2025/06/18 配当の決定権限はどの機関が持つべきか(会員限定)

近年、経営陣と株主との間で配当決定権限を巡り議論があるが、定時株主総会に提出予定だった剰余金の配当案を取り下げ、同一内容の配当を取締役会で決議するという異例の対応をとったのが、東証スタンダード市場に上場するアクセスグループ・ホールディングスだ。

同社は2025年5月15日付で、「本日開催の取締役会において、2025年6月25日に開催予定の第36期定時株主総会に、2025年3月31日を基準日とする剰余金の配当(期末配当)及び剰余金の処分について付議することを決議いたしました」とのリリースを出していた。ところが、2025年5月30日になって、剰余金の配当について当初予定していた株主総会への付議を取り下げ、同内容の配当を「取締役会」で決議する旨を改めてリリースしている。その他資本剰余金を原資として30円を配当するということに変わりはなく、あくまで「決定機関の変更」に過ぎないが、その経緯と背景をたどると、ガバナンス上の重要な論点が見えてくる。


その他資本剰余金 : 会社にとっての“余剰金”である剰余金は、(1)増資などの資本取引により得た金額のうち資本金に組み入れていない金額である「資本剰余金」と、(2)企業活動で得た利益のうち、株主に還元(配当、自己株式の取得)せずに社内に留保してきた金額である「利益剰余金」に分けられるが、これらの剰余金をすべて配当してしまうと、債権者保護の観点から問題があるため、会社法では、これらの剰余金のうちの一部を、それぞれ「資本準備金」「利益準備金」として積み立てることを求めている(両準備金を合わせて「法定準備金」という)。資本剰余金から資本準備金を差し引いた金額が「その他資本剰余金」、利益剰余金から利益準備金を差し引いた金額が「その他利益剰余金」であり、これらの合計額は配当が認められる「分配可能額」とされる(厳密には、さらに自己株式等の調整計算も必要になる)。

アクセスグループ・ホールディングスの方針変更のきっかけとなったのが、同社の定款第35条だ。

アクセスグループ・ホールディングスの定款第35条
(剰余金の配当等の決定機関)
第35条 当会社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議により定める。

会社法459条1項は、一定の要件()を満たす株式会社であれば、定款に定めることで、取締役会が株主総会に代わって剰余金の配当を決議できる旨を定めている。アクセスグループ・ホールディングスは当該要件を満たしており、定款で取締役会に配当権限を付与していた。

会社法459条とは、「剰余金の配当等を決定する機関の特則」であり、一定の要件を満たせば、本来は株主総会の権限である剰余金の配当を例外的に取締役会が決定できるとする規定である。この一定の要件とは、「①取締役会設置会社であること」「②会計監査人設置会社であること」「③監査役会設置会社または監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社であること」「④取締役の任期が1年である(毎期選任する)こと」を満たしたうえで、「定款に取締役会が剰余金の配当を決定できる旨の定め」を設けること、とされる。①から③は上場会社であれば要件を満たすことから、取締役の任期を1年にしつつ「定款に取締役会が剰余金の配当を決定できる旨の定め」さえ設ければ、取締役会決議で配当を実施できる。

配当の決定権限は株主総会にあるのが原則だが、上記のとおり、「取締役会決議で配当を実施できる」という定款の定めを設ければ、株主総会と取締役会の双方が配当決定権限を持つことになる。しかし、アクセスグループ・ホールディングスでは、さらに「株主総会の決議によらず」という文言を明示的に盛り込んでいた。この文言があると、「配当決定権限は株主総会にはなく、取締役会に専属する」という解釈となる。つまり、アクセスグループ・ホールディングスは当初の株主総会付議の決定自体が自社の定款と矛盾していたことに後から気付き、急遽方向転換したとみられる。

上場会社の1割超(下表の栄研化学の「定款変更議案の提案理由」によると12%)が、定款の配当権限の定めに「株主総会の決議によらず」という趣旨の文言を入れている。こういった定款の定めは定款自治で許されるものの、本来株主総会に剰余金処分権限があるにもかかわらず、株主総会から当該権限を奪うものであるとして、株主からの評判は極めて悪い。実際、2025年3月決算会社の定時株主総会では、以下の上場会社が株主から定款変更議案を突き付けられている。

取締役会の権限も残す株主提案
企業名 提案者 定款変更議案の提案理由
日本高純度化学(東証プライム) HIBIKI
PATH
VALUE
FUND
定款一部変更の件(剰余金の配当等の決定機関)会社法第459条第1項各号は、剰余金の配当等の原則として株主総会で決議されるべき事項を規定するものです。当社は定款第44条により、これらの事項について、本来的に権限を有する株主総会の権限を排除しつつ取締役会の権限としております。会社の所有者は株主であることを再確認し、会社法が「原則として株主総会で決議する事項」と定めているものは、株主総会で決議するべきであると考えます。なお、本提案の変更案においても、取締役会が剰余金の配当等を決議することは可能であり、当社の取締役会が機動的に剰余金の配当等を実行することは制度的に確保されております。したがって、現行定款は、本提案の変更案と比較すると、株主総会の権限を排除することを目的としたものです。このような株主総会の権限の排除には合理性がないことから、本議案の提案をする次第です。
栄研化学(東証プライム) AVI
JAPAN
OPPORTUNITY
TRUST
PLC
会社法上は剰余金の配当等の決定権限は株主総会にあることが原則であるところ(会社法454条1項)、当社の現行定款は、剰余金の配当に関して株主総会での議論を排し、配当決定権限を取締役会に専属的に付与しています。これは、当社取締役会が株主の意思を適切に理解し、配当政策に反映させる重要な機会を失わせるものです。また、2023年7月から2024年6月までに行われた株主総会に関する調査(商事法務研究会編「株主総会白書2024年版」商事法務2376号43頁以下)によれば、回答上場会社1,902社のうち、取締役会に剰余金の処分権限を専属させている会社は233社(12.3%)に過ぎないとのことであり、剰余金の処分について株主総会決議によることを排除する旨の規定を設けている上場企業は全体の八分の一と、ごく稀です。これらの点に鑑みつつ、同時に、当社取締役会が危機管理時などにおいて資本政策の機動性にも配慮できるよう、現行定款第39条第3項「当会社は、会社法第459条第1項各号に掲げる事項を株主総会の決議によっては定めない。」を削除することを提案します。これにより、定款変更後は、株主総会と取締役会の双方において、剰余金の配当等の決定権限が併存することとなりますので、株主の意思の反映及び資本政策の機動性の双方に配慮した規定となります。
ステラケミファ(東証プライム)

Nippon
Active
Value
Fund plc
当社では定款の定めにより、剰余金の配当等の決定機関は取締役会の決議によって定めるとしており、剰余金の配当等の株主の権利を制限するものです。よって、剰余金の配当等の決定機関を取締役会の決議によって定めることに加え、株主からの提案がある場合には株主総会の決議によって定めることができるよう定款変更すべきです。
取締役会から権限を取り上げる株主提案
企業名 提案者 定款変更議案の提案理由
日阪製作所(東証プライム) 個人 当社の事業活動の現状に即し、十分な株主還元を実現するため、株主の意思を反映するべく、現行定款第34条を削除し、会社法第459条第1項各号に掲げる事項を株主総会の議決によって定めることとするべきです。
ミツバ(東証プライム) 個人 取締役会の議決をもって配当金に関して決定することには、『株主の意思』が全く反映されていない。1株当たり「3円(2022年3月期)」、「3円(2023年3月期)」、「6円(2024年3月期)」、そして、「10円(2025年3月期予定)」は、『十分な株主還元』又は『株主重視』と言えるのであろうか。
クレスコ(東証プライム) STICHTING
DEPOSITARY
ASCENDER
GLOBAL
VALUE FUND
会社法上は剰余金の配当等の決定権限は株主総会にあることが原則であるところ、当社の現行定款は、剰余金の配当に関して株主総会での議論を排し、配当決定権限を取締役会に専属的に付与しています。
これは、当社取締役会が株主の意思を適切に理解し、配当政策に反映させる重要な機会を失わせるものです。2023年7月から2024年6月までに行われた株主総会に関する調査(商事法務研究会編「株主総会白書2024年版」商事法務2376号43頁以下)によれば、回答上場会社1,902社のうち、取締役会に剰余金の処分権限を専属させている会社は233社(12. 3%)に過ぎないとのことです。
これらの点に鑑み、当社が最高のコーポレートガバナンスを遵守していることを確実なものとするため、提案者は、定款第43条を削除することを提案します。同条の削除により、取締役会が剰余金の配当等に関する決定権を失い、代わりに株主総会がこれらの決定機関となります。この定款変更は、当社が資本政策の管理に関し、株主の意思に厳格に従うことを確保することになります。
淀川製鋼所(東証プライム) INTERTRUSTTRUSTEES
(CAYMAN)LIMITEDSOLELYINITSCAPACITYASTRUSTEEOFJAPAN-UP
および株式会社ストラテジックキャピタル
本件は、期末配当の決定機関を株主総会とすることを企図した提案である。当社は、配当を株主総会の決議によらず取締役会の決議により定めるものとしているが、当社の株価は長期的に低迷しており、取締役会が株主価値の向上に資する経営を行っているとは言い難い。当社の中期経営計画における株主還元方針は「年間配当金200円以上」「連結配当性向75%以上」だが、当社の自己資本比率は2024年12月末現在で、約72%と非常に高く、これ以上自己資本を増加させてもROEが低下するだけである。当社のPBRは過去25年間、解散価値である1倍を安定して上回った期間が一度もないが、これはROEが株主資本コストに満たないことが主因である。そのため、配当の決定機関を株主総会とすることでガバナンスを改善させると共に、ROE向上、株主資本コスト低下等、株主価値の向上に資する経営方針へ転換すべきである。

このような株主提案に対して取締役会はどのように反論をしているのだろうか。栄研化学の取締役会による反論は以下のとおりだ。

栄研化学の取締役会の反論
AVI定款変更議案に対する当社見解
当社は、日本企業に社外取締役が十分に普及していなかった2005年に、いち早く「委員会等設置会社」(2014年に現在の「指名委員会等設置会社」に名称変更されております。)に移行し、独立社外取締役を中心とした取締役会において経営陣を監督するいわゆる「モニタリングボード」を有する会社として、取締役会の監督機能を強化してまいりました。実際、現在の当社の取締役会の構成は、本総会前において、取締役8名のうち5名が独立社外取締役(女性取締役1名)であり、本総会において当社が提案する取締役の選任議案が承認可決された場合には、取締役10名のうち7名が独立社外取締役(女性取締役2名)となり、一層のモニタリング機能の強化が実現するなど、モニタリングボードを前提としたガバナンス体制強化への先進的な取り組みを常に進めております。委員会等設置会社については、2002年商法改正において、社外取締役が過半数を占める指名委員会と報酬委員会の活動によって取締役会の監督機能が高められることから、利益処分についても株主の利益を反映した「厳正な審査」を期待できることを理由に、原則として、取締役会においてのみ自己株式取得等の利益処分を決議できる旨の規定が設けられ、モニタリングボードを有する会社においては、監督機能が担保されている取締役会において機動的な経営判断・経営資源の分配を行うことが指向されることとなりました。かかる規定の趣旨は会社法にも承継されており、取締役会の監査権限が充実している指名委員会等設置会社などにおいては、所定の要件を満たすと共に定款に定めることを条件として、株主総会ではなく、取締役会においてのみ自己株式取得等の利益処分を決議できることとし、監督機能が担保されている取締役会において機動的な経営判断・経営資源の分配を行うことを指向するという趣旨は維持されていると考えられます。たしかに、一部の機関投資家株主が主張するとおり、株主の権利を拡大するAVI定款変更議案に反対することを単独で見れば、株主の権利の制限に繋がるとの指摘を否定することはできないものと考えております。しかし、上述の会社法の趣旨を斟酌すれば、独立社外取締役の比率や機関設計を考慮することなく、剰余金の配当等の決定権限について取締役会に専属させることを株主の権利の制限であるとして、一律に否定することは、独立社外取締役に監督を委ねるモニタリングボードの普及を妨げかねない面があり、ひいては上述の会社法の趣旨を阻害しかねないと考えております。実際にこの観点から、機関投資家の中では、モニタリングボードの普及・活用を促進するため、社外取締役を中心に構成されたモニタリングボードを有する企業に対して業務執行に係る業績基準や資本配分等に関する議決権行使の反対ガイドラインの適用を見送り、モニタリングボードに経営の監督を委ねるとの考えが明確化されていると当社は認識しております。当社はモニタリングボードを有する指名委員会等設置会社として、機関設計や社外取締役比率の面から監督機能を担保するのみならず、本総会後に取締役会の議長を社外取締役とすることや、監査委員会、指名委員会、報酬委員会の3委員会の委員を社外取締役のみで構成することを検討しているなど、より一層のガバナンス体制強化を進める予定です。このような観点からも、高度な監督機能が担保された当社取締役会において、経営方針・経営戦略を十分に考慮した上で機動的な経営判断・経営資源の分配を行うことが可能な現行の定款規定が適切であり、同規定の下、当社取締役会に剰余金の配当等の利益処分を一任いただければ、機動的な経営判断・経営資源の分配の実施により中長期的な企業価値及び株主価値の向上を実現することが可能であるものと考えております。以上のような観点から検討を重ねた上で、当社取締役会としては本年5月13日にAVI株主提案に対して反対の意見表明決議を行っております。今後も、本総会に向けて機関投資家の皆様や議決権助言会社等のご理解を得られるよう引き続き努めてまいります。

長文に圧倒されるが、要約すると「モニタリング・ボード(監督機能重視の取締役会)化に努めるので配当まで任せてほしい」という内容となっている。しかし、こうした反論は「株主の意思反映」を求める提案に対して説得力に欠けるという指摘もある。実際、株主側の提案は「取締役会の権限を奪う」ものではなく、「株主総会と取締役会双方に権限を持たせる」という機動性とガバナンスの両立を志向したものとなっているからだ。

2020年には、みずほフィナンシャルグループが株主提案を受け入れる形で定款を改正し、「株主総会と取締役会双方に権限を持たせる」ことが可能な設計に変更した前例があるが、その際の同社の提案理由は以下のとおり(みずほフィナンシャルグループの2020年3月期の定時株主総会招集ご通知はこちら)。

みずほフィナンシャルグループの会社提案理由
本議案は、剰余金の配当等について、引き続き、取締役会で決定することに加え、株主の皆さまからのご提案がある場合には株主総会で決定できるよう定款の変更を行うものであります。
当社では、定款の定めにより、剰余金の配当等の決定機関を株主総会ではなく取締役会としております。これは、国際的な金融規制の遵守が求められている当社が、自己資本比率を高めつつ、株主還元を充実させていくためには、高い監督機能と高度な専門性を有する取締役会で剰余金の配当等を決定することが、株主の皆さまの中長期的な利益の最大化につながるとの考えに基づいております。
バーゼルⅢ規制が2017年に最終化され、規制強化に係る不透明感が低下してきたことに加え、当社では着実に資本蓄積が進み、自己資本の充実が図られてきております。他方で、企業と株主・投資家の皆さまとの関わり方に変化が生じ、株主の皆さまのご関心も、これまで重視されてきた事業戦略や資本政策に留まらず、責任投資に代表されるサステナビリティの視点など様々な角度からの持続的企業価値向上へと深化してきております。こうした変化を受けて、当社では、特に株主還元の拡充や成長投資への充当などの資本の使い方について、株主の皆さまのご意見をしっかりとお伺いし、建設的な対話をさせていただくことが、これまで以上に大切になってきていると考え、定款の変更を行うものであります。

一方、株主は次のとおり提案理由を説明している。

みずほフィナンシャルグループの株主提案理由
当社はH26年の委員会設置会社への移行時の定款変更に於いて、配当の決定機関を取締役会に変更したが、これは、無関係な内容を定款変更議案に紛れ込ませた悪質な行為である。この事は、三菱UFJと三井住友FGが委員会設置会社への移行後も配当の決定機関を株主総会のままにしている事で明白である。当社は、株主が配当に関する意思表示を株主総会で行う権利を奪ってしまった。株主が配当水準に不満であれば任期1年の取締役を再任しなければよい、との反論はナンセンスである。配当水準には不満だが取締役交代までは必要無いと考える株主も多くいると思われ、その様な株主から配当に関する意思表示の機会を奪うのは理不尽である。取締役会で配当額を決める事も可能だが、株主も配当に関する株主提案が可能で、どちらが望ましいかを株主が総会で決定できる様にすべきである。なお当議案はH29年の当社総会でISSが賛成推奨し、43%の賛成を得ている。

会社側・株主側のいずれも説得的な提案理由と評価できる。

最終的には、各社のガバナンス方針と株主の価値観次第ではあるが、配当の決定権限を巡って争いになった場合には、投資家との建設的な対話を重視する観点からも、株主の関与余地を一定程度残す方向に議論が進む可能性が高いと言えよう。

2025/06/17 総会前提出の“次”に待っているもの

6月も後半に入り、3月決算会社の多くが有価証券報告書(有報)の提出に向けて最終局面を迎えている。今年から金融庁が「定時株主総会より前に有報を提出すること」を明確な政策課題に掲げているため、上場会社各社は例年以上に他社の動向が気になるところだろう。

金融庁は「定時株主総会の2週間以上前に有報の提出を予定している上場会社一覧」を公表しているが、この一覧に記載があるのはT&DホールディングスとHOYAの2社のみ(5月30日時点)にすぎない。多くの上場会社の関心は、提出日が「総会前ではあるが2週間未満」の会社がどれくらいあるのか、また、その範囲で「何日前」に提出する会社が主流なのかということにある。この点、2025年6月11日に開催された金融庁「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」の第3回会合の配布資料によると、下図のとおり、日経225構成銘柄のうち76.8%が「2025年の定時株主総会前日まで」に有報を提出する見通しとなっている(同資料の22ページ参照)。前年実績(10.5%)と比較して大幅な増加であり、日経225構成銘柄においては、総会当日以降に有報を提出する会社はもはや“少数派”に転じたと言える。

スクリーンショット 2025-06-17 12.20.35

さらに注目されるのは、・・・

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2025/06/17 総会前提出の“次”に待っているもの(会員限定)

6月も後半に入り、3月決算会社の多くが有価証券報告書(有報)の提出に向けて最終局面を迎えている。今年から金融庁が「定時株主総会より前に有報を提出すること」を明確な政策課題に掲げているため、上場会社各社は例年以上に他社の動向が気になるところだろう。

金融庁は「定時株主総会の2週間以上前に有報の提出を予定している上場会社一覧」を公表しているが、この一覧に記載があるのはT&DホールディングスとHOYAの2社のみ(5月30日時点)にすぎない。多くの上場会社の関心は、提出日が「総会前ではあるが2週間未満」の会社がどれくらいあるのか、また、その範囲で「何日前」に提出する会社が主流なのかということにある。この点、2025年6月11日に開催された金融庁「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」の第3回会合の配布資料によると、下図のとおり、日経225構成銘柄のうち76.8%が「2025年の定時株主総会前日まで」に有報を提出する見通しとなっている(同資料の22ページ参照)。前年実績(10.5%)と比較して大幅な増加であり、日経225構成銘柄においては、総会当日以降に有報を提出する会社はもはや“少数派”に転じたと言える。

スクリーンショット 2025-06-17 12.20.35

さらに注目されるのは、総会の「前日」ではなく、「2日前」や「3~6日前」の提出を予定する会社が予想以上に多いということだ。「前日」の55社に対し、「2日前」「3~6日前」および「7日以上前」を合わせると84社に上っている。その背景には、投資家への配慮とともに、前日だと単なる“アリバイ作り”にも見えかねないことへの懸念があるものと思われる。

もっとも、この傾向が日経225構成銘柄以外の上場会社全体にも見られるかどうかは現時点では不明となっている。金融庁は、2025年3月期決算会社における総会前提出の実施状況を「6月末時点」の実績ベースで集計し、統計データおよび総会前提出会社の一覧をWEBサイトで公表することを予定しているが、会社規模に比例して早期化の程度が鈍ることは容易に想像がつく。とりわけ社内体制や決算スケジュールに余裕がない中堅以下の会社やグロース市場上場会社にとっては、総会前提出のハードルは依然として高いだろう。

それでも、今回の日経225構成銘柄を対象とした調査結果は、「有報の総会前提出は不可能ではない」ことを実証したという点で大きな意義を持つ。さらに有報提出日が社名とともに一覧になって公表されることになれば、提出日に対する経営トップの意識も変わらざるを得ない。行政のプレッシャーにより雪崩を打つように始まった総会前提出の次に待っているのは、間違いなく「早期化競争」だ。上場会社各社、特にIR・開示担当部署、それを所掌する役員にとっては、まさに頭の痛い時代が到来しつつあると言えよう。

2025/06/16 企業側が懸念するフォローアップ会議「アクション・プログラム」の記述

2025年6月13日のニュース「同床異夢の中でスタートしたCGコードの改訂作業」で予測していたとおり、同日に閣議決定された政府の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」(以下、実行計画)には、第30回 フォローアップ会議(2025年6月2日開催)の資料「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム 2024 のフォローアップと今後の方向性について(案)」(以下、アクション・プログラム)を概ねなぞる形で、CGコードの見直しが盛り込まれた(72ページ「4.企業価値の向上・コーポレートガバナンス」参照)。一方、実行計画のベースとなったはずのアクション・プログラムの確定版は同日に公表されなかった。当フォーラムの取材によると、・・・

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2025/06/16 企業側が懸念するフォローアップ会議「アクション・プログラム」の記述(会員限定)

2025年6月13日のニュース「同床異夢の中でスタートしたCGコードの改訂作業」で予測していたとおり、同日に閣議決定された政府の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」(以下、実行計画)には、第30回 フォローアップ会議(2025年6月2日開催)の資料「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム 2024 のフォローアップと今後の方向性について(案)」(以下、アクション・プログラム)を概ねなぞる形で、CGコードの見直しが盛り込まれた(72ページ「4.企業価値の向上・コーポレートガバナンス」参照)。一方、実行計画のベースとなったはずのアクション・プログラムの確定版は同日に公表されなかった。当フォーラムの取材によると、フォローアップ会議(金融庁)が公表しようとしていた内容について企業側からクレームが入り、公表が先送りされた模様だ。クレームの対象となったのが、下記の「例えば現預金を必要以上に積み増していないか(cash hoarding 問題)」という記述である。


hoarding : 「貯蔵」「買いだめ」といった意味

アクション・プログラム(案) 3ページ
② 上記の経営資源の配分に関し、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例えば現預金を必要以上に積み増していないか(cash hoarding 問題)の検証・説明責任の明確化を検討する。

冒頭で引用した2025年6月13日のニュース「同床異夢の中でスタートしたCGコードの改訂作業」でお伝えしたとおり(中段下「ここで注目されるのが・・・」の段落参照)、この記述に対しては6月2日のフォローアップ会議で「かえって自社株買いなどの短期的なキャッシュ・アウトを誘発しないか」との指摘が相次いだことを受け、実行計画からはカットされたという経緯がある。

ところが、公表前のアクション・プログラムの最終案は、基本的に6月2日のフォローアップ会議に提出された「案」における「~としてはどうか」という表現を「~とする」に修正しただけのものとなっており、cash hoarding 問題についての記述がそのまま残っていた。これに対し企業側から反発の声が上がったため、金融庁が「修正意見を受け付ける」こととしたようだ。

修正意見を受け付けるといってもパブリックコメントに付すわけでなく、内部で調整後に確定版がフォローアップ会議のWEBサイトで公表されるという流れとなる。今後の改訂スケジュールへの影響を考えると、今週早々に公表となる可能性が高い。cash hoarding 問題についての記述がカットされているのかどうか、注目される。

2025/06/13 同床異夢の中でスタートしたCGコードの改訂作業

2025年6月11日のニュース「CGコード改訂の方向性」でお伝えしたとおり、6月2日に金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)が約1年ぶりに開催され、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の見直し作業がスタートした。前回の改訂(2021年6月)から4年を経ての改訂となるが、2023年4月のフォローアップ会議で取りまとめられた「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(意見書(6))」で「各コードの改訂時期については、必ずしも従前の見直しサイクルにとらわれることなく、コーポレートガバナンス改革の実質化という観点から、その進捗状況を踏まえて適時に検討すること」とされ、3年に1回という定期的な改訂は行なわないこととされただけに、企業からは今回の改訂時期について「想定より早く来た」との声が聞こえてくる。6月11日には同じく金融庁の「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」が開催され、有価証券報告書の総会前開示(今後、「有価証券報告書の開示後の総会開催」という表現に変更される模様)の流れも決定的となり、会社法や金商法といったハードローの改正と同時並行での改訂となる。

今回のCGコード改訂の目的は以下のとおり。

①企業と投資家の自律的な意識改革に基づくコーポレートガバナンス改革の実質化を促す
②企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に真に寄与する「緊張ある信頼関係」に基づく対話の促進に向けた環境整備
③上場企業の対応コスト・開示負担に配慮し、策定・改訂時から一定期間が経過し実務への浸透が進んだ箇所等を削除・統合・簡略化する
④前回コード改訂時(2021年)以降に法制化された内容との重複排除に努めることで、コードのスリム化/プリンシプル化も同時に検討する

さらに、より具体的な改訂の方向性として以下が示されている。

① 経営資源の配分先には、設備投資・研究開発投資・地方拠点の整備等・スタートアップ等を含む成長投資、人的資本や知的財産への投資等、様々な投資先が考えられ、これらの多様な投資機会があることを認識することが重要である。このうち、知的財産等の無形資産への投資については、コーポレートガバナンス・コードと整合的な取組の促進に向け、引き続き関係機関との連携や事例の共有を進める。
また、人的資本への投資に関する開示を充実させる観点から、有価証券報告書における従業員給与・報酬に関する記載事項を集約するとともに、新たに企業戦略と関連付けた人材戦略や従業員給与・報酬の決定に関する方針、従業員給与の平均額の前年比増減率等の開示を求める。
② 上記の経営資源の配分に関し、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例えば現預金を必要以上に積み増していないか(cash hoarding 問題)の検証・説明責任の明確化を検討する。


hoarding : 「貯蔵」「買いだめ」といった意味。

本日6月13日に開催される「新しい資本主義実現会議」を経て閣議決定される「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」においても、上記の方向性を概ねなぞる形で、CGコードを改訂する理由と内容が示される。具体的には、「コーポレートガバナンス改革を引き続き推し進めることにより、中長期的な企業価値の向上を更に後押しする」とともに、「企業による積極投資を促進し、価値向上による果実を家計を含めた主体に広く分配することが重要である」としたうえで、「企業の稼ぐ力を更に向上させるため、」「経営資源の配分先には設備投資・研究開発投資・地方拠点の整備・スタートアップ等を含む成長投資、人的資本や知的財産への投資等を含む多様な投資機会があることを認識することが重要であり、」「経営資源の適切な配分が行われているかの検証・説明責任の明確化を含むコーポレートガバナンス・コードの見直しを検討する」としている。

若干唐突感があるのが、「地域のまちづくり・スタートアップ等の成長投資をコーポレートガバナンスに位置づけることで企業の投資を促すべきであり、企業の積極的な投資による地方における拠点整備が、中長期的な企業価値の向上につながることを(明らかにするために)」コーポレートガバナンス・コードの見直し等を行うとの記述が入ったことだ。これは、自民党の「新しい資本主義実行本部」(岸田文雄本部長)の提言(5月15日)に基づいている。同提言の47ページには「地域のまちづくり・スタートアップ等の成長投資をコーポレートガバナンスに位置づけることで企業の投資を促すべきであり、企業の積極的な投資による地方における拠点整備が、中長期的な企業価値の向上につながることをコーポレートガバナンス・コードの見直し等により明らかにすべきである。」とある。「成長投資」を促す文言は・・・

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2025/06/13 同床異夢の中でスタートしたCGコードの改訂作業(会員限定)

2025年6月11日のニュース「CGコード改訂の方向性」でお伝えしたとおり、6月2日に金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)が約1年ぶりに開催され、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の見直し作業がスタートした。前回の改訂(2021年6月)から4年を経ての改訂となるが、2023年4月のフォローアップ会議で取りまとめられた「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(意見書(6))」で「各コードの改訂時期については、必ずしも従前の見直しサイクルにとらわれることなく、コーポレートガバナンス改革の実質化という観点から、その進捗状況を踏まえて適時に検討すること」とされ、3年に1回という定期的な改訂は行なわないこととされただけに、企業からは今回の改訂時期について「想定より早く来た」との声が聞こえてくる。6月11日には同じく金融庁の「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」が開催され、有価証券報告書の総会前開示(今後、「有価証券報告書の開示後の総会開催」という表現に変更される模様)の流れも決定的となり、会社法や金商法といったハードローの改正と同時並行での改訂となる。

今回のCGコード改訂の目的は以下のとおり。

①企業と投資家の自律的な意識改革に基づくコーポレートガバナンス改革の実質化を促す
②企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に真に寄与する「緊張ある信頼関係」に基づく対話の促進に向けた環境整備
③上場企業の対応コスト・開示負担に配慮し、策定・改訂時から一定期間が経過し実務への浸透が進んだ箇所等を削除・統合・簡略化する
④前回コード改訂時(2021年)以降に法制化された内容との重複排除に努めることで、コードのスリム化/プリンシプル化も同時に検討する

さらに、より具体的な改訂の方向性として以下が示されている。

① 経営資源の配分先には、設備投資・研究開発投資・地方拠点の整備等・スタートアップ等を含む成長投資、人的資本や知的財産への投資等、様々な投資先が考えられ、これらの多様な投資機会があることを認識することが重要である。このうち、知的財産等の無形資産への投資については、コーポレートガバナンス・コードと整合的な取組の促進に向け、引き続き関係機関との連携や事例の共有を進める。
また、人的資本への投資に関する開示を充実させる観点から、有価証券報告書における従業員給与・報酬に関する記載事項を集約するとともに、新たに企業戦略と関連付けた人材戦略や従業員給与・報酬の決定に関する方針、従業員給与の平均額の前年比増減率等の開示を求める。
② 上記の経営資源の配分に関し、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例えば現預金を必要以上に積み増していないか(cash hoarding 問題)の検証・説明責任の明確化を検討する。


hoarding : 「貯蔵」「買いだめ」といった意味。

本日6月13日に開催される「新しい資本主義実現会議」を経て閣議決定される「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」においても、上記の方向性を概ねなぞる形で、CGコードを改訂する理由と内容が示される。具体的には、「コーポレートガバナンス改革を引き続き推し進めることにより、中長期的な企業価値の向上を更に後押しする」とともに、「企業による積極投資を促進し、価値向上による果実を家計を含めた主体に広く分配することが重要である」としたうえで、「企業の稼ぐ力を更に向上させるため、」「経営資源の配分先には設備投資・研究開発投資・地方拠点の整備・スタートアップ等を含む成長投資、人的資本や知的財産への投資等を含む多様な投資機会があることを認識することが重要であり、」「経営資源の適切な配分が行われているかの検証・説明責任の明確化を含むコーポレートガバナンス・コードの見直しを検討する」としている。

若干唐突感があるのが、「地域のまちづくり・スタートアップ等の成長投資をコーポレートガバナンスに位置づけることで企業の投資を促すべきであり、企業の積極的な投資による地方における拠点整備が、中長期的な企業価値の向上につながることを(明らかにするために)」コーポレートガバナンス・コードの見直し等を行うとの記述が入ったことだ。これは、自民党の「新しい資本主義実行本部」(岸田文雄本部長)の提言(5月15日)に基づいている。同提言の47ページには「地域のまちづくり・スタートアップ等の成長投資をコーポレートガバナンスに位置づけることで企業の投資を促すべきであり、企業の積極的な投資による地方における拠点整備が、中長期的な企業価値の向上につながることをコーポレートガバナンス・コードの見直し等により明らかにすべきである。」とある。「成長投資」を促す文言は与党から官邸に持ち込まれ、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」やフォローアップ会議にねじ込まれたものであることは明らかだろう。

6月2日のフォローアップ会議で示された「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024のフォローアップと今後の方向性について(案)」は神田座長が引き取り、現時点では確定版は未公表だが、上記「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」と合わせて読むと、今回のCGコード改訂のポイントは下記の2点にあることが確認できる。

コードのスリム化/プリンシプル化
・上場企業の対応コスト・開示負担に配慮し、策定・改訂時から一定期間が経過し実務への浸透が進んだ箇所等の削除・統合・簡略化
・前回コード改訂時(2021年)以降に法制化された内容との重複排除
経営資源の適切な配分が行われているかの検証・説明責任の明確化
・適切な配分先は、設備投資・研究開発投資・地方拠点の整備等・スタートアップ等を含む成長投資、人的資本、知的財産への投資等

ここで注目されるのが、6月2日のフォローアップ会議で示された「例えば現預金を必要以上に積み増していないか(cash hoarding 問題)の検証・説明責任の明確化」が「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」には掲載されていないということだ。フォローアップ会議では、cash hoarding 問題の検証・説明責任の明確化という記述について、「かえって自社株買いなどの短期的なキャッシュ・アウトを誘発しないか」との指摘が相次いだが、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」からこの記述がカットされたのは、フォローアップ会議での議論の結果を受けたものだと思われる。

フォローアップ会議では、川北メンバーが「コードの内容は充実した。これ以上の内容の追加は原則不要だろう。何らかのものを追記する必要が生じ得るかもしれないが、そうであれば不要になったものを削除もしくは脇に置く措置が求められる。」との書面意見を出し、松岡メンバーは「ハードローでのアプローチによる改革をまずは行うべきで、コーポレートガバナンス・コードを改訂する大義に乏しい」と訴えた。しかし、神田座長の後継と目される神作メンバーが「ハードローで見直すべき点はあるが、法的拘束力のないソフトローのレベルでできることをしていくことも重要」と反論するなど、多くのメンバーがコードの改訂を要望した。「改訂すべき」との意見のメンバーは、以下のような多様な観点の書き込みを加えるべきとのことだった。

・コンプライ・オア・エクスプレインの徹底
・序文の新設とマルチステークホルダー・キャピタリズムの位置づけ
・監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社それぞれに応じた書き分け(監査役と監査等委員会設置会社の監査委員の監査のあり方、それぞれのガバナンス形態における取締役会事務局のあり方等)
・取締役会の役割・責務の明確化
・独立社外取締役の質の向上、役割(「助言」ではない等)や選任、評価の明確化
・独立社外取締役の選任・評価への指名委員会のかかわり方
・独立社外取締役を過半数にすること
・任意の委員会の議事録作成の原則
・資本コストを上回る収益性の確保
・株主総会のオンライン開催の制限
・コード遵守のインセンティブづけ
・コードのコンプライが虚偽であった場合の対応
・グループガバナンス、親子上場の考え方、支配株主のガバナンス上の課題
・開示項目の合理化、整理統合
・政策保有株式の開示
・人的資本の開示


マルチステークホルダー・キャピタリズム : 企業が株主だけでなく、従業員、取引先、顧客、地域社会など、あらゆるステークホルダーの利益を考慮しながら経営を行うべきだとする考え方。

有価証券報告書の総会前開示についての国会での議論で、「会社法の改正は時間がかかるので、まずはコーポレートガバナンス・コードに書き込め」との提案があったように、与党も政府も、審議会や国会での議論が不要なソフトローであれば容易に企業に行動変容を迫ることができると考えている節がある。ハードローでは困難な「企業の経営の自由度を尊重しつつ、創意工夫を促す」ことがCGコードの役割だったはずだが、今やハードローの代替え、あるいは“露払い”といった位置付けになりつつある。「地域のまちづくりや地方拠点の整備をすべきである」「スタートアップに投資をすべきである」という原則を設けて、それをコンプライ・オア・エクスプレインせよと言われても、企業は対応に苦慮することになると思われる。

そもそもの位置付けを棚上げした状態で“同床異夢”の思惑を反映させるべく、CGコード改訂に向けた議論はスタートすることになった。その先行きは不透明と言えよう。

2025/06/12 【新任役員向けトレーニングプログラム】不正競争防止法(営業秘密の保護) の更新

下記の【新任役員向けトレーニングプログラム】につき、法令等の改正や実務動向の変化に対応するため、講義内容(動画およびレジュメの双方)を更新いたしました。本動画は新任役員向けトレーニングプログラムの受講の契約をされている方のみが閲覧可能です。

概略

本講義では、近年の情報漏洩事例を紹介しつつ、情報漏洩に対し不正競争防止法の保護を受けるための要件、同法違反に該当する行為、違反行為に対する法的措置などについて解説します。

【講師】TMI総合法律事務所 波田野 晴朗 弁護士
【講義時間】13分59秒
【目次】
1 情報漏洩事例
2 背景と傾向
3 秘密情報保護の基礎
4 秘密情報の法的保護
5 営業秘密とは
6 営業秘密の対象となる情報
7 営業秘密侵害行為
8 営業秘密侵害行為に対する法的措置

講義資料 不正競争防止法(営業秘密の保護).pdf
講義

不正競争防止法(営業秘密の保護)
17644

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2025/06/11 CGコード改訂の方向性

2021年にコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)が再改訂されて以降、2022年にはその再改訂されたCGコードへの対応状況について「中間点検」が行われ、2023年には「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(意見書(6))」が、2024年には「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024(意見書(7))」が公表され、現在に至っている。

〇関連ニュース
・「中間点検」については2022年8月30日のニュース「CGコードの成果に対する企業と規制当局の認識のギャップ」参照
・「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(意見書(6))」については2023年4月18日のニュース「コード改訂「3年に1度」のサイクルにとらわれず/コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた「アクション・プログラム」公表へ」参照
・「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024(意見書(7))」については2024年4月22日のニュース「実質株主の把握が容易に スチュワードシップ・コード改訂へ」参照

2023年に公表された意見書(6)では、スチュワードシップ・コード、CGコードの改訂について「従前の見直しサイクルにとらわれない」こととされ、実際、それぞれ2020・2021年の再改訂から3年経過した2023・2024年には改訂は行われなかった。しかし、2024年の意見書(7)に実質株主の透明性確保と協働エンゲージメントの促進に向けてスチュワードシップ・コードを見直す旨が盛り込まれたことを受け、金融庁はこれらの内容を盛り込んだ改訂案を2025年3月21日に公表、4月20日に締め切られたパブリックコメントを経て間もなく確定する見通しとなっている(2025年2月18日のニュース「速報 スチュワードシップ・コードの改訂内容が判明」参照)。こうした中、次は2026年に向けコーポレートガバナンス・コードの改訂プロセスがスタートするのではないかとの観測が広がっていたところ、2025年6月2日に開催された第30回「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)で、2026年に改訂が行われることが確定的となった。


実質株主 : 議決権行使を指図しているが株主名簿には記載されない者

第30回フォローアップ会議では、「意見書(8)」になると目される「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム 2024 のフォローアップと今後の方向性について(案)」が公表されており、その中で下記のとおりコーポレートガバナンス・コードの改訂が提案されている(1ページ参照)。

引き続き、以下を踏まえ、企業と投資家の自律的な意識改革に基づくコーポレートガバナンス改革の実質化を促しつつ、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に真に寄与する「緊張感ある信頼関係」に基づく対話の促進に向け、コーポレートガバナンス・コードの見直しを行う等、必要な環境整備を推進していくこととしてはどうか。

上記提案を受け、フォローアップ会議では「5つ」の項目について、現状認識と問題意識を踏まえた「今後の方向性」が示されている。全てがCGコード改訂につながるものではないが、当フォーラムが検討した「想定され得るコード改訂」と併せて下表のとおりまとめてみた。・・・

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2025/06/11 CGコード改訂の方向性(会員限定)

2021年にコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)が再改訂されて以降、2022年にはその再改訂されたCGコードへの対応状況について「中間点検」が行われ、2023年には「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(意見書(6))」が、2024年には「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024(意見書(7))」が公表され、現在に至っている。

〇関連ニュース
・「中間点検」については2022年8月30日のニュース「CGコードの成果に対する企業と規制当局の認識のギャップ」参照
・「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(意見書(6))」については2023年4月18日のニュース「コード改訂「3年に1度」のサイクルにとらわれず/コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた「アクション・プログラム」公表へ
」参照
・「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024(意見書(7))」については2024年4月22日のニュース「実質株主の把握が容易に スチュワードシップ・コード改訂へ」参照

2023年に公表された意見書(6)では、スチュワードシップ・コード、CGコードの改訂について「従前の見直しサイクルにとらわれない」こととされ、実際、それぞれ2020・2021年の再改訂から3年経過した2023・2024年には改訂は行われなかった。しかし、2024年の意見書(7)に実質株主の透明性確保と協働エンゲージメントの促進に向けてスチュワードシップ・コードを見直す旨が盛り込まれたことを受け、金融庁はこれらの内容を盛り込んだ改訂案を2025年3月21日に公表、4月20日に締め切られたパブリックコメントを経て間もなく確定する見通しとなっている(2025年2月18日のニュース「速報 スチュワードシップ・コードの改訂内容が判明」参照)。こうした中、次は2026年に向けコーポレートガバナンス・コードの改訂プロセスがスタートするのではないかとの観測が広がっていたところ、2025年6月2日に開催された第30回「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)で、2026年に改訂が行われることが確定的となった。


実質株主 : 議決権行使を指図しているが株主名簿には記載されない者

第30回フォローアップ会議では、「意見書(8)」になると目される「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム 2024 のフォローアップと今後の方向性について(案)」が公表されており、その中で下記のとおりコーポレートガバナンス・コードの改訂が提案されている(1ページ参照)。

引き続き、以下を踏まえ、企業と投資家の自律的な意識改革に基づくコーポレートガバナンス改革の実質化を促しつつ、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に真に寄与する「緊張感ある信頼関係」に基づく対話の促進に向け、コーポレートガバナンス・コードの見直しを行う等、必要な環境整備を推進していくこととしてはどうか。

上記提案を受け、フォローアップ会議では「5つ」の項目について、現状認識と問題意識を踏まえた「今後の方向性」が示されている。全てがCGコード改訂につながるものではないが、当フォーラムが検討した「想定され得るコード改訂」と併せて下表のとおりまとめてみた。「想定され得る改訂」はあくまで当フォーラム独自の考察であり、その実現性を保証するものではないが、自社におけるCGコード対応の現在地と照らし合わせることで、改訂に備え議論が必要な事項を洗い出すためのチェックリストとして活用いただきたい。

項目 今後の方向性(抄) 想定され得る改訂
1.稼ぐ力の向上 ⚫︎資本コストや株価を意識した経営や対話促進を引き続き後押し
⚫︎知的財産や人的資本など多様な投資機会を認識した経営資源の最適な配分を実現
⚫︎現預金を必要以上に積み増していないかの検証・説明責任
⚫︎原則5-2(経営戦略や経営計画の策定・公表)の新たな補充原則として、企業戦略と関連付けた人材戦略の策定・開示を求める
⚫︎原則1-3(資本政策の基本的な方針)において、現預金を意識した検証・説明を求める
2.情報開示の充実・投資家との対話促進 ⚫︎企業と投資家の議論の場を設置
⚫︎有報の総会前開示をさらに促す
⚫︎有報の記載事項を整理する
⚫︎原則1-2(株主総会における権利行使)の新たな補充原則として、有報の総会前開示を求める(3週間前が望ましい)
3.取締役会等の機能強化 ⚫︎独立社外取締役の果たすべき役割や取締役会事務局(コーポレートセクレタリーの機能強化についての議論・共有を行う ⚫︎原則4-7(独立社外取締役の役割・責務)において、 (ii)経営の監督、(iii)利益相反の監督が重要であることを明確化
⚫︎原則4-13(情報入手と支援体制)の新たな補充原則として、取締役会事務局の設置と活用を求める
4.政策保有株式、大量保有報告制度、親子上場など ⚫︎政策保有株式を売らせないよう圧力をかけている事例に対応
⚫︎大量保有報告制度違反の課徴金額の水準を引き上げる
⚫︎少数株主保護の観点から必要な上場制度を整備する
⚫︎補充原則1-4①(政策保有株式の売却意向への対応)の誠実なコンプライを強く要請
⚫︎原則1-7(関連当事者間の取引)の新たな補充原則として、親会社がある場合の監視体制を厳しく要求する
5.サステナビリティを意識した経営 ⚫︎サステナビリティ開示・保証制度の在り方について議論を深める
⚫︎虚偽記載等の責任範囲を明確化し、リスクの低減を図る
⚫︎投資家ニーズを充足した人的資本の基準開発に貢献する
⚫︎補充原則3-1③(付加価値の高い記載)において、サステナビリティ開示は国際的な枠組みに基づくこと、保証を受けるべきであることを示す


資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。
コーポレートセクレタリー : 取締役会や各委員会の運営を支援し、コーポレートガバナンスの実効性を高める役割を担う専門職で、英米企業では広く普及している。取締役会・各委員会のアジェンダ設定や議事録作成、社外取締役に向けた情報提供や勉強会の実施、投資家向け情報開示のサポートなどを担う。
大量保有報告制度 : 市場の透明性・公正性を高め、投資者保護を図ることを目的として、株券等の大量保有者に対し「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出を義務付ける金融商品取引法上の制度。具体的には、①保有割合が5%超となった場合、②その後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合、それぞれ提出事由が生じた日から5営業日以内に「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出が求められる(②の場合に提出するのは「変更報告書」)。

また、第30回フォローアップ会議で公表された「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム 2024 のフォローアップと今後の方向性について(案)」は、CGコードの改訂に際して、「実務への浸透が進んだ箇所等を削除・統合・簡略化」「法制化された内容との重複排除」によるCGコードのスリム化を検討することも提言している。例えば、有報での開示が法制化されている原則2-4①後段の「多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針」や、同じく原則3-1③後段の「気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響」などが対象となる可能性がありそうだ。