2019/06/07 「飲酒」もNG? 広がるダインベストメントの対象(会員限定)

ESG投資が活発化する中、ダインベストメント(投資の取りやめ)の対象となるテーマ・企業は、化石燃料、海洋プラスチックゴミ、個人情報流出、肥満等の健康被害、ファストファッションと広がりを見せているが(2019年3月14日『「ストロー」の次のターゲット』参照)、新たに「酒造メーカー」がダインベストの対象とされた。

ESG投資 : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。ESG投資とは文字通り「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資することをいう。

酒造メーカーをダインベストメントの対象としたのが、ノルウェーの大手生命保険会社KLPだ。ノルウェーの公務員約100万人の年金資産を管理し、800億ドルの運用資産残高を有する同社は“sin stocks”(罪ある株式)のポートフォリオからの除外に取り組んでおり、これまでもタバコメーカー、ポルノ関連企業、大麻(医療用を含む)の販売会社への投資を引き揚げてきた。

今回の酒造メーカーのダインベストもその流れの一環で、同社は(2019年)5月28日、日本企業のキリンホールディングス、アサヒグループホールディングス、サッポロホールディングス、宝ホールディングス(宝酒造)のほか、オランダのハイネケン、英国のグリーン・キングなど著名企業50社の酒造メーカーをダインベストメントの対象とすることを公表した。また、併せて、日本の東京都競馬を含むギャンブル関連企業の40社もダインベストメントの対象にするとしている。ダインベストメントの対象となったのは、酒造メーカー、ギャンブル関連企業ともに収入の「5%以上」を酒類の製造またはギャンブル事業から得ている企業で、引き揚げられることとなる投資額は、90社(酒造メーカー50社+ギャンブル関連企業40社)合計で3億2,000万ドルに上るという。

ギャンブルはともかく、最も一般的な嗜好品の一つであり、祝事などにも欠かせない酒類のメーカーまでダインベストメントの対象とされたことには違和感を持つ向きもあろう。実際、アサヒグループホールディングスは国内ではESGの中でも「E」や「S」への取り組みが高い評価を受けている企業の一つであり、例えば東洋経済のCSR企業ランキングでは、2018年は4位、2019年は14位に入っている。KLPのCEOは、今回のダインベストメントについて、「当社の投資は、利益を追求するのみならず、前向きで持続可能な社会の発展に貢献することを重視している」旨述べるとともに、酒造メーカーをダインベストメントの対象とした理由として、ノルウェーでは暴力事件の半数以上に飲酒が関係していることなどを挙げている。

CSR : Corporate Social Responsibility(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ)の略で、一般的に「企業の社会的責任」と訳される。企業を、「社会の構成員」として位置付けることで、企業は取引先・消費者・株主・従業員・地域社会などのステークホルダーに対し、責任ある行動を行い、社会的課題に応え、信頼関係を築いていくべきという考え方。ESGのうち「E」や「S」の源流とも言えるのがこのCSRである。

KLPと同様の方針が投資家全体に広がるとは限らないが、企業の事業展開に影響を及ぼしかねない“過激なダインベスト”の動きには注意したいところだ。

2019/06/07 【2019年4月の課題】IR/SRとしてのアクティビスト対応(会員限定)

日本シェアホルダーサービス株式会社
シニアアナリスト 水嶋 創

アクティビストによる株主提案の特徴

投資先に何らかの行動を要求する上で、アクティビストが用いる手段の一つが株主提案です。最近のアクティビストによる株主提案の特徴としては次の3点が挙げられます。

①増配や自己株取得などの株主還元のほか、政策保有株式の売却や社外役員の選任(増員)などガバナンス領域の提案が目立つ
②国内機関投資家が一部の株主提案に対して賛成行使を行っている
③議決権行使助言会社は多くの議案について賛成推奨を行い、海外機関投資家の議決権行使に影響を与えている

【表1】は、昨年(2018年)6月開催の株主総会においてアクティビストが提案した議案とこれに対する主要国内機関投資家の議決権行使結果をまとめたものです。

【表1】昨年6月開催の株主総会におけるアクティビスト提案議案と国内機関投資家の賛否

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従来から見られる配当や自己株取得など株主還元の要求も多かったものの、このうち例えば英ファンドのアセット・バリューインベスターズが東京放送ホールディングスに対して求めたのは、政策保有株式として保有する東京エレクトロン株式の現物配当でした。昨年(2018年)6月1日の改訂により政策保有株式の縮減圧力を強めたコーポレートガバナンス・コード(原則1-4など)を踏まえた内容となっている点で、単なる株主還元要求ではなく、「ガバナンス領域」の提案と言えるでしょう。政策保有株式に関しては他にも、ストラテジックキャピタルが蝶理などに対し、今後3期以内に政策保有株式を売却する旨の定款規定の新設を提案するなどの動きも見られました。また、オアシス・マネジメントがアルパインに対して要求した取締役選任の提案では、候補者の独立性や少数株主の権利の保護、ダイバーシティなどが謳われており、コーポレートガバナンスが強く意識される内容であったと言えます。

少数株主:「少数株主」というと、文字通り「(相対的に)少数の株式を保有している株主」というイメージがあるかもしれないが、実はそうとは限らない。確かに少数株主には、多数派株主に対峙する存在としての「少数派」の株主という意味もあるが、議決権の50%超を確保することなく実質的に経営権を握っている株主がいる会社において、経営権を握っている株主以外の株主を指して「少数株主」と言うこともある。株式市場で存在感が抜きん出ている機関投資家も、意外なことに「少数株主」に該当する。というのも、機関投資家は投資金額こそ大きいものの、会社の経営権を握っているわけではないからだ。経営権を握っていない分、機関投資家は少数株主としての権利の確保には敏感である。文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム

こうした議案の一部に対して、主要国内機関投資家が賛成行使を行ったことにも注意が必要です。スチュワードシップ・コードの制定・改訂などを受け、国内機関投資家は、たとえアクティビストと呼ばれる投資家による提案であっても、企業価値向上やコーポレートガバナンスの改善に資すると判断される内容であれば、賛成せざるを得なくなっていると考えられます。

さらに、ISS(Institutional Shareholder Services)などの議決権行使助言会社による株主提案への賛成推奨も目立っており、主に海外機関投資家の議決権行使判断に大きな影響を及ぼしています。こうした国内外の機関投資家の賛成行使などにより、株主提案に対する賛成率は全体的に上昇しています。

機関投資家の賛成を阻止するためには?

通常、企業は株主提案議案が可決されることは避けたいところでしょう。また、たとえ可決には至らなくても相当数の賛成票を得た場合、そのこと自体がアクティビストにとってのアピール材料となり(例えば「親会社/創業家/持合い先などを除く一般株主の多くが我々の主張に賛同している」など)、キャンペーンがエスカレートする事例も見受けられます。したがって、企業は株主提案議案を単に否決するだけでなく、できる限り低い賛成率にとどめたいところです。

もちろん、企業にとっては、そもそもアクティビストが自社の株主とならない、あるいは株主提案を行わないという状態が望ましいでしょう。しかし、上場企業である以上、特定の投資家の株式購入を止めることは不可能です。また、アクティビストによる自社の株式保有が確認された場合には、株主提案に発展しないようアクティビストと対話などを行っていくことになりますが、株主として認められている権利の行使を止める方法もありません。

したがって、アクティビストによる株主提案が想定される場合の企業の対応としては、主に次の2つが考えられます。

①個人投資家の議決権行使の促進
②機関投資家の株主提案への賛成阻止

一般的に個人投資家は会社提案に賛成し、株主提案に反対することが多いものの、そもそも機関投資家に比べて議決権行使率が低いという特徴があります。企業としては個人投資家の「ファン株主化」を推進し、株主総会への関心を高め、議決権行使促進を図りたいところです。もっとも、一口に個人投資家と言ってもその属性は様々であるため、個人投資家を対象としたアンケートの実施やイベントの開催などを通じて、株主が何を期待しているのか把握しようとする企業も増えてきています。

機関投資家については、前述のとおり、アクティビストの提案に賛成する事例も確認されており、これを阻止することが目標となります。ただし、アクティビストの提案内容もコーポレートガバナンス・コードを引用するなど高度化してきており、提案の蓋然性が高まってからでは、これを覆すロジックを構築し、機関投資家を説得することは困難と考えられます。

したがって、有事に至る前の“普段の対話”、すなわち、平時において機関投資家に自社のガバナンス体制について説明し理解を得ておく、あるいは機関投資家の疑問を解消しておくことが重要になります。機関投資家からガバナンス体制の改善等について要望があった場合には、仮にそれがすぐに対応できないものであったとしても、自社の課題として共有し、その改善状況の進捗を随時報告するといった姿勢が、機関投資家の株主提案への賛成を阻止する上で有用と言えます。

機関投資家は議決権の行使判断について、年金基金などのアセット・オーナーに対して説明責任を負う立場にあります。この点を踏まえ企業は、仮にアクティビストから「ガバナンス改善に資する議案」が提案された場合でも、機関投資家が「投資先企業は十分なガバナンス体制構築ができている」、あるいは「改善の進捗が確認されている」とアセット・オーナーに説明できる状況を作っておくことにより、株主提案への賛成行使を阻止できる可能性が高まると考えられます。

特に関係を構築すべき投資家

機関投資家との“普段の対話”を具体的にどのように進めていくべきかは、企業の株主構成や機関投資家による保有状況により異なりますが、一般的には保有議決権数の大きい投資家から順にコンタクトをとっていくべきであると言えます。

また、パッシブ運用の資産額が大きい投資家を中心に対話を進めていくことも考えられます。東証一部上場企業(=TOPIX構成銘柄)を想定した場合、例えば【表2】の10の投資家をターゲットにする方法があり得ます。

パッシブ運用:パッシブ(「消極的」なという意味)運用とは、東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法であり、ファンドマネジャーが独自に銘柄を選択して運用する「アクティブ運用」とは対極の関係にある。文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム

【表2】企業が対話すべきと考えられる投資家(東証一部上場企業の場合)
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日銀が金融緩和策の一環として行っているETF(指数連動型上場投資信託)買入れ政策などにより、ETFの資産残高は増加しています。必然的に国内大手ETFプロバイダーである野村アセットマネジメント、大和証券投資信託委託、日興アセットマネジメントの存在感は増してきています。また、世界でも最大のアセット・オーナーであるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は国内株式運用の約9割をパッシブ運用に振り向けています。GPIFからTOPIXをベンチマークとするパッシブ運用を受託する三井住友トラスト・アセットマネジメント、アセットマネジメントOne、三菱UFJ信託銀行、ブラックロック、りそな銀行、フィデリティ投信は、国内における年金運用の主要プレーヤーと位置付けられるでしょう。

ETF:Exchange Traded Fundの略で、日本語では「上場投資信託」と訳されているとおり、証券取引所に上場しており、証券取引所での売買が可能。ETFは、TOPIXや日経平均といった指数を構成する銘柄をこれらの指数と同じ割合で保有しているため、必然的にこれらの指数と同じ値動きをすることになる。文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム

海外の大手パッシブ運用投資家としては、ブラックロック、バンガード、ステート・ストリートの3社が挙げられます。このうちブラックロックとステート・ストリートについては、国内拠点でのSR面談が可能な投資家であることから、対話のハードルは他の海外機関投資家よりは低いと言えます。

SR:Shareholder Relations の略で、「株主向け広報」と訳される。株主を含む広く投資家全般に対する広報活動を「IR」 (Investor Relations) と呼ぶのに対し、SR活動とは、企業と株主との信頼関係を築くための活動を指す。文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム

アクティブ運用が、企業のファンダメンタルズや株価の変化に応じて売買を行う投資スタイルであるのに対して、パッシブ運用はベンチマークとなる指数(TOPIXなど)の構成銘柄を基本的には保有しつづける運用手法であることから、パッシブ運用の資産額が大きい投資家は、多くの企業にとって長期的な関係を築く意義の大きい相手になると考えられます。

ファンダメンタルズ:売上高や利益などの業績や、資産・負債などの財務状況等、株式の本質的価値を決める指標文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム

投資家のアポイントがとりやすい株主総会後の時期などに、自社の株式を多く保有する投資家やパッシブ運用資産額の大きい投資家と対話を通じた関係構築を図っていくことが、有効なアクティビスト対応策となり得るでしょう。

2019/06/06 有価証券報告書、【監査報酬の内容等】の記載内容の変更点

3月決算企業の有価証券報告書の提出期限(事業年度終了後3か月以内)が目前に迫っている。2019年3月末決算)の有価証券報告書では、開示府令の改正により、コーポレートガバナンス関連の開示の大幅な充実が求められているだけに(2019年2月15日のニュース「社外役員、報酬、政策保有等今3月期から必要な開示への金融庁の考え方」参照)、企業も対応に苦慮していることだろう。今回改正された記載事項の一つが、【コーポレート・ガバナンスの状況等】における【監査の状況】【監査報酬の内容等】だ。・・・

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2019/06/06 有価証券報告書、【監査報酬の内容等】の記載内容の変更点(会員限定)

3月決算企業の有価証券報告書の提出期限(事業年度終了後3か月以内)が目前に迫っている。2019年3月末決算)の有価証券報告書では、開示府令の改正により、コーポレートガバナンス関連の開示の大幅な充実が求められているだけに(2019年2月15日のニュース「社外役員、報酬、政策保有等今3月期から必要な開示への金融庁の考え方」参照)、企業も対応に苦慮していることだろう。今回改正された記載事項の一つが、【コーポレート・ガバナンスの状況等】における【監査の状況】【監査報酬の内容等】だ。

改正事項の「記載上の注意」(2019年3月31日付 内閣府令)は下記のとおりとなっている。当該「記載上の注意」も2019年3月期の有価証券報告書から適用される(ただし、「“旧”記載上の注意」を適用できる経過措置あり)。

<第三号様式記載上の注意>
(f)監査報酬の内容等について、次のとおり記載すること。
ⅰ 最近2連結会計年度(連結財務諸表を作成していない場合には最近2事業年度。以下この様式において同じ。)において、提出会社及び提出会社の連結子会社がそれぞれ監査公認会計士等に対して支払った、又は支払うべき報酬について、監査証明業務(公認会計士法第2条第1項に規定する業務をいう。以下この様式及び第二号の五様式において同じ。)に基づく報酬とそれ以外の業務(以下ⅰ、ⅱ及び第二号の五様式において「非監査業務」という。)に基づく報酬に区分して記載すること。この場合において、非監査業務に基づく報酬を記載したときは、当該非監査業務の内容を記載すること。
ⅱ 最近2連結会計年度において、提出会社及び提出会社の連結子会社がそれぞれ監査公認会計士等と同一のネットワーク(共通の名称を用いるなどして2以上の国においてその業務を行う公認会計士又は監査法人及び外国監査事務所等(外国の法令に準拠し、外国において、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする者をいう。)を含めて構成される組織をいう。)に属する者に対して支払った、又は支払うべき報酬について、監査証明業務に基づく報酬と非監査業務に基づく報酬に区分して記載すること(ただし、ⅰの規定により記載する報酬の内容及び連結会社の監査報酬等の内容として重要性の乏しい報酬の内容を除く。)。この場合において、非監査業務に基づく報酬を記載したときは、当該非監査業務の内容を記載すること。
ⅲ ⅰ及びⅱの規定により記載する報酬の内容のほか、最近2連結会計年度において、連結会社の監査証明業務に基づく報酬として重要な報酬がある場合には、その内容について、具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。

監査証明業務 : 他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすること
非監査業務 : たとえばコンサルティングや株価算定などの監査証明業務以外の業務

上記の“新”記載上の注意を整理すれば下表のとおり。記載される監査報酬等は「3つ」に分類されることになる。

区分 期間 会社の範囲 監査報酬等の範囲 具体例 留意点
最近2連結会計年度 提出会社及び提出会社の連結子会社 監査公認会計士等に対して支払った、又は支払うべき報酬を、
・監査証明業務に基づく報酬
・非監査業務に基づく報酬
に区分して記載
監査法人がA監査法人であれば、A監査法人に対して支払った監査報酬等を記載する。 監査を担当した監査法人等のことを意味する。
非監査業務に基づく報酬を記載する場合には、当該非監査業務の内容を記載する。
提出会社及び提出会社の連結子会社 監査公認会計士等と同一のネットワークに属する者に対して支払った、又は支払うべき報酬を、
・監査証明業務に基づく報酬
・非監査業務に基づく報酬
に区分して記載(ただし、重要性の乏しい報酬の内容を除く)
監査法人がA監査法人であれば、Aネットワークに属する監査法人(ⅰに該当する監査法人を除く)、コンサルティング会社、税理士法人等に対する報酬を記載する。 非監査業務に基づく報酬を記載した場合には、当該非監査業務の内容を記載する。
連結会社 i、iiの他、監査証明業務に基づく報酬として重要な報酬を記載 提出会社の監査法人がA監査法人、その連結子会社の監査法人が、A監査法人とは別のネットワークに属するB監査法人である場合、当該連結子会社がB監査法人に対し監査業務に基づく重要な報酬を支払っていれば、その報酬を記載する。 監査証明業務に基づく重要な報酬のみが記載対象とされている。

以上を旧記載上の注意と比較すれば、以下が変更点と考えられる。

(1)ⅱの監査公認会計士等と同一のネットワークに属する者に対する報酬については、旧記載上の注意では“例示”として挙げられているにすぎず、あくまで「任意の記載」と理解されていたが、新たな記載上の注意では「必須の記載」となった。これは、ネットワークベースの報酬額・業務内容は、監査人の独立性を判断する観点から重要な情報であると認識されたことによる。

(2)ⅰ及びⅱに記載する報酬の内容のほか、最近2連結会計年度において、連結会社の監査証明業務に基づく報酬として重要な報酬の記載が必須となった(ⅲ)。これは、グローバル企業のグループ全体の監査状況を把握する観点から、連結グループ全体で監査報酬等の支払いがどの程度の規模になるのか、提出企業の監査人及びそのネットワークファーム以外の監査人に支払われる監査報酬全体を把握する必要があると認識されたことによる。

2019/06/05 役員の長期欠勤に伴う報酬の減額

インセンティブ報酬の比率を高める形で役員報酬改革に取り組む上場企業が増えているが、インセンティブ報酬は中長期にわたる業績指標等を算定根拠にするのが通常。その前提にあるのは、・・・

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2019/06/05 役員の長期欠勤に伴う報酬の減額(会員限定)

インセンティブ報酬の比率を高める形で役員報酬改革に取り組む上場企業が増えているが、インセンティブ報酬は中長期にわたる業績指標等を算定根拠にするのが通常。その前提にあるのは、役員の心身の「健康」だ。

そもそも役員は40~60代が多く、ガンをはじめとする長期治療が必要な重病や精神疾患にかかるリスクは決して小さくない。病気により役員が長期欠勤した場合、会社が取り得る選択の一つとして、報酬の減額が考えられる。ただ、入院に伴う長期欠勤を理由に会社が取締役の月額報酬を減額したところ取締役に提訴され、会社が敗訴するという事例が最近発生しているので注意したい。

訴訟を提起した取締役(以下、原告取締役)は、2014年6月の定時株主総会で、被告となった会社(以下、被告取締役)の取締役に選任された(任期は2016年6月までの2年間)。被告会社においては、取締役の報酬は定時株主総会の決議により取締役会に一任することとされており、取締役会は原告取締役の報酬を「月額約65万円」と決議した。

取締役に選任されてから約1年後の2015年5月下旬、原告取締役は入院することとなり、その後は2016年6月に任期満了により取締役を退任するまでの間、欠勤が続いた。こうした中、被告会社の代表取締役は、取締役会に諮ったうえで、原告取締役の月額報酬を、2015年9月分から11月分については約20万円、同年12月分から退任(2016年6月)までの分については約10万円に減額した。これに対し原告取締役は、減額された報酬の支給を被告会社に求め、東京地裁に提訴した。

裁判所の判断は、上述のとおり原告取締役の主張を全面的に認めるものとなっており、被告会社に対し、減額分の報酬の‟満額“となる523万円を原告取締役に支払うよう命じている。裁判所はこのように判断した理由として、定められた報酬額は「取締役と会社の間の契約内容」であり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束することから、仮に取締役の職務内容に著しい変更があり、株主総会等で報酬額を減額する旨の決議がなされたとしても、契約の相手方である取締役が減額に同意しない限り、取締役は会社に対する報酬請求権を失わないとの考えを示している(東京地裁平成30年9月7日判決。被告会社が控訴しなかったため確定)。ちなみに、被告会社には当時、取締役の長期欠勤の際の報酬の取扱いに関する特段の定めはなかったという。これも、被告会社が敗訴する一因になった可能性がある。

本件は取締役への月額報酬そのものが減額されたケースであったが、中長期の業績等に応じて支給額が変動するインセンティブ報酬についても同様のことは起こりえる。仮に報酬額の評価対象期間の相当部分を取締役が病気により欠勤していたとなれば、報酬額を減額することには合理性があるが、今回紹介した裁判例を踏まえ、会社は役員報酬規程に長期欠勤の際の報酬の取扱いに関する定めを置くことはもちろん、報酬の減額に際しては本人の明確な同意を得ておくべきだろう。

2019/06/04 「クオータ制」の効果

2019年5月21日のニュース「女性役員ゼロのTOPIX100構成企業の半数が原則4-11をコンプライ」でお伝えしたとおり、取締役会に「ジェンダーおよび国際性の面を含む多様性」を求めるコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)原則4-11を、女性役員がゼロでも「コンプライ」としている上場企業は少なからずある。強制法規ではない“ソフト・ロー”では起こりえることとはいえ、今後も引き続きこのような事例が見受けられるようであれば、日本企業の取締役会におけるジェンダーダイバーシティは、欧米企業等にさらに後れをとることになる恐れがある。

MSCIの調査(2017年12月公表)によると()、株価インデックス構成企業の取締役会に占める女性比率は、ノルウェーの42.2%、フランスの40.8%を筆頭に、軒並み20~30%台となっているのに対し、日本はわずか5.3%にとどまっている(MSCI「WOMEN ON BOARDS PROGRESS REPORT 2017」15ページ参照)。フランス、ノルウェーをはじめ、女性取締役比率の高い国の多くで導入されているのが「クオータ制」だ(同20ページ参照。「Mandatory」とあるのが、一定の女性取締役比率が義務化されている国)。

女性のキャリア支援などを行う米国の非営利団体カタリストのレポート(2018年12月21日公表)にサマリーが掲載されており、こちらの方が分かり易い

MSCI:株価指数の開発などを行う米国企業。、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のESG指数にも同社の「MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数」「MSCI 日本株 女性活躍指数(WIN)」が採用されている。ちなみに、MSCIとは元々は「モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル」の略であるが、米モルガン・スタンレーは保有していたMSCIの株式を2009年に全て売却している(売却代金は約5億9600万ドル。それに伴い、現在は「MSCI」が正式名称になっている。

クオータ制:一定の比率を強制すること。クオータ(Quota)とは、「割り当て」などを意味し、「4分の1」を意味するクォーター(quarter)とは異なる。

クオータ制を導入している国の一つがドイツだが、最近の調査結果では、クオータ制の凄まじい効果が確認されている。・・・

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2019/06/04 「クオータ制」の効果(会員限定)

2019年5月21日のニュース「女性役員ゼロのTOPIX100構成企業の半数が原則4-11をコンプライ」でお伝えしたとおり、取締役会に「ジェンダーおよび国際性の面を含む多様性」を求めるコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)原則4-11を、女性役員がゼロでも「コンプライ」としている上場企業は少なからずある。強制法規ではない“ソフト・ロー”では起こりえることとはいえ、今後も引き続きこのような事例が見受けられるようであれば、日本企業の取締役会におけるジェンダーダイバーシティは、欧米企業等にさらに後れをとることになる恐れがある。

MSCIの調査(2017年12月公表)によると()、株価インデックス構成企業の取締役会に占める女性比率は、ノルウェーの42.2%、フランスの40.8%を筆頭に、軒並み20~30%台となっているのに対し、日本はわずか5.3%にとどまっている(MSCI「WOMEN ON BOARDS PROGRESS REPORT 2017」15ページ参照)。フランス、ノルウェーをはじめ、女性取締役比率の高い国の多くで導入されているのが「クオータ制」だ(同20ページ参照。「Mandatory」とあるのが、一定の女性取締役比率が義務化されている国)。

女性のキャリア支援などを行う米国の非営利団体カタリストのレポート(2018年12月21日公表)にサマリーが掲載されており、こちらの方が分かり易い。

MSCI:株価指数の開発などを行う米国企業。、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のESG指数にも同社の「MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数」「MSCI 日本株 女性活躍指数(WIN)」が採用されている。ちなみに、MSCIとは元々は「モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル」の略であるが、米モルガン・スタンレーは保有していたMSCIの株式を2009年に全て売却している(売却代金は約5億9600万ドル。それに伴い、現在は「MSCI」が正式名称になっている。

クオータ制:一定の比率を強制すること。クオータ(Quota)とは、「割り当て」などを意味し、「4分の1」を意味するクォーター(quarter)とは異なる。

クオータ制を導入している国の一つがドイツだが、最近の調査結果では、クオータ制の凄まじい効果が確認されている。

ドイツには日本と同様、「監査役会」制度があるが、2016年に施行されたドイツのクオータ制が対象としているのが「監査役会」だ。具体的には、従業員2,000名以上の上場企業(約110社)を対象に、2016年以降、監査役会の女性比率を30%以上とすることが義務付けられた。一方、取締役会についてはクオータ制は導入されていない。結果として、ドイツ株式指数(DAX)採用企業について見ると、監査役会の女性比率は2018年には「30.5%」となり、クオータ制で義務付けられた30%を突破、2019年も「30.2%」と引き続き30%台を維持しているのに対し、取締役会における女性比率は2018年が「8.0%」、2019年は若干上昇したものの「8.8%」にとどまっている。監査役会と取締役会における女性比率の格差には、クオータ制の効果が如実に表われていると言えるだろう。

この結果を見ると、なぜドイツではクオータ制を監査役会にのみ導入し、取締役会には導入しなかったのかという疑問が生じるが、要するに政府が取締役会にクオータ制を導入した場合の企業の負担を考慮したということであろう。また、取締役会は監査役会の人材供給源になっているため、監査役会にクオータ制を導入すれば自然と取締役会の女性比率も上昇するだろうとの目論見もあったようだ。

しかしながら、ドイツの事例は、クオータ制が導入されなければ企業も動かないということを裏付ける格好となった。今のところ日本でクオータ制導入に向けた具体的な動きは確認されていないが、政府内ではかなり前から議論の対象になっている(例えば、内閣府男女共同参画局の「平成23年版男女共同参画白書 3.経済分野におけるポジティブ・アクション」参照)。上述のとおり、日本企業の取締役会における女性比率は欧米企業と比べ極端に低くなっているだけに、この状況が続くようであれば、クオータ制の導入議論に火がつく可能性は否定できないだろう。

2019/06/03 (新用語・難解用語)ハイブリッド型バーチャル株主総会

現行の株主総会、すなわち、物理的に存在する会場に取締役・監査役等と株主が一堂に会する形態の株主総会を「リアル株主総会」、リアル株主総会を開催せず、取締役・監査役等と株主のすべてがインターネット等の手段を用いて株主総会に参加する株主総会を「バーチャル株主総会」とすると、これらの混合(ハイブリッド)型に位置付けられるのが、「ハイブリッド型バーチャル株主総会」だ。ハイブリッド型バーチャル株主総会はあくまでリアル株主総会の開催を前提としており、株主はそのリアル株主総会にインターネット等を活用して参加するという点、バーチャル株主総会とは異なる。現時点では、バーチャル株主総会はもちろん、ハイブリッド型バーチャル株主総会を開催している上場会社は存在しない。

リアル株主総会には株主が会場に赴くにあたり経費や時間がかかるといった問題があるため、株主が自宅等に居ながらにして株主総会に参加できるバーチャル株主総会は、とりわけ株主総会の開催会場から遠隔地に住んでいる株主のニーズが高い。IT技術の進展やPC・スマートフォンといった端末の普及に伴いバーチャル株主総会を開催するうえでの技術的なハードルはほぼなくなったと言えるが、ネックとなるのが会社法だ。現行会社法では、株主総会の招集に際しては株主総会の「場所」を定めなければならない(会社法298条1項1号)とされているため、リアル株主総会を開催せずに、取締役・監査役等と株主のすべてがインターネット等の手段を用いて株主総会に出席するバーチャル株主総会(以下、バーチャルオンリー型株主総会)は会社法の解釈上、開催が難しい。そこで注目されているのが、ハイブリッド型バーチャル株主総会だ。・・・

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2019/06/03 (新用語・難解用語)ハイブリッド型バーチャル株主総会(会員限定)

現行の株主総会、すなわち、物理的に存在する会場に取締役・監査役等と株主が一堂に会する形態の株主総会を「リアル株主総会」、リアル株主総会を開催せず、取締役・監査役等と株主のすべてがインターネット等の手段を用いて株主総会に参加する株主総会を「バーチャル株主総会」とすると、これらの混合(ハイブリッド)型に位置付けられるのが、「ハイブリッド型バーチャル株主総会」だ。ハイブリッド型バーチャル株主総会はあくまでリアル株主総会の開催を前提としており、株主はそのリアル株主総会にインターネット等を活用して参加するという点、バーチャル株主総会とは異なる。現時点では、バーチャル株主総会はもちろん、ハイブリッド型バーチャル株主総会を開催している上場会社は存在しない。

リアル株主総会には株主が会場に赴くにあたり経費や時間がかかるといった問題があるため、株主が自宅等に居ながらにして株主総会に参加できるバーチャル株主総会は、とりわけ株主総会の開催会場から遠隔地に住んでいる株主のニーズが高い。IT技術の進展やPC・スマートフォンといった端末の普及に伴いバーチャル株主総会を開催するうえでの技術的なハードルはほぼなくなったと言えるが、ネックとなるのが会社法だ。現行会社法では、株主総会の招集に際しては株主総会の「場所」を定めなければならない(会社法298条1項1号)とされているため、リアル株主総会を開催せずに、取締役・監査役等と株主のすべてがインターネット等の手段を用いて株主総会に出席するバーチャル株主総会(以下、バーチャルオンリー型株主総会)は会社法の解釈上、開催が難しい。そこで注目されているのが、ハイブリッド型バーチャル株主総会だ。

経済産業省の「さらなる対話型株主総会プロセスに向けた中長期課題に関する勉強会」(事務局は経済産業政策局企業会計室)が2019年5月22日に公表した「さらなる対話型株主総会プロセスに向けた中長期課題に関する勉強会とりまとめ(案)~ハイブリッド型バーチャル株主総会に関する論点整理~」(以下、本論点整理)では、リアル株主総会、バーチャルオンリー型株主総会、そしてそれらの混合型としてのハイブリッド型バーチャル株主総会の関係を下図のように整理している(出典:本論点整理12ページ)。

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「出席型」と「参加型」の違いは下記のとおり。

出席型・・・リアル株主総会の場所に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて、文字通り株主総会に会社法上の「出席」をすることができる株主総会
参加型・・・リアル株主総会の開催場所に在所しない株主が、株主総会への会社法上の「出席」を伴わずに、インターネット等の手段を用いて、株主総会の審議等を確認・傍聴することができる株主総会

出席 : 株主総会の開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されているといえる環境にあること。(相澤 哲、葉玉 匡美、郡谷 大輔 『論点解説 新・会社法 千問の道標』 株式会社商事法務(2006.6))

要するに、ハイブリッド型バーチャル株主総会は、リアル株主総会の開催場所にいない株主が会社法上、株主総会に「出席」していることになるかどうかで、「出席型」か「参加型」に区分されているわけだ。

本論点整理では、「参加型」と「出席型」それぞれのハイブリッド型バーチャル株主総会のメリットと留意事項を下表のとおり整理している(本論点整理の13ページから14ページを参照)。上述のとおり、「参加型」の場合、株主は会社法上、株主総会に「出席」したことにならず、単に株主総会の審議等を確認・傍聴しているにすぎない。したがって、株主総会の場で質問をすることや議決権を行使することもできなければ、定足数にもカウントされないことになる(下表の赤字部分参照)。

定足数:決議が有効なものとなるために最低限必要な出席議決権数のこと。この定足数要件を満たさない決議は無効となる。例えば株主総会の普通決議は「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う」のが原則とされる。ただし、多くの上場会社は、「“出席した”議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行う」といった規定を定款に設けており、極端な例では、株主総会に出席したのが議決権を1個有する株主1人のみでも株主総会決議は成立することになる。

メリット 留意事項
ハイブリッド参加型バーチャル株主総会 • 遠方株主の株主総会参加・傍聴機会の拡大。
• 複数の株主総会を傍聴することが容易になる。
• 参加方法の多様化による株主重視の姿勢をアピール。株主総会運営に係る透明性の向上。
• 情報開示の充実。
• 円滑なインターネット等の手段による参加に向けた環境整備が必要。
• 株主がインターネット等を活用可能であることが前提。
• 肖像権等への配慮(ただし、株主に限定して配信した場合には、肖像権等の問題が生じにくく、より臨場感の増した配信が可能。)
ハイブリッド出席型バーチャル株主総会 • 遠方株主の出席機会の拡大。
• 複数の株主総会に出席することが容易になる。
質問の形態が広がることにより、株主総会における議論(対話)が深まる。
• 個人株主の議決権行使の活性化につながる可能性。
• 株主総会運営に係る透明性の向上。
• 出席方法の多様化による株主重視。
• 質問の選別による議事の恣意的な運用につながる可能性。
• 円滑なバーチャル出席に向けた環境整備。
• 株主がインターネット等を活用可能であることが前提。
• どのような場合に決議取消事由にあたるかについての経験則の不足。
• 濫用的な質問が増加する可能性。

上表を踏まえたうえで、本論点整理では2019年6月21日までに下記の法的・実務的論点の解決が必要との見解を示し、パブリックコメントを求めている。
① 株主の本人確認
② 株主総会の出席と事前の議決権行使の効力の関係
③ 株主からの質問・動議の取扱い
④ 議決権行使の在り方
⑤ その他(招集通知の記載方法、お土産の取扱い等)

動議:株主総会において「株主側」から審議・採決の提案が行われること。動議には「実質的動議」と「手続的動議」の2種類がある。実質的動議とは、株主が株主総会において、株主総会の目的事項である「議題」に対して「議案」を提出することであり、手続的動議とは、議題に対してではなく、「株主総会の運営」や「議事進行」に関する株主からの提案を指す。

この中で特に注目されるのが③の「動議の取扱い」だ。というのも、「バーチャル出席株主については、物理的に議長と対峙していないことや、他の株主の動向や挙動について確認が困難であるなど、その出席態様の違いにより、リアル出席株主と比べて、質問や動議の提出に対する心理的ハードルが下がると考えられる」ため。また、「バーチャル出席については、質問や動議の内容についてコピー&ペーストが可能であることから、議事運営を妨害するといった不当な目的で、同じ質問や動議を複数回送ることが容易になり、また、複数社の株主総会に同時に出席して(バーチャル出席の場合にはそれが可能になる。)、会社による違いを踏まえず複数社に対して同じ質問や動議を送信することも可能になるなど、質問権の行使や動議の提出が濫用的に行われる可能性」もある。

そこで本論点整理では、「バーチャル出席株主の質問や動議の取扱いについては、リアル株主総会での取扱いと差異を設けることはやむを得ない」との考えを示したうえで、具体的な対応策として「あらかじめ用意されたフォームに質問や動議の内容を書き込んだ上で会社に送信し、受け取った会社側は、内容を確認した上で、議長においてその場で真に回答・対応すべきものについてのみ回答・対応をするといった取扱いが考えられる」「質問や動議を取り上げるための準備に必要な体制や時間的制約を考慮して、質問に文字数制限を課したり、送信期限をリアル株主総会の会場の質問打切りの時刻より一定程度早く設定したりする」ことを挙げている。そして、このように「リアル株主総会の場と、バーチャル出席株主の間での取扱いに合理的な差異を設けること」については、「リアル株主総会の場とバーチャル出席株主とを一つの会議体として運営するために必要なものであって、許容されうる議事運営と考えられる」と改めて肯定している。ただし、「同一株主が同時に複数の株主総会にバーチャル出席するという状態」(上記赤字部分参照)については、それをどう評価するのか引き続き検討が必要としている。

このほか⑤の「お土産」については、「交通費をかけて会場まで足を運び来場したことへのお礼」と考えられるとし、「会場へ足を運ぶことなくインターネット等の手段を用いて出席した株主に対してお土産を配らないとしても、不公平ではないと考えられる」との見解を示している。

本論点整理に関するパブリックコメントの募集は7月10日が締め切りとなっている。経済産業省はパブリックコメントを踏まえ、2019年秋頃を目途に最終報告書に相当する「勉強会とりまとめ」を公表する予定だ。