改訂スチュワードシップ・コードの運用が開始され(改訂スチュワードシップ・コードの詳細は「議決権行使結果個別開示、“穏便な”コンプライは認められず」参照)、運用機関による議決権行使の個別開示が始まっている。その影響として「議決権行使の厳格化」を予想する声があったが、今年6月の株主総会シーズンでは、直接的には株主提案の可決事例(2017年6月20日のニュース「ISSが賛成する株主提案議案と反対する会社提案議案」参照)、(「議決権を行使するまでもなく」という意味で)間接的には買収防衛策廃止の続出(2017年6月27日のニュース「買収防衛策の廃止は妥当だったか?」参照)といった形でその予想が現実のものとなっている。
また、個別開示のもう一つの影響として、議決権行使助言会社の影響力拡大が指摘されている。仮に運用機関が助言会社の賛否推奨よりも甘い判断をした場合、アセットオーナーに対する説明が難しくなる。結果として、助言会社の判断が“スタンダード化”し、資本市場における「オピニオン」を形成しかねないというわけだ。
この傾向を加速させることになりそうなのが、「利益相反」の問題だ。日本の機関投資家の多くは銀行、証券会社、保険会社等のグループに属しており、常に利益相反のリスクにさらされている。投資先のメインバンクが親会社というような分かり易いケースはもちろん、投資先の企業がM&Aを計画し、それを株主総会に諮ったとした場合、もし運用機関の親会社がFA(財務アドバイザー)を務めていれば、やはり当該運用機関は利益相反の局面に立たされることになる。
運用機関は、親会社との利益相反を疑われる場合、自らの判断ではなく助言会社のレポートに従った方がその疑いを払拭しやすい。実際、日本の大手運用機関にはこのようなニーズが広く存在している。例えば大和住銀投信投資顧問の議決権行使ガイドラインは、大和証券グループ本社と三井住友フィナンシャルグループに対する議決権行使について、スチュワードシップ委員会で定める外部機関に判断を委任すると定めている。
利益相反リスクはいつ・どの会社で発生するか必ずしも予測がつかないことから、今後は“潜在リスク”を想定し、より幅広い銘柄について議決権行使助言会社のレポートを購入しようとする運用機関が増加する可能性がある。アセットオーナーに対する説明力を高めるため、最大手ISSのレポートに加え、“セカンドオピニオン”として準大手グラスルイスからもレポートを購入するところが出てくるだろう。仮にこのような状況が訪れるならば、「オピニオン形成」における議決権行使助言会社の影響力は相当大きなものとなるだろう。
現状では議決権行使助言会社に対し、ネガティブな感情を持つ企業も少なくない。しかし彼らの影響力拡大と正面から向き合い、真摯に対話することが求められる時代がすぐそこまでやってきていると言えそうだ。
