等委員会設置会社に移行する際の投資家への説明のポイント」などでもお伝えしたとおり、監査等委員会設置会社への移行が継続的に増加しており、2025年6月の株主総会後には監査等委員会設置会社がプライム市場において最も多い機関設計となっている。東証コーポレートガバナンス情報サービスにて各市場に上場する会社の機関設計を確認したところ、プライム市場では監査等委員会設置会社が全体の48.2%と、監査役会設置会社の46.8%を1.4ポイント上回っていた(2025年7月31日時点)。スタンダードおよびグロース市場では依然として監査役会設置会社が多数派ではあるものの、監査等委員会設置会社の割合は着実に高まっており、スタンダード市場においては大きな差はなくなっている。

【3市場における各機関設計の割合】
機関設計 プライム スタンダード グロース
指名委員会等設置会社 82社(5.1%) 11社(0.7%) 3社(0.5%)
監査等委員会設置会社 780社(48.2%) 703社(44.7%) 226社(37.2%)
監査役会設置会社 757社(46.8%) 858社(54.6%) 378社(62.3%)

下表のとおり、東証はプライム市場を「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業」向けの市場と位置付けるとともに、同市場には「建設的な対話の実効性を担保する基盤」としてのガバナンスを有する銘柄を選定するとしている。

【プライム市場のコンセプト・上場基準】
プライム市場の
コンセプト
多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場
上場基準の
考え方・狙い
流動性 多様な機関投資家が安心して投資対象とすることができる潤沢な流動性の基礎を備えた銘柄を選定する。
ガバナンス 上場会社と機関投資家との間の建設的な対話の実効性を担保する基盤のある銘柄を選定する。
経営成績
財政状態
安定的かつ優れた収益基盤・財政状態を有する銘柄を選定する。

では、プライム市場に上場している監査等委員会設置会社は、他の機関設計と比較して「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミット」していると言えるのだろうか。当フォーラムでは、TOPIX100採用銘柄(銀行業・保険業を除く90社)について、3つの機関設計別に株価パフォーマンスおよび財務パフォーマンスを比較することで、それぞれの機関設計における収益構造の特徴および投資家の評価を検討した。具体的には、①PBR(株価純資産倍率)=PER(株価収益率)×ROE(自己資本利益率)、②ROE=財務レバレッジ(自己資本比率の逆数)×ROA(総資産利益率)」③ROA=ATR(総資産回転率)×ROS(売上高営業利益率)、の3つの指標および分解式を活用して分析している(株価データは2025年6月末時点、財務データは2020-2024年度の平均値を使用)。


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。
PER : Price Earnings Ratio=株価収益率(株価/1株当たり純利益)。PERが高いほど、株価がその企業の利益に対して「割高」に評価されているということになるが、それは必ずしも「悪い」わけではなく、一般的には、将来の成長期待が大きいということを意味する。
ROE : ROE(Return On Equity = 株主資本利益率)とは株主資本に対する当期純利益の割合であり、「当期純利益 ÷ 株主資本」により算出される。
財務レバレッジ : 株主資本(自己資本)を1とした場合、その何倍の総資産を有しているかを示す数値。「総資産/株主資本」によって計算される。財務レバレッジ(=テコ)が大きい会社とは、借入金の大きい会社である。財務レバレッジが高ければ、株主資本よりも大きな取引を行うことができる。ただし、その反面、有利子負債が増加して、金利負担、返済負担が増加し、会社の収益性が下がったり、財務リスクを抱えたりする可能性がある。
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。
ATR : 「Asset Turnover Ratio」 の略で、企業が保有する総資産を使ってどれだけ効率的に売上を生み出しているかを示す指標で、「売上高÷総資産」によって算出される。資産活用の度合いを測る財務分析に用いられる。
ROS : 「Return on Sales」の略で、企業が売上に対してどれだけ効率よく利益を出しているかを示す。「営業利益 ÷ 売上高」によって計算され、ROSが低い場合には、売上に対してコストがかかりすぎており、利益が出ていない可能性がある。

(注)下表に示した各指標の数値は90社の単純平均であり、また、指標ごとに算出に使用する利益等の定義が異なるため、各分解式における左辺の数値と右辺の計算結果は一致していない。

まず投資家の評価が端的に反映されていると考えられるPBRを比較すると、委員会型の2つの機関設計はいずれも監査役会設置会社に劣っている。PBRを「成長期待を示すPER」と「資本効率性を示すROE」に分解すると、指名委員会等設置会社にいては現状の低ROE改善への期待が高PERにつながっている一方、監査等委員会設置会社については現状の高ROEが持続しないことへの懸念が低PERにつながっているとの仮説を立てることもできる。コーポレートガバナンスに対する信認の差もPERに影響を与える要素の一つとすれば、監査等委員会設置会社への移行は必ずしも投資家に評価されていない可能性がある。

機関設計 PBR PER × ROE
指名委員会等設置会社 2.31倍 29.04倍 9.67%
監査等委員会設置会社 2.33倍 24.54倍 11.53%
監査役会設置会社 2.80倍 27.29倍 12.40%

次にROEを財務レバレッジとROAに分解する。指名委員会等設置会社はROAが最も低いものの、財務レバレッジを効かせることで、ROEへの影響を一定程度カバーしている。コーポレートガバナンスが株主還元の強化など財務戦略()を引き出しており、投資家の期待(上記の高PER)につながっていると言えよう。一方、監査等委員会設置会社と監査役設置会社のROE分解式における各要素は類似しており、財務戦略および事業戦略の大きな差異は読み取れない。


財務レバレッジ : 株主資本(自己資本)を1とした場合、その何倍の総資産を有しているかを示す数値。「総資産/株主資本」によって計算される。財務レバレッジ(=テコ)が大きい会社とは、借入金の大きい会社である。財務レバレッジが高ければ、株主資本よりも大きな取引を行うことができる。ただし、その反面、有利子負債が増加して、金利負担、返済負担が増加し、会社の収益性が下がったり、財務リスクを抱えたりする可能性がある。

* 株主還元には自社株買いと配当があるが、自社株買いを借入で行うと自己資本が減り、かつ負債が増えるため財務レバレッジが上昇する(自己資本比率が低下する)。また、配当の支払いは利益剰余金を減らすため自己資本が減少し、総資産が変わらなければ、やはり財務レバレッジは上昇する。
機関設計 ROE 財務レバレッジ × ROA
指名委員会等設置会社 9.67% 2.63倍 6.13%
監査等委員会設置会社 11.53% 1.87倍 7.97%
監査役会設置会社 12.40% 1.93倍 8.13%

さらに、ROAをATR(総資産回転率)とROS(売上高営業利益率)に分解したところ、やはり監査等委員会設置会社と監査役設置会社で大きな差異は見られなかった。目に付くのは指名委員会等設置会社であり、ROSは若干高いものの、ATRは他の機関設計に劣っている。PL面のコストダウンは相対的に進んでいる一方、BS面のスリム化は後手に回っていることがうかがえる。逆に言えば、コーポレートガバナンスが機能して事業ポートフォリオ改革が進展することへ期待も、上記のPER水準の高さに影響しているとの見方もできそうだ。

機関設計 ROA ATR × ROS
指名委員会等設置 6.13% 0.58倍 13.31%
監査等委員会設置 7.97% 0.65倍 12.42%
監査役設置 8.13% 0.69倍 13.03%

このように、監査等委員会設置会社の財務パフォーマンス(ROE、ROA、財務レバレッジ、ATR、ROS)は監査役会設置会社と大差がない一方、株価パフォーマンス(PBR、PER)は劣っていることが分かる。特にPERの低さは、監査等委員会設置会社への移行によるコーポレートガバナンス改革が投資家からの成長期待につながっていない可能性を示唆している。財務パフォーマンスで劣る指名委員会等設置会社が、相対的に高いPERであることもこの示唆を補強する材料となり得る。監査等委員会設置会社に移行することが市場の評価に直結するのではなく、むしろ移行した後が肝心と言えそうだ。

2025/08/26 【2025年7月の課題】取締役会の運用高度化に伴う実効性評価のアップデート 解答(会員限定)

タワーズワトソン株式会社(WTW)
経営者報酬・ボードアドバイザリー
ディレクター
佐川 裕一

既に大半の上場会社が取締役会の実効性評価を実施していますが、取締役会に対するステークホルダーの期待の高まりを受け、取締役会の実効性評価のやり方もアップデートすべき時期に来ています。本稿では、具体的にどのようにアップデートすればよいか、「実施手法」と「結果開示」の両面から解説します。

【実施手法】

2015年に制定されたコーポレートガバナンス・コードの補充原則4‐11③により取締役会の実効性評価が求められたことを受け、多くの上場会社が取り組んだのが、「アンケート形式」による評価です。その後、これに加えて「インタビュー」も実施する会社が増えています。実際、「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2025」によると、取締役会実効性評価を実施している会社(補充原則4-11③をコンプライしている会社)2,603社のうち、「アンケート等(質問票等)」を実施している会社は2,009社(77.2%)、「ヒアリング(インタビュー、聴取等)」を実施している会社は291社(11.2%)となっています。

アンケートで抽出した課題をインタビュー等で深掘りするアプローチでも、評価結果の精度・深度を相応に確保できるものと思われますが、本来、取締役会の実効性評価とは、取締役会に求められる「監督」という役割の発揮状況の評価・改善サイクルの一環であることに立ち返ると、以下の3つの手法を取り入れることで、評価の客観性・具体性の向上を図ることができるでしょう。

1.審議資料等の振り返り
アンケートにより抽出された課題の原因分析や改善策の検討に際しては、その裏付けとして、当該課題に関係する資料等を振り返ることが有益です。例えば「経営戦略に関する議論の充実」という課題が抽出され、その原因が「審議資料の内容」にあると認識された場合には、該当する審議資料をレビューし、改善すべき点を特定したうえで、審議資料の起案部署と連携してフォーマットや記載ルールの見直し・整備を図ります。

2.多面的評価
当事者(取締役自身)から見えづらい問題点や忌憚のない指摘をあえて引き出すとともに、着実に改善につなげるためには、第三者からの評価を取り入れることも選択肢となります。具体的には、例えば監査役会設置会社においては、監査役に評価者として加わってもらうことを検討したいところです。監査役は常に取締役会に出席し、取締役の職務執行を監査する立場で(議決権は有さないものの)議論に参加しています。このため、客観的視点で忌憚のないフィードバックがなされることが期待され、また、その切り口・着眼点も、経営、財務・会計から内部統制に至るまで、専門性に裏打ちされた幅広い領域にわたっていますので、評価者として適任と言えます。

一方、指名委員会等設置会社のように経営(執行役等)と監督(取締役)が分かれるケースでは、取締役会に属さない執行役・執行役員も評価者となることで、「監督を受ける側」から見た取締役会による監督のスタンスや、「監督する側」のメッセージが執行側に伝わっているのかなど、客観性の高いフィードバックが期待できます。

3.ディスカッション
評価結果を取締役会で報告する際には、重要課題が全ての取締役に理解されるとともに、改善の方向性についてもコンセンサスを得られるよう、全員参加型のディスカッションを行うことも有益です。ディスカッションの中で、課題を指摘した取締役からその背景・理由等を説明してもらうことにより、他の取締役からも様々な意見を引き出しつつ全員への理解浸透につなげることが期待できます。また、複数の課題が抽出された場合には、各課題の重要性・優先度を整理し、重要と判断された課題については、対応のアクションプランと時間軸を協議します。

【結果開示】

次に、評価結果開示の見直しについて解説します。上場会社各社のコーポレート・ガバナンス報告書における実効性評価の結果開示を調査すると、評価手法、評価項目、抽出課題などがコンパクトに開示されている事例を多数見かけますが、以下の3つの工夫を取り入れることで、これまで以上に実効性評価の有効性を株主・投資家にアピールできるでしょう。

1.前年度の課題への対応状況
当年度の評価結果のみならず、前年度の評価により抽出された課題についてどのような対応策を講じ、どのように改善したのかを併せて開示します。これにより、自社の実効性評価が「形」だけのものでなく、継続的な課題改善のPDCAとして機能していることを株主・投資家に理解してもらうことができ、自社の実効性評価に対する信頼向上につながるはずです。

2.当年度の評価結果を踏まえた取組方針
当年度の評価結果として、抽出された課題のみを端的に記載している事例が多く見られます。しかし、実効性評価が「継続的な課題改善のPDCA」として機能していることを示すためには、重要課題について原因と改善の方向性を示す必要があります。例えば、「経営戦略に関する議論の充実」が重要課題として抽出され、その主な原因が「審議時間の不足」にあれば、時間捻出のための「議案数の絞込み」や、その前提となる「執行側への権限委譲」を進めていく方針を開示します。

ただ、評価結果の取りまとめからコーポレート・ガバナンス報告書の開示まで時間がなく、取締役会での評価結果報告の場において課題の改善策(アクションプラン)まで決定するのは難しいケースも多いものと思われます。そのような場合は、上記「3. ディスカッション」等において、取締役会のメンバー間で方向性だけでも認識を共有し、可能な範囲で開示に反映することが望まれます。

3.時系列的な「年表」形式の開示
より発展的な取り組みとして、過去の複数年度(例:3~5年)にわたる課題と改善策を時系列で示すことで、長期的・継続的なPDCAサイクルを可視化することも検討したいところです。このような開示は、かつては英国大手銀行グループ等で見られたプラクティスでしたが、最近は日本の大手グローバル企業を中心に同様のスタイルの開示事例が散見されるようになりました。自社の取締役会における「継続的な課題改善のPDCA」の“足跡”を具体的に示すことで、自社にガバナンスに対する株主・投資家からの評価は高まるはずです。

ただし、注意しなければならないのは、毎年度、同じ評価手法・評価項目に基づき似たような課題と改善策を繰り返し開示している会社が時系列形式の開示を行った場合、自社の実効性評価が「継続的な課題改善のPDCA」として機能していないことを晒す結果となり得るということです。この時系列形式の開示は、既に実効性評価のPDCAサイクルがある程度回っている会社向けの手法と言えるでしょう。

2025/08/25 取締役会決議の不存在発覚後の対応

取締役会での決議が必須とされる事項を「決議を経ずに」実行してしまう事例は、企業規模を問わず発生している。社内規程で、固定資産の取得・売却など一定金額以上の取引を取締役会決議事項と定めている企業は多いが、現場担当者の失念や手続きの錯誤により、取締役会決議を行わないまま契約や引渡しが完了してしまうことは珍しくない。このような場合、「既に取引は終わった」「株主総会と違い外部に露見する可能性は低い」「役員が一部入れ替わっており、今さら諮りづらい」と考え、事後決議はおろか取締役会での共有をためらう役員も存在するかもしれない。しかし、これは極めて危うい判断である。

会社法上、取締役会設置会社においては、「一定の重要事項」(会社法362条4項)を取締役会決議によることが義務付けられている。したがって、例えば固定資産の売買が完了したとしても、それが取締役会の決議を経ていなければ、法的には未決議の状態が継続していることになり、株主や監査役から手続違反を指摘される可能性が残る。場合によっては、固定資産の売買の無効・違法性が争われ、取締役が善管注意義務・忠実義務違反(会社法355条、423条)に基づく損害賠償責任を問われる事態も想定される。


会社法362条4項 : 取締役会は、「重要な財産の処分及び譲受け」「多額の借財」「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」等の事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない旨を定めている。

「取締役会決議の不存在」の発覚後は、事後であっても速やかに取締役会に付議し、正式に採決すべきである。なぜなら、事後決議により、未決議という不完全な状態は解消され、瑕疵が一定程度追完されるからだ。事後的に取締役会決議を行う場合、次の点に留意する必要がある。・・・


瑕疵が一定程度追完 : 瑕疵の追完とは、決議が存在しないというミスがなくなったかのように評価されること。もっとも、追認(事後決議)後も、当初の不作為については取締役の責任が問われ得るため、「一定程度」と記載した。

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2025/08/25 取締役会決議の不存在発覚後の対応(会員限定)

取締役会での決議が必須とされる事項を「決議を経ずに」実行してしまう事例は、企業規模を問わず発生している。社内規程で、固定資産の取得・売却など一定金額以上の取引を取締役会決議事項と定めている企業は多いが、現場担当者の失念や手続きの錯誤により、取締役会決議を行わないまま契約や引渡しが完了してしまうことは珍しくない。このような場合、「既に取引は終わった」「株主総会と違い外部に露見する可能性は低い」「役員が一部入れ替わっており、今さら諮りづらい」と考え、事後決議はおろか取締役会での共有をためらう役員も存在するかもしれない。しかし、これは極めて危うい判断である。

会社法上、取締役会設置会社においては、「一定の重要事項」(会社法362条4項)を取締役会決議によることが義務付けられている。したがって、例えば固定資産の売買が完了したとしても、それが取締役会の決議を経ていなければ、法的には未決議の状態が継続していることになり、株主や監査役から手続違反を指摘される可能性が残る。場合によっては、固定資産の売買の無効・違法性が争われ、取締役が善管注意義務・忠実義務違反(会社法355条、423条)に基づく損害賠償責任を問われる事態も想定される。


会社法362条4項 : 取締役会は、「重要な財産の処分及び譲受け」「多額の借財」「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」等の事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない旨を定めている。

「取締役会決議の不存在」の発覚後は、事後であっても速やかに取締役会に付議し、正式に採決すべきである。なぜなら、事後決議により、未決議という不完全な状態は解消され、瑕疵が一定程度追完されるからだ。事後的に取締役会決議を行う場合、次の点に留意する必要がある。


瑕疵が一定程度追完 : 瑕疵の追完とは、決議が存在しないというミスがなくなったかのように評価されること。もっとも、追認(事後決議)後も、当初の不作為については取締役の責任が問われ得るため、「一定程度」と記載した。

□ 事実関係の調査
いつ・誰が・どのような経緯で決議なしに実行したのかを記録。
□ 再発防止策の策定
どうすれば防げたのかを検証し、再発防止策を定め、実行に移す。職務権限一覧等の規程に不備がある場合は規程を改める。
□ 社内処分
担当者等に規律違反があったことが確認されれば、その者への社内処分を課す。
□ 取締役会の再招集
本来必要だった議案を正式に付議し、改めて決議する。
決議日と効力発生日の関係を整理(遡及させるかは慎重に検討)。
□ 議事録・記録の整備
議事録には、「既に実行されているが、手続上の瑕疵があったため、本日正式に決議する」旨を明記。
□ 必要に応じて外部に説明
上場会社であれば適時開示や訂正報告書の公表を検討。その際には、証券取引所に事前相談する。


遡及 : 原則として、追認(事後決議)後は契約の有効性が遡って認められる(民法116条)が、第三者の権利を害する場合には遡及しない。

上場会社において取締役会決議不存在が発覚した後の対応の実例を見てみよう。2025年7月31日、東証スタンダードに上場するREVOULTIONは株主優待制度の廃止を取締役会で事後決議した(同社の取締役会事後決議についてのリリースはこちら)。同社は同年3月11日付の適時開示で「取締役会決議の上、株主優待制度を廃止した」と公表していたが、実際には取締役会で決議がなされていなかったことが、7月14日に公表された第三者委員会調査報告書で判明(同社の株主優待制度の顛末については2025年7月22日のニュース「“幻の株主優待制度”から見えるガバナンス上の問題点」を参照)。これを受け、同社は改めて正式な取締役会決議を行った。

REVOULTIONのケースでは第三者委員会の調査で取締役会決議の不存在が判明したが、一般的には内部監査や監査役監査で発覚することも十分に考えられる。取締役会決議の不存在が発覚すれば、意思決定の正当性はもちろん、ガバナンス体制にも懐疑の目が向けられることになるが、“もみ消し”は論外であり、それこそ市場との信頼関係を決定的に損なうことになりかねない。透明性ある是正措置を早急に打ち出し、過ちを正す姿勢を社内外に示すことが求められよう。