一部の運用会社では既に人工知能(AI)を利用した運用を行っている。今年(2017年)2月にAIが運用する投資信託「GSグローバル・ビッグデータ投資戦略」を設定し話題となったゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントや、AIを活用して高い運用実績を残し急速に存在感を高めている米国のヘッジファンド、 ツー・シグマ・インベストメンツなどは、AIによって着実に運用資産を増やしている。
このような動きが広がり、またAIの精度が高まって行けば、いずれはファンドマネージャー(ポートフォリオマネージャー)やアナリストがAIにとって代わられ、企業と運用会社の付き合い方も変質するのではないかとの見方もある。
ただ、現状では、多くの運用会社におけるAIの利用は「初期段階」あるいは「検討段階」にとどまっている。その理由の一つとしては、AIがファンドマネージャーやアナリストから仕事を奪うのではないかという不安から、社内でAIの導入に強い抵抗感が存在するということがある。また、数理分析を行うクオンツと呼ばれる専門家が、AIで用いるプログラミングの専門家ではないことも一因となっている。
クオンツ : 数字に表れるデータ分析である「定量分析」に基づく運用を担う。クオンツという言葉は、英語で定量分析を意味する「quantitative analysis」から来ている。もっとも、定量分析は人が行うわけではなく、各運用会社がそれぞれ独自に開発したコンピュータ・システムを使うことになる。
もっとも、たとえAIのプログラマーを揃えたとしても、それだけでAIが運用の世界で主役になれるわけではない。運用の手法の一つに、過去のデータから将来を予測するというものがあるが、これまでは人間がトライ・アンド・エラーを繰り返して将来予測のモデルを構築してきた。確かに、AIを使えば、より早く、より広範囲にモデルを構築することが可能になるのは間違いない。例えば、AIは投資対象企業に関する膨大な情報を瞬時に集めることができる。ここでいう情報には、投資対象企業が開示するものだけではなく、あらゆるニュースソースを含む。ポートフォリオマネージャーやアナリストは、自ら保有あるいは投資を推奨する企業について無意識に良い情報のみを収集する傾向があるが、AIであればこうしたバイアスを防ぐことができる。また、大量のデータ分析を得意とするAIは、刻々と変化する株価のような無限のデータから超短期(例えば明日)の株価を予想することも得意とする。これらの情報だけでポートフォリオを構築することはできないが、少なくともこうした場面においては、人間によるポートフォリオ構築の補助としてAIが大きな役割を果たすのは間違いないだろう。
一方、AIは例えば月次の経済指標など限られたデータに基づく予想は苦手とする。したがって、AIは「長期投資」には多くの課題を残していると言えよう。実際、現在AIが使われているのはトレーディング分野がほとんどとなっている。
結論として、投資の世界でAIが完全に人間に取って代わる時代はそう簡単には訪れないだろう。AIは人間の投資判断を助けるツールとして発展していくことになりそうだ。

