2017/12/28 【役員会 Good&Bad発言集】外注先への原価低減の要請(会員限定)

<解説>
有償支給と無償支給のメリット・デメリット

企業にとって製造設備を所有することや正社員を雇用することは、製造やサービスの提供を安定的なものとすることができる反面、所有や雇用に伴うコストが固定費となり、環境変化に対応しづらくなるというリスクがあります。そこで、所有や雇用に伴うコストを変動化させてリスクを限定しながら規模の拡大を目指すために、多くの企業で外注先の利用が行われています。

製造業では、組み立てや加工といった工程での外注先の利用が多くみられます。製造業における外注先の活用にあたっては、仕入のスケールメリットを享受するため、原材料や部品について発注元が一括仕入れを行い、それらの部材を外注先に渡すのが通常です。その際、原材料や部品の対価を受け取る方法と受け取らない方法があります。外注先に原材料や部品を渡す場合に、当該原材料や部品につき対価をとることを「有償支給」と言い、無償で渡すことを「無償支給」と言います。発注元が外注先に支払う額は、「有償支給」の場合は原材料等の支給代プラス加工代であり、「無償支給」の場合は加工代のみとなります。「有償支給」と「無償支給」には下記のとおり、それぞれメリットとデメリットがあることから、一概にどちらが望ましいかを決めることはできません。

メリット・デメリット 有償支給 無償支給
発注元にとってのメリット ・原則として外注先が仕損品や棚卸減耗のコストを負担するため、外注先にコスト圧縮についてのインセンティブを持たせることができる。
・期末に外注先にある支給部材について、棚卸をする必要がない。
・有償支給時に比べて、会計処理が楽になる。
発注元にとってのデメリット ・無償支給時に比べて、有償支給分の売上計上(買戻し義務があれば売上計上は認められない)や債権管理、入金時の消し込み等の手間が増える。 ・原則として外注先は仕損品や棚卸減耗のコストを負担しないため、外注先にコスト圧縮についてのインセンティブを持たせることが難しい。
・有償支給時に比べて、在庫の確認の手間が増える。

棚卸減耗 : 棚卸で数えた在庫の実数が帳簿上の数量を下回っていること。検収ミス、出荷時のミス、盗難等が考えられる。

なお、下請法が適用される外注先に対して有償支給を行った場合、有償支給の対価だけ早期決済することは下請法で禁止されています。また、収益認識会計基準の公開草案では、有償支給について金融取引として処理する案が提案されていたため、会計基準の改正動向も気に留めておく必要があります(2017年9月29日のニュース「収益認識基準導入控え、先取りで会計方針を変更する企業も」を参照)。

原価低減の一方的押し付けの禁止を求める世耕プラン

2016年9月に経済産業省は「未来志向型の取引慣行に向けて」(いわゆる「世耕プラン」)を打ち出しました。世耕プランでは「価格決定方法の適正化」が課題に挙げられています。これを受け、下請代⾦法の運⽤基準が改正され、主な違反事例にあらたに『親事業者は、親事業者の取引先と協議して定めた「〇年後までに製品コスト〇%減」という自己の目標を達成するために、部品の製造を委託している下請事業者に対して、半年毎に加工費の〇%の原価低減を要求し、下請事業者と十分な協議をすることなく、一方的に通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。』が追加されました。また、「親事業者が「国際競争力を強化するためにはコストダウンをする必要がある」として主要な部品について一律に一定率引き下げた額を下請単価と定めたため、対象部品の一部の単価は通常の対価を大幅に下回るものとなった」も違反事例に掲げられています。発注元としては、外注先とは「共存共栄」の関係にあることを意識して、原価低減要請をする際には、経済合理性や十分な協議を欠いた要請は行わないように留意すべきであり、決して次のような要請をしてはなりません。
・原価低減目標の数値のみを提示する。
・原価低減要請に応じることを発注継続の前提とする。
・文書や記録を残さない(口頭で削減幅を示唆)
逆に、外注先から取引対価の見直し要請があった場合には、人手不足や最低賃金の引き上げなどによる労務費の上昇の影響を取引対価に反映するよう協議すべきです。
「生産性の向上」は発注元の務めですが、「下請法の遵守」や「外注先との共存共栄の実現」も同じく発注元の務めであることを忘れてはなりません。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役C:「外注先ごとに原価構造が違うにもかかわらず、一律に原価低減を要請するのは“下請けいじめ”に他なりません。わが社だけでなく外注先も潤うよう“共存共栄”を目指すべきです。また、仕損率の上昇がすべて外注先の責任かどうかは分かりません。何が原因なのか詳細な調査が必要かと思います。」
コメント:原価低減の要請自体が悪いことではないですが、取締役Aの発言にあるように、一律に「10%」という数値目標を課して下請先に値下げを要請することは、下請法が禁止する「一律一定率の単価引下げによる買いたたき」(下請法運用基準5-4)に該当するためNGです。また、仕損率の上昇の原因は、必ずしも外注先に原因があるとは限らず、発注側の仕様変更、原材料の品質などに起因するものかもしれません。他の外注先とも比較して慎重に要因を探るとともに、仕損率を低下させるためのアドバイス等を行うのが発注元の責任と言えます。それでもなお外注先の仕損率の高さに改善が見られない場合には、有償支給に切り替える余地がありますが、その際には加工物の代金の受け取りと有償支給された原材料の支払いのタイミングを合わせる(相殺)など、外注先の負担が増さないよう工夫が必要です。Cの発言は発注元としての責任と下請法の趣旨に沿った対策を提案している点がGoodです。

BAD発言はこちら
取締役A:「ここ最近の粗利率の低下は原材料費や電気代の上昇、派遣労働者の単価の上昇が主な原因です。一方、外注先のX社はリストラが成功して利益を上げる体質になったと聞いています。また、外注先のY社もここ数年増収増益の決算であったとのことです。外注先が儲かるということは、当社がそれだけ損をしているということです。すべての外注先に対して一律10%の原価低減を要請してはいかがでしょうか。」
コメント:電気代の上昇、派遣労働者の単価の上昇といった外的要因の影響を受けるのは外注先とて同じことです。それでもなお外注先が儲かっているのは血のにじむようなリストラや儲けを出すための方策を必死に考え抜き実行したからです。外注先が儲かっているのを見て、すぐに外注先を“締め付ける”発想しか出てこないのはシュリンク志向のダメな経営者の典型と言えます。まして、一律に原価低減を求めるのはBの発言は下請法や世耕プランに反するBad発言です。
取締役B:「外注先における仕損率の上昇も気になるところです。仕損率の高い原材料については、早急に無償支給から有償支給へ切り替えて、原材料の仕損の責任の明確化を図るべきです。」
コメント:取締役Cのコメントでも触れたとおり、外注先における仕損率の上昇があったとしても、それが外注先の責任に帰するかどうかは、しっかりと検証する必要があります。設計変更、極端な短納期、支給資材の性能等に問題があることから原材料の標準使用数量が厳しい設定になっている可能性にも配慮する必要があります。そこに手を付けずに、「早急に」無償支給から有償支給へ切り替える案を提案する取締役Cはあまりに早計と言えます。

2017/12/28 【役員会 Good&Bad発言集】外注先への原価低減の要請

東証一部に上場している製造業のA社の取締役会では、社外取締役により粗利率の低下を懸念する発言がありました。これに対して取締役A・B・Cが下記の発言をしました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「ここ最近の粗利率の低下は原材料費や電気代の上昇、派遣労働者の単価の上昇が主な原因です。一方、外注先のX社はリストラが成功して利益を上げる体質になったと聞いています。また、外注先のY社もここ数年増収増益の決算であったとのことです。外注先が儲かるということは、当社がそれだけ損をしているということです。すべての外注先に対して一律10%の原価低減を要請してはいかがでしょうか。」

取締役B:「外注先における仕損率の上昇も気になるところです。仕損率の高い原材料については、早急に無償支給から有償支給へ切り替えて、原材料の仕損の責任の明確化を図るべきです。」

取締役C:「外注先ごとに原価構造が違うにもかかわらず、一律に原価低減を要請するのは“下請けいじめ”に他なりません。わが社だけでなく外注先も潤うよう“共存共栄”を目指すべきです。また、仕損率の上昇がすべて外注先の責任かどうかは分かりません。何が原因なのか詳細な調査が必要かと思います。」

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2017/12/27 【失敗学第43回】ソフィアホールディングスの事例(会員限定)

概要

インターネット事業を営むソフィアホールディングス(JASDAQ上場)で、連結子会社(ソフィアデジタル)が売れ残ったビデオレコーダーの商品評価損計上を避けるため、本来は収益の計上要件を満たさないものまで売上として計上していた(訂正前の2014年3月期決算において問題となった売上高は500千円、計上しなかった商品評価損は79,448千円)。

経緯

ソフィアホールディングスが、2017年12月に連結子会社のソフィアデジタルの粉飾に関する内部調査委員会の調査報告書を公表するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

2010年
5月:ソフィアホールディングスの子会社であるソフィアデジタルがメーカーからARecX6(地上波テレビ6局を同時に24 時間録画できる6チューナー内蔵の大容量ビデオレコーダー)を10,000台仕入れ、ソフィアホールディングスのグループ外のS社に販売。これには、ソフィア総合研究所(ソフィアホールディングスの子会社)の代表取締役が、「会員登録した者がインターネット上のマイページからARecX6上に録画された番組をモバイル端末から好きな時に視聴することができるというサービス」(以下、ARecX6サービス)を考案し、自身が以前に属していたQグループのS社に対し事業化を提案して実現したという経緯がある。
6月: S社がARecX6サービスを開始。

2012年
1月:知財高裁が、他社が提供していた「まねきTV」や「ロクラク」といったARecX6サービスに類似するサービスに対して、放送事業者の著作権を侵害する違法なものとの判断をしたことから、S社ではもはやARecX6サービスの継続は困難と判断し、売れ残ったARecX6の廃棄を検討した。しかし、ソフィア総合研究所の代表取締役は、自らが提案した企画でQグループに迷惑をかけたくないという考えから、S社からARecX6を買い戻し、ソフィアデジタルで販売することとした。

2013年
5月:ソフィアデジタルは、S社から8,444台のARecX6を85,749,510円で買い戻し、自社サイトや楽天市場でARecX6の販売を開始。
12月:ソフィアホールディングスの会計監査人であるアーク監査法人が、ソフィアホールディングスに対し、ソフィアデジタルのARecX6の販売施策および販売計画の提出を求めたことから、ソフィアホールディングス事業支援グループシニアマネージャー(ソフィアデジタルの監査役も兼務していたことから、以下「ソフィアデジタルの監査役」)は、ARecX6の販売施策および販売計画を記載した「ARecX6販売企画書」を作成し、これをアーク監査法人に提出した。この販売企画書によると2014年3月期中にARecX6を年間300台販売する計画になっており、計画未達の場合には期末決算時に商品評価損を計上することとなった。

2014年
2月:ソフィアデジタルでは、2014年3月期におけるARecX6年間販売台数が計画値の300台に届きそうになかったため、このままでは商品評価損を80,000千円近く計上しなければならなくなるとの懸念が生じていた。そこで、ソフィアデジタルの代表取締役は、同社の監査役に対し、何としてもARecX6の販売計画を達成するよう厳命した。
3月:ソフィアデジタルの監査役は、グループ外のA社に対し「A社が第三者にARecX6を販売することができるまでは代金を支払わなくても良い」との条件(文書化はされず、口約束のみ)でARecX6を50台引き渡した(3月31日時点でA社は50台のうち1台も売却できていなかった)。ソフィアデジタルでは、A社との間の販売契約は委託販売に類似した契約であることからA社が販売するまで売上を計上できないにもかかわらず、A社に引き渡した時点で50台分の売上高を計上した。実際はA社向けの50台をカウントしなければ販売台数は276台に留まっていたため、販売計画未達により80,000千円近くの商品評価損の計上が必要であったところ、A社向けの50台の売上高を計上したことで、2014年3月期における販売台数は326台に達し、販売計画の達成により商品評価損の計上を免れた。

2017年
12月1日:ソフィアホールディングスは、2014年3月期と2015年3月期の決算に誤謬があったとして、決算の訂正が必要になったこと(リリースはこちらを参照)および内部調査委員会を発足させたことを公表した。

内容・原因・改善策

ソフィアホールディングスが、2017年12月に公表した「内部調査委員会の調査報告書」によると、本件の問題点の主な内容とその原因、対応策および再発防止策は次のとおりである。

評価損計上を回避するための委託販売
内容 ソフィアデジタルでは、監査役が商品評価損の計上を免れるために、グループ外のA社に対して、「A社が第三者に販売することができるまでは代金を支払わなくても良い」との条件でARecX6 を50台売却し(以下、この取引を本件取引という)、これにより2014年3月期におけるARecX6の販売台数が販売計画を達成していたことになり、商品評価損の計上を免れた(2014年3月31日時点でA社は50台のうち1台も売却できていなかった)。
原因 (監査役監査が機能せず)
・本件取引当時、ソフィアデジタルにはプロパーの従業員がおらず、代表取締役、監査役およびソフィアモバイルから出向していた者が1名存在しているだけであった。 また、ソフィアグループでは、本件取引当時、子会社の監査役が営業活動を行うことを容認するなど、監査機能が実効性を有していない状況であった。
・ソフィアグループでは従業員の多くが営業活動を過度に優先していた。また、経営陣も管理部門を軽視して経営を行っていた。
(営業重視・管理体制軽視の経営)
・当時のソフィアホールディングスの監査役は子会社の監査役とほとんど連携しておらず、ソフィアホールディングスが子会社を監督する体制自体も十分ではなかった。
・本件取引当時、ソフィアデジタルについては遵守すべき職務権限規程や業務分掌規程、棄議規程などの業務管理に関する規程等が整備されておらず、管理体制が不十分な状況であった。
・本件取引後に法務部が廃止されるなど、ソフィアグループでは管理部門を軽視する傾向にあった。
(不十分な内部監査)
ソフィアグループには内部監査室が設置されていたものの、内部監査に関する知識は不十分であり、内部監査としての機能を十分に発揮していなかった。
再発防止策 ・役職員のコンプライアンス意識の醸成
・ガバナンス体制の整備(規程類の再整備と役員および従業員への周知徹底、子会社の管理体制の見直し、監査機能の強化、内部監査制度の充実)
・会計制度に対する意識の強化
<この失敗から学ぶべきこと>

ソフィアデジタルで営業活動を担っていたのは監査役でした。実態としては、ソフィアホールディングスの営業担当者が形式的にソフィアデジタルの監査役を務めていたものと思われます。内部調査委員会の報告書でも指摘されているとおり、もし、会社の取締役や監査役として十分な人員を割くことが困難であれば、無理をして頭数をそろえる(会社の数に見合った人数だけ役員をそろえる)のではなく、組織再編を行い、グループ会社数を適正規模にまとめる(役員の人数に見合った社数にまで会社を減らす)ようにすべきです。グループ会社数が増え、事業の再構築をした結果、子会社の役員数が足りていない企業でも同じ問題が起きかねないので注意が必要です。

ソフィアデジタルでは、実質的には売り上げていないにもかかわらず、販売台数を不当に水増しして計画を達成できたかのような外観を装い、商品評価損の計上を回避していました。販売計画達成へのプレッシャーが強く、会計不正への抵抗感が少ない風土の会社では起きがちな不正です。役員としては、「目標が高過ぎないか」「計画達成のために現場で無理が生じていないか」を常にチェックしておきたいところです。

2017/12/26 【特集】後継者計画(サクセッション・プラン)の開示状況(3・会員限定)

3.招集通知における開示

招集通知には後継者計画について開示を求める直接的な規定は存在しないものの、企業が重要情報と判断した場合は、任意に記載することは可能です。しかし、現在招集通知に後継者計画を記載している企業は上場企業全体でも30社程度と極めて少数にとどまっています。

記載内容は、具体的な後継者計画について記載するというものでなく、取締役会や指名委員会などの機関による後継者計画に対する現在の監督状況を記載する事例がほとんどですが、なかには自社の今後の課題として紹介している事例もあります。

記載箇所は、事業報告の自社のガバナンスに関する情報を掲載している項目(例えば会社役員に関する事項や内部統制システム等)が多く、これらに関連付けて説明している事例が目に付きます。このほか、事業報告における対処すべき課題や役員選任議案の参考情報の一部としている事例もあります。

【事業報告の対処すべき課題で記載している事例①】 古河電気工業(株)
32185a

【事業報告の対処すべき課題で記載している事例②】 塩野義製薬(株)
32185b

【自社のガバナンス体制の説明に関連付けて記載している事例①】 オムロン(株)
32185c

【自社のガバナンス体制の説明に関連付けて記載している事例②】 第一三共(株)
32185d

【役員トレーニングと同じ箇所に記載している事例】 アサヒグループホールディングス(株)
32185e

【役員選任方針として記載している事例】 積水化学工業(株)
32185f

まとめ

以上のとおり、現時点における上場会社の各開示書類を見ると、後継者計画について言及している会社は少数です。しかし上記2.で紹介したように、取締役会評価に関する開示などにおいて、「今後の自社の課題」として後継者計画を取り上げる会社は増えてきています。

2017年10月18日に再開された金融庁のスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議でも、CEOの選解任に向けた取組みが不十分である旨が指摘されており(事務局資料「コーポレートガバナンス改革の進捗状況」8ぺージ参照)、今後の議論により、取組みの強化が促される可能性もあります。本来、各社の後継者計画に対する取組みは中長期的に継続するものであるため、弊社としても今後の開示動向には注目していきたいと考えています。

2017/12/26 【特集】後継者計画(サクセッション・プラン)の開示状況(2・会員限定)

1.CG報告書における開示

(1)CGコード 補充原則4-1③(後継者計画)での開示
CGコード補充原則4-1③には「最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである」との記述はあるものの、「監督」の具体的な内容については何ら言及がなく、また、東京証券取引所に提出するコーポレートガバナンス報告書(以下「CG報告書」)において開示すべき事項ともされていないことから、後継者計画の内容をCG報告書で開示している会社はごく少数です。

CGコード 補充原則4-1③
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである。

これまで提出されているCG報告書を調査したところ、上記補充原則4-1③のほか、後述する補充原則4-11③が求める「取締役会の実効性評価」に関する開示や、原則3-1「情報開示の充実」の(ⅳ)が求める「取締役等の選任方針」の開示の中で後継者計画について記載している会社が17社確認されました。これらのうち、補充原則4-1③への対応として自社の後継者計画の状況を開示した会社は以下の8社です。

いずれも後継者計画そのものを記載するのではなく、後継者候補の選定方法の概要を記載したもの、新たに策定した旨や現在の社内での議論の状況を記載したもの、適切な監督を行っている旨を開示したものなどとなっています。

【後継者の選定方法や資質にまで言及して記載している例】
社 名 CG報告書への記載内容
J・フロント・リテイリング(株) 【補充原則4-1-3】 後継者計画
最高経営責任者の選定は最も重要な戦略的意思決定であり、当社は、後継者(次期経営陣幹部)計画の策定・実施を経営戦略上の特に重要な項目として位置付けています。
後継者候補の選定に際しては、社内データをもとに第三者機関による診断を踏まえて策定した各後継候補者の評価内容について、社外取締役が過半数を占める人事・報酬委員会(2017年5月までの監査役会設置会社時)において審議を重ねることで、選定プロセスの明確化、透明性を確保しました。後継者の決定に際しては、取締役会は人事・報酬委員会からの答申内容に基づき、基本理念・グループビジョンの実現を見据え、監督の役割を果たしました。後継者に求められる資質については、方針書記載の「JFRグループ 経営人材のあるべき姿」に記載のある、「戦略思考」「変革のリーダーシップ」「成果を出すことへの執着心」「組織開発力」「人材育成力」の5項目を役員に求められる資質として、必要な価値観・能力・行動特性を明確にしました。人事・報酬委員会でこれらを共有化することで、評価・育成指標の共有化をはかり、中立的育成・選抜に努めてきました。
2017年5月の人事・報酬委員会で確認した2016年度の業績評価結果を踏まえ、各後継候補者の育成強化計画・人事配置計画について、今後も継続して指名委員会の中で議論を重ねていきます。
日本ユニシス(株) 【原則4-1-3 最高経営責任者等の後継者計画】
当社では、最高経営責任者の選定プロセスの透明性を確保するため、独立社外取締役が参画する指名・報酬委員会において、最高経営責任者の後継者に関する計画(サクセッション・プラン)を審議し、取締役会に報告しています。
当社のサクセッション・プランでは、最高経営責任者に求められる重要な資質として、真摯さ(Integrity)をベースとし、これに加え、先見性(Foresight)、洞察力(Insight)など7つの項目を重要なコンピテンシーとして定めています。
【後継者計画の策定について記載している例】
社 名 CG報告書への記載内容
三井住友トラスト・
ホールディングス(株)
【補充原則4-1-3】
<最高経営責任者等の後継者の計画について>
当社は、当社及び三井住友信託銀行の経営者のサクセッションプランとして、経営者としての資質や役員として求められる人材像を明確化するとともに、経営人材育成のための研修、会議及び人材登用運営を定めた「経営者後継人材育成計画」を策定し、運営しています。
(株)フジミインコーポレーテッド(2016年の開示) 補充原則4-1-3
当社は、最高経営責任者等の育成計画(サクセッションプラン)を策定し、取締役会の承認を得て、今期より実施する予定であります。
【後継者計画について適切な監督を行っている旨を記載している例】
社 名 CG報告書への記載内容
ヤマハ(株) 【補充原則4-1-3】最高経営責任者等の後継者計画
最高経営責任者等の後継者の計画については、指名委員会における制度設計及び監督を通じ、取締役会が適切に監督を行っております。
コマニー(株) 【補充原則4-1-3 取締役会の役割・責務(1)】
当社は、指名諮問委員会において、後継者の計画について審議を行い、適宜、後継者計画への監督を行うこととしております。
【後継者候補の育成について記載している例】
社 名 CG報告書への記載内容
東京エレクトロン(株) <補充原則4-1-3 取締役会は、最高経営責任者等の後継者の計画について適切に監督を行うべきである>
当社は新たにTELサクセッションプランを策定しました。育成計画のもと、次世代経営人材の候補者群を形成し、後継者候補の能力とレディネス(準備状況)を確認します。今後は、後継候補者群に対する育成状況を指名委員会が分析、精査します。そして、指名委員会からの報告に基づき、取締役会が後継候補者育成プランと育成状況を適切に監督する予定です。
イオンフィナンシャル・
サービス(株)
【補充原則4-1-3 最高経営責任者等の後継者の計画】
当社は、当社の最高経営責任者等の後継者の計画等を策定し、候補者に求める資質を明確にするとともに、内部人材の育成ならびにグループ内外の人材を適時・適切に受け入れるための環境整備を図っております。なお、当該計画等の実施状況については、取締役会において適切に監督しております。

(2)CGコード補充原則4-11③(取締役会実効性評価)での開示
CGコード補充原則4-11③は、取締役会は取締役会全体の実効性についての分析及び評価(以下「取締役会評価))を行い、その結果の概要を開示することを求めています。

CGコード 補充原則4-11③
取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。

CGコードが導入された当初は日本企業に馴染みがなかった取締役会評価ですが、CGコードの適用開始から2年以上経過し、東証1部・2部上場企業における実施率は2017年7月14 日時点で71%となっています(東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」参照)

また、取締役会評価を実施して2年目となる企業では、取締役会の課題や改善策をより具体的に記載する例や、昨年の評価結果を受け改善した点を記載する例も見受けられます。

取締役会評価により見つかった課題の多くは、取締役会で配布する資料の内容や資料の事前配布の必要性等、取締役会の運営に関するものでしたが、取締役会の多様性、役員報酬など取締役会の実効性に影響を与えるもののほか、後継者計画に関するものもありました。実は後継者計画は取締役会評価と関係性が深く、CG報告書での取締役会評価の評価項目の一つとして挙げる、あるいは評価結果として後継者計画の監督状況を記載するといった企業は74社確認されています。

【評価項目として後継者計画を挙げた例】三菱地所(株)
(2)評価の項目
・取締役会の構成(社外取締役比率、人数規模、多様性)
・取締役会の運営(開催頻度、所要時間、議題の選定、配布資料の内容、配布資料以外の情報提供、質疑応答、トレーニング等)
・取締役会の実効性(経営計画、執行役への権限委譲、リスク管理体制、株主・投資家との対話、経営幹部の選解任、後継者育成計画、役員報酬等)
【評価項目として後継者計画を挙げ、課題である旨も記載した例】東京産業(株)
調査項目として、取締役会の構成と運営、経営・事業戦略、企業倫理とリスク管理、業績のモニタリングと後継者計画、株主等との対話等について調査確認を行いましたが、前年度同様に概ね実効性が確保されているとの結果でありました。一方で、役員への議案に関する事前説明の充実化や後継者計画等、今後の課題としての意見が提示されました。
【後継者計画を課題として記載した例①】蝶理(株)
一方で、今後の課題となる点としては、代表取締役の後継者育成計画の議論・監督、役員報酬の議論、経営陣幹部の選任・解任の議論、取締役へのトレーニング機会の提供について、議論を深めるべき等が主に挙がりました。
【後継者計画を課題として記載した例②】(株)システムインテグレータ
その結果の概要は、取締役会全体の実効性は概ね確保できているが、後継者計画に関しての検討が今後も必要であるとの評価結果となりました。

昨年のCG報告書で取締役会評価の課題として後継者計画を挙げた企業の中には、下記に示した例のように、今年のCG報告書で具体的な改善策を記載するところも出て来ています。例えば、昨年の評価でこれまで具体的なプログラムや議論がなされていないことが課題として挙がったことを受け、今年はより積極的に後継者計画に取り組む等の対応を図るとともに、今後も継続して改善していく旨を記載するといったものです。今後取締役会評価が一層浸透すれば、同様に後継者計画のPDCAサイクルを示す会社が増えてくることも予想されます。

PDCAサイクル : Plan→Do→Check→Actionのサイクルを繰り返しながら、目標を実現する手法。サイクル内に、軌道を修正したり、場合によっては目標を変更したりする仕組みを内包しており、状況変化に応じて迅速に対応することが可能となる。

コタ(株) 昨年の記載
昨年の記載 今年の記載
(2) 当社取締役会は、最高経営責任者等の後継者として「コタベーシック」を継承できる人材の確保及び育成に努めているが、具体的な方針等については十分な検討がなされていないため、今後は取締役会として、後継者育成の方針を定め、共有する。 (課題)   
当社取締役会は、最高経営責任者等の後継者として「コタベーシック」を継承できる人材の確保及び育成に努めているが、具体的な方針等については十分な検討がなされていないため、今後は取締役会として、後継者育成の方針を定め、共有する。

(対応状況) 
当社取締役会においては、従前よりも、後継者育成問題について考える機会が確実に増えております。また、後継者育成の方針に関する検討も継続して行っております。

(株)丸井グループ
昨年の記載 今年の記載
一方で、課題としては、取締役の報酬が中長期な企業価値向上と連動していないことや、後継者の育成プログラムが確立されていないこと等が挙げられました。これを受けて、取締役の報酬制度を改定し、中長期インセンティブである業績連動型株式報酬と、短期インセンティブである業績連動賞与の導入により、業績連動報酬の割合を高めることといたしました。また、後継者計画については、指名・報酬委員会の設置により透明性向上を図るとともに、社外取締役にも積極的に関与していただきながら、後継者育成プログラムの構築に取組むことといたしました。 [昨年の評価]
昨年の取締役会評価では、取締役報酬が中長期的な企業価値向上と連動していないことや、後継者の育成プログラムが確立されていないことの課題が挙がりました。

[昨年の取組み]
(中略)
2つ目の後継者計画については、指名・報酬委員会の設置により透明性向上を図るとともに、社外取締役にも積極的に関与していただきながら、次世代経営者育成プログラムの構築に取組みました。

[今年の評価]
昨年、導入した中長期インセンティブの変動報酬の割合が低いことや、2017年4月よりスタートした次世代経営者育成プログラムの育成内容や運営体制が途上段階であることなど、昨年、取組んだ施策に対しての継続課題が挙がりました。

[今年の取組み]
中長期インセンティブの変動報酬については、今後の世の中の動向を踏まえ、継続的に報酬割合を検証し、中長期的な企業価値向上と連動した取締役報酬を目指していきます。また、次世代経営者育成プログラムは2017年4月よりスタートしたばかりで、途上段階ではありますが、中長期的な視点で今後の配置・登用などの育成プログラムや運営体制の最善の姿を模索しながら、継続的に検証していきます。

3.招集通知における開示(会員限定)

2017/12/26 【特集】後継者計画(サクセッション・プラン)の開示状況

宝印刷株式会社
ディスクロージャー研究二部研究課
新妻 大 村上勝俊 山本万里子

はじめに

コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)の補充原則4-1③は、取締役会に対し「最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)」について適切に監督を行うことを求めていますが、同原則を“コンプライ”し、後継者計画(サクセッション・プラン)を定めている東証1部・2部上場企業の割合は、2015年のCGコード施行以来、一貫して86%前後と高水準を維持しています(東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」参照。ちなみに、本稿掲載時点の最新データ(2017年7月14日時点)では86.61%)。

しかしながら、経済産業省が上場企業を対象に2016年8月25日~2016年9月30日にかけて行った「コーポレートガバナンスに関する企業アンケート調査」(2017年3月10日公表)の結果によると、回答企業数874社のうち414社(47%)が、「社長・CEOの後継者計画・監督」について、取締役会での議論が不足していると回答しています(20ぺージ参照)。また、次期社長・CEOの選定プロセスを取締役会が監督していないという企業も20%存在しています(36ページ参照)。

これに対し、経済産業省に設置されているコーポレート・ガバナンス・システム研究会(以下、「CGS研究会」)がコーポレート・ガバナンス・システム構築・運用のガイドラインとして2017年3月31日に公表した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下「CGSガイドライン」)では、後継者計画に関し「現在の我が国企業においては、取締役会の構成員の多くが社内者であり、社長・CEO に対する評価の実施や、現社長・ CEO の決めた後継者について意見を出すことは、通常は社内者には期待し難い」などとしたうえで、「社長・CEO の評価や後継者計画については、社内者とは別に客観的な立場から検証する役割が求められる」とし、社外取締役を中心とする「社外者」に、その役割とともに、取締役会の意思決定に際して独立的・客観的な視点で監督を行うことを期待するなど、日本企業に後継者計画に対する考え方の転換を求めています(23ぺージ参照 )。

こうした状況の中、現時点で日本の上場企業における後継者計画の実態を把握することは容易ではありませんが、現状の開示制度の中でも、後継者計画に関する開示を行っている企業が散見されます。

そこで本稿では、今後、後継者計画の策定・開示を検討する企業の参考となるよう、現時点で後継者計画に言及している企業の開示例や開示方法を紹介することとします。

1.CG報告書における開示(会員限定)

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2017/12/25 経理・開示担当部門の働き方改革を妨げる構造問題

2017年の流行語年間大賞の候補に「働き方改革」がノミネートされたことが示すように、働き方改革という言葉自体は既に企業や経営陣にも相当浸透しており、特に多くの上場企業では実際に対策が進みつつある。その一方で、構造的な問題に踏み込まない限り実現は難しいと思われるのが、経理や開示(ディスクロージャー)担当部門の働き方改革だ。ここでいう構造的な問題とは、・・・

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2017/12/25 経理・開示担当部門の働き方改革を妨げる構造問題(会員限定)

2017年の流行語年間大賞の候補に「働き方改革」がノミネートされたことが示すように、働き方改革という言葉自体は既に企業や経営陣にも相当浸透しており、特に多くの上場企業では実際に対策が進みつつある。その一方で、構造的な問題に踏み込まない限り実現は難しいと思われるのが、経理や開示(ディスクロージャー)担当部門の働き方改革だ。ここでいう構造的な問題とは、決算の開示と会計監査の時期の集中を指す。

日本の上場企業の約7割は3月決算であり、決算日から3か月以内に株主総会を開催するのが通常のスケジュールであることから、例年4月中旬から5月中旬が経理・開示担当部門の繁忙期となる。繁忙期のタイミングは会計監査を行う監査法人も同じだが、多数の3月決算企業の会計監査がごく短期間に集中するため、監査法人側の業務の逼迫ぶりは上場企業を上回る。最近では、監査法人に対する労働基準監督署の締め付けが厳しくなり、監査法人としても所属会計士の残業や休日労働を厳格に規制することを求められるようになってきた。

日本公認会計士協会が(2017年)12月8日に公表した「平成29年3月期決算会社を対象にした期末監査期間に関するアンケート調査結果」(上場企業の会計監査に従事している公認会計士を対象に実施)では、期末監査のスケジュールが逼迫している状況を改めて認識させる結果が示されている。調査結果によると、実質的な期末監査期間は、大型連休前に決算短信を公表する上場企業では平均14日間、大型連休後に決算短信を公表する上場企業であっても平均18日間しかないことが分かった。これだけの短期間で単体のみならず連結の監査も終えなければならないとなると、期末監査期間における監査法人への負荷は相当なものがあることが理解できるだろう。上記アンケート結果では、監査チームメンバーへの負荷が「これ以上継続不可能なほど重い」との回答が7%、「なんとか継続可能な重さ」との回答が35%と、半数近い42%がかなりの負担を感じている。こうした結果を踏まえ、日本公認会計士協会の関根愛子会長が異例の会長声明を出し、監査業務を実施する公認会計士に対して、十分な期末監査期間を確保できるよう被監査会社に協力を求めることを要請する事態となっている。

期末監査 : 四半期決算に対するレビューに対し、年度末の決算(1年分の決算)に対する監査のこと。(連結)貸借対照表の残高や(連結)損益計算書の計上額の妥当性を確認するための監査手続き。
実質的な期末監査期間 : 「監査法人が企業から試算表を入手し、期末監査を開始した日」から「B/SおよびP/Lの数値について会社に重要な修正を伝える期限の目標としている日」までの日数。

監査法人の業務の逼迫は、企業にもデメリットをもたらす。一つは、監査対応時期が集中することにより、経理や開示担当部門もこれに付き合わざるを得なくなること(その間は当然激務となり、働き方改革に逆行)、もう一つは、過剰な需要に起因する監査報酬の上昇だ。したがって、上場企業が“監査法人の働き方改革”に協力することには大きな意味がある(実際問題として、“監査法人の働き方改革”は企業の協力なしには不可能)。

その手法としては、次の2つが考えられる。まず1つ目は「期末監査の先取り」(期中往査時に、可能な限り期末監査の先取りを行ってもらうこと)だ。上述の調査結果では次のような具体策が示されている。

・期中往査時に期末監査目的で、期中取引の証憑突合を行ってもらう(例えば四半期ごとに当該期間の期中取引の証憑突合を終わらせれば、期末監査時には第4四半期の証憑突合だけすればよい)。
・監査人には可能な限り電子データを渡すようにする(監査調書への再入力の手間を省くため)
・期末監査に必要となる証憑を期末監査初日ではなく事前に依頼するようにしてもらう。
仕訳テストを紙面ではなく、電子データを利用して行ってもらう。
・期中において、その時点までの範囲の仕訳テストを実施してもらう。
・引当金や減損などの見積項目の論点は期中に検討してもらう。
・残高確認を基準日の前倒しにより実施してもらう(金融機関の残高確認は適時性の観点から期末日を基準日とせざるを得ないものの、債権債務については例えば12月を基準日に残高確認をしてもらえば、期末日までに監査時に未回収先への確認書の返送の催促や差異調整を済ませておくことができる)。

もっとも、こうした先取り策を徹底しても期末監査期間の逼迫状況の解消には限界がある。そこで考えられるのが「定時株主総会の後ろ倒し開催」だ(「定時株主総会の後ろ倒し開催」については2017年12月13日のニュース「実現すれば株主総会の後ろ倒し加速も 招集通知提出にEDINET利用案浮上」や2017年12月20日のニュース「会社法施行規則改正案が公表、株主総会の後ろ倒しに向けた条件すべて整う」参照)。定時株主総会の開催日が後ろ倒しされれば、期末監査期間の確保が容易になるのは間違いない。

定時株主総会の後ろ倒し開催の実現により企業側の監査対応時期が分散すれば、経理・開示部門の担当者の働き方改革の実現にも資する。また、上記でも触れたとおり、会計監査の時期を他社の繁忙期とずらすことができれば、上場企業にとって監査報酬の交渉が有利になるのは間違いない。さらに、監査の深度が増すことで、従来の過密スケジュールでは見逃していた誤謬が見つかるという副産物も生まれるかもしれない。定時株主総会の後ろ倒しは、投資家のためだけではなく企業自身にもメリットをもたらすということを経営陣は認識したいところだ。

2017/12/22 主要国内機関投資家による議決権行使結果 第八弾(最終回)

当フォーラムでは、一橋大学の円谷准教授の協力を得て、有力企業の株主総会上程議案に対する主要国内機関投資家による個別の議決権行使結果(賛否状況)を分析しているが、最終回となる第八回目は、・・・

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