2019/04/15 社外取締役の「コンティンジェンシープラン」の必要性

周知のとおり、早ければ今年(2019年)秋の臨時国会に提出される会社法改正案では、公開会社かつ大会社である有価証券報告書提出会社に対して、社外取締役の設置が義務付けられる。本法案が成立すれば、ほとんどの上場会社は少なくとも1名の社外取締役を選任しなければならないことになる。もっとも、2015年に施行された改正会社法が「(社外取締役が1人もいない場合)社外取締役を置くことが相当でない理由の説明」を義務付けたことと、これに先立ち、2013年に議決権行使助言会社最大手のISSが社外取締役のいない企業の経営トップの再任に反対する助言ポリシーを導入したことなどにより、既にほとんどの上場会社は社外取締役を選任済みであるため、この改正による実質的なインパクトは限定的とみられる。

大会社 : 負債200億円以上または資本金5億円以上の株式会社

では、現時点で社外取締役がゼロの上場会社は何社あるのだろうか。東証一部に限定して確認してみたところ、4月12日現在でわずか・・・

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2019/04/15 社外取締役の「コンティンジェンシープラン」の必要性(会員限定)

周知のとおり、早ければ今年(2019年)秋の臨時国会に提出される会社法改正案では、公開会社かつ大会社である有価証券報告書提出会社に対して、社外取締役の設置が義務付けられる。本法案が成立すれば、ほとんどの上場会社は少なくとも1名の社外取締役を選任しなければならないことになる。もっとも、2015年に施行された改正会社法が「(社外取締役が1人もいない場合)社外取締役を置くことが相当でない理由の説明」を義務付けたことと、これに先立ち、2013年に議決権行使助言会社最大手のISSが社外取締役のいない企業の経営トップの再任に反対する助言ポリシーを導入したことなどにより、既にほとんどの上場会社は社外取締役を選任済みであるため、この改正による実質的なインパクトは限定的とみられる。

大会社 : 負債200億円以上または資本金5億円以上の株式会社

では、現時点で社外取締役がゼロの上場会社は何社あるのだろうか。東証一部に限定して確認してみたところ、4月12日現在でわずか3社に過ぎなかった。独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとするコーポレートガバナンス・コード原則4-8に対し、各社はコーポレート・ガバナンス報告書で以下のように“エクスプレイン”している。

サイボウズ 当社は社外取締役を選任しておりません。経営判断においては、事業環境を深く理解した取締役によって多角的に議論した上で、迅速な意思決定をすることが重要と考えておりますが、事業環境への理解が不足した社外取締役を置くことによって、意思決定の迅速性が阻害されるおそれがあります。(中略)
引き続き、今後の経営環境や事業戦略の変化、法改正の動向を踏まえ、社外取締役選任の可能性も含め、多様なメンバーによって議論される 環境、迅速な意思決定、適切なガバナンス体制等が確保される経営体制について検討していきたいと考えています。
クボテック 当社においても、近時のコーポレートガバナンス体制の充実に向けて、社外取締役候補者を探しております。(中略)社外取締役への就任をご承諾いただける適任者を見つけることができませんでした。
今後とも、適任者の選定に向けた取り組みを進めてまいりますが、適任者を見つけることができない現状で社外取締役を選任したとしても、迅速かつ柔軟な経営判断に支障を生じ、効率的な会社運営を阻害するおそれがある一方、経営に対する実効的な監督を期待することも難しいため、相当ではないと考えております。
住友不動産 独立社外取締役を2名置くことを原則としておりますが、2018年5月に1名、同年11月に1名が急逝したため、現在社外取締役は不在となっております。後任候補者の決定には、一定の時間を要するため、2019年6月度開催の定時株主総会において後任を選定し2名体制に復する予定であります。

サイボウズは、意思決定の迅速性が阻害されるおそれがあることから社外取締役を不要としつつも、法改正などがあれば選任を検討するとし、クボテックも、適任者がおらず選任しなかったものの、今後も適任者の選定に向けた取り組みを進めていくと説明している。両社とも、少なくとも会社法改正後は「社外取締役ゼロ」の状況は解消されるだろう。

住友不動産の場合、上記2社とは全く異なった事情による。同社はもともと独立社外取締役を2名選任しており、コーポレートガバナンス・コード原則4-8をコンプライできる状態にあったが、両名が相次いで死去したことで社外取締役がゼロとなり、同原則をエクスプレインしなければならない状況に至っている。下記は同社の2017年3月期の有価証券報告書「役員の状況」に記載されていた社外取締役2名に関する情報の抜粋である。なお、両者とも住友系企業に属していたが、あくまで「独立役員」とされていた。これは、両社とも住友不動産とは親子関係にないためだと思われる。

米倉 弘昌 昭和12年3月31日生 住友化学株式会社相談役
安部 正一 昭和15年9月20日生 株式会社住友倉庫代表取締役会長

両者の生年月日を見ると、2018年を迎えた時点で米倉氏は80歳、安倍氏は78歳だったことになり、ほぼ日本人男性の平均寿命である79.54歳(厚生労働省の平成22年簡易生命表による)に達していた。上記コーポレートガバナンス報告書のとおり、同社は「急逝」と表現しているが、客観的に考えれば想定し得るリスクだったとも言えよう。結果として、同社は約半年間、社内取締役しかいない取締役会で経営の重要事項を判断しなければならず、ガバナンス上、著しく監督機能を欠いた状態となっている。

日本の大企業の経営トップは、新卒で入社後、何十年にもわたる人事ローテーションを経てその地位に登り詰めたケースが多く、退任後に社外取締役として招聘された時点では相当な高齢になっていることが珍しくない。急に社外取締役がいなくなった状況において、M&Aやファイナンスなど少数株主との利益相反が生じる可能性のあるコーポレートアクションが必要になることもあり得る。社外取締役不在の取締役会による意思決定は資本市場から信任を得られない恐れがある。上場会社は「社外取締役のコンテンジェンシープラン」を持っておくべきだろう。

コンテンジェンシープラン : 予期せぬ事態に備えて、予め定めておく緊急時対応計画

2019/04/15 GW休業のお知らせ

誠に勝手ながら、2019年4月27日~2019年5月10日のゴールデンウィーク期間中、事務局は休業となります。ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い致します。

2019/04/12 (新用語・難解用語)デジタルガバナンス・コード(会員限定)

2015年にコーポレートガバナンス・コードの適用が開始されてから、今年の6月ではや4年が経過する。この間、コーポレートガバナンス・コードが採用している「プリンシプルベース」という考え方を取り入れた各種プリンシプルやコードが次々に策定されている。その先駆けが、日本取引所自主規制法人が2016年2月に公表した「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」であり、同法人は2018年3月にも「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」を公表している(2018年2月21日のニュース『日本取引所が「上場会社における不祥事予防のプリンシプル(案)」を公表』を参照)。企業向け以外では「監査法人のガバナンス・コード」が2017年3月に導入されたのをはじめ(2017年4月10日のニュース「監査法人のガバナンス・コード導入が企業に与える影響」を参照)、会長による強権的な運営が問題視された日本ボクシング連盟やハラスメント事件が起きた全日本柔道連盟や日本レスリング協会の一件を踏まえ、スポーツ庁のスポーツ審議会スポーツ・インテグリティ部会は、外部理事の目標割合(25%以上)や女性理事の目標割合(40%以上)といった数値目標を盛り込んだスポーツ競技団体向けのガバナンス・コードの策定を進めている(「スポーツ団体ガバナンスコード」の案はこちら)。既に英国やオーストラリア、カナダなどではスポーツ団体のガバナンス・コードが策定されており、日本も同じ道を歩むことになる。

スポーツ競技団体向けのガバナンス・コードはさておき、企業に大きな影響を与えそうな新たなガバナンス・コードが経済産業省の「システムガバナンスの在り方に関する検討会」で検討されている「デジタルガバナンス・コード」だ。2018年12月19日に官邸の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)が「民間部門において、重要産業を中心に、旧来のシステムの刷新、データ管理、セキュリティ対応等のデジタル化時代における競争性・効率性の強化と安全確保を両立させたシステムガバナンス、システム投資を促進する」との方針を決定した(「デジタル時代の新たなIT政策の方向性について」の6ページを参照)ことを受け、経済産業省に「システムガバナンスの在り方に関する検討会」が設置され、今年(2019年)の2月28日には第1回目の会合を開催、それから3回の会合を経て、本日(2019年4月12日)には同省から事務局を委託されているPwCコンサルティング合同会社が作成した「とりまとめ」の資料が公表された。

それによると、民間企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進するために、各民間企業におけるデジタルガバナンス・マネジメントの状況・達成度を測るための評価基準として「デジタルガバナンス・コード」を設計する方針が示されている。既存システムが、事業部門ごとに構築されていて全社横断的なデータの活用ができていなかったり、過剰にカスタマイズされていたりして、複雑化・ブラックボックス化している企業は少なくない。そのような企業は、老朽化した既存システムの維持にリソースを割くのが精いっぱいであり、その結果、デジタルトランスフォーメーションに遅れが生じ、競争優位を失っていく。日本全体で見ると、この問題が2025年以降に顕著な形で顕在化し、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があり、“2025年の崖”とも言われている。デジタルガバナンス・コードは、レガシーシステム技術的負債(Technical Debt)からの脱却、データ管理の不適切性の解消、サステナビリティの確保等により“2025年の崖”を克服し、イノベーションの創出、データの利活用、スピーディなサービスリリース等を実現してビジネスの高度化・創出・変革をもたらすことを目標にしている。

レガシーシステム : COBOL等誕生してから数十年が経過しているプログラミング言語で開発されたシステムなど旧来型のシステムを指す。社歴の長い企業を中心にレガシーシステムに依存している企業は少なくない。レガシーシステムをメンテナンスできる人材が年々減っていっている中、システムを維持するのも置き換えるのもコストがかかるため、デジタルトランスフォーメーションの足かせになっている。
技術的負債(Technical Debt) : 短期的な観点でシステムを開発し、結果として、長期的に保守費や運用費が高騰している状態
デジタルトランスフォーメーション(DX) : 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
デジタルガバナンス・マネジメント : デジタルガバナンス(デジタルトランスフォーメーションを継続的かつ柔軟に実現することができるよう、経営者自身が、明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で、組織・仕組み・プロセスを確立(必要に応じて抜本的・根本的変革も含め)し、常にその実態を掌握し評価をすること)の下で確立・運用される、デジタルトランスフォーメーションの継続的かつ柔軟な実現に向けた組織・仕組み・プロセスを、経営者と連携しながら管理すること。経営戦略と一体となり、経営者がコミットしている点が特徴。

デジタルガバナンス・コードは、下表のとおり、デジタルトランスフォーメーションとセキュリティの視点から、ガバナンス(経営の在り方、リーダーシップ、組織文化、人材等)やマネジメント(計画、運用、パフォーマンス評価、改善等)の各項目について達成度を評価するための物差しとして機能することが想定されている。

「とりまとめ」の22ページより転載。なお、下表中の「DX」とはデジタルトランスフォーメーションを指す。

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達成度を評価する者は、基本的には外部の人材ではなく社内の人材が想定されている(「とりまとめ」の31ページ)。これは、評価の際にはセキュリティや営業秘密に関する機微な内容に触れる可能性があるからだ。一方で、内部の評価実施者が評価を行う場合であっても、評価の客観性・独立性が確保される必要があることから、評価実施者には一定の規律が求められる公の資格の保有者()等が望ましいとされる。ただ、評価実施者がこれらの者で充分とは限らないともしている。デジタルガバナンス・コードが実際にワークするためには、評価実施者に必要な資質の特定や評価実施者の確保が大きな課題となりそうだ。

 ITコーディネータ、CIA(公認内部監査人)などが例示されている。

また、デジタルガバナンス・コード普及のため、「格付」制度(優良認定をし、格付マークを付与)、補助金や税制上の優遇措置、デジタルガバナンス・コードに基づく評価結果を受けて金融機関から融資を受けやすくするなどのインセンティブも検討されている。システムへの対応や投資はビジネス上のリスクとチャンスの両方に直結するだけに、格付制度が導入されるようなことになれば、投資家の投資判断においても参考にされることになりそうだ。

2019/04/12 (新用語・難解用語)デジタルガバナンス・コード

2015年にコーポレートガバナンス・コードの適用が開始されてから、今年の6月ではや4年が経過する。この間、コーポレートガバナンス・コードが採用している「プリンシプルベース」という考え方を取り入れた各種プリンシプルやコードが次々に策定されている。その先駆けが、日本取引所自主規制法人が2016年2月に公表した「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」であり、同法人は2018年3月にも「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」を公表している(2018年2月21日のニュース『日本取引所が「上場会社における不祥事予防のプリンシプル(案)」を公表』を参照)。企業向け以外では「監査法人のガバナンス・コード」が2017年3月に導入されたのをはじめ(2017年4月10日のニュース「監査法人のガバナンス・コード導入が企業に与える影響」を参照)、会長による強権的な運営が問題視された日本ボクシング連盟やハラスメント事件が起きた全日本柔道連盟や日本レスリング協会の一件を踏まえ、スポーツ庁のスポーツ審議会スポーツ・インテグリティ部会は、外部理事の目標割合(25%以上)や女性理事の目標割合(40%以上)といった数値目標を盛り込んだスポーツ競技団体向けのガバナンス・コードの策定を進めている(「スポーツ団体ガバナンスコード」の案はこちら)。既に英国やオーストラリア、カナダなどではスポーツ団体のガバナンス・コードが策定されており、日本も同じ道を歩むことになる。

スポーツ競技団体向けのガバナンス・コードはさておき、企業に大きな影響を与えそうな新たなガバナンス・コードが・・・

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2019/04/11 ACGAが勧める日本のCGルールの改正の方向

2019年4月9日のニュース『ACGAが「更なる変更を要する」としたCGコードの論点』では、ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会)がアジア諸国におけるコーポレートガバナンスの国別ランキングや評価などを示すレポートの2018年版「CG Watch 2018」における日本の評価が、特に「コーポレートガバナンス・ルール」のカテゴリーで低いことをお伝えしたが、ACGAは単に評価が低いと批判しているだけではなく、他のアジア諸国と同等の評価を得るためのルール改正の方向性を4つ示している。

ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会) : Asia Corporate Governance Associationの略で、アジアに投資するグローバルな機関投資家の団体。

まずは・・・

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2019/04/11 ACGAが勧める日本のCGルールの改正の方向性(会員限定)

2019年4月9日のニュース『ACGAが「更なる変更を要する」としたCGコードの論点』では、ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会)がアジア諸国におけるコーポレートガバナンスの国別ランキングや評価などを示すレポートの2018年版「CG Watch 2018」における日本の評価が、特に「コーポレートガバナンス・ルール」のカテゴリーで低いことをお伝えしたが、ACGAは単に評価が低いと批判しているだけではなく、他のアジア諸国と同等の評価を得るためのルール改正の方向性を4つ示している。

ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会) : Asia Corporate Governance Associationの略で、アジアに投資するグローバルな機関投資家の団体。

まずは「大量保有報告制度」の緩和だ。日本で集団的エンゲージメントを行おうとする場合、投資先企業の株式の大量保有者に対し大量保有報告書等の提出を義務付ける金商法上の大量保有報告制度がボトルネックになりかねない。大量保有報告制度上、たとえ単独での保有割合が5%以下でも、「保有者との間で、共同して株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している者」がいる場合には当該「共同保有者」の保有割合も合算する必要があり、集団的エンゲージメントを行った場合、この合算が求められる可能性がある。そこで、投資家は共同保有とみなされることを避けるため、投資家は議決権行使を含む一切の合意をしないよう注意しなければならない。ACGAはこのような規制は不合理であると批判している。また、大量保有報告書制度には、保有者の事務負担軽減の観点から、大量保有報告書(変更報告書)の提出頻度を減らす「特例報告制度」が設けられているが、「重要提案行為」を行った場合には、この特例の適用を受けられなくおそれがある。そこで規制当局は投資家に対し、重要提案行為に該当しないよう「単なる意見交換にとどめる」ことを推奨するが、ACGAは、それでは対話の質も量も落ちてしまうこと懸念している。

大量保有報告制度 : 市場の透明性・公正性を高め、投資者保護を図ることを目的として、株券等の大量保有者に対し「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出を義務付ける金融商品取引法上の制度。具体的には、①保有割合が5%超となった場合、②その後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合、それぞれ提出事由が生じた日から5営業日以内に「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出が求められる(②の場合に提出するのは「変更報告書」)。
特例報告制度 : 事前に届け出た「月2回の基準日」において、「大量保有報告書(変更報告書)」の提出義務を判断し、当該基準日から5営業日以内に報告書を提出すればよいとする制度。

2つ目が「公開買い付け」に関するルールの見直しだ。ACGAによると、香港の公開買い付け規制では、上場会社が非上場化を伴う強制買い付けを実施する際には「利害関係のない株主」から承認を得ることを義務付けている。一方、日本では「取締役会」が公開買い付けによる非上場化を決定する権限を有している。ACGAはこの権利は株主に与えられるべきものであり、香港と同様の規制とすることが望ましいとしている。

3つ目が「役員報酬の開示」である。日本では1億円以上の報酬を得ている役員の個別開示が義務付けられているが、ACGAはこれを不十分だと指摘する。取締役については社内および社外の全員、執行役員は少なくとも報酬額上位5人を開示対象とするように推奨している。さらにACGAは、確固たる権限(法的な裏付けを意味すると思われる)をもって役員報酬を監督する報酬委員会の設置を求めている。

4つ目が「独立社外取締役の要件」のルール化だ。ACGAは、日本企業が取引先出身の取締役の独立性を判断する基準を独自に定めていること、その基準が会社によって異なるために投資家が混乱していることを指摘している。また、東証の対応について、「上場規則で定める前に、資本市場に事実上の基準値(デファクト・マーケット・スタンダード)が成立するのを待っている模様だ」としたうえで、ACGAは可能な限りルール化を急ぐべきだと主張している。

ACGAの指摘は、我が国における将来の規制改革を占うものとも言えるが、上場企業各社は一歩進んで、投資家のニーズに応える取り組みを検討する際の材料とすべきだろう。

2019/04/10 「サマータイム」は健康に悪いとの調査結果

桜の季節が終わり、今後は酷暑の夏に向け徐々に気温が上がり始める。ゴールデンウイーク明けからクールビズをスタートする企業も多いことだろう。

また、一定期間(例えば6月~9月)、始業時間および終業時間を30分~1時間程度早める「サマータイム」を導入している企業もある。サマータイムを導入するメリットとしては、

・退社時刻が早まることで退社後自由に使える時間が増え、ワークライフバランスが向上する(家族と過ごす時間が増える、自己研鑽に使う時間の確保など)
・女性の活躍促進(夜の残業が減り、仕事と家庭が両立しやすくなるなど)
・早く退社するため自然と業務の効率化を意識するようになり、生産性が上がる(企業にとっては残業代の削減につながる)
・気温が低い朝のうちに業務を開始し、明るいうちに終えることで電力コストの削減につながる
・通勤ラッシュのピークの回避
・早寝早起きは健康に資する

といったことが言われている(サマータイムを含む朝型勤務のメリットについては2015年11月30日のニュース「早朝勤務を導入する目的」も参照)。

サマータイムは社員のワークライフバランスの充実や業務効率化への意識が高い著名企業での導入も目に付くが、サマータイムの本場である欧州では、・・・

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2019/04/10 「サマータイム」は健康に悪いとの調査結果(会員限定)

桜の季節が終わり、今後は酷暑の夏に向け徐々に気温が上がり始める。ゴールデンウイーク明けからクールビズをスタートする企業も多いことだろう。

また、一定期間(例えば6月~9月)、始業時間および終業時間を30分~1時間程度早める「サマータイム」を導入している企業もある。サマータイムを導入するメリットとしては、

・退社時刻が早まることで退社後自由に使える時間が増え、ワークライフバランスが向上する(家族と過ごす時間が増える、自己研鑽に使う時間の確保など)
・女性の活躍促進(夜の残業が減り、仕事と家庭が両立しやすくなるなど)
・早く退社するため自然と業務の効率化を意識するようになり、生産性が上がる(企業にとっては残業代の削減につながる)
・気温が低い朝のうちに業務を開始し、明るいうちに終えることで電力コストの削減につながる
・通勤ラッシュのピークの回避
・早寝早起きは健康に資する

といったことが言われている(サマータイムを含む朝型勤務のメリットについては2015年11月30日のニュース「早朝勤務を導入する目的」も参照)。

サマータイムは社員のワークライフバランスの充実や業務効率化への意識が高い著名企業での導入も目に付くが、サマータイムの本場である欧州では、2021年からサマータイムを廃止する法案がこのほどEU議会で可決されている(2019年3月26日付)。

EU諸国におけるサマータイム制度の開始は1980年に遡る。EU域内では既に1970年代から各国が主に省エネを目的に独自にサマータイムを実施していたが、サマータイムの開始時期が各国バラバラで、EU域内の経済活動に支障が出ていた。そこでEU加盟国におけるサマータイムの開始時期の統一が図られ、その後何度かの見直しを経て、現在はEU加盟国各国は「3月最終日曜」にサマータイムに移行(時計の針を1時間前倒し)し、10月の最終日曜に元の時間に戻すという運営が行われている。

今回、EU議会でサマータイム廃止が決まった最大の理由が「健康」への影響だ。「早起き=健康に良い」というイメージがあるサマータイムだが、EU委員会が調査したところ、人が1年間で異なる2つの時間帯を使い分けることは実は健康に悪影響を与えることが分かった。また、EUにおけるサマータイム導入のきっかけとなった省エネについても、近年は自動的に電力の使用量を制御する“スマート節電”等の省エネ技術の進歩により、サマータイムによる効果は限定的となっていた。決定打となったのがEU市民の意見だ。EU委員会が2018年7月~8月に実施したアンケートでは、アンケートに回答した460万人のEU市民のうちの84%がサマータイム廃止に賛成した。健康への悪影響が懸念され、省エネ効果も弱いサマータイムにEU市民も「No」を突きつけた格好だ。

EU委員会 : 欧州連合の政策執行機関で、法案の提出や決定事項の実施など、EU連合の運営を担う。1つの加盟国から1人の委員が選出されている。

結局、EU議会は3月26日の本会議において、賛成410(反対192、棄権51)という圧倒的な賛成多数で2021年からのサマータイム廃止を決定している。EU各国は、2021年3月の最終日曜にこれまでどおりサマータイムに移行した後、同年10月の最終日曜にサマータイムのままの時間を継続するか、サマータイム移行前の時間に戻すかを国ごとに決定するという。不測の事態に備え、サマータイムの廃止を1年延期できる措置も盛り込まれたもが、いずれにせよEUにおけるサマータイムは消滅する。

一時は2020年の東京五輪・パラリンピックの暑さ対策の一つとして日本でも導入論が浮上したサマータイムだが、サマータイムの生みの親とも言えるEUで「1年間の中で生活のリズムを変えることは健康に悪影響がある」などの理由から廃止が決まったことのインパクトは小さくない。既にサマータイムを導入している企業はもちろん、「働き方改革」というキーワードにもフィットしそうに見えるサマータイムの導入を検討している企業は、本件をきっかけにサマータイムについて再検討する必要がありそうだ。各社員の選択制という形でサマータイムを導入している企業もあるようだが、こうした企業は別として、全社員に一律にサマータイムを実施している企業は、一度社員の意見を聞いてみるべきだろう。社員数の多い上場企業ともなれば、朝型の人もいれば夜型の人もいるはずだ。今後は、特定の働き方を一律に社員に強制するのではなく、各社員のライフスタイルや性格に合わせた多様な働き方が実現できる企業が採用面でも優位に立つこととなる可能性は高い。今回のEUにおけるサマータイム廃止決定を、これまでの価値観(例えば「早朝出社は良いことだ」など)を捨て、生産性の向上性に資する“実効的な働き方改革”を検討するきっかけとしたいところだ。

2019/04/09 ACGAが「更なる変更を要する」としたCGコードの論点

ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会)がアジア諸国におけるコーポレートガバナンスの国別ランキングや評価などを示すレポートの2018年版「CG Watch 2018」において、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社、監査役設置会社という3つの機関設計が存在することなど日本のコーポレートガバナンスの「複雑さ」を批判していることは、2019年4月2日のニュース『ACGAが指摘する「Japan – Keeping it complicated」の意味』でお伝えしたとおり。一方で、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の導入・改訂など国を挙げてコーポレートガバナンス改革を進めているにもかかわらず、日本のランキングが下がった(2016年・4位→2018年・7位)ことについては、いまだに失望や批判の声もある。

ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会) : Asia Corporate Governance Associationの略で、アジアに投資するグローバルな機関投資家の団体。

では、ACGA、ひいてはグローバル投資家は日本のコーポレートガバナンス改革の進捗度をどのように捉えているのだろうか。CG WatchはIntroductionにおいて、最近2年間に実施された日本のガバナンス改革の各施策について以下のように評価している。・・・

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