2018/02/28 【役員会 Good&Bad発言集】子会社の連結外し(会員限定)

<解説>
株式を持っていなくても子会社になり得る

連結財務諸表とは、支配従属関係にある2つ以上の企業からなる集団(企業集団)を単一の組織体とみなして、親会社が当該企業集団の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況を総合的に報告するために作成するものです(企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」1項参照)。投資家は連結財務諸表の利益を用いて投資判断を行っており、企業側も月次で連結損益計算書等を作成するなど財務会計だけではなく管理会計上も連結決算を行い、そこで得られた利益指標をもとにグループ全体として最適な意思決定を行う「連結経営」に取り組んでいます。

連結財務諸表の作成や利用にあたり、「親会社」「子会社」の概念を整理しておくことは有用です。「親会社」とは、「他の企業の財務および営業または事業の方針を決定する意思決定機関(株主総会や取締役会など)を支配している企業」をいい、「子会社」とは、「当該他の企業」をいうとされています。ポイントは「支配の有無」です。「支配する側」が親会社、「支配される側」が子会社となります(これを「支配力基準」と言います)。なお、親会社および子会社または子会社が、他の企業の意思決定機関を支配している場合における当該他の企業も、その親会社の子会社とみなされます。

それでは、この「他の企業の意思決定機関を支配しているかどうか」はどのように判断すべきでしょうか。これについて「連結財務諸表に関する会計基準」は、次の(1)から(3)の基準を示しています(本基準は7項を参照)。なお、「財務上または営業上若しくは事業上の関係からみて他の企業の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる企業」は、これらの基準にあてはめることなく、子会社ではないことになります(子会社でなければ連結する必要はありません)。

No 議決権の所有割合 具体的な基準
(1) 過半数 他の企業()の議決権の過半数を自己の計算において所有している企業
(2) 40%~50% 他の企業()の議決権の40%以上50%以下を自己の計算において所有している企業であって、かつ、次のいずれかの要件に該当する企業
① 自己の計算において所有している議決権と、「緊密な関係にある者」および「議決権行使の内容に同意している者」が所有している議決権とを合わせて、他の企業の議決権の過半数を占めていること
② 役員若しくは使用人である者、またはこれらであった者で自己が他の企業の財務および営業または事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該他の企業の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること
③ 他の企業の重要な財務および営業または事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること
④ 他の企業の資金調達額の総額の過半について融資を行っていること(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を合わせて資金調達額の総額の過半となる場合を含む。)
⑤ その他、他の企業の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること
(3) 自社と緊密な関係にある者が所有している議決権と合算して過半数 自己の計算において所有している議決権と、「緊密な関係にある者」および「議決権行使の内容に同意している者」が所有している議決権とを合わせて、他の企業の議決権の過半数を占めている企業であって、かつ、上記(2)の②から⑤までのいずれかの要件に該当する企業

 更生会社、破産会社その他これらに準ずる企業であって、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる企業を除く。

自己の計算 : 自己が資金を出しているということ。
緊密な関係にある者 : 自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者
議決権行使の内容に同意している者 : 自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者
資金調達額 : 借入金や社債など貸借対照表の負債の部に計上されているもの
融資 : 債務の保証及び担保の提供を含む。以下同じ。
議決権 : 当該議決権を所有していない場合を含む。すなわち0%保有時でも、緊密な者および同意している者が所有している議決権で判断する。

ここで注意したいのは、たとえ当該会社の議決権の所有割合が50%以下であっても40%以上を有していれば、上記(2)の①~⑤の要件のいずれかに該当する限り、子会社になるということです。また、当該会社の議決権の所有割合が40%未満(極端な例だと0%)であっても、上記(2)の②~⑤の要件のいずれかに該当する限り、やはり同様に子会社として扱わなければなりません。

上記の基準に照らして子会社かどうかの判定をします。子会社と判定された会社は連結対象に含めるのが原則です(「連結財務諸表に関する会計基準」13項参照)。対象会社によっては子会社となるかどうかで、連結財務諸表の見栄えが大きく変わってくることもあります。例えば、連結グループ外への売上高が大きい会社が連結子会社となれば連結売上高は増えますし、グループ内の取引高が大きい会社が連結子会社になれば連結相殺の額が増える結果、連結売上高は減少します。業績の悪い会社が子会社ではないことになれば連結から外れるため、当該子会社の財政状態の悪化を連結貸借対照表に反映させる必要がなくなります。実際に、カネボウの事件()では「連結外し」が粉飾の手口として用いられていました。

 カネボウでは2005年4月に粉飾決算が発覚し、実質は債務超過であったことが判明した(その後、カネボウ株は上場廃止)。粉飾には循環売上、経費の先送り等様々な手口が用いられていたが、子会社に対して循環売上や押し込み販売を行い、当該子会社を「連結外し」することで、連結売上高を水増ししたり、損を子会社に押し付けて当該子会社を連結から外したりといった連結外しの手口も用いられていた。
子会社はすべて連結すべき?

もっとも、子会社であっても、次に該当するものは、連結の範囲に含めてはなりません(本例外については「連結財務諸表に関する会計基準」14項を参照)。

(1) 支配が一時的であると認められる企業
(2) (1)以外の企業であって、連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれのある企業

このような例外が規定されているのは、これらの企業を連結の範囲に含めることは、かえって連結財務諸表の読者をミスリードする可能性があるからです。

また、小規模子会社に限り連結範囲から除外する(いわゆる非連結子会社として扱う)ことも許容されています(小規模子会社の連結除外の容認については「連結財務諸表に関する会計基準」注3参照)。小規模子会社かどうかは、具体的には量的基準と質的基準の双方から判断する必要があります。

<量的基準>
企業集団における個々の子会社の特性とともに、少なくとも下記の4項目に与える影響を持って判断します(会計基準などで「●%以下であれば連結から除外してもよい」という数値基準が明示されているわけではないので、個々の会社がそれぞれの状況に基づき判断することになります)。
334908
<質的基準>
以下のような子会社は原則として非連結子会社とすることはできません。

① 連結財務諸表提出会社の中・長期の経営戦略上の重要な子会社
② 連結財務諸表提出会社の一業務部門、例えば製造、販売、流通、財務等の業務の全部または重要な一部を実質的に担っていると考えられる子会社。
③ セグメント情報の開示に重要な影響を与える子会社
④ 多額な含み損失や発生の可能性の高い重要な偶発事象を有している子会社

このような量的基準と質的基準の双方から「連結の範囲から除いても企業集団の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しいと言えるかどうか」を判断することになります。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役A:「当社連結グループの規模とS社の規模を考えると、S社を連結しないことも許容されるのではないでしょうか。」
コメント:重要性に乏しい子会社を連結から除外するのは会計基準でも許容されている考え方です。会計基準に従った連結外しであれば、積極的に推奨されるものではないとはいえ、何ら咎められるものではありません。製造業を営むP社グループは、所属する業界では1位の企業グループとのことなので、売上や資産の規模および利益水準を考慮すると、あらたに「カフェ事業」といった報告セグメントを新設する状況ではないでしょう(報告セグメントの設定基準については【役員会 Good&Bad発言集】セグメント情報の「その他」を参照)。また、1店舗だけ試験的にカフェを運営するための子会社であれば、経営戦略上の重要な子会社にも該当しないかと思われます。新設会社なので多額の含み損があることも考えにくいです。以上を考慮すると、S社を連結しなくても投資家の投資判断が歪められるとは言えず、S社の連結外しは許容されるとの取締役Aの発言は妥当と評価できます。会計基準上の要件にあたはめて丁寧に検討した発言であれば、なおGoodでした。

BAD発言はこちら
取締役B:「連結財務諸表は、子会社すべてを含めた企業集団としての財政状態や業績等に関する真実な報告を提供するものでなければならないと考えています。連結外しは古典的な粉飾決算の手法であり、連結外しにより投資家に誤った財務報告を行うことになります。S社を連結対象にすべきと考えます。」
コメント:連結の範囲から除いても企業集団の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しいと言える子会社であれば、会計基準においても連結範囲に含めないことが許容されています。「連結外し」イコール粉飾決算というのはいささか短絡的な発想であり、Bad発言です。
取締役C:「S社は、速報性が重視される四半期決算では連結しないとしても、年度決算では連結すべきと考えます。」
コメント:連結の範囲は、四半期決算であっても年度決算と同様に考えるべきです。確かに、四半期決算では速報性が重視されますが、そうかと言って四半期決算における連結の範囲が本決算と異なるのであれば、四半期決算は年度決算の一部の期間を構成する決算とは言えなくなってしまいます。そのような役に立たない四半期決算を公表しては、かえって投資家の投資判断を誤らせてしまいます。四半期決算と年度決算とで連結範囲を変えてもよいとするCの発言はBadと言わざるを得ません。

2018/02/28 【役員会 Good&Bad発言集】子会社の連結外し

東証一部に上場している製造業のP社は、製造子会社や販売子会社等10数社の連結子会社を持つ企業グループを形成しており、P社グループが所属する業界では1位の規模を誇っています。このたび、P社では新たにカフェ事業を営む子会社S社(100%子会社)を設立することになりました。これに関連して、P社の取締役会で新規事業担当取締役からS社設立が完了した旨の報告とカフェ事業はP社グループでは初めての取り組みであることから当面は1店舗だけ試験的に運営する方針であるとの報告が行われました。新規事業担当取締役の報告の後、経理担当取締役が当面はS社を連結しない方針である旨発言したところ、これに対して取締役A・B・Cが下記の発言をしました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「当社連結グループの規模とS社の規模を考えると、S社を連結しないことも許容されるのではないでしょうか。」

取締役B:「連結財務諸表は、子会社すべてを含めた企業集団としての財政状態や業績等に関する真実な報告を提供するものでなければならないと考えています。連結外しは古典的な粉飾決算の手法であり、連結外しにより投資家に誤った財務報告を行うことになります。S社を連結対象にすべきと考えます。」

取締役C:「S社は、速報性が重視される四半期決算では連結しないとしても、年度決算では連結すべきと考えます。」

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2018/02/28 2018年2月度チェックテスト

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【問題1】

プライバシーの観点から、商業登記簿には代表取締役の自宅住所は掲載されていない。


正しい
間違い
【問題2】

上場会社は、2018年3月期以降の有価証券報告書には、【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】における「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」として、キャッシュ・フロー計算書の情報の要約を記載すればよい。


正しい
間違い
【問題3】

上場会社の経営陣は、2018年4月1日以降に開催される株主総会では、「インサイダー情報に該当しないかどうか」だけでなく、「FDルール上の重要情報に該当しないかどうか」も考慮して、不用意な発言をしないよう注意しなければならない。


正しい
間違い
【問題4】

経営陣は、自社の資本コストを把握し、資本コストを意識した経営を行わなければならない。


正しい
間違い
【問題5】

コーポレートガバナンス・コードにおける政策保有株式に関する規定に、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方等を政策保有に関する方針に含めることを盛り込むよう改正が行われる可能性がある。


正しい
間違い
【問題6】

コーポレートガバナンス・コードが改正され、取締役会に占める社外取締役の割合を1/3以上に引き上げられない上場会社(本則市場へ上場している会社に限る)はそのことをエクスプレイン(説明)しなければならなくなる。


正しい
間違い
【問題7】

上場会社における不祥事予防のプリンシプルが導入されれば、コンプライアンス違反を誘発させかねないほどの高過ぎる経営目標を設定した上場会社は、プリンシプル違反を問われ、上場廃止の処分を受ける可能性がある。


正しい
間違い
【問題8】

経済産業省に設置された「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」が昨年(2017年)5月29日にとりまとめた「価値協創ガイダンス」の全体像を示す図の大項目には、「価値観」「ビジネスモデル」「持続可能性・成長性」「戦略」に加えてESGのうち「E」と「S」が並べられている。


正しい
間違い
【問題9】

第三者割当による希薄化率が15%以上となる場合、証券取引所は企業に対し、(1)第三者委員会など、経営陣から一定程度独立した者による「第三者割当の必要性および相当性に関する客観的な意見」の入手、あるいは(2)株主総会の決議などの株主の意思確認--を求めている。


正しい
間違い
【問題10】

ダイバーシティの確保は、不正の予防や早期発見にも資する。


正しい
間違い

2018/02/28 2018年2月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
均質的な集団では、環境が閉鎖的で発想が内向きとなり、不正が生じても隠蔽する組織になりがちと言えます。ダイバーシティを確保することで、組織が風通しの良いオープンなものとなります。ダイバーシティの確保は問題文のとおり、不正の予防や早期発見にも資すると言えます(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2018/02/27 【失敗学第45回】シチズン時計の事例(会員限定)

2018/02/28 2018年3月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
均質的な集団では、環境が閉鎖的で発想が内向きとなり、不正が生じても隠蔽する組織になりがちと言えます。ダイバーシティを確保することで、組織が風通しの良いオープンなものとなります。ダイバーシティの確保は問題文のとおり、不正の予防や早期発見にも資すると言えます(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2018/02/27 【失敗学第45回】シチズン時計の事例(会員限定)

2018/02/28 2018年3月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
第三者割当による希薄化率が25%以上となる、あるいは第三者割当によって支配株主が異動することとなる場合、証券取引所は企業に対し、(1)第三者委員会など、経営陣から一定程度独立した者による「第三者割当の必要性および相当性に関する客観的な意見」の入手、あるいは(2)株主総会の決議などの株主の意思確認--を求めています(問題文の「15%」は誤りで、正しくは「25%」です)。

こちらの記事で再確認!
2018/02/26 「公募」or「第三者割当」、自社に適した資金調達方法は?(会員限定)

2018/02/28 2018年2月度チェックテスト第9問解答画面(正解)

正解です。
第三者割当による希薄化率が25%以上となる、あるいは第三者割当によって支配株主が異動することとなる場合、証券取引所は企業に対し、(1)第三者委員会など、経営陣から一定程度独立した者による「第三者割当の必要性および相当性に関する客観的な意見」の入手、あるいは(2)株主総会の決議などの株主の意思確認--を求めています(問題文の「15%」は誤りで、正しくは「25%」です)。

こちらの記事で再確認!
2018/02/26 「公募」or「第三者割当」、自社に適した資金調達方法は?(会員限定)

2018/02/28 2018年3月度チェックテスト第8問解答画面(不正解)

不正解です。
「価値協創ガイダンス」の全体像を示す図の大項目には、「価値観」「ビジネスモデル」「持続可能性・成長性」「戦略」「成果と重要な成果指標(KPI)」「ガバナンス」の6つの大項目が並んでいます。ESGのうち「E」と「S」は掲げられていません(以上より問題文は誤りです)が、これにはガバナンスさえしっかりしていれば、「E」と「S」に関する課題についても自ずとして十分に考慮されるはずという考え方が反映されています。

こちらの記事で再確認!
2018/02/22 価値協創ガイダンスに見るESGに対する機関投資家の考え方(会員限定)

2018/02/28 2018年2月度チェックテスト第8問解答画面(正解)

正解です。
「価値協創ガイダンス」の全体像を示す図の大項目には、「価値観」「ビジネスモデル」「持続可能性・成長性」「戦略」「成果と重要な成果指標(KPI)」「ガバナンス」の6つの大項目が並んでいます。ESGのうち「E」と「S」は掲げられていません(以上より問題文は誤りです)が、これにはガバナンスさえしっかりしていれば、「E」と「S」に関する課題についても自ずとして十分に考慮されるはずという考え方が反映されています。

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2018/02/22 価値協創ガイダンスに見るESGに対する機関投資家の考え方(会員限定)

2018/02/28 2018年2月度チェックテスト第7問解答画面(正解)

正解です。
日本取引所自主規制法人は、「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」の導入を検討中です。これには「経営陣は、コンプライアンスにコミットし、その旨を継続的に発信し、コンプライアンス違反を誘発させないよう事業実態に即した経営目標の設定や業務遂行を行う。」等、不祥事を予防するためのプリンシプルが掲げられています。もっとも、「ルール」とは異なり、あくまで「プリンシプル」なので、遵守できない企業に対する罰則等のペナルティは準備されていません(問題文は「上場廃止の処分を受ける可能性」との記述が誤りです)。

こちらの記事で再確認!
2018/02/21 日本取引所が「上場会社における不祥事予防のプリンシプル(案)」を公表(会員限定)