東芝の次は神戸製鋼と、日本を代表する大企業で不祥事が続いている。なぜコンプライアンスやガバナンス体制、内部統制が整備されていると思われるこうした名門大企業で不祥事が発生してしまうのか、不思議にさえ思える。
とはいえ、実際にこれだけ不正が続発しているという事実からすると、内部統制等では防ぎきれない“何か”が存在しているといわざるを得ない。その一つとして挙げられるのは、・・・
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東芝の次は神戸製鋼と、日本を代表する大企業で不祥事が続いている。なぜコンプライアンスやガバナンス体制、内部統制が整備されていると思われるこうした名門大企業で不祥事が発生してしまうのか、不思議にさえ思える。
とはいえ、実際にこれだけ不正が続発しているという事実からすると、内部統制等では防ぎきれない“何か”が存在しているといわざるを得ない。その一つとして挙げられるのは、・・・
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東芝の次は神戸製鋼と、日本を代表する大企業で不祥事が続いている。なぜコンプライアンスやガバナンス体制、内部統制が整備されていると思われるこうした名門大企業で不祥事が発生してしまうのか、不思議にさえ思える。
とはいえ、実際にこれだけ不正が続発しているという事実からすると、内部統制等では防ぎきれない“何か”が存在しているといわざるを得ない。その一つとして挙げられるのは、日本の大企業の伝統的な雇用形態であろう。日本企業と欧米企業どちらの人事システムにも一長一短はあるが、いずれにせよ両者の違いは大きい。欧米企業では基本的には営業、人事、経理などのプロフェッショナルとして採用され、その後のキャリアも一つの専門分野の中で積み上げられていく。人事ローテーションもほとんどなく、また、転職はしても仕事内容は変わらないことが多い。会社員と言っても、プロフェッショナルとして生きているのが欧米企業のビジネスマンと言えよう。その分、会社に対する忠誠心は薄い。
これに対し、日本の大企業の多くは新卒一括採用・終身雇用を基本とし、研究開発や技術系の社員を除けば、人事ローテーションで様々な業種を経験しながら、長い間、幹部への昇進のチャンスを待つことになる。日本の人事システムでは、プロフェッショナルとしてのスキルが身に付きにくいというマイナス面はある一方、会社への忠誠心が高まるというメリットがある。日本の大企業に新卒で入社するということは、どのような仕事に就くかということよりも、「その企業の一員になる」という側面が強い(実際、大企業に入社する新入社員の多くはそれを心得ている)。
こうして大企業という“共同体”の一員として長い年月を過ごすと、やがて自らと共同体が同化していく(それが昇進のための条件にもある)。その結果、社会一般、すなわち共同体の“外”に存在する倫理観とのズレが生じてくる。共同体の中の空気が、共同体の外、すなわち社会のルールよりも優先されることになる。仮に上司から不正行為を指示された場合、それを断ることによって共同体から“村八分”にされることを何よりも恐れる。場合によっては、上司から直接不正を指示されなくても、上司の考えを忖度して、自ら進んで不正に手を染めることさえあり得る。
翻って、もし日本企業においても欧米企業のような従業員のプロフェッショナル化が進めば、こうした状況は大きく変わる可能性がある。プロフェッショナルの目標は「自らの仕事へ忠誠」であって、「会社への忠誠」ではない。万一不正を行えば、プロフェッショナルとしてのキャリアは終わってしまう。したがって、もし上司から不正を行うよう指示されようものなら、迷わず退社を選択するであろう。トップマネジメントがいかに不正を行おうとしても、その意を汲む社員がいなければ、結果として企業不祥事の数は減るに違いない。
2017年10月27日掲載のニュース「FDルールの適用を回避できる「やむを得ない理由」が明らかに」では、「重要情報」を公表しなくてもフェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)に違反しないケース(組織再編行為、エクイティ・ファイナンスなど)などを明らかにした内閣府令案の内容を紹介したところだが、金融庁はこの内閣府令案と同日に、「重要情報」範囲をより詳しく解説したガイドライン(金融商品取引法第27条の36の規定に関する留意事項(フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン))も公表しているので、こちらにも目を通しておく必要がある。
FDルールを定めた金商法27条の36上、「重要情報」とは「当該上場会社等の運営、業務または財産に関する公表されていない重要な情報であって、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすもの」(ちなみにインサイダー取引規制では「重要事実」との言い回しが使われており、FDルールの「重要情報」とは別の概念になる)をいうこととされている。ただ、この説明だけで「重要情報」が何たるかを理解するのは困難だろう。そこで役に立つのが今回公表されたガイドラインだが、残念ながら、・・・
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2017年10月27日掲載のニュース「FDルールの適用を回避できる「やむを得ない理由」が明らかに」では、「重要情報」を公表しなくてもフェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)に違反しないケース(組織再編行為、エクイティ・ファイナンスなど)などを明らかにした内閣府令案の内容を紹介したところだが、金融庁はこの内閣府令案と同日に、「重要情報」範囲をより詳しく解説したガイドライン(金融商品取引法第27条の36の規定に関する留意事項(フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン))も公表しているので、こちらにも目を通しておく必要がある。
FDルールを定めた金商法27条の36上、「重要情報」とは「当該上場会社等の運営、業務または財産に関する公表されていない重要な情報であって、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすもの」(ちなみにインサイダー取引規制では「重要事実」との言い回しが使われており、FDルールの「重要情報」とは別の概念になる)をいうこととされている。ただ、この説明だけで「重要情報」が何たるかを理解するのは困難だろう。そこで役に立つのが今回公表されたガイドラインだが、残念ながら、ガイドラインでは何をもって重要情報とするのかという“量的基準”は示されていない。各社の事業規模や情報管理の状況に応じて「重要情報」の範囲は変わってくるからだ。そこでガイドラインでは、下表のとおり、企業の区分(タイプ)に応じて重要情報の範囲を定めている(ガイドラインの問2参照)。
| 企業の区分 | 重要情報の範囲 |
| ① 諸外国のルールを念頭に、何が株価に重要な影響を及ぼし得る情報か独自の基準を設けてIR実務を行っているグローバル企業 | 当該独自の基準次第 |
| ② 現在のインサイダー取引規制に沿ってIR実務を行っている企業 | ・インサイダー取引規制の対象となる情報(重要事実) ・決算情報(年度または四半期の決算に係る確定的な財務情報)であって、株価に重要な影響を与える情報 |
| ③ 決算情報のうち何が株価に重要な影響を与えるのか判断が難しい企業 | ・インサイダー取引規制の対象となる情報(重要事実) ・公表前の確定的な決算のすべての数字 |
②と③の「重要情報の範囲」の違いは、③が決算数字の「すべて」を重要情報としているのに対し、②は「株価に重要な影響を与える情報」に限定しているという点にある。すなわち、③の方がFDルールとして管理すべき「重要情報」の範囲が②よりも広いということになる。また、独自基準をわざわざ設けている①の企業は、既にFDルールが適用されている米国等に上場しているところが多く、当該国の厳しい基準に則り情報を管理しているのが通常だ。したがって、①から③の方法のうち、②の方法が最も「管理しなければならない情報の量」が少なくて済むことになる。
②の企業における情報が「重要情報」に該当するかどうかは、「株価に重要な影響を与えるかどうか」が判断ポイントとなる。例えば、自社が金融機関と締結している為替予約レートの情報(予約額や予約レート)も重要情報になり得る(ガイドラインの問4参照)。例えば、直物為替レートが1ドル125円の時に、輸出型企業がドル建ての売掛代金決済に備えて1ドル120円でドルを売る為替予約をしたとする。その後、直物為替レートが100円まで円高になっても、その企業は為替予約契約のおかげで、円高の為替レートでの決済を回避できたことになる。為替予約の額が大きければ大きいほど企業の業績に与える影響は大きく、株価に重要な影響を与える可能性も高まる。要するに、為替予約に関する情報も「重要情報」に十分に該当し得るというわけだ。通貨オプション取引も同様である。
為替予約 : 金融機関との間で、将来、外国通貨を一定の為替レートで購入または売却することを予約する契約。為替リスクをヘッジ(為替レートの変動により受け取る(または支払う)自国通貨の額が変動することを回避)するのが目的。
直物為替レート : 外国通貨の売買契約の成立と同時(または売買契約成立以後数日中)に当該外国為替を受け渡しする場合の、自国通貨と外国為替の交換レート
通貨オプション取引 : 将来、外国通貨を売る権利や買う権利を売買するデリバティブ取引。実需に基づく通貨オプション取引はヘッジ目的と言える。
また、上場会社が業務に関する情報を取引関係者に伝達した際に、当該取引関係者から「その情報は重要情報に該当するのではないか」との指摘を受けるという事態も考えられる。ガイドラインでは、このような場合においては、上場会社は“対話の結果次第”で下表の対応を取ることが考えられるとしている(ガイドラインの問3参照)。
| 対話の結果 | あるべき対応 |
| 当該情報が重要情報に該当するとの指摘に上場会社が同意する場合 | 当該情報を速やかに公表する。 |
| 両者の対話の結果、当該情報が重要情報に該当しないとの結論に至った場合 | 当該情報の公表を行わない。 |
| 重要情報には該当するものの、公表が適切でないと考える場合 | 公表できるようになるまでの間に限って、当該取引関係者に守秘義務および当該上場会社の有価証券の売買等を行わない義務を負ってもらい、公表しない。 |
このほかガイドラインには、上場会社が他の会社の子会社である場合において、当該上場会社の属する企業グループの経営管理のために、株主である親会社に重要情報を伝達するケースもFDルールの対象外であることが明記されている(ガイドラインの問6)。このような情報伝達は「投資者に対する広報に係る業務に関して」行われるものではないというのがその理由だ。
改正金商法は来年(2018年)4月1日に施行される予定となっている。上場会社は、それまでに改正金商法およびガイドラインを踏まえたうえで自社にとっての「重要情報」の範囲を社内ルールとして明確にしたうえで、FDルールの周知徹底を図っておく必要があろう。
2017年5月30日に公表された改訂版スチュワードシップ・コードには、複数の機関投資家が連携し、トータルの株式保有割合を背景に共同で企業との対話に臨む「集団的エンゲージメント」に関する記述(下記参照)が盛り込まれたところだ(スチュワードシップ・コードの改訂内容については2017年3月29日のニュース「企業への影響は? 日本版スチュワードシップ・コード改訂案の全容」参照))。
| 指針4-4. 機関投資家が投資先企業との間で対話を行うに当たっては、単独でこうした対話を行うほか、必要に応じ、他の機関投資家と協働して対話を行うこと(集団的エンゲージメント)が有益な場合もあり得る。 |
このコード改訂を視野に、企業年金連合会が中心となり信託銀行等のパッシブ運用を行う運用機関による集団的エンゲージメントを行うためのプラットフォーム構想が進められてきたが(詳細は2017年5月30日のニュース 『「集団的エンゲージメント」明記で今後の機関投資家の動きは?』 参照)、協働エンゲージメントを支援するため、企業年金連合会年金運用部コーポレートガバナンス担当部長などを務めた木村祐基氏を理事長として先月(2017年10月)設立された「一般社団法人機関投資家協働対話フォーラム」はこのほど、複数の機関投資家による企業との協働対話の具体的な手法としての「機関投資家協働対話プログラム」を公表した。当フォーラムでもお伝えした集団的エンゲージメントを行うためのプラットフォーム構想がついに始動することになる。
協働エンゲージメント : 機関投資家協働対話フォーラムでは、集団的エンゲージメントではなく「協働エンゲージメント」(=企業との協働対話)という言葉を用いている。
(出典)機関投資家協働対話フォーラム
「機関投資家協働対話プログラム」に基づく協働対話は、(1)アジェンダの設定、(2)共通見解をまとめたレターの送付、(3)ミーティングの順に進められることになる。それぞれについて見てみよう。・・・
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2017年5月30日に公表された改訂版スチュワードシップ・コードには、複数の機関投資家が連携し、トータルの株式保有割合を背景に共同で企業との対話に臨む「集団的エンゲージメント」に関する記述(下記参照)が盛り込まれたところだ(スチュワードシップ・コードの改訂内容については2017年3月29日のニュース「企業への影響は? 日本版スチュワードシップ・コード改訂案の全容」参照))。
| 指針4-4. 機関投資家が投資先企業との間で対話を行うに当たっては、単独でこうした対話を行うほか、必要に応じ、他の機関投資家と協働して対話を行うこと(集団的エンゲージメント)が有益な場合もあり得る。 |
このコード改訂を視野に、企業年金連合会が中心となり信託銀行等のパッシブ運用を行う運用機関による集団的エンゲージメントを行うためのプラットフォーム構想が進められてきたが(詳細は2017年5月30日のニュース 『「集団的エンゲージメント」明記で今後の機関投資家の動きは?』 参照)、協働エンゲージメントを支援するため、企業年金連合会年金運用部コーポレートガバナンス担当部長などを務めた木村祐基氏を理事長として先月(2017年10月)設立された「一般社団法人機関投資家協働対話フォーラム」はこのほど、複数の機関投資家による企業との協働対話の具体的な手法としての「機関投資家協働対話プログラム」を公表した。当フォーラムでもお伝えした集団的エンゲージメントを行うためのプラットフォーム構想がついに始動することになる。
協働エンゲージメント : 機関投資家協働対話フォーラムでは、集団的エンゲージメントではなく「協働エンゲージメント」(=企業との協働対話)という言葉を用いている。
(出典)機関投資家協働対話フォーラム
「機関投資家協働対話プログラム」に基づく協働対話は、(1)アジェンダの設定、(2)共通見解をまとめたレターの送付、(3)ミーティングの順に進められることになる。それぞれについて見てみよう。
(1)アジェンダの設定
機関投資家協働対話プログラム(以下、プログラム)に参加する機関投資家は、企業との協働対話に先立ち、事前に議論を行ってアジェンダを設定する。議論の内容を踏まえ、アジェンダ毎に、参加する機関投資家の共通見解をまとめる。
(2)共通見解をまとめたレターの送付
機関投資家協働対話フォーラム内のプログラム事務局より、アジェンダの設定議論に参加した機関投資家と連名で、協働対話の対象となる企業に、機関投資家の共通見解をまとめたレターを送付する(レターの送付先企業名は原則非公開)。
(3)ミーティング
プログラム事務局より、レターの送付先企業にミーティングの設定を依頼することがある。ミーティングには、アジェンダの設定議論に参加した複数の機関投資家が出席し、企業との間で課題の認識の共有を図るとともに、双方の考え方の相違や共通点を議論する。
プログラムに当初から参加する機関投資家は、企業年金連合会、三井住友アセットマネジメント、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、りそな銀行の5社で、いずれも長期投資を主な運用手法とする機関投資家となっている。また、プログラムに参加する機関投資家は、投資先企業に対し重要提案行為を行うことや議決権行使について合意することなどは禁止されている。
重要提案行為 : 投資先企業の株主総会において、又は、その「役員」に対し、発行者の事業活動に重大な変更を加え、又は重大な影響を及ぼす行為として「一定の事項」を提案する行為。「一定の事項」としては、例えば代表取締役の選解任、株式交換・移転、会社の分割・合併、配当に関する方針の重要な変更、資本政策に関する重要な変更などがある。
これらの点からも分かるように、機関投資家協働対話プログラムは、“数の論理”で投資家の考えを一方的に企業に押し付けるものではなく、企業と投資家双方の利益に適うWin-Winの関係を重視した対話を標榜している。企業としても、個別に機関投資家と対話するよりも、複数の投資家に共通する見解を一度に聴く方が効率的であり、自社が抱える課題を実効的に解決する絶好の機会となる可能性もありそうだ(この点については、2017年6月5日のニュース「集団的エンゲージメント、企業にとってのメリット」も参照)。
機関投資家協働対話プログラム事務局は年内にも投資先の数十社にレターを送付するという。同プログラムが我が国における集団的エンゲージメントの仕組みとしてどのように機能を果たしていくのか注目される。
2017年11月1日に掲載のニュース「有報のMD&Aの改正案が公表、“中長期投資家との四半期ごとの対話”促進も」では、(2017年)10月24日に金融庁が公表した「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案のうち「開示内容の共通化・合理化」や「非財務情報の開示充実」についてお伝えしたところだが、これらとは別にもう一つ見逃せない改正点が、・・・
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2017年11月1日に掲載のニュース「有報のMD&Aの改正案が公表、“中長期投資家との四半期ごとの対話”促進も」では、(2017年)10月24日に金融庁が公表した「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案のうち「開示内容の共通化・合理化」や「非財務情報の開示充実」についてお伝えしたところだが、これらとは別にもう一つ見逃せない改正点が、「株主総会日程の柔軟化のための開示の見直し」だ。この改正も、開示内容の共通化・合理化や非財務情報の開示充実と同様、2016年4月に金融庁の金融審議会が公表した「ディスクロージャーワーキング・グループ報告-建設的な対話の促進に向けて-」の提言を受けで実施されたもの。具体的には、有価証券報告書における「大株主の状況」の記載時点を、【図表1】のとおり、「事業年度末」から原則として「議決権行使基準日」へと変更する。これは、株主が議案の検討や対話の時間的余裕を確保するために求めている株主総会の後ろ倒しに向けた“最後のボトルネック”と言われる2回の株主確定(「決算日」と「基準日」)を不要とする(株主確定を1回で済ませる)ための改正と言える(詳細は2017年1月31日のニュース「株主総会の7月開催を検討する会社が増加傾向も、残されたボトルネック」の最終段落、 2017年5月25日のニュース「株主総会を2か月後倒しの企業現る―決算日と異なる基準日を初めて設定」の下から三段落目参照)。
基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。定時株主総会の基準日を定款に記載しなければ、毎年、基準日を公告しなければならない。その手間を避けるために、定款に基準日を記載するのが通常である。
| 改正案 | 現 行 |
| (25)大株主の状況 a 提出会社の株主総会又は種類株主総会における議決権行使の基準日(会社法第124条第1項に規定する基準日をいう。)現在の「大株主の状況」について記載すること。ただし、これにより難い場合にあっては、当事業年度末現在の「大株主の状況」について記載すること。 |
(25)大株主の状況 a 当事業年度末現在の「大株主の状況」について記載すること。 |
例えば3月決算の会社が7月に株主総会を開催するとした場合、議決権行使基準日は決算日より遅い日に設定する(現状、決算日を基準日としている企業が多いが、定款変更さえすれば決算日より遅い日に基準日を設定することが可能)一方で、有価証券報告書および事業報告には決算日における「大株主の状況」と「上位10名の株主の状況」を記載することが求められているため、議決権行使基準日における株主の確定とは別に、有価証券報告書および事業報告への記載のために決算日においても大株主を確定しなければならず、企業の事務負担が増加するおそれがあるとし、大株主の状況等の記載時点を決算日から議決権行使基準日へと変更するよう提言していた(ディスクロージャーワーキング・グループ報告12ページ「(2)株主総会日程の柔軟化のための開示の見直し」参照)。
今回の改正は金融商品取引法の一部である「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正だが、現行会社法上も、事業報告における大株主の状況等は「当事業年度の末日において」記載することとされているため(会社法施行規則122条1号)、早晩、会社法施行規則の改正案も公表されることになろう。
2017年7月26日のニュース『定時株主総会後倒しの理由に「猛暑」』でお伝えしたとおり、これまで既に上場会社3社が定款を変更し、決算日と異なる議決権行使基準日を定めている。これら3社の決算日、議決権行使基準日、(期末)配当基準日は【図表2】のとおりとなっているが、実はこのままだと3社とも今回の開示府令改正の恩恵を受けることはできない。株主総会決議に基づき配当しなければならないこととしている会社は、配当基準日と議決権行使基準日を合わせなければならないが、3社はともに「取締役会決議」により配当できる旨を定款で定めている。このため、配当基準日は決算日のまま変更しておらず、議決権基準日のみを決算日より後ろに変更している。したがって、3社とも(配当するのであれば)配当基準日(=決算日)と議決権行使基準日の双方で株主を確定しなければならないことになる。今回の開示府令改正の恩恵を受けるためには、今後、配当基準日を変更して議決権行使基準日と同じ日とする定款変更を行う必要がある。
| 会社名 | 決算日 | 議決権行使基準日 | (期末)配当基準日* |
| 窪田製薬ホールディングス | 12月31日 | 2月末 | 12月31日 |
| 東和フードサービス | 4月30日 | 5月31日 | 4月30日 |
| ニイタカ | 5月31日 | 6月30日 | 5月31日 |
今後、定款を変更して決算日と異なる日を議決行使権基準日とすることを検討する会社では、今回の改正を踏まえて、(期末)配当基準日もあわせて変更する(=議決権行使基準日と同日とする)かどうかを検討する必要がある。議決権行使基準日と配当基準日の双方を決算日以外の同日とすれば、決算日での株主確定は不要となり、事務負担の減少につながる。
改正開示府令は、2018年3月31日以後に終了する事業年度(3月決算会社であれば現在進行中の事業年度)に係る有価証券報告書から適用される予定となっている。このように、株主総会の後ろ倒し(かつ6月総会の集中緩和)を狙いとした株主総会日程の柔軟化に向けた政府の取組みは着々と進展しており、上場会社としては、決算日以外の日を議決権行使基準日としない積極的な理由が徐々になくなりつつある。来年6月総会で基準日の変更を行う上場会社がそれなりの数出て来る可能性は十分にあろう。
主要な国内機関投資家による個別の議決権行使結果が出揃った。当フォーラムでは一橋大学の円谷准教授の協力を得て、主要企業の株主総会上程議案に対する各投資家の賛否状況を分析する。第1回目は・・・
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主要な国内機関投資家による個別の議決権行使結果が出揃った。当フォーラムでは一橋大学の円谷准教授の協力を得て、主要企業の株主総会上程議案に対する各投資家の賛否状況を分析する。第1回目はトヨタ自動車の取締役選任議案を取り上げたい。
同社は2017年6月の株主総会で、9人の取締役候補者を諮った。うち社外取締役は3人で、すべて独立役員(独立役員の定義は2014年12月26日のニュース『「社外取締役」と「独立社外取締役」の違い、明確に説明できますか?』参照)として届け出る予定としていた。結果は全員が過半数の賛成を得て選任された。下表は各候補者の役職/経歴と賛成率である(敬称略)。
| 候補者 | 役職/経歴 | 賛成率 |
| 内山田竹志 | 取締役会長 | 93.81% |
| 早川 茂 | 取締役副会長 | 96.81% |
| 豊田章男 | 取締役社長 | 96.41% |
| Didier Leroy | Chief Competitive Officer | 96.80% |
| 寺師茂樹 | Chief Risk Officer | 96.81% |
| 永田 理 | Chief Financial Officer | 96.74% |
| 宇野郁夫 | 社外取締役:日本生命保険名誉顧問 | 89.43% |
| 加藤治彦 | 社外取締役:証券保管振替機構社長、元国税庁長官 | 95.76% |
| Mark T.Hogan | 社外取締役:元ゼネラルモーターズ副社長 | 84.29% |
まず目につくのは、社外取締役2人の賛成率が90%に達していないことである。宇野氏は大株主の元経営者、ホーガン氏は競合企業の元経営者ということで、独立性が疑われた可能性がある。その結果、独立社外取締役の人数/割合が不足していると判断され、取締役会長の賛成率が93.81%と低めにとどまったものと推測できる。ここで、競合企業出身の社外取締役について何故独立性の問題が生じるのか、疑問に思う向きもあろう。海外では、ライバル企業の元経営者を社外取締役に起用するケースが珍しくないからだ。業界に精通し、しかも「競争相手」として自社を外部から分析してきたライバル企業出身者の意見は自社の企業価値向上に資するはずだが、同業他社の出身者は、元所属先から技術等の流出を防ぐことを目的とした競業避止義務を負わされていることも多く、本件でも、ホーガン氏が当該会社の株主価値を最優先した発言ができるのかということが懸念されたのかもしれない。
東京海上アセットマネジメントは宇野氏とホーガン氏の両方の選任議案に反対した。同社の議決権行使ガイドラインには大株主および競合企業に関する独立性基準は見られないが、実質的な判断がなされたものと考えられる。なお、同社は取締役会長の内山田氏の選任議案にも反対している。同社のガイドラインでは「複数の独立社外取締役」の選任を求めているが、上記の判断から、加藤氏1人しか独立社外取締役として認めなかったということだろう。
社外取締役の選任議案で、宇野氏のみに反対したのは朝日ライフアセットマネジメント、富国生命投資顧問、MU投資顧問、日興アセットマネジメントであった。ホーガン氏のみ反対は三井住友信託銀行、いちよしアセットマネジメント、T&Dアセットマネジメンドだった。もっとも、これら投資家のほとんどは詳細な独立性基準を開示しておらず、「独立性を吟味」(いちよしアセットマネジメント)など“実質的な”判断によるものと見られる。1人だけに反対したということは複数の独立役員の存在は認めたということになるから、いずれも取締役会長には反対票を投じていない。
三井住友信託銀行は独立性基準を詳細に定めているが、競合企業については特段の記載がない。同基準の末尾にある「その他、上記に関わらず、明らかに独立性に疑義がある場合」に抵触したと考えられる。なお、独立性を判断するうえでの「大株主」については「10.0%以上」と規定しており、3.99%である日本生命保険はこの基準に抵触しないため、宇野氏には賛成している。
ところで、三井住友アセットマネジメントは社外取締役のすべてに賛成票を投じている一方、会長の内山田氏と社長の豊田氏には反対している。同社が代表取締役の選任(副会長の早川氏には代表権なし)に反対するケースは、同社のSMAMガイドラインにおいて詳細に定められているが、そのいずれにもトヨタ自動車は該当しないように見える。その中で「独立取締役1名以下の場合」との規定があるが、独立性を疑う社外取締役本人には反対票を入れず、代表者の選任責任のみを追求したのかもしれない。