2019/05/31 【役員会 Good&Bad発言集】引当金戻入益の表示(会員限定)

<解説>
販管費のマイナス表示、違和感あるもやむを得ず

将来の費用または損失であり、その費用または損失が当期以前の事象に起因して発生するものであり、発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積ることができるのであれば、引当金を計上しなければなりません。将来の債権の貸し倒れ(の可能性)に備えて計上しておく貸倒引当金や来期に支払う予定の賞与のうち当期の負担分を計上しておく賞与引当金などは多くの企業で見受けられる引当金です。

引当金の繰入額はその性質に応じて営業費用または営業外費用(場合によっては特別損失)に計上します。例えば、通常の事業会社における貸倒引当金繰入額を例にすると、営業上の取引に基づく債権に対するものであれば販売費及び一般管理費、営業外の取引に基づく債権に対するものであれば営業外損益に計上することとなります。

期末に引当金の金額を改めて算定し直した結果、引当金の戻入れが発生することがあります。企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」55項によると、引当金の戻し入れが前期に見積りをした際に見積り誤りがあり引当金を多額に計上してしまったことが理由であれば、それは前期の見積もり時点において誤謬(誤り)があったため戻入れが生じたのであり、修正再表示(具体的には過去の財務諸表における誤謬の訂正を財務諸表に反映させます)を行うこととなります。一方、前期に見積りをした際にその時点において入手可能な情報に基づき最善の見積りを行っていたのであれば、当該差額は当期中における状況の変化により会計上の見積りの変更を行ったときの差額、または実績が確定したときの見積金額との差額と言え、その性質に応じて、当期の営業損益または営業外損益として表示することとなります。具体的には、販売費及び一般管理費から控除するか、営業外費用から控除するか、営業外収益として表示することになります。その結果、販売費及び一般管理費の区分に貸倒引当金繰入額がマイナス表示されることもあります。これは販売費及び一般管理費が本来的に費用の一覧であることを考慮すると違和感があるのですが、損益計算書の構成上いたしかたないと言えます。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら
取締役C:「以前にわが社の損益計算書でも販売費及び一般管理費の貸倒引当金繰入額がマイナス表示になっていたことがあります。また、貸倒引当金戻入益が販売費及び一般管理費(のマイナス)とは別に営業外収益でも計上されているということは、同じ貸倒引当金戻入益であっても、性質が異なっている可能性があります。性質が異なっているのであれば取締役Bのおっしゃる『合算』はすべきではないと考えます。」
コメント:販売費及び一般管理費に貸倒引当金繰入額がマイナスとして表示されるのはそれほど珍しいことではありません。取締役Cは過去にY社でも同様のケースがあったことを覚えていました。また、取締役Cの発言は、販売費及び一般管理費で貸倒引当金繰入額をマイナスとして表示(内容は貸倒引当金戻入益)しつつ、営業外収益にも貸倒引当金戻入益が表示されているという点に着目して、2つの戻入益には営業取引に基づく債権に係る貸倒引当金の戻入益と営業外取引に基づく債権に係る貸倒引当金の戻入益といった性質の違いがあることに気付いた上での発言であり、Goodです。
BAD発言はこちら
取締役A:「損益計算書で販売費及び一般管理費の貸倒引当金繰入額の金額がマイナスで表示されていますね。『費用のマイナス』ということは結局『収益』を意味しているのですから、販売費及び一般管理費にマイナスで表示するのではなく、営業外収益に記載すべきではないでしょうか。子会社の経理部の人材は当社ほど充実していないからこういうミスも起きるのでしょうね。親会社から経理の人材を出向させた方が良いのではないでしょうか。」
コメント:「『費用のマイナス』ということは結局『収益』を意味している」という理解はあっています。しかし、「ミス」と言い切ってしまうのは、そもそも引当金戻入益が販売費及び一般管理費にマイナス表示されることがあるという前提知識を欠いた発言であり、Bad発言です
取締役B:「営業外収益にも貸倒引当金戻入益がありますね。これと販売費及び一般管理費に記載されているマイナスの貸倒引当金繰入額とを合算した額を営業外収益に表示すればよかったというわけですかね。その修正をすると営業利益が減ってしまいますね。」
コメント:確かに販売費及び一般管理費に含まれる「マイナスの金額」を営業外収益に移動させれば、営業利益は減額となります。しかし、そもそも販売費及び一般管理費と営業外収益の双方に貸倒引当金戻入益が計上しているということは、両者を性質の違いに応じて区分していることの証左とも言え、性質の違うものを単純に合算することはできません。取締役Bの発言は、貸倒引当金戻入益を販売費及び一般管理費と営業外収益の両者に区分して計上していることの意図を正確に理解できていないと言え、Bad発言です。

2019/05/31 【役員会 Good&Bad発言集】引当金戻入益の表示

サービス業のY社で開催中の定例の取締役会では、去年買収したばかりの会社の貸借対照表と損益計算書が出席者に配られ、子会社の行う事業を担当する取締役から子会社の事業の概況の説明が行われているところです。たまたま経理担当取締役が不在であったことから、経理担当取締役の助け舟がない中で、子会社の損益計算書の表示に関し他の取締役A・B・Cが次の発言をしました。3人の発言のうち、誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「損益計算書で販売費及び一般管理費の貸倒引当金繰入額の金額がマイナスで表示されていますね。『費用のマイナス』ということは結局『収益』を意味しているのですから、販売費及び一般管理費にマイナスで表示するのではなく、営業外収益に記載すべきではないでしょうか。子会社の経理部の人材は当社ほど充実していないからこういうミスも起きるのでしょうね。親会社から経理の人材を出向させた方が良いのではないでしょうか。」

取締役B:「営業外収益にも貸倒引当金戻入益がありますね。これと販売費及び一般管理費に記載されているマイナスの貸倒引当金繰入額とを合算した額を営業外収益に表示すればよかったというわけですかね。その修正をすると営業利益が減ってしまいますね。」

取締役C:「以前にわが社の損益計算書でも販売費及び一般管理費の貸倒引当金繰入額がマイナス表示になっていたことがあります。また、貸倒引当金戻入益が販売費及び一般管理費(のマイナス)とは別に営業外収益でも計上されているということは、同じ貸倒引当金戻入益であっても、性質が異なっている可能性があります。性質が異なっているのであれば取締役Bのおっしゃる『合算』はすべきではないと考えます。」

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2019/05/31 【2019年6月の課題】社外取締役の在任期間

2019年6月の課題

東証一部に上場するA社は、2015年6月に導入されたコーポレートガバナンス・コードの【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】で、上場会社に対し「少なくとも2名以上」の独立社外取締役の選任が求められたことを機に、それまでゼロだった社外取締役を2名選任し、現在に至っています。両社外取締役の在任期間が4年を超えようという中、A社の取締役会で、社外取締役の適切な在任期間は何年か、在任期間を社外取締役の選任基準として定めるべきか、また、それを対外的に開示すべきか、との問題提起がありました。

これらの点について、自社の方針を検討してみてください。

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