2017/11/17 グローバル機関投資家の本音

(2017年)10月18日には金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が約1年ぶりに再会するなど、コーポレートガバナンス・コード改革に向けた動きが本格化しつつあるが(2017年10月24日掲載のニュース「金融庁・フォローアップ会議が再開 CGコード改訂のテーマは?」参照)、日本のコーポレートガバナンス改革に決して小さくない影響を与える存在と言えるのが、コーポレートガバナンスに関する国際団体であるICGN(The International Corporate Governance Network=国際コーポレートガバナンス・ネットワーク)だ。ICGNは1995年に英米の機関投資家協会が設立した団体であり、グローバルな機関投資家を中心とするその参加メンバーの所属国は44か国におよび、運用資産の合計額は26兆ドルにも達する。

既報のとおり、上記フォローアップ会議でもICGNのワリング氏からのプレゼンテーションが行われたが、それに先立ち、ICGNは今年10月、グローバル・ガバナンス原則(以下、ICGN原則)の改訂を公表している。ICGN原則は基本的に英国のコーポレートガバナンス・コードに沿った内容でありつつ、さらに厳しい規律を上場会社に求めるものとなっている。日本の上場会社の現状と比べると相当にハードルの高い内容であり、近い将来見込まれる日本のコーポレートガバナンス・コードの改訂の際に取り入れられるとは考えにくいが、上場会社の経営陣としては、今後のためにも、グローバルな機関投資家の要求水準がどれほど高いものであるかを認識しておく必要はあるだろう。

例えば・・・

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2017/11/17 グローバル機関投資家の本音(会員限定)

(2017年)10月18日には金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が約1年ぶりに再会するなど、コーポレートガバナンス・コード改革に向けた動きが本格化しつつあるが(2017年10月24日掲載のニュース「金融庁・フォローアップ会議が再開 CGコード改訂のテーマは?」参照)、日本のコーポレートガバナンス改革に決して小さくない影響を与える存在と言えるのが、コーポレートガバナンスに関する国際団体であるICGN(The International Corporate Governance Network=国際コーポレートガバナンス・ネットワーク)だ。ICGNは1995年に英米の機関投資家協会が設立した団体であり、グローバルな機関投資家を中心とするその参加メンバーの所属国は44か国におよび、運用資産の合計額は26兆ドルにも達する。

既報のとおり、上記フォローアップ会議でもICGNのワリング氏からのプレゼンテーションが行われたが、それに先立ち、ICGNは今年10月、グローバル・ガバナンス原則(以下、ICGN原則)の改訂を公表している。ICGN原則は基本的に英国のコーポレートガバナンス・コードに沿った内容でありつつ、さらに厳しい規律を上場会社に求めるものとなっている。日本の上場会社の現状と比べると相当にハードルの高い内容であり、近い将来見込まれる日本のコーポレートガバナンス・コードの改訂の際に取り入れられるとは考えにくいが、上場会社の経営陣としては、今後のためにも、グローバルな機関投資家の要求水準がどれほど高いものであるかを認識しておく必要はあるだろう。

例えば「取締役会議長」について、英国コーポレートガバナンス・コードは「最高経営責任者は、当該会社の取締役会議長になるべきでない」としているが、ICGN原則は「退任する最高経営責任者が取締役として取締役会に残留するという慣行は、冷却期間を置いた場合でも避けられるべきである」とし、現役CEOによる議長兼任はもちろん、退任したCEOの議長就任も否定している。

また、取締役会の実効性評価について、英国コーポレートガバナンス・コードは「少なくとも3年ごとに外部者によって実施されるべきである」など厳密なプロセスを定めているが、ICGN原則はさらに「取締役の在任期間の延長は、当該取締役の貢献が満足できる水準にあるとの評価を前提とするべき」と、評価結果を選・解任に活用することまで提言している。

では、ICGNすなわちグローバル機関投資家は、日本が進めるガバナンス改革に対して一体何を期待しているのだろうか。日本企業が注目しておくべきポイントとして以下の3点を挙げておきたい。

① 独立社外取締役
取締役会においては、独立したメンバーが少なくとも3人欲しい。この「3」という数字が重要である。なぜならば、3人いれば役員指名に関わる法定もしくは任意の委員会を、独立者のみで構成することができるからである。次期CEOは決して現CEOによって選ばれてはならない。独立社外取締役がリードする指名委員会のイニシアチブによって、どのような能力を重視したのかなどのプロセスが明確にされる必要がある。
② 株式持ち合い
ICGNは東証に対し、独立役員の要件を拡充・厳格化することを求めている。具体的には、株式持ち合い関係にある場合は独立性を認めるべきではないとする。また、株式持ち合いに関する現状の開示は不十分であり、どのようなベネフィット(財務面、コスト面)があるのか明らかにするべきだとする。そして、そもそもグローバル機関投資家にとって、株式持ち合いはスチュワードシップの観点から認めることは極めて難しいとしている。
③ 資本生産性(ROE
日本企業のROEはここ数年で改善してきたものの、未だに欧米企業と比べ何倍も低いことは不満である。経営陣が打ち出したROEの目標値は、取締役会がしっかりチェックしなければならない。取締役会は財務計画に責任を持つべきであって、キャッシュレベルが積み上がることに対して懸念を抱いて欲しい。株式持ち合いなどはもってのほかであり、財務リテラシーを持つ独立取締役が監視すべきである。

ROE : Return On Equity(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本

2017/11/16 「出国税」が企業に与える影響

政府は観光立国実現のための新たな財源として、訪日外国人旅行者等が日本を出国する際に徴収する「出国税」の導入を検討しているが、昨日(2017年11月16日)開催された自民党の観光立国調査会は、「出国税」という響きの悪さから、名称を「観光促進税」に変更するという。

その名称からはあまり企業には関係なさそうにも見えるが・・・

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2017/11/16 「出国税」が企業に与える影響(会員限定)

政府は観光立国実現のための新たな財源として、訪日外国人旅行者等が日本を出国する際に徴収する「出国税」の導入を検討しているが、昨日(2017年11月16日)開催された自民党の観光立国調査会は、「出国税」という響きの悪さから、名称を「観光促進税」に変更するという。

その名称からはあまり企業には関係なさそうにも見えるがそうではない。

昨日の自民党の観光立国調査会に先立ち‎(2017‎年)‎11‎月‎9‎日に観光庁で開催された「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」が出国税(観光促進税)の方向性を示す「中間とりまとめ」を公表したが、それによると、出国税の課税対象となる「出国旅客」には「(日本人を含む。出国目的や手段は問わない)」というカッコ書きがついている(11ページ「3.提言」参照)。「出国目的や手段は問わない」ということは、たとえ企業の役職員が出張、すなわち業務上の目的で出国しようが、「出国税」が課されるということだ。

もっとも、出国税の金額は“定額・一律”としたうえで「一人一回の出国につき1,000円を超えない範囲」とされる方向となっている(11ページ)。海外出張の多い役職員でも負担額は一人当たり数万円に収まることになりそうだ(それでも、頻繁に主張する役職員が多い企業ではトータル数百万円から数千万円規模の負担額になる可能性はある)。出国税の導入は2018年度税制改正(来月12月14日に、その概要をまとめた「2018年度税制改正大綱」が公表される見込み)で実施される。上記の中間報告11ページにも「観光ビジョンの目標達成に向けた取組みを加速させる必要があることから、可能な限り速やかな導入を検討すること」とあるが、2019年度から導入される方向。大企業にとっては大きな金額ではないものの、海外出張の回数が多い部門では課税開始時期以降の予算を組む際に考慮する必要があろう。

ただし、当フォーラムの取材によると、出国税は法人税の計算上、損金(経費)とされることになるようだ。出国税は、飛行機で出国する場合には、航空会社によって運賃と一括収受される方式となる(11ページ)が、企業においては、新たに出国税の経理処理の方法も検討する必要がある。例えば、出国税は運賃(旅費交通費)とは別に租税公課を用いて会計処理をする方法が考えられよう。

2017/11/15 監査報告書へのKAMの記載を巡る関係者の見方

不正会計問題が生じるたびに、とかく矢面に立たされるのが監査法人だ。投資家などから、不正会計を見つけられなかったのは会計監査が十分ではなかったのではないかと疑念を持たれるためだが、現実問題として、監査法人には守秘義務が課されていることもあり、会計監査の内容が十分であったかどうかを投資家が知るのは難しい。

そこで注目されているのが、会計監査の透明性向上を目的とした「監査法人のガバナンス・コード」と「監査報告書の長文化(KAMの記載)」の2つの施策である(前者については2017年4月10日のニュース「監査法人のガバナンス・コード導入が企業に与える影響」、後者については【特集】長文式監査報告書が企業に与える影響新用語・難解用語の解説も参照)。監査法人のガバナンス・コードは監査法人の組織運営の透明性向上を図ることに主眼が置かれているのに対し、監査報告書の長文化(KAMの記載)は個々の監査業務の透明性向上を目的としているという点で両者には違いがある。監査法人のガバナンス・コードについては大監査法人を中心に既に対応済み(2017年3月より)だが、ここにきて「監査報告書の長文化(KAMの記載)」に関する議論も本格化している。・・・

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2017/11/15 監査報告書へのKAMの記載を巡る関係者の見方(会員限定)

不正会計問題が生じるたびに、とかく矢面に立たされるのが監査法人だ。投資家などから、不正会計を見つけられなかったのは会計監査が十分ではなかったのではないかと疑念を持たれるためだが、現実問題として、監査法人には守秘義務が課されていることもあり、会計監査の内容が十分であったかどうかを投資家が知るのは難しい。

そこで注目されているのが、会計監査の透明性向上を目的とした「監査法人のガバナンス・コード」と「監査報告書の長文化(KAMの記載)」の2つの施策である(前者については2017年4月10日のニュース「監査法人のガバナンス・コード導入が企業に与える影響」、後者については【特集】長文式監査報告書が企業に与える影響新用語・難解用語の解説も参照)。監査法人のガバナンス・コードは監査法人の組織運営の透明性向上を図ることに主眼が置かれているのに対し、監査報告書の長文化(KAMの記載)は個々の監査業務の透明性向上を目的としているという点で両者には違いがある。監査法人のガバナンス・コードについては大監査法人を中心に既に対応済み(2017年3月より)だが、ここにきて「監査報告書の長文化(KAMの記載)」に関する議論も本格化している。

KAM : 監査人(監査法人)が、当期の会計監査において、特に重要と判断した事項のこと。KAMとは「Key Audit Matters」の略で、読み方は「カム」。

10月17日に開催された企業会計審議会の監査部会では、監査報告書へのKAMの記載を巡って、下表のとおり賛成意見と反対意見の双方が示された。委員の属性と照らし合わせると、おおむねステークホルダーの意見を反映していると見てよいだろう。

賛否 委員の属性 意見の内容
賛成意見 機関投資家 現行の短文式の監査報告書では、適正意見と不適正意見の「間」を埋める意見や見解が表示されないため、投資先企業が突然にのれんを減損して驚くことがある。KAMの記載により、最終的な監査意見だけではなく、その意見に至る過程が分かれば、企業分析に資する。
KAMは投資家が監査人のクオリティチェックをするのにも使える。
学者(会社法専門) 監査報告書にKAMを記載するようになれば、監査人と監査役とのコミュニケーションが促進される。
KAMの記載は、監査人が適切に問題を把握できているのかを反映するので、監査人の能力を監査役等が評価する大きな手がかりになる(コーポレート・ガバナンスに資する)。
証券会社 KAMは、企業、会計監査人、機関投資家の三者間のコミュニケーションのきっかけになる。
公認会計士 KAMの議論が深化することで、的を外さない実効性のある監査の実施に繋がっていく流れができることに期待を持っている。
反対意見・
懸念する意見
上場企業 KAMの導入で監査コストが増える。コストと有用性を秤にかけると、現時点では非常にネガティブに考えている。
海外で行われているから導入するという、「まずは導入ありき」の議論は望ましくない。KAMの手続きが本当に監査の透明性向上につながるのか、目的の明確化と評価のフィードバック、プロセスの有効性を慎重に見極めることが必要。
監査報告書にKAMを記載することで、監査法人の責任が増えるのか、仮にKAMの記載内容に重大な齟齬や過失があった場合にはどういうことが起きるのか、KAMの記載により市場に無用な混乱を誘発しないか、訴訟リスクが高まるのではないか等懸念される。
公認会計士 KAMについての諸外国の事例を踏襲して形式的な導入になってしまう点を懸念。誰にどのようなニーズ・便益があるのかということをしっかり議論すべき。
KAMに記載される事項は、財務諸表の注記において開示されている事項であることが通常は想定されるが、例外的に財務諸表に注記されていない未公開の情報事項をKAMに記載するケースも想定されるため、KAMと監査人の守秘義務の関係についても整理しておく必要がある。
その他 学者(監査論) 監査人の負担軽減のために、監査報告書に長文式のKAMを記載するのではなく、A41枚程度に収まる定型項目を準備し、監査人がそれにチェックを付すチェックボックス方式でも良いのではないか。

上場企業の委員からは、KAMが金融商品取引法における会計監査(有価証券報告書に添付される監査報告書)のみに導入される()とすると、現状、株主総会開催後に有価証券報告書が提出されるのが通常である以上、株主総会の時点では株主はKAMに何が記載されるかわからないまま議決権を行使せざるを得ない点について懸念が表明された。KAMの導入は、結果として現在政府が推進している株主総会開催日の後ろ倒しにつながる可能性もありそうだ(株主総会の後ろ倒しについては、2017年11月07日のニュース「株主総会日程の後ろ倒しに向けた“最後のボトルネック”が解消」参照)。

 監査報告書へのKAMの記載の是非は金融庁の審議会で議論されているため、まずは金融庁が管轄する金融商品取引法に基づく会計監査で導入される可能性が高い。

また、学者(監査論)の委員からは「英国などでは、『監査委員会が外部監査人から情報提供された事項に対してどのように対応したか』をまず監査委員会の監査報告書に書き、さらに監査委員会が書いた報告内容について外部監査人が(外部監査人の)監査報告書においてコメントをする、といった具合にレポーティング・サイクルがぐるぐる回っている」という指摘もあった。KAMが記載されるようになれば、上場企業の監査役の監査実務や監査報告書の内容にも影響が及ぶことになりかねないだけに、特に監査役はKAMを巡る議論の推移をフォローしておく必要があろう。

2017/11/14 担当者は不正とさえ認識せず・・請求書の内容改ざんに潜む不祥事の芽

名門大企業による不祥事が続いているが、いつか世間を騒がせる大規模な不祥事につながりかねない小さな“不正の芽”は案外身近なところにあるものだ。ある上場会社の子会社で実際に起きた事例を紹介しよう。・・・

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2017/11/14 担当者は不正とさえ認識せず・・請求書の内容改ざんに潜む不祥事の芽(会員限定)

名門大企業による不祥事が続いているが、いつか世間を騒がせる大規模な不祥事につながりかねない小さな“不正の芽”は案外身近なところにあるものだ。ある上場会社の子会社で実際に起きた事例を紹介しよう。

当該子会社の営業担当者は、懇意にしている得意先から25万円のパソコン10台(合計250万円)の注文を受け、納品した。その後、得意先から、請求書の内容を「パソコン25万件×10台」から「パソコン1台9万円+関連システム機器16万円(外付けモニター・Webカメラ・ルーター等)の合計25万円×10セット」に変更して請求書を発行し直すように要請され、営業担当者は言われたとおりにした。言うまでもなく、これらの関連システム機器は今回の取引では販売していない物であった。

この取引は、売上高を検証するための内部監査において、無作為サンプリングで抽出した取引の中から偶然発見されたものだった。本件について営業担当者に話を聞くと、「従来からの親しい取引先で、こちらからも無理をお願いしたこともあり、今回のことはいわば”貸し借り”の類のものである。入金額に変更はないし、また期日通りに遅滞なく入金されているのだから、結果として問題はないだろう」とのことであった。また、営業担当者の話の内容は上司も承認していたのである。要するに、営業担当者にもその上司にも「不正をしている」という認識がなかったということになる。

しかし、この一連の行為は、販売事実と異なる内容の請求書を発行したものであり、言い換えれば、ありえない価格や存在しない物を販売した紛れもない「架空売上」の計上である。この請求書の改ざんは厳密に言えば刑法159条「私文書偽造等」に該当することになり、刑事罰(一年以下の懲役または十万円以下の罰金)の対象にもなり得る。

一方、得意先においては、本来であれば30万円のパソコンを固定資産として計上し、これを4年にわたって7.5万円ずつ減価償却するのがルールであるところ(国税庁の耐用年数表の「パーソナルコンピュータ」参照)、10万円未満の少額減価償却資産(税務上、全額を一度に費用計上することが認められている)として取得時に一括で費用処理されるということになる。つまり、得意先では費用の過大計上という“逆粉飾決算”が起きていることになり(逆粉飾決算では法人税が不当に減ることになる)、これに自社の子会社が加担しているという図式となる。もし得意先への税務調査で反面調査が行われ、”口裏合わせ”が明らかになれば、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される恐れもある(国税通則法127条)。

反面調査 : 税務調査の対象者の資料を直接調査しただけでは十分な実態把握ができない、あるいは証拠の裏付けが取れないという場合に、調査対象者の取引先なども調査すること。

本件は金額的には小さな話だが、営業部門の担当者と上司と得意先の癒着によりあるべき内部統制が機能していないという深刻な事象であり、これが不正の端緒となって、いずれ売上の早期計上、架空計上などより大きな不祥事へとつながりかねない。

こうした事態を防ぐためには、営業部門の定期的なローテーションを行うことは必須だが、それに加えて、管理部門等による請求書の内容のチェック手続の導入を検討する必要もありそうだ。

2017/11/13 主要国内機関投資家による議決権行使結果 第二弾

2017年11月6日掲載の「主要国内機関投資家による議決権行使結果 第一弾」に続き、第2回目の今回は、ソフトバンクHDの監査役選任議案を取り上げる。今回も一橋大学の円谷准教授の協力を得て、主要国内機関投資家による個別の議決権行使結果(賛否状況)を分析する。・・・

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2017/11/13 主要国内機関投資家による議決権行使結果 第二弾(会員限定)

2017年11月6日掲載の「主要国内機関投資家による議決権行使結果 第一弾」に続き、第2回目の今回は、ソフトバンクHDの監査役選任議案を取り上げる。今回も一橋大学の円谷准教授の協力を得て、主要国内機関投資家による個別の議決権行使結果(賛否状況)を分析する。

ソフトバンクHDは2017年6月の株主総会に3人の監査役候補者を諮った。社外監査役は2人だが、そのうち証券取引所に対して独立役員届出書で独立役員(独立役員の定義は2014年12月26日のニュース『「社外取締役」と「独立社外取締役」の違い、明確に説明できますか?』参照))として届け出ることを予定していたのは1人のみ。しかし、結果は全員が過半数の賛成を得て選任された。以下は各候補者の氏名と役職あるいは経歴、そして賛成率である(敬称略)。

独立役員届出書 : 証券取引所では、企業行動規範の「遵守すべき事項」として、上場会社に独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役)を1名以上確保することを求めており、上場会社は独立役員の確保に係る企業行動規範の遵守状況を示すため「独立役員届出書」に自社の独立役員を記載して証券取引所に提出しなければならない。

候補者 役職/経歴 賛成率
須﨑 將人 執行役員グループコンプライアンスオフィサー 91.40%
宇野 総一郎 社外:長島・大野・常松法律事務所パートナー弁護士 79.25%
窪川 秀一 社外:四谷パートナーズ会計事務所代表パートナー 84.31%

社外監査役の候補者は2人とも賛成率が90%に達していない。宇野氏は独立役員として届け出る予定がなかったが、これは所属事務所の方針によるものと推測される。また、両氏はともに再任の候補者だが、本株主総会の終結時点で宇野氏は13年、窪川氏は28年の就任期間となっている。なお、今回は改選期ではなかった社外監査役の遠山篤氏は、同社と税務コンサルティング業務に関する取引のあるPwC税理士法人の顧問である。なお社外監査役1名の任期満了に伴い、監査役の人数が総会前から1名減の4名となっている。

宇野氏の選任議案に反対した機関投資家は、みずほ信託銀行、MU投資顧問、野村アセットマネジメント、三菱UFJ信託銀行、朝日ライフアセットマネジメント、大和証券投資信託委託、三菱UFJ国際投信、三井住友アセットマネジメント、三井住友トラストアセットマネジメント、T&Dアセットマネジメントと、多数確認された。野村アセットマネジメントは日本企業に対する議決権行使基準において、招集通知に「独立役員として届け出る予定であること」の記載があることを独立性の要件として求めている(4ページ(6)参照)。

一方、窪川氏の選任議案に対しては、三菱UFJ信託銀行、朝日ライフアセットマネジメント、大和証券投資信託委託、三菱UFJ国際投信、三井住友アセットマネジメント、三井住友トラストアセットマネジメント、T&Dアセットマネジメントが反対した。これらの機関投資家は議決権行使基準で概ね10年以上の在任期間を反対要件としており、在任13年の宇野氏はもちろん、同28年の窪川氏に賛成票を投じることは到底できない。監査役任期が4年であることを考え併せると、3期目からは独立性を損なうと見られることになる。

社内監査役である須崎氏については、三菱UFJ信託銀行と三菱UFJ国際投信が反対しており、両社とも3人の候補者全てに反対票を投じたことになる。三菱UFJ信託銀行は議決権行使の考え方において、「監査役または社外監査役の減員」に原則反対するとしており((2) 監査役の選任 (a) 監査役の選任 参照)、その場合の反対対象は監査役候補者の全員(補欠も含む)と規定している。

なお、大和住銀投信投資顧問と明治安田アセットマネジメントは、取締役および監査役の選任議案について枝番ごとに賛否を投じることはせず、たとえ1名だけの候補者に問題があった場合でも議案全体すなわち「全候補者」に反対票を投じている模様である。そのため、上述した反対要件のいずれが(もしくはすべてが)問題視されたのかは厳密には不明である。