2017/07/07 個別開示で高まる議決権行使助言会社の影響(会員限定)

改訂スチュワードシップ・コードの運用が開始され(改訂スチュワードシップ・コードの詳細は「議決権行使結果個別開示、“穏便な”コンプライは認められず」参照)、運用機関による議決権行使の個別開示が始まっている。その影響として「議決権行使の厳格化」を予想する声があったが、今年6月の株主総会シーズンでは、直接的には株主提案の可決事例(2017年6月20日のニュース「ISSが賛成する株主提案議案と反対する会社提案議案」参照)、(「議決権を行使するまでもなく」という意味で)間接的には買収防衛策廃止の続出(2017年6月27日のニュース「買収防衛策の廃止は妥当だったか?」参照)といった形でその予想が現実のものとなっている。

また、個別開示のもう一つの影響として、議決権行使助言会社の影響力拡大が指摘されている。仮に運用機関が助言会社の賛否推奨よりも甘い判断をした場合、アセットオーナーに対する説明が難しくなる。結果として、助言会社の判断が“スタンダード化”し、資本市場における「オピニオン」を形成しかねないというわけだ。

この傾向を加速させることになりそうなのが、「利益相反」の問題だ。日本の機関投資家の多くは銀行、証券会社、保険会社等のグループに属しており、常に利益相反のリスクにさらされている。投資先のメインバンクが親会社というような分かり易いケースはもちろん、投資先の企業がM&Aを計画し、それを株主総会に諮ったとした場合、もし運用機関の親会社がFA(財務アドバイザー)を務めていれば、やはり当該運用機関は利益相反の局面に立たされることになる。

運用機関は、親会社との利益相反を疑われる場合、自らの判断ではなく助言会社のレポートに従った方がその疑いを払拭しやすい。実際、日本の大手運用機関にはこのようなニーズが広く存在している。例えば大和住銀投信投資顧問の議決権行使ガイドラインは、大和証券グループ本社と三井住友フィナンシャルグループに対する議決権行使について、スチュワードシップ委員会で定める外部機関に判断を委任すると定めている。

利益相反リスクはいつ・どの会社で発生するか必ずしも予測がつかないことから、今後は“潜在リスク”を想定し、より幅広い銘柄について議決権行使助言会社のレポートを購入しようとする運用機関が増加する可能性がある。アセットオーナーに対する説明力を高めるため、最大手ISSのレポートに加え、“セカンドオピニオン”として準大手グラスルイスからもレポートを購入するところが出てくるだろう。仮にこのような状況が訪れるならば、「オピニオン形成」における議決権行使助言会社の影響力は相当大きなものとなるだろう。

現状では議決権行使助言会社に対し、ネガティブな感情を持つ企業も少なくない。しかし彼らの影響力拡大と正面から向き合い、真摯に対話することが求められる時代がすぐそこまでやってきていると言えそうだ。

2017/07/06 GPIFの新しいESG指数に約360社が選定

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は今週(2017年7月3日)、新しいESG指数の選定結果を公表した。これはGPIFが2016年7月22日から公募を開始していたもの。GPIFは今回選定したESG指数に基づき、当初は国内株全体の3%程度、金額にして約1兆円という規模でパッシブ運用を開始し、中長期的に投資の効果を確認しながら、将来的には他のESG指数の活用やアクティブ運用なども取り入れながらESG投資を拡大していくとしている(GPIFのESG投資の詳細はこちら)。

GPIF : 年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund)。厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
パッシブ運用 : パッシブ(「消極的」なという意味)運用とは、東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法であり、ファンドマネジャーが独自に銘柄を選択して運用する「アクティブ運用」とは対極の関係にある。
アクティブ運用 : 銘柄を選別し、魅力のある銘柄を購入する一方で、見劣りする銘柄を売却するなどして利益を得ようとする投資手法。個人の株式売買は基本的にアクティブ運用と言える。
ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること。

GPIFがESG投資に取り組む理由は、GPIFのように投資額が大きいうえに投資先が資本市場全体に幅広く分散し、かつ運用期間が長期にわたる投資家が安定したリターンを獲得するためには「サステナビリティ(持続可能性)」を重視するESG投資が必要だと考えられているからに他ならない。

今回GPIFが選定したESG指数は・・・

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2017/07/06 GPIFの新しいESG指数に約360社が選定(会員限定)

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は今週(2017年7月3日)、新しいESG指数の選定結果を公表した。これはGPIFが2016年7月22日から公募を開始していたもの。GPIFは今回選定したESG指数に基づき、当初は国内株全体の3%程度、金額にして約1兆円という規模でパッシブ運用を開始し、中長期的に投資の効果を確認しながら、将来的には他のESG指数の活用やアクティブ運用なども取り入れながらESG投資を拡大していくとしている(GPIFのESG投資の詳細はこちら)。

GPIF : 年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund)。厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
パッシブ運用 : パッシブ(「消極的」なという意味)運用とは、東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法であり、ファンドマネジャーが独自に銘柄を選択して運用する「アクティブ運用」とは対極の関係にある。
アクティブ運用 : 銘柄を選別し、魅力のある銘柄を購入する一方で、見劣りする銘柄を売却するなどして利益を得ようとする投資手法。個人の株式売買は基本的にアクティブ運用と言える。
ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること。

GPIFがESG投資に取り組む理由は、GPIFのように投資額が大きいうえに投資先が資本市場全体に幅広く分散し、かつ運用期間が長期にわたる投資家が安定したリターンを獲得するためには「サステナビリティ(持続可能性)」を重視するESG投資が必要だと考えられているからに他ならない。

今回GPIFが選定したESG指数は、英国FTSE社の「FTSE Blossom Japan Index(ESG総合型)」、米国MSCI社の「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数(ESG総合型)」「MSCI日本株女性活躍指数(テーマ型)」の3本。「テーマ型」については、「環境テーマ型」が継続審査中である一方、「ガバナンステーマ型」は該当なしとのことだった。いずれの指数においても、ESG情報の開示に対する評価が高い企業が選定されており、日本企業によるESG情報開示を後押しするというGPIFの姿勢を鮮明に反映した設計となっている。また、これら3つのESG指数はそれぞれ、構成銘柄のほか、開示情報の評価方法やスコアまで詳細に公開している。2017年6月現在の組み入れ銘柄数は150~250社程度で、3指数間の重複を除くと、360社ほどの日本企業が構成銘柄に選定されたことになる。

・FTSE Blossom Japan Indexの構成銘柄はこちら
・MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄はこちら
・MSCI日本株女性活躍指数の構成銘柄はこちら

従来から存在するSRIインデックスは、ESGへの取り組みに優れたごく一部の上位企業のみが選定されていたり、業種による偏りが多かったりという課題があった。しかし上記3つの指数では、GPIFの募集要項にも「特定銘柄への過大な偏りが生じないこと」と示されていたとおり、一定基準を満たした企業の中から業種のバランスを配慮したうえで組入銘柄が選定されている。

SRIインデックス : 環境保全への配慮や社会貢献といった社会的な観点から選定された銘柄で構成されている株価指数銘柄(複数の株式銘柄で構成されたポートフォリオの変動を示したもの)のこと。SRIとは(Socially Responsible Investment=社会的責任投資)の略。

3つの指数の選定対象は主に時価総額上位500社(時価総額約2,000億円以上の会社)となっているが、GPIFの募集要項にあった「相当程度の投資が可能なキャパシティを持つこと」という点から考えれば、まだまだ企業数が不足していると言えるため、今後は選定対象の範囲が拡大する可能性もある。上場企業の経営陣は、ESG情報の開示を進めることで、このような指数に選定され、資本調達コストを下げることを目指す必要があろう。

2017/07/05 企業の広告出稿に対し株主が質問権を行使

インターネットの興隆によりテレビの影響力は低下したと言われるものの、依然として影響力の強いメディアであることに変わりはない。特にBtoCビジネスを展開する企業にとっては、民放のテレビ番組のスポンサーになり、消費者層へ製品やサービス等のCMを流せば高い広告効果が期待できる。

ただし、テレビ番組のスポンサーとなる際には、広告効果ともにレピュテーション・リスクもよく検討しておく必要がある。そのことを改めて感じさせたのが、2017年6月29日に開催された・・・

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2017/07/05 企業の広告出稿に対し株主が質問権を行使(会員限定)

インターネットの興隆によりテレビの影響力は低下したと言われるものの、依然として影響力の強いメディアであることに変わりはない。特にBtoCビジネスを展開する企業にとっては、民放のテレビ番組のスポンサーになり、消費者層へ製品やサービス等のCMを流せば高い広告効果が期待できる。

ただし、テレビ番組のスポンサーとなる際には、広告効果ともにレピュテーション・リスクもよく検討しておく必要がある。そのことを改めて感じさせたのが、2017年6月29日に開催された富士フイルムホールディングスの定時株主総会での一幕だ。

同社の子会社である富士フイルムはTBSのサンデーモーニング(毎週日曜朝8時~ 司会:関口宏)のスポンサーとなっているが、このことに関して、株主が質問権を行使したのである。株主の質問内容は、同番組は「報道内容が左翼的」(株主発言)であるにもかかわらず同社がスポンサーであり続けることの是非を問うもの。この株主の質問に対して会社側は「同番組への広告出稿の効果は高いと判断している。もっとも、本件に関しては様々な意見があることから、現在は番組全体のスポンサーではなく、番組内のスポーツコーナー(張本勲の週刊御意見番スポーツ)だけに限定したスポンサーになっている」と回答した。実は、去年の定時株主総会でも同様の質問が出たとのことである。富士フイルムホールディングスとしては、スポンサーとなる範囲(コーナー)を絞ることで、株主への“ゼロ回答”を回避した格好だ。

インターネット上には、サンデーモーニングのスポンサー企業への不買運動を呼び掛けているウェブサイトやSNSの投稿も散見される。過去には、韓国ドラマのスポンサーをしていた花王が、嫌韓ブームの中で不買運動のターゲットにされたこともあった。突如として政治的な意見の対立に巻き込まれた企業としては、まさに狐につままれたような思いだっただろう。そのような事態を回避するためにも、広告出稿時には、様々な視点からレピュテーション・リスクを検討しておくことが必要になろう。

2017/07/04 「退職金」としての株式報酬の是非

リストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式報酬)や株式交付信託を役員への「退職金」()にしようと考える上場企業は少なくない。その理由の一つとして、退職金とすれば役員の所得税負担が軽いということがある。これまで明確でなかった法人税の取扱いについても、退任時に譲渡制限を解除するリストリクテッド・ストックや退任時に株式を交付する株式交付信託は、業績に連動して譲渡制限か解除される株式数やポイント(株式交付信託の場合)が変動しない限り、退職給与として損金算入できるとの見解が当局から示されている(経済産業省・「攻めの経営」を促す役員報酬 ~企業の持続的成長のための インセンティブプラン導入の手引~ Q19の※参照。税務上の取扱いの概要は2017年2月22日のニュース「譲渡制限付株式報酬や株式交付信託は退職給与になるか?」参照)。

 具体的には、リストリクテッド・ストックであれば譲渡制限の解除を退任時、株式交付信託であれば株式の交付を退任時とする。

ただ、投資家が役員報酬のインセンティブ強化を求める中、退任時まで株式を保有し続けるようなタイプの役員報酬は投資家のニーズに反するのではないかとの指摘も聞かれるところだ。この点についてウイリス・タワーズワトソンのコーポレートガバナンス・アドバイザリーグループでリーダーを務める櫛笥隆亮 氏は・・・

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2017/07/04 「退職金」としての株式報酬の是非(会員限定)

リストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式報酬)や株式交付信託を役員への「退職金」()にしようと考える上場企業は少なくない。その理由の一つとして、退職金とすれば役員の所得税負担が軽いということがある。これまで明確でなかった法人税の取扱いについても、退任時に譲渡制限を解除するリストリクテッド・ストックや退任時に株式を交付する株式交付信託は、業績に連動して譲渡制限か解除される株式数やポイント(株式交付信託の場合)が変動しない限り、退職給与として損金算入できるとの見解が当局から示されている(経済産業省・「攻めの経営」を促す役員報酬 ~企業の持続的成長のための インセンティブプラン導入の手引~ Q19の※参照。税務上の取扱いの概要は2017年2月22日のニュース「譲渡制限付株式報酬や株式交付信託は退職給与になるか?」参照)。

 具体的には、リストリクテッド・ストックであれば譲渡制限の解除を退任時、株式交付信託であれば株式の交付を退任時とする。

ただ、投資家が役員報酬のインセンティブ強化を求める中、退任時まで株式を保有し続けるようなタイプの役員報酬は投資家のニーズに反するのではないかとの指摘も聞かれるところだ。この点についてウイリス・タワーズワトソンのコーポレートガバナンス・アドバイザリーグループでリーダーを務める櫛笥隆亮 氏は「株式報酬には、インセンティブのみならず、『株主との利害共有』という役割もある。在任中に株式を売却できないということは、その間、株主との利害共有も継続するということでもあり、コーポレートガバナンスの文脈の中でも正当化され得る」と話す。一方で、「退任時まで保有することが前提になっている限り、企業の戦略に合った制度設計はしにくいため、インセンティブという面では若干物足りない面はある」とも指摘する。

そこで櫛笥氏が提案するのが、よりインセンティブの効いた役員報酬との組み合わせだ。具体的にはパフォーマンス・シェア・ユニット(通称:PSU)である。「パフォーマンス・シェア(PS)」とは文字通り一定期間(以下、業績等評価期間)における「業績」や「株価」によって交付する株式数が変動するタイプの株式報酬のこと。業績評価期間の最初に株式を交付するものは単に「パフォーマンス・シェア(通称:PS)」と呼ばれるが、まずポイント(ユニット=単位)を付与し、業績等評価期間終了後に評価の結果に応じてポイント数を変動させ、当該ポイントに応じた株式を交付するのが「パフォーマンス・シェア・ユニット」である。業績や株価条件のある株式交付信託は、パフォーマンス・シェア・ユニットに区分される(【特集】2017年度税制改正を踏まえたインセンティブ報酬設計のポイントの図表2参照)。会社法上、払込みなしに株式を報酬として付与することはできないため(詳細は2015年12月2日のニュース「日本で株式報酬を支給できない理由」参照)、パフォーマンス・シェア系の株式報酬としては、一旦ポイント(ユニット)を付与してから株式を交付するパフォーマンス・シェア・ユニット、すなわち業績や株価条件のある株式(現金)交付信託を導入するのが簡便と言える。

ちょうど平成29年度税制改正でパフォーマンス・シェア・ユニットの損金算入が認められ(上記特集の「2.損金算入要件の変化」(3)および図表3参照)、また、金融商品取引法上、パフォーマンス・シェアは第三者割当に該当し、役員の自宅住所を含む付与内容を「第三者割当の場合の特記事項」として開示しなければならないのではないかとの懸念も開示府令の改正により解消している(金融庁のリリースはこちら。ちなみに、リストリクテッド・ストックにも同様の問題があったが昨年解消している。2016年8月19日のニュース「リストリクテッド・ストックを退職金として支給したら?」の冒頭参照)。

今後は「(退職所得としての)リストリクテッド・ストック+パフォーマンス・シェア・ユニット」の組み合わせをはじめとして、「株主との利害共有を図る報酬」と「よりインセンティブの効いた報酬」のようにタイプの異なる複数の報酬を“ポートフォリオ”のように組み合わせて導入する上場企業が増えそうだ。

<取材にご協力いただいたウイリス・タワーズワトソン 櫛笥隆亮氏の連絡先>
ウイリス・タワーズワトソン ディレクター
コーポレートガバナンス・アドバイザリーグループ リーダー
櫛笥 隆亮
03-3581-6428
takaaki.kushige@willistowerswatson.com

2017/07/03 黒田電気と川崎汽船の明暗を分けたもの

今年の株主総会シーズンで最も注目を集めた企業は、黒田電気と川崎汽船だったのではないだろうか。いずれも筆頭株主が村上ファンド系の投資会社であるということに加え、ISSが、黒田電気に対する株主提案(社外取締役の選任)に賛成、川崎汽船の取締役選任議案(会長と社長の選任議案)には反対と、いずれも会社側に不利な判断をしたという共通点があった。

ところが、結果は明暗が分かれた。黒田電気の株主提案は賛成率58.6%で可決(=会社側の主張が株主の支持を得られなかった)された一方、川崎汽船の取締役選任議案は97%を超える高い賛成率(会長97.3%、社長97.2%)で可決(=会社側の主張が広く株主に認められた)のである。

両社の株主構成を確認してみると、黒田電気は筆頭株主のレノが37.2%(共同保有を含む)、川崎汽船は筆頭株主のエフィッシモが38.4%と、いずれも4割近い圧倒的な議決権を有している。もっとも、両筆頭株主とも単独で過半数を占めるには至っておらず、キャスティング・ボートは一般株主が握っていた。

黒田電気の場合、レノによる賛成は避けられなかったとしても、その他の機関投資家や個人株主から会社側の主張に対する賛同を得られれば、株主提案が過半数の賛成を得ることはなかった。しかし結果としては、少なくとも(レノ以外の)約20%に相当する株主が賛成に回ったことで、株主提案は有効に成立するに至っている。

一方、川崎汽船においては、高い賛成率を見ればエフィッシモが支持に回ったことは明らかであり、さらに大部分の株主から賛成票を得ることに成功している。なぜこのような差が生じたのかは、・・・

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2017/07/03 黒田電気と川崎汽船の明暗を分けたもの(会員限定)

今年の株主総会シーズンで最も注目を集めた企業は、黒田電気と川崎汽船だったのではないだろうか。いずれも筆頭株主が村上ファンド系の投資会社であるということに加え、ISSが、黒田電気に対する株主提案(社外取締役の選任)に賛成、川崎汽船の取締役選任議案(会長と社長の選任議案)には反対と、いずれも会社側に不利な判断をしたという共通点があった。

ところが、結果は明暗が分かれた。黒田電気の株主提案は賛成率58.6%で可決(=会社側の主張が株主の支持を得られなかった)された一方、川崎汽船の取締役選任議案は97%を超える高い賛成率(会長97.3%、社長97.2%)で可決(=会社側の主張が広く株主に認められた)のである。

両社の株主構成を確認してみると、黒田電気は筆頭株主のレノが37.2%(共同保有を含む)、川崎汽船は筆頭株主のエフィッシモが38.4%と、いずれも4割近い圧倒的な議決権を有している。もっとも、両筆頭株主とも単独で過半数を占めるには至っておらず、キャスティング・ボートは一般株主が握っていた。

黒田電気の場合、レノによる賛成は避けられなかったとしても、その他の機関投資家や個人株主から会社側の主張に対する賛同を得られれば、株主提案が過半数の賛成を得ることはなかった。しかし結果としては、少なくとも(レノ以外の)約20%に相当する株主が賛成に回ったことで、株主提案は有効に成立するに至っている。

一方、川崎汽船においては、高い賛成率を見ればエフィッシモが支持に回ったことは明らかであり、さらに大部分の株主から賛成票を得ることに成功している。なぜこのような差が生じたのかは、ISSの賛否推奨に対する反論のリリースからうかがうことができる。

黒田電気は6月15日に「ISS レポートに対する当社の見解について」と題するリリースを公表した。その内容は、「ISS社は…看過している」「ISS社が…恣意的とも言わざるを得ない評価手法によって…」など、全般にわたってISSを非難するものとなっている。また、招集通知に記載された株主提案への反対理由も、専ら提案者の主張が不当である旨の内容となっている。

川崎汽船も6月8日に「第 149 期定時株主総会上程議案(第2号議案 取締役9名選任の件)に関するISS 社の反対推奨に対する当社の見解」と題するリリースを公表している。同社のリリースでも、「形式的な業績基準に固執したもの」とISSの判断を非難する記述が見られるものの、大部分は定期コンテナ船事業の3社統合や長期経営方針および新中期経営計画を説明する内容となっている。

株主(ISS)の主張に反駁(はんばく)することに終始した黒田電気と、株主が期待する企業価値向上に向けた取り組みの説明に腐心した川崎汽船――このスタンスの違いが対照的な結果をもたらしたと言えるかもしれない。

2017/06/30 2017年6月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
指名委員会等設置会社における指名・報酬・監査の各委員会は、3名以上の取締役で構成され、そのうち過半数は社外取締役である必要がありますが、いずれの委員会にも所属しない社外取締役がいても構いません。以上より、「社外取締役は指名・報酬・監査の各委員会のいずれか1つには必ず所属しなければならない」とする問題文は誤りです。

こちらの記事で再確認!
2017/06/29 黒田電気で株主提案の社外取が選任されるも委員会には属さず((会員限定)