上場企業にとって、「創業家」の存在はメリットとデメリットの両方を併せ持つと言われる。創業時を知る古参の従業員にとって創業者は精神的支柱であり、創業者が引退した後も折に触れて創業家が求心力を発揮するという話はしばしば耳にする。また、創業家が経営に関わる同族経営の方が長期的視野に基づく経営を行いやすく、利益率も高くなる傾向にあることから、創業家の存在は投資家にとっても必ずしもネガティブなものではない(投資家の同族経営に対する評価は2018年11月13日のニュース「オーナー色の強い上場企業に見られる共通点」を参照)。一方で、創業家やその“取り巻き”が会社を私物化し、その結果、ガバナンスが低下するとともに不正を引き起こすリスクが否定できないということは「デメリット」と言える。
創業者である前代表取締役が逮捕されるという衝撃的な事件が起きたすてきナイスグループ(東証一部)では、創業家、とりわけ平田恒一郎前代表取締役会長による経営に対する強い影響力が不正(同社における不正の内容や前代表取締役会長の不正への関与については【失敗学第62回】すてきナイスグループの事例を参照)の原因の一つであったとして、「創業家(平田家)との決別」の方針を固め、「創業家との関係整理委員会」を設置することとなった(同社のリリースはこちら)。創業家が存在することのデメリットが表面化したのが同社のケースと言えよう。
同社の「創業家との関係整理委員会」は外部の弁護士を中心に構成され、今後は以下のような形で創業家との関係の整理を図っていく方針を示している。
・平田家、または同家と密接な関係を有する元取締役および元監査役等の排除
・平田家の当社グループに対する影響力の排除
・平田恒一郎前代表取締役会長が支配している会社(平田氏が実質的に株式を有するエイワグループなど)との取引関係の解消または正常化
「創業家との関係整理委員会」の活動は社外役員の監督に服する。具体的には、同委員会の活動の方針や進捗状況は適宜社外役員に報告され、社外役員が内容をチェックする。
さらに同社では、指名・報酬委員会のメンバーを刷新し、今後は社外取締役2名(うち1名が委員長となる)と現代表取締役社長の合計3名による体制とする。創業家の影響力を排除しつつ、社外役員による監督機能の強化を図る。
日本の上場企業の概ね半数が同族経営の下にあるとされ、このような企業にはすてきナイスグループで起きた問題が生じ得る素地がないとは言い切れない。すてきナイスグループにおける不正の大きな原因となった創業家が実質支配する “隠れ子会社”(自社の持分がゼロで現状は子会社として扱っていないものの、実態を考慮すると連結(ゼロパーセント連結)すべき会社)との取引は存在していないか――管理担当取締役や監査役は定期的に確認しておくべきだろう。
