正解です。
金融庁に設置された公認会計士・監査審査会が7月31日に公表した「平成30年度版モニタリングレポート」(69ページ参照)によると、2018年6月期に監査人を大手監査法人から別の監査法人に変えた企業における変更理由として最も多いのは「監査報酬」でした(問題文は「監査人からの辞任」が最も多いとしており、誤りです)。
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2018/08/02 監査法人を大手→中小に変更する上場企業増加の背景で起きていること(会員限定)
正解です。
金融庁に設置された公認会計士・監査審査会が7月31日に公表した「平成30年度版モニタリングレポート」(69ページ参照)によると、2018年6月期に監査人を大手監査法人から別の監査法人に変えた企業における変更理由として最も多いのは「監査報酬」でした(問題文は「監査人からの辞任」が最も多いとしており、誤りです)。
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2018/08/02 監査法人を大手→中小に変更する上場企業増加の背景で起きていること(会員限定)
2018年6月1日から施行されている改訂コーポレートガバナンス・コードでは【原則1-4. 政策保有株式】が見直され、従来から開示が求められていた「政策保有に関する方針」の具体例として「政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など」が示されたほか、個別の政策保有株式について保有の適否を検証するとともに「検証の内容」を開示すべきとされました。このため、多くの上場会社は、これまで通りの開示では同原則を「コンプライ」しているとは言えなくなりそうです。上場会社の役員としては、同原則に対応するため、最低限何をしておくべきでしょうか。同原則の改訂内容や改訂の目的を踏まえ、考えてみてください。
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東証1部・2部上場企業は、2018年6月1日から施行されている改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)に準拠したコーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)を「準備が出来次第速やかに、遅くとも2018年12月末までに」提出することが求められています(2018年3月30日に東証が公表した「フォローアップ会議の提言を踏まえたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」参照)。
企業がCGコードに準拠したCG報告書を作成するうえで頭を悩ませているのが、改訂CGコード【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】が求める「自社の資本コストを的確に把握」することです。
| 経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資・人材投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。 |
旧CGコードにも「資本政策」(【原則1-3.資本政策の基本的な方針】【原則1-6.株主の利益を害する可能性のある資本政策】【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】)や「資本効率」(第4章 取締役会等の責務【基本原則4】【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】)など「資本」という文字が含まれる用語は存在していましたが、「資本コスト」という用語は改訂CGコードで初めて登場しています。
改訂CGコード【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】に「資本コスト」という用語が追加されたことで、企業には①自社の資本コストを把握することと、②資本コストに見合うリターンを上げるための経営戦略・経営計画等を公表することが求められています。そして、その結果として、経営環境の変化に対応した果敢な経営判断を行えるようになることが期待されています。
なお、改訂CGコードは、【原則1-4.政策保有株式】においても、政策保有株の保有の適否を検証する際に、保有に伴う便益やリスクが「資本コスト」に見合っているかを精査するよう求めています(この点については次回「今月課題」、「【原則1-4. 政策保有株式】への対応」で触れる予定です)。
新たに「資本コスト」という用語が追加された【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】への対応に企業が苦慮している大きな理由としては、改訂CGコードのどこを見ても、「資本コスト」の定義が置かれていないということが挙げられます。改訂CGコードに対するパブコメには、企業に資本コストの考慮を求める今回の改訂を歓迎する意見が見られた一方で(東証によるパブコメへの回答7ページ 番号29・30参照)、実務的な対応の難しさから批判的な意見や疑問も寄せられています。例えば、資本コストはファイナンスの専門家でも測定は困難であるとの指摘(同7ページ 番号31)のほか、資本コストの一般的計算方法や、資本コストが株主資本コストと加重平均資本コスト(株主資本コストと加重平均資本コストの詳細は後述)のどちらを指すのかを明示することを求めるもの(同9ページ 番号35)などです。これらに対する東証の回答は下記のとおりとなっています(同9ページ)。
| 「『資本コスト』は、一般的には、自社の事業リスクなどを適切に反映した資金調達に伴うコストであり、資金の提供者が期待する収益率と考えられます。適用の場面に応じて株主資本コストやWACC(加重平均資本コスト)が用いられることが多いものと考えられます。」 |
上場企業の資金調達方法には主に株式(株主資本または自己資本。以下、「株主資本」という)による方法と負債(以下、「他人資本」という)による方法がありますが、このうち株主資本により資金調達を行った場合のコストが「株主資本コスト」です。株主資本コストとは、上記東証の回答にもあるように「資金の提供者が期待する収益率」、すなわち株主資本の提供者である株主が期待する収益率のことを指します。一方、他人資本コストとは要するに借入金の金利です。この株主資本と他人資本を合わせた「総資本」のコストが「総資本コスト」であり、下記で説明するように、その計算方法から「加重平均資本コスト」とも言われます。
総資本コストが加重平均資本コストと言われるのは、総資本コストは、下記の算式のとおり株主資本コストと他人資本コストを、株主資本(株式の時価総額)と他人資本(負債総額)の合計額に占めるそれぞれ額で按分(加重平均)した上で合計するためです。加重平均資本コストは英語では「Weighted Average Cost of Capital」と訳されることから、東証の回答にもあるように、その頭文字をとって「WACC(ワック)」と呼ばれるのが通常です。
なお、下記の算式で負債コストに(1-法人税実効税率)を乗じているのは、金利は法人税の計算上損金に算入され税負担を減らすためです。すなわち、WACCは、税負担の低減効果が反映された上での資金調達全体の平均的なコストを指すということになります。
法人税実効税率 : 法人税、住民税、事業税といった企業の利益に課税される税の総合的な負担率のこと。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
損金 : 法人税計算の基礎となる法人所得を減らす性質の支出等のこと。損金は企業会計上の費用とおおむね一致するが、役員賞与や固定資産の減損損失など「損金には該当しない費用」もある。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
| WACC=負債コスト×D/(D+E) × (1-T) +株主資本コスト×E/(D+E)
D(Debt):負債総額 |
もっとも、以下で述べるように、上記の東証の回答だけで企業が「資本コスト」を算定する上での不確定要素が明確になったわけではありません。この点からすると、「資本コストの計算方法は企業がそれぞれ自主的に検討すべき」というのが、東証のスタンスと言えるでしょう。
では、実際のところ資本コストはどのように算出すればよいのでしょうか。
改訂CGコードの原則5-2が求める「資本コストの的確な把握」を行うにあたって難題となるのが、「株主資本コスト」をいかにして求めるのかということです。上記算式で示したとおり、WACCを計算するには負債コストと株主資本コストを計算する必要がありますが、負債コストには借入金の金利を用いれば済むのに対し、株主資本コストは「株主が期待する収益率」であると説明されるものの、当然のことながら株主がそのような収益率を明示しているわけではありませんし、また、企業が調べるのも困難だからです。
一人ひとり考え方が異なる株主の期待する収益率を把握するため、株主にアンケート調査を行って“平均的な期待収益率”を探るという方法も考えられなくはありません。しかし、この方法ではそもそも株主側が質問に答えてくれる(答えられる)かどうかもわかりませんし、アンケート調査に要する手間を考えれば、調査によって把握した数値を適時にアップデートすることもできませんので、現実的な方法とは言えないでしょう。
したがって、株主資本コストは、その計算プロセスにおいて多くの仮定を置いた推計値とならざるを得ません。しかも、後述するように株主資本コストの推計方法はいくつもある上、推計の基礎となるデータの取り方次第で様々な数値が出てくることになります。
株主が期待する収益率は当然ながら“将来に向けた期待”に基づくものであるはずですが、これを正確に計測するのはほぼ不可能でしょう。そこで、現実には、様々な仮定を置いて将来を見通そうとする方法や、将来は過去の延長線上にあると考え、過去のデータを将来への期待値として代用する方法が用いられています。
将来を見通す方法の一つが「配当割引モデル」です。配当割引モデルとは、現在の株価は、将来にわたってその株式を持ち続けた場合に株主が得られる配当額の現在価値の合計値であるとする考え方です。すなわち、1年後、2年後、3年後、…n年後の配当額をそれぞれ現在の価値に換算し、その合計額が現在の株価になっているということです。配当額を現在の価値に換算するためには、株主が企業に期待する現在の株価に対する配当額の比率(=株主資本コスト)で割り引くことになります。現在の株価(=投資家が当該株式を購入するために要する額)をP0(P=Price)、配当額をD(D=Dividend)、投資家が企業に期待する現在の株価に対する配当額の比率(=株主資本コスト)をr(r=return)とすると、次の算式が成り立ちます。
| P₀=D₁/(1+r)+D₂/(1+r)²+D₃/(1+r)³+…+ Dn/(1+r)ⁿ
P₀:現在の株価 r:株主資本コスト Dn:n期の配当額 |
株価と配当額が分かれば、ここから逆算して株主資本コスト(r)を求めることが可能ですが、配当額は将来変動することが十分あり得るため、配当割引モデルを用いて株主資本コストを算出する方法は、将来の配当額の予想次第で変動してしまうという欠陥があります。
そこで実務的には過去の株価データを基にCAPM(Capital Asset Pricing Model=資本資産評価モデル。「キャップエム」と呼ばれる)という手法を使って株主資本コストを算出する方法が用いられることが多いようです(CAPMについては、新用語・難解用語辞典「ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法」の「2.資本コスト」も参照。 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)。CAPMがよく使われるのは、データを取得しやすく、計算が簡単であるからです。CAPMによる株主資本コストの計算式は下記のとおりです(詳細は後述)。将来の期待収益率である株主資本コストを計算するためには、本来であれば算式中の各変数には“将来の予想値”を代入すべきですが、将来の予想値を得ることはなかなか難しいため、過去あるいは現在の数値を用いるのが通常です。
| 株主資本コスト = rf + β(rM-rf)
rf: リスクフリー・レート β: 当該企業の株式のβ値 |
上記算式中のrf(リスクフリー・レート)とは、リスクなしでも達成できる投資リターンのことであり、一般的には長期国債の利回りを用いますが、その一方で、短期国債の利回りを用いるとする見解も有力です。また、最近の異常な低金利を踏まえ、実際の数値を使うべきではなく、平常時に期待されるリスクフリー・レートは「2%」程度が適切であるとする意見もあります。
マーケットリスク・プレミアム(rM-rf)とは、市場全体の株式に満遍なく投資した場合に、リスクフリー・レート(rf)よりもどれくらい余分に収益を上げられるかを表します。マーケットリスク・プレミアムに乗じるβ(べータ)とは、その企業の株価が市場全体の動向とどれくらい連動するかを示す数値です。例えば株価がTOPIXと同様の動きをする企業もあれば、TOPIXと乖離している企業もあります。こうした株価のTOPIXなどに対する“感応度”がβです。要するに、市場全体の動きに対して大きく反応する場合にはβ値が高く、あまり大きく反応しない場合には低いと言えます。例えばβが「0.8」であれば、TOPIXが5%上昇する場合の当該企業の平均株価上昇率は4%(=5%×0.8)となります。βは、投資情報を提供しているウェブサイト等(例えばこちら)で手に入れられますが、データさえあれば表計算ソフトを使って計算することもできます。リスクフリー・レート(rf)が「リスクを取らずに得ることのできるリターン」だとすると、β×マーケットリスク・プレミアム(rM-rf)によって計算される数値は「リスク・テイクによる超過的な期待収益率」と言えます。
ここで注意が必要なのは、CAPMによる株主資本コストの計算の基になるのが市場全体の株価指数と当該企業の株価であり、それらのデータをどのように取るかで株主資本コストの値は様々なものが出てくるということです。例えばマーケットリスク・プレミアム(rM-rf)は、測定期間を50年や60年など長目にとると5%程度になりますが、株価が比較的堅調な短い期間だけに限定するとその倍程度に跳ね上がります。しかも、長短どちらの期間に基づくのが正しいのか、定まった考え方があるわけではありません。データ期間を長く取り、過去に何度か起きた金融危機やブラックマンデーなど株価の大幅な下落につながるショッキングな事象を含んだデータの方が、将来起こるかもしれない同様の事象をある程度予想した上での株主資本コストを考えることができるはずだとの見方がある一方、あまりにも古い過去のデータが将来の期待収益率である株主資本コストの判断にどれほど有益なのかという疑問の声もあります。同様に、βも算定の仕方次第では相当異なる数値が出てしまいます。
ブラックマンデー : 1987年10月19日(月曜日)にニューヨーク証券取引所を発端に起こった、史上最大規模の世界的な株価の大暴落のこと。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
このように株主資本コストの算定に“決定版”と言える方法は存在しません。「当社の資本コストは○.○○%」という把握の仕方ができればそれに越したことはありませんが、多くの場合、様々な前提に基づき「○%~○%」といった幅のある把握の仕方にならざるを得ないことが想定されます。企業としては、前提の置き方やデータのとり方を常に検証し、自社にふさわしい株主資本コストの算定方法を追求すべきでしょう。
改訂CGコードに対するパブコメでは、資本コストの公表の要否についても問われています。これに対する東証の回答は、「原則5-2において、資本コストの数値自体の開示は求められていない点についてはご理解のとおりですが、対話ガイドライン1-2において『目標を設定した理由が分かりやすく説明されているか』との点が示されていることも踏まえ、同原則が求める『収益力・資本効率等に関する目標を提示』する中で、投資家に対して、自社の資本コストについての考え方や経営における活用状況などを分かりやすく説明することが求められるものと考えます。」というものとなっています(東証によるパブコメへの回答9ページ 番号36参照))。「自社の資本コストについての考え方や経営における活用状況などを分かりやすく説明することが求められる」という表現から分かるように、算定した資本コストを“数字”として開示しなければならないということではありません。
資本コストは「株主」が要求する収益率のことである以上、機関投資家との対話の中で機関投資家側から資本コストについて見解が出ることもあるでしょう。機関投資家との対話を重ねる中で自社の資本コストへの理解を深めていくというアプローチも、自社の資本コストについて頭を悩ませる企業にとっては有益と言えそうです。
小売業のY社では、近年売上高が大きく落ち込んでおり、新規事業への進出が喫緊の課題になっています。Y社では様々な事業を検討したところ、あらたに飲食業者を対象としたEC事業(農家・食品メーカーや什器備品メーカーが出店するインターネット上のショッピングモールの運営)に乗り出すことになりました。Y社の取締役会では新規事業担当の取締役より事業計画の説明が行われているところです。社外取締役が「この事業計画に記載されている売上高ですが、流通額のことでしょうか。」と尋ねたところ、新規事業担当取締役取締役が「いえ、販売手数料収入を指しています。」と答えました。これに続くA・B・Cの次の発言のうち、誰の発言がGood発言でしょうか?
取締役A:「実際の店舗で販売するときとショッピングモールサイトで販売するときとで収益の表示が異なると、売上高による単純比較ができなくなるので違和感がありますね。ショッピングモール事業では流通額を売上高にすべきです。」
取締役B:「実際の店舗で販売するときとショッピングモールで販売するときとでは、当社が負うリスクが異なります。ショッピングモール事業では販売手数料だけを売上高に計上すべきです。」
取締役C:「売上高をグロスで計上しようがネットで計上しようが、利益の額に変わりはありません。そもそも、新規事業への進出は既存事業の売上の落ち込みをカバーするのが目的です。販売手数料収入しか売上に計上できないのでは、その目的を達成できなくなります。利益の額が変わらない以上、本来の目的に立ち返って、売上高をグロスで計上する方法を採用するべきではないでしょうか。」
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売上高の表示にあたっては、グロスで表示するのか、それともネットで表示するのかといった議論があります。簡単に言ってしまえば、グロスとは取扱高で表示することであり、ネットとは手数料部分のみを売上高に計上することです。例えば商品を9,500円で仕入れて10,000円で販売する場合、売上高をグロスで計上する場合の損益計算書が左です。一方、売上高をネットで計上する場合の損益計算書が右です。
どちらも売上総利益が500であることに変わりはないのですが、ネットで計上する場合(右の損益計算書)は手数料分(利ザヤ)しか売上高を計上しないことから、どうしても会社規模が小さく見えてしまいます。そのため、売上高の表示についてグロスかネットかを選択できるのであれば、経営者は会社規模を大きく見せることができるグロスを選択しがちと言えます。
会計理論としては、取引ごとに会社が「本人」なのか、あるいは「代理人」なのかを区別し、「本人」であればグロス、「代理人」であればネットで売上高を表示すべきとされています。例えば、商品を自分のリスク(販売できなかった場合に損失を被る在庫リスク)で仕入れて販売する取引は「本人」の取引と言え、売上高はグロスで計上すべきです。一方、他人の指示に従い商品を調達してくる取引は、当該他人のために代理人として取引に参加しているだけであり、売上高はネットで計上すべきです。
もっとも、実際にはこのように単純な取引ばかりではありません。実務では、契約内容やビジネスモデルを観察した結果、あるリスクや取引の流れの一部分に着目すれば自社が「本人」であるように見えるものの、別のリスク等に注目すれば「代理人」であるように見える取引は多く存在します。従来は、「本人」か「代理人」かを判断する場合の基準を定めた「収益認識」に特化した会計基準がわが国にはなかったため、商社や百貨店などがIFRSを採用すると、売上高の一部をグロス表示からネット表示に変更せざるを得なくなり、売上高が大きく減少するといった散見されています。
2018年3月、わが国でもIFRSへのキャッチアップを目的として「収益認識に関する会計基準」がようやく定められ、2021年4月1日以後開始する会計期間の期首から原則適用となります。その「収益認識に関する会計基準の適用指針」では、本人と代理人の売上高の表示について次のような規定が設けられています(本文中に記載されている設例番号数や引用条項数は省略)。
40項
顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合において、顧客との約束が当該財又はサービスを当該他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務であると判断され、企業が代理人に該当するときには、他の当事者により提供されるように手配することと交換に企業が権利を得ると見込む報酬又は手数料の金額(あるいは他の当事者が提供する財又はサービスと交換に受け取る額から当該他の当事者に支払う額を控除した純額)を収益として認識する。
そのうえで、本人と代理人の区分について、次のように定めています。
| 41項 本人と代理人の区分の判定は、顧客に約束した特定の財又はサービスのそれぞれについて行われる。特定の財又はサービスとは、顧客に提供する別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束)である。顧客との契約に複数の特定の財又はサービスが含まれている場合には、企業は、一部の特定の財又はサービスについて本人に該当し、他の特定の財又はサービスについて代理人に該当する可能性がある。 42項 43項 44項 |
収益認識に関する会計基準第37項 : 資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨げる能力を含む。)をいう。
また、本人か代理人かの判定にあたっての注意点は次のとおりです。
| 所有権の移転について | 45項 企業が財に対する法的所有権を顧客に移転する前に獲得したとしても、当該法的所有権が瞬時に顧客に移転される場合には、企業は必ずしも当該財を支配していることにはならない。 |
| 外注先の利用について | 46項 財又はサービスを提供する履行義務を企業が自ら充足する場合のみならず、企業に代わり外注先等の他の当事者に履行義務の一部又は全部を充足させる場合も、企業が本人に該当する可能性がある。 |
| 43項の判定に あたっての指標 |
47項 第43項における企業が本人に該当することの評価に際して、企業が財又はサービスを顧客に提供する前に支配しているかどうかを判定するにあたっては、例えば、次の(1)から(3)の指標を考慮する。 (1) 企業が当該財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有していること。これには、通常、財又はサービスの受入可能性に対する責任(例えば、財又はサービスが顧客の仕様を満たしていることについての主たる責任)が含まれる。 企業が財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有している場合には、当該財又はサービスの提供に関与する他の当事者が代理人として行動していることを示す可能性がある。 (2) 当該財又はサービスが顧客に提供される前、あるいは当該財又はサービスに対する支配が顧客に移転した後(例えば、顧客が返品権を有している場合)において、企業が在庫リスクを有していること 顧客との契約を獲得する前に、企業が財又はサービスを獲得する場合あるいは獲得することを約束する場合には、当該財又はサービスが顧客に提供される前に、企業が当該財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有していることを示す可能性がある。 (3) 当該財又はサービスの価格の設定において企業が裁量権を有していること 財又はサービスに対して顧客が支払う価格を企業が設定している場合には、企業が当該財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有していることを示す可能性がある。 ただし、代理人が価格の設定における裁量権を有している場合もある。例えば、代理人は、財又はサービスが他の当事者によって提供されるように手配するサービスから追加的な収益を生み出すために、価格の設定について一定の裁量権を有している場合がある。 |
「収益認識に関する会計基準」の原則適用は2021年4月1日以後開始する会計期間の期首からとなりますが、そこで採用されている考え方は普遍的なものであるため、「収益認識に関する会計基準」に照らして自社の売上に本来はネット表示すべき取引が含まれているのではないか、今から検討をしておくべきです。
さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
取締役B:「実際の店舗で販売するときとショッピングモールで販売するときとでは、当社が負うリスクが異なります。ショッピングモール事業では販売手数料だけを売上高に計上すべきです。」
(コメント:店舗の在庫は自社が仕入れた商品であるため、売れ残りリスクを抱えています。一方、ショッピングモールサイトで出店企業が出品している商品はあくまで出店企業が有する在庫なのでY社が在庫リスクを抱えることはありません。この状況を、「収益認識に関する会計基準の適用指針」に当てはめて検討すると、「他の当事者(ここでは出店企業)が提供する財又はサービスが顧客(ここでは消費者)に提供される前に企業(ここではY社)が当該財又はサービスを支配していない」(43項)ことから「顧客との約束が当該財又はサービスを当該他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務であると判断され、企業(ここではY社)が代理人に該当する」ことになります。在庫リスクに着目して、売上高のネット計上を主張するBの発言は、会計基準に則っておりGoodです。)
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不動産に関するソリューション事業(水まわり、鍵、ガス・電気設備などのトラブルに対応する緊急かけつけサービスや家賃の収納代行サービスなど)を手がけるアクトコール(東証マザーズ)が土地を販売したものの、販売先がさらに転売した先(アクトコールの社長が実兄を務める会社)が第三者委員会の調査で連結子会社と認定され、それにより当該連結子会社の土地の取得が連結グループによる土地の買戻しとみなされ、当初の土地売上(1億8000万円)を取り消す必要が生じた。
アクトコールが、2018年8月に「第三者委員会の調査報告書」を公表するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。
2017年
2月:アクトコールは、連結グループ外のX社に対し土地を1億8000万円で売却した。
11月:X社は、土地購入後、当該土地を巡り隣接地所有者から訴訟(隣接地上の建物の基礎部分を工事業者が無断で削り取ったこと等を主張された)を受けたが和解に至った。
12月:アクトコールの平井社長はX社に迷惑をかけたとの思いから当該土地を買い戻そうとするものの、監査人(日の出監査法人)から過年度損益の訂正が必要になる(同社は11月決算)との指摘を受け断念。そこで、X社に平井社長の実兄が社長を務める平井物産(株式も平井社長の実兄が全株保有)へ約2億3600万円(X社の購入額1億8000万円に開発および前述のトラブル等に関して支出した一切の金額の総和)での譲渡を提案したところ、X社はこれを承諾した。
2018年
1月:平井物産はX社から当該土地を購入。なお、平井物産は土地の購入資金を保有していなかったため、平井社長の資産管理会社であるエフォート(平井社長が株式を100%保有)から2億3800万円を借り受ける。
7月:アクトコールは監査人から会計上の疑義について指摘を受け(リリースはこちら)、取締役会決議に基づき調査委員会を設置(リリースはこちら)。
8月:アクトコールは、「第三者委員会の調査報告書」を公表
アクトコールが、2018年8月に公表した「第三者委員会の調査報告書」によると、本件の問題点(調査報告書では土地の買戻し以外に不動産フランチャイズ権の販売や業務委託料の計上に関しても問題点が指摘されているが、ここでは取り上げない)の主な内容とその原因、再発防止策は次のとおりである。
| 内容 | ・アクトコールがX社に土地を売却し、当該土地をアクトコールの平井社長の実兄が代表を務める平井物産が購入したところ、事後的に平井物産は実質的子会社と認定され、平井物産の土地購入は連結グループによる土地の買戻しとみなされ、当初の土地売上高を取り消す必要が生じた。 ・平井物産はもともとアクトコールの平井社長の個人会社であったが、上場前に証券会社から整理を求められ、平井社長の実兄に売却された会社である。平井物産では従業員を雇用せず、かつ、営業活動を行っていなかった。代表取締役こそ平井社長の実兄に変更されたものの、平井物産の預金通帳および銀行届出印は平井社長(2010年以降からアクトコールの専務取締役)が管理していた。平井物産の日常の資金は平井社長からの借り入れにより賄われていた。以上の状況から、本調査報告書は、平井物産は平井社長が実質的に支配している会社であり、アクトコールの子会社として取り扱うべきとしている。 ・アクトコールの平井社長はアクトコールから見て「緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使する者」に該当する。平井社長は、エフォートの株式を100%有する株主であり、またエフォートの唯一の取締役である。したがって、本調査報告書は、アクトコールの緊密者である平井社長が支配しているエフォートは、会計上、アクトコールの子会社として取り扱うべきとしている。 ・平井物産には購入資金がなかったことからエフォートから資金を借り、その資金をX社に対する土地の対価の支払いに充てていた。また、平井社長の実兄に対するヒアリング結果によれば、2018年7月時点で購入した不動産の使途は決まっていなかった。 |
| 原因 | 2018年9月中旬までに公表予定の追加報告書で明らかとなる見込み |
| 再発防止策 | 2018年9月中旬までに公表予定の追加報告書で明らかとなる見込み |
本調査報告書では、「社長の兄が代表を務め、株式を100%有している会社」「社長の個人的な資産管理会社」が実質的子会社であると事後的に認定されました。
役員の資産管理会社に関しては、当該資産管理会社が上場会社から見て親会社に該当するかどうかが問題になりえます(通常は親会社に該当することはありません)が、今回は役員の資産管理会社が子会社に該当するかどうかが問題になったケースです。役員の資産管理会社は、財務上または営業上若しくは事業上の関係からみて上場会社から意思決定機関を支配されていないことが明らかである(「連結財務諸表に関する会計基準」第7項柱書ただし書)と判断されるのが通常ですが、アクトコールでは、調査の結果、役員の資産管理会社(エフォート)をアクトコールの子会社と扱うのが経済的実質に従った処理であり、連結グループの経営成績および財政状態を適切に表現できるとの判断に至りました。
また、アクトコールの社長の実兄が代表を務め株式も100%保有している会社(平井物産)もアクトコールが実質支配していることから子会社と認定され、それによりアクトコール→X社→平井物産の順で所有権が移転した土地については、X社への売却後すぐに連結子会社が買い戻したものとみなされ不動産売却に伴う売上の取り消しが必要となりました。
役員の資産管理会社や役員の親族の個人会社との取引は取締役会での事前承認が必要となる利益相反取引や開示が必要になる関連当事者との取引に該当する可能性があるため慎重に行うべきであるということはもはや常識ですが、それらの会社が実質子会社であると事後的に認定されて当初意図した会計処理が否定されるリスクがあることにも留意が必要と言えます。
2015年6月1日に導入されたコーポレートガバナンス・コードの補充原則4-10①が、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社に対し、取締役会の独立性・客観性、説明責任を強化する手法の1つとして任意の報酬委員会(報酬諮問委員会)の導入を例示して以来、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社でも報酬諮問委員会を導入する上場会社は着実に増加している。東証が(2018年)7月31日付けで公表した「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況、委員会の設置状況及び相談役・顧問等の開示状況」(9ページ参照)によると、任意の報酬委員会を設置している上場会社は、東証一部上場会社全体の34.9%(前年31.7%)、JPX日経400銘柄に限定すると54.9%に上っている。
逆に言うと、東証一部上場会社(報酬委員会の設置が会社法で義務付けられている指名委員会等設置会社を除く)でも2/3近くはいまだ任意の報酬委員会を設置していないことになるが、今年6月1日に施行された改訂コーポレートガバナンス・コードの・・・
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2015年6月1日に導入されたコーポレートガバナンス・コードの補充原則4-10①が、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社に対し、取締役会の独立性・客観性、説明責任を強化する手法の1つとして任意の報酬委員会(報酬諮問委員会)の導入を例示して以来、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社でも報酬諮問委員会を導入する上場会社は着実に増加している。東証が(2018年)7月31日付けで公表した「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況、委員会の設置状況及び相談役・顧問等の開示状況」(9ページ参照)によると、任意の報酬委員会を設置している上場会社は、東証一部上場会社全体の34.9%(前年31.7%)、JPX日経400銘柄に限定すると54.9%に上っている。
逆に言うと、東証一部上場会社(報酬委員会の設置が会社法で義務付けられている指名委員会等設置会社を除く)でも2/3近くはいまだ任意の報酬委員会を設置していないことになるが、今年6月1日に施行された改訂コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-10①では、報酬諮問委員会の設置が従来より強く求められていることから(2018年4月5日のニュース『任意の諮問委員会、設置しなければ「エクスプレイン」必要に』参照)、現在、任意の報酬委員会の設置を検討している企業も多いことだろう。任意の報酬委員会を設置する際の論点の1つとなるのが、任意の報酬委員会の社内的位置付けだ。
指名委員会等設置会社における報酬委員会は会社法に規定された機関であり、その権限(執行役等の個人別の報酬を定める)も明確になっているが、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社における任意の報酬委員会は法的な報酬決定権限を持っているわけではない。したがって、任意の報酬委員会に一定の権限を持たせるためには、その社内的な位置付けを明確にしておく必要がある。
執行役 : 指名委員会等設置会社において、取締役会決議によって委任された事項について会社業務を実行する役職。取締会決議により選任・解任される(登記も必要)。執行役が2人以上いる場合は会社を代表する代表執行役を選ぶ。取締役と同様、会社に対して善管注意義務および忠実義務を負い、株主代表訴訟の対象にもなる。「執行役員」も会社業務の実行に対して権限と責任を持つが、会社法上に定義はなく、あくまで重要な使用人に過ぎない点、執行役とは異なる。
この点についてはこれまで2つの選択肢が存在してきた。1つは「取締役会」の諮問機関とすること、もう1つが「代表取締役」の諮問機関とすることだ。実はこの問題に対してはコーポレートガバナンス・コード補充原則4-10①の中に明確な答えがある。具体的には、同原則が「取締役会」の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、「取締役会の下」に任意の委員会を設置することとしている点だ。さらに、法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会が取りまとめた「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」でも「取締役の個人別の報酬等の決定を代表取締役に再一任する場合には株主総会決議を求める」との案(6ページ (3) 取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任【A案】参照)が提案されていることを踏まえれば、任意の報酬委員会を「代表取締役」の諮問機関とする選択肢はとり難いと言える(株主総会決議が必要になる)。結論として、報酬委員会は「取締役会」の諮問機関として設置するのが適切ということになる。
これまで、多くの上場会社で役員報酬の決定は代表取締役の専権事項とされてきたが、そのような不透明な役員報酬決定プロセスでは、もはや株主をはじめとするステークホルダーへの説明責任は果たせないということを認識する必要がある。
企業を経営するうえで、自社を守る武器と言えるのが「参入障壁」だ。自社にしかない技術やノウハウ、優良な立地、圧倒的なブランド、優秀な人材などは全て、自社と同じ事業を手掛けようとする他社にとっては参入障壁となるが、これらと違って自ら築き上げたものとは言えないものの、同じく参入障壁となり得るのが「規制」だ。
ただ、規制産業に属する企業は新規参入者から守られている一方で、・・・
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