2019/04/26 2019年4月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
ファントムストックとは、文字通り架空(ファントム=Phantom)の株式(ストック=Stock)を用いたインセンティブ報酬であり、架空の株式を付与し、一定期間経過後、その間における株価の上昇・下落等を反映させた「株価×付与数」を現金で支給します。実際に株式を付与するわけではないので、ファントムストックを得た役員の議決権が高まるわけではなく、資本構成にも影響を与えません。

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2019年4月3日 海外子会社役員への株式報酬(会員限定)

2019/04/26 2019年4月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会)のCG Watch 2018は、「Japan – Keeping it complicated」(日本はいつまでたっても複雑なまま)とのキー・センテンスを掲げて、日本における機関設計や会計基準の選択制が不透明さと混乱をもたらすと批判しています。そういった批判が、CG Watch 2018におけるコーポレートガバナンス・ランキングにおける日本の順位の後退(2016年の4位から7位へランクダウン)につながりました。

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2019年4月2日 ACGAが指摘する「Japan – Keeping it complicated」の意味(会員限定)

2019/04/26 2019年4月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会)のCG Watch 2018は、「Japan – Keeping it complicated」(日本はいつまでたっても複雑なまま)とのキー・センテンスを掲げて、日本における機関設計や会計基準の選択制が不透明さと混乱をもたらすと批判しています。そういった批判が、CG Watch 2018におけるコーポレートガバナンス・ランキングにおける日本の順位の後退(2016年の4位から7位へランクダウン)につながりました。

こちらの記事で再確認!
2019年4月2日 ACGAが指摘する「Japan – Keeping it complicated」の意味(会員限定)

2019/04/25 【失敗学第59回】RS Technologiesの事例(会員限定)

概要

シリコンウエーハ再生事業を営むRS Technologies(東証一部)で、架空仕入・架空売上を介在させた資金循環取引が行われていた(2015年12月期から2018年12月期第3四半期までの累積で売上高314百万円を取り消し)。

経緯

RS Technologies(以下、RST社)が、2019年2月に特別調査委員会の調査報告書を公表するまでの経緯は次のとおり。

2015年
8月:多結晶ダイヤモンドパウダーに関する架空仕入・架空売上を介在させた資金循環取引(以下、本件取引)が始まる。

2018年
12月4日:RST社は外部から本件取引の実在性に疑義がある旨の指摘を受ける。
12月14日:RST社は特別調査委員会を設置し調査を開始。

2019年
2月1日:RST社は特別調査委員会の調査報告書を公表。
3月5日:RST社は過年度の決算の訂正を公表。
3月26日:RST社は特別調査委員会の調査報告に基づく再発防止策を公表。
3月29日:証券取引等監視委員会が、RST社が過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を関東財務局に提出したことをもって600万円の課徴金納付命令を発出するよう金融庁に勧告。
4月12日:RST社は取締役会で「金融庁から受領した審判手続き開始決定通知書に記載されている事実および納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を提出すること」を決議(リリースはこちら)。
4月26日:RST社は東京証券取引所に改善報告書を提出する。

内容・原因・改善策

RST社が2019年2月に公表した特別調査委員会の調査報告書および2019年4月に東京証券取引所に提出した改善報告書によると、本件の問題点の主な内容とその原因、再発防止策は次のとおりである。

循環取引
内容 本件は、形式的には、中国企業からB‘社(B社と本店所在地、役員、株主が同一)が輸入した商材をA社→RST社→B社→エンドユーザー(X社・Y社)といった商流で転売するという取引であった。
42924
しかし、本件取引は商材が実在しない取引であり、経済的実態はRST社のA社に対する支払サイト(即日)とB社のRST社に対する支払いサイト(90日~95日)との差を用いた金融取引に過ぎなかった。すなわち、B社は資金繰りのためにRST社を利用しただけであった。
原因 (商流の確認不足)
・2015年6月頃にRST社の社長が仲介人(A社のa氏)より本件取引の打診を受けた際に、管理本部長は社長に対して「当社が商流の入口(中国企業からの輸入)または出口(エンドユーザーへの販売)に関与できないのであれば、仕入先のルート確立や販売先との関係構築ができないので取引を行うべきではない」「B‘社への仕入の買掛金の支払いサイトよりB社の売掛金の入金サイトの方が長いのであれば、単なる金融取引に過ぎない。当社の定款の事業の目的にない『金融取引』をすべきではない」と忠告。RST社の社長は、RST社が商流の入口または出口に関与できる商流にするよう依頼するも、B社より拒絶される。
・RST社の社長は仲介人に「B’社が輸入する形ではRST社は取引を開始できない」「少なくともB’社ではなくA社が中国から輸入する形にして欲しい」と依頼したところ、仲介人は「努力あるいは検討する」という趣旨で「分かった。この話は以上。」と回答したが、RST社の社長は要望が通ったと理解した。
・RST社の社長がa氏に「A社が中国企業から直接輸入したと判断できる旨の書類」の提出を依頼したところ、a氏はB社に「A社が中国企業から直接輸入した際に受け取ったINVOICE」を偽造させてRST社に提出した。RST社では、当該INVOICEの入手をもってA社が中国企業から仕入れている(下図)と結論付け、誰一人として当該INVOICEを検証しなかった。
42924a
その結果、RST社は商流にB’社がいることを認識できておらず、資金が循環していること(A社に支払った代金がB’社を通じてB社に還流していること)の認識を欠いていた。また、B社より提示されたサンプルにB’社の社名が表記されていたにもかかわらず、これに疑問を呈することをしなかった。
(証憑の確認・検証不足)
・仲介人はRST社がB社からの代金を確実に回収できるよう、B社がエンドユーザーに対して有している売掛債権に譲渡担保を設定することを提案し、B社を集合債権譲渡担保契約のひな形を作成しB社に送信するも、B社に拒絶された。そこでエンドユーザーからの発注の実在性を確認するために、エンドユーザーの注文書を見せて欲しいと依頼したところ、届いた注文書は内容の重要な部分が黒塗りとなっており、証憑としての価値が明らかにないモノであったにもかかわらず、黒塗りとなっていなかった合計金額がRST社との取引額より大きいことを確認して安心してしまった(実際には偽造されたものを黒塗り加工しただけであった)。RST社はエンドユーザーに対して直接確認することをしなかった。また、RST社ではB社とエンドユーザーとの間で締結された取引基本契約書のコピーを入手したが、落丁があり、契約書全体をコピーしたものではなかった。
(形式的な書類の充足)
・A社からの請求書、B社からの注文書や物品受領書等のRST社側の業務処理に必要な書類は形式上すべて整っていた。
・本件取引は直送取引であるため、RST社では現物を確認する機会が一切なかった。
・毎月同様の定型取引であったため、取引開始時の検討を経た後は回収遅延等のイレギュラーな事態が生じない限り、社内手続き上、粛々と処理され、社内管理上問題視されることもなかった。
(内部統制のルール違反)
・RST社の職務権限規程では取引先との契約の締結については稟議が必要とされ、担当取締役の決裁による承認を経るべきとされている。しかし、本件取引の契約締結時にはかかる社長案件ということもあり稟議自体が省略されていた。
・本件取引は営業部ではなく経営企画室長が担当していた。しかも、RST社では、経営企画室長が内部監査の責任者を兼務し、経営企画室の業務はそもそも内部監査の対象外とされていた。本件取引に実効的な内部監査が及ぶことは期待できない状況であった。
(監査法人の指摘)
会計監査人であるあずさ監査法人は2016年1月、本件取引はRST社が瑕疵担保責任、在庫リスク、信用リスクを負ってないので、B社との取引金額をそのまま売上に計上する総額処理ではなく、純額(A社との取引高とを相殺した差額のみを表示する処理)が適当という指摘をしていたが、監査法人は取引自体が架空であることに気付いていなかった。
再発防止策 (手続書や規程等の作成・遵守)
取引を開始するにあたっての確認事項、確認方法、各部署の役割、会計処理に関する検討事項などを明記した手順書等を作成の上、その順守を徹底する。また、業務分掌規程を改訂し、けん制機能を強化する。

(既存取引および既存取引先の見直し)
・既存取引の妥当性を検証して、取引内容や条件に不適当と認められるものがあれば見直す。
・既存取引先のコンプライアンス体制の確認を行う。
・契約書に取引先への立ち入り検査をできるよう規定を明記する。

(新規の商社的取引開始時の内部けん制)
・新規に商社的取引を行う際には、取引開始に係る稟議書において、商流、仕入先、商材内容、在庫リスク、直送取引の有無および営業部毛利あわせメモ等を記載した書類(売上判断シート)および商流スキーム図を添付して、総務人事部、財務経理部および決裁者において商流の確認やリスクの把握をできるようにする。
・現物を確認できない直送取引は原則として行わない。

(非上場企業と取引する場合の債権保全措置)
非上場企業と取引を行うときには、原則として決算書または信用調査報告書を取得し、それができない先については、前金・担保等の保全を行うことを検討する。

(社長案件時の事務手続き)
社長案件(取引先との面談に社長が同席する場合)においては、かならず社長の他1名以上の営業担当者も面談に同席し、当該営業担当者が社な事務手続きを行う。については、

(内部監査の強化)
独立性のある内部監査専属の部門を創設する。

(内部通報窓口の拡充)
中立的な法律事務所による外部通報窓口を設け、通報窓口の利用者の範囲を取引先や下請先にまで広げる。

(経営責任の明確化)
取締役の報酬を減額(2019年2月度~2019年5月度までの4カ月間、代表取締役社長の報酬を30%減額など)

<この失敗から学ぶべきこと>

特別調査委員会の調査報告書や改善報告書によると、RST社では商流にB’社が入っていることは気付かなかった(騙された)とされていますが、そもそも本件取引はRST社に資金を提供するよう依頼されたことを契機にスタートした(例えば改善報告書の6ページの下から4行目には「当社がB社とその関係会社であるB’社との間に入り、資金提供するための会社であるという位置付けでした」との記載があります)ことを考えると、にわかに信じがたいところがあると言わざるを得ません。これは単なる資金提供というより資金循環取引そのものであり、上場会社であれば巻き込まれないように最大限の注意を払うべき取引でした。資金循環のスキームを提示されたことがきっかけで商談がはじまったにもかかわらず、B社から届いたエンドユーザーの黒塗りの偽造注文書を信用したり、「A社が中国から輸入している」という説明を鵜呑みにしてA社から届いた偽造INVOICEを確認しなかったりと詰めの甘さが目立っていました。

資金力のある上場会社は、本件取引のようにサイトの長短を利用したスキームに基づき資金負担を求められる商談が持ち込まれることが少なくありません。その中には資金循環取引も含まれているかもしれません。売上増へのプレッシャーを抱える上場会社だとそのようなスキームにとびつきやすいことから、注意が必要です。また、単なる資金提供取引は金融取引として処理すべきであることを考慮すると、会計処理を誤れば粉飾決算(売上高を純額で表示すべきところ総額で表示していた)になる点にも留意しなければなりません。

本件取引はRST社を取引対象物が通過しない直送取引として行われていました。直送取引には独特のリスクがあり、そのリスクをコントロールするには法的知識や与信管理といったノウハウの蓄積が不可欠です。直送取引は、それに慣れていない企業が安易に手を出すのは控えるべきです。とりわけ、資金循環取引は直送取引の形態をとるケースが少なくないので、用心するに越したことはありません。

上場会社の役員としては、既存の商流を点検して自社の位置付けを確認するとともに、変則的な支払サイト(自社の一般的な支払いサイトよりも短いサイト)がないかを再確認して、自社が資金循環取引に巻き込まれていないかを再確認しておくべきです。

2019/04/24 日銀ETFによりガバナンスは低下したか

日銀が金融緩和策として大量の上場投資信託(ETF)を買い入れていることは周知のとおり。その額は2018年には過去最高の約6兆5千億円となり、同年末までの累計額は25兆円近くに達している。これは、同時期における全東証1部上場企業の時価総額「562兆円」の5%に迫る額であり、東証1部上場に属する一部の企業では日銀が実質的な「筆頭株主」となっている可能性があるとの指摘も聞かれる。下表は日銀によるETFの買入額を示したものだが、現日銀総裁の黒田氏が日銀総裁に就任した2013年以降、加速度的に買入額が増加していることが分かる。

ETF :Exchange Traded Fundの略で、日本語では「上場投資信託」と訳されているとおり、証券取引所に上場しており、証券取引所での売買が可能。ETFは、TOPIXや日経平均といった指数を構成する銘柄をこれらの指数と同じ割合で保有しているため、必然的にこれらの指数と同じ値動きをすることになる。

(億円)
年間 累計 備考
2010年 306 306 目標4.500億円/年、対象はTOPIX(東証株価指数)と日経225(日経平均株価)に連動するETF
2011年 8,646 8,952
2012年 6,843 15,795
2013年 11,252 27,047 目標を1兆円/年に増額
2014年 13,217 40,264 同3兆円に増額JPX400に連動するETFを購入対象に追加
2015年 31,615 71,879 同3.3兆円に増額、設備人材ETFを購入対象に追加(3,000億円)
2016年 46,220 118,099 同6兆円に増額
2017年 59,033 177,132
2018年 65,040 242,172 設備人材ETF が連動する指数にMSCI女性活躍指数を追加

日経225:東証1部上場銘柄のうち取引が活発で流動性の高い225銘柄を選定したうえで算出されることからこう呼ばれる。

設備人材ETF:設備投資や人材投資に積極的に取り組む企業で構成されるETF。株価指数の算出やポートフォリオ分析などのサービスを提供する米国の金融サービス会社MSCIが算出した「日本株人材設備投資指数」や野村證券が算出した「野村企業価値分配指数」など、日銀が“適格認定”した指数に連動するETFが日銀による購入対象となる。

日銀によるETF購入は主に株価下落の局面において実施されてきた。直接的な株価上昇よりも、株価下落による損失リスクを抑制することで株式投資を活発化させる(すなわち、間接的に株価を上昇させる)ことを目的しているからだ。日銀によるETFの買い入れがスタートした2010年からTOPIXは約2倍となっており、アベノミクスの諸政策と相まって一定の効果はあったと言えるかもしれない(ただし、同期間におけるニューヨーク・ダウは3倍を超える上昇となっていた)。

一方で、日銀によるETF購入のデメリットとしては、主に下記のようなものが取りざたされている。

⓵日銀の財務リスク
株価下落によって含み損が発生、日銀の財務基盤が揺らぎ、最終的には国民が負担を強いられる。
⓶売却時の株価下落
リスク資産であるETFを永久に保有することはできないことから、売却時には株価が大幅に下落する可能性がある
⓷株価形成の歪み
業績などにかかわらず一定の買いが入るため、不当な株価が付く
⓸ガバナンスの低下
公的機関が大株主になることで、ガバナンス強化へのプレッシャーが弱まり、結果としてガバナンスが低下する

このうち、根本的な認識の間違いがあると思われるのが・・・

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2019/04/24 日銀ETFによりガバナンスは低下したか(会員限定)

日銀が金融緩和策として大量の上場投資信託(ETF)を買い入れていることは周知のとおり。その額は2018年には過去最高の約6兆5千億円となり、同年末までの累計額は25兆円近くに達している。これは、同時期における全東証1部上場企業の時価総額「562兆円」の5%に迫る額であり、東証1部上場に属する一部の企業では日銀が実質的な「筆頭株主」となっている可能性があるとの指摘も聞かれる。下表は日銀によるETFの買入額を示したものだが、現日銀総裁の黒田氏が日銀総裁に就任した2013年以降、加速度的に買入額が増加していることが分かる。

ETF :Exchange Traded Fundの略で、日本語では「上場投資信託」と訳されているとおり、証券取引所に上場しており、証券取引所での売買が可能。ETFは、TOPIXや日経平均といった指数を構成する銘柄をこれらの指数と同じ割合で保有しているため、必然的にこれらの指数と同じ値動きをすることになる。

(億円)
年間 累計 備考
2010年 306 306 目標4.500億円/年、対象はTOPIX(東証株価指数)と日経225(日経平均株価)に連動するETF
2011年 8,646 8,952
2012年 6,843 15,795
2013年 11,252 27,047 目標を1兆円/年に増額
2014年 13,217 40,264 同3兆円に増額JPX400に連動するETFを購入対象に追加
2015年 31,615 71,879 同3.3兆円に増額、設備人材ETFを購入対象に追加(3,000億円)
2016年 46,220 118,099 同6兆円に増額
2017年 59,033 177,132
2018年 65,040 242,172 設備人材ETF が連動する指数にMSCI女性活躍指数を追加

日経225:東証1部上場銘柄のうち取引が活発で流動性の高い225銘柄を選定したうえで算出されることからこう呼ばれる。

設備人材ETF:設備投資や人材投資に積極的に取り組む企業で構成されるETF。株価指数の算出やポートフォリオ分析などのサービスを提供する米国の金融サービス会社MSCIが算出した「日本株人材設備投資指数」や野村證券が算出した「野村企業価値分配指数」など、日銀が“適格認定”した指数に連動するETFが日銀による購入対象となる。

日銀によるETF購入は主に株価下落の局面において実施されてきた。直接的な株価上昇よりも、株価下落による損失リスクを抑制することで株式投資を活発化させる(すなわち、間接的に株価を上昇させる)ことを目的しているからだ。日銀によるETFの買い入れがスタートした2010年からTOPIXは約2倍となっており、アベノミクスの諸政策と相まって一定の効果はあったと言えるかもしれない(ただし、同期間におけるニューヨーク・ダウは3倍を超える上昇となっていた)。

一方で、日銀によるETF購入のデメリットとしては、主に下記のようなものが取りざたされている。

⓵日銀の財務リスク
株価下落によって含み損が発生、日銀の財務基盤が揺らぎ、最終的には国民が負担を強いられる。
⓶売却時の株価下落
リスク資産であるETFを永久に保有することはできないことから、売却時には株価が大幅に下落する可能性がある
⓷株価形成の歪み
業績などにかかわらず一定の買いが入るため、不当な株価が付く
⓸ガバナンスの低下
公的機関が大株主になることで、ガバナンス強化へのプレッシャーが弱まり、結果としてガバナンスが低下する

このうち、根本的な認識の間違いがあると思われるのが⓸だ。確かに、日銀はアセットオーナーとしてTOPIX構成企業(すなわち、全東証1部上場企業)の大株主になるが、議決権行使を含むエンゲージメントを行うのはアセットマネージャーである運用機関にほかならない。しかも、TOPIXに連動したETFを組成・運用するのも彼らであり、当然ながらスチュワードシップ・コードを受け入れている。したがって、日銀ETFの増加は、上場企業にとってむしろガバナンスが強化される要因となり得る。

これに対し、「問題がある企業の株式を売却することでプレッシャーをかけること(これを「ウォールストリート・ルール」という)ができなければ、ガバナンスの強化にもつながらない」との批判も散見される。しかし、これは日銀ETFに限った話ではなく、株式運用全体に占めるパッシブ運用の比率の高まりに起因する(パッシブ運用の進行については2019年2月7日のニュース「“パッシブ化”の進行と東証の市場構造の見直しが与える株価への影響」参照)。このようなパッシブ化の弊害を最小化するべく、機関投資家はスチュワードシップ・コードを受け入れ、エンゲージメントを強化し、議決権行使スタンスを厳格化してきたわけであり、上場企業の経営陣においても、「日銀ETFによってガバナンスが低下した」という最近メディアでも目に付く論調に流されることなく、自社のガバナンス強化に邁進したいところだ。

パッシブ運用:パッシブ(「消極的」なという意味)運用とは、東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法であり、ファンドマネジャーが独自に銘柄を選択して運用する「アクティブ運用」とは対極の関係にある

2019/04/23 不祥事がもたらした定時株主総会への“意外な”影響(会員限定)

相当な長期にわたり売上原価の付け替えという不正を行っていた事例として2018年12月26日掲載の「役員と会社の失敗学 第55回」でも採り上げたホシザキだが、その後さらに発覚した不祥事(ホシザキ東海における不適切な取引行為の継続、米国の製造販売子会社ホシザキ・アメリカにおける取引を巡る問題等の(現地監査法人への)内部通報)の影響もあり、4月23日時点で未だに決算関連手続(決算内容の発表、監査報告の受領など)が完了していない。このため、同社は定時株主総会で決算報告を行うことができず、改めて決算手続の完了後に臨時株主総会を開催する必要がある。臨時株主総会の基準日は4月11日に設定されており、同日から3か月以内に開催されることになる。

基準日: その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。定時株主総会の基準日を定款に記載しなければ、毎年、基準日を公告しなければならない。その手間を避けるために、定款に基準日を記載するのが通常である

こうした中、ホシザキは3月29日、3月27日に開催した定時株主総会における賛否に関する臨時報告書を提出している。下表が全議案の賛成率と決議結果である。

決議事項 備考 賛成率 決議結果
剰余金配当 1株につき80円 73.81% 可決
取締役選任 坂本 精志 代表取締役会長 68.16% 可決
小林 靖浩 代表取締役社長 68.16% 可決
本郷 正己 91.78% 可決
川井 秀樹 91.76% 可決
丸山 暁 国内営業部門担当 71.26% 可決
小倉 大造 グループ管理部担当 84.69% 可決
尾崎 司 91.76% 可決
落合 伸一 91.76% 可決
古川 義朗 91.76% 可決
水谷 正 新任 92.69% 可決
栗本 克裕 新任 92.69% 可決
家田 康嗣 新任 92.69% 可決
監査等委員選任 世古 義彦 新任、元人事部長 90.95% 可決
柘植 里恵 社外取締役 91.45% 可決

このうち取締役選任議案については、今回の不祥事に対し責任を負うべき役員に反対票が集まっていることが明確に分かる。ホシザキの株主構成は外国人が約25%、金融機関が約20%となっていることから、国内外の機関投資家比率は40%程度と推測される。代表取締役である会長と社長、国内営業部門の担当役員の選任議案への賛成率がそれぞれ68.16%、66.36%、71.26%と低かったことから推測すると、機関投資家の半分以上が三者に対して不信任を突きつけたと言える。また、グループ管理部の担当役員の選任議案への賛成率も84.69%にとどまっており、一定の反対票が入った。一方、3人の新任取締役の選任議案は相対的に高い賛成率となっているが、監査等委員の選任議案については、新任であっても相対的に低い賛成率にとどまった。

より興味深いのが剰余金処分議案だ。ホシザキは定款変更により剰余金処分の決定権限を取締役会に移譲しているため(会社法第459条1項)、例年の定時株主総会に同議案が諮られることはない。しかし、今回は下記の会社法の規定の存在により取締役会では決定できず、株主の判断を仰ぐこととなった。

会社法第459条2項
前項の規定による定款の定めは、最終事業年度に係る計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合に限り、その効力を有する。

決算関連手続が未了であることが定時株主総会の議案のラインナップにも影響した形だが、さらに注目されるのは、70%強という低い賛成率である。1株あたり80円という配当金額は、前期比で10円の増配にはなっている。ただ、前期の配当性向が21.9%と決して高い水準とは言えないこと、実質無借金経営であること、総資産の約6割に達する豊富な現預金を抱えていることなどから、株主還元に対する投資家の不満は小さくなかったものと推測される。従来から積もっていた投資家の不満が、今回限りの剰余金処分議案における賛否に表れたということは、不祥事がもたらした意外な影響だったと言えるかもしれない。

2019/04/22 TV/電話会議の導入で取締役会規則を改正する必要は?(会員限定)

会社法上、取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行うこととされているが(会社法369条1項)、最近の株主総会では取締役会への出席率が低い社外取締役の選任議案に反対票が投じられるケースが増えているように(2018年7月20日のニュース「社外役員選任議案に対する投資家の議決権行使スタンスが厳格化」参照)、コーポレートガバナンスの観点からは、全取締役が取締役会に出席するのが望ましいことは言うまでもない。とはいえ、コーポレートガバナンス・コード原則4-8が社外取締役の2名以上の選任を義務付けたことによる社外取締役の増加や、事業展開のグローバル化に伴う取締役の海外出張・赴任の増加などにより、毎月の取締役会の現場に全取締役が顔を揃えることは容易ではなくなりつつある。

こうした中、遠隔地からでも取締役会に参加できるようテレビ会議や電話会議システムを導入する企業は多い。取締役会の議事録の記載内容について定めた会社法施行規則に「取締役会が開催された日時及び場所当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。」(会社法施行規則101条3項一号)とあるように、会社法は、取締役会の現場に全ての取締役がいることを求めているわけではない。この規定を前提に、法務省はTVや電話を使って取締役会に参加することを認めているのも周知のとおりだ(TV会議については法務省民事局参事官室が平成8年4月19日付で公表した「規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について」、電話会議については平成14年12月18日付け民商3044号民事局商事課長回答「電話会議の方法による取締役会の議事録を添付した登記の申請について」参照)。このうち電話会議システムでは、「出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態」であることが求められている。要は、取締役会の現場にいる取締役の一人がその場にいない取締役会に電話して意見を聞きながら議事を進めるのはNGだが(平成23年8月9日福岡地裁判決)、スピーカー機能を利用した電話会議であれば、この要件を満たすことになる(TV会議についても同様の要件が求められているが、通常は要件を満たすことになる)。また、TVや電話を使って取締役会を行う場合には、この要件が満たされていることを議事録でも表現する必要がある。例えば審議に入る前には「議長は、審議に先立ち、TV会議システム(or電話会議システム)により、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態にあることを確認した」、審議の終了時には「本日のTV会議システム(or電話会議システム)を用いた取締役会は、終始異状なく議題の審議を終了した」といった記載だ。

ここまでは既に多くの経営陣が知っているものと思わるが、会員企業から疑問の声が寄せられたのが、TV会議や電話会議のシステムの導入にあたり、「取締役会には海外を含む遠隔地からこれらのシステムを使って参加することが可能である」旨を取締役会規則に記載すべきかどうかという点だ。結論から言えば、そのような記載は必須ではなく、「定時取締役会は原則として毎月1回本社において開催する」旨のみを規定している場合でも法的には問題ない。実際には、TV会議や電話会議によって遠隔地から取締役会に参加することが可能である旨を取締役会規則に規定している会社も見受けられるものの、そのような規定を設けていない会社も多数ある。この点は神経質になる必要はないと言えよう。