上場企業(=親会社)グループの一員である子会社は、親会社の社名を冠し、一定のブランドも備えている。しかし、その管理体制は驚くほど脆弱であることが少なくない。ある上場企業の内部監査室がこれまで子会社の経理部門へのグループ内部監査で把握した問題を紹介しよう。
(1)貸倒引当金の取崩し漏れ
貸借対照表に貸倒引当金が計上されていたが、その対象債権が計上されていなかった。
そこで詳しく調査すると、当該債権は一昨年に破産更生債権として処理した売掛金に関するものであったが、昨年には破産手続が完了しており、当該破産更生債権も貸借対照表から外されていた。つまり、対象債権は既になくなっているにもかかわらず、貸倒引当金が取り崩されていなかったのである。
(2)支払利息の未計上
1年分の利息を前払いする契約で銀行からの借入れを行っていたため、支払利息を前払費用として資産計上し、これを月次で取り崩して費用に振り替えていたが、内部監査時に、借入金残高が減っているにもかかわらず、支払利息に関する前払費用が減っていないという異常に気付いた。
そこでその理由を確かめたところ、担当者の処理の失念により取崩し漏れが発生し、そのまま決算でも修正されなかったという事実が発覚した。
(3)節税メリットを受けるための意識的な誤処理
業務の拡大により増床した際に、新たにLAN設備の構築を行った。総額で百万円程度の工事であったが、3年間の均等償却処理が行われていた。本来、LAN設備の税法上の償却期間は、その内容にもよるが、10年~18年となっている。そこで詳細を調査すると、工事業者からの見積書に記載されている工事を「材料」と「作業」に分割するなどの手法により、元々は1本の工事を、1工事あたり20万円未満の工事6本に分割していたことが分かった。
法人税法上、取得価額が20万円未満の減価償却資産(法人税法上「一括償却資産」と呼ばれる)は3年間で均等に償却することができる。すなわち、3年間の均等償却を受けるために、百万円の工事を6本に分割して計上するという誤った処理を意識的に行っていたのである。
(4)自社開発ソフトウェアの資産計上
かつて自社用(販売用ではない)のソフトウェアの開発コストをその支出年度において費用処理していたところ、これが税務調査で問題視されて以来、開発コストは一旦「建設仮勘定」に計上してきた。この建設仮勘定は、開発完了時に「ソフトウェア」に振り替え、減価償却費を計上していくことになるが、その計上根拠が明確ではなかった。具体的には、システム開発部門から経理部門に、開発項目・開発内容・開発期間・作業実績等が作業実績報告書により報告されてはいるものの、この報告書には作業完了の有無と金額が記載されておらず、客観的に作業完了を把握できる資料もなかった。
それにもかかわらず、経理部門は前年度に計上された建設仮勘定を機械的に当年度にソフトウェアに振替えていた。つまり、開発の完了・未完了を無視してソフトウェアに計上していたのである。
(5)営業とのコミュニケーション不足
売掛金の滞留残高一覧を確認していると、8か月間も入金が遅延している案件があった。内容を確認したところ、中国の会社に販売した製品について数量に関するトラブルがあったため、入金が遅延しているとのことであった。詳細を調査するために本件に関するメールをチェックすると、売上から7か月が経過した時点で、「数量不足により代金を支払わない」旨が記載されたメールがやり取りされていた。
なぜこのようなメールのやり取りが売上から7か月も経ってから行われたのかを確かめると、最大の理由は「営業部門とのコミュニケーション不足」であった。具体的には、子会社が商品を200個発送したところ、先方は「20個は不良品であり、180個のインボイスでなければ代金を支払わない」と言ってきたが、本件に主体的に関わっていた営業部門が経理部門に途中経過を報告していなかったのである。一方の経理部門も、入金が遅延しているにもかかわらず、その理由を営業部門に問い合わせていなかった。
どれも杜撰としか言いようがない事例だが、いずれも大手上場企業の複数の子会社で実際にあった話である。しかも、子会社は監査法人の監査を年に一度(2~3日程度)受けていたにもかかわらず、内部監査が入るまで発覚しなかった。
同様の問題が自社の子会社でも見つからないとは限らない。グループ内の内部監査を所管する取締役や監査役は、一度同様の視点から子会社をチェックしてみてはいかがだろうか。

