2017/03/31 2017年3月度チェックテスト第3問解答画面(正解)

正解です。
開示府令の改正により、有価証券報告書の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】に経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として具体的な目標数値を記載することが可能になりました。経営陣としては、実績値と目標数値が大きくかい離した場合に金融商品取引法上の虚偽記載に問われないか心配になるかもしれませんが、たとえ実績値と目標値が大きくかい離する結果になったとしても、有価証券報告書提出日現在における判断が合理的であれば問題はありません。実績値と目標数値が大きくかい離しただけで、金融商品取引法上の虚偽記載に問われる訳ではないので、問題文は誤りです。

こちらの記事で再確認!
2017/03/08 有価証券報告書に移行の「経営方針」には何を書く?(会員限定)

2017/03/31 2017年3月度チェックテスト第2問解答画面(不正解)

不正解です。
中東やアジアのソブリン・ウェルス・ファンドは議決権不行使率が高いのが通常です。一方、欧米の機関投資家の場合、スチュワードシップ・コードや株主責任の考え方が根付いていることから、議決権不行使率は低いと言えます(以上より、問題文は誤りです)。

ソブリン・ウェルス・ファンド : Sovereign Wealth Fund : 国家の金融資産を運用する政府系のファンド。「Sovereign」とは、主権者、元首、君主、国王といった意味である。

こちらの記事で再確認!
2017/03/03 議決権不行使率上昇の背景と対策(会員限定)

2017/03/31 2017年3月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
中東やアジアのソブリン・ウェルス・ファンドは議決権不行使率が高いのが通常です。一方、欧米の機関投資家の場合、スチュワードシップ・コードや株主責任の考え方が根付いていることから、議決権不行使率は低いと言えます(以上より、問題文は誤りです)。

ソブリン・ウェルス・ファンド : Sovereign Wealth Fund : 国家の金融資産を運用する政府系のファンド。「Sovereign」とは、主権者、元首、君主、国王といった意味である。

こちらの記事で再確認!
2017/03/03 議決権不行使率上昇の背景と対策(会員限定)

2017/03/31 2017年3月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
社員株主が株主総会の質疑の際に積極的に発言し、その結果として一般株主の質問時間が減れば、一般株主からは不満の声が上がるのは当然です。実際に、フジテレビジョンの持ち株会社であるフジ・メディア・ホールディングス(東証一部)では、社員株主の発言を巡って、裁判にまで発展しました。東京地裁の判決(2016年12月15日)では、フジ・メディア・ホールディングスの株主総会運営は、一般株主の質問権または株主権を不当に制限したものとまでは断ずることはできないとし、株主総会決議の取消しを求める原告の主張を斥けましたが、裁判所は、株主総会を統括する立場にある総務部長が社員に総会への出席および質問を依頼すること自体、株主総会の運営の在り方として「疑義がないとはいえない」との苦言も呈しています(以上より、問題文は正しいです)。社員株主も株主である以上、株主総会に出席し質問をする権利はあるが、本裁判を踏まえると、それは社員の判断に任せるべきであり、会社から「要請」することは慎むべきです。

こちらの記事で再確認!
2017/03/02 社員株主による質問の是非(会員限定)

2017/03/31 2017年3月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
社員株主が株主総会の質疑の際に積極的に発言し、その結果として一般株主の質問時間が減れば、一般株主からは不満の声が上がるのは当然です。実際に、フジテレビジョンの持ち株会社であるフジ・メディア・ホールディングス(東証一部)では、社員株主の発言を巡って、裁判にまで発展しました。東京地裁の判決(2016年12月15日)では、フジ・メディア・ホールディングスの株主総会運営は、一般株主の質問権または株主権を不当に制限したものとまでは断ずることはできないとし、株主総会決議の取消しを求める原告の主張を斥けましたが、裁判所は、株主総会を統括する立場にある総務部長が社員に総会への出席および質問を依頼すること自体、株主総会の運営の在り方として「疑義がないとはいえない」との苦言も呈しています(以上より、問題文は正しいです)。社員株主も株主である以上、株主総会に出席し質問をする権利はあるが、本裁判を踏まえると、それは社員の判断に任せるべきであり、会社から「要請」することは慎むべきです。

こちらの記事で再確認!
2017/03/02 社員株主による質問の是非(会員限定)

2017/03/31 日本企業のダイバーシティ経営を阻害するボトルネックの解消法

欧米では、企業経営におけるダイバーシティの実践は、もはや「目的」ではなく、「経営戦略を実行するための手段」と言われている。これは企業経営におけるダイバーシティの位置付けに変化(ステージ・アップ=Stage up)があったことを意味している。CSR(企業の社会的責任)や企業文化の観点からダイバーシティを進めていた時代(ダイバーシティ1.0)にはダイバーシティのコストや手間ばかりが強調されていたが、その時代も終わりを迎え、今後は企業が直面する課題解決の手段としてダイバーシティを実践する時代(ダイバーシティ2.0)に突入しようとしている(ダイバーシティ1.0と2.0の違いについては2016年9月5日のニュース「ダイバーシティ1.0と2.0の違い」参照)。

ダイバーシティ2.0 : 多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指して、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取り組み

ただ、日本企業がダイバーシティ2.0を実践するうえでは、いまだに次に掲げるようなボトルネックが存在していることが、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2017/03/31 日本企業のダイバーシティ経営を阻害するボトルネックの解消法(会員限定)

欧米では、企業経営におけるダイバーシティの実践は、もはや「目的」ではなく、「経営戦略を実行するための手段」と言われている。これは企業経営におけるダイバーシティの位置付けに変化(ステージ・アップ=Stage up)があったことを意味している。CSR(企業の社会的責任)や企業文化の観点からダイバーシティを進めていた時代(ダイバーシティ1.0)にはダイバーシティのコストや手間ばかりが強調されていたが、その時代も終わりを迎え、今後は企業が直面する課題解決の手段としてダイバーシティを実践する時代(ダイバーシティ2.0)に突入しようとしている(ダイバーシティ1.0と2.0の違いについては2016年9月5日のニュース「ダイバーシティ1.0と2.0の違い」参照)。

ダイバーシティ2.0 : 多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指して、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取り組み

ただ、日本企業がダイバーシティ2.0を実践するうえでは、いまだに次に掲げるようなボトルネックが存在していることが、経済産業省内に設置された「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会」(座長 北川哲雄 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。以下「検討会」)が3月23日に公表した「ダイバーシティ2.0検討会報告書」(以下「報告書」)で明らかにされている。報告書では、ボトルネックの解消法(上表右列参照)が示されるとともに、別紙として「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」も添付されており、ダイバーシティを競争戦略に取り込んだ経営を実現したい上場企業にとっては必見の資料となっている。

ボトルネック 内容 解消法の例
ダイバーシティに対する経営陣のコミットメントの不足 企業の経営トップや経営幹部が、ダイバーシティの必要性を十分に認めておらず、ダイバーシティ経営へのコミットメントが生まれない。 経営者自身が、自社の経営戦略を実行する上でのダイバーシティの必要性に気づき、コミットメントと行動に移す。もし社内の様々な抵抗に直面しても、経営トップが「やり続ける」姿勢を持つ。改革のためには、「男性」「シニア」「日本人」といった層から、ある種の既得権を奪うことも必要。また、経営者が交代しても、ダイバーシティ経営を継続していくため、その考え方を企業の理念(ミッション、ビジョン等)や経営戦略に落とし込み、経営層が一体となって、企業全体として実行できる仕組みや体制を構築する。
ダイバーシティ推進体制の未整備、形骸化 ダイバーシティ関連の取り組みが、ダイバーシティ推進部局を中心とした一部の部局に限定され、他部門の積極的・主体的な関与が不十分である。 事業戦略と人材戦略を紐付けてトップのリーダーシップで取り組むと同時に、ダイバーシティの推進部局と人事部との連携の仕方の検討、社長直轄の組織として位置付け、それぞれの部門から代表者を集めた全社的な委員会組織の設置のほか、ダイバーシティを経営会議等の意思決定プロセスに組み込むといった方策が考えられる。
取締役会の監督機能の不足 企業によっては、経営トップの強いコミットメントがあっても、他の取締役等の意識が低いことから、取り組みが進まないケースがある。 ガバナンスの改革の一環としてダイバーシティに取り組む。取締役会自体に多様性を持たせる。
ダイバーシティに関する全社的環境・ルールの未整備 「女性」という特定の属性を考慮した環境・ルール整備を進めたものの、効果に乏しく、全社的な成果が見えない。 日本企業は多様な人材が公平に働ける環境にないことが背景にあるため、働き方改革とダイバーシティを両輪で進める。働き方を多様化し、個々人の働きやすさを高め、一人ひとりの生産性を高める。人事評価はアウトプットを基準に行い、公平性を担保する。
管理職の行動・意識変革の遅れ 管理職の意識が、現場におけるダイバーシティの定着の妨げとなっている。 管理職には、従来のマネジメントとは異なるスキルが求められており、ジョブアサインメントの仕方等に関するトレーニングが必要である。また、管理職の育成と同時に、タスクの割り振り方などの業務プロセスの改善や人事評価制度の見直しによって、管理職が効率的に管理できる仕組みを整えることも効果的。
従業員の行動・意識変革の遅れ 多くの従業員にとってダイバーシティは「他人事」であり、当事者意識が薄い。 ダイバーシティを通じたイノベーションは、様々な人材がそれぞれの能力を発揮し、相互作用することによりもたらされるものであることを踏まえ、従業員個人のレベルにおいても、それぞれの価値を発揮できるよう、行動・意識を変える。
労働市場とのコミュニケーション 労働市場との間で、ダイバーシティに関して効果的なコミュニケーションを実現できていない。 採用から育成、登用、リテンションに至るまで、一貫した仕組みとストーリーを組み立て、労働市場に発信する。
資本市場とのコミュニケーション 資本市場との間で、ダイバーシティに関して効果的なコミュニケーションを実現できていない。そのため、「ダイバーシティが企業価値とどのように紐付いているのかが十分腹落ちできていない」という投資家の声は少なくない。 企業が、どのような戦略とストーリーでダイバーシティを企業価値の創出に繋げていこうとしているのかについて、
ロードマップKPIを通じて、投資家に明確に伝える。

リテンション : 人材を維持すること

上表の一番下の段で赤字で示した「ロードマップ」と「KPI」については、検討会が報告書と同時に公表した別紙3「国内外企業による開示事例」における中外製薬の事例と英国ARMの事例を参照されたい。中外製薬は、ジェンダー(性別)、シニア(世代)、ナショナリティ(国籍)といった属性に関するダイバーシティの推進について、これまでの取り組み状況、進捗、更なる取り組みの方針を、アニュアルレポートでロードマップ形式により示している(こちらを参照)。また、英国ARMは、ダイバーシティ推進の取り組みの進捗状況として、新規採用者、従業員全体、管理職、および取締役の男女別構成比をKPIに選び、アニュアルレポートで示している(こちらを参照)。いずれもアニュアルレポートの利用者に対して視覚的に訴えるデザインとなっており、投資家との対話における素材としても十分に活用できる。自社がダイバーシティについて情報開示する際の参考にしたいとこらだ。

2017/03/30 【失敗学第34回】モルフォの事例(会員限定)

概要

証券取引等監視委員会が、モルフォ(マザーズ上場)の役職員(退職者を含む10名)につき社員持株会を通じたインサイダー取引があったとして、内閣総理大臣および金融庁長官に対して課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。

経緯

モルフォが、2017年3月に特別調査委員会(常勤社外監査役1名および社外弁護士2名で構成)の調査報告書を公表するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

<2015年>
6月15日:モルフォ社長がモルフォとデンソーとの間で開催された会合にはじめて出席する。
7月29日:モルフォとデンソーとの間で秘密保持契約が締結される。
8月24日から26日まで:役員Aがモルフォ株式の買付けを行う(合計400株)。本特別調査委員会が認定する「重要事実に係る決定をした時点」より前に行われた買付けであるが、証券取引等監視委員会は2015年6月15日または7月29日を「重要事実に係る決定をした時点」と認定している模様。
9月11日:モルフォの社員がデンソーから資本業務提携の提案を受ける。
9月17日から10月30日まで:元社員C(重要事実を知っていたかどうかは不明)がモルフォ株式の買付けを行う(合計3,206株)。
9月18日:モルフォ社内で、社長と管理担当取締役間の個別協議で資本業務提携に係る業務執行の決定が行われ、社長と事業担当取締役間の個別協議で業務提携に関する業務執行の決定が行われた(本特別調査委員会が認定する「重要事実に係る決定をした時点」)。
9月29日:社員Bが重要事実を知ったうえで、モルフォ株式の買付けを行う(合計400株)。
10月5日:社員Dが重要事実を知ったうえで、モルフォの従業員持株会への拠出金を増額(39口:39,000円)。
10月6日:元社員G(重要事実を知っていたかどうかは不明)が、モルフォの従業員持株会への拠出金を増額(99口:99,000円)。
10月1日から10月8日まで:社員E,F,H,I,Jが、それぞれモルフォの従業員持株会への拠出金を増額(最大で79口79,000円、最小で20口20,000円)。証券取引等監視委員会はこれらの者にも重要事実が伝達済みであったと認定しているが、本特別調査委員会は週報や議事録の共有による伝達可能性は低いと判断。
12月11日(金):モルフォがデンソーとDeep Learningによる画像認識技術の車載機器への適用に関する基礎的研究等の共同研究開発を目的とする業務提携を行う旨の重要事実が公表される(終値:4,115円)。
12月14日(月)から12月17日:モルフォの株価は上昇し続け、12月17日には7,110円をつける。

<2016年>
1月7日:モルフォがデンソーに対して第三者割当を行い、614百万円の資金を調達(総発行株式数に占めるデンソー所有株式数の比率は4.97%)。

<2017年>
2月24日:証券取引等監視委員会が、モルフォ役職員にインサイダー取引があったとして内閣総理大臣および金融庁長官に対して課徴金納付命令を発出するよう勧告を行う。
3月17日:モルフォが、特別調査委員会の調査報告書を公表。モルフォでは、重要事実管理および株式売買管理の運用に不備があったとして2名の取締役に対して、また、過度な情報共有の体制に対する責任として3名の取締役に対して、役員報酬の10%減額処分(過度な情報共有の体制に対する責任のみが問われた取締役1名は厳重注意の処分のみ)を行った。

内容・原因・改善策

モルフォが2017年3月17日に公表した特別調査委員会の調査報告書によると、本件の問題点の主な内容とその原因、再発防止策は次のとおりである。

過度な情報共有が引き起こしたインサイダー取引

内容 ・モルフォでは、デンソーとの案件が共同研究開発を含む資本業務提携に発展しうることが認識されたにもかかわらず、漫然と定例会議の週報に同案件の進捗状況を記載し続けた。
・モルフォでは、週報を派遣社員を除く全社員がアクセス可能な共有フォルダに格納し、技術・営業の部署の役職員に対して当該議事録の内容をEメールで一斉配信した。また、デンソーとの交渉に関する議事録(2015年8月26日付)も、週報と同様に派遣社員を除く全社員がアクセス可能な共有フォルダに格納し、役職員の一部に対して当該議事録本文をメールで送信していた。
原因 ・モルフォでは、役職員間での情報共有の有用性が強調される一方で、インサイダー取引防止の視点に立った重要事実の管理の重要性についてほとんど意識が向けられてこなかった。
・行き過ぎた情報共有が、証券取引等監視委員会から従業員間で本件重要事実の伝達がなされたとの疑いをかけられる事態に発展した。
・モルフォのインサイダー取引防止規程によると、統括情報管理責任者(管理担当取締役)は「重要事実該当、非該当の判定」等の業務に従事し、情報管理担当者等に情報管理に関し必要な指示を行う立場にあった。本件重要事実について、管理担当取締役は、デンソー社との案件に関与する役職員に対してEメールにより抽象的に情報管理に留意する旨を呼びかけたことはあったものの、統括情報管理責任者として同案件を明確にインサイダー取引規制にいう重要事実として管理する旨の判定をしたり、当該判定を受けて具体的にいかなる情報管理を行うべきかについて情報管理担当者等に指示したりすることはなかった。
・モルフォのインサイダー取引防止規程によると、「重要事実またはこれに該当する可能性のある情報を知った当社役職員は、当該役職員が所属する情報管理担当者及び統括情報管理責任者にこれを報告しなければならない」とされていたが、本件重要事実を知った社員から情報管理担当者に対し適時に報告されることはなかった。
・モルフォでは、役職員が「いつ」「何株」の取引を行ったのかを完全には把握できていなかった。また役職員の持株数を株主名簿で照合することも行われていなかった。
・モルフォの持株会の役員や事務局が、「モルフォにいかなる重要事実があるのか」を把握ないし照会できる体制になっていなかった(もし持株会が「会社内にいかなる重要事実があるのか」を把握できる体制になっていれば、持株会への入会または拠出金の増額の申請があった際に、重要事実を知ることができる可能性のある者による入会または拠出金の増額を不許可とすることができた)。
・モルフォでは、マザーズ上場時(2011年7月)にインサイダー取引防止に関する社内セミナーを実施したが、それ以降本インサイダー取引が行われるまでに1回も開催していなかった。また、モルフォでは、入社時のオリエンテーションにおいてインサイダー取引防止規程に関する説明を行っていたものの、説明にあてた時間はごく短時間であり、受講した役職員の記憶にはほとんど残っていなかった。
対応策 ・社内における情報管理の重要性に対する意識改革
・社内における情報共有の範囲・方法の制限
・適切な重要事実の管理体制の整備と運用
・売買審査体制の整備および運用
・インサイダー取引規制に関する教育、社内規程の改定および社内規程の内容周知の徹底
<この失敗から学ぶべきこと>

モルフォの役職員は、モルフォがデンソーとの資本業務提携を行うという重要事実が公表される前に、その情報を知ったうえでモルフォの株を市場で買い付けたり、持株会への拠出額を増やしたりしたとして、インサイダー取引の嫌疑をかけられることになりました。持株会を通じたインサイダー取引の摘発(課徴金納付命令の勧告)は初めてです。

一定の計画に従い毎月行う定時定額の買付け(各従業員の1回あたりの拠出額が100万円未満)であれば、インサイダー取引規制の適用除外であるため、未公表の重要事実を知っていても、インサイダー取引規制違反に問われることはありません(金融商品取引法166条6項12号、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令59条1項4号)。しかし、持株会による買付けは「一定の計画に従い」「個別の投資判断に基づかずに」「継続的に行われる」必要があり、これらの要件を欠く場合には、適用除外の対象から外れます(すなわちインサイダー取引規制の適用対象となります)。モルフォの役職員のように、モルフォがデンソーと業務提携を行う旨の未公表の重要事実を知った後に持株会への拠出金額を増額したり、未公表の重要事実を知った後に持株会に入会して買い付ける行為は、インサイダー取引規制の適用除外とならないことになります。

本特別調査委員会の調査報告書では、社員Bの買付け、社員Dの持株会への拠出金増額はインサイダー取引に該当すると認定しつつも、社員Aはインサイダー取引に該当しないと認定しています(元社員Cや元社員Gは「不明」としています)。また、社員E,F,H,I,Jについては、重要事実が伝達されたと認めるに足りる証拠はなく、持株会の入会または拠出金変更は毎年4月10月にしか認めていなかったことから、2015年10月に持株会の入会または拠出金変更を行った点につき不自然な点は認められないとしています。勧告対象となった役職員のうち一部は、審判手続等で証券取引等監視委員会の認定を争う意向を示しています。モルフォでは、インサイダー取引を行ったことを認めた役職員については、取締役会あるいは懲戒委員会にて厳正に処分するとともに、審判手続等で証券取引等監視委員会の認定を争う意向である役職員についてはその結果をもって処分の判断を決定するとしています。

モルフォでは、インサイダー取引防止に関する社内セミナーをマザーズ上場時(2011年7月)に開催したきり、本インサイダー取引が行われるまでに1回も開催していませんでした。また、モルフォにおける入社時オリエンテーションでのインサイダー取引防止規程に関する説明はごく短時間であり、「役職員の記憶にはほとんど残っていなかった」(本特別調査委員会の調査報告書より抜粋)とのことです。インサイダー取引を防ぐには、しつこいくらいの社内セミナーの開催と役職員の意識改革が必須と言えます。

2017/03/30 サマリー情報の先行開示に対する投資家の考え方

野村総合研究所
上級研究員  三井千絵

2017年3月期末が近づき、今後決算のとりまとめ作業も本格化することなる。今回の決算において大きなトピックとなるのが決算短信(以下、「短信」)の見直しだ。今回の見直しにより、短信の冒頭のページ(最初の2~3ページ)の「サマリー情報」の記載が自由化(=証券取引所が定める「決算短信・四半期決算短信作成要領等」に記載されている「様式」の使用義務の撤廃)されるとともに、投資判断に影響がなければ財務諸表を添付せずにサマリー情報だけを提出することも可能となった(通期決算への適用は2017年3月期から、四半期決算への適用は2017年6月の第1四半期から実施。改正内容の詳細は2017年2月28日のニュース「決算短信の改正に伴い判断が求められる事項」参照)。その趣旨は、「建設的な対話」を促進する観点から、短信の開示の自由度を高めることとされているが、監査法人やIRサポート会社、関係団体等によるこの改正についての解説を見ると、今回の改正の理由として、“速報性”という言葉が強調され、本来とは異なる意味にとらえられていると思われるケースが目に付く。具体的には、「今回の改正では、短信を早期に提出するために情報量を減らすことが求められた」といったものだ。

例えば日本公認会計士協会は、短信の改正案(証券取引所の上場規則改正案)が昨年(2016年)10月28日にパブリックコメントに付されたことを受け同11月に東証に送付したコメントレターをウェブサイトに掲載しているが、その中では「速報性に着目した記載内容の削減による合理化について」といった見出しを付けたうえで「速報性が重視される決算短信が、実態として金融商品取引法の開示を先取りした内容になっていることから、決算短信の記載内容の削減には賛成」とコメントしている。このコメントからは、「短信自由化」の目的は、「速報性」を確保するための「記載内容の削減」であるかのように見える。しかし、この改正が議論された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(WG)では、元々は・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから