2018/08/28 「規制」に守られていることのリスク(会員限定)

企業を経営するうえで、自社を守る武器と言えるのが「参入障壁」だ。自社にしかない技術やノウハウ、優良な立地、圧倒的なブランド、優秀な人材などは全て、自社と同じ事業を手掛けようとする他社にとっては参入障壁となるが、これらと違って自ら築き上げたものとは言えないものの、同じく参入障壁となり得るのが「規制」だ。

ただ、規制産業に属する企業は新規参入者から守られている一方で、買収のターゲットになりやすいという面もある。それを示したのが、アマゾンによるオンライン薬局ピルパック社の買収だ(6月に買収合意、買収完了は2018年下期予定)。

ピルパック社は、服用する複数の処方薬を仕分け・梱包して自宅に配送するサービスを展開しており、高齢化社会の到来を追い風にニーズの拡大が見込まれている。巨大な顧客網と配送インフラを持つアマゾンがこの業界に参入すれば、薬局業界の勢力図を大きく描き変えてしまうのではないかとも言われていたが、アマゾンにとってボトルネックとなっていたのが、各州で必要になる処方薬販売免許という「規制」だ。

しかし今回、50州で処方薬販売免許を持つピルパック社を買収することで、「規制」というアマゾンにとっての参入障壁は取り除かれたことになる。ピルパック社買収後のアマゾンの戦略は明らかになっていないが、アマゾンの新規参入で、現在は9割が薬局で購入されているという処方薬の購買習慣は一変することになるかも知れない。また、巨大な販売力を背景に、アマゾンが製薬会社と医薬品の価格について直接交渉するようになる可能性も指摘されている。もしそれによって医薬品の価格が下がることになれば、これまで処方薬を購入できなかった貧困層にも安価で薬を提供できるようになり、製薬会社の業績にも影響を与えることになるかも知れない。

規制産業に属する企業の役員や社員は「我が社は規制に守られている」といった感覚を持ちがちだが、アマゾンに買収されたピルパック社のように、規制に守られているという状況は買収者の目にも魅力的に映っているということを認識しておきたい。

2018/08/27 原則2-6「アセットオーナーとしての機能発揮」への対応で明確な傾向

(2018年)6月1日から施行されている改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)への対応状況を把握するため、今回新設された原則2-6(企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮)への対応状況を調査した結果(8月17日時点)、同原則について記載があったのは67社(同一企業による重複提出分を除く。以下同)で、TOPIX500採用企業に限定すると24社(同一企業による重複提出分を除く)が同原則2-6をコンプライしていることが判明しているが(8月20日掲載のニュース「現時点における各社の改訂CGコード対応状況」参照)、24社のコーポレートガバナンス報告書を分析したところ、同原則が「開示すべき」とする「運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組み」(以下、事面や運営面における取組み)には明確な傾向があることが分かった。・・・

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2018/08/27 原則2-6「アセットオーナーとしての機能発揮」への対応で明確な傾向(会員限定)

(2018年)6月1日から施行されている改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)への対応状況を把握するため、今回新設された原則2-6(企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮)への対応状況を調査した結果(8月17日時点)、同原則について記載があったのは67社(同一企業による重複提出分を除く。以下同)で、TOPIX500採用企業に限定すると24社(同一企業による重複提出分を除く)が同原則2-6をコンプライしていることが判明しているが(8月20日掲載のニュース「現時点における各社の改訂CGコード対応状況」参照)、24社のコーポレートガバナンス報告書を分析したところ、同原則が「開示すべき」とする「運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組み」(以下、事面や運営面における取組み)には明確な傾向があることが分かった。

同原則に対する東証のパブリックコメント(70ページの番号288、299)では、「人事面や運営面における取組み」の例として、①適切な資質を持った人材の企業年金の事務局や資産運用委員会への配置(以下、人材配置)、②そうした人材の育成(以下、人材育成)、③運用受託機関との間で当該機関が実施するスチュワードシップ活動について対話を行う際の必要なサポート(以下、外部専門家の活用)、が挙げられている。また、改訂CGコードとともに公表された金融庁の「投資家と企業の対話ガイドライン」5-1(4ページ)では、「運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・ 配置」には「外部の専門家の採用」が含まれることが明記されているが、これは上記③「外部専門家の活用」に該当すると考えられる。以下、原則2-6をコンプライした24社が、これら①~③のいずれに取り組むこととしたのか、確認してみよう。

① 人材配置
適切な資質を持った人材を配置しているとの記載は、24社中16社と全体の3分の2で見られた。原則2-6をコンプライするうえでの典型的なパターンになっていると言える。

本田技研工業 財務・人事の専門性を有した当社役職員を基金へ派遣する
りそなホールディングス 基金の代議員から選定される理事とともに、当社の人事、財務、市場運用等の責任者が委員として参加する資産運用委員会を定期的に開催する
大和ハウス工業 経理・財務部門から運用に関する適切な資質を持った人材を大和ハウス工業企業年金基金に配置する

② 人材育成
適切な資質を持った人材を育成しているとの記載は、24社中6社と全体の4分の1にとどまった。本原則は①の「人材の配置」で十分に説明できると判断した企業が多いということだろう。

Jフロント リテイリング 運用執行理事の交代に当たっては、就任時には企業年金連合会が主催する「新任運用執行理事研修」や年金業務幹事金融機関の就任時研修、に加え、投資機関各社が実施する各種セミナーに出席させるなどして必要な業務知識を習得させています
オリックス 担当者を外部セミナー等に派遣することで資質の向上を図っています

③ 外部専門家の活用
外部専門家の活用について記載したのは、24社中4社と全体の6分の1に過ぎない。コスト面などが懸念された可能性もあろう。

味の素 外部アドバイザーを起用して専門能力・知見を補完する
安川電機 運用コンサルタントと連繋し、適切な運用を図るとともに、企業年金の運用に携わる人材の専門性を高めています

なお、同原則をコンプライしている企業のうち確定拠出型年金を採用しているところは2社あった。東証は確定拠出型年金を採用している場合について、「例えば、運用機関・運用商品の選定や従業員に対する資産運用に関する教育の実施などの場面で、上場会社において適切な取組みがなされることが期待される」との考えを示している(パブリックコメント69~70ページの番号285参照。2018年7月4日のニュース「年金母体企業に機能発揮求める原則2-6、確定拠出年金導入企業の対応」参照)。下記は東証の考えに沿った記載と言えよう。

SOMPOホールディングス 制度導入各社の従業員に対し、eラーニングを活用した加入者教育の徹底やマッチング拠出制度の利用推奨等の働きかけを行っています

2018/08/24 MD&A「資本の財源および資金の流動性」開示のベストプラクティス

周知のとおり、2018年3月31日以降に終了する事業年度の有価証券報告書から、「MD&A」の記載事項のうち、従来は任意とされていた「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の記載が必須とされている(下表参照。MD&Aの改正については2018年2月5日のニュース『改正後の「資本の財源及び資金の流動性」には何を書く?』、2018年4月23日のニュース『具体例で見る「MD&Aに書くべきこと」』参照)。

MD&A : 「Management’s Discussion and Analysis of Financial Condition and Results of Operations」の略で、「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。

<有価証券報告書「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」欄に関する新旧開示府令>
※下線部が「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に関する改正部分
改正後 改正前
⒠ 経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析)を記載すること。また、資本の財源及び資金の流動性に係る情報についても記載すること。なお、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、当該経営方針・経営戦略等又は当該指標等に照らして、経営者が経営成績等をどのように分析・検討しているかを記載するなど、具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。 (36) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
a 届出書に記載した事業の状況、経理の状況等に関して投資者が適正な判断を行うことができるよう、提出会社の代表者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析、資本の財源及び資金の流動性に係る情報)を具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。

3月決算の上場会社は早速、2018年6月末日までに「資本の財源や資金の流動性に係る情報」を記載した有価証券報告書を提出しているが、当フォーラムが各社の有価証券報告書をチェックしたところ、記載のボリュームは会社によって大きく異なり、また、資金量に比例しているとは限らないことが確認されている。例えば巨額の資金調達を行っている・・・

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2018/08/24 MD&A「資本の財源および資金の流動性」開示のベストプラクティス(会員限定)

周知のとおり、2018年3月31日以降に終了する事業年度の有価証券報告書から、「MD&A」の記載事項のうち、従来は任意とされていた「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の記載が必須とされている(下表参照。MD&Aの改正については2018年2月5日のニュース『改正後の「資本の財源及び資金の流動性」には何を書く?』、2018年4月23日のニュース『具体例で見る「MD&Aに書くべきこと」』参照)。

MD&A : 「Management’s Discussion and Analysis of Financial Condition and Results of Operations」の略で、「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。

<有価証券報告書「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」欄に関する新旧開示府令>
※下線部が「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に関する改正部分
改正後 改正前
⒠ 経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析)を記載すること。また、資本の財源及び資金の流動性に係る情報についても記載すること。なお、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、当該経営方針・経営戦略等又は当該指標等に照らして、経営者が経営成績等をどのように分析・検討しているかを記載するなど、具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。 (36) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
a 届出書に記載した事業の状況、経理の状況等に関して投資者が適正な判断を行うことができるよう、提出会社の代表者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析、資本の財源及び資金の流動性に係る情報)を具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。

3月決算の上場会社は早速、2018年6月末日までに「資本の財源や資金の流動性に係る情報」を記載した有価証券報告書を提出しているが、当フォーラムが各社の有価証券報告書をチェックしたところ、記載のボリュームは会社によって大きく異なり、また、資金量に比例しているとは限らないことが確認されている。例えば巨額の資金調達を行っているソフトバンクグループの開示はボリュームが少なく、内容もあっさりしている。

<ソフトバンクグループの開示>
(d) 当社の資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、通信事業のキャッシュ・フローに依拠した財務運営から移行し、より純粋持株会社としての機能を強めるとともに、ソフトバンク・ビジョン・ファンドへの参画を通じ戦略的投資を引き続き行っていきます。同ファンドへの出資コミットメントの履行のための資金調達は、保有有価証券の活用ならびに売却などにより行う予定です。なお、ソフトバンクグループ㈱は、同ファンドへの出資コミットメント281億米ドルのうち約82億米ドル相当について、Arm Limited株式を活用して支払義務を履行します。

当期において、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドは297億米ドルの投資を行いました。なお、ソフトバンクグループ㈱は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドへの当期の支払義務64億米ドルについてArm Limited株式を活用して履行しました。このほか、当社はUberおよびDiDiへ合計129億米ドルの投資を行いました。これらの投資についてはソフトバンク・ビジョン・ファンドへの移管を前提に同ファンドへ紹介する予定です。

これらの資金需要に対応するため、当社は、アリババ株式を活用して80億米ドルを借入れたほか、ハイブリッド社債の発行により45億米ドルを調達しました。また、スプリントおよびアーム買収資金のリファイナンスを主目的とした資金調達を行い、2兆7,340億円を借入れ2兆6,913億円を返済すると共に、借入期間の長期化を実現しました。

2017年度にIR優良企業大賞を受賞した塩野義製薬はさらに短く、あっさりとした記述にとどまっている。

<塩野義製薬の開示>
③ 資本の財源及び資金の流動性
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は上記「① 経営成績等」に記載のとおりであります。
財務政策につきましては、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、必要に応じて内部資金の活用及び金融機関からの借入金や社債の発行により資金調達を行っております。
主な資金需要につきましては、運転資金として、医薬品に係る製造原価、研究開発費を含む販売費及び一般管理費等があります。また、設備資金として、医薬品に係る研究開発及び生産のための設備投資等があります。

一方、同じく2017年度にIR優良企業大賞を受賞した小松製作所の開示の充実ぶりは目を見張るものがある。

<小松製作所の開示>
② 流動性及び資金の源泉
<資金調達と流動性管理>
当社グループは、将来の事業活動に必要な資金を確保し、適切な流動性を維持することを財務の基本方針としている。この方針に従い、当社グループは金融機関借入、社債等の発行、融資枠の設定等、様々な資金調達の源泉を確保している。設備投資資金及び運転資金については、営業活動から得られたキャッシュ・フロー及び外部より調達した資金を充当している。更に、当社グループの資金の効率性を高めるため、海外子会社を含めたグループ間のキャッシュマネジメントシステム(グローバル・キャッシュ・プーリング、以下、「GCP」)を特定の金融機関と構築しており、特定の金融機関に対する預入総額を上限にGCP参加会社は借入を行っている。当GCPにおいては、預入金及び借入金の残高を相殺できる条項が含まれており、当連結会計年度末現在の相殺金額は244,289百万円となっている。

短期資金需要に対しては、営業活動から得られたキャッシュ・フローを主として充当し、必要に応じ銀行借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等でまかなっている。一部の連結子会社は、当連結会計年度末現在、金融機関との間に合計30,251百万円のコミットメントライン契約を締結して代替流動性を確保しており、その未使用枠は22,484百万円となっている。コマーシャル・ペーパーについては、当連結会計年度末現在、当社で180,000百万円のプログラムを保有しており、未使用枠は112,000百万円となっている。

当社は、中長期資金需要に機動的に対応するため、社債発行枠とユーロ・ミディアム・ターム・ノート(以下、「EMTN」)プログラムを保有している。当社は2016年11月に2年間有効の150,000百万円の社債発行枠を登録した。当連結会計年度末現在の未使用枠は100,000百万円となっている。なお、これ以外の過去に登録した社債発行枠に基づいて発行した分も含めた当社グループの社債の当連結会計年度末現在の残高は154,811百万円である。また、当社、コマツファイナンスアメリカ㈱及び欧州コマツコーディネーションセンター㈱で合わせて20億米ドルのEMTNプログラムを保有しており、このプログラムに基づいて、それぞれの発行体はディーラーとの間で合意されたすべての通貨の債券を発行できる。当連結会計年度末現在、当該EMTNプログラムにより発行された債券の残高は114,273百万円である。

当連結会計年度末現在、当社グループの短期債務残高は259,093百万円となり、前連結会計年度末に比べて130,641百万円増加した。短期債務は主に銀行借入であり、ジョイ・グローバル社の買収資金及び運転資金等に使用されている。

当連結会計年度末現在、長期債務残高(1年以内期限到来分含む)は551,504百万円で、前連結会計年度末に比べて271,254百万円増加した。長期債務は銀行、保険会社等からの借入金等280,768百万円、無担保社債154,811百万円、EMTN114,273百万円、キャピタルリース債務1,652百万円で構成されており、主にジョイ・グローバル社の買収資金、設備投資資金及び長期運転資金に使用されている。

当連結会計年度末現在のキャピタルリース債務を含めた有利子負債残高は前連結会計年度末比401,895百万円増加の810,597百万円となり、更に現預金を差し引いたネット有利子負債残高は前連結会計年度末比377,228百万円増加の663,740百万円となった。これらに加え株主資本が増加した結果、当連結会計年度末現在のネット・デット・エクイティ・レシオ(ネット有利子負債と株主資本の比率)は前連結会計年度末の0.18に対して0.40となった。

当連結会計年度末現在、流動資産は1,797,591百万円となり、前連結会計年度末に対し、378,070百万円増加し、また流動負債は989,661百万円となり、前連結会計年度末に対し289,479百万円増加した。その結果、流動比率は181.6%と前連結会計年度末に対し21.1ポイント減少となった。

営業活動から得られるキャッシュ・フロー、様々な資金調達手段、流動比率の水準に基づき、当社グループは、流動性ニーズや将来の債務履行のための手段を十分に確保しているものと考えている。

なお、当連結会計年度末現在の現金及び現金同等物の残高は144,397百万円であり、そのうち120,875百万円は海外子会社が保有している。

当社は、スタンダード&プアーズ、ムーディーズ・インベスターズ・サービス及び㈱格付投資情報センターから信用格付を取得している。当連結会計年度末現在、当社の発行体格付けは、スタンダード&プアーズ:A(長期)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:A2(長期)、㈱格付投資情報センター:AA-(長期)、a-1+(短期)となっている。

<設備投資>
 建設機械・車両事業では、主に生産性向上のための設備投資及び循環事業強化のための設備投資等を行った。リテールファイナンス事業では、賃貸用資産に係る設備投資等を行った。産業機械他事業では、老朽設備更新等のための設備投資を行った。これらの結果、当連結会計年度の設備投資額は145,668百万円と前連結会計年度比3,662百万円の増加となった。

<契約上の債務>
当連結会計年度末現在の契約上の債務は次のとおりである。
38658
(注)1. 長期債務の公正価額の調整額はない。
2. 有利子負債に関する利息は、当連結会計年度末現在有効な利率に基づき計算されている。
3. 年金及びその他の退職給付債務は、2019年度以降の拠出額は未確定であるため、2018年度に生じるものだけを記載している。

なお、当連結会計年度末現在の設備発注残高は、約19,700百万円である。

小松製作所の開示は、情報の細かさだけを見ると、資金調達がビジネスの肝となる商社、その中でも特に開示が充実している三井物産(全171ページに及ぶ有価証券報告書の約5%に相当する8ページ以上を「流動性及び資金の源泉」の開示に費やしている)には及ばないものの、一般的な事業会社からしてみれば、小松製作所の開示は1つのロールモデルとなり得る。同社の開示内容から他社にとっても参考になるポイントを抽出したのが下表だ。自社の開示で不足している点がないか、下表を活用して検証しておきたい。

<資金の源泉>
テーマ 概要
親会社の資金調達方針 「将来の事業活動に必要な資金の確保」と「適切な流動性の維持」が財務の基本方針であることを示したうえで、基本方針に沿って具体的にどのような資金調達を行っているかを説明。
グループファイナンスの方針(連結ベースでの資金管理体制) グループにおける資金の効率性を高めるために採用している海外子会社を含むグループ間のキャッシュマネジメントシステムについて説明。
短期資金需要に対応するための資金調達手段と方針 主に営業活動から得られたキャッシュ・フローを充当し、必要に応じて銀行借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等でまかなう方針を示している。また、コミットメント・ライン契約やコマーシャル・ペーパー・プログラムの未使用枠を開示。
中長期資金需要に対応するための資金調達手段 社債発行枠と、ユーロおよび米ドルのミディアム・ターム・ノート・プログラムを開示。
資金調達実績と使途 短期債務および長期債務の当期と前期の連結会計年度末残高を比較しつつ、資金使途を開示。
期間別支払見込額 表を用いて、債務の種類ごとに、「1年以内」「1~3年」「3~5年」「5年超」の返済期限別金額を開示。
<流動性>
テーマ 概要
ネット有利子負債残高 当連結会計年度末現在のキャピタル・リース債務を含めた有利子負債残高と現預金を差し引いたネット有利子負債残高を開示。
ネット・デット・エクイティ・レシオ 当期と前期の連結会計年度末のネット・デット・エクイティ・レシオ(「デット」に上記「ネット有利子負債残高」を使用して算出したデット・エクイティ・レシオ)を比較。
財務分析 当期と前期の連結会計年度末の流動比率を比較。
経営者の評価 営業活動から得られるキャッシュ・フロー、様々な資金調達手段、流動比率の水準を踏まえ、自社グループが、流動性ニーズや将来の債務履行のための手段を十分に確保しているものと考えている旨を表明。
信用格付け スタンダード&プアーズ、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、格付投資情報センターから得ている信用格付を開示。

キャピタル・リース債務 : 所有権移転外ファイナンス・リース取引(法形式的には所有権は借り手に移転しないものの、経済実質的にはリース物件からもたらされる経済的利益を借り手が実質的に享受できるリース取引)をオンバランスした場合に計上するリース債務
ネット・デット・エクイティ・レシオ : 有利子負債/株主資本。返済義務のあるデット(有利子負債)が返済義務のないエクイティ(株主資本)の何倍あるかを示し、長期の支払い能力を判断(安全性分析)する際に使われる指標。この数値が「1」を下回れば、有利子負債のすべてを株主資本でカバーしていることを示しており、財務の安全性が高いと言える。
流動比率 : 貸借対照表(B/S)上の流動負債(1年以内に支払わなければならない負債)を流動資産(流動負債の支払いに回すことができる資産)がどの程度上回っているか(あるいはどの程度下回っているか)を示す指標であり、流動比率が高い企業ほど財務の安全性が高いと評価される。「流動資産÷流動負債」によって計算される。

「資本の財源や資金の流動性に係る情報」の開示のボリュームが少ない会社では、「経営者の評価」を記載していないケースが目に付く。そもそも改正開示府令では「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」覧を「経営者の視点による認識及び分析・検討内容」を記載する場所と位置付けている(上記新旧開示府令の赤字部分参照。以下同)以上、「資本の財源や資金の流動性に係る情報」についても「経営者の視点による認識及び分析・検討内容」を記載する必要がある。

また、「具体的に、かつ、分かりやすく記載する」という開示府令の要請に応えるために、図表を随所で用いるのは有益だろう。白黒では単調になりがちなので、カラーで表示するのも一案だ(カラーの図や表を効果的に用いている例として、三井物産の2018年3月期の有価証券報告書20ページ参照)。

なお、信用格付けは外部の格付け機関の評価結果であり、開示府令が求める「経営者の視点」とは関係がない。小松製作所が信用格付けに関する情報を<資金調達と流動性管理>の末尾に配置したのもそのためだと思われる。「方針」から始まり、資金の源泉や流動性について説明した後、経営者の評価を記載し、信用格付け等の補足情報を開示するという流れも参考にしたい。

2018/08/23 代表取締役が負う「内部統制システムの構築義務」の程度

不祥事により会社に損害が発生するたびに取締役の責任が問題になるが、その際、取締役の責任の程度や有無を左右することになるのが、内部統制システムの整備状況だ。

内部統制システムとは会社法上の概念であり、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他会社の業務並びに当該会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制」(会社法362条4項六号 ※一部簡略化)を指す。要するに、取締役自身の職務執行や、企業および企業グループの業務を法令等に則った適正なものとするための仕組みと言えよう。すべての上場会社が該当することになる取締役会設置会社で、かつ(大部分の上場会社が該当する)会社法上の大会社に該当する会社は、取締役会自身が内部統制システムに関する事項を決定しなければならず(会社法362条5項)、例えば社長に一任することはできない(同4項)。そこで取締役としては、万が一自社で不祥事が発生した場合、果たしてどの程度の内部統制システムを構築しておけば責任を免れることが出来るのか、気になるところだろう。・・・

会社法上の大会社 : 資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社

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2018/08/23 代表取締役が負う「内部統制システムの構築義務」の程度(会員限定)

不祥事により会社に損害が発生するたびに取締役の責任が問題になるが、その際、取締役の責任の程度や有無を左右することになるのが、内部統制システムの整備状況だ。

内部統制システムとは会社法上の概念であり、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他会社の業務並びに当該会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制」(会社法362条4項六号 ※一部簡略化)を指す。要するに、取締役自身の職務執行や、企業および企業グループの業務を法令等に則った適正なものとするための仕組みと言えよう。すべての上場会社が該当することになる取締役会設置会社で、かつ(大部分の上場会社が該当する)会社法上の大会社に該当する会社は、取締役会自身が内部統制システムに関する事項を決定しなければならず(会社法362条5項)、例えば社長に一任することはできない(同4項)。そこで取締役としては、万が一自社で不祥事が発生した場合、果たしてどの程度の内部統制システムを構築しておけば責任を免れることが出来るのか、気になるところだろう。

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こうした中、当フォーラムでは、代表取締役の内部統制システム構築義務違反が問われた裁判の判決を入手したので紹介する。株主から訴えを提起されていたのが、2014年5月10日掲載の「役員と会社の失敗」第2回でも紹介したリソー教育(東証一部上場)だ。

リソー教育は2度にわたる粉飾決算という重大な不祥事を起こしている。1度目は次期実施予定の授業の売上約6億円を2007年2月期に前倒し計上したものであり、2度目は、生徒が授業に欠席したにもかかわらず役務の提供があったものとみなして売上を仮装計上することなどにより、2008年2月期から2014年2月期の第2四半期にかけて約84億円の売上を不正計上したもの。

1度目の粉飾決算が発生した際、当時の代表取締役は不適切な会計処理の再発防止を図るため、授業実施数を正確に管理・集計するJシステムと呼ばれるシステム(以下、Jシステム)を構築して導入したほか、内部監査室の体制強化などを図った。それにもかかわらず2度目の粉飾決算が発生したことから、株主は2度目の粉飾決算を取り上げ「虚偽の数値の入力が可能なJシステムを導入し、また十分な監査機能を発揮できない内部監査室を設置するなど、内部統制システムの構築義務などを怠った代表取締役には善管注意義務違反・忠実義務違反がある」として、代表取締役に対し、リソー教育が金融庁から課された課徴金(4億1,477万円)等の損害賠償を求める株主代表訴訟を東京地裁に提起した。しかし結論から言えば、東京地裁は代表取締役に内部統制システムの構築義務違反はないとして、代表取締役勝訴の判決を下している(2018年3月29日判決)。

東京地裁は内部統制システムの構築義務違反について、「代表取締役は原則として、通常想定される不正行為を防止し得る程度の管理体制を整えれば足り、不正行為が通常容易に想定し難い方法によるものであった場合には、代表取締役において不正行為の発生を予見すべきであったという特別な事情がない限り、その代表取締役に不正行為を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるということはできない」との解釈を示している。この解釈はかつて、事業部長らによる不正行為等を発見することができなかった代表取締役の責任が問われた裁判で、最高裁が代表取締役に責任はない(すなわち、代表取締役側が勝訴)とした判決(2009年7月9日)の考え方を踏まえたものとなっている。

この解釈に基づき東京地裁は、(1)Jシステム導入後に2007年の不正会計(1度目の不正会計)の手法を用いた売上の不正計上はできなくなったことから、Jシステムは、1度目の不正会計が発覚した当時に想定された不正行為を防止する程度の機能を有していた、(2)2008年2月期から2014年2月期の第2四半期にかけて発生した2度目の不正会計では、不正な会計処理を幹部役員が指示・黙認するなど1度目の不正会計とは全く異なる要因に基づいて発生した―――など事情を考慮すれば、内部システムを導入した当時において、2度目の不正会計の手法が用いられることは通常想定されるものではないと判断。そのうえで、「代表取締役が整備した内部統制システムはリソー教育の事業内容、規模等に照らして通常想定される不正行為を防止し得る程度の機能ないし有用性を備えていたとことから、内部統制システムの構築義務違反は認められない」として、株主の主張を退けている。

また、粉飾決算の発覚に伴いリソー教育の株価が大幅に下落したことを受け、同社の株主はリソー教育に対し、金商法21条の2(虚偽記載等のある書類の提出者の賠償責任)に基づく損害賠償を請求する訴訟を東京地裁に提起していたが、東京地裁は、同社が行った連結利益の5割以上、連結純利益の8割以上に相当する水増し計上は同条に規定する「重要な事項について虚偽の記載」に該当し、同社は同社株式の取得者に対して同条(1項)に基づく損害賠償責任を負うと判断。同社に対し、虚偽記載の発覚から売却日までの株価下落分の一部について株主への損害賠償を命じている(2017年3月28日判決)。

一方、リソー教育は二度目の不正会計に関与した元取締役らに3億円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起していたが、取締役らは請求を受け入れたことから、本訴訟は終了している(同社のリリースはこちら)。

2018/08/22 海外企業による買収リスク上昇の恐れも

近年、買収防衛策を廃止する企業が相次いでいるが(買収防衛策に対する最新の賛否動向は、2018年7月23日のニュース「買収防衛策への賛成率が大幅に低下、その背景にあるものは?」参照)、日本企業が相次いで買収防衛策を導入するきっかけとなったのが・・・

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2018/08/22 海外企業による買収リスク上昇の恐れも(会員限定)

近年、買収防衛策を廃止する企業が相次いでいるが(買収防衛策に対する最新の賛否動向は、2018年7月23日のニュース「買収防衛策への賛成率が大幅に低下、その背景にあるものは?」参照)、日本企業が相次いで買収防衛策を導入するきっかけとなったのが「三角合併」の解禁だ。

三角合併 : 通常、合併の際には、消滅会社の株主に対して、合併の対価として、存続会社の株式が交付されるが、存続会社ではなくその親会社の株式を交付して行う合併が三角合併である。

通常、合併の際には、存続会社は消滅会社(被合併会社)の株主に対し、合併の対価として存続会社の株式を交付することになるが、2006年の会社法の創設時に“合併対価の柔軟化”として、吸収合併等の際には、存続会社の株式を交付せずに「金銭その他の財産」を交付することが認められたところだ。この結果、存続会社が合併の対価として「存続会社の親会社」の株式を消滅法人の株主に交付することもできるようになった。また、会社法における三角合併の解禁に伴い法人税法も改正され、三角合併が税制適格再編の対象に加えられている。ところが、三角合併が解禁された際には、海外企業による日本企業の買収を加速させる恐れがあるとして産業界から反対の声が続出、その実施が会社法施行日の1年後となる「2007年5月1日~」に延期された。日本企業に買収防衛策を準備する期間を与えるためだ。

税制適格再編 : 合併や分割などの組織再編に伴う資産や負債の移転は課税対象となるのが原則だが、「企業グループ内の組織再編」や「共同事業を行うための組織再編」など税法が認める組織再編は、「税制適格」の組織再編として、組織再編時に課税を受けないことになっている。

あれから10年余りを経て今や買収防衛策を廃止する企業が相次ぐなどコーポレートガバナンスに対する考え方は一変した。こうした中、日本企業があれだけ反対した三角合併が来年度にも拡充される可能性があることが、当フォーラムの取材により判明した。

現行法人税法上、税制適格再編となる三角合併は、消滅会社(被合併会社)の株主に存続会社の「親会社」の株式を交付する場合に限られる。ただ、合併対価として親会社株式のみしか認められないとなると、事実上三角合併が困難となるケースが出てくる。例えば、上場会社である持株会社A社の下に事業会社B社、さらにその下に事業会社C社がぶら下がっているとしよう。この場合、C社が三角合併を目論み、合併の対価として親会社であるB社株式を使用しようとしても、B社は上場会社ではないため株式に流動性がないことから、現実には難しい。そこで現在政府内で検討されているのが、法人税法を改正し、従来の親会社株式に加え、“祖父会社株式”(C社にとってのA社)を合併対価とした場合も税制適格再編に加えようという案だ。2019年度税制改正での実現を目指す。

先日(2018年6月11日)には、東証一部に上場する楽天が、生命保険や損害保険など保険関連の子会社5社を統括する中間持株会社「楽天インシュアランスホールディングス」を設立することをリリースしたが、仮に楽天グループが新たに生命保険会社を手中に入れようという場合、中間持株会社が子会社の統括を役割としており、自らは事業を行っていないというのであれば、中間持株会社ではなく、(楽天にとって)孫会社である既存の生命保険会社と合併させた方がシナジーを得られるということも考えられる。そして(もし法人税法の改正が実現すれば)その際には、“祖父会社”である楽天の株式を合併対価とする三角合併スキームが使えることになる()。
 あくまで説明の便宜上の仮定の話である点、ご留意ください。

中間持株会社 : 親会社の傘下で、類似した業種の複数の子会社を統括する会社のこと。

この政府案を法令化する際には、親会社を合併対価とする従来の三角合併同様、日本企業はもちろん海外企業も使えるものにするはずだ。海外の上場会社の中にも、日本に中間持株会社を置き、その下に子会社(海外の上場会社にとっては孫会社)をぶら下げるケースが見られる。上記同様、この場合も、当該子会社が日本企業を三角合併により手中に入れようとするならば、“祖父会社株式”である海外の上場会社の株式を合併対価として活用できることになる。

これまで三角合併はほとんど活用されて来なかったのが実態だが、“祖父会社株式”を合併対価とした場合も課税が生じないスキームが導入された暁には、中間持株会社を有する企業グループを中心に利用が広がる可能性もありそうだ。

2018/08/21 (新用語・難解用語)デザイン経営

デザインを「重要な経営資源」として企業経営に活用すること。

特許庁は(2018年)6月28日、特許権等の知的財産の出願・登録状況といった知的財産の動向や知的財産に関する特許庁の国内外の取組みなどを毎年報告する「特許行政年次報告書」の2018年度版を公表したが、今年度の報告書の中で目に付くのがこの「デザイン経営」という言葉だ。

「デザイン経営」の具体的な中身は、・・・

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