スチュワードシップ・コードの導入からはや3年が経過し、改訂版が間もなく公表されようとしている中(スチュワードシップ・コードの改訂内容については2017年3月29日のニュース「企業への影響は?日本版スチュワードシップ・コード改訂案の全容」を参照)、機関投資家の投資先企業に対する姿勢にも変化が表れている。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がJPX 日経インデックス400構成銘柄企業に対して行ったアンケート結果を取りまとめた「第2回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」(2017年5月16日公表)によると、「機関投資家全般に期待することは何か」の問いに対して「より深い企業理解(画一的対応の是正)」と回答した企業数が、前回(2016年)の調査時(こちらを参照)の36%から、今回は24%に減っていることが分かった。スチュワードシップ・コードの導入を受けて対話に臨む機関投資家側の体制が少しずつ充実し、導入当初に散見された「機関投資家による画一的対応」は改善されつつある様子がうかがえる。ただ、間もなく実施されるスチュワードシップ・コードの改訂より議決権行使結果の個別開示が実施されれば、再び画一的な対応がはびこることを懸念する声も聞かれる(2017年5月15日のニュース「議決権行使結果の個別開示で難易度が高まるエンゲージメント」参照)。改訂後のアンケート結果は見ものだろう。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) : 厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
このほか、機関投資家側の対応に関するアンケート結果では、「IRミーティングにおいて『資本効率』を議論する際に機関投資家がショートターミズム(短期志向)化している」と回答した企業が69.5%にも上っている点も目を引くところだ。コーポレートガバナンス・コードは上場企業に対し「中長期的な企業価値の向上」を目的として株主との間で建設的な対話を行うことを求めているが(基本原則5)、この結果からは、上場企業と機関投資家の目線がいま一つ合っていない状況がうかがえる。これとは対照的に、52.2%の企業が「『経営戦略』を議論する際には機関投資家は中長期な視点になってきている」と回答しているのは興味深い。機関投資家はテーマによってはショートターミズムから脱却する兆しが出てきたとも言えそうだ。
企業の機関投資家との面談件数は、今回のアンケートに回答した企業の平均で年間延べ295件にも及ぶ。建設的な対話を実現するうえでは企業側の姿勢も問われるが、機関投資家との面談に社長自らが対応すると回答した企業はわずか9%だった。「CFOまたは担当役員」とした企業も23%に過ぎず、大半(63%)が「部長以下」が対応しているのが実態だ。機関投資家に誰が対応するのかを決める際に重視することとしては、「自社にとっての貢献等、過去の面談内容の質」が65%と最も多く、「株式の保有の有無」と「保有比率」がそれに次ぐ61%、以下、「運用資産規模」(43%)、「株式保有期間」(35%)と続く。「自社にとっての貢献等、過去の面談内容の質」が重視されている点は納得だが、裏を返せば、35%もの企業がこの点を考慮せずに機関投資家への対応者を決定していることになる。これは自社に理解のある長期投資家を開拓するという観点からすれば企業の努力不足と言われかねない。こうした企業は、例えば各機関投資家との面談時の質問内容を記録し、「自社への理解度(画一的な質問となっていないか)」や「質問の内容(中長期的な企業価値向上につながる質問や提案かどうか)」を分析して、機関投資家をランク付けするといったことを試してみるのも一案だ。こうした情報が社長やCFOに提供された結果、自ら対話に臨むようになれば、対話の充実へとつながることが期待できよう。
