2018/02/28 【2018年2月の課題】業績連動型株式報酬制度の開示・説明

2018年2月の課題

当社(東証一部上場)は昨年、業績連動型株式報酬制度を導入しましたが、機関投資家との対話の際に、「本制度がガバナンス上、あるいはインセンティブとして、どのように機能するのか開示からは見えにくい。次回以降はそれが分かる形で詳しく開示して欲しい」との指摘を受けました。当社としては、本制度の仕組みそのものについては詳細に開示したつもりだったのですが、機関投資家の納得を得るには至らなかったようです。これから本格化する機関投資家との対話に臨むにあたり、どのような点に留意して開示・説明をすればよいでしょうか。

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

模範解答を見る
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2018/02/28 2018年2月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
上場会社は、2018年3月期以降の有価証券報告書の【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】において、単にキャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したものを記載するだけではなく、企業の経営内容に即して、例えば、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源は何であるかなどについて、具体的に記載することが期待されています。

こちらの記事で再確認!
2018/02/05 改正後の「資本の財源及び資金の流動性」には何を書く?(会員限定)

2018/02/28 2018年2月度チェックテスト第2問解答画面(不正解)

不正解です。
上場会社は、2018年3月期以降の有価証券報告書の【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】において、単にキャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したものを記載するだけではなく、企業の経営内容に即して、例えば、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源は何であるかなどについて、具体的に記載することが期待されています。

こちらの記事で再確認!
2018/02/05 改正後の「資本の財源及び資金の流動性」には何を書く?(会員限定)

2018/02/28 2018年2月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
登記簿を閲覧すれば誰でも代表取締役の自宅住所を知ることができます(問題文は正しいです)。しかし、それではプライバシーの観点から問題があるため、法務省に設置された法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、原則として株式会社の代表取締役の住所が記載されていない登記事項証明書しか入手できないようにする会社法改正案が検討されています。自宅住所が公開されていることに不安を覚えている代表取締役にとっては朗報と言えます。

こちらの記事で再確認!
2018/02/02 登記簿上の代表取締役の住所が原則非公開に(会員限定)

2018/02/28 2018年2月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
登記簿を閲覧すれば誰でも代表取締役の自宅住所を知ることができます(問題文は正しいです)。しかし、それではプライバシーの観点から問題があるため、法務省に設置された法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、原則として株式会社の代表取締役の住所が記載されていない登記事項証明書しか入手できないようにする会社法改正案が検討されています。自宅住所が公開されていることに不安を覚えている代表取締役にとっては朗報と言えます。

こちらの記事で再確認!
2018/02/02 登記簿上の代表取締役の住所が原則非公開に(会員限定)

2018/02/27 【失敗学第45回】シチズン時計の事例(会員限定)

概要

シチズン時計(東証第1部)の連結子会社(シチズン電子)が、製品を「取引先企業との間での事前の取り決めとは異なる製造拠点」で製造したにもかかわらず製造拠点を偽って出荷したり、中国生産品を「Made in Japan」と印字されたシールを貼付した箱に詰めて出荷したりしていた。また、シチズン電子の品質管理部門はLED照明に関して不適正なレポートを発行していた。

経緯

シチズン時計が、2018年2月に「第三者委員会の調査報告書」を公表し、再発防止策を取りまとめるまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

2011年~2012年
シチズン電子では、業績の回復を図るための構造改革の一環として、グループ外の企業に製品の製造を委託するのをやめ、内製化を図った。取引先によっては、製造拠点の変更にあたり事前申請を行うよう取決めをしているところもあったが、シチズン電子では、事前承認が必要な得意先の一部につき、承認を取ることはしていなかった。

2010年4月から2017年6月
シチズン電子において、取引先企業との取決めとは異なる製造拠点で生産した製品を、当該取決めに基づく製造拠点で生産した製品のように装って出荷していた。その際に、製造拠点が変更されていることを取引先に隠すため、製造拠点等を示す部分のロット番号を変更した出荷ラベルを製品に貼付していた。当該不正は、上記の構造改革に伴う製造拠点の変更により、件数が増加することとなった。

2012年4月~2016年12月
シチズン電子では、LED照明に関する21件の試験について、調査結果を偽るレポートを発行していた。

2017年
6月:シチズン時計は、シチズン電子から、取引先企業に対し、実際の製造拠点と異なる製造拠点を示すラベルを貼付した製品を出荷しているとの疑義がある旨の報告を受けた。
11月10日:シチズン時計は第三者委員会を設置(リリースはこちら)。

2018年
2月9日:シチズン時計は「第三者委員会の調査報告書」を公表。

内容・原因・改善策

シチズン時計が、2018年2月に公表した「第三者委員会の調査報告書」によると、本件の問題点の主な内容とその原因、対応策および再発防止策は次のとおりである。

取引先への製造拠点変更の不申請とロット番号の偽造
内容 シチズン時計の連結子会社であるシチズン電子において、製品の製造拠点を変更したにもかかわらず、取引先の一部に対して必要となる申請をしていなかった。
また、製品の受注・出荷調整等を行う業務部業務課の担当従業員が、情報システム部の従業員に対して、出荷ラベルの発行プログラムにおいて製造拠点を示す部分のロット番号等の変更を依頼し、これに基づき、情報システム部の従業員がその都度、上司の承認を得て、ラベル発行プログラムの変更を行っていた。これにより、実際と異なる製造拠点を示すロット番号等が印字された出荷ラベルが出力されていた。また、実際の出荷業務を行うシチズン電子の子会社(シチズン電子タイメル)の従業員は、受入れ時に各製造拠点で貼付されたテーピングラベルに示された製造拠点と前記システムにより出力された出荷ラベルのうち製造拠点等を示す部分のロット番号が一致しないことを知りつつ、各製品に出荷ラベルを貼付して、配送業者に製品を引き渡して出荷していた。
ロット番号の偽造は計 166 機種(内訳は LED69 機種、スイッチ部品 52 機種、リモコンセンサー45 機種)にわたり、出荷個数の合計は約 13 億3300 万個(内訳はLED 約1億7100 万個、スイッチ部品約8億6900 万個、リモコンセンサー約2億9300 万個)でこれらを供給していた取引先企業は合計で119社に及んだ。
原因 (動機)
・取引先企業との取決めに基づく製造拠点における生産量では取引先企業の求める数量を満たすことができない場合があった。
・シチズン電子の経営陣が構造改革にあたり行ったのは、生産委託会社との契約解消および内製化の日程の決定だけであり、その後に生じることが予想される問題には何らの対処をせず、構造改革の実現、収益状況の改善という重い課題を負わせたままで担当者に処理を委ねてしまった。これにより、シチズン電子の担当者としては取引先のすべてについて事前承認を得ることができず、製造拠点変更申請の不実施およびこれを隠ぺいするために製造拠点を示すロット番号を変更した。
(機会)
・取引先に対する製造拠点の変更申請の不実施やロット番号の偽造に関して、当時の営業本部長である取締役が容認していた。
・シチズン電子において、コンプライアンスの重要性は代表取締役社長からのメッセージとして伝えられてはいたものの、そのメッセージ自体、形式的、抽象的なものにとどまり、従業員のコンプライアンス意識を向上させるための十分な教育や研修等はなされていなかった。
(正当化)
・シチズン電子においては、「取引先企業の求める数量を出荷し顧客の要望を満たすためには、ロット番号等の変更をしてもかまわない。」という間違った顧客第一重視の思想がはびこっていた。
再発防止策 <シチズン電子>
・2017年11月上旬に、作動中の出荷ラベルの変更のための発行プログラムを全て解除し、それ以後は、出荷ラベルの製造拠点を示す部分のロット番号等を正しく表示するように是正済み。
・事後となったものの、取引先に対して製造拠点の変更の申請を行う。
・第三者委員会の調査報告書で「本件不適切行為を認識し、容認していた」と認定されたシチズン電子の常務取締役を平取締役に降格、試験結果の取扱いに関する不適正行為への関与が認められたシチズン電子の取締役は退任、シチズン電子の代表取締役社長は本件不適正行為への関与や認識はなかったものの経営管理責任を取るため退任)
・売上利益を過度に重視した経営から、品質の信頼性を重視する経営へ
・品質の信頼性に関わる試験データの取扱いに関するガイドライン等の策定と周知徹底および試験データの書換え等を防止する仕組みの導入
・品質管理・保証機能の強化
・責任と権限の明確化を始めとする全社統一的な規程等の整備
・人事ローテーションの定期的な実施と部署横断的な会議体の設置
・役職員に対するコンプライアンス研修・教育の推進
・内部通報制度の運用の見直し
・内部監査体制・機能の強化
<シチズン時計>
・シチズン電子に対するガバナンスの強化
・外部有識者を含めたシチズン電子等に対するモニタリングの強化
中国生産品を「Made in Japan」と書かれた梱包箱に入れ出荷
内容 シチズン電子では、中国で製造した製品を「Made in Japan」と印字したシールを貼付した梱包箱に詰め、出荷していた。
原因 シチズン電子は、設立当時(1970年)、すべての製品を日本国内で生産しており、輸出の際には製品を梱包した箱等に「Made in Japan」と表示していた。その後、1988年、中国に新たな製造拠点(江星電子有限公司)を設け、中国生産品を輸入するようになったが、「Made in Japan」と記載されたラベルを印字するシステムは修正されなかった。そのため、シチズン電子では、特段の問題意識も持たないまま従前のシステムを利用し続けた結果、当該製品に中国生産品が含まれているか否かにかかわらず、「Made in Japan」と印字されたシール(ケースマーク)を貼付した梱包箱に入れ出荷していた。
対応策 2017年11月上旬以降、手作業により、対応可能なものから、中国生産品が含まれる製品についてはケースマークに正確な表記を行っている。
また、2017年12月以降は、物流に関するプログラムを修正して、物流センターに保管されている国内生産品、中国生産品について厳格に分けて管理できるようにした。
品質管理部による試験結果の偽装
内容 品質管理部が、照明用LEDに関する開発部門から依頼を受け、試験データを書き換えて、品質が所定の水準を超えているかのように偽装したレポートを発行していた。
原因 (動機)
・試験結果が取引先の要求を満たすものでなければ売上を失う可能性があった。
(機会)
・シチズン電子においては照明用LED の事業が中核事業となっており、今後の事業拡大が期待されていた中で、シチズン電子の取締役は照明用LED 事業における売上の拡大のために不適正レポートの発行・提出について了解していた。
・シチズン電子の役職員には、「コンプライアンスに違反してでも、取引先企業などの顧客の要望(品質が基準を満たしていることを示す検査レポートの発行)合格先するべきである。」という誤った顧客第一主義の発想が浸透していた。
・品質管理部門が試験データの書き換えに難色を示すようになってから、開発部門が品質管理部門から試験データの提出を受けデータを書き換えるようになった。品質管理部はレポートのフォーマットの電子ファイルやレポートに記載される認定試験所長の署名等のデータを開発部門に提供していたため、品質管理部が発行したかのように見えるレポートを開発部門が独自に発行することが可能になっていた。
・品質管理部門における検査施設が脆弱であり、人的リソースが不足していた。
・品質管理部門と検査依頼部署との間の連絡体制が十分に整備されていなかった。
・品質管理・保証部門の独立性が弱かった。
・品質管理部門の役割に対する社内の理解が十分でなかった。
・シチズン電子においては人事が固定化したため、不正の発覚が遅れた。
・内部監査の実施者と対象者が同一人物であった。すなわち、認定試験所における内部監査は、そもそも不正を認識していた従業員自身によって行われていたため、試験結果の取扱いに関する不適正行為が監査結果として指摘されることはなかった。
(正当化)
・レポートの改ざん後も、量産化された製品に関して取引先企業から品質に関するクレームがなかったため、開発部門は製品の品質に対して過剰な自信を持っていた。
・シチズン電子の品質管理部門や開発部門では、試験データに手を加えることに対する抵抗感などの意識が希薄であった。
再発防止策 上記の「取引先への製造拠点変更の不申請とロット番号の偽造」の再発防止策を参照
<この失敗から学ぶべきこと>

今回のシチズン電子における一連の不正行為には、複数の部門にわたって相当な人数の従業員が関与していました。不正行為が日常的に行われ続けると、いつのまにか関与者のコンプライアンス意識が摩耗していくものです。不正行為の背景には、売上至上主義や誤った顧客第一主義があったと第三者委員会の調査報告書は指摘しています。

第三者委員会の調査報告書は、シチズン電子では閉鎖的な企業風土(シチズン電子の役職員の中には、本社の所在する山梨県所在の大学等の出身者が多く、社内での人間関係にも影響を与えているなどの事情も相まって、閉鎖的な企業風土が形成されてきた)があり、その企業風土が問題を隠ぺいする体質の原因になっていたと分析しています。似たような環境で育った同質的な人材が集まり同質的な組織ができあがると、組織はもろくなりがちです。昨今注目を集めるダイバーシティは、不正予防の観点からも組織に必要な要素と言えそうです。

シチズン時計では、第三者委員会の調査報告書を受けて、代表取締役社長の諮問機関として「品質コンプライアンスモニタリング委員会」を設置することになりましたが、その委員長に、第三者委員会の委員長が就任しています(品質コンプライアンスモニタリング委員会の報酬の有無は明らかではありません)。日本弁護士会連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」では「企業等と利害関係を有する者は、委員に就任することができない」(第2の5)と規定されているものの、第三者委員会終了後のことについては何ら規定されていません。第三者委員会の調査報告書の信頼性確保のために、調査終了後に企業は委員とどのように関わるのがよいのか、企業側も真剣に考える必要があると言えそうです。

2018/02/26 「公募」or「第三者割当」、自社に適した資金調達方法は?

株式会社プルータス・コンサルティング
山本 修平

上場企業の資金調達方法として定着している「第三者割当」だが、株式等による資金調達を検討する際、しばしば第三者割当と比較検討されるのが「公募」だ。

第三者割当とは、文字通り「特定の第三者」に対して株式等を割り当てることで資金調達を行う方法をいう。ちなみに、既存株主の持株比率に応じて株式等を割り当てるのは「株主割当」であり、すべての既存株主を対象とする点、「特定の第三者」を対象とする第三者割当とは異なる。

これに対し公募とは「不特定の者」に対して株式等を割り当てることにより資金調達を行う方法だが、第三者割当も公募も借入れではなく「株式」等による資金調達であり、それゆえ一般的には成長資金(設備投資、研究開発など)、場合によっては借入金の返済や将来のM&Aに備えるといった目的に用いられるという点は変わらない。目的が変わらない中で、公募よりも第三者割当が選ばれるケースが少なくない理由としてまず挙げられるのが、資金調達のスケジュールの問題だ。

上場企業(厳密には会社法上の公開会社)による第三者割当は、株式等の発行が「有利発行」に該当しない限り、株主総会での承認を経ずに、取締役会の決議のみによって行うことができる。第三者割当を行う際のスケジュール概要は下表のとおり。下表にもあるように、第三者割当による調達資金の使途は、有価証券届出書適時開示書類によって詳細な開示が求められている。これは、第三者割当は(経営陣に株式等を割り当てることにより)経営陣の支配権維持などに利用されかねないからだ。このように資金調達を目的としない第三者割当については、既存株主の訴えにより株式の発行が裁判所によって差し止められることもあり得る。・・・

公開会社 : 発行する株式のすべてに譲渡制限がついていない会社
有利発行 : 例えば1株当たりの時価が千円のところ5百円で新株を発行するというように、新株や新株予約権の引受人にとって“有利な”価格(無償や時価未満)で新株を発行することをいう。
有価証券届出書 : 新規上場申請時や1億円以上の公募を実施する時などに財務局に提出する書類。有価証券報告書(上場会社が上場後に毎年財務局に提出する書類)に証券情報(募集・売出の株数や価額などの詳細が記された情報)が追加された様式となっている。
適時開示 : 投資家に投資判断材料の提供の機能を果たす制度として、金融商品取引法に基づく法定開示制度(有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書など)と併存する制度。適時開示は証券取引所の規則により求められ、最新の重要な会社情報を迅速に投資家に提供するという点に特徴がある。株価は時々刻々と発生する各種の会社情報によって売買が大きな影響を受けるため、適時開示の重要性は高い。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2018/02/26 「公募」or「第三者割当」、自社に適した資金調達方法は?(会員限定)

株式会社プルータス・コンサルティング
山本 修平

上場企業の資金調達方法として定着している「第三者割当」だが、株式等による資金調達を検討する際、しばしば第三者割当と比較検討されるのが「公募」だ。

第三者割当とは、文字通り「特定の第三者」に対して株式等を割り当てることで資金調達を行う方法をいう。ちなみに、既存株主の持株比率に応じて株式等を割り当てるのは「株主割当」であり、すべての既存株主を対象とする点、「特定の第三者」を対象とする第三者割当とは異なる。

これに対し公募とは「不特定の者」に対して株式等を割り当てることにより資金調達を行う方法だが、第三者割当も公募も借入れではなく「株式」等による資金調達であり、それゆえ一般的には成長資金(設備投資、研究開発など)、場合によっては借入金の返済や将来のM&Aに備えるといった目的に用いられるという点は変わらない。目的が変わらない中で、公募よりも第三者割当が選ばれるケースが少なくない理由としてまず挙げられるのが、資金調達のスケジュールの問題だ。

上場企業(厳密には会社法上の公開会社)による第三者割当は、株式等の発行が「有利発行」に該当しない限り、株主総会での承認を経ずに、取締役会の決議のみによって行うことができる。第三者割当を行う際のスケジュール概要は下表のとおり。下表にもあるように、第三者割当による調達資金の使途は、有価証券届出書適時開示書類によって詳細な開示が求められている。これは、第三者割当は(経営陣に株式等を割り当てることにより)経営陣の支配権維持などに利用されかねないからだ。このように資金調達を目的としない第三者割当については、既存株主の訴えにより株式の発行が裁判所によって差し止められることもあり得る。

公開会社 : 発行する株式のすべてに譲渡制限がついていない会社
有利発行 : 例えば1株当たりの時価が千円のところ5百円で新株を発行するというように、新株や新株予約権の引受人にとって“有利な”価格(無償や時価未満)で新株を発行することをいう。
有価証券届出書 : 新規上場申請時や1億円以上の公募を実施する時などに財務局に提出する書類。有価証券報告書(上場会社が上場後に毎年財務局に提出する書類)に証券情報(募集・売出の株数や価額などの詳細が記された情報)が追加された様式となっている。
適時開示 : 投資家に投資判断材料を提供する機能を果たす制度として、金融商品取引法に基づく法定開示制度(有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書など)と併存する制度。適時開示は証券取引所の規則により求められ、最新の重要な会社情報を迅速に投資家に提供するという点に特徴がある。株価は時々刻々と発生する各種の会社情報によって売買が大きな影響を受けるため、適時開示の重要性は高い。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

33344

上表は最短で第三者割当を行う方法であるが、そのためには以下が前提となる点、注意したい。
有利発行に該当しないこと
〇当該第三者割当による希薄化率が25%未満で、支配株主の異動もない。
第三者割当による希薄化率が25%以上となる、あるいは第三者割当によって支配株主が異動することとなる場合、証券取引所は企業に対し、(1)第三者委員会など、経営陣から一定程度独立した者による「第三者割当の必要性および相当性に関する客観的な意見」の入手、あるいは(2)株主総会の決議などの株主の意思確認--を求めている。これらに対応するとなれば、当然ながら第三者割当のスケジュールにも遅れが出ることになる。
〇第三者割当先との基本的な交渉(割当株式数、割当株価、割当時期など)が概ね終了している。
〇第三者割当の手続きを進めるにあたって必要な専門家(弁護士等)が揃っている。

有利発行 : 例えば1株当たりの時価が千円のところ5百円で新株を発行するというように、新株や新株予約権の引受人にとって“有利な”価格(無償や時価未満)で新株を発行することをいう。
希薄化率 : 「発行株式数/発行済み株式数」のこと。理論上は、株式の発行数が増えれば、「1株当たりの価値」が下がることになる。
支配株主 : 親会社または(自己および二親等内の親族が所有する議決権を合わせて)議決権の過半数を占めている者(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

また、上表のスケジュールどおり第三者割当を行うためには、取締役会による決議の前までに、第三者割当先との最終的な条件面の交渉、当該条件を記載した契約書の作成、適時開示書類や金融商品取引法上必要な書類等の作成等が終了している必要がある。

一方、公募の場合も、上場会社であれば、第三者割当と同様に(株主総会を経ず)取締役会による決議が可能だが、上表の手続きに加え、取締役会決議の前に証券会社への審査等に2か月から3か月程度必要になるなど、第三者割当と比較すると長期の準備期間が必要となる。上場会社が公募を行う場合、証券取引所の上場規程により直ちにその内容を開示することが義務付けられており、証券取引所への事前相談などの手続きが必要となる点は第三者割当と同様だが、証券会社での手続きには公募の方がより長い時間を要することになる。これは、公募の場合、発行会社の株式を引受証券会社が一旦引き受けたうえで個人や機関投資家に販売することになるため、証券会社としても当該株式への需要の有無をより慎重に検討したり、即時発生する希薄化の程度などを審査する必要があるからだ。

また、公募の場合、証券会社が不特定の投資家から株式購入の申込みを募ることから、発行会社の株式に十分な流動性や時価総額がなければ申込みが集まりにくく、予定していた金額を調達できない可能性がある。このような懸念があると、そもそも証券会社が公募株式の引受けに応じてくれないこともある。自社の株式に十分な流動性や時価総額がない場合には、第三者割当を優先的に検討する必要があろう。

引受け : 企業が有価証券の募集・売出しなどを行う際に、証券会社等が投資家に販売する目的でその有価証券を取得すること。発行する有価証券を証券会社等(引受業者)が取得し、未取得部分を残さないことを発行企業に保証することで、企業が確実に有価証券を発行できるようにする機能を果たす。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

 

 

 

 

 

 

 

 

2018/02/23 採用戦略としてのLGBT対応

欧米企業に比べ日本のLGBT対応は遅れていると言われるが、経団連が昨年(2017年)5月に公表した「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」に掲載された調査結果(15ページ~参照)によると、LGBTへの取り組みが必要と考える企業は91.4%に上っており(質問1)、実際、4分の3の企業が既にLGBTに関して何らかの取り組みを実施している(42.1%)か検討している(34.3%)と回答している(質問3)。

LGBT : レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)を総称する造語。近年、ダイバーシティの文脈の中で、ビジネスシーンにおいても使われる機会が増えている。

もっとも、「LGBTに関して何らかの取り組みを実施しているか検討している」と回答した企業による具体的な取り組みとしては、「性的指向・性的自認等に基づくハラスメント・差別の禁止を社内規定などに明記」が75.3%と最も多く、次いで「社内セミナー等の開催(69.1%)」「LGBTの社員に向けた社内相談窓口の設置(62.4%)」と、今のところ社内的な取り組み、あるいは言葉(文字)による取り組みが目に付く。これに対し、「LGBTに関連する社外のイベントへの協力(18%)」など社外に向けた取り組みはまだそれほど広がっていないのが実情だ(質問4)。

一方、人種・国籍が多様化している米国の企業にとって、ダイバーシティへの取り組みは優秀な人材の獲得等の観点から元々重要な経営課題の一つに位置付けられており、特にLGBT対応は、オバマ前大統領時代に同性婚の合法化などLGBTの権利が大幅に拡大したこともあり重要性が高まっている。こうした中、福利厚生や人事制度をLGBTのパートナーに適応させることはもちろん、“LGBT従業員グループ”の設置・支援、LGBT団体への寄付などの慈善活動、LGBTパレードの支援、LGBTを対象としたオリンピック「ゲイ・ゲームズ」への協賛・参加、全米ゲイ&レズビアン商工会議所のコーポレート・パートナーとなるなど、言葉だけでなく具体的な行動を伴った多岐にわたる体外的な取り組みが実施されている。また、社内でも一般社員向けの啓蒙活動にとどまらず、LGBTを対象としたリーダーシップ研修を実施したり、自己申告制(申告された情報は秘匿)でLGBTの社員数や定着率の把握に努めたりするなど、LGBTの活躍を推進しようという姿勢がみられる。

こうした動きにおいて意識されているのが、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから