2017年11月6日掲載の「主要国内機関投資家による議決権行使結果 第一弾」に続き、第2回目の今回は、ソフトバンクHDの監査役選任議案を取り上げる。今回も一橋大学の円谷准教授の協力を得て、主要国内機関投資家による個別の議決権行使結果(賛否状況)を分析する。
ソフトバンクHDは2017年6月の株主総会に3人の監査役候補者を諮った。社外監査役は2人だが、そのうち証券取引所に対して独立役員届出書で独立役員(独立役員の定義は2014年12月26日のニュース『「社外取締役」と「独立社外取締役」の違い、明確に説明できますか?』参照))として届け出ることを予定していたのは1人のみ。しかし、結果は全員が過半数の賛成を得て選任された。以下は各候補者の氏名と役職あるいは経歴、そして賛成率である(敬称略)。
独立役員届出書 : 証券取引所では、企業行動規範の「遵守すべき事項」として、上場会社に独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役)を1名以上確保することを求めており、上場会社は独立役員の確保に係る企業行動規範の遵守状況を示すため「独立役員届出書」に自社の独立役員を記載して証券取引所に提出しなければならない。
| 候補者 |
役職/経歴 |
賛成率 |
| 須﨑 將人 |
執行役員グループコンプライアンスオフィサー |
91.40% |
| 宇野 総一郎 |
社外:長島・大野・常松法律事務所パートナー弁護士 |
79.25% |
| 窪川 秀一 |
社外:四谷パートナーズ会計事務所代表パートナー |
84.31% |
社外監査役の候補者は2人とも賛成率が90%に達していない。宇野氏は独立役員として届け出る予定がなかったが、これは所属事務所の方針によるものと推測される。また、両氏はともに再任の候補者だが、本株主総会の終結時点で宇野氏は13年、窪川氏は28年の就任期間となっている。なお、今回は改選期ではなかった社外監査役の遠山篤氏は、同社と税務コンサルティング業務に関する取引のあるPwC税理士法人の顧問である。なお社外監査役1名の任期満了に伴い、監査役の人数が総会前から1名減の4名となっている。
宇野氏の選任議案に反対した機関投資家は、みずほ信託銀行、MU投資顧問、野村アセットマネジメント、三菱UFJ信託銀行、朝日ライフアセットマネジメント、大和証券投資信託委託、三菱UFJ国際投信、三井住友アセットマネジメント、三井住友トラストアセットマネジメント、T&Dアセットマネジメントと、多数確認された。野村アセットマネジメントは日本企業に対する議決権行使基準において、招集通知に「独立役員として届け出る予定であること」の記載があることを独立性の要件として求めている(4ページ(6)参照)。
一方、窪川氏の選任議案に対しては、三菱UFJ信託銀行、朝日ライフアセットマネジメント、大和証券投資信託委託、三菱UFJ国際投信、三井住友アセットマネジメント、三井住友トラストアセットマネジメント、T&Dアセットマネジメントが反対した。これらの機関投資家は議決権行使基準で概ね10年以上の在任期間を反対要件としており、在任13年の宇野氏はもちろん、同28年の窪川氏に賛成票を投じることは到底できない。監査役任期が4年であることを考え併せると、3期目からは独立性を損なうと見られることになる。
社内監査役である須崎氏については、三菱UFJ信託銀行と三菱UFJ国際投信が反対しており、両社とも3人の候補者全てに反対票を投じたことになる。三菱UFJ信託銀行は議決権行使の考え方において、「監査役または社外監査役の減員」に原則反対するとしており((2) 監査役の選任 (a) 監査役の選任 参照)、その場合の反対対象は監査役候補者の全員(補欠も含む)と規定している。
なお、大和住銀投信投資顧問と明治安田アセットマネジメントは、取締役および監査役の選任議案について枝番ごとに賛否を投じることはせず、たとえ1名だけの候補者に問題があった場合でも議案全体すなわち「全候補者」に反対票を投じている模様である。そのため、上述した反対要件のいずれが(もしくはすべてが)問題視されたのかは厳密には不明である。