2017/04/30 2017年4月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
自社の会計監査人が監査法人のガバナンス・コードに基づく透明性報告書を公表していない中小の監査法人であったとしても、当該監査法人に依頼すれば、広く公表はしていないものの透明性報告書と同様の内容の報告書を監査役会に提出してもらえる可能性があるので、一概に「不可能」とまでは言えません(問題文は誤りです)。そのようなプレッシャーをかけることは、中小の監査法人のガバナンスを変革する契機になるので、監査役は積極的に取り組むべきと言えます。

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2017/04/06 透明性報告書を公表しない監査法人への対応(会員限定)

2017/04/30 2017年4月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
自社の会計監査人が監査法人のガバナンス・コードに基づく透明性報告書を公表していない中小の監査法人であったとしても、当該監査法人に依頼すれば、広く公表はしていないものの透明性報告書と同様の内容の報告書を監査役会に提出してもらえる可能性があるので、一概に「不可能」とまでは言えません(問題文は誤りです)。そのようなプレッシャーをかけることは、中小の監査法人のガバナンスを変革する契機になるので、監査役は積極的に取り組むべきと言えます。

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2017/04/06 透明性報告書を公表しない監査法人への対応(会員限定)

2017/04/30 【役員会 Good&Bad発言集】ROE向上策

東証一部に上場しているサービス業の甲社では、機関投資家との対話の中で更なるROE向上策を検討するよう提案を受けたことから、取締役会で具体的なROE向上策について議論することになり、取締役A・B・Cが下記の発言をしました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「ROEは利益を自己資本で除して計算します。自己資本は一事業部門ではどうしようもない以上、『利益を増やす』すなわち『費用を減らす』しか手段はないと考えています。」

取締役B:「機関投資家から当社のROE向上のために持ち合いを解消するよう求められたとのことですが、そもそも持ち合い株式はB/Sの『資産』の部に表示されるものです。A取締役にご指摘いただいたとおり、ROEはP/Lの『利益』とB/Sの純資産の部の『自己資本』の関係に過ぎません。それにもかかわらず、B/Sの『資産』の部の株式を圧縮せよとの指摘は意味不明と言わざるを得ません。」

取締役C:「ROEの計算式だけで議論をすると本質を見失う危険があります。ROEを構成要素に分解したうえで議論してみてはいかがでしょうか。」

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2017/04/30 【役員会 Good&Bad発言集】ROE向上策(会員限定)

<解説>
ROEを要素分解して“見える化”

ROE(Return On Equity)は自己資本利益率のことであり、当期純利益を自己資本で除して計算されます。伊藤レポートではグローバルな投資家と対話をする際の最低ラインとして8%の値が示されています。一方、機関投資家が中長期的に望ましいと考えるROE水準としては、「10%以上 12%未満」との回答が最も多いとの調査結果もあります(こちらを参照)。上場企業にとってROEの向上策の検討は喫緊の課題と言えます。

ROEの向上策の検討にあたり、「当期純利益を自己資本で除して求める」との算式を前提にすると、ROE向上策は「当期純利益を増やす」か「自己資本を減らす」の2つしかないことになります。これでは、具体的なROE向上策は「不採算部門の廃止」「リストラ」「自己株式取得」といった策しか俎上に載ってきません。より多様なROE向上策を検討するためには、ROEを分解して考える必要があります。まず、ROEを「売上高利益率」「資本回転率」「レバレッジ」の3要素に分解します。

27774a

ROEを分解した要素である「売上高利益率」「資本回転率」「レバレッジ」のそれぞれについて同業他社の平均値を比較すると、自社の弱いところ(イコール改善の余地があるところ)が浮き彫りになります。ちなみに、この分解した3要素を日米欧で比較すると日本企業は売上高利益率が著しく低いことが分かります(伊藤レポート37ページより抜粋)。

27774b

「売上高利益率」「資本回転率」「レバレッジ」はさらに細かく分析することも可能です。たとえば伊藤レポートでは次のように細かく分析する案が紹介されています(伊藤レポート43ページ参照)。

27774c

このようにROEを要素分解すしていけば自社の課題が具体的に「見える化」され、社内のKPI(Key Performance Indicator)に関連付けていくことでそれぞれの会社の経営改革に落とし込み、ROEの向上を図ることが可能になります。

政策保有株式を手放すことのROE的な意味合い

コーポレートガバナンス・コードは上場会社に「いわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な政策保有についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行う」ことを求めています(コーポレートガバナンス・コード【原則1-4.いわゆる政策保有株式】)。これは、上場会社に議決権行使の歪みが生じかねない政策保有株式(持ち合い株式)につき開示を通じて圧縮を求めるものですが、ROE向上の策としても説明できます。まず、上場会社が相互に株式を持ち合うと、互いに安定株主の存在になり、互いに信任票を投じあうことで企業価値向上を怠る可能性が高まります。その結果、自社の受取配当金は低く抑えられたままになっている可能性があります。すなわち、株主から預かったキャッシュが大して配当金を生まない政策保有株式に塩漬けされている可能性があることになります。政策保有株式を手放し、そこで得たキャッシュをよりリターンを生む事業に投資すれば、利益の向上を通じてROEは向上します。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役C:「ROEの計算式だけで議論をすると本質を見失う危険があります。ROEを構成要素に分解したうえで議論してみてはいかがでしょうか。」
コメント:取締役Cの発言は、ROEの向上策についての各取締役の発言に含まれる問題点を分析し、ROEを要素分解することで議論を整理しようとする意図を持つものであり、GOODです。

BAD発言はこちら
取締役A:「ROEは利益を自己資本で除して計算します。自己資本は一事業部門ではどうしようもない以上、『利益を増やす』すなわち『費用を減らす』しか手段はないと考えています。」
コメント:確かにROEは利益を自己資本で除して計算しますが、ROEの計算式のままでは変数が利益と自己資本しかないことから、ROE向上策として思いつく策も不十分となります。実際にAは「費用を減らす」策しか検討の俎上に載せることができていません。ROE向上策はROEを分解した要素ごとに検討するようにしましょう。
取締役B:「機関投資家から当社のROE向上のために持ち合いを解消するよう求められたとのことですが、そもそも持ち合い株式はB/Sの『資産』の部に表示されるものです。A取締役にご指摘いただいたとおり、ROEはP/Lの『利益』とB/Sの純資産の部の『自己資本』の関係に過ぎません。それにもかかわらず、B/Sの『資産』の部の株式を圧縮せよとの指摘は意味不明と言わざるを得ません。」
コメント:持ち合い株式は政策保有株式とも言われ、コーポレートガバナンス・コードでは合理的な説明が困難な政策保有株式を売却することが求められています。持ち合い株式の解消は、大したリターンを生まない持ち合い株式を圧縮し、キャッシュをより資金効率の高い事業に投資して会社全体のROEを向上する策と説明することができます。機関投資家がROE向上のために持ち合い株式の残高を求めるのは、そのようなロジックを背景とするものであり、その意図を理解できていないBの発言はBAD発言です。

2017/04/29 【失敗学第35回】昭光通商の事例(会員限定)

概要

昭和電工グループの商社である昭光通商(東証一部上場)の子会社で炭化ケイ素や人工ダイヤモンドを対象物品とした資金循環取引が行われており、2016年だけでも実態のない売上高が60億円計上されていた。

経緯

昭光通商が、2017年4月に特別調査委員会の報告書を公表し、過年度の財務報告を訂正するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

<2011年>
4月:ビー・インターナショナルで、今回問題となった炭化ケイ素や人工ダイヤモンドの仕入れ・販売取引(以下、本件取引)がスタートする(この時点ではビー・インターナショナルは昭光通商の子会社ではなかった)。

<2014年>
1月:昭光通商がビー・インターナショナルの株式を取得し、子会社にする。

<2016年>
10月以降:昭光通商は会計監査人(有限責任あずさ監査法人)から、本件取引の販売先A社と仕入先B社の代表取締役が同一人物である(下図「取引の全体像」を参照)ことから商流の適正性・合理性について注意喚起を受けるとともに調査の依頼を要請される。
11月25日:昭光通商の監査役がビー・インターナショナルに往査し、仕入先B社から送付された船荷証券の写しを調べたところ、船荷証券の写しが偽造または変造されていることに気付く。

往査 : 出張して監査すること。

<2017年>
2月:昭光通商が外部専門家をメンバーとする特別調査委員会を設置し、特別調査委員会が調査を開始。
3月29日:有価証券報告書の提出期限延長に係る承認申請が下りる。
3月30日:昭光通商は2016年12月期に係る定時株主総会を開催するも、本件取引の調査が完了していないことから、株主に対して事業報告や連結計算書類および計算書類等を報告できなかった。
4月17日:特別調査委員会が昭光通商に調査報告書を提出し、昭光通商は調査報告書を公表。
4月25日:昭光通商が特別調査委員会の調査報告に基づく再発防止策や過年度の財務報告の訂正を公表するとともに、財務局に2016年12月期の「有価証券報告書」および「内部統制報告書(重要な不備あり)」と過年度の「内部統制報告書の訂正報告書」を提出。また、5月11日を基準日として開催する臨時株主総会で、事業報告や連結計算書類および計算書類等を報告することを公表(こちらを参照)。

内容・原因・改善策

昭光通商が2017年4月17日に公表した特別調査委員会の報告書によると、本件の問題点の主な内容とその原因、再発防止策は次のとおりである。

取引の全体像
27752
資金循環取引

内容 ・昭光通商が子会社化したビー・インターナショナルで、炭化ケイ素や人工ダイヤモンドを対象物品とする資金循環取引(本件取引)が行われていた。
・本件取引の販売先A社と仕入先B社の代表取締役は同一人物であった。
・本件取引は、対象物品がビー・インターナショナルに納品されることなく、書類のみが交わされる介入取引であった(対象物品は中国から国内に荷揚げされたのち、最終需要者のC社に直接納品されることになっていた)。B社からビー・インターナショナルに偽造された納品書・船積書類の写し・請求書が送付され、それをもとにビー・インターナショナルではB社に代金を支払っていた。
・ビー・インターナショナルは、B社へ仕入代金を仕入月に支払う一方で、売上代金は船積み日を基準として月末締め3か月後にA社から受け取ることになっていたため、A社(実質的にはB社と同じ)にとっては3か月間の資金融資を得たのと同様の効果が生じていた。
原因 M&A時のデュー・デリジェンスの甘さ
・昭光通商ではビー・インターナショナルに対して実施した「法務面でのデュー・デリジェンス」と「財務面でのデュー・デリジェンス」のそれぞれのレポート間に不整合があったことに気付いていなかった。
・昭光通商がビー・インターナショナルの株式を買い取る際のデュー・デリジェンスで、資金循環取引を看過してしまった。
・昭光通商ではビジネス面でのデュー・デリジェンスを実施していなかった。
介入取引に伴うリスクに対する感度や理解の不足
・A社は毎月の売買代金を遅滞なく支払い、ビー・インターナショナルには多額の利益が上がっていたことから、ビー・インターナショナルの代表取締役社長や営業部門の担当取締役は本件取引の実在性につき疑問を抱いてはいなかった。
・ビー・インターナショナルの担当者は、A社に本件取引の最終需要家であるC社の担当者との面会を要請したところ頑なに拒否された。それにもかかわらず、ビー・インターナショナルの担当者は対象商品が最終需要者であるC社に納入されていると信じており、本件取引の対象物品が実在していることにつき、昭光通商における本件取引の調査が開始されるまで、疑問を抱いてはいなかった。
・ビー・インターナショナルでは、船荷証券の写しを徴求しておきながら、当該送付された船荷証券の写しを精査することなく、単に保管していただけで、中身を確認していなかった。また、通関許可申請書の控えも入手していなかった。
与信限度の圧縮の先送りという経営判断
・A社に対する与信限度については、2015年11月の昭光通商の取締役会において、「半年後までに与信圧縮を図ること」を条件に承認をしたにもかかわらず、結局、半年後にも条件は未成就であったのに、当該時点において、「債権は決済されている」「取引金額が大きいために、急に取引を停止するとビー・インターナショナルの事業への影響が大きい」との理由で、更に半年間の与信限度額の継続を許してしまった。
・ビー・インターナショナルの営業部門の担当取締役は、本件取引の取引先の属性および取引実態の詳細を把握することを怠り、与信額に着目した取引信用保険の付保、増額にのみ注力していた。
親会社派遣役員による監査・監督の機能の不足
・昭光通商からビー・インターナショナルに派遣された取締役および監査役は、本件取引の詳細を理解したうえで介入取引としてのリスク分析を踏まえた監査ないし監督をすべきところ、実際には行っていなかった。
・昭光通商によるビー・インターナショナルの株式取得直後、ビー・インターナショナルでは、定款および人事労務関連規程以外の社内規程が制定されておらず、かつ、人事労務関連規程についても現実には一切運用されていなかったといった問題があったため、昭光通商からビー・インターナショナルに派遣された取締役および監査役は、社内規程の整備等への対応を最優先していた。その結果、ビー・インターナショナルにおける実際の業務に対する監査・監督機能を発揮するに至らなかった。
対応策 ・M&Aに際して、「子会社化の目的の明確化」「ビジネス面でのデュー・デリジェンスの実施」を必須とする。また、「法務面でのデュー・デリジェンスのレポート」と「財務面でのデュー・デリジェンスのレポート」を統合的に把握するようにする。
・子会社の役員にはリスクを感知して適切な検証・対応ができる能力を有する者を派遣する。その者には、リスク管理についての反復的・継続的な教育・研修を行う。
・与信管理では、「与信格付に応じ、取引の相手方の財務規模・状態等の相応の客観的根拠に基づき、許容できる与信限度額を明確化できるようにすること」に加え「相手方の属性や取引の実態について、相応の客観的根拠をもって確認する」ようにする。
<この失敗から学ぶべきこと>

商社が対象物品を現実に占有することなく行う売買取引(「商社取引」や「介入取引」とも言われます)には、資金循環取引に巻き込まれやすいというリスクがあります。中でも、本件取引のように、仕入先と販売先が実質的に同一であれば、特にそのリスクが高いと言えるでしょう。そのため、昭光通商ではそのリスクの高さに応じた監査・監督を実施すべきでした。しかし、昭光通商の経営陣や昭光通商から派遣されたビー・インターナショナルの役員は「規程の整備」という緊急性の低いタスクを優先し、介入取引のリスク評価ができていませんでした。M&Aを成長戦略の1つに位置付ける上場企業は少なくありませんが、M&Aで企業グループは新たなリスクを抱えることになる以上、親会社ではリスクの優先順位をつけ緊急性の高いリスクから抑え込むリスク管理の視点が不可欠になります。

2015年11月の昭光通商の取締役会において、ビー・インターナショナルのA社に対する与信額につき「半年後までに与信圧縮を図ること」を条件にいったん承認をしましたが、結局、半年後にも条件は未成就であったのに、当該時点において、「①債権は決済されている」「②取引金額が大きいために、急に取引を停止するとビー・インターナショナルの事業への影響が大きい」との理由で更に半年間の与信額の継続を許し、問題発覚が遅れることになりました。特別調査委員会は、①については「今後も同様に決済され続けることを当然に保証するものではない」(調査報告書より抜粋。以下、同様)、②については「むしろ与信が回収困難となるリスクが高くなる」として、この経営判断につき「現時点から見て、かかる経営判断は、十分なリスク評価を踏まえた具体的な債権額の圧縮の方法を示せなかった点において、十分であったとは言い難い」と低評価を下しました。どの上場企業でも多かれ少なかれ先送りとなっている問題があるものです。そのような企業であれば「一旦条件を定めたのであれば、厳格に当該条件を遵守させなければそもそも条件を付した意味がない」という本調査報告書の指摘に思い当たる節があるのではないでしょうか。先送りの経営判断をした取締役は、事後的に当該判断が「十分であったとは言い難い」と評される可能性がないか、今一度確認しておきましょう。

2017/04/28 功績倍率や功労加算を加味して算定した退職慰労金は「業績連動給与」か?

平成29年度税制改正における役員給与税制の改正により、役員の退職給与で利益や株価を基礎として算定されるものは「業績連動給与」(平成29年度税制改正で売上等が算定指標に加えられたことを受け、「利益連動給与」から名称変更)の損金算入要件(例えば、業務執行役員ごとに客観的な算定方法の内容を開示すること)を満たさない限り、その全額が損金不算入とされたところだが(2017年2月22日のニュース「譲渡制限付株式報酬や株式交付信託は退職給与になるか?」参照)、これにより従来型の役員退職慰労金が損金不算入になるのではないかとの懸念が広がっている。・・・

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2017/04/28 功績倍率や功労加算を加味して算定した退職慰労金は「業績連動給与」か?(会員限定)

平成29年度税制改正における役員給与税制の改正により、役員の退職給与で利益や株価を基礎として算定されるものは「業績連動給与」(平成29年度税制改正で売上等が算定指標に加えられたことを受け、「利益連動給与」から名称変更)の損金算入要件(例えば、業務執行役員ごとに客観的な算定方法の内容を開示すること)を満たさない限り、その全額が損金不算入とされたところだが(2017年2月22日のニュース「譲渡制限付株式報酬や株式交付信託は退職給与になるか?」参照)、これにより従来型の役員退職慰労金が損金不算入になるのではないかとの懸念が広がっている。

業績連動給与 : その事業年度の利益や株価、売上等に関する指標に基づく「あらかじめ定められた方法」により決定されるもの。複数年度にわたる指標(例えば3年間の平均利益)を採用することも認められる。
損金 : 法人税計算の基礎となる法人所得を減らす性質の支出等のこと。損金は企業会計上の費用とおおむね一致するが、役員賞与や固定資産の減損損失など「損金には該当しない費用」もある。

役員退職慰労金は例えば在任時各年の報酬月額に役位別の係数を乗じたものを在任期間にわたって毎期積み上げていくといった計算を取るが、退任時に「功労加算(減算)」などと呼ばれる功績倍率がさらに乗じられることがある。こうした功績倍率は、会社の発展への貢献、より端的に言えば業績や株価への貢献を表したものと言えなくもない。もしそうだとすれば、このように算定された退職慰労金は、平成29年度税制改正で「業績連動給与」の損金算入要件を満たさない限り全額損金不算入とされた上述の「役員の退職給与で利益や株価を基礎として算定されるもの」に該当するようにも見える。

しかし、当フォーラムの取材により、こうした従来型の退職慰労金は、基本的には「業績連動給与」に該当しないものと取り扱われる模様であることが判明した。業績連動給与の算定基礎となる指標には利益、株価、売上などがあるが、これらの指標と功績倍率との相関関係は必ずしも明確でないためであろう。もちろん、毎期の業績に連動して、退職慰労金単年度積上額が変動するような「業績連動退職慰労金」や、株価によって退職給与の金額が変動するような株価連動退職金は、「業績連動給与」の損金算入要件を満たさない限り、損金不算入になると考えられる。

退職慰労金については、議決権行使助言会社大手のグラスルイスがその支給議案に反対を推奨していることもあり(ISSは社外役員を対象とすることに否定的。2017年2月14日のニュース「ISSとグラスルイス、厳しいのはどっち?」参照 )、上場企業の間では「廃止」が基本的なトレンドとなっているが、一方で、いまだに功績倍率や功労加算を加味して算定される従来型の退職慰労金を支給している上場企業も少なくない。こうした企業にとって、今回の取扱いは朗報と言えるだろう。

ただ、功績倍率や功労加算があまりに大きければ、税務調査等の際に「業績に連動しているのでは?」との疑念を持たれることにもなりかねない(一般的には、功労加算は30%までであれば税務上のリスクは低いと言われている)。そもそも法人税法上“過大な”退職給与については、当該「過大な部分」が損金不算入とされるが、仮にこれが「業績に連動している」と判断されれば、上述のとおり業績連動給与の損金算入要件を満たさない限りその「全額」が損金不算入となる。課税当局としては、全額を損金不算入とした方が税収が上がるため、「業績連動給与」とするインセンティブは十分あると思われるだけに、功績倍率や功労加算金の割合にはこれまで以上に注意を払いたいところだ。

2017/04/27 法務省、ガバナンスに関する会社法の見直しに着手(会員限定)

「株主総会資料の電子提供制度の導入」「株主提案権の濫用的な行使の制限」(これらについては2017年3月7日のニュース「会社法改正、株主総会関係の見直しの方向性」を参照)や「上場会社への社外取締役設置の義務付け」(2017年2月24日のニュース「会社法改正で社外取締役の選任は義務付けられるか?」を参照)などガバナンスに関する会社法の見直し議論が進んでいる。先月(2017年3月)2日には、公益社団法人商事法研究会が会社法研究会報告書を公表し、会社法見直しに関する議論の結果を取りまとめたところだ。議論の場はいよいよ法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会に移り、昨日(4月26日)には第1回の会議が開催された。今後同部会で議論が予定されている会社法見直し事項のうち、主なものを一覧にしてみた。

見直し事項 補足説明
株主総会手続きの合理化 株主総会資料の電子提供制度の新設
株主の個別承諾を得ることなく、株主に対してインターネットを利用して株主総会資料を提供する方法(株主に対して当該ウェブサイトのアドレスを書面により通知するだけでよい)を新設する。
現在、株主に株主総会資料を提供する方法としては、電子通知とウェブ開示によるみなし提供の2つがある。このうち電子通知は、株主に株主総会資料をeメール等で提供(電子通知)するのに先立ち、「株主の個別の承諾」を得る必要があることから、ほとんど普及していない(2015年の調査によると、電子通知採用企業の割合は2.6%に過ぎない)。また、ウェブ開示によるみなし提供の制度(会社法施行規則94条1、133条3項、会社計算規則133条4項等)を採用する企業は広がりを見せているが、同制度では事業報告のうち「事業の経過及びその成果」「対処すべき課題」や計算書類のうち「貸借対照表」「損益計算書」など株主の関心が特に高いと考えられる事項等が除外されている(みなし提供できない)のが欠点と言える。
株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備
株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置として、株主が提案できる議案の数を制限する。また、株主による不適切な内容の議案の提案も制限する。
近年、株主提案権が濫用的に行使される事例(株主が会社を困惑させる目的で議案を提案したり、一人で膨大な数の議案を提案したりする事例)が見られる(野村ホールディングスの事例はこちら)ため、株主提案権の濫用的な行使に歯止めを掛ける必要が生じた。
役員への
インセンティブ
付与に関する
規定の整備
取締役の報酬等に関する規律の見直し
株主総会の決議によって取締役の個人別の報酬等の内容の決定を取締役会に委任できる規定を設ける。また、株式報酬等のインセンティブ報酬の付与手続きに関する規定も設ける。
現行会社法には、取締役の個人別報酬の内容の決定を取締役会に委任する規定やインセンティブ報酬に関する規定はない。
会社補償に関する規律の整備
役員が、その職務の執行に関し責任を追及されたことに伴い請求された損害賠償金を株式会社が補償できる制度(会社補償)を導入する。
現行会社法には、会社補償に関する規定はない。役員として優秀な人材を確保するとともに、役員が過度にリスク回避的にならないよう、役員に対し適切なインセンティブを付与する観点から導入が必要。ただし、法令違反により課せられた罰金や課徴金についての会社補償は認めない方針。
会社役員賠償責任保険(D&O保険)に関する規律の整備
会社法にD&O保険に関する規定を新設し、会社がD&O保険契約を締結するために必要となる手続や保険料の負担(特に、役員が株主代表訴訟で敗訴した場合に損害の塡補を受けるための特約についての保険料の負担)を明示する。
D&O保険は、会社補償と同様に、役員として優秀な人材を確保するとともに、役員が過度にリスクを回避的にならないよう、役員に対し適切なインセンティブを付与するための重要な手段であるにもかかわらず、現行会社法にはD&O保険に関する規定がない。
社外取締役
に関する
規律の見直し
社外取締役を置くことの義務付け
上場会社のように有価証券報告書を提出している監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)は、社外取締役を置かなければならないとする。
社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し、現行会社法上、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない株式会社(会社法327条の2)は社外取締役を置かなければならないものとすることを検討する必要がある。
社外取締役の要件である業務執行性の見直し
社外取締役がすることができない行為(してしまうと「社外性」を失う)を明確にするために、社外取締役の要件(「当該株式会社の業務を執行したその他の取締役でないこと」という要件)を見直す。
社外取締役がマネジメント・バイ・アウトの際に株式会社のために買収者との間で交渉を行った場合等においては、当該社外取締役が「当該株式会社の業務を執行したその他の取締役」に該当することとなり、社外取締役の要件に該当しなくなってしまうのではないかということが問題となっている。
重要な業務執行の決定を取締役に委任することに関する規律の見直し
社外取締役を置いている監査役設置会社の取締役会は、監査等委員会設置会社の取締役会と同様の範囲内で、その決議によって、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができるものとする。
会社法上、監査役設置会社の取締役会は、重要な業務執行の決定を行わなければならず、当該決定を取締役に委任することができない(会社法362条4項)ところ、裁判所が同項各号に掲げる事項および同項柱書きの「その他の重要な業務執行」の範囲をどの程度厳格に解釈するか(例えば、同項1号にいう重要な財産の処分に当たるか否かの判断基準)を予見することが難しいために、監査役設置会社においては、重要性が低いと思われる事項であっても取締役会の決議事項として上程されているのが現状である。
また、上場会社である監査役会設置会社において社外取締役の選任が進んでいるが、社外取締役は株式会社の事業内容に必ずしも精通していない場合があり、重要性が低い事項まで取締役会の決議事項とされていると、機動的な業務執行の決定が難しくなるのみならず、社外取締役も自分に期待される役割の一つである業務執行者の監督に専念することが難しくなる。


マネジメント・バイ・アウト : 経営陣による買収のこと。「MBO」と略されることが多い。上場企業の非上場化策である。
その他の取締役 : 「代表取締役」「代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定された者」以外の取締役を指す。

法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、上表に記載した事項以外にも、会社が社債を発行する際に、現行会社法では社債権者の保護に欠けるおそれがないことから社債管理者(銀行や信託銀行等)の設置が不要とされる場合であっても、社債権者の権利保護のために、社債管理者よりも限定された範囲内で必要な社債の管理を行うことを第三者(就任の要件は現行の社債管理者よりも緩和される見通し)に委託することができる制度の導入や、会社が取締役の責任追及等のための訴訟で和解をするために必要となる手続き(例えば「監査役の同意を必要とするか」「会社を代表する者を誰にするか」などが想定されている)に関する規律の整備についても、議論を進める予定だ。

社債管理者(銀行や信託銀行等)の設置が不要とされる場合 : 例えば、「社債の券面額が一億円以上である場合」が該当する。なぜなら、そのような社債を引き受けることができる投資家は社債の投資価値を見極める能力が高く財産的基盤も十分にあるはずであり、「社債管理者による保護が必要な投資家」とは言えないからである。

2017/04/27 法務省、ガバナンスに関する会社法の見直しに着手

「株主総会資料の電子提供制度の導入」「株主提案権の濫用的な行使の制限」(これらについては2017年3月7日のニュース「会社法改正、株主総会関係の見直しの方向性」を参照)や「上場会社への社外取締役設置の義務付け」(2017年2月24日のニュース「会社法改正で社外取締役の選任は義務付けられるか?」を参照)などガバナンスに関する会社法の見直し議論が進んでいる。先月(2017年3月)2日には、公益社団法人商事法研究会が会社法研究会報告書を公表し、会社法見直しに関する議論の結果を取りまとめたところだ。議論の場はいよいよ法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会に移り、昨日(4月26日)には・・・

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