2019/11/28 内部監査の活性化策

三様監査(監査役監査、会計監査人の監査、内部監査)の一角を占める「内部監査」は、コーポレートガバナンスの要と言っても過言ではない。この内部監査を説明するにあたり、「社長の手足となって業務が法令や社内規程に則っているかどうかを監査する」という説明がなされることがある。この「社長の手足となって」という部分は、組織図上、内部監査部門が社長の直轄となっていることを意味しており、実際そのような組織図(社長から直接内部監査部門に線が伸びている組織図)を有価証券報告書で公表している会社が大半である。しかし、その“常識”にも例外があることは知っておきたい。・・・

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2019/11/28 内部監査の活性化策(会員限定)

三様監査(監査役監査、会計監査人の監査、内部監査)の一角を占める「内部監査」は、コーポレートガバナンスの要と言っても過言ではない。この内部監査を説明するにあたり、「社長の手足となって業務が法令や社内規程に則っているかどうかを監査する」という説明がなされることがある。この「社長の手足となって」という部分は、組織図上、内部監査部門が社長の直轄となっていることを意味しており、実際そのような組織図(社長から直接内部監査部門に線が伸びている組織図)を前提としたコーポレート・ガバナンスの体制図を有価証券報告書の【コーポレートガバナンスの状況】で公表している会社が大半である。しかし、その“常識”にも例外があることは知っておきたい。

日本監査役協会が監査等委員会設置会社の会員を対象に実施したアンケート結果によると、内部監査部門が「社長に直属している」会社は433社中338社と、回答のあった会社の78%にとどまっている(同アンケートの問4-5参照)。すなわち、「社長に直属していない」会社が2割程度存在しているということだ。

内部監査部門を「社長に直属させない」のにはワケがある。最大の理由が「社長へのけん制効果」である。もちろん「社長に直属している」会社であっても、理屈上は社長を監査対象にすることは可能だ。しかし、誰しも自分の上司(社長)の不正を暴くのは気が進まないであろうし、調査に気付いた社長が内部監査にブレーキをかけてくる可能性もある。内部監査部門を社長に直属させないことで、そのような遠慮や隠ぺいの懸念を相当程度減らすことができる。また、ガバナンスの構築に思慮深く取り組んでいるという印象を投資家に与える効果も期待できよう。

上記アンケート結果によると、内部監査部門が「社長に直属していない」会社のうち、社長以外の取締役に直属している会社は33社(6.5%)、取締役会に直属している会社は18社(3.6%)、監査等委員会に直属している会社は31社(6.1%)ある。特に興味深いのが「監査等委員会に直属している会社」の存在だ。社内では圧倒的少数派の立場にある内部監査部門と監査等委員会がタッグを組むことで、より効果的で独立性の高い内部監査の遂行が期待できる(ただし、内部監査部門が監査等委員会との違いを打ち出せなければ、内部監査部門の存在意義が薄れるリスクもある)。

また、金融庁に設置されている「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)は、社長あるいは社長の取り巻きといった「経営陣幹部」の不正に対する内部監査の結果が隠蔽されないよう、内部監査のレポートラインに取締役会、監査役会(監査等委員会)を加えることを推奨している(同会議が2019年4月24日に公表した意見書(4)「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」参照。なお、内部監査のレポートラインについては2019年5月10日のニュース「CEOの圧力に屈しない内部監査部門を構築する方法」も参照)。

内部監査部門の直属先を変更(例えば社長直属から監査等委員会の直属に変更)するとなると、例えば稟議のライン、人事考課のライン等の変更が必要になるなど、大がかりな組織変更となる。それでも内部監査の機能が弱いと自認する会社にとっては取り組む価値は“大”と言えるが、フォローアップ会議が推奨するように内部監査部門のレポートラインを追加するだけであればよりハードルは低い。現在は内部監査部門を社長の直属としている会社も、一度検討してみるべきだろう。

2019/11/27 年末年始休業のお知らせ

誠に勝手ながら、2019年12月28日~2020年1月7日は
事務局の年末年始休業となります。
ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い致します。

なお、会員登録は冬季休業期間中もオンラインにて可能です。
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2019/11/27 株主提案権の濫用的行使制限規定の一部が消滅

2012年6月開催の野村ホールディングスの株主総会で“野菜ホールディングス”への商号変更が議案に上るなど、近年株主提案の濫用に近いケースが散見されることを受け、現在会期中の臨時国会に提出されている会社法改正案には、株主提案権の濫用的な行使を制限する規定が盛り込まれていたが、・・・

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2019/11/27 株主提案権の濫用的行使制限規定の一部が消滅(会員限定)

2012年6月開催の野村ホールディングスの株主総会で“野菜ホールディングス”への商号変更が議案に上るなど、近年株主提案の濫用に近いケースが散見されることを受け、現在会期中の臨時国会に提出されている会社法改正案には、株主提案権の濫用的な行使を制限する規定が盛り込まれていたが、その一部の規定が消滅することとなった。

株主提案権の濫用的な行使を制限する規定とは、(1)株主が提案することができる議案数の上限を10とする(改正会社法305条4項、5項)、(2)不当な目的等による株主提案を拒絶できることとする(改正会社法304条ただし書、305条6項)――の2つ(2018年1月19日のニュース『株主提案議案数を制限する会社法改正案 「数」と「数え方」が焦点に』、2018年10月16日のニュース「社外取選任のための員数拡大と責任限定契約導入議案は“一の議案”か?」参照)。今臨時国会に提出されている会社法改正案は、11月22日の衆議院法務委員会において上記(2)が削除されたうえで11月26日の衆議院本会議で可決し、参議院に送付されている。

不当な目的等による株主提案を拒絶できる場合とは、(1)法令又は定款に違反する場合、(2)専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、困惑させ、又は自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的の場合、(3)株主提案により株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合、(4)実質的に同一の議案につき株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合――を指す。

衆議院法務委員会では、野党側から、「不当な目的等」については判断基準の裁量の余地が大きく、株主の権利を不当に制約する可能性があるとの指摘があり、最終的には与党もこれに合意、その結果、「不当な目的等による株主提案を拒絶することができる」との規定を削除する旨の修正法案が与野党から提出され、全会一致で可決された。

株主提案の議案数の上限を10とする規定は存置されたとはいえ、企業にとっては株主からの“困った提案”が出て来る懸念を残す法案修正と言えそうだ。

2019/11/26 「ESGに課題のある銘柄」を保有するESG投資

日本シェアホルダーサービス株式会社
シニアアナリスト 水嶋 創

 

ESG投資は、今や投資のメインストーリーム(本流)であると言われているが、その具体的な手法は一様ではない。環境・社会・ガバナンスの要素を投資においてどのように考慮し、活かしていくかについては様々な考え方がある。

一般にイメージしやすいのは、ESGの観点で優れた銘柄に投資するという「ポジティブ・スクリーニング」であろう。例えば、・・・

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2019/11/26 「ESGに課題のある銘柄」を保有するESG投資(会員限定)

日本シェアホルダーサービス株式会社
シニアアナリスト 水嶋 創

 
ESG投資は、今や投資のメインストーリーム(本流)であると言われているが、その具体的な手法は一様ではない。環境・社会・ガバナンスの要素を投資においてどのように考慮し、活かしていくかについては様々な考え方がある。

一般にイメージしやすいのは、ESGの観点で優れた銘柄に投資するという「ポジティブ・スクリーニング」であろう。例えば、世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内株式について下記の4つのESG指数()を選定し、これらをベンチマークとしたパッシブ運用を行っている。4つの指数のうちS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数を除く3つは、いわゆるESGスコアの高い企業から構成される指数であり、典型的なポジティブ・スクリーニングの考え方に立っている。概ね170~250銘柄がこれらの指数に組み込まれている。残りの1つであるS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数は、東証一部上場企業の8割以上が組み込まれている幅広い指数であるものの、温室効果ガスに関する開示が優れた企業のウエイトを高める仕組みとなっており、やはりポジティブ・スクリーニングの性質を持つと言えるだろう。

パッシブ運用 : パッシブ(「消極的」なという意味)運用とは、東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法であり、そのような運用手法を採用する投資家をパッシブ投資家という。ファンドマネジャーが独自に銘柄を選択して運用する「アクティブ運用」とは対極の関係にある。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

 (1)ロンドン証券取引所が100%出資する投資指数算出会社FTSE RussellによるESG全般を考慮に入れた「総合型」指数「FTSE Blossom Japan Index」、(2)米国の投資指数算出会社MSCIによる同様の総合型指数「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」、(3)同じくMSCIによる性別多様性に優れた企業を対象とする「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」、(4)ならびにS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社による炭素効率性等に優れた企業を対象とする「S&P/JPXカーボンエフィシエント指数」。(2017年7月6日のニュース「GPIFの新しいESG指数に約360社が選定」参照)、2018年10月9日のニュース「東証1部上場企業の8割がESG投資の対象に」参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

一方、「ダイベストメント」(投資の引き揚げ)に重点を置く「ネガティブ・スクリーニング」という手法もある。有名なのは、ノルウェーの政府系ファンド「ノルジスバンク・インベストメント・マネジメント」による“石炭ダイベストメント”である。同ファンドは、石炭や石炭火力発電からの売上が全体の30%以上を占める企業を投資対象から除外している。石炭以外には武器やタバコ、重大な人権侵害などがダイベストメントの対象となることが多いようだ。

このように優れた銘柄を選別する、あるいは問題のある銘柄を除外する「スクリーニング」に対し、ESGの観点で課題のある企業であっても、その株式の保有を続け、対話(エンゲージメント)や議決権行使を通じて改善を促すという方法もある。世界的にパッシブ運用の人気が高まっている(2019年2月7日のニュース「“パッシブ化”の進行と東証の市場構造の見直しが与える株価への影響」参照)が、パッシブ運用とはTOPIX、日経225などの株価指数への連動を目指す手法であるため、特定の銘柄を選別する、あるいは除外すると言ったスクリーニングが難しい。それだけに、ポートフォリオを変更せず「エンゲージメント」や「議決権行使」を通じてESGの観点で課題のある企業であっても株式の保有を続けるという手法はパッシブ運用に馴染みやすいともいえよう。PRI(責任投資原則)が本年(2019年)8月に公表したパッシブ運用におけるESG投資に関するディスカッション・ペーパーでも、企業との対話や議決権行使の有用性が指摘されている。また、アクティブ運用でも、投資を引き揚げるよりも、株式を保有し企業との対話を続けることでESG課題の解決を図るべきと考える年金基金や運用会社も多い。

PRI(責任投資原則) : (国連)PRIとは「(United Nations) Principles for Responsible Investment」の略で、機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するもの。これに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
パッシブ運用 : 銘柄を選別し、魅力のある銘柄を購入する一方で、見劣りする銘柄を売却するなどして利益を得ようとする投資手法(以下、アクティブ運用)をとる投資家のこと。アクティブ運用はパッシブ運用の対極の概念であり、運用担当者(ファンド・マネージャー)が、株式市場や投資銘柄などを調査し、今後の動向を予測することでポートフォリオを決定する。市場の平均的な収益率をベンチマークとし、これを上回る運用成果を上げることを目標にすることが多い。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

企業側から見れば、ESGに課題を抱えていても、必ずしも直ちに投資を引き揚げられる(ダインベストメント)というわけではないということだ。「ダイベストメント」か「エンゲージメント」かというテーマは、当面の間、ESG投資におけるホットイシューとなろう。

 
 
 
 
 

2019/11/25 IR優良企業に共通する2つのポイント

日本IR協議会(JIRA)は(2019年)11月14日、「IR優良企業賞2019」の受賞企業を公表した。この賞は毎年、優れたIR活動を実施している企業をJIRA会員企業の中から選定するもので、応募企業が申告する「調査票」の結果を踏まえ、アナリストや投資家、報道機関などで構成される審査委員会が決定する。さらに、優良企業賞の受賞が3回目となる企業は「大賞」として表彰される。また、長期間にわたって優れたIRを継続している企業や、顕著なIRを実施していた企業を称える「特別賞」、IRに熱心な中・小型株企業を対象とする「IR優良企業奨励賞」も設けられている。

今年度の受賞企業は14社であった。各賞の内訳はIR優良企業大賞1社(三菱UFJフィナンシャル・グループ)、IR優良企業賞7社(アサヒグループホールディングス、花王、ソニー、ダイキン工業、丸井グループ、三井住友フィナンシャルグループ、三井物産)、IR優良企業特別賞4社(積水化学工業、日本電信電話、日立建機、横川電機)、IR優良企業奨励賞2社(テクノプロ・ホールディングス、メタウォーター)となっている。

JIRAはウェブサイトで受賞企業の特徴および選定理由を説明しているが、それらを見ると、各社にほぼ共通して見られる評価ポイントが2つ浮かび上がってくる。1つは・・・

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2019/11/25 IR優良企業に共通する2つのポイント(会員限定)

日本IR協議会(JIRA)は(2019年)11月14日、「IR優良企業賞2019」の受賞企業を公表した。この賞は毎年、優れたIR活動を実施している企業をJIRA会員企業の中から選定するもので、応募企業が申告する「調査票」の結果を踏まえ、アナリストや投資家、報道機関などで構成される審査委員会が決定する。さらに、優良企業賞の受賞が3回目となる企業は「大賞」として表彰される。また、長期間にわたって優れたIRを継続している企業や、顕著なIRを実施していた企業を称える「特別賞」、IRに熱心な中・小型株企業を対象とする「IR優良企業奨励賞」も設けられている。

今年度の受賞企業は14社であった。各賞の内訳はIR優良企業大賞1社(三菱UFJフィナンシャル・グループ)、IR優良企業賞7社(アサヒグループホールディングス、花王、ソニー、ダイキン工業、丸井グループ、三井住友フィナンシャルグループ、三井物産)、IR優良企業特別賞4社(積水化学工業、日本電信電話、日立建機、横川電機)、IR優良企業奨励賞2社(テクノプロ・ホールディングス、メタウォーター)となっている。

JIRAはウェブサイトで受賞企業の特徴および選定理由を説明しているが、それらを見ると、各社にほぼ共通して見られる評価ポイントが2つ浮かび上がってくる。1つは「経営トップの関与」だ。今や上場企業の経営トップにとって、自らが主導してIR活動やエンゲージメントを行うことは当然の責務とみなされている。受賞企業の経営トップについても「積極的」「意欲的」「対話を重視」などのスタンスが高く評価された。

もう1つは「非財務的な企業価値」、具体的にはESGSDGs、コーポレートガバナンスといった持続的な企業価値の向上を導き出すための仕組みや取り組みである。例えば、ESG説明会の開催(三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソニー)、統合報告書の作成(ソニー、丸井グループ)、SDGsを用いた説明(日立建機)などが示されている。上場企業が投資家に評価されるためには、短期的な財務数値に偏った旧来型のIRではなく、中長期の非財務的価値に着目した対話が必要であるということが、今回の受賞企業の特徴と選定理由から明らかになったと言えそうだ。

ESG : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。ESG投資とは文字通り「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資することをいう。
SDGs : 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、「エスディージーズ」と読む。「人間、地球及び繁栄」のための行動計画として国連が掲げる世界共通の目標であり、下図の17の目標と169のターゲットからなる。2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」において150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択され、2016年から2030年までの15年間での達成を目指している。

  経営トップの関与 非財務の企業価値
三菱UFJフィナンシャル・グループ 継続して経営トップがIRに関与し、決算説明会や投資家訪問など積極的な対話姿勢を示している 社外取締役が課題を含めた率直な指摘をするESG説明会などが注目を集めた
アサヒグループホールディングス 経営トップは対話の機会を積極的に設け、経営課題や成長戦略についても深い議論ができる コーポレートガバナンスについても取締役会の実効性評価など株主が関心を持つ領域の説明を充実
花王 経営トップが主導してIRのレベルを向上させている。社長自ら説明を尽くす姿勢への評価が高い 2019年にESG戦略を発表し、ESGを経営の核に据えて企業価値向上を目指す方針を明確化
ソニー 経営トップとCFOが株主・投資家との対話を重視し、中長期の企業価値向上に活かす姿勢を貫いている ESG説明会に加えて統合報告書も発行し、ESGへの取り組みを進めている
ダイキン工業 ESGとの親和性が高い事業の情報発信が効果的で、ESG説明会や事業説明会への評価が高い
丸井グループ 経営トップとCFOの積極姿勢は高く評価 2015年から発行する統合報告書や「共創サステナビリティ説明会」も注目を集めている
三井住友フィナンシャルグループ 経営トップによる定期的な株主・投資家との対話や、経営層による投資家訪問が高く評価されている
三井物産 「インベスターデイ」を総合商社で先進的に開催し、経営トップも関与するなど高水準の活動を継続
積水化学工業 経営トップや事業責任者が投資家と戦略や課題について積極的に議論している ESG対応も、説明会などで効果的に発信している
日本電信電話 経営トップが中期経営戦略の進捗や株主還元の方向性を、資本効率に関わるKPIを活用して説明 ESGへの取り組みも紹介し内容を充実、ガバナンスの課題への対応を率直に示した
日立建機 現在の経営トップの積極的な姿勢には定評があり、投資家との対話機会が充実している 中核事業とSDGsに対する取り組みとを関連付ける資料づくりにも取り組んでいる
横河電機 経営トップが投資家との対話を重視し、情報開示を推進している 課題を踏まえた中長期視点でのESG対応の進展も注目されている
テクノプロ・ホールディングス 経営トップが意欲的にIR活動に取り組み、経営方針も明確に示している コーポレートガバナンス強化に向けての施策も説明している
メタウォーター 経営トップやIR部門は、国や自治体などの取り組みと合わせて事業モデルをわかりやすぐ説明 「メタウォーターレポート」を作成し、ESGの視点を反映している点も評価されている

2019/11/22 監視委の課徴金納付命令勧告・最新事例 自社が被害者になるケースも(会員限定)

インサイダー取引・相場操縦等の不公正取引に対する調査や上場企業等のディスクロージャー違反に対する開示検査等を手掛ける証券取引等監視委員会(以下、監視委)は先月(2019年10月)23日に「開示検査事例集」を公表しているが、同事例集は上場企業が内部統制を構築するうえで参考になる情報が豊富なだけに、経営陣にとっては毎年チェックすべき資料と言える。

下表は、平成30事務年度(平成30年7月~令和元年6月)に監視委が行った開示検査38件のうち課徴金納付命令勧告を行った10件について、不正の内容や課徴金額など概要をまとめたもの(なお、同事例集には企業名は記載されておらず、当フォーラムが追記している)。ただし、38件のうち開示検査が終了した事例は22件にすぎない。すなわち、開示検査が終了した22件のうち半数近い10件が課徴金を科されたことになる。残りの16件について課徴金納付命令勧告が行われるかどうかは、今後の監視委の検査結果次第となる。

平成30事務年度の開示検査による課徴金納付命令勧告事例
事例 企業名 対象 事例の特徴 主な虚偽記載 課徴金の額
子会社不正 売上水増し
循環取引 左以外
1 昭光通商の事例
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子会社による架空売上の計上等 連結当期純利益が▲1,192百万円であるところを224百万円と記載 2,400万円
2 東邦金属の事例
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架空売上の計上 当期純利益が▲33百万円であるところを91百万円と記載 1,200万円
3 RS Technologiesの事例
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架空売上の計上 連結当期純利益が152百万円であるところを304百万円と記載 600万円
4 UKCホールディングスの事例
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貸倒引当金の過少計上等 連結当期純利益が2,276百万円であるところを4,037百万円と記載 1,800万円
5 神栄の事例
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子会社による架空売上の計上 親会社株主に帰属する当期純利益が96百万円であるところを350百万円と記載 1,200万円
6 ディー・エル・イーの事例
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売上の過大計上 親会社株主に帰属する当期純利益が▲615百万円であるところを142百万円と記載 1億3,540万円
7 イメージ情報開発の事例
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売上の前倒し計上 連結当期純利益が▲8百万円であるところを12百万円と記載 600万円
8 省電舎ホールディングスの事例
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子会社による売上の過大計上等 親会社株主に帰属する当期純利益が▲195百万円であるところを57百万円と記載 3,442万円
9 トレイダーズホールディングスの事例
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のれんの減損損失の不計上等 親会社株主に帰属する四半期純利益が▲2,662百万円であるところを▲1,014百万円と記載 1億 3,170万円
10 ストリームの事例
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訂正届出書の不提出 新株予約権証券の割当予定先や保有方針が変更されたのに訂正しなかった。 1,391万円

まず気になるのは、課徴金の額であろう。課徴金の額は株価の時価総額に10万分の6を乗じて算定されるため、虚偽記載の額とは関係がない。課徴金の額が虚偽記載の額に比例していないのはこのためであり、時価総額が大きい企業ほど課徴金の額が大きくなる。また、虚偽記載を行っていた期間が長ければ、その間に有価証券報告書や四半期報告書を複数回提出することになり、それに比例して課徴金の額も膨れ上がることになる。さらに、重要な虚偽記載をしていた時期に有価証券届出書の届け出を伴う資金調達をしていると、調達額の100分の4.5が課徴金に加算されるため、資金調達額次第で多額の課徴金が算定されることになる。ディー・エル・イーとトレイダーズホールディングスの課徴金が1億円超と、10社の中でも突出して高額になっているのはそれが主因だ。

不正の態様としては、「子会社不正」と「売上水増し」の多さが目に付く。多くの子会社不正には、親会社かのコントロール不足に大きな原因がある。2019年6月28日には経済産業省のCGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会(第2期))が、上場子会社の利益相反構造に関する実務指針である「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」を公表しているが(2019年5月7日のニュース「グループ・ガバナンス実務指針案、上場子会社の扱いに“特段の配慮” 」、2019年10月25日のニュース「上場子会社のガバナンス確保に向けた方針の開示始まる」、【WEBセミナー】グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針への企業の対応 参照)、子会社を有する上場企業は同実務指針を参考にしながら、自社がグループ・ガバナンスを十分に構築できているか、点検する必要があろう。

また、売上水増しは粉飾額も大きくなるため、監視委に「重要な虚偽記載」があったと判定されやすい。売上水増し事例の中では、事例1~3が循環取引によるものとなっている点も注目される(事例1と2は違う上場会社が同じ案件に巻き込まれたものと思われる)。循環取引で注意しなければならないのは、自社が“被害者”となるケースもあるという点だ。監視委ではこれらの循環取引事例について、「これらの取引を開始するに当たり仕入先と販売先が決められていたこと」「各社の一部経営陣等の中には、仕入先と販売先の会社代表者が同一人物である、又は取引先の会社代表者と緊密な関係にあることを把握していたこと」からすれば、「これらの取引は、取引先の資金繰りに寄与するだけであり、取引に参加する合理性が不明瞭な取引であった」と分析している。循環取引にはこのような独特の兆候が散見されることから、自社が同様の被害にあわないためにも、取締役や監査役・内部監査部門には、過去に発生した循環取引事例の研究と自社が巻き込まれないようにするための内部統制の構築が望まれる。例えば、新規取引の承認の際には、必ず商流を確認し、「自社が取引に参加する合理性」をチェックするようにしたい。

循環取引 : 特定の関係者の間で利益を乗せて売買を繰り返す取引。経済的実態の伴わない取引であり、最終的には関係者の利益が乗った高値で買い戻す必要があるため、粉飾取引の一つに位置付けられている。

監視委の開示検査事例集には平成30事務年度の事例だけでなく、過去の開示検査の事例も多数収録されており、過去の事例を学ぶには格好のデータベースとなっている。自社の内部統制の点検、再構築にあたっては、直近の事例のみならず、過去の事例も分析しておきたいところだ。