ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会)がアジア諸国におけるコーポレートガバナンスの国別ランキングや評価などを示すレポートの2018年版「CG Watch 2018」において、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社、監査役設置会社という3つの機関設計が存在することなど日本のコーポレートガバナンスの「複雑さ」を批判していることは、2019年4月2日のニュース『ACGAが指摘する「Japan – Keeping it complicated」の意味』でお伝えしたとおり。一方で、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の導入・改訂など国を挙げてコーポレートガバナンス改革を進めているにもかかわらず、日本のランキングが下がった(2016年・4位→2018年・7位)ことについては、いまだに失望や批判の声もある。
ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会) : Asia Corporate Governance Associationの略で、アジアに投資するグローバルな機関投資家の団体。
では、ACGA、ひいてはグローバル投資家は日本のコーポレートガバナンス改革の進捗度をどのように捉えているのだろうか。CG WatchはIntroductionにおいて、最近2年間に実施された日本のガバナンス改革の各施策について以下のように評価している。
| ① スチュワードシップ・コードの改訂: 極めて必要性の高い変更が加えられた ② CGコードの改訂: あまり効果的な変更とは言えない ③ 監査法人のガバナンスコード(*)の導入: アジア初であり、不祥事に適切な対応 |
上記②にあるように、CGコードは改訂されたものの「although to less effect」と低い評価に甘んじており、7つあるカテゴリー別のスコアで「3. CG rules」は最低点(47% ※トップのオーストラリアは78%)となっている。さらにACGAは、日本のガバナンス規制について「いまだアジアの先進市場に遅れをとっている」と指摘している。昨年(2018年)に行われたCGコード改訂が投資家の要求水準に応えるものではなかったことが、「CG rules」のカテゴリー、ひいては全体のスコアが低迷した大きな要因と言えよう。
またACGAは、昨年のCGコード改訂で取り上げられなかった「変更を要する論点(more contentious change)」として、具体的に以下を例示している。
contentious : 「異論の多い」といった意味
| ・独立社外取締役の最低人数の引上げ(3人または3分の1) ・株主総会開催時期の後ろ倒し(例えば決算期末から4か月後) ・取締役会および経営陣における女性役員の役割拡大 ・独立社外取締役の定義厳格化(特に取引関係について) ・取締役会における監査委員会の役割拡大 ・取締役会の戦略/監督機能への特化(業務執行機能ではなく) |
これらの論点は次回の改訂(3年後もしくはより早期)時のテーマになり得るのみならず、機関投資家の視点(議決権行使基準など)としても注目する必要があろう。実際、独立社外取締役については三菱UFJ信託銀行が「3分の1」に引き上げ(2020年~)、女性役員についてはグラスルイスが「1名」を義務付け(2019年~)、独立性要件についてはISSが政策保有先出身の社外役員候補者の独立性を否定(2020年~)するなど、着実に議決権行使基準に反映させてきている。上場会社においてはCGコードの改訂を待たず、独自の対応を検討するべきだろう。
