ESG投資は、今や投資のメインストーリーム(本流)であると言われているが、その具体的な手法は一様ではない。環境・社会・ガバナンスの要素を投資においてどのように考慮し、活かしていくかについては様々な考え方がある。
一般にイメージしやすいのは、ESGの観点で優れた銘柄に投資するという「ポジティブ・スクリーニング」であろう。例えば、世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内株式について下記の4つのESG指数(*)を選定し、これらをベンチマークとしたパッシブ運用を行っている。4つの指数のうちS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数を除く3つは、いわゆるESGスコアの高い企業から構成される指数であり、典型的なポジティブ・スクリーニングの考え方に立っている。概ね170~250銘柄がこれらの指数に組み込まれている。残りの1つであるS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数は、東証一部上場企業の8割以上が組み込まれている幅広い指数であるものの、温室効果ガスに関する開示が優れた企業のウエイトを高める仕組みとなっており、やはりポジティブ・スクリーニングの性質を持つと言えるだろう。
パッシブ運用 : パッシブ(「消極的」なという意味)運用とは、東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法であり、そのような運用手法を採用する投資家をパッシブ投資家という。ファンドマネジャーが独自に銘柄を選択して運用する「アクティブ運用」とは対極の関係にある。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
* (1)ロンドン証券取引所が100%出資する投資指数算出会社FTSE RussellによるESG全般を考慮に入れた「総合型」指数「FTSE Blossom Japan Index」、(2)米国の投資指数算出会社MSCIによる同様の総合型指数「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」、(3)同じくMSCIによる性別多様性に優れた企業を対象とする「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」、(4)ならびにS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社による炭素効率性等に優れた企業を対象とする「S&P/JPXカーボンエフィシエント指数」。(2017年7月6日のニュース「
GPIFの新しいESG指数に約360社が選定」参照)、2018年10月9日のニュース「
東証1部上場企業の8割がESG投資の対象に」参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
一方、「ダイベストメント」(投資の引き揚げ)に重点を置く「ネガティブ・スクリーニング」という手法もある。有名なのは、ノルウェーの政府系ファンド「ノルジスバンク・インベストメント・マネジメント」による“石炭ダイベストメント”である。同ファンドは、石炭や石炭火力発電からの売上が全体の30%以上を占める企業を投資対象から除外している。石炭以外には武器やタバコ、重大な人権侵害などがダイベストメントの対象となることが多いようだ。
このように優れた銘柄を選別する、あるいは問題のある銘柄を除外する「スクリーニング」に対し、ESGの観点で課題のある企業であっても、その株式の保有を続け、対話(エンゲージメント)や議決権行使を通じて改善を促すという方法もある。世界的にパッシブ運用の人気が高まっている(2019年2月7日のニュース「“パッシブ化”の進行と東証の市場構造の見直しが与える株価への影響」参照)が、パッシブ運用とはTOPIX、日経225などの株価指数への連動を目指す手法であるため、特定の銘柄を選別する、あるいは除外すると言ったスクリーニングが難しい。それだけに、ポートフォリオを変更せず「エンゲージメント」や「議決権行使」を通じてESGの観点で課題のある企業であっても株式の保有を続けるという手法はパッシブ運用に馴染みやすいともいえよう。PRI(責任投資原則)が本年(2019年)8月に公表したパッシブ運用におけるESG投資に関するディスカッション・ペーパーでも、企業との対話や議決権行使の有用性が指摘されている。また、アクティブ運用でも、投資を引き揚げるよりも、株式を保有し企業との対話を続けることでESG課題の解決を図るべきと考える年金基金や運用会社も多い。
PRI(責任投資原則) : (国連)PRIとは「(United Nations) Principles for Responsible Investment」の略で、機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するもの。これに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
パッシブ運用 : 銘柄を選別し、魅力のある銘柄を購入する一方で、見劣りする銘柄を売却するなどして利益を得ようとする投資手法(以下、アクティブ運用)をとる投資家のこと。アクティブ運用はパッシブ運用の対極の概念であり、運用担当者(ファンド・マネージャー)が、株式市場や投資銘柄などを調査し、今後の動向を予測することでポートフォリオを決定する。市場の平均的な収益率をベンチマークとし、これを上回る運用成果を上げることを目標にすることが多い。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
企業側から見れば、ESGに課題を抱えていても、必ずしも直ちに投資を引き揚げられる(ダインベストメント)というわけではないということだ。「ダイベストメント」か「エンゲージメント」かというテーマは、当面の間、ESG投資におけるホットイシューとなろう。