ESGという言葉は日本企業にもだいぶ浸透してきた感があるが、ESGに関連し、今後上場企業にとってテーマとなりそうなのが「SDGs」(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)だ。
ESG : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。
SDGsとは、「人間、地球及び繁栄」のための行動計画として国連が掲げる世界共通の目標であり、下記の17の目標と169のターゲットからなる。2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」において150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択され、2016年から2030年までの15年間での達成を目指している。
SDGsは2000年に採択されたMDGs(Millennium Development Goals、ミレニアム開発目標)の後継に位置付けられるが、MDGsが主に途上国における貧困撲滅や開発に主眼が置かれていたのに対し、SDGsは先進国も対象としている。そのため、SDGsのプレイヤーには、政府やNPO/NGOのみならず、民間セクターも想定されている点、MDGsからの大きな変化と言える。
国連で採択されたと言っても、それが一体自社にどう関係するのか、あまりイメージがわかないかもしれない。しかし、SDGsは日本では既に政府、そして企業の問題として位置付けられつつある。
まず政府では、総理を本部長、官房長官と外相を副本部長、全閣僚を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を首相官邸に設置したうえで、各省庁、NPO/NGO、企業など様々なステークホルダーが集う「SDGs推進円卓会議」で議論を重ねている。2017年7月にニューヨークで開催された国連ハイレベル政治フォーラム(SDGsについて、各国の取り組み状況をレビューする閣僚級会合)では、岸田外務大臣(当時)がスピーチの中で「官民パートナーシップ」を強調しているおり(経団連のリリース参照)、企業がSDGsに貢献することに対する高い期待がうかがえる。余談だが、同フォーラムではピコ太郎が外務省の依頼を受けて日本の取り組みをPRしている。SDGsとピコ太郎との親和性には若干疑問が残るが、政府の「SDGsを広めたい」という意欲は伝わってくる。
一方、企業側も、経団連が同フォーラムに企業行動・CSR委員会委員長(損保ジャパン日本興亜・代表取締役会長の二宮雅也氏)を派遣したほか、2017年11月に予定する経団連の企業行動憲章の改訂ではSDGsの考え方を組み込もうという力の入れようだ。
また、投資家の動きを見ると、GPIFはSDGsを企業にとっては事業機会、投資家にとっては投資機会と捉え、委託運用機関に対し、SDGsをESG投資の一要素として考慮するよう求めている(GPIFのウェブサイト「ESG投資とSDGsのつながり」参照)。SDGsへの取り組みは業種特性が高く、一律で評価することが難しいため、今のところ投資家に明確な判断基準がある状況ではないが、有力運用会社の投資担当者などで構成される投資家フォーラムでもSDGsは議論にのぼっている(2017年8月16日公表の「投資家フォーラム第12回会合 報告書」参照)。
こうした中、SDGsを意識した開示を行う企業も出てきている。味の素やオムロンは2017年に公表した新しい中期経営計画の中で非財務目標としてSDGsに言及している(味の素「2017-2019(for 2020)中期経営計画」35ページ、39ページ参照。オムロン「中期経営計画VG2.0」の「成長分野で生み出す地球価値」以降参照)。特にオムロンは、「事業活動全体を通じて、わたしたちは、国連で採択された2030年までに解決すべき国際社会の課題であるSDGs(Sustainable Development Goals)に貢献していきます。」と宣言している点、注目される。このほか、キリンホールディングスもCSVコミットメント(こちらを参照)を公表し、「社会課題について、SDGs等を参照しながら、事業を通じて中長期的に目指す姿を明らかにする16のコミットメント」を策定している。
経団連の関連団体である公益社団法人 企業市民協議会が経団連会員企業等に対して実施したアンケート結果によると、SDGsの採択を受けて何らかの対応をとっていると回答した企業は約4割に上る(49 ページ参照)。アンケートに回答したのは経団連会員企業等1,363 社のうち167社(回答率12.3%)に過ぎないが、それでも4割という数字は予想以上に高いと言える。SDGsの存在がクローズアップされる日もそう遠くないだろう。

